ダージリン「イギリス人は恋愛と戦争では手段を選ばない。というわけでカレシできたんで戦車道やめまーすwwwww」
オレンジペコ「・・・は?」
ダージリン「聞こえなかったかしら?カレシが出来たの」
オレンジペコ「(女子校艦なのにどうやって・・・)し、しかし、恋愛と戦車道は両立出来るのでは?」
ダージリン「カレシと会う時に手に鉄と油の臭いが残ってたら困るでしょぉ?」
オレンジペコ「・・・・・・」
ダージリン「それに、うちって強豪校だから毎日のように練習があるじゃない?私放課後はデートしたいのよね」
オレンジペコ「・・・それ、本気で言ってるんですか・・・?」
オレンジペコ「イギリス人お得意のブラックジョークなんですよね?そう言ってください!」
ダージリン「いいえ、私は本気よ、オレンジペコ。何か問題でも?」
オレンジペコ「そんなぁ、あんまりですぅ」
ダージリン「うっさいわね。そんなの私の自由よ。それにあなたにとっても良い話でしょ?リーダーになれるのよ。ずっと狙ってたんでしょう?リーダーの座」
オレンジペコ「そんなこと・・・。」
ダージリン「じゃ、そういうことだから」スタスタ
オレンジペコ「・・・・・・」
オレンジペコ「絶望した」
オレンジペコ「ダージリン様がいなくなってしまうなんて・・・。」
オレンジペコ「これから私はどうしたら・・・」
*
大洗女子学園生徒会室にて
杏「・・・大洗に転校したい?」
オレンジペコ「そうです・・・生徒会の権力で、なんとか転校を認めて頂けないでしょうか・・・」
河嶋「優秀な人材が入ってくることはこちらとしては好都合だが・・・」
西住みほ「それでいいの?ダージリンさんは?」
オレンジペコ「ダージリン様は・・・戦車道をやめると・・・」
みほ「嘘だろおい」
オレンジペコ「なんでもカレシが出来たとかで・・・」
杏「まじか」
みほ「でもオレンジペコさん、だからといって転校というのは違うと思うな」
オレンジペコ「ダージリン様のいないグロリアーナなんて、いる意味は・・・」
みほ「あなたやダージリンさんの他にも、グロリアーナで戦車道やりたいと思ってる人はいっぱいいるはずだよ?」
みほ「そういう人達を見捨てちゃダメでしょ?」
オレンジペコ「はっ、あ、そうですね・・・」
オレンジペコ「私ったら取り乱して・・・恥ずかしい」
みほ「それはそうと、ダージリンさんのことが心配ね・・・」
杏「行ってあげたら?グロリアーナに」
みほ「えっ、それって何だか他人のプライバシーに踏み込みすぎるような気が・・・」
杏「でも、心配なんでしょ?」
*
グロリアーナ女学園宿舎・ダージリンの部屋
ダージリン「・・・ふぅ、これで誰も何も言わなくなるでしょう」
ダージリン「どうせ私には才能なんて無いのよ。私が抜けたところで、別に誰も困らないでしょうよ」
ダージリン「『黒森峰は強いから負けたのは仕方ない』『ダージリン様の指揮のお陰でグロリアーナは強豪校』みんな本気で言ってるのかしら?ばっかみたい」
ダージリン「ま、因縁の姉妹対決の方が見たい人多いだろうし、いいんじゃないかしら」
ダージリン「はぁ・・・紅茶紅茶・・・」
ピーンポーン
ダージリン「あれ、どなたでしょう」
ダージリン「Amazonさんでしょうか・・・?」
魚眼レンズを覗くと、西住みほが一人で立っていた。
ダージリン「うわ、来たよ勝ち組」
みほ「あのぅ・・・グロリアーナに遊びに来たのでついでにご挨拶と思って・・・」
ダージリン(ま、追い返すほど心の狭い女じゃないのよ、私は。)
ダージリン「どうぞ、おあがりなさい。」
みほ「し、失礼しまぁす・・・」ガチャ
ダージリン「紅茶でも淹れるわ」
みほ「は、はぁ・・・」
ダージリン「普段は紅茶、お飲みになる?」コポコポポポ....
みほ「い、いえ、そんなに・・・」
みほ(こ、こんな日常会話してる場合じゃない!)
みほ(折角ここまで来たのに、何も訊けずに終わるなんて嫌だ!)
みほ「あ、あの、最初の練習試合の後に贈っていただいた紅茶、とてもおいしかったです!」
ダージリン「それはどうも」
みほ「だ、だから、またもう一度私達と試合、やりませんか?」
みほ「もう一度、戦車道を・・・」
ダージリン「・・・・・・」
みほ(い、言っちゃった~・・・)
みほ(どうしよう、お、怒るかな・・・?)
ダージリン「・・・ペコから聞いたのね」
みほ「そ、そうです。ダージリンさんが突然戦車道をやめちゃったなんて・・・私信じられなくて・・・」
ダージリン「突然でもないわ」
みほ「え?」
ダージリン「ここ最近、練習がキツくて嫌になってしまってましたの。」
ダージリン「顧問が『あの大洗でも黒森峰に勝てたんだからうちも頑張れー』ってうるさくて。失礼ですわよねぇ大洗に。」
みほ「はぁ・・・」
ダージリン「ま、私自身もう戦車道に飽きてたんでしょうね」
ダージリン「今はすっきりしてるわ。私はこれから恋愛の道に生きるの。やっぱり紅茶は戦車の中で飲むより、お洒落なカフェとかで飲む方がずっといいわぁ」
みほ「そんな・・・ダージリンさぁん・・・」
ダージリン「西住さんは生まれた時から戦車道をやることが決まっていたようなものですけれど、私は別にそうじゃないですもの」
ダージリン「好きな時に好きなことをする。去年は戦車道がしたかったし、今はデートがしたいの。」
みほ「」カチン
みほ「だっ、ダージリンさんは今まで築き上げてきたチームを放っぽり出して無責任とは思わないんですか!」
ダージリン「私の勝手でしょ?変なこと言わないでくれる?」
みほ「ばか!見損ないました!私帰ります!」
みほ、退室
ダージリン「あーあ、怒っちゃったぁ」
ダージリン「でも、西住さんにこんだけ言っておけば、もう私に構う人は誰もいなくなるでしょう。やっと自由を手にしたわ」
ダージリン「・・・はぁ・・・」
*
翌日、ダージリンの部屋にて。
ピーンポーン
ダージリン「ん?日曜というのに誰かしら・・・」
ダージリン「どなたですかー?」
???「西住ですぅ」
ダージリン(ええ西住さん?また来たのか・・・)
ダージリン(あの真面目な性格だから、どうせ『昨日は怒ってしまってごめんなさい』って謝りに来たんだろうなぁ・・・)
ダージリン(私に謝られる価値なんて無いのに・・・)
ダージリン「今開けますねー」ガチャン
まほ「邪魔するぞ」
ダージリン「ひぇ、あんたか!」
まほ「おいダージリンよぉ、貴様昨日妹に何した?」
ダージリン「え、えええ?昨日は妹さんがいらしたので紅茶をお出ししておおおお話しただけですわわわわ」
まほ「それだけな筈が無い」
まほ「今朝妹が泣きながら電話してきたんだ。話を聞いてみるとお前の名前が出てきたんですっ飛んできたんだ。さぁ出来るもんなら弁解してみろ」
ダージリン「な、何かの誤解ですわ・・・」
まほ「くそっ、その澄まし顔、気に入らない・・・っ、こうなったら体に訊いてや・・・」
ライン!ライン!
まほ「ん?ケータイになんか来た」
まほ「おや、みほからだ」
まほ「・・・・・・・・」
まほ「ダージリンさんは悪くない・・・か。相変わらず優しいな、みほは。」
ダージリン「ホッ...」
まほ「事情は今みほが長文で説明してきた。」
まほ「カレシできたから戦車道やめるとかwwwくそウケるwww」
ダージリン「う、うっさいわね・・・」
まほ「でも、それが本当の理由なのか?」
ダージリン「へ?」
まほ「戦車道をやめた、本当の理由」
ダージリン「・・・・・・」
まほ「・・・・・・」
ダージリン「流石黒森峰のリーダー、何でもお見通しなのね」
ダージリン「私が戦車道をやめたのは、私が戦車道にふさわしくない人間だから」
まほ「・・・ほう?」
ダージリン「私達グロリアーナは戦闘シーンを描写されることなく黒森峰に敗れた。今回だけでなく、正式試合練習試合含めて黒森峰に勝ったことは殆ど無い。」
まほ「まぁ、うちは強いからな」
ダージリン「でもみほさんは劣勢の中でもあなたに勝ったわ」
まほ「自分達が勝てない相手に大洗が勝ったから、自信喪失したのか?」
ダージリン「というより、私達はそもそも勝とうとしていなかった」
ダージリン「大洗の何倍も勝てるチャンスがあるのに、黒森峰に勝とうと、優勝しようとしていなかった」
ダージリン「何回も負けるうちに、黒森峰に負けるのは当たり前だと勝手に信じこんでしまっていた」
ダージリン「そんなの最低よね・・・チームのみんなは今度こそ黒森峰に勝ってやると意気込んでるのに、リーダーの私が勝手に試合を諦めているなんて」
ダージリン「私はみんなを裏切り続けていたのよ・・・もう戦車道をやってる資格なんて無いわ・・・」
まほ「それで、戦車道をやめてお前の心は納得したのか?」
ダージリン「ええ」
まほ「そうか、なら良かった」
ダージリン「?」
まほ「カレシができたというのは嘘なんだな?」
まほ「それならいいんだ。戦車道のリーダーはモテるみたいな風潮になると困る」
まほ「というか、みほにカレシができると困る」
まほ「でも、お前にカレシができたというのが真実で無いのならよかったよかった」
ダージリン「いえ、カレシができたのは本当ですけれど・・・」
まほ「・・・・・・」
まほ「帰る」スタスタ
ダージリン「ちょ、ちょっと待って!」ギュッ
まほ「!」
まほ「ど、どうしたんだ・・・」
ダージリン「も、もうちょっと、私の話を聞いてくれてもいいんじゃありません・・・?」
まほ「え、えぇ...(困惑)」
ダージリン「お願い...」
ダージリン「納得したというのは嘘・・・私、どうしたらいいのかまだ分からないの・・・」
まほ「・・・・・・」
ダージリン「・・・・・・」
まほ「仕方ないな。とりあえず離れろ」
ダージリン「は、はい」サッ
まほ「妹がお前のこと心配してたからな、特別に相談にのってやる」
まほ「私が見る限り、全ての根源はお前の孤独さにある」
ダージリン「孤独さ?」
まほ「大洗がプラウダと戦った時、大洗の生徒の殆どは途中で勝利を諦めかけたという。また、みほ自身も一回戦車道をやめている」
まほ「だが彼女らは皆一人で立ち直ったのではない。手助けする仲間の存在があってこそ立ち直れたのだ」
ダージリン「ちょ、ちょっと待って下さらない?私は別に孤独じゃありませんわよ?戦車チームには沢山の仲間がいますし・・・」
まほ「確かにお前を慕っている生徒は沢山いる。だがお前はそいつらに対して厚い厚い心の壁を作ってしまっている。マチルダの装甲のようにな。そしてその中にいるのはお前独りだけだ」
ダージリン「!」
まほ「人間悩む時があるのなんて当たり前だ。だがお前は理想のリーダーであろうとして、無理無理澄まし顔を作って、高飛車キャラを装ってないか?」
まほ「自分の言葉ではなく他人の言葉ばかりを引用することによって、自分の弱音が出てしまわないようにしてはいないか?」
ダージリン「はっ・・・」
まほ「そういうことだよ」
まほ「今からでも遅くない。お前の部下達のところに行ってきっちり謝って、本当の気持ちを伝えるんだ。」
まほ「今度は独りにならないように」
ダージリン「・・・分かったわ」
ダージリン「倒すべき相手だったはずのあなたに元気づけられちゃうなんて」
ダージリン「完敗ね・・・」
*
グロリアーナ女学院・戦車ガレージにて。ペコの下グロリアーナ戦車道メンバーが集結している
ペコ「ここはあーして、こーして・・・」
ダージリン「ペコ!みんな!ちょっといいかしら!」
ペコ「あれ、ダージリン」
ダージリン「みんなに言わなくちゃいけないことがあるの」
ダージリン「・・・・・・」
ダージリン「あの、今まで本当にごめんなさ・・・」
ペコ「まさかそれで、また戦車道に戻りたいって言うんじゃないでしょうねぇ?」
ダージリン「えっ」
ペコ「ありえなぁい。あんだけ私のこと裏切っておいて。よくここに顔が出せたわね」
ダージリン「そのことは、本当に申し訳ないと・・・」
ペコ「あっそ。どっちにしても私をリーダーとした新体制がもう発足したんで、オメーの席ねーから。」
側近A「ちょ、ちょっとペコ様、あんまりですよ・・・」
ペコ「そうね、じゃあフィールドの整備係からやり直すって言うんなら入れてあげないこともないわ」
ペコ「それとも、膝まづいて私の靴の裏でも舐める~?そしたらレギュラーに戻してあげるわよぉ~?」
ペコ「学校であなたがそんなことをしたなんて知ったら、カレシはどう思うでしょーねー。あっはっはっは」
ダージリン「・・・・・・」ウルッ
ペコ「なに泣いてんだクソビッチ!格言bot!こっちはあんたのせいで大迷惑なんだよ!帰れ!二度と来んな!」
ダージリン「・・・分かったわ、ごめんなさい・・・」トボトボ
優花里(物陰から)「あちゃー、やっぱりこうなっちゃったのか。」
優花里「西住殿、予定通り挑戦状を届けますね?」
みほ「優花里さん、お願いします」
優花里「了解であります!」
*
一週間後、グロリアーナ所有の試合場にて。大洗、グロリアーナ両校の戦車が向かい合って並んでいる。そしてフィールドの真ん中では、西住みほとオレンジペコが対峙していた。
ペコ「突然試合しようって言ってくるなんて、どうしちゃったの?」
ペコ「試合の前後には整備や修理がつきものなんだから、あんまり急なお誘いは勘弁してよね」
みほ「すいません」
みほ「では、ルールを確認させて下さい」
みほ「大洗所有のⅣ号戦車、ヘッツァー、八九式、Ⅲ号突撃砲、M3Leeの5両であなた達グロリアーナの戦車20両と戦い、もし全滅させることが出来たら・・・」
みほ「ダージリンさんをリーダーとして部隊に戻してあげてください」
ペコ「内政干渉、余計なお世話よと言いたいところだけれど、私達が勝った時の報酬も結構おいしいのよねぇ。もし私達が勝ったら」
みほ「ええ、こちらのポルシェティーガーをあなた方に差し上げます」
ペコ(新体制になって弱体化した疑惑が噂されて私への不満が渦巻いている・・・ここでダージリンに戻ってきてもらっては困る)
ペコ「よし、じゃあ早速試合を始めましょう。」
みほ「ええ」
みほとペコはそれぞれ自分の戦車に乗り込んだ
みほ(Ⅳ号内)「(無線で)それでは皆さんよろしくお願いします」
まほ(Ⅲ突内)『まさか私達を呼ぶとはな』
ダージリン(八九式内)『みほさんの発想にはいつも驚かされるわ・・・』
カチューシャ(ヘッツァー内)『それで結局、みんな集まっちゃってるんだものね』
ケイ(M3Lee内)『時には助け合う!That's戦車道!』
みほ「大洗の戦車を使って試合をするとは言ったが、乗員も大洗の生徒とは言ってない!」
まほ『不利な状況で戦うのは久しぶりだな・・・だが負ける気がしない』
ダージリン『皆さん私のために・・・ありがとうございます』
カチューシャ『そういうのは勝った後に言ってちょうだい。今は戦うことしか考えられないもの!』
ケイ『今回指揮をとるのはあなたなのよ、英淑女さん。しっかりしてよね』
ダージリン『うふふ、そうでしたわね』
みほ「ダージリンさん、お願いします」
まほ『ダージリン、戦闘開始の合図を』
ダージリン『そ、そうですわね。では、大洗流に合わせて・・・』
ダージリン『パンツァー・フォー!』
終
こういう超展開大好き
絶対飽きただろ、書いてる途中に
打ち切り感半端ないなw