きみの咲く場所
暴行を受けて意識不明の重体だと言われ、医者から安静を言い渡された。退院するまで彼女は毎日見舞いに来てくれて、何かとお世話してくれた。彼女の両親は海外で活躍するアーティストで、仕事の関係で日本に来たという。
イギリスも氷河期世代に相当する人々がいてね、今の50代なんだけども。本当に仕事がなくて海外移民した人もかなりいた。IT業界に流れ着いた人も沢山いて、今の業界のベテランの人がそんな感じ。
そんな中に、俺みたいに日本で生活する子がたまにいて、日本語が堪能な人間が日本に流れ着いたのよ。
俺も日本語堪能だったけど、まあ仕事がないわけではないんで、日本語勉強できたわけだから、結構楽なんだ。
でもその子はお昼ごはんを食べて、その後は帰ってしまう。
俺が、ちょっと寂しいと思ったのは日本にいたのに、何か別の場所で生活していたと思うようになったからだ。
俺が日本に住むことによって、別の世界に来てしまったのは当然といえば当然だ。
俺は、子供に興味ないけど、自分の子供である彼女と一緒にいると、子供っぽい感じがする。
日本で生活するには、何か教育の授業を受けることだと、俺は思う。
その中に彼女が入ったのは、たまたまね。
何か聞いてはいけないことというか……まあ、それは後で聞くことになると思うけどさ。
その後、彼女と初めて会ったのが、高校の入学式だった。
俺はこの日を待って、彼女の家に向かった。
彼女はあっけに取られつつも、俺のことを「こんにちは」って言ってくれた。
その時点で俺は気づいたよ。
この人、俺の親じゃないの? って。
「こんちはー」
という挨拶の後、彼女を部屋に招き入れた。
部屋の中で彼女はベッドの上で、漫画本に目を走らせていた。
部屋の床に漫画本が転がっているのは、お気に入りの漫画が倒れていないかを確かめているのだろう。
彼女も漫画が好きなんだなと思った。
そして、彼女はベッドの上の漫画本を見た。
「うーん。これは面白そうだね」
何を言っているんだろうと、俺は思った。
「何を見てるの?」
「あぁ、漫画だけど」
彼女がそう言うと、漫画本のページが開いた。
彼女も俺も、何だか読んでいるようだった。
しばらくすると、彼女が話を切り出した。
「今日の夜、暇でしょう。私と映画を見ないかい?」
「別に俺は暇だけど」
「そうだろう?じゃあ、私も付き合ってあげる。映画の話を」
俺がそう言うと、彼女は漫画を開いたまま、しばらく何か考えていた。
「ねぇ、何が目的だい?」
彼女は漫画を閉じて、俺に答えた。
「今は映画よりも何が目的なのか、重要なところだろう?」
「そう。そういう話だね」
「そういう話だと思ったよ。だったら俺は、映画でもいいよ。ほら」
そう言って俺は彼女と2人で映画を見に行くことにした。
ただその前に彼女の家に寄ることにして、そこでいろいろ話を聞いたんだ。
まずは彼女の家族について、話してくれたよ。
彼女の父親は俺の母親の兄にあたる人だったんだ。
それで母親は日本人。父親ももちろん日本人の人らしいんだけど、アメリカ国籍を持つ女性と結婚していてね。その女性がアメリカに住んでいるということなんだ。
だから彼女にはアメリカに行った経験がないわけだ。
ただ英語に関しては、母親から教わったということだ。日本語は学校で学んでいたというし、日本にも何度か来たことがあると言っていたよ。
でも日本語が堪能な子だから、俺とは普通に接することができる。日本語が苦手なら難しいかもしれないよね。
あと、日本の文化についても、いろいろ教えてもらったというわけだよ。
そんなことを聞いていた時に、俺は彼女に対して言った。
「君はどうしてこんな国にいるの?他の国の人とかと暮らしてるとかあるのかしら?もしあったとしたら……」
俺の問いかけに対して、少し間をおいて、彼女からの返事があった。
「私は両親ともにアメリカ人で、日本で暮らしているのよ」
それを聞いて、俺は驚いた。まさか自分の目の前にいる子がそうなるとは思ってなかったんだよ。
しかも両親が日本人ではなくて、アメリカ人だと聞いたときは、本当に驚いてしまった。
「私の両親は日本人と外国人のハーフでね。父親が日本人で母親がアメリカ生まれだったの。だから日本で暮らすことになったの」
「なるほどね。だから君の両親はここにいないのね」
俺がそう答えると、彼女はまたすぐに答えてくれた。
「いいえ、両親とも元気にしているわ。ただ私が学校に通いやすいようにということで、今こうして日本に来ているの」
彼女の言葉に俺は驚いたけど、それでも何とか気持ちを抑えながら、彼女に対してさらに尋ねた。
「へぇ~。それで君がこのマンションで一人で暮らし始めたってこと?」
「違うのよ。もともと一人暮らしなの」
「一人暮らし!?」
「そうよ。だから、あなたが来ても問題はないの」
俺は衝撃を受けたよ。一人暮らししているなんて思わなかったからさ。でもまあ……考えてみれば当然のことかもなって思うこともあったり……。
俺はそのあとに彼女に言った。
「君は一人暮らしかぁ。寂しくないの?俺がいればよかったのにね」
「ふっ。私だってあなたのこと、気になっていたのよ。ただこの生活に満足していただけなの」
彼女はそう言いながらも、何か嬉しそうだった。
その後、彼女は俺に質問してきた。
「ところでさ、君の家ってどこにあるの?」
「家?家はあるけど……どうして?」
「いや、ちょっと興味があってね。見に行ってみたいのよ」
「そうか。じゃあ行こうか」
俺は彼女を俺の家に連れて行った。といっても、隣同士なんだけれどね。
俺が玄関を開けようとすると、彼女はなぜか緊張した表情をしていた。
俺が鍵を開こうとしているのを見て、彼女は俺に言ってきた。
「待って!先に確認したいの。本当にいるの?あなたの家に」
彼女は俺の方に近寄って聞いてきた。
「うん。いるよ。俺一人しかいないよ」
俺がそう言うと、彼女はほっとしていた。
「そう。じゃあいいか」
「何を確認していたの?」
俺は彼女のことがよくわからなかった。「そりゃあ、あれよ」
「何?俺にはわからないよ」
俺がそう言うと、彼女ははっきりと言った。
「部屋の中に誰かいたらどうしようって思ったのよ」
俺も正直に答えた。
「部屋の中には誰もいないよ。俺だけだよ」
それを聞いた彼女はホッとして、俺と一緒に家の中に入った。
「お邪魔します」
彼女はそう言って、家に入るなり、部屋の中の様子を見ていた。
俺の部屋の中は結構殺風景で、あまり飾ることはない。
だから彼女は部屋の中を見て、いろいろ考えていた。
部屋の中にある物を見た後、彼女は言った。
「意外とシンプルね」
「まあね。特に飾りつけはしないからね」
「それにしても、本が多いわね」
「そうだな。本棚もあるからね。いろいろ置いているよ」
俺がそう言うと、彼女が言った。
「何冊くらい本があるの?」
「うーん。1万冊は越えていると思うよ」
「1万冊も!!すごい数ね。そんな本を読むことができるの?」
「そうだね。小説が中心かな。あとマンガも読むから、漫画も入れれば2万5千冊以上になると思う」
彼女はそれを聞いて、驚きつつ、感心しながら、俺のことを見ていた。
そして俺に質問してきた。
「ちなみにあなたは何歳なの?」
「20歳だけど」
「あら、年上なのね。私もそうなのよ」
彼女は俺のことをじっと見つめていた。
俺は彼女のことを見たとき、かわいい女の子だなと思った。
そのあと、俺は彼女にコーヒーを入れてあげた。
彼女がカップを受け取ったときに、彼女は俺の顔を見ながら、「ありがとう」と言ってくれた。
俺がその言葉を言ったときには、彼女は目を丸くして、びっくりしていた。
そして俺は彼女に聞いた。
「何?」
「何が?」
「えっと、『ありがとう』って何?」
「あぁ、それは感謝の言葉よ」
「そうなんだ。じゃあ、君のお父さんとお母さんが『ありがとう』って言っているところを見たことがないの?」
「そうね。ないわね」
「何でだろうね」
「そう言われても、私にもわからないわ」
「なるほど」
俺はそう言ったあと、彼女に言った。「じゃあ、今日はもう遅いから帰ろうか」
「そうね。帰るとするか」
俺は彼女を連れて、家を出た。
そして俺の家から彼女のマンションまでは徒歩3分だ。
「ここが私の住んでいるマンションよ」
「へぇ~。ここなんだ」
「そうよ。あぁ、そうそう。一応言っておくけど、私は隣の家に住んでるからね。いつでも来ていいから」
「そうか。わかったよ」
そう言って、彼女と別れた。
俺は彼女が見えなくなるまで見送ったあと、帰ろうとするといかつい男たちに囲まれた。「おい。お前。さっきの薄汚い外人女は何だ? お前の女か?」「そうだよ。何?」
「そうか。そういう関係か。ならば……」
俺はそのあと、彼らの車に乗せられた。
俺は彼らから話を聞いたが、どうも彼女が俺と仲良くしていることが気に入らないらしい。
彼らは俺が彼女に対して、性的な行為をするのではないかと思ったらしい。車の中でボコボコに殴られた。ただ俺としてはそんなつもりはなかったんだけどなぁ。俺はただ話をしたかっただけだし、彼女との時間を大事にしたいと思っていたしね。
ただ、あの時の俺は少しやりすぎたと思って、反省しているんだよなぁ。
俺に彼女がいたことで、俺の両親に対しての不満を持っていたみたいで、ただ奴らはそんなことお構いなしに俺を殴りまくった。
「もうこれくらいにしておいてやる。二度とあの女を連れて来るな。今度見つけたら殺すぞ!」
男たちは俺を路上に投げ捨てた。身体の節々が痛い。ごふっ。血を吐くと折れた前歯が地面に転がった。ちくしょう。悔しいな。
俺は男泣きに泣いた。すると俺の目の前に現れたのは、先ほどの彼女だった。
彼女は「大丈夫かい!?」「早く治療を」と言いながら、病院に連れて行ってくれることになった。俺は痛みを堪えながら彼女に言った。
「大丈夫だよ。自分で歩けるから」
しかし彼女は聞かなかった。「黙ってろ」
というばかりだ。
結局俺は病院に連れて行ってもらうことになったんだ。その道中で彼女は俺に対して「心配かけさせないでくれよ」と言った。その言葉は嬉しかった。
ただ彼女の顔を見ると涙がこぼれてくる。俺は彼女に何度も謝っていたんだ。でも彼女も泣いていたんだ。だから俺も泣くしかなかったよ。
俺が怪我をしているのを知ったのか、彼女の母親が迎えに来て、彼女を叱りつけた。
「このバカ娘!何やってるのよ!!」
彼女は泣きながら俺のことを指差して、俺の母親に話しているようだった。でも声が聞こえないんだよなぁ。ただ俺は意識を失いかけていたんで、何を言おうと、どんなことをしようと、何もできなかったわけだが……。
目が覚めると、俺は病室にいた。俺が目を開けたことに気づいた母親が話しかけてきた。「気がついた?ここは病院よ」
と。俺は母親に「うん」と答えた。それからしばらくして、俺は起き上がったが、まだ全身のあちこちが痛い。母親は看護師さんを呼びに行ったのか、すぐには戻ってこなかった。
俺はふと考えた。これ以上心配させたくない。病院を抜け出そう。そう思って、ベッドから立ち上がって、部屋を後にした。
しかしすぐに見つかってしまったようだ。俺が病室に戻ろうとした時、廊下の向こう側から誰かがやってきたので、俺は咄嵯に壁に隠れてしまった。俺は自分の姿を見られないように、壁にへばりついて息を殺していた。俺はこのまま通り過ぎてくれと思い、じっとしていたのだが、向こう側にいた人物は俺の方へ歩いてきた。俺は必死になって隠れようとしたが、足が動かず、その場で倒れてしまうと、運悪くも相手も俺に気づいてしまったのだ。
「あなた!どうしてこんなところにいるのよ!?」
俺が見上げると、そこには彼女がいた。
俺はすぐに立ち上がり、彼女に背を向けた。俺は慌てていたので、後ろから追ってくる彼女を無視して、そのまま逃げ出そうとしたが、彼女に腕を引っ張られたのである。彼女は俺の腕を掴んだまま言った。
「ちょっと!あなた。なんで自分がオンライン努力家の伊藤コースケだってこと隠してたのよ。アンチにボコされて自業自得じゃん。何?私に気を使ってくれたの?」
「そうか。俺は君のために」
「ふざけないでよ!!そんなことされたら私が惨めじゃないのよ」
彼女は大声で叫んだ。
「でも、俺には才能がなくて……」
「何言ってるのよ!あなたは私の憧れの人なのよ。私にとってはヒーローなんだから!それなのにあなたがそんなだと、私の方が辛いじゃないのよ」
彼女は俺に向かって、泣きながら訴えた。
俺は彼女がそこまで思っていたとは知らなかった。彼女は俺に言う。
「ねぇ、お願いだから。あなたは自分を誇りに思いなさいよ」
俺はその言葉で勇気づけられて、「わかったよ」と一言だけ言うと、彼女は俺に抱きついてきて、涙を流していた。
「あなたが私を助けてくれたのよ。本当にありがとう」
俺は彼女の温もりを感じた。俺も一緒になって泣いていた。そして彼女は言った。「あなたのこと、これからも支えていくから」
俺はその言葉に救われた気がしたんだ。そして俺は彼女に「よろしく頼むよ」と言って、抱きしめていたんだ。
俺にとって初めての女の子の恋人ができた瞬間だった。
「じゃ、わたくし帰国チューバ―の江陣薔薇は伊藤コースケの交際申し込みを正式に受理します。こちらこそよろしくね」
彼女は俺の手を握ってくれた。その手はとても暖かくて柔らかかった。
俺は彼女と恋人になったんだ。初めて付き合う相手が彼女だということがとても嬉しく感じているんだ。俺は彼女と付き合いたいと思った。だからこそ、俺は言った。
「ありがとう」
俺は心の底から感謝していた。
■第二話
俺と薔薇は警察にきっちり被害届を出した。何しろ相手は殺気満々のアンチだ。俺も彼女もチャンネル登録者を抱えている。特に薔薇は「二度と現れるな」と殺害予告を受けた。このままでは配信に支障を来たすどころかフォロワーが危険だ。何としても犯人をつきとめなきゃ。
俺はそう考えていた。
警察が来て事情を聞いたが、俺は暴行を受けて意識不明の重体だと言われ、医者から安静を言い渡された。俺に傷を負わせたのは相手の方だし、明らかに俺に非はないはずなんだが、俺は入院する羽目になる。俺が目覚めると、そこに彼女の姿があった。彼女は俺のことをずっと看病してくれていたらしく、俺はその事実を知り、彼女にお礼を言うと、彼女は「別にいいよ」と照れていた。
俺が退院するまで彼女は毎日見舞いに来てくれた。そして俺は彼女の両親とも会った。彼女のお母さんとお父さんは俺のことを褒め称えていた。彼女の両親は二人共海外で活躍するアーティストで、仕事の関係で日本に来たんだという。俺は彼女と仲良くしている姿を見て、少し安心していた。そして俺の怪我もすっかり治って、俺は彼女の家に住むことになった。俺は彼女と暮らすことに不安を感じていたが、意外にも彼女が積極的に俺に近づいてきて、何かとお世話してくれるようになったんだ。まるで俺のことが大好きみたいに。
ただ、俺のことを心配しているのか、あまり外に出してくれないんだよなぁ。まあ、仕方ないかと思う。でも彼女は俺に色々と教えてくれるので、感謝している。俺は彼女と買い物に行くと、よくナンパされる。「お兄さん、お姉ちゃんと一緒?かわいいね」とか言われるんだけど、彼女の方が俺よりも全然可愛いんだよなぁ。「ねえ。あなた。私のこと好き?」
「うん」
「本当?嬉しいなぁ~。私はあなたのこと愛しているよ」
そう言って彼女はキスをしてきたりしてくるんだけど、やっぱり恥ずかしいんだよなぁ。俺と彼女の関係は順調だった。ただ、
「あぁーあ。せっかく買ったのに……」
彼女は洗濯機で服を回そうとして、泡だらけになっているシャツを見て悲しんでいた。俺は彼女が洗剤を入れ忘れたのが原因だと思った。「これさ。俺がやっておくよ」
「うん。頼んだ!」
「任せてよ」
俺と彼女が暮らし始めてから3週間が経とうとしている。ただ最近になって彼女は忙しいらしくなかなか家に帰って来ないことが増えたんだ。でも彼女はたまに俺の家に顔を出しに来てくれるんだけどね。今日もまた来る日だったんだけど、夜になっても彼女は姿を見せない。
「ただいま~」と言う声もなく、彼女は帰ってこなかった。俺は彼女の帰りが遅い理由を考えたが、やはり俺にはわからない。ただ俺が料理を作っていると彼女が帰ってきて、お風呂に入って、ご飯を食べることになるんだが、彼女がいつもより機嫌が悪いように思えた。
「どうしたの?薔薇」
「あのね……あのね……。私ね……。また男に告白されたの。それでね……。断ってきたの。もうやめてって言ったのに、あいつは諦めようとしないのよ」
「そうか。でも、どうして断ったらいけないわけ?薔薇は魅力的だから男なんて選り取りみどりじゃん」
「違う!わたくしが好きなのは、あの人だけなの!あの人以外は興味ないの!!」
ただ彼女は俺以外の男が嫌いだというのだ。何でなのかは分からないけど、
「薔薇が幸せになれるなら俺は応援するよ」
「もう。バカ」
彼女は俺の頭を撫でてくる。彼女は俺のことが好きで好きでしょうがないらしい。俺は彼女の気持ちに答えることはできないが、俺も彼女に対して、特別な感情を持っていた。ただ彼女との関係を壊したくないという思いがあって、
「俺は、君のことが好きだよ」と伝えたことはあったんだが、その度に彼女は「バカ。私もよ」と言っていた。俺が怪我してからというもの、彼女と一緒に過ごす時間が増えているような気がするんだよなぁ。
ただ俺は彼女を怒らせてしまった。
「ちょっと!なんでこんなところに置くの!?危ないじゃない!!」
「ごめん。でもさ、俺は薔薇を守るつもりだよ」
「ううん。大丈夫。だってわたくしの彼氏ですもの」
「そうか。ありがとう」
「うん」
「ねぇ、薔薇」
「何?」
「俺がもしいなくなったら、君は俺の分まで生きて欲しい」
「そんなこと言わないでよ」
「でもね。俺は君のために生きている。俺は君を救いたいから。でも俺は薔薇を守れなかった。それは俺の責任でもあるんだ。でも俺は君を愛しているから。それだけは分かってほしい」
「分かったよ」
彼女は俺の話を最後まで聞いてくれた。俺は薔薇が大切で、守りたかったからこそ言った言葉だったのだが、それが彼女を不安にさせてしまった。
「私もあなたが好き。あなたがいないと、わたくし寂しくて死んじゃうかも」
「俺は君のためなら何でもできるよ」
そう言ったものの、彼女がどうして俺に依存してしまうのかはわからなかった。それでも俺は薔薇を守れるように努力はしていた。
「ねぇ、あなた。一緒にお風呂入ろうよ」
「ああ」
俺は彼女に言われて一緒にお風呂に入った。彼女は俺に裸を見せるのが嫌なようで、胸を隠していた。
「ねぇ、私をあなたの手で触ってほしいの」
「わかったよ」
「あっ……」
彼女は目を瞑っているが、少しだけ震えていた。俺は彼女の背中に触れてから、胸に手を伸ばした時だった。
「ちょっと待って!それ以上されると、わたくしおかしくなりそうなの」
「そっか。ごめん」
「いいのよ。あなたのことが好きなだけだから」
彼女は頬を赤らめながら、体を洗い始めた。俺はそんな彼女に後ろめたさを感じつつも、彼女と入浴を終えて寝室に向かった。するとそこにはベッドの上にいる薔薇の姿があり、俺は薔薇のことを抱きしめたんだ。
「薔薇、愛しているよ」
「あなた……。私のことを離さないでね」
「わかったよ」
俺は薔薇と口づけをした。俺と薔薇は一緒に眠ることにしたが、彼女はすぐに眠ってしまった。俺はまだ眠れなくて起きていたが、彼女はぐっすりと寝ている。するとガシャンと窓ガラスが割れた。小石が投げ込まれたのだ。犯人はわかってる。薔薇のアンチどもだ。
「コラー!二人とも居るんだろ!出てこないと殴りこむぞ」家の外から怒号がする。
「誰ですか?」と俺が尋ねると、「俺は薔薇のアンチだ!」と大きな声で叫んでいたようだが、「はい。わかりましたから。今出ます」と言って外に出た。外では20人ほどの男女がいたんだが、皆手にバットを持っているし、
「おい。そこのブス女をこっちに渡せ」
と、一人の女性が言っていた。
「あんた。誰に向かって言っているんだ?」
「私は薔薇のアンチグループのリーダーだ。このブスをこちらに引き渡すのがお前の仕事だ」
「はい。すみません。彼女には俺が付いていますから、彼女に手を出すのだけはやめていただきたいんですけど」
「何をふざけたこと言ってんだよ。こっちは本気で来てんだよ。それにこいつをこちら側に引き入れるのは俺たちの役目なんだ。こっちはなぁ、こいつをぶちのめしたいんだよぉ!!!」
と言ってくると、俺の顔面を殴ってくる。俺は鼻血を出して倒れこんだが、俺は立ち上がる。彼女は恐怖で怯えている様子だったが、彼女が泣き出すと「泣けー!もっと泣いてみろ。お前はなぁ、男を誘惑するような淫乱女なんだよ。男のチンポが欲しくてもらえたら満足な変態なんだ。おらぁ」
と言い出して俺のことを殴った。
俺は彼女に暴力を振るわれて、俺は許せなかった。
「薔薇を侮辱する奴らは許せない。これ以上彼女を傷付けると言うなら俺が相手になるぞ」
「うるさい!!俺は薔薇のファンなんだ。あんなビッチ女に興味なんかあるわけないだろうが。俺の女はお前みたいなお子ちゃまに用はないんだよ!!」
「誰がお子様だ!!」と、怒り狂ったように拳をぶつけてきたので、俺は避けたが、俺の腕からは大量の出血がした。俺は痛くて動けなかったんだが、俺は彼女に駆け寄って行った。
そして彼女を抱き寄せた。「おい。逃げるよ」
「うん」彼女は涙を流したまま、走り出したが、男たちは俺と彼女を追いかけ回してきたんだ。俺と彼女は逃げ回っていると、背後に誰かの気配を感じた。俺は恐くなって振り返ると、そこにいたのはリーダーの男だった。男は「俺が逃がしゃしないんだよ。このクズ共が」と言うと、俺に襲い掛かってきたんだ。そして彼は刃物を振りかざすと、俺に切り付けてきたんだ。俺と彼女は逃げたが、男の攻撃が激しく、このままじゃ追いつかれるのは確実だった。そこで俺は彼女を庇って、
「薔薇を……彼女をお願いします」
と言ったんだ。彼女は俺を見て何か言ってたんだけど聞こえなかったんだよなぁ。ただ彼女は俺の言ったことに従ってくれて俺と彼女の二人で逃げてくれた。ただ俺は腹部に深い傷を負ってしまい、その場に倒れたんだ。
「うぅ……」
俺は痛みで意識が飛びそうになったが、ここで気絶したら、俺が守った意味がない。だから俺は歯を食いしばったんだ。ただ俺が刺されて倒れている間に、彼女は俺の元から離れていったんだ。俺は彼女が無事だったと分かると、安心して眠りについた。
次に目が覚めると、俺が目覚めた場所は病院だった。俺が目を開けて横を見ると、 彼女は涙を浮かべていた。
俺は彼女に話しかけようとしたんだが、喉が渇いて声が出なかった。すると彼女は、俺の言いたいことがわかったのか、彼女は俺の口の中に水を入れた。俺は彼女の口から水を飲む。すると、俺の全身に力が戻ってくるのが分かった。
しばらくして俺は彼女に声をかけようとしたが、 彼女は泣いていた。
彼女の頬に一筋の光が輝いていた。俺はそれを拭おうとして手を動かそうとしたが、動かなかった。俺は彼女に言うと、 彼女が俺に抱きついてきて、俺の胸に顔を埋めていた。彼女はずっと俺の名前を呼んでいた。何度も、 ごめんね。
そうやって謝っているようであった。彼女は俺が生きていることに喜んでいる反面、自分のせいで俺が傷ついたことに申し訳ないと思っているのだろう。彼女は泣きながら俺の手を握ってきたので、俺は彼女の手を強く握り返してあげた。俺にはそれしかできなかったから、すると彼女はまた涙を流しては俺の顔を覗き込んでいたり、俺の手をぎゅっと握ってくれたりしてくれたんだ。
俺は彼女が俺のことを愛してくれていることを嬉しく思ったが、彼女はまだ不安が残っているのか、時々表情を曇らせていることがあったんだ。ただ彼女はその度に、俺の方へ笑顔を見せてくれていたんだ。「すまない。俺は君のヒーローになれそうもない」
「どうして?わたくしを助けに来てくれたじゃない。それにあなたはわたくしにとって、ヒーローよ」
彼女は笑っていたがどこか寂しげな感じもしていた。彼女は、自分のせいだと分かっていたが、それでも俺を恨んでいなかった。むしろ俺が自分を責めていることを理解して、
「わたくしのために、ありがとう」と、彼女は俺の額にキスをすると、彼女は俺の頬を撫でていた。彼女は俺のことが好きでしょうがないのだと思うと、彼女のことを幸せにしてあげたいと強く思うようになっていったんだ。
しかしそんな日々は長くは続かず、
「薔薇!どこへ行ったの?」
「あなた!わたくしここよ」
薔薇を探している彼女の父親の姿があった。父親は薔薇が行方不明になったことを知って、俺の家まで探しに来たのだ。
「あの子は一体どこに……」
「きっと見つかりますよ」
「君、すまないが一緒に探してくれるかい?」
「はい」
俺は彼女との約束を果たすために、彼女の父親と捜索に出た。だが彼女は見つからない。もしかすると誘拐されたのではないかと不安になりながらも、俺は必死になって薔薇を探そうとしていたのだが、アンチグループが身代金要求動画をアップした。
「このブスがどうしても欲しいなら、金を用意しろ」
薔薇はどうなるのかと不安になっていると、 俺の携帯電話が鳴ると、俺はメールを確認した。すると薔薇からで、「私を見つけて」というメッセージが入っていた。俺は薔薇の父親のところに戻るように促すと、彼女は「私のためを思うなら、コースケ。貴方のチャンネルを閉鎖して」と懇願した。
「わかったよ」
「あなた、どうして私の味方を?」
「薔薇は君と友達だろ?」
「どうしてそこまで……」
「俺はさ、好きな人が傷つく姿を見るのが辛いんだ。俺は彼女のことが大切だし、俺はもう傷つけたくない」
「わかったわ」
彼女は納得すると、「私は大丈夫よ」と笑ってみせた。俺は彼女から離れて、アンチグループがいる場所へ向かうことにしたんだ。俺は奴らに捕まったら何をされるかわかったものではないからな。それに薔薇のことを思えばこんなところで足踏みしている場合ではない。
「待って!」
「えっ?」
俺が振り返ると、そこには俺を追いかけてきた彼女の姿が見えたんだ。彼女は俺の後を追いかけてきたようで、俺のことを見つめてくる。俺は彼女に対して怒っていた。「何で来たんだ!君は狙われているんだぞ!」
「だって、あなたはわたくしの大切な人なの。だからわたくしもあなたの力になりたい」
「ダメだよ!俺に近づこうとしちゃ。早く家に帰りなさい」
「でも、心配なの」
「薔薇は俺のことを想って言っていた。それは彼女も同じなんだよ。だからこそ彼女は俺と別れた後に姿を消したんだ」
「そうなのね」
「それに俺のチャンネルは閉鎖しろって薔薇が言ってきた。薔薇の気持ちを考えたことがあるのかい?」
「薔薇は、優しいのね」
「わかってくれたんだな」
「はい。だからわたくし、あなたについていく」
「ダメだ!君を危険に晒すわけにはいかない」
「お願い!あなたに何かあったら、私は……」
「俺は君のことを守りたいんだ」
「なら、なおさら」
「それにもし俺が死んだとしても……」
と俺は言葉を詰まらせると、「やめて!お願いよ。死ぬなんて言わないで……」と言って彼女は泣き出しそうになると、「わかったよ」と俺は言うしかなかった。すると彼女が俺の手を握ってきた。そして俺たちは二人だけで行動することに決めて、
「わたくしが守る」
「じゃあ、俺は君を守る」
と、互いに手を取り合うと、俺たちは歩き出したんだ。アンチグループの本拠地にたどり着くと、
「おい!お前ら!ここに来るまでに俺たちの仲間を殺したなぁ」
「お前らが襲ってきたから悪いんだろ?お前らも殺される覚悟があるんだろうなぁ」
俺は奴らを挑発するように言った。そして俺たちが向かおうとすると、男が俺の前に立ちはだかる。
「俺の名は、マサムネ。この男を倒したいなら俺を倒してから行くんだな」
「あんたは薔薇を襲おうとした奴じゃないか」
「俺はあいつが許せないんだよ。だからこの手でぶっ殺してやる」
「俺は、薔薇のためにお前を倒すしかないようだな」
「やってみろよ。お子ちゃまがぁ!!」
俺は男と向き合った。男は刀を持っている。こいつは手強いかもしれない。俺は攻撃をかわしながら、相手の隙を狙っていた。
「てめぇ、なかなかできるじゃねぇか」
「当たり前だ。俺は彼女を守るために鍛えてるんだ」
「彼女って誰だ?まさか、あの女じゃないだろうな?」
「違う。薔薇は関係ない」
「嘘をつくんじゃねえよ。だったら、その女の居場所を教えろ」
俺は答えずに、男の隙を伺っていると、男は俺に攻撃を仕掛けてきた。
「死ね!!」
俺はそれを避けたが、男は追撃を仕掛けてきた。俺はそれを何とか避けていたが、俺は男の攻撃を食らいそうになっていた。
その時だった。「助けて!!」と彼女が叫んでいた。
「貴様!!邪魔をする気かぁ」
俺は彼女の声を聞いて、
「薔薇を頼む」
「えっ?」
「俺のことはいい。薔薇を守ってくれ」
「はい」
俺は彼女を助けることができたんだ。
彼女は無事だった。
俺は彼女を守るために戦ってるんだ。
「てめぇ、死にぞこないがぁ。よくもやってくれたなぁ」
「俺には守りたいものがあるんだ。俺は負けられないんだよぉ」
俺はそう言って、攻撃を開始した。
「お前は馬鹿なのかぁ?たった一人で俺に立ち向かうとは」
「俺がお前を倒すからさ」
「くたばれぇ!!!」
「てめぇこそ、俺に殺されてしまえ」
俺と男の勝負が始まった。
「俺に勝てると思っているのか?俺は最強だ。最強の人間に、てめぇみたいな雑魚が勝てるかよぉ。まずはその目障りな剣を捨てな」
俺は剣を地面に捨てると、彼は刀で俺を攻撃してくる。
「そんなもろい剣なんかよりも俺の刀の方が強いんだぜ」
と、俺に向かって斬りつけてきたが、俺は彼の刀を避けると、
「どうだ?俺に刃向かうとどうなるのか思い知ったか?」
俺はその瞬間、彼を蹴り飛ばしていた。
「がはは!ざまーみろ!俺はまだまだ動け……」
「うるせぇよ」
俺はそう言うと、また彼に蹴りを入れて、
「調子に乗るなよ。クソ野郎が」
「なめんな!このクソガキが!」
「まだ分からないみたいだな」
俺はそう言うと、彼の背後に回り込むと、彼の首根っこを掴む。すると、彼が苦しみ始めると、
「て、てめえ……」
「苦しいか?」
「離しやがれ!」
と俺を蹴ろうとするが、
「そんなことをしても無駄だ」
俺はそう言いながら、手に力を込めていき、
「このままだと、てめえは死ぬぞ」
「がはははは!てめえ、何が目的なんだ?殺すだけならこんなことをする必要はないはずだ」
「ああ。てめえはここで死ぬからな」
「は?」
「だが俺は、ただでは終わらせない。俺はなぁ、てめえのようなクズ野郎を見ていると虫唾が走るんだ。てめえは地獄を見せてやる」
俺は男の首元を強く握った。
「ぐふぅ……うぐ……」
「ほら!もっと苦しんでみろよ!俺は今から、てめえを痛めつけるんだからよぉ!ぎゃはは!」
「がははは!」
「笑ってられるのも今のうちだ。すぐに笑えないようにしてやるからよぉ!」
と言っても俺はそこまでするつもりはなかった。
少し脅せばそれで十分と思っていたからだ。
「おい!てめえ!俺はあの時、てめえを襲ったよなぁ?」
「がはは!覚えているよ」
「じゃあ、何故あの時てめえは逃げた?」
「てめえが追いかけてきたんで逃げざるを得なかったんだ。俺はあの後、酷い目に遭わされたんだぞ!」
「じゃあ、どうして今日はわざわざやってきたんだ?」
「決まってんだろ。俺はこの日を待っていたんだ。このチャンスを逃すわけにはいかねぇ!」
「てめえの復讐ってやつか?」
「そうだ!俺の大事な仲間を殺しやがって、俺は許さないからな」
「ならてめえをぶちのめしてから殺してもいいんだぞ」
「何?」
「俺を殺すんだろ?じゃあ俺とやり合って、俺を殺してみな」
「舐めた口をきいてんじゃねえぞ。てめえは俺を怒らせたんだ。生きて帰れるとは思うなよ」
「やってみろよ。ま、無理だと思うけどな」
「てめぇ……」
「俺はお前の敵だ。だから容赦はしない。お前は今まで人を傷付けたんだ。お前には裁きを受けてもらう」
「俺に指図すんなよ!このゴミが!」
と男は怒鳴ってきたが、俺は動じることはなかった。
「俺にはな、大切な人がいるんだ。だからなぁ、俺はその人のために戦うんだ。お前みたいな奴に俺の人生を壊されてたまるか!」
俺はそう言うと、男を殴り飛ばした。
「がはっ……!」
男は倒れたが、
「俺は……最強だ。てめぇなんかに……」
と、俺の足にしがみついてきた。しかし、俺は足を動かさずにそのまま立っていた。すると、俺の顔に唾が飛んできたのだ。俺は顔を拭いてみると、男は自分の顔についた唾を見て、怒りをあらわにした。
「て、てめぇ!!よくもこの俺様の綺麗な顔を汚しやがって!!もう許さん!許さんからなぁ!!」
と叫び始めたので、さらに腹パンをくらわせると、男はすぐに気絶してしまった。
俺はその後、男の持っていた刀を奪い取ると、男を斬ろうとした。すると男が意識を取り戻したようで、「やめてくれ……」と言い出した。「なら死ぬか?」と言うと、「やめてくれ……。何でもしますから許してください」と言ってきた。
俺は男の髪の毛を掴み上げると、「二度と俺たちに関わるな」と言って男の身体を突き飛ばしたんだ。俺は男をそのままにしておくと、彼女のところへ戻った。
彼女は不安そうな表情をしていたのだが、俺は笑顔を見せながら、「大丈夫だよ」と言って安心させてあげた。彼女は俺の言葉を信じてくれたようで、
「あなたが無事で良かった」
と言ってきた。俺は彼女に微笑むと、彼女は俺の方に近寄ってきて、俺の胸に寄り添ってきた。俺が抱きしめてあげると、彼女は俺の腕の中で静かに泣いていた。俺は彼女を落ち着かせるために頭を撫でたり、背中をさすったりした。
彼女はしばらく俺から離れなかった。
俺は彼女をそっと離すと、彼女は俺にキスしてきた。俺は驚いていたのだが、彼女を見ると、とても幸せそうだったので何も言わずに受け入れることにした。俺たちは互いに抱き締め合っていたんだ。
俺達はしばらくの間、一緒に過ごしたんだ。そして夜になると、彼女は帰ってしまった。
それからは彼女からの連絡を待つ日々が始まった。三日後、神奈川県にある天狗ホルモンの郷から速達が届いた。
「お前の愛する人を預かっている。助けたければ天狗の面を持って一人で来い。警察に喋ったら女を殺す!」
と書かれていた。俺には分かる。これはアンチグループの犯行だ。
薔薇はアンチグループによって誘拐されてしまったようだ。早く薔薇を助けないと! 俺は手紙に書かれた住所へ向かおうとしたが、俺は一人で行くべきなのか迷っていた。もし罠だとしたら危険だ。でも、一人で行かないと薔薇が危ない。俺は一人で行くことを決めた。
俺は薔薇を救うべく一人で向かうことにした。
「絶対に薔薇は救ってみせる」
と、俺は自分に言い聞かせた。
私は薔薇という。私の父は日本人で、母はイギリス人のハーフである。そのため金髪に青い瞳をしている。
私が攫われた先は神奈川県内の山奥だった。そこに連れて行かれると、アンチグループが私を捕まえて閉じ込めると、リーダーの男がやってきた。
「ようこそ。俺達の隠れ家へ」
「貴方達が薔薇ちゃんをさらった犯人ですね?」
「ええ。そうですよ」
と男は余裕そうに言っていたが、彼の後ろには二人の男女がいて、彼らは怯えているように見えた。男はニヤリと笑うと、自分の部下達に薔薇を連れてくるように命じた。
薔薇は無理やり歩かせられると、
「嫌です!放してください!」
「うるせぇ!黙れ!」
と、一人の女性が大声で叫ぶと、もう一人の男性が女性に向かって怒鳴りつけた。女性は涙を流して謝っている。
「ごめんなさい……」
すると男は女性の方へ向かって歩き出すと、男性の顔面を殴る。「ぎゃはは!てめえは黙ってろ!」
と、男性を蹴り飛ばすと、男性は地面に倒れ込むと、
「ぐふぅ……」
と声を出すと、男は笑いながら、
「てめえはそこで寝てろ!さあ、続きをしようか」
と、言って再び女性の方を向く。
「な、何ですか?」
「俺はなぁ、女を痛めつけるの大好きなんだよ」
「ひぃ!?」
「いい悲鳴を聞かせてくれよなぁ」
と、言ってまた男の仲間が一人現れて、男と一緒に歩いていく。「待て!その人は関係ないだろ!」と薔薇が言うと、
「うるせぇ!この女がどうなってもいいのかぁ?」
と、言うと、女性が震え始める。
「やめてください!この人を殺さないでください!」
「それじゃあ、大人しくしていろよ」
と、男は言うと、また別の二人が現れて、女性の腕を掴むと連れて行こうとする。
「やめて……やめてください……」
「うるせぇ!黙ってついてこい!」
と、女性の声が聞こえなくなると、
「お前はこっちだ」
と、男性に言われると、彼は笑みを浮かべながら私の手を引っ張って、
「ほら、ついてきな」
「やめろ!放せ!」
「おとなしくしろ!俺だって好きでこんなことをしているんじゃねぇんだ」
と言って男は、懐からナイフを取り出す。
それをちらつかせながら私を脅してくる。私は抵抗する気をなくしてしまい、彼に引っ張られるままに歩いていった。私はこれから何をされるのだろうと思っていると、洞窟の中へと入っていく。
中は薄暗く、ジメッとしていた。
進んでいくと、広い空間が見えてきて、そこには大きな檻があり、その中には大量の食料が置かれていた。そして、数人の男と数名の女性の姿があった。
男たちが何かを食べていた。すると突然、ナイフで私のスカートを切り裂き始めた。ビリビリ! スカーフも奪われてしまう。下着が露わになってしまう。
私は顔を真っ赤にして手で覆う。
恥ずかしい。どうしてこんなことをするの? と、心の中で思いながらも、涙が溢れそうになる。
だが、泣いてはいけないと思い、必死に堪えていると、男は満足げに言った。
男はニヤつきながら私の身体を眺めている。私はそんな彼に対して怒りを覚えた。
男に触られたりするのも怖かったが、それよりも許せないのがこの男の目的だ。私はこの男を睨んだ。すると、男の顔色が変わり、私の顔に唾を吐いた。男は、
――汚らしいわね!このクズ!この変態! と、罵倒したくなる気持ちを抑えて、怒りを堪える。しかし男は再び私の顔に向けて唾を吐き出す。
すると、男の顔がさらに怒りに染まると、私を蹴飛ばして怒鳴った。
――何が汚いだ?俺の唾が汚いと?ふざけんじゃねぇぞ! と、私の顔を踏みつけて唾を垂らす。さらに男は、私のブラジャーを剥ぎ取り、 胸元に手を当てると、乳首をつねってきた。
私はあまりの痛さに悶絶してしまう。男はそんなこと気にせずさらに強くつねってきた。そしてもう片方の手でお尻を強く叩く。
何度も叩きつけてきたため、身体に痛みを感じ始めてきた。男は興奮してきたようで、さらに激しく叩いたりしてくる。私はもう耐えられない。そう思った時に私はある人物のことを思い出し、彼の名前を叫んだ。
私は彼の名前を叫ぶと、目の前が光に包まれて、気が付けば目の前にあの人がいたんだ。
彼は、
――薔薇! 無事で良かった……
と言って、私を抱き締めてきた。私は思わず泣いてしまった。すると、私の後ろにいた男が襲いかかってきた。しかし、彼は男の顔を殴ると、男を殴り続けた。殴られ続けているうちに男は、
――ゆ、許してくれ!もうしないから!許してください! と言って、許しを求めた。しかし、彼がやめる気配はなく、男が動かなくなった後も、彼を殴り続けていた。
男の顔は血まみれになっている。
彼はやり過ぎたと思って反省したらしく、倒れた男の手から刀を奪い取ると、男の髪を掴んで引きずり出した。
そして、男の身体を思いっきり突き飛ばした。男の身体はそのまま壁に激突し、口から泡を吹き出していた。
すると今度は刀を手に持ち直して男の腹を斬り裂いた。男の身体から血が飛び散り、男の絶叫が響き渡る。私は耳を抑えたが遅かったようで、鼓膜が破れるかと思った。
そして刀を振り下ろすと、男は首を切り落とされた。彼の手に握られていた刀が折れてしまったので、彼は仕方なく持っていた鞘に刀を納めたのだが、それでも男の頭を叩き割って、止めを刺してしまったのだ。そして男の持っていた袋の中に手を入れると、お金が入っていたので回収してから男の所持品を調べた。
すると、男はアンチグループの一味で、仲間に薔薇を連れ去らせるように命令したリーダーのようだった。どうやらリーダーはこの男のようで、他のメンバー達も捕まっていたようだ。
彼の顔には返り血を浴びていて、服にも血が付着している。彼の瞳を見ると瞳孔が開いていた。明らかに正気ではないことが分かる。
彼は私を見つけると、再び抱きしめてくれた。
そして優しくキスしてくれたんだ。嬉しかったけど、まだ彼のことが怖い。すると、彼の手が背中に伸びてきて、私のお尻に触れると撫で回し始めた。
私は慌てて彼から離れると、 ―え!?ちょっと……やめて……! と言ってしまうと、彼は悲しそうな表情をした。そして私に近づいてくると、 ー俺は君を助けただけなんだ。信じて欲しい と、言うと、私を押し倒して馬乗りになると、キスしてこようとした。私は咄嵯のことで対応できずにいたら、彼の腕を誰かが掴むと、彼の動きが止まった。彼の後ろを見ると、先程まで気絶していた男が起き上がっていて、彼に襲い掛かろうとしていた。
私は急いで起き上がると、 ―危ない! と、叫びながら彼を助けようとしたが間に合わず、男はナイフで彼の心臓を突き刺し、そのまま押し倒した。
「ぐふぅ……」
彼はナイフを引き抜くと、ナイフを投げ捨てて、私の方へ近寄ろうとしたが、途中で倒れ込んだ。
私はすぐに駆け寄ると、
「しっかりして!」
と、呼びかけるが返事がない。私は涙を流しながら、
「嫌だよ!死なないで!」
と、言うと、彼は私の手を握ると、こう言った。
「大丈夫だ。安心しろ」
「え?」
と、私が驚いていると、彼の姿が少しずつ変化していった。そして、人間の姿になった。彼の正体は龍だった。
「俺の正体を見たな?」
「え!?どういうこと?」
「今見たことは誰にも話すなよ」
「分かった……」
「あと、俺の名前は白夜だ」
「私は薔薇」
「知っている」
「どうして?」
「君のことをずっと見ていた」
「え!?いつから?」
「最初からだ」
「え?」
「とにかくこのことは内緒だ」
「はい……」
「さて、奴の死体を処理しなくてはな」
「待って!」
「何だ?」
「貴方は一体……」
「俺か?俺は吸血鬼だ」
「ええええええええええええ!?」
「うるさい」
「ごめんなさい……」
「君は俺のものだ」
「え!?」
「俺は君を愛している」
「嘘……」
「本当さ。だから死んでも離さない」
と、言い残し、私の前から姿を消したのであった……。
薔薇は白夜に連れ去られた後の話を聞いていた。その話を聞いた彼女は悲しげになっていた。すると彼女が白夜の話を聞いて、こんなことを言い始めた。
「ねぇ?その男は何者なの?」
「それは僕も知りたいよ」
と、二人が話し合っていると、白夜がやってきた。すると白夜が二人の前に姿を現して、
「さてと、話は終わったかな?じゃあ行こうか」
「どこに行くの?」
「まずは君のお母さんに会いに行こう」
「母さんに会えるの?でもどうやって……」
「そんなの決まっているだろ」
と、言って彼は指を差して、ある方向に向かって歩いていく。その方向には巨大な門があり、そこに女性が一人いた。すると白夜が女性に話しかけた。
「すみません。ここに行きたいのですが、案内してくれますか?」
「はい。いいですよ」
「ありがとうございます」
と言って女性は歩き始める。二人は彼女に付いていきながら歩いていると、彼女は振り返って微笑みながら言ってきた。
「あなた方は恋人ですか?」
と、聞くと、二人は赤面しながら同時に答えた。
「はい!付き合っています!」……と。それを聞いた女性が、
――あら、
「お似合いのカップルですね。羨ましいですわ。私はここの村の村長の妻をしている者で、ミヨと言います。お見知りおきを」
と、自己紹介してきたので、僕たちも挨拶をした。
すると、
「着きましたわ。どうぞお入りください」
と、言われたので中に入ると、村人たちの視線が集まる。すると村人たちが一斉に騒ぎ始めた。
すると一人の男が走ってこちらへ向かってきた。
僕は何か嫌な雰囲気を感じ取ったので、
「薔薇!逃げよう!」……と言うが反応がなかった。よく見ると彼女は目を輝かせていたのだ。すると男が僕らの前に立ち塞がると言った。
「おお~!白夜様ではありませんか?こんなところに何か用事でしょうか?もしやこの娘をお探しに?」
「そうだ。この子の母親に用があるんだがどこにいるんだ?それとこの子はもう僕の彼女だ。勝手に手を出さないでくれ。この子が汚れてしまうだろうが」
「申し訳ありません。つい興奮してしまいまして。この子を母親の元へ連れて行けばよろしいのでしょう?この子の母親は今、自宅で療養しています。ただ最近になって体調を崩していましてね。あまり長くはないかもしれませんが、お急ぎを」
と、男はそう言うと、奥の方へと向かっていった。すると、彼がいきなり僕の目の前から消えた。
――あれ?
「何をしているんですか?早く来てください」
と、彼が呼んだので、ついて行くと、一つの家の前で止まっていた。
男は扉をノックすると、女性の声で、
――誰だい? と、聞かれたので、男は、
――失礼します。
「私は医者でしてね。あなたの体調を見に来たんですよ」
と、言うと、男は部屋に入って行ったので、僕たちもそれに続いて入ると、そこには痩せ細った身体の女性がいたのだ。そして彼女は弱々しい声で言うと、男は彼女を診ると、
「これはもう助かりそうにないですね。このままでは死にますよ。しかし……面白いことがありそうなので、しばらく様子を見ましょうかね。それまで私に任せてください。お代はいりませんので」
と言って、男は外に出て行くと、男について行って外に出た。すると、
「今日は泊まっていってください。明日の朝にまた迎えにきます。では」
と言って去っていったのだ。残された僕らはとりあえず家の中に入ることにした。そして部屋の隅に寝かせると、ベッドに横になった。すると、彼女が僕の服を脱がせてきたのだ。「え!?ちょっと……やめてよ」
と、抵抗するが、彼女の力が強くて引き剥がせない。すると、彼女が突然泣き出してしまった。
「ごめんなさい……」
「え?」
「私のせいで迷惑かけてしまって……」
と、謝ってきたので、「大丈夫だよ。気にしないで。それに君は何も悪くないし、何も心配することはないんだよ。君が元気になることだけを考えてればいいのさ。分かったかい?」
と、言うと、彼女は涙目になりながらうなずいてくれた。そして服を全部脱ぎ出すと、全裸になってしまったのだ。そして、僕の上に跨がってくると、僕の身体を弄くり回してくる。そして僕の身体にキスをし始めたのだ。
「ちょっと!やめてよ!くすぐったいなぁ!」
と、言うと、彼女は笑顔を見せてくれる。どうやら元気が出てきたようだ。すると、彼女はキスしてこようとしたので、慌てて避けると、彼女が不思議そうな顔をしていた。
「どうして逃げるの?」
「え?だってキスは好きな人とするものだよ」
「私は白夜のことが好き。白夜は私のこと嫌い?」
「ええ!?そんなわけないじゃないか。好きに決まってるよ。だからキスしたいんだ」
「そうなんだ!嬉しい!」と、言って僕に抱き着いてくると、キスをして舌を入れ込んできた。そして激しく絡み合うと、お互いの唾液を交換していく。そして息継ぎをしながらキスを続けた。そして満足したのか、口を離すと、銀色の糸を引いていた。そして彼女が口を開くと、
「白夜大好き」
と、言って再びキスをしてくれた。今度は優しくゆっくりとキスをしてくれる。それから何度もキスをすると、お互いに汗まみれになっていることに気付く。すると、僕は自分のシャツとズボンを下着ごと脱ぐと、彼女と向き合った。そして彼女の胸に触れると、柔らかい感触が伝わってきて、揉んでみると、とても気持ちよかった。
「んっ……」
と、
「痛かったかな?」
「違うの……感じちゃって……」恥ずかしそうにしている彼女を見て可愛らしく思えた僕はもっと愛撫を続けるが、なかなか濡れないので、彼女の秘部に指を入れると、すっぽりと入ってしまったので、ゆっくり動かしてみると、彼女は喘いでいたので、
「大丈夫?」
「うん……大丈夫……」
「じゃあ続けるけど」
「お願い……白夜のが欲しいの」
「分かった」と、言うと、避妊具を付けると、正常位で挿入していく。そして根元まで入れると、そのままピストン運動を始めた。
「あっ……あん……」
と、言っているので、さらにスピードを上げていくと、限界を迎えたので、中に出してから抜き取ると、彼女は絶頂を迎えて気絶してしまう。
「え!?やり過ぎた?」と、焦っていると、しばらくしてから起き上がると、
「白夜……凄く良かったよ」
「それはどうも」
「ねぇ?もう一回しよ?」
「え!?」
「いいよね?」
「仕方がないな……」
「やった!」と、喜んでいる姿を見て可愛いなと思ったのだが、ふと思う。
「薔薇って何歳なんだ?」
「17だけど?」
――え!?
「え!?君まだ未成年なの!?」
「だから何?」
「いや……別に……」と、誤魔化すが、本当は動揺しまくっていた。
「ねえ……もういい?」
「え!?」
と、驚いていると、彼女が押し倒してきた。すると彼女は騎乗位の体制になって、腰を動かし始める。
「ちょっと……やめてくれよ……」と、必死に抵抗するが、力が強すぎて逃げられない。「ねぇ?私のこと好きだよね?私の身体だけが目当てじゃないでしょ?」と、聞いてくるので、
「もちろん!君の全てが好きだよ」
「だったら証明してみてよ。私のことが本当に好きなら我慢できるはずでしょ?」
「でも……その……」
と、
「もう!意気地なし!」と、言って無理矢理キスされると、彼女は動き始めた。
「待ってくれよ……」
「待たないよ。私のことが好きで好きでたまらないなら耐えられるはずだよ」
「そんな……無茶苦茶だろ……もう許してくれよ」
「だめ!まだまだこれからだよ」
「もう勘弁してくれ!」
と言って抵抗しているうちに体力がなくなってしまい眠ってしまう。すると彼女は満足そうにして、僕の隣で眠り始める。その寝顔は天使のように美しかった。僕は彼女を見ながら呟いた。
「ごめんな……俺が弱いばかりにお前を守れなくて……俺は必ず強くなるから……もう少しだけ時間をくれ……」と、言ってから彼女を抱き締めた。
次の日になると、昨日の疲れが取れていたので起きると、隣には彼女がいて僕を見つめていた。
「おはよう」
「ああ。おはよう」
「身体は大丈夫?」
「問題ない。それより君はどうなんだ?」
「私?私は大丈夫だよ」
「そうか。安心した」
「ところであの……私たちの関係ってどういう関係なのかな?」
「そうだな……恋人同士?まあ俺は彼女を愛してるし、君が嫌でないのであれば付き合いたいと思っている」
「私は……白夜のこと好き……ずっと一緒にいて欲しいの」
「俺で良ければ喜んで。これからよろしくな」
「こちらこそ。私なんかでよければ」
「いやいや。君が良いんだ」
と言ってキスをする。すると彼女は嬉しそうに笑ってくれた。
すると、男がやって来て、「白夜様。お迎えに上がりました」
「そうか。今行く」
「ではこちらへ」
と、言われてついて行き、車に乗ると、男が話し始めた。
「あなたは白夜様の恋人なのですか?」
「そうだ」
「それならば一つ忠告しておきますが、白夜様はいずれこの国を治めるお方です。そしてこの国はやがて世界の頂点に立つことになるでしょう。その時にあなたは白夜様に尽くせる自信がありますか?もしできないのであれば、今のうちに別れておいた方が身のためですよ」
「何を言っているんだ?僕が彼を支えるさ」
「そうですか。では頑張ってください」
「ああ」と、言うと、男は車を運転して去って行った。そして僕たちは家に帰ることにした。
家に着くと、彼女は僕の服を脱がせてきた。そして全裸になると同時に僕の上に跨がってくると、そのまま腰を下ろして僕のものを呑み込んでいくが、
「うっ……」と、痛みに耐えているような表情をしているので心配になって聞くと、大丈夫だというので行為を再開するが、やはり辛そうなのでやめることにするが、彼女は続けてほしいと言うので仕方なく続けることにした。
「大丈夫かい?」
「うん……続けて」
「分かった」と言って、しばらく続けていると、ようやく慣れたのか、スムーズに動くようになったので、徐々に速度を上げてピストン運動を繰り返していくと、彼女は喘ぎ声を出しながら絶頂を迎える。そして僕のものを引き抜くと、
「白夜……ありがとう」
「どういたしまして」
と、言ってキスすると、彼女のお腹が鳴ったので、昼食を作ることにした。
すると、彼女が僕の服を脱がせてきたので、服を着て料理を始めると、
「手伝うことある?」
「じゃあその野菜切ってくれる?」
「任せて」と言って、トントンとリズムよく切っていくので、包丁の扱いに慣れていることが分かり、関心していた。そして完成したので食べてみる。
「美味しい?」
「うん。とても美味しいよ」
「良かった」
と、言って微笑む姿はとても可愛らしくて、抱きしめると、彼女は頬を赤く染めて照れてしまうので、それがまた可愛いくて、キスをすると、彼女は幸せそうな顔をしていた。
それから二人で洗い物を終えると、
「今日は何しようかな?」
「何かしたいことは?」と、聞かれたので、僕は答えた。
「久しぶりにデートに行かない?」と、提案する。
「え?良いの?嬉しい!」
と、喜んでいたので、早速準備することにした。
「どこに行く?どこか行ってみたい場所とかある?」
「うーん……どこでもいいよ」
「そうか。じゃあ適当にドライブするか」
「分かった」と、返事をした彼女に着替えるように言い、僕はその間に出かける準備をしておく。それから少し待っていると、彼女がやって来たので、車に乗り込むと、出発する。
まずは街に向かうことにして、しばらく走っていると、彼女が質問してきた。
「そういえば……何で日本に来たの?」
「ああ。それはな……実は仕事のことで日本に呼ばれていてね。ちょうど良かったんだ」
「そうなの?どんな仕事をしているの?」
「えっと……その……秘密」
「ええ!?教えてくれたっていいじゃん」
「ダメだ。これは誰にも言うなって言われてるから」
「ケチ」
「すまない」と、謝るが、実際教えるわけにはいかない。だって、殺し屋なんて言ったら嫌われるかもしれないからな。
それからしばらく走って、適当な駐車場を見つけると、そこに停めて外に出る。すると、彼女は僕の腕にしがみついてくる。
「どこに行こうかな?」
「そう言えば近くにショッピングモールがあったな。そこに行ってみよう」
と、言うと、彼女も賛成してくれたので、向かう。
モールの中に入ると、彼女は目を輝かせていた。
「凄い!こんな大きな建物見たことないよ!」
「そうだろう。ここは結構有名だからね」
「ねえ!早く見て回ろうよ!」
「分かった分かった」と、言って彼女を宥めつつ、歩き出す。すると、彼女は色々な店を見て回り、興味を持ったものは何でも手に取って確認していく。そして一通り見終わると、今度はゲームセンターに行きたいというので、そこへ向かう。
中へ入ると、彼女は興奮しながら走り回る。僕はそんな彼女の後を追いかけていくと、彼女はクレーンゲームの前で立ち止まる。そしてガラス越しにぬいぐるみを見つめていた。
「欲しいの?」
「え?いや……別に……」と、言っている割にはかなり欲しがっているように見えたので、お金を入れてやってみることにすると、あっさり取れてしまった。
「はい」と、渡すと、彼女は嬉しそうに抱き締めていた。
「ありがとう」
「どういたしまして。ところで他には?」
「もういいや。十分楽しめたし。それに……そろそろ帰らないと……」と、悲しそうにしているので、頭を撫でてあげると、泣き出してしまった。
「え!?ごめん。そんなに嫌だった?」
「違うの……嬉しくて……」
「え?」
「本当はもっと遊びたかったけど……でも……もうすぐ……会えなくなるから……」
「どういうことだ?」
「私は……もう……長くないから……」
「え!?」と、驚くと、彼女は寂しそうにして、「私……もう限界なんだ……」と、言うので、僕は彼女を強く抱き締めた。
「嫌だよ……僕を置いていかないでくれ……」
「白夜……」
「ずっと一緒にいてくれるんじゃなかったのか?」
「ごめんなさい……」
「頼むよ……僕を捨てないで……」
「無理だよ……」
「なんでだよ……」
「私は……白夜のことが好きだし……白夜のこと愛してる。でも……私がいなくても白夜なら生きていける。だから……私のこと忘れないでほしい。白夜は一人じゃないよ。白夜の周りには多くの人がいるんだから」
「そう……だな……」
と、言って彼女の身体から離れると、
「ありがとう」
と、言ってからキスをしてくる。そして僕たちは最後に食事をしてから家に帰ると、荷物をまとめていく。
そして夕方になると、彼女に声をかけた。
「さあ。時間だ。帰るぞ」
「分かった」
と、返事をすると、車に乗ってから空港へと向かった。車の中では会話はなかったのだが、しばらくして、彼女が口を開いた。
「私ね……白夜に告白された時、嬉しかったんだ」
「そうなんだ」
「それで付き合うことになったから……本当に幸せだったよ」
「そうか」
と、言うと、彼女は窓の外を見ながら呟いた。
「白夜のことは好きだけど……やっぱり私は彼のことが好きなんだよね」
「彼?」
「うん。私の恋人の……ね」
「恋人って……」
「私……ずっと白夜のことを見ていたんだよ?白夜のことずっと好きだったんだ」
「そうか……」
「私……死ぬ前に彼に会いたいんだ。会って……白夜が大好きだって伝えないと……後悔したくないの」
「そうだな。会えるといいな」
「うん。白夜のおかげで私はこうして生きられているんだもん。ありがとう」
「そうか」と、答えると、彼女は笑っていた。そして、空港に着くと、車から降りて、車を見送った。それから飛行機に乗り込むと、席に座り、出発を待つ。それから時間が経つとアナウンスが入り、搭乗が始まったので乗り込むと、座席に座ってベルトを付ける。すると、彼女が隣に座ったので、話しかけることにした。
それから数時間後、僕は夢を見ていた。それは彼女と過ごした幸せな日々の夢。しかし、それも終わりを告げる。なぜなら……僕の乗った機体が空中で爆発したからだ。
そして僕の意識は遠退いて行った。
それからしばらくして目が覚めると、僕は病室の中にいた。医者によると僕の乗っていた機体は墜落はしたものの、幸いにも命だけは助かったらしい。だが、しばらくは入院しなければならないらしく、仕方なく受け入れることにした。それから数日が経過してようやく退院できるまで回復したので病院を出ることにした。
家に着くと、部屋に戻ってソファーの上に寝転がる。そしてふと思ったことがあったので口に出した。「あの子は元気にやってるかな……」と、言うと、なぜか急に涙が出てきた。理由は分からないが、なぜなのかは理解できた。そう。僕は彼女に一目惚れをしていたのだ。今更気付いたところで遅いというのに……。それでも、もし願いが叶うならばもう一度会いたいと心の底から思った。
あれからしばらく経過したある日のこと。僕の部屋に誰かが入ってきたような気がしたので起き上がると、そこには女の子がいた。
その容姿を見た瞬間、僕はすぐに思い出すことができた。間違いない。この子こそ僕の初恋の相手なのだと。その証拠に彼女は僕の顔をじっと見つめているので聞いてみた。
「君は……もしかして……」と、言うと、彼女は泣きながら答えてくれた。
「うん。久しぶり……白夜」
「あぁ……君にまた会えて嬉しいよ」
「うん。私も……あなたが無事で良かった」
「ありがとう」
「ねえ……キス……してくれる?」
「ああ」と、言ってから軽く触れるだけのキスをすると、彼女は涙を流して喜んでくれたので、僕は抱きしめると、彼女は僕の名前を呼んだ。
「白夜……」と、呼ぶのを聞いてからキスをすると、舌を入れてきたのでそれを受け入れると、激しく絡めてお互いに興奮してしまう。それからしばらくの間お互いの唇を貪り合い、それから少し離れると、僕は彼女に向かって囁いた。
「愛してるよ。薔薇」
「うん。知ってるよ」
「そうだったな」
と、言って再びキスをして、その後、二人で仲良くベッドで横になる。そして手を繋ぎながら話し始めた。
「白夜……どうして日本に?」
「実は……仕事の関係で日本に来たんだ」
「そうなの?ちなみに……どんな仕事をしているの?」
「まあ……人を殺す仕事かな」
「そっか……じゃあその仕事が終わったら……どこかに行ってしまうの?」
「いや……多分ずっとここにいると思うよ」
「本当?」
「ああ」
「嬉しい」と言ってから彼女は僕に抱きつくと、そのまま眠ってしまったので頭を撫でてから僕もまた眠りについた。
翌日。目を覚ますと彼女は既にいなくなっていた。
「帰ったのか……」と、呟くと、寂しさを感じたが、仕事があるので支度を始めた。
仕事は簡単に終わったので後は報告をするだけだったので連絡を入れると、しばらく待つように言われたので待っていると、電話がかかってきたので出ると、上司からだった。
「もしもし。何かありましたか?」
「それがな……君宛に依頼があった。詳しい内容はメールで送るから確認してくれ」
「分かりました」
「では、よろしく頼むぞ」と、言ってから切られたので、早速メールを確認すると、ある住所が表示されていた。
「なんだこれ?」と思いながらもそこに向かうことにして車を走らせる。しばらくするとその場所に到着したので車から降りると、目の前には廃墟となったビルがあったので不思議に思いつつも中に入ると、階段を見つけるのでそこを上っていく。
「一体どこにあるんだ?」と、呟きつつ上って行くと、屋上へと到着したので辺りを見回すと、そこに一人の女性が立っていた。僕は思わず声をかけようとしたが、それよりも先に彼女が振り向いた。
「こんにちわ。あなたが白夜さんですね?」
「え?はい。そうですけど……」
「そうですかそうですか……あなたのことは調べさせていただきましたよ。随分酷いことをなさっているようですね」
「え?いや……そんなことは……」
「別に構いませんよ?私だってそういう過去を持っていますし……」
「そう……なんですか?」
「はい。私の両親は借金を残して死んでしまいましてね。それ以来私はずっと親戚のところでお世話になっていたんですよ。そこでの扱いが酷くて……だから殺したんです。それで今はこうして一人で暮らしているわけですよ」
「なっ!?」
「どうしました?」
「いや……」
「そんなことより……私のお願いを聞いてくれる気になりましたか?」
「え?」
「私の両親を殺したやつを殺してください。そしてお金を貰うだけでいいので」
「な!?なんで俺がそんなことを……」
「そんなの……私と同じ思いを他の人にさせないためですよ。私みたいな人を作りたくないから殺すんでしょう?」
「そうだけど……でも俺はそんな奴らは許せないんだ!」
「そうですか……なら仕方ありませんね」
と、言うと、彼女は懐から銃を取り出した。「な!?」
「さよなら」
と、言うと、彼女は引き金を引いた。しかし、銃弾は僕に届くことはなかった。何故なら僕は咄嵯の判断で彼女を庇ったからだ。
「ぐふぅ……」
「なんで……私なんかのために……」
「だって……君のことが好きだから……」
「白夜……」
「それに……約束したからな……ずっと一緒にいるって……」
「そう……だね……」と、言いながら泣き出すのを見てから、「大丈夫だよ……」と、微笑みかけると、彼女は僕の名前を呼んできた。
「白夜……」と、呼ばれたので、返事をしてからキスをすると、彼女は僕を強く抱き締めてきた。そして僕たちは互いに愛し合った。それからしばらくして落ち着いたので、彼女から離れようとすると、彼女は僕を離そうとしなかった。「どうした?」
「もう……私を置いていかないで……」
「分かったよ。いつまでも一緒だ」
「うん」と、言うと、彼女から離れて、僕は手を差し伸べると、彼女は僕の手に掴まったので、引っ張って起こすと、彼女に言った。「これからは一緒に暮らそう」
「うん」
「まずは……そうだな……引っ越しの準備をしないといけないな」
「私はいつでも行けるよ」
「そうか。なら今から行こうか」
「うん」
「さあ。行こう」
と、言うと、彼女を連れて外に出ると、彼女の車に乗って荷物を積み込んでから車に乗り込む。それから出発すると、途中で高速道路に入るのでそのまま走らせていく。それからしばらくして高速から降りてからは一般道を走り、それからしばらくして新居に到着すると、荷物を下ろすと家に入り込んだ。部屋に入ってすぐは彼女が落ち着くまで待ってあげることにしたのだが、なかなか来ないので心配になってきて見に行くと、そこには泣いている彼女とそれを慰めている女性の姿があった。
その女性は僕の母親で名前は黒江美鈴という。母は昔はとても美人だったらしいが、今はかなり年を取っているものの今でも綺麗だと思える容姿をしている。母曰く、若い頃の写真を見せてもらったことがあるのだが、その時の母を見た時、僕は心を奪われた。それからというもの僕は母のようになりたいと憧れるようになり、今ではこうして恋人がいるほどにまで成長したのだ。
そして僕は彼女に話しかけることにした。
「ほら。泣かないで」と、言うと、彼女は泣きながら僕の方へやってきたので抱きしめてあげると、彼女は泣き止むどころかさらに激しく泣き始めたので困ってしまう。
すると、後ろから誰かに肩を叩かれたので振り返ると、そこには母がいて、僕は安心して母に話しかけることにした。
「おかえりなさい。お母さん」
「ただいま。白夜。それと、あなたが白夜のお嫁さんの薔薇ちゃん?」
「はい。初めまして。白夜の妻になる予定の桜沢薔薇といいます」
「あら。礼儀正しい子じゃないの。こんな可愛い子がお嫁さんに来てくれて良かったわね。白夜」
「ああ。ありがとう」
「ところで、どうして薔薇ちゃんは泣いていたの?」
「実は……両親が殺されて、身寄りがなくなったので、白夜と一緒に暮らすことにしたんです。だから……ごめんなさい」
「気にしないで。それより、白夜。あんたがしっかりしないと駄目でしょ?薔薇ちゃんを守っていくんじゃなかったの?」
「もちろん守るよ」
「ならよし!ところで……二人ともいつ結婚するの?」
「それは……」
「明日」
「ちょっ!?」
「何よ。文句でもあるの?」
「いや……その……」
「ふーん。じゃあ……私と白夜が付き合ってもいいの?」
「そ、それは……」
「ねえ。どっちを選ぶの?」
「僕は……」
「白夜は……私がいいよね?」
「え?いや……」
「白夜。まさかあなた……」
「そ、そんなことないよ……」
「そうなんだ……私は別にそれでも構わないけど……」
「うっ……」
と、言っていると、僕は突然キスされた。しかもディープなやつで……。それのせいで思考能力が落ちてしまったので、そのままベッドに連れ込まれると、薔薇は服を脱ぎ捨ててから僕を誘うように誘惑してきた。そして僕はそれに負けてしまい、ついに一線を越えてしまうことになる。だが、それが薔薇にとっても嬉しかったらしくて、とても幸せそうな表情をしていたので良かった。その後、薔薇とは朝までたっぷり可愛がってあげた。そして二人で仲良く寝ると、目を覚ました薔薇におはようのキスをしてあげると喜んでくれたので嬉しい。それからしばらくすると母から朝食ができたことを知らされたので薔薇の手を引いて向かうと、そこには既に父も座っていたので挨拶をする。そして全員揃ってから食事を始める。
食事をしていると、父が話し始めた。
父は見た目こそは怖いイメージがあるのだが、実際には優しく温厚な性格をしており、仕事に関してもかなり真面目にこなしてくれるため、社員からの人望もあるほどの優秀な人物で、仕事で忙しいはずなのに僕たち家族の為に時間を作ってくれる良い父親である。そんな父と母の出会いは、父が母に一目惚れしたからだそうで、そこから交際に発展していき、結婚に至る。そのため、両親はラブラブでいつも一緒に居る。
そんな二人の馴れ初めは母が父の働いている会社で仕事を教えてもらっている時に二人は出会うことになった。最初はお互い気づいていなかったが、次第に惹かれ合い、ついには結ばれることになったのだという。ちなみに、この話を聞いたのは父ではなく、母からで、そのことを自慢げに話してくれたものだから、僕も聞いていて恥ずかしくなってしまった。
それからというもの両親は僕に対して、まるで自分達の子供のように接してくれるようになった。そんな両親を見て僕は幸せな気分に浸るようになっていた。
「ところで……お前たちに一つ提案したいことがある」と、言うと、二人が不思議そうにこちらを見てきたので、僕は説明することにした。
「えっと……なんだ?」
「あのな……俺たちに孫の顔を見せてくれないか?」
「え?」
「ええ!?」
「まあまあ……お父さんったら気が早いわね」
「そうか?」
「ええ……まだ学生なんだから、そういうのはまだ先でいいんじゃない?」と、言うと、「それもそうだな」と、納得していた。
「でも……僕は……」と、言いかけたところで、薔薇が僕の手を握ると、真剣な眼差しで見つめてきてから口を開いた。
薔薇は、自分が両親のことを好きかどうか分からないと悩んでいたので、いつかは両親に打ち明けるつもりではあったのだが、まさか先に知られることになるなんて思いもしなかった。でも……これはチャンスだ。そう思った僕は、覚悟を決めてから告白しようとしたのだが、それを察したのかは定かではないが、先程までの雰囲気を消し去ると、僕と薔薇の仲を応援してくれていた。そのことで少しだけ拍子抜けした感じがしたものの、気を取り直して薔薇の手を引いて部屋を出た後で振り返ると、薔薇の父に一礼してから部屋を出た。……そして今に至るという訳なのだけれど、やはり僕はこの家族に対して申し訳ない気持ちがあると同時に、とても感謝している。だからこそ、今日という日を大切にしようと心に決めたのである。それから暫くの間は何もないまま時間が経過していったのだが、不意に何かを思い付いたかのように薔薇が立ち上がってから部屋の隅に置いてある紙袋を手にすると、こちらに戻って来てソファーの上に置くなり中を開いていた。
僕が覗き込んでみるとそこには様々な衣服が詰め込まれており、中には見たことがないデザインの服もあって、何だか見ているだけで楽しい気分になれたのだけれど、どうやらこれを全て着てみてくれないかというお願いだったので素直に従うことにした。最初はメイド服を着せられてから次に執事姿になり、そこからまた普段着とドレス姿に変化して、最後にタキシード姿になっていた。流石にここまでくるとかなり体力を奪われてしまうのだが、薔薇はとても嬉しそうな表情を浮かべていたので満足してくれたんだと思いながら着替えを終えると、今度は逆に薔薇に服を着替えてもらうことになり、僕はそれが終わるとそのままベッドの上で仰向けになって休んでいた。しかし、僕の胸のあたりには先程と同じように薔薇は座っていて、僕をじっと見つめているので、ちょっと気まずい気分になってしまう。
でもまあ、いいか。薔薇がそこにいてくれるだけで幸せだ。僕は庭で薔薇は花。咲いてくれるだけでうれしい。
おわり。
作者あとがき。お読み
いただきありがとうございます。今回の作品はいかがだったでしょうか?楽しんでいただけたら幸いです。
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