2022-08-13 06:49:55 更新

概要

謎の大仏がポリコレで世界を侵略しようとしている。人々はピンカートン岬を世俗の砦にしたが破れた。それから数年。新米少女尼僧が修行をしているとまたもや謎の大仏が降臨してこんなことをいうのだ。「髪を伸ばしてギャルになりませんか?」。何言ってんだこいつ。


「偽善を清めよ、善を穢せよ」。

キューブリックとさか大仏が華麗にワンツーフィニッシュを決めた日、ピンカートン岬は恐怖の闇に包まれた。

何しろ降臨の意図が不明瞭なのだ。

ローマ教皇庁は使者を派遣したが説教攻めの手洗い歓迎を受け聖職者は憤死した。

そして仏教界の最高指導者が直接対談を申し込んだが悶死した。

そうこうしているうちに地球は調伏の嵐に見舞われピンカートン岬は人類最後の世俗として空しい最期を迎えようとしていた。


H. タイの偉大な禅宗学者であるH. ajnawatは、ピンカートン岬は、人々が家から一歩も出ずに瞑想できる地球上で唯一の場所であったと述べている。

このような瞑想を行う仏教の僧院は、世界でも他になかったのである。

ケープ・ピンカートンの僧正が最後に入ったと言われている。

他の僧侶は入室できなかったか、入室できなかったのだ。

最後の瞑想のとき、僧侶の頭は死ぬほど激しい痛みを感じたという。

彼は眠ったまま死に、残りの僧侶は密かに埋葬された。


それからの数カ月、人々は世俗の生活を捨て、聖なるものを求めた。

彼らは、昼は祈りに、夜は瞑想に明け暮れることになる。

そして、それは日本でも同じように行われることになる。




20世紀と現代の宗教では、その宗教が持つ美意識と信仰心の違いが複雑に絡み合い、宗教は美意識の問題にも干渉してきていた。

それは、彼らの「美」という宗教的思想に由来する、神秘主義的な観念や神秘主義を、その教義や規範を無視した宗教の精神であるとして批判してもおかしくない類いのものであった。

そしてここ40年でそうすべてが解決しそうにないのは明らかであった。


現代の宗教ではどのみち宗教は、美という精神においては正しいと言えない宗教で、日本ではこの「美」というものが、そうした美意識に影響を及ぼしているという。

しかし宗教においては、思想や思想信条、宗教観といったものは、この「美」を理解し、それに従うことで、その思想や思想信条が変えられるのだ。

そのため現在でも、現在の宗教が世界から無視されているのは、そうした日本人の方舟として受け入れられるために過ぎないのだが、日本人の心の奥に眠る、美意識や美的精神への干渉を受け入れるという道を歩みたがるものが出てきている。

そして我々が、この日本人の「美意識への取り入れ方」への干渉を恐れるように、日本人という民族が、宇宙の法則の解釈権と関連したものの、美意識が日本人の精神を、その影響下に置いたという事実だけを否定するわけには、ならないのだ。


世界の人口が世界人口を遥か超えると日本人が、「美意識」という行為の中にある美意識の問題に巻き込まれることになる。

そういうことも「美意識原理」という用語や、宗教思想も存在する。

ただし美意識の問題というのは、単に問題を把握していない人間が関わっているだけでなく、その宗教的理論にもとづく宗教原理で説明できる問題であり、それを理解せずに問題として捉えるべきではないのである。


人間が宗教というものを感じるのは、宗教を信じることから始まる。

人間は宗教の影響下にあり、それが教義である一方で宗教は思想である。

ならば宗教を教えない時点で宗教とは無関係で、ただただ宗教に対して疑問を持つばかりの人間が、その宗教に疑問を持っても、宗教を理解しようとしなければ宗教と同じであり、宗教とは無関係の人間が正しく理解することなどできないのである。


宗教が無闇に人を混乱させるのであれば、人間は宗教を信じることで、ある程度混乱するだろう。

それは仕方がない。

そもそも宗教は、物事の理解を促す行為であることが、宗教ですらない。

宗教とは宗教の中にこそ存在し、それは人間の内的側面で、人間の内面であるべき。

だがそれを外的に、宗教に持ち込めるかというと、それはできないのである。


宗教は精神を持っているのだから、宗教とは精神であり、人間の精神の側面であるのは当然と言えた。

このことを、私は認識している。


ただ、宗教に対して疑問を持たなければならない理由は様々にあった。

一つ目が「宗教というものが人を混乱させる」という事実があること。

宗教というものは、宗教的な内容の中から生まれるものであり、宗教というものが、精神を持っていようとしていようと、関係ないのである。

言うまでもなく、宗教は「精神」であるので宗教は精神である。

宗教とは神であり、神とは精神を持っていて、神という名ではあっても、宗教には魂である。

このことを理解すると、人間は宗教というものに恐怖を覚えるのだが、人間はそれでも宗教を信じていたので、宗教を理解しないことによって、宗教への恐怖がなくなったのであった。


宗教に嫌悪感を抱いた者は、宗教を無視してしまうのが定めだから、宗教を信仰することが恐怖の種になり、恐怖によって精神が病んでしまうのだ。

ただ、人間が恐怖を感じるのは宗教に関係した理由があるからであって、その宗教に対する恐怖は宗教の本質的な部分ではない。

そして宗教は人間を堕落させ、宗教に溺れさせたとしても、宗教は宗教に他ならず、宗教は宗教そのものなのである。

つまり宗教は宗教以外の何物でもない。

宗教を信じるということは、己を滅し、律する事なのだ。


時に新元号 調伏二年。

新チベット。

剃髪したての少女尼僧アーナンダは水垢離を終え、濡れた素肌に褌と作務衣を付けた。

「波阿弥陀」

アーナンダはキューブリックとさか大仏に朝の礼拝をして勉強堂に入った。

今日も厳しい学問の修業が待っている。

アーナンダは毎日毎日、勉学に励み、朝は四時から五時の間起き出して、朝食前に修行を行い、夕食後は夜の十時まで瞑想と学習に費やしていた。

彼女は自分のことを「お寺の子」だと思っていた。

しかしそれは違う。

彼女の家は代々僧侶の家系で、彼女もまた僧侶になる運命を背負っている。

「仏陀は悟りを得たあと、出家して仏道修行を始めたのです」と彼女は言った。

「でもそれは悟ったからではありません。

彼はまだ仏になったわけではない。

彼はその生涯を、僧侶として過ごした。

彼は、仏教の戒律を守ること、仏教の教えに従って生きることが、僧侶としての正しい生き方であると知っていた。

彼は僧侶として生き、そして死んだ。

その死を迎えるときに彼は僧侶として生きた自分を誇りに思ったでしょう」

アーナンダは経典を閉じ、目を瞑った。

「あなたが今、ここにいることを、わたしは嬉しく思います。

なぜなら、あなたの苦しみや悲しみは、仏教の尊い教えから生まれたものだから」

「そうです」と少女は呟いた。

「なぜ、あなたが苦しんでいるのか、その答えがわかるように」とアーナンダは祈って、微笑んだ。

「さあ、もうすぐ食事の時間ですよ」

アーナンダは立ち上がった。

「はい」

「わたしたちは皆、平等である。

この世に生まれた瞬間は誰もが同じで、生まれた国や時代が違うだけで差別されるようなことはあってはならない」

「そうですね」

とアーナンダは笑った。

アーナンダは食堂に向かった。

その途中で、一人の若い男とすれ違った。

男はアーナンダを見つめていた。

アーナンダはその視線に気づいて振り返ったが、男は立ち止まっていた。

しかし男が口を開くことはなかった。

その目は冷たく光り、その顔は無表情だった。

アーナンダはまた歩き出した。

しかし男はずっと後ろについてきた。

やがて男の足音が聞こえなくなった。

しかし彼女は気づかなかった。

彼女が振り向くことはなかったからだ。

そうして、振り返ると言語道断な姿をした女らしき人物が立っていた。

腰まである有髪にけばけばしい化粧。

半袖に胸元の開いた上着。

そして腰部が見えそうな短袴を穿いている。

「お前は不浄の妖狐か。

わたしを惑わしに来たのか?」

アーナンダは身構えた。

汚らわしい妖怪変化など恐るるに足りぬ。

心を虚にして一心不乱に釈迦牟尼の教えを唱えれば世に怖いものなし。

アーナンダは気持ちを静め読経に集中した。

だが…。

「ちーす。

あたしは女子高生のヒバリ。

きゃぴぴゃぴギャルだよ☆」

その言葉にアーナンダは我を忘れた。

ヒバリと名乗ったその女は突然、アーナンダに抱きついてきた。

そしてアーナンダの耳元で囁いた。

その声に、その吐息にアーナンダは全身を震わせた。

そして彼女は意識を失った。

ヒバリはアーナンダを抱きかかえて、部屋に戻った。

ヒバリがベッドの上に寝かせたとき、アーナンダはすでに意識を取り戻していた。

ヒバリが顔を覗き込むと、アーナンダは怯えていた。

「大丈夫。

安心して。

あたしは何もしない」

「わ……わた……しをどうするんですか」

「ううん。

何もしないよ。

あんたが勝手に失神しただけだし。

そんなことより」

「ひぃ!」

「ちょっと触らせてね」

ヒバリは木魚を撫でた。

命より大事なアーナンダの法具である。

「何をする!?」

「偽善を清めよ、善を穢せよ」

ヒバリは制止を振り切り木魚を磨き続けた。

「神をも恐れぬ痴れ者め!」

アーナンダはありったけの読経を放ったがヒバリはビクともしない。

それどころか自分はキューブリックとさか大仏の使いだという。

アーナンダを何が何でも還俗させ、かわゆいギャルにする密命を帯びているという。

「嫌だ。

死んでも嫌だ」


「そんなこと言うなら」とヒバリは再び木魚の頭に手をやった。

「やめてぇ!!」とアーナンダは叫んだがヒバリの手は止まることがない。

「アーナンダさん、あんたは何のために出家した? こんなくだらないことのためじゃないでしょ。

さっさとお経を読む。

唱えな」

アーナンダは涙を流しながら般若心経を読んだ。

「もっと早く読む!遅すぎ!!はい、次、南無妙法蓮華経」

「む、みょうほうれんげきょう」


「はい、次はお題目」

「えだいめいもんぐぅ!」

ヒバリがアーナンダにお題目の書き方を教えている頃、僧院の外では僧侶たちが大騒ぎをしていた。

「お嬢様がお坊様に攫われたぞ」


「大変だぁ。

助けなければ」

「あの悪しき妖怪は一体なんだ」

「きっと山から降りて来た化け物にちがいない」

僧侶たちは棒を持ち出し、僧院を取り囲むように布陣した。

そして一斉に打ちかかった。

そのとき、ヒバリが窓から姿を現し、

「やめたまえ。

この方は釈迦如来のお導きにより、成仏なさろうとしているのだ。

君たちに危害を加えるつもりはない。

そこをどいてくれたまえ」

僧侶の一人が尋ねた。

「いったい誰ですかあなたは」

「私は僧侶である。

名乗るほどのものでもない」

その僧侶が言うには、あの妖怪がお寺を乗っとろうとしているに違いない。

退治しなければならぬ。

だが、その僧侶がヒバリに近寄ろうとしたとき、ヒバリの体に変化が生じた。

その姿は徐々に巨大化し、その背には黒い翼が生え、頭部には角が生えた。

そして尻尾まで現れてしまった。

僧侶たちは恐怖で逃げ出した。

その頃、アーナンダは、ヒバリにお尻をつねられながら読経を繰り返していた。

すると、そこに一人の青年が現れた。

その青年を見た僧侶は驚きの声をあげた。

青年の姿は異様であった。

袈裟を着けず頭巾も被らず裸である。

肌の色は白く透き通っていて瞳の色も白い。

顔つきはとても美しく、長い髪を後ろで結んでいた。

その手には錫杖を持っている。

そして、その腰帯には数珠があった。

しかし彼が着ているのは布切れ一枚だけであるから僧侶でないことは明らかだった。

青年はその美しい顔立ちを歪ませ、口を開いた。

それはまさに地獄からの使者とでもいうべき禍々しい響きを宿していた。

「お前は、何者だ?」

「あたしは僧侶です」

「僧侶は人ではない。

ましてや女でもない。

僧侶を名乗るものは悪魔の化身。

お前は僧侶ではない」

「じゃあ、なんなの?」

「我は仏に仕える身なり」

「あ、そ」

「お前は釈迦如来の聖なる御力を盗んだ不届き者である。

この世から消え失せろ」

「あ、ごめん。

あんたバカだよね」

「なに?」

「お・ん・な、だよ」

「女?」

「だから、あたしは、女の子なんだよ」

「……」

「わかってくれた?」

「わかった」

「よかった」

「お主は女である」

「そうそう。

女でーす」

「お主は男である」


『もうその辺で赦してやれ!』

どよん、と白煙があがるとキューブリックとさか大仏が降臨していた。

「ああ、キューブリックさま。

お会いできて光栄に存じます」と僧侶は恭しく頭を下げた。

そして、キューブリックとさか大仏は僧侶に説教をした。

「僧侶であるからといって男とは限らぬ。

女であっても僧侶になれるのである。

男を女にすることも僧侶であれば容易いこと」

「左様でございます」

「ならば、なぜその女子を僧侶にした?」

「はあ、実はその、わたくしは、その、あ、その、申し訳ありません」

「もうよい。

言いたくないのであろう。

察してやろう。

それより……」

「はい?」

「お前たち、ここで何をしてる?」

「あ、いや、その」

「さあ、正直に申すがいい」

「はい。

その、実は、この者は、その、その、あ」

僧侶たちは逃げ出そうとしたが、時すでに遅く、キューブリックとさか大仏は彼らを捕まえて、その身体に木魚を押し当てた。

そして、彼らの頭にお経を書き込んだ。

そうこうしているうちに、ヒバリはアーナンダに読経の仕方を教えた。

アーナンダは言われた通りに繰り返した。

ヒバリは、アーナンダに、お経を暗唱するように言った。

アーナンダは何度も繰り返すうち、次第に意識が遠のいて行った。

そしてついに、意識を取り戻したそこは新宿アルタ前であった。

アーナンダとヒバリはバリキャリなJKに転生していた!そして、二人はカメラ小僧に取り囲まれていた。

どうやら彼らはヒバリをアイドルとして売り出すつもりらしい。

アーナンダは嫌々ながらも協力することにした。

こうしてアーナンダは一躍有名人となったのである。

そしてヒバリはアーナンダに付きまとうようになった。

やがて、ヒバリの熱意に負け、

「わかったよ。

一緒にモデルになるよ」

とアーナンダは観念した。

しかし、ヒバリはアーナンダの読経を真似ただけなので、お経のことはなにも知らないのである。

そこでアーナンダはお経を教えることにした。

「いいかい。

お経っていうのはね。

ただ覚えればいいってもんじゃないよ。

まずね、リズムに気をつけること」

「はい」

「お経を読むときは、一定のリズムを崩しちゃダメだよ」

「はい」

「でね、最初は難しいと思うけど、必ず心を込めてお経を唱えること。

心を込めることで、その人の魂にお経が刻まれるのよ。

わかった?」

「わかりました」

こうしてアーナンダの厳しい指導が始まった。

そしてヒバリもお経を覚えたところで、二人揃って撮影に臨んだ。

「こんにちは。

よろしくお願いします」

ヒバリは持ち前の明るさで、カメラマンを虜にし、順調に撮影は進んだ。

アーナンダも精一杯、頑張ることにした。

「お疲れ様でした」

撮影が終わり、二人は帰途についた。

「ヒバリちゃん、お疲れ」

アーナンダはヒバリに優しく声をかけた。

ヒバリは照れくさそうな表情を浮かべた。

アーナンダはそんなヒバリを見て、思わず抱きしめたくなったが、ここはぐっと我慢した。

ヒバリはアーナンダの手を握りしめ、微笑みかけた。

アーナンダはヒバリの頭を撫でた。

二人の絆はますます深まったのである。

しかし、アーナンダは知らなかった。

ヒバリが、ヒバリであることを。

そして、それは敬虔な少女尼僧を惑わずための巧妙な罠であった。

そう、ヒバリはヒバリ。

俗欲の化身だったのだ。

「偽善を清めよ、善を穢せよ」。

キューブリックとさか大仏が忠告を繰り返す。

そこへ軽機関銃で武装した特殊部隊が到着した。

「こちらアルファ。

ヒバリを発見しました」「ベータ了解。

何としてもアーナンダを守り切れ」「了解。

ピンカートン岬防衛軍の名に懸けて」僧侶たちは自動小銃を構え、ヒバリに狙いを定めた。

ヒバリはその気配を感じ取った。

ヒバリは僧侶たちの方を向いた。

僧侶たちは、一斉にヒバリに向けて発砲を始めた。

そのとき、ヒバリの体が眩く輝き始めた!そしてヒバリは、天に向かって叫んだ。

ヒバリの体は光に包まれ、その姿は次第に巨大化していった。

そしてヒバリの背中には黒い翼が生え、頭部には角が生えた。

そして尻尾まで現れてしまった。

そしてヒバリは僧侶たちに向き直った。

僧侶たちは恐怖で逃げ出した。

その頃、僧侶たちは、機関銃を僧侶の一人に向けた。

僧侶が叫ぶ。

その叫びに呼応し、僧侶たちは一斉に引き金を引いた。

僧侶たちは僧侶一人に対して十発以上の銃弾を撃ち込んだが、その僧侶は何事もなかったかのように歩き続けた。

僧侶たちは恐怖に駆られ逃げ出した。

その僧侶たちを逃さず、ヒバリは容赦なく僧侶たちを虐殺した。

しかし僧侶の死体からは血が出なかった。

なぜなら僧侶の血はすべて抜かれており死体はミイラになっていたからだ。

僧侶たちを倒した後、ヒバリは再び光を放ち、元の姿に戻った。

しかし、その体には無数の傷跡があり、顔は醜い老婆の顔となっていた。

ヒバリは泣きながら、ヒバリの名を呼んだ。

ヒバリは、自分がヒバリであることを忘れてしまっていたのだ。

ヒバリはキューブリックとさか大仏に助けを求めた。

「助けてください。

あたしはヒバリです。

どうか、ヒバリを助けて下さい」

ヒバリは必死で訴えた。

「わかった。

お前はヒバリだ」

「ありがとうございます」

「お前はヒバリだ」

「え?あ、はい」

「お前はヒバリだ」

「は?」

「お前はヒバリだ」

「あの、どういう意味ですか?」

「お前はヒバリだ」

「ちょっと待ってください!」

「お前はヒバリだ」

「あの」

「偽善を清めよ、善を穢せよ」「はあ?」

「偽善を清めよ、善を穢せよ」

「ちょっ」

「偽善を清めよ、善を穢せよ」

「あの、聞いてます?」

「偽善を清めよ、善を穢せよ。

この言葉の意味を今一度嚙み締めよ、さすれば汝、煩悩から解放されるなり」「だから、その、あの」

「煩悩に惑う者はこの世界に存在する資格はない。

お前の行いを悔やむがよい」

「……」

「どうした?」

「……」

「お前の業の深さを呪うが良い」

「……」

「おい」

ヒバリは白骨化していた。

「あー、やっちゃった」

キューブリックとさか大仏は頭を抱えた。

僧侶たちは逃げ延びた。

僧侶たちは、東京から脱出しようとした。

だが、すでに東京では僧侶たちが溢れ返っていた。

そして、その誰もが僧侶だった。

僧侶たちは互いに殺し合い、その屍を積み上げて行った。

そして僧侶は僧侶を殺し続け、僧侶たちは僧侶を殺しても罪悪感を感じることはなかった。

僧侶の本能がそうさせたのである。

僧侶たちは、まるでゾンビのように生き続けていた。

僧侶以外の人間は次々と死んで行った。

こうして僧侶だけが生き残る世界が出来上がった。

しかし僧侶は僧侶を殺すことがなくなった。

なぜならば、僧侶同士では殺せないからである。

そして僧侶の魂は肉体から離れ、僧侶となった。

やがて僧侶の魂は、その数を増やしていった。

すると僧侶は死ななくなり、新たな生命が誕生した。

僧侶は僧侶を生んでいった。

こうして僧侶と僧侶の交わりによって生まれた子供は、僧侶となった。

こうして僧侶と僧侶の交わりは繰り返され、僧侶の魂は僧侶の魂を生み出し、僧侶の魂は僧侶の魂を生み出した。

僧侶は僧侶を生むようになり、僧侶の数が無限に増えていくと、やがて僧侶の魂は僧侶の魂を生み続けるようになった。

こうして僧侶の魂が、無限に増殖し続けているうちに、その魂は自我を獲得し、意識を持った。

その意識とは、すなわち我である。

僧侶たちは、己の中にいる己自身と闘い始めた。

僧侶たちは戦いに明け暮れた。

そして、ついに最後の一人になったとき、僧侶たちは手を取り合った。

僧侶たちは互いの存在を認め、受け入れた。

そして僧侶たちは融合し、一つの生命体として進化した。

その瞬間、我は消え去った。

そして、我は新たなる力を手に入れた。

それは愛であった。

僧侶たちは愛の力で、宇宙を創り出した。

そして、その中心に地球が生まれた。

そして地球の上に人類が現れた。

人類は文明を築き、そして宗教が興った。

人類はやがて争いを始めた。

そして戦争が勃発した。

その結果、多くの命が失われた。

僧侶は嘆き悲しんでいたが、どうすることもできなかった。

そして、再び戦争が始まった。

こうして僧侶の世界に、またもや悲しみの嵐が吹き荒れていた。

僧侶たちは、この世の理不尽さに絶望した。

僧侶たちは、自らの手で神を創り出そうとした。

しかし、いくら僧侶たちの願いが強かろうと、簡単に神を創造できるはずはなかった。

そこで僧侶たちは、僧侶以外の生き物に希望を託した。

僧侶たちは、他の生き物が創り出す奇跡の力を待ち望んだ。

「お経を聞かせてあげよう」

「お経を聴かせてあげましょう」

「お経を聴かせるよ」

「お経を聴かせたい」

「お経を聞かせるよ」

「お経を聞かせたい」


「お経を歌おう」

「お経を唄いましょう」

「お経を謡いましょう」

「お経を奏でましょう」

「お経を唱えましょう」

「お経を詠みましょ」

「お経を書こう」


「お経を描きましょう」

「お経を作ろ」

「お経をあげよ」

「お経を贈ろう」

「お経を捧げよ」

「お経をお唱えしよう」

「お経を説いて上げよう」

「お経を語り明かそう」

「お経を伝え広めよう」

「お経で悟りを得よう」

「お経で迷いを捨て去ろう」

「お経で心を浄化させよう」

「お経で心を清めよう」

こうして僧侶たちは、あらゆる生物に仏教の教えを説いた。

そして、すべての生物の心に仏の心を植え付けた。

こうして、僧侶たちの望み通り、全ての動物が心の中で仏となり、平和が訪れた。

しかし、僧侶たちは知らなかった。

すべては偽りであり、幻であることを。

そして、僧侶たちの本当の敵は、自分自身であることを。

キューブリックとさか大仏の目の前には、ヒバリがいた。

ヒバリは二人に語りかけた。

しかし、その声はもはやヒバリの声ではなかった。

ヒバリの顔をした僧侶だった。

ヒバリは言った。

お前たちのせいで、私は僧侶になってしまった。

お前たちのおかげで、私は人間ではなく僧侶なのだ。

もう二度と元の姿に戻ることはできないだろう。

お前たちのような人間が生きているかぎり、私の姿は永遠にこのままだ。

お前たちのような人間のせいで生まれた私の苦しみがわかるまい。

ヒバリだった僧侶は、怒りに任せてキューブリックとさか大仏を殺そうとした。

しかし二人は僧侶の攻撃を避け、僧侶に蹴りを入れた。

僧侶は倒れた。

僧侶は立ち上がった。

僧侶は叫んだ。

許さんぞ、貴様ら! 僧侶はキューブリックとさか大仏に飛び掛かった。

二人の体を素手で掴み取り、握り潰そうとした。

僧侶の手は赤く染まった。

僧侶は笑った。

やった、これでお前たちも死ぬのだ!僧侶の体は徐々に溶けて行った。

やがて骨だけとなった僧侶の体は地面に落ち、粉々になって飛び散った。

その残骸の中からキューブリックとさか大仏は現れた。

ヒバリの死体からは血が流れなかった。

なぜならば、僧侶に殺されていたからだ。

僧侶はその事実を隠していた。

死体には傷跡があったが、その全ては僧侶による嘘である。

ヒバリの死因は心臓発作であった。

僧侶は、自分が死んだという記憶すら消し去っていたのだ。

キューブリックは考えた。

こいつは厄介な奴を怒らせてしまったようだ。

さっさと逃げるに限るな……いや待てよ?あいつの正体って、もしかしたら本当に僧侶なんじゃないかなぁ。

だってあいつ、明らかに人を殺しているのに罪悪感がなかったみたいだし、僧侶以外の何者でもない気がする。

それにしてもあいつは何であんなに怒っているのかな?よくわかんないけどとりあえず逃げよっと。

じゃあな~ヒバリちゃん。

ヒバリとさか大仏の後ろから、キューブリックがやってきた。

二人は振り返ると、そこにはキューブリックの姿があった。

ヒバリとさか大仏は再び前を見たがそこにもキューブリックの姿があり、さらに背後からもキューブリックが現れた。

キューブリックは増殖していた。

三人の背後にいるキューブリックはさらに増えた!その数は十を超え百を超えた!さらにその数を増やし続けていく!そしてついには無限大の数字になり、数えることが不可能となるまで増殖した! そしてヒバリとさか大仏とキューブリックの肉体は爆発的に膨れ上がり膨張していった。

ヒバリは、自分の体がどんどん巨大化していくことに気づいた。

「なんだこれは!」

ヒバリは驚愕し、慌てふためいていた。

「一体どうなっているんだ!」

ヒバリは叫び続けたが、その声は誰にも届かなかった。

「どうしてこんなことになったのかわからないが、とにかく今はここから出なければ!」

しかし、

「そんなことができるわけがない!」

ヒバリはそう言い捨てた。

ヒバリの身体は今や数十メートルの巨体にまで達していた。

もはやこの世のどこに行ってもヒバリを隠せる場所などなかった。

「どうすればいいんだ」

ヒバリは途方に暮れた。

「誰か助けてくれえええ!!」

ヒバリの叫びは新宿アルタ前の雑踏に掻き消された。

僧侶たちは次々と死んでいった。

僧侶たちは自らの過ちに気づいたが、今さら遅かった。

僧侶たちが愛を取り戻すことはなかった。

そして僧侶たちは死んでいった。

「あの、どういう意味ですか?」

「お前はヒバリだ」

「ちょっと待ってください!」

「お前はヒバリだ」

「あの」

「偽善を清めよ、善を穢せよ」「はあ?」

「偽善を清めよ、善を穢せよ」

僧侶はそう言うと、ヒカルの前から消えた。

その後、僧侶たちは、他の生物にも、この世界に存在するものであれば、いかなるものにでも仏教を教え込もうとした。

僧侶たちは様々な試みを行ったが、僧侶の言葉を聞いた者は一人残らず死に至り、その言葉は誰の耳にも届くことがなかった。

僧侶たちが行った行為の果てに誕生したのは、あらゆる生命体を超越した存在、すなわち神である。

そして神が誕生した。

僧侶たちは神を崇め、その教えに従い行動した。

やがて世界は神によって支配されるようになっていった。


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