2016-02-27 20:31:38 更新

概要

ノートに猛毒、煩悩に恐れ抱く


前書き

ヘルシングが解体され、新たに3人の騎士が聖地オトノキの守ることに。ウミ達は何を思うのか、聖地オトノキの運命は?ヘルシングの行方は?vol.3、完結。










ツバサ「あーーーっっ…人間のみなさーん、こんばんわ〜」




夜中の聖地オトノキ。広場に3人の騎士が立つ。



「なんだなんだ」


「こんな夜中にイかれてるのか?」


「あれ、ツバサ中将じゃない?」


「マジかよ!握手してください!」




ツバサ「え〜皆さんにはここ、聖地オトノキで〜」






ツバサ「死んでもらいまーす」





「え」


「けぁ」



「あえ、?」





アンジュ「うーん、最ッ高…!」



大勢の市民の首が宙に舞った。


それに気づいた他の市民が叫びをあげる



「「きゃあああ!!」」


「「ひ、人殺しぃい!!」」



エレナ「黙れ、豚共」



エレナの持つ長刀は無残に人を切り刻む。


逃げ惑う市民を1人残らずアンジュが銃で撃ち抜く。



アンジュ「気持ちィ〜っ」




ツバサ「あっはは!!所詮オトノキなんてこんなものね!」



ツバサ「焼き払え、皆殺しだ、蟻1匹逃すな!!」



アンジュ「仰せのままに、元中将!」



エレナ「無論。やらせてもらう!」




オトノキの街はツバサの手によって炎が放たれた。


聖地と言われていたオトノキは、地獄のような光景へと変貌した。












マキ「…何よ、これ」



マキ「なんなのよッ!!」



マキ「あいつら…吸血鬼だったなんて…!!」



その光景を見ていたマキはすぐさま走り出した。



マキ「許さない許さない許さない許さない!!四肢をもいではらわた引きずり出して、磔にしてミイラになるまで放置してやる!!」



リン「1人で行くのかにゃ?」


マキ「…リン」




リン「リンも行くにゃ」



マキ「着いてこないで」




マキ「目障りなのよ、失せなさい!」



リン「…」



マキ「…お願い。逃げて…」



マキはその瞳から涙を流していた。


慈悲のないヘルシングのマキ団長が、鬼のような存在だった彼女が。


マキ「こんな結果になったのは、私の所為なの…私が簡単に受け入れなければ…」





リン「目の前の吸血鬼を倒すのがヘルシングのはずにゃ」



リン「みんな、いるよ」


リン「みんな着いてる」




かつてのヘルシングの部隊が、リンの後ろにいた。




ウミ「行きましょう、団長!」



コトリ「団長!」





マキ「…」



マキ「目標、オトノキにあり。汝らはなんぞや!?」



「「我ら、ヘルシング!神に仕える使徒なり!!」」



全員が胸の前で十字架を切り、目標へ走り出した。




前へ、前へ。








ツバサ「…それで?」




ツバサ「ヘルシングがなんだって?」






マキ「畜生…ちくしょ…」




元ヘルシング部隊は、たった3匹の吸血鬼によって壊滅していた。



ウミ「…クソッ…まだ、まだ終わりません…!!」



ウミは自らの剣を持って立ち上がった。


ウミ「エイ…メンッ!」




ウミ「ああああッ!」



ウミは全力で剣を振るう。


しかし、ウミの攻撃は吸血鬼にはかすりもしなかった。




ツバサ「あっはは、か〜わいい〜」



ツバサ「それ」






ウミ「ッッ!?」



ウミ「足…!」



ウミの足に赤い針が刺さっていた。



ツバサ「吸血鬼は血を操れるの。死ぬ前にいいこと知れた?」



ツバサ「飽きちゃった。ヘルシング」



ツバサ「みんな喰べちゃったし、もういいよね」




ウミ「…みんな…みんな!!」



マキも、コトリも、リンも…みんなやられてしまった。



何もできなかった。ただ剣を振るうことしかできなかった。







ウミ「カミ…サマ…」












エレナ「!?…ツバサ!!」



エレナ「何か…何か来るぞ!」



アンジュ「…吸血鬼、かしら」





ツバサ「…死肉を貪り食べるハイエナか」



ツバサ「殺りましょう」






ホノカ「誰を?」





「「「ーーーーーッッ!?」」」




高貴な格好をしたホノカが、ツバサの後ろに現れた。




ツバサ「何よ、あんた」



ホノカ「通りすがりの吸血鬼だよ」



ホノカ「欲しかったものが残ってたから貰いに来たの」



ツバサ「欲しかったもの?」




ホノカ「ウミちゃん」



ウミ「…吸血鬼、ホノカ…?」



ホノカ「ウミちゃん、喰べていい?」



ウミ「…」



ウミ「もういいです、好きにしてください…」


ホノカ「ありゃ?素直だねぇ」





ウミ「…1つだけ」



ウミ「1つだけ…聞いてください」



ホノカ「…?」


ウミ「みんなの…仇を…とっ…て、くださいッッ!」



ウミ「ヘルシングの…みんなの!」


涙なんていらない。必要なのは野心。


幼い頃、ヘルシングで教わった戦いにおける心構えだ。

その日から涙は枯れ果てていた。だが…


再び、その目にひとすじの水が。


ウミの頬をキラリと通る。



虚ろな瞳の奥に、大きな世界を感じた。


まさしくホノカが求めていた世界だった。



ホノカ「ふふっ」



ホノカ「それでウミちゃんが手に入るなら、いいよ」




ウミ「…エイ…メンッ…」






ツバサ「いつまで喋ってんのよ」



アンジュ「長ったらしいわ」



エレナ「邪魔だ」





3匹の吸血鬼はホノカに総攻撃を仕掛けた。


血の槍、斬撃、銃撃。



これでもかと言うくらい、ホノカを攻撃した。


ツバサ「それそれ、どうしたの吸血鬼!?」


ツバサ「そんなもんじゃないでしょう!?」





ホノカ「…」




ホノカ「…”花は言った”




”あなたを受け入れないと”



”あなたの存在を忘れると”




”私は笑った”



”嗤った”




”気づけば私の周りは赤い水が湧いていた”」






「「「ーーーーーーーーーーッッ!!」」」




3匹の攻撃はさらに激しくなった。


慌てた様子で攻撃を続けている。



エレナ「確かに感じた!ここで奴を殺らないと、取り返しのつかないことになると!!」




わずかな地鳴りが、3匹の鼓動を加速させる。


ホノカはニタリと笑う。






「”やがて小鳥のさえずりは嘆きへと変わり”




”絵画のような世界へと果てていった”




”まぶたに焼きついたこの場所を”




”私は忘れることはないだろう”



”私は”



”自らの命を喰らい”





”自らの命を絶とう” 」







ツバサ「なんで死なないの!?」



エレナ「…不死身の化物なんていない!!」



アンジュ「鬱陶しい!」





ツバサ「…!?」



気づけば足下に、赤い液体が湧いていた。



鉄臭い、腐った血だまりだった。




ホノカ「…”貫け 主の槍よ”」



ホノカ「”グングニル”」




ツバサ「がッッ!?」




地面から、赤い槍が突き出てきた。



それも1つではない。



数えきれないほどの槍が地面から3匹を貫いた。







エレナ「な、なんだこれは…!?」



アンジュ「見たこと…ない」



ツバサが出した赤い槍とは比にならない。


なぜなら町中の血という血を。


3匹に突き刺したのだから。




ホノカ「ふ、ふふ」




ホノカ「あははははは、あはははッッ!!」



声を高くして笑った。



ホノカ「まだ終わらないよね!?まだ戦えるよね!?」






ツバサ「ーー!!」



ツバサの表情が変わった。


正気の沙汰じゃない。全身で恐怖を感じている。


こんな吸血鬼、出会ったことがない。






ホノカ「”グングニル”を壊せ!!身体を再生しろ!!」



ホノカ「剣を、銃を構えてかかってこい!!」




ホノカ「血槍(ブラッドリー)を出して私に攻撃しろ!!」



ホノカ「お楽しみはこれからだ!!ハリー(早く)、ハリー(早く)!ハリーハリーハリー!!!」





ホノカ「ハリーハリーハリーハリーハリーハリー、ハリィィィッッ!!!!」




アンジュ「化け…物めっ!!」



ホノカ「!!」





アンジュは手に持っていた銃でホノカを撃つ。


しかし槍に刺さったままの彼女の腕では正確に攻撃を当てられなかった。



ホノカ「…化け物、か」



ホノカ「もういいよ、”飽きちゃった”」



ホノカは”グングニル”を解いた。



エレナ「…!?」



ホノカ「…所詮、こんなもんなんだね」




エレナ「貴様、貴様!!そんな力を何処で…」



ホノカ「やかましいッッ!!!!」


エレナの問いを、ホノカは一蹴した。




ホノカ「…帰れ」



ホノカ「失せろ」



ホノカの表情は、先程とは違い怒り狂っていた。




3匹は聖地オトノキから逃走した。



ツバサ「痛ッ…畜生、あの野郎…ッッ!!」








ホノカはウミの元へ向かった。



ホノカ「終わったよ」



ウミ「…」



ホノカ「…喰べていい?」



ウミ「…私、は」



ウミ「…コトリと、一緒、に…」



ホノカ「…いいこと思いついた」



ホノカは近くにあったコトリの死体をウミの元へ持ってきた。




ホノカ「私の血を分けてあげる」



ホノカ「欲に溺れた人間の末路が見てみたくなった」





ホノカはウミの首筋に噛みつき、血を吸った。



そしてウミの唇に口づけをした。



ホノカ「貴方はずうっと、私のモノ。」




ホノカ「ね?」







ーーーーーーーーーー





ツバサ「傷が、治らない…」



エレナ「大丈夫だ、ここを抜ければ王都に着く!」




アンジュ「…あら?」




王都に向かう道の、大門の前に。


大きなローブを羽織った、

男か、女かわからない誰かが座っていた。



アンジュ「ちょうど良かった、ツバサの傷が治せる!」




アンジュは一直線に”誰か”の元へ向かった。




”誰か”はゆっくりと立ち上がっていた。










刹那、アンジュの四肢はバラバラになって裂かれた。





アンジュ「…あ?」


アンジュ「あれ?あ、あ、あ?」




アンジュ「ああああああああ!?」



エレナ「アンジュ!?」




「…」




エリ「柔いのね、吸血鬼」


ローブを投げ捨てた、その顔はヘルシング1番隊隊長のエリだった。






エレナ「お前は…!!」


エレナ「そうか、そうかそういうことか!あの時、あの場に!ヘルシングの中にいなかった理由はこれか!!」




エリ「我らは神の代理人、神罰の地上代行者。」



エリ「我らが使命は、我が神に逆らう愚者を」



エリ「その肉の最後の一片までも絶滅すること…」




エリは手に持った剣を十字に構えた。



そして、口が裂けそうなくらいの笑みを浮かべていた。





エリ「エイィィィメンッッ!!」









ーーーーーーーーーーーーーーー



ーーーーー



ーーーーーーーーーー




ーー






エリ「ーそれから数日後、王都に向かう大門の前で、無残に切り刻まれた吸血鬼の死体があったそう…」




エリ「調べによると、神父アンデルセンの仕業だったそうよ」



エリ「それから、吸血鬼事件は途端に無くなった。」



エリ「聖地オトノキには、誰も近寄らなくなった…」






エリ「…それでも、この町も必死にどうにかしようとして、ここまで復興したのよ」



エリ「誰も”聖地”なんて呼ばなくなったけど」





「…」



その場を立ち上がり、店から出ようとする。




エリ「…神のご加護を。」




「…」





重たい足を引きずりながら、夜道へと歩き出す。






ノゾミ「…追わなくてええの?」



エリ「自分でなんとかしようとしてるんだから、そうさせてあげないと」



エリ「そうあれかし、よ。」




ノゾミ「…もう、殺し屋やめてくれる?」



エリ「もちろんよ。貴女という、守るべき存在と出会ってしまったんだから。」




ノゾミ「…えりち!」


ノゾミはエリに抱きついた。





エリ「(貴方なら大丈夫、大丈夫なはずよ)」





エリ「(ねぇ…)」







エリ「ウミ」










ウミ「…ホノカ」




重たい足を引きずりながら、月が照らし出す夜道を必死に歩く。



キラリと鋭い牙が輝く。







彼女の行方は、いや。


彼女”達”の行方は、誰も知ることはなかった。








thank you for reading


後書き

血は魂そのもの。
血を吸うというのは、その人間の魂を自らの体に取り入れるということ。
吸血鬼とは魂をも喰らう存在である。


このSSへの評価

1件評価されています


SS好きの名無しさんから
2016-03-03 13:53:57

このSSへの応援

このSSへのコメント

2件コメントされています

1: SS好きの名無しさん 2016-03-03 13:53:28 ID: _b3g9Z4r

感覚開けすぎじゃね?

2: るしふぇる 2016-03-03 23:44:29 ID: D24SUYQt

コメントありがとうございます。空けた方が読みやすいとのご意見があったため間をかなり空けてしまいました。不快に思ってしまったのなら申し訳御座いませんでした。


このSSへのオススメ


オススメ度を★で指定してください