2015-10-23 13:11:46 更新

概要

ことりちゃんハピバ!
pixivに上げたものをこちらにも。 何故か直せない文字化けがあります。ごめんなさい


九月十一日。午後二十三時五十五分。

私は自室で、ぼんやりとケータイの液晶を眺めていた。と言っても、画面は真っ暗。何となく、まだ眠ってはいけない気がしたの。

お母さんには、「早く寝なさい」と言われた。確かに明日は学校は無いけれど、μ'sの練習は朝からある。本当は夜更かしなんてしている場合ではありません。

……でも。

壁の時計が、五十九分を示す。

「__わわっ」

それとほぼ同時に、突然ケータイが鳴り出した。それは、メンバーごとに変えている電話の着信音。このメロディーは__

『ことりちゃん! お誕生日おめでとう!』

「穂乃果ちゃん♪」

『もしかして、起こしちゃった?』

「ううん、もしかしたら、電話がかかってくるかも、って思ってたの」

『そっか! よかった〜! 穂乃果、絶対最初におめでとうを言うつもりだったから!』

くすくすっ。それはそうだよ、穂乃果ちゃん。だって日付変わったの、ちょうど今だもん。十一日に伝えちゃうなんて、穂乃果ちゃんらしいなぁ。

『海未ちゃんより早かった?』

「うん。穂乃果ちゃんが一番だよ」

海未ちゃんはこの時間、もう寝ちゃってるもんね。

『ねえことりちゃん』

「ん?」

『メンバー内の誕生日だと、ことりちゃんの前は穂乃果でしょ?』

「うん」

あの時も楽しかったなぁ。みんなでプールに行って、穂乃果ちゃんははしゃぎながら色々頑張ってたっけ。__ふふっ。思い出したらおかしくなってきちゃった。……でも、それがどうしたんだろう?

『それでね、穂乃果が少し先に大人になるでしょ? でもその後すぐことりちゃんに追いつかれて、昔は悔しい! って思ったりしたんだ〜』

「悔しい?」

『うん。だって昔から、ことりちゃんはずっと穂乃果より大人びていたし、ずっといい子だったもん。そんなことりちゃんより、穂乃果はちょっぴり大人になれる時間。それが今日までだったんだよ!』

穂乃果ちゃん、そんな事考えてたんだ。可愛い♪

『でもね、最近は嬉しいんだ!』

「嬉しい?」

『うん。だってやっぱり、ことりちゃんとはずっと一緒がいいもん。一緒に大人になって、一緒にいたい! だから、ことりちゃんがすぐに追い付いて来てくれて、穂乃果は嬉しい!』

「穂乃果ちゃん……。うん! そうだね!」

『だから__え? 何? __もう、分かってば!』

「どうかしたの?」

『雪穂が、明日も早いんだから寝なさい、って。私の方がお姉ちゃんなのに〜!』

「ふふふっ。でもそうだね、また明日にしよっか」

『は〜い。それじゃあねことりちゃん。お誕生日おめでとう!』

そう言って穂乃果ちゃんからの電話は切れた。

「…………」

一緒に大人になる、か。穂乃果ちゃんらしい、考えだな。やっぱり可愛い♪






翌朝、少しだけ寝坊しちゃいました。あ、でも少しだけですよ? ちゃんと練習には間に合いました。

「ことり、おはようございます」

いつもの待ち合わせ場所には、海未ちゃん。穂乃果ちゃんがまだいない。

「今日はことりの誕生日ですね。おめでとうございます」

流石は海未ちゃん。すぐに言ってくれました。

「ありがとう♪ 海未ちゃんが二番目だよ」

「私が二番……?」

「__おはよう二人とも! あっぶなーい! 間に合わないかと思ったーっ!」

「おはよう、穂乃果ちゃん」

「……なるほど。穂乃果が夜中に電話で伝えたんですね。……どうせ穂乃果の事ですから、日付が変わる前に電話したんでしょう?」

「海未ちゃん、エスパー⁉︎」

「そのくらい分かります! 大体の場合、いつも穂乃果はフライングするじゃありませんか! 卑怯ですよ!」

まあまあ海未ちゃん、そのくらいで。

「でも海未ちゃんも一番に言いたかったんだね。私、嬉しいなぁ♪」

「あ、いえ、それは……。つい、と言うか……たまたまで……」

しどろもどろな海未ちゃん、可愛い♪

「でもこうしてるとさ、まだμ'sって名前が無い頃を思い出すよね!」

そっかぁ。もう随分昔の事みたいだけど、まだ半年もたってないんだね。不思議な感じ。

「そういえば__ずっと聞きたかったのですが、何故ことりは、スクールアイドルをやってみようと思ったのですか? 私は、穂乃果とことりに誘われて仕方なくでしたが」

「仕方なくだったの⁉︎」

「あの時は、です。いちいちくっつくのはやめて下さい穂乃果!」

「うーん……。何となく、穂乃果ちゃんと一緒ならそれでいいと思ったの。ごめんね、こんな理由で」

「ことりちゃん……」

「ことり……」

アイドル活動に、深い理由は無かった。今も無いのかもしれない。穂乃果ちゃんやみんなとと違って、私は誰かを追いかけるだけだから。

「でも、ことりは衣装を作ってくれるじゃないですか」

「そうだよ! ことりちゃんの衣装、大好きだよ!」

「ありがとう、二人とも」

でもそのせいで、一時期みんなを悩ませてしまった。大好きな穂乃果ちゃんに、大好きなスクールアイドルを“やめる”なんて言わせてしまった。

「__ねえことりちゃん。ことりちゃんは、スクールアイドル、好き?」

「え……?」

そう訊いてくる穂乃果ちゃんの目は、吸い込まれそうなくらい、まっすぐ。いつも前だけを見続ける、穂乃果ちゃんの瞳。

「私はスクールアイドル、大好き」

「私も__」

「でもね、」

「?」

「私が好きなスクールアイドル『μ's』は、ことりちゃんがいるから。ことりちゃんがいて、海未ちゃんがいて、みんながいる。だから私は、μ'sが好き」

「穂乃果ちゃん……」

「ことりちゃんは?」

「私も……穂乃果ちゃんのいるμ'sが好き!」

それを聞いた穂乃果ちゃんの顔が、パッと明るくなる。

「じゃあ同じだね!」

「うん! __もちろん、海未ちゃんも♪」

「わ、分かっています! 言わなくても大丈夫です!」

海未ちゃんそっぽ向いちゃった。私と穂乃果ちゃんは、顔を見合わせてクスクス笑う。

「ことりちゃん。前にはなればなれになりそうになった時、言ったよね。__一緒に夢を追いかけたいって。いつか違う道に進む時が来ても、今は、って」

「うん」

「その気持ちは変わらない。いつまでも一緒にいる事はできないけど……今は一緒。穂乃果はそうしたい! だって__」

「わっ」

穂乃果ちゃんがギュッてしてきました。

「大好きだもん!」

私も!

海未ちゃんも一緒に、ギューッ!

「私も大好き!」







今日は私の誕生日。大好きな穂乃果ちゃんの隣で、並んで歩き出せる、大切な日。


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