南ことり生誕祭2015
ことりちゃんハピバ!
pixivに上げたものをこちらにも。 何故か直せない文字化けがあります。ごめんなさい
九月十一日。午後二十三時五十五分。
私は自室で、ぼんやりとケータイの液晶を眺めていた。と言っても、画面は真っ暗。何となく、まだ眠ってはいけない気がしたの。
お母さんには、「早く寝なさい」と言われた。確かに明日は学校は無いけれど、μ'sの練習は朝からある。本当は夜更かしなんてしている場合ではありません。
……でも。
壁の時計が、五十九分を示す。
「__わわっ」
それとほぼ同時に、突然ケータイが鳴り出した。それは、メンバーごとに変えている電話の着信音。このメロディーは__
『ことりちゃん! お誕生日おめでとう!』
「穂乃果ちゃん♪」
『もしかして、起こしちゃった?』
「ううん、もしかしたら、電話がかかってくるかも、って思ってたの」
『そっか! よかった〜! 穂乃果、絶対最初におめでとうを言うつもりだったから!』
くすくすっ。それはそうだよ、穂乃果ちゃん。だって日付変わったの、ちょうど今だもん。十一日に伝えちゃうなんて、穂乃果ちゃんらしいなぁ。
『海未ちゃんより早かった?』
「うん。穂乃果ちゃんが一番だよ」
海未ちゃんはこの時間、もう寝ちゃってるもんね。
『ねえことりちゃん』
「ん?」
『メンバー内の誕生日だと、ことりちゃんの前は穂乃果でしょ?』
「うん」
あの時も楽しかったなぁ。みんなでプールに行って、穂乃果ちゃんははしゃぎながら色々頑張ってたっけ。__ふふっ。思い出したらおかしくなってきちゃった。……でも、それがどうしたんだろう?
『それでね、穂乃果が少し先に大人になるでしょ? でもその後すぐことりちゃんに追いつかれて、昔は悔しい! って思ったりしたんだ〜』
「悔しい?」
『うん。だって昔から、ことりちゃんはずっと穂乃果より大人びていたし、ずっといい子だったもん。そんなことりちゃんより、穂乃果はちょっぴり大人になれる時間。それが今日までだったんだよ!』
穂乃果ちゃん、そんな事考えてたんだ。可愛い♪
『でもね、最近は嬉しいんだ!』
「嬉しい?」
『うん。だってやっぱり、ことりちゃんとはずっと一緒がいいもん。一緒に大人になって、一緒にいたい! だから、ことりちゃんがすぐに追い付いて来てくれて、穂乃果は嬉しい!』
「穂乃果ちゃん……。うん! そうだね!」
『だから__え? 何? __もう、分かってば!』
「どうかしたの?」
『雪穂が、明日も早いんだから寝なさい、って。私の方がお姉ちゃんなのに〜!』
「ふふふっ。でもそうだね、また明日にしよっか」
『は〜い。それじゃあねことりちゃん。お誕生日おめでとう!』
そう言って穂乃果ちゃんからの電話は切れた。
「…………」
一緒に大人になる、か。穂乃果ちゃんらしい、考えだな。やっぱり可愛い♪
翌朝、少しだけ寝坊しちゃいました。あ、でも少しだけですよ? ちゃんと練習には間に合いました。
「ことり、おはようございます」
いつもの待ち合わせ場所には、海未ちゃん。穂乃果ちゃんがまだいない。
「今日はことりの誕生日ですね。おめでとうございます」
流石は海未ちゃん。すぐに言ってくれました。
「ありがとう♪ 海未ちゃんが二番目だよ」
「私が二番……?」
「__おはよう二人とも! あっぶなーい! 間に合わないかと思ったーっ!」
「おはよう、穂乃果ちゃん」
「……なるほど。穂乃果が夜中に電話で伝えたんですね。……どうせ穂乃果の事ですから、日付が変わる前に電話したんでしょう?」
「海未ちゃん、エスパー⁉︎」
「そのくらい分かります! 大体の場合、いつも穂乃果はフライングするじゃありませんか! 卑怯ですよ!」
まあまあ海未ちゃん、そのくらいで。
「でも海未ちゃんも一番に言いたかったんだね。私、嬉しいなぁ♪」
「あ、いえ、それは……。つい、と言うか……たまたまで……」
しどろもどろな海未ちゃん、可愛い♪
「でもこうしてるとさ、まだμ'sって名前が無い頃を思い出すよね!」
そっかぁ。もう随分昔の事みたいだけど、まだ半年もたってないんだね。不思議な感じ。
「そういえば__ずっと聞きたかったのですが、何故ことりは、スクールアイドルをやってみようと思ったのですか? 私は、穂乃果とことりに誘われて仕方なくでしたが」
「仕方なくだったの⁉︎」
「あの時は、です。いちいちくっつくのはやめて下さい穂乃果!」
「うーん……。何となく、穂乃果ちゃんと一緒ならそれでいいと思ったの。ごめんね、こんな理由で」
「ことりちゃん……」
「ことり……」
アイドル活動に、深い理由は無かった。今も無いのかもしれない。穂乃果ちゃんやみんなとと違って、私は誰かを追いかけるだけだから。
「でも、ことりは衣装を作ってくれるじゃないですか」
「そうだよ! ことりちゃんの衣装、大好きだよ!」
「ありがとう、二人とも」
でもそのせいで、一時期みんなを悩ませてしまった。大好きな穂乃果ちゃんに、大好きなスクールアイドルを“やめる”なんて言わせてしまった。
「__ねえことりちゃん。ことりちゃんは、スクールアイドル、好き?」
「え……?」
そう訊いてくる穂乃果ちゃんの目は、吸い込まれそうなくらい、まっすぐ。いつも前だけを見続ける、穂乃果ちゃんの瞳。
「私はスクールアイドル、大好き」
「私も__」
「でもね、」
「?」
「私が好きなスクールアイドル『μ's』は、ことりちゃんがいるから。ことりちゃんがいて、海未ちゃんがいて、みんながいる。だから私は、μ'sが好き」
「穂乃果ちゃん……」
「ことりちゃんは?」
「私も……穂乃果ちゃんのいるμ'sが好き!」
それを聞いた穂乃果ちゃんの顔が、パッと明るくなる。
「じゃあ同じだね!」
「うん! __もちろん、海未ちゃんも♪」
「わ、分かっています! 言わなくても大丈夫です!」
海未ちゃんそっぽ向いちゃった。私と穂乃果ちゃんは、顔を見合わせてクスクス笑う。
「ことりちゃん。前にはなればなれになりそうになった時、言ったよね。__一緒に夢を追いかけたいって。いつか違う道に進む時が来ても、今は、って」
「うん」
「その気持ちは変わらない。いつまでも一緒にいる事はできないけど……今は一緒。穂乃果はそうしたい! だって__」
「わっ」
穂乃果ちゃんがギュッてしてきました。
「大好きだもん!」
私も!
海未ちゃんも一緒に、ギューッ!
「私も大好き!」
今日は私の誕生日。大好きな穂乃果ちゃんの隣で、並んで歩き出せる、大切な日。
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