提督と〇〇30 「提督とバレンタイン(2年目)
提督と艦娘たちが鎮守府でなんやかやしてるだけのお話です
注意書き
誤字脱字があったらごめんなさい
基本艦娘たちの好感度は高めです
アニメとかなんかのネタとかパロディとか
二次創作にありがちな色々
長い
30回目になりました
楽しんでいただければ幸いです お目汚しになったらごめんなさい
ネタかぶってたら目も当てられませんね
ちなみに今回はラブコメです、作者の妄想がいつもより酷いのをご了承の上御覧ください
ーそれではこの番組は
卯月「うーちゃんのっ、ことわざコーナーっ」
弥生「なに、いきなり?」
卯月「思いついたは良いけど、本編で使う機会がないから此処でやっとくぴょん」
弥生「そう…それで?」
卯月「ぴょんっ。今回はこれだぴょんっ」
「瑞鳳は友を呼ぶっ」
弥生「…オチが読めた人は読み飛ばしていいよ?一応、聞くけど、どういう意味?」
卯月「瑞鳳が仲間を呼ぶぴょん、龍驤が来るぴょん、葛城が来るぴょん、合体するぴょん」
弥生「…」
卯月「そしたらね、瑞鶴になるぴょんっ」
弥生「何も変わってない…」
卯月「ふぅ、満足したぴょんっ」
弥生「そう、よかった。それじゃあ、怒られる前に本編いこっか」
卯月「ぷっぷくぷー♪」
瑞鳳「…なんで、大鳳は呼ばれないのよ?」
大鳳「私に聞かれても…」
提督「スレンダーと、まな板は似て非なるもの」
瑞鳳「だまらっしゃいっ、おっぱい星人めっ」
北上「でも残念、この人ロリコンなんですよ」
瑞鳳「余計悪いわっ!」
ー諸々のメンバーでお送りしますー
↑後 「提督と改2」
[chapter: 提督とバレンタイン(2年目 」
ー海上ー
だだっ広い海の上、そこに落ち葉のように漂うゴムボート
幸いにも比較的穏やかな波模様のため
波に飲まれそうということもないが、やはり少々の頼りなさは感じられた
提督「ねぇ、木曾さん…」
木曾「んー…」
ボートの上には提督と木曾さん
背中を合わせに海に向き合い、釣り竿を握ってぼけーっとしていた
提督「二人っきりだね?」
木曾「そうだなぁ…」
大げさに揺れるボートの上、時折吹く北風は少々肌に痛い
視界に映るのは釣り竿を除けば海と波
そろそろ漂流者の気分を実感し始めるのを、遠くの陸地が辛うじて留めていた
提督「えー、それだけ?なんか話してよーつまんないよー」
木曾「だーっこらっ、揺らすなってのっ」
その内に釣りに飽き始めた提督が木曾に戯れつきだす
振り子椅子の要領で、木曾に体重を掛けてみれば
一緒にゴムボートまで揺れ出す始末だった
木曾「ったく、付いてくるって聞かなかったのお前だろうが…」
提督「そーだけどー」
釣り竿を垂らし始めて2時間と立たない程度か
入れ食い状態という訳でもなく、時たま釣れる魚がなければ
何もない海を眺めるだけ…どうしたって暇になる
木曾「はぁ…」
どうしたものかと一思案
こんな海の上に釣り道具以外なんて持ってきてはないし…
というかそもそも、帰ろうと思えば直ぐに帰れるんじゃないのかコイツは…
となると、俺をからかって遊んでるだけか…
木曾「つまりなんだ?」
提督「ん?」
木曾「提督は俺と一緒じゃつまんないってことか?」
内心、ニヤニヤを抑えるのに一杯になる木曾さん
からかって良いのは、からかわれる覚悟のあるやつだけだ、と
提督「む…」
木曾「…」
提督の言葉が途切れる。どうやら効果はあったらしい
となれば、ここが畳み掛けるところか
くくくく…みてろよ、もっと困らせてやる
木曾「あーあ、悲しいねぇ…俺は提督と居られれば満足だってのによー」
提督「…」
提督が小さくなってるのが背中越しに感じられる
さて、どう出るかな。流石にこのまま黙ってるとは思えないが
泣いて謝りだすか…人の揚げ足を取り始めるか…
提督「木曾さん…」
木曾「んだよ?俺と話してもつまんねーだろ?」
努めてぶっきらぼうに、不機嫌さを上塗りして返す木曾さん
提督「ううん…私も木曾さんと一緒で嬉しいよ?」
木曾「…は?」
一瞬、耳を疑った
嘘泣きを始めるでもなく、駄々をこねるでもない
一つ落ちた提督の声音は、むしろこちらが傷つけてしまった様にも思える
提督「ごめんね木曾さん…私、木曾さんの事大好きだから…」
木曾「ぇ、ぁ?」
提督の様子に戸惑い、動きの固まった木曾さん
そんな彼女を、後ろから優しく抱きしめる提督
提督「もう…一生このままでも良いや…木曾さん…」
木曾を後ろから抱きしめ、その肩に頭を乗せる提督
自然と近くなる彼女の耳元に一言
「大好き」
そう呟いた
木曾「っ~~!?」
やばいやばいやばいやばい…
胸が高鳴ってるのが自分でも分かる
鼓動がどんどんと早くなり、首筋も頬も耳の先まで赤くなってる頃だろう
提督「木曾さん…」
木曾「ぉぃ…やめ、はなせって…」
もじもじと提督の腕の中で身じろぎをする木曾
それを抵抗と呼ぶには余りにも弱々しい
動揺と高揚で力の抜けた体は、握っている釣り竿を取りこぼしそうになっている
提督「木曾さん…私の事嫌いなの?」
木曾「ぇ、いや…そんなわけ…」
提督「じゃあ…」
と、わざとらしくそこで言葉を区切る提督
「好きって言って?」と、その先を暗に要求していた
木曾「…すき、だ、ぞ…」
しどろもどろに とぎれとぎれに何とかその先を口にする木曾さん
提督「うんー、もっかい」
木曾「あぁぁっもうっ!好きだよっ、大好きだよっ、分かったかっこんちくしょう!」
ほとんど叫ぶようにそう言い放つ木曾さんは、完全に自棄だった
提督「にひひひひ…木曾さん顔まっかー」
木曾「こんの…」
視界の端でニヤつく提督
ほんとうに少しだけ、殴りたくもなった
木曾「って、おい…それ」
提督「ん?…あら…大鳳…?」
いい加減振りほどこうと、木曾が提督の手を掴んだその時
その手に嵌められた指輪が淡い光を放ち始める
提督「敵?」
木曾「いや、でもよ…」
くるりと周囲を見渡してみる、敵影なんて何処にもないし
遠くに見える鎮守府にも異常があるようには見えなかった
提督「…戻る?」
木曾「しゃーなしか…」
ー鎮守府・食堂ー
卯月「豆を投げるぴょーんっ!」
その宣言通りに、天井に向かって放られた豆が雨あられと降ってくる
そのまま豆の入ったカゴを抱えて、スプリンクラーよろしく豆をばら撒いて回る卯月
彼女からしてみれば、節分なんて合法的に取っ散らかせる数少ないチャンスなのだ
騒がなければ嘘なのだろう
如月「こら、うづきー、あーんもぅ、髪に豆が絡んじゃうからー」
卯月のばら撒く豆の雨に晒された如月
避けるなり、頭を抑えるなり、多少の抵抗は試みるものの
降り注ぐ豆が、一つまた一つと彼女の綺麗な髪に絡んで行く
卯月を抑えようとはするものの、豆を避けながらでは上手くもいかず
結果として、どんどんと豆が積もっていった
菊月「まったく…」
そんな卯月の様子に、何がそんなに楽しいのかと呆れ半分の菊月
まあ、いい。そういう事はやりたい奴が好きにやればいいと
くるっと背を向けて部屋の隅に避難する
菊月「った…誰だ、菊月の背中に豆を投げるのはっ」
そんな小さな背中に、卯月とは別の方向から2つ3つと豆が振りかかる
睦月「睦月だしっ」
菊月「お前だったのか…」
ドヤッと、仁王立ちして存在をアピールする姉
睦月「さぁさっ、菊ちゃんも豆まきしよっ」
菊月「やらんっ、姉さんたちで好きにしてればいいだろう」
巻き込まれるのは勘弁だと、睦月に背を向ける菊月
睦月「ほぅ、好きにしろとの仰せか…とりゃっ」
ぱらりと、菊月の背中に豆が掛かる
菊月「…あのな、睦月」
睦月「ふっふっふっ、どこからでも掛かって来るが良いぞ」
仁王立ちのまま不動の構えをとる睦月
菊月「…」
ゆっくりを腰を曲げる菊月
伸ばした手の先に触れた豆を握り締めると、大きく振りかぶる
菊月「ふんっ」
睦月「あいたっ」
割と本気で投げられた豆が睦月のぶつかった
睦月「痛いよっ、菊月っ」
菊月「そうか、ではもっとやってやろう」
睦月「ひぃぃぃんっ」
菊月「まてーっ」
たっと、反転して逃げ出す睦月
その後を豆を握りしめた菊月が追いかけていく
長月「おーい、菊月、睦月、あんまり走り回るとって…」
聞こえてないな、あれは…怪我する前に止めたいが
長月「…で、皐月は何をやってるんだ?」
今度はこっちかと、軽く嘆息しながら姉の方へ振り返る長月
皐月「何って、豆撒きさっ」
そうだな、それは見なくても分かる
現在進行形で撒かれたばかりの豆が
長月の髪から滑り落ち、肩の上で跳ねて床に転がった
長月「つまり、撒かれる覚悟もあるという訳だ?」
皐月「長月に出来るならね?」
へっへーんっと、自信満々の笑みを浮かべている皐月
その自信は理解できなくもないが、胸を張らせっぱなしというのも面白くない
やすい挑発だ、それは分かってはいるが…
まあ、いいか…とも思う
こういう文化は大切にするべきだ…
なんか、果てしなく間違えている気もするが、この際は見ないふりでもしておこう
それよりもと、目の前の姉に向き直る長月
長月「やってみるさ」
手近な豆を拾って、皐月に投げつける長月
皐月「そうこなくっちゃっ!」
広がり、飛んで来る豆
そこに合わせて皐月も豆を投げ返すと
それは器用に、その全部が弾かれ地面に転がった
長月「…」
相変わらず無茶苦茶だ…
だが、けれど、だからこそ…
皐月「それでおしまい?」
長月「なわけ無いだろうっ!」
そうして、あっちもこっちも豆が飛びちがひたる
ー
食堂の片隅に設置された畳敷きの炬燵ゾーン
そこには傘が置かれ、銘々に開らかれ豆の被害を防いでいた
ゆー「ひゃっ!?」
飛んできた豆にびっくりして、ゆーが体を縮こませる
北上「おっと」
だが、ゆーに豆がぶつかる前に
北上様が傘を差し込み、豆を弾く
北上「さらにさらに」
そして、弾いた豆を傘で跳ね上げる
それを器用に空中で受け止め、傘を回し始めると
その上で、コロコロと大豆が地面に落ちずに傘の上で踊り出した
北上「ほいっ、何時もより多く回っております」
ゆー「ぉぉ…」
文月「すごいすごーい」
唐突に始まる大道芸に目を輝かせるゆーと、素直に拍手を送る文月
夕張「あんまり食べ物で遊ぶもんじゃないわよ?」
ずずーっと、お茶を飲みながら我関せずの夕張さん
大井「そういうのは、向こうに言ったら?」
横目で食堂の惨状に視線を送る大井さん
「こんのっ、ばかうづきーっ」
「ぷっぷくぷーっ」
「悔しかったら当てて見るクマーっ」
「長月、弥生っ、じぇ。とすとりーむアタックを掛けるよっ」
「じぇっとって…初耳だぞ…」
「そこは、ノリと勢いで…」
「よしっ、此処で出番だしっ金剛さんっ」
「OKっ!ぶぁぁぁにんぐっ、らーぶっ!」
「おいっ、睦月っ。卑怯じゃないのかっそれはっ!」
「にゃししししっ、かてばよかろうなのだぁぁぁ!」
「きゃー」
なんて悲鳴が聞こえてきたりもする
大井「…増えてるし…」
夕張「ま、その内保護者が出てくるでしょ?」
大井「…そうね…」
それもそうかと、夕張に習いお茶を飲み始める大井
如月「はぁ…疲れたわ…」
望月「おつかれ、如月姉」
けっきょく卯月を捕まえきれずに
豆だらけになった髪を引きずって炬燵に逃げてきた如月
三日月「~♪」
如月がちゃぶ台に突っ伏してる間に、くしゃくしゃになった髪を三日月が綺麗に梳いていた
綺麗だなと素直に思う
まっすぐに伸びた栗色の長い髪、櫛を通せばその必要もない程に綺麗に通って行く
そうやって、髪を梳く度にほのかに立ち上るシャンプーの良い香りと
柔らかな手触りもあって、そのまま触っていたくなるほどだった
如月「三日月?」
三日月「へ?あ、あぁぁ…ごめんなさい、つい」
豆を取り終わっても尚、髪を梳き続ける三日月
気になって如月が声を掛けてみれば、慌てて手を離す
如月「うふっ。良いのよ、もう少し触ってても?」
三日月「え、でも…」
そんな妹の様子が可愛らしく、ついついサービスをしてあげたくもなる
望月「ああ、確かに…どんだけ手間かけてんだよ…」
ゆー「すべすべです…」
文月「三つ編み~、ついんてーる、ぽにーてーるー♪」
如月「ちょ、ちょっと貴女達?」
サービスをしてあげたくなったが最後
姉妹たちに囲まれ髪型を色々と弄ばれた
如月「はぁ…三日月、また後でお願いね?」
三日月「うん」
止めさせようかとも思ったが
髪を褒められて悪い気もしないし…何より、卯月を追い回して疲れたってのもあり
結局、そのまま好きにさせていた
多摩「ふにゃぁぁ…まったく、騒がしいにゃぁ…」
多摩は炬燵で丸くなるぅ…
ー
大鳳「こら、貴女達。ちょっとはしゃぎ過ぎよ?」
駆逐艦同士の豆撒きに金剛が加わって
その大口径の主砲から、炒りたての大豆を撒き散らし出したら
いい加減手が付けられなくなってくる
あたり一面豆だらけになり、そろそろ普通に歩くのさえ危うくもなっていた
球磨「くまくまくまくま♪せっかくだ、大鳳も混ざると良い、クマっ!」
一応、止めに来たつもりの大鳳ではあったが
どうにも、球磨の目にはネクストチャレンジャーにしか見えなかったらしい
それが当たり前のように大鳳に豆を投げつけた
大鳳「おっと」
球磨「む…」
しかしハズレ
本気で投げたわけではもちろん無いが
0フレームからの当たり判定は出てはいるくらいの精度はあった筈
球磨「猪口才な…なら、これでどうクマっ!」
今度は両手で攻撃範囲を拡大して豆を投げる
大鳳「はい、残念」
それでもハズレ
何処にそんな隙間があったのか
半身を引いて、首を傾げてみれば豆は一つも当たること無く
大鳳の脇をすり抜けていく
球磨「ぐぬぬぬ…」
大鳳「もう良いかしら?そろそろ片付けないと?」
食事の時間までこの有様では ほぼ確実に誰かが転ぶ
五月雨がこの場にいたらもう転んでる位は豆だらけだ
球磨「勝った気になるのはまだ早いクマぁぁぁ!」
再び両手で、そして今度はノーモーションで足元の豆を蹴りあげた
相手が木曾だったらなら、このまま罰ゲームが確定しそうなものではあったが
大鳳「負けず嫌いね…でもっ」
片足を軸にして体を回し豆を避ける
しかしそれでは足りない、残りの豆は正確に大鳳の体めがけて飛んできている
たーんを終えて、大鳳が正面に向き直る
それと同時に、足を鞭の様にしならせて残りの豆を弾き飛ばした
大鳳「ふぅっ…」
残心。一連の動作を淀みなく完了させて、軽く息を吐く
球磨「こんごうっ!」
しかし、その一瞬の間隙を塗って球磨が声を上げる
金剛「Yes! ぶぅぁぁぁにんぐっ!」
大鳳「へ?ちょっとっ!」
金剛の主砲が大鳳に向く
装填されているのは催事用の特殊弾頭「IRIDAIZU」
主砲発射の熱量で、充填された大豆を炙ると同時に大量に撒き散らす優れもの
そんなものが、2基6門の46cm砲から一斉に発射される
「らぁぁぁぁぁぶっ!」
金剛の声とともに、若干の焦げ臭さと大豆の匂いが部屋中に広がった
球磨「くまくまくまくまくま♪ 良くやったクマ金剛」
金剛「congratulation!我々の勝利ですねっ」
パンっと乾いた音を響かせて、球磨と金剛がハイタッチを交わす
大鳳「ふふっ…」
豆だらけ、言うまでもなく豆だらけの大鳳さん
頭から炒り大豆を浴びせられ、髪の毛やら服の隙間にやたらと大豆が入り込んでいる
その辺の公園に入ればハトだらけになるんじゃないかってほどには
しかし、怒るでもなく、小さくほくそ笑む大鳳
大鳳「ああ、そう…そこまでするの…うふふふふっ…」
消え入りそうな独り言は、勝利に浮かれた球磨達に届かない
しかし、次の変化は否が応にも目に飛び込んできた
「エンゲージ…」
すっと透き通る声音、それに合わせて飛び散る桜色の光はとても美しい
球磨「は?」
金剛「へ?」
耳を疑った。しかし、声は一時でも目の前の変化は永続だ
桜色の光に包まれた大鳳。左手の指輪は淡い光を放ち、その力を開放している
大鳳「良いわ、鬼は鬼らしくしましょうか…」
すっと透き通る声音は、刃物のように研ぎ澄まされていた
球磨「おい、金剛…なんとかするクマ」
金剛「わたしっ!?いや、でも、あれは…だって…」
じりっと後ずさる球磨と金剛
その間にもボーガンを構え、艦載機の発射シークエンスに入る大鳳さん
球磨「ちっ…瑞鳳っ!艦載機を出すクマっ」
瑞鳳「ちょっ、巻き込まないでよってっ」
球磨「口の前に手を動かすクマっ!沈みたいのかっ」
瑞鳳「も、もうっ!知らないんだからっ!」
球磨に気圧されて、慌てて弓を構える瑞鳳だったが
大鳳「遅い…」
瑞鳳「あいたたたたっ」
直後に発艦した大鳳の烈風が、瑞鳳めがけて機銃弾(大豆)をばら撒く
そうして怯んだところに、彗星12型に満載された大豆が頭上から降り注いだ
それも一つや二つではなく24機分くらいが一斉に、まとまって、バケツでもひっくり返したかのように
瑞鳳「きゅぅ…」
瑞鳳ノックアウト。豆の山から顔だけだして完全に伸びていた
とんだとばっちりである
卯月「ずいほぉぉぉ!」
弥生「大変、瑞鳳さん息してない…」
長月「勝手に殺すんじゃないよ…」
とはいえ、完全に伸びてるのは確かだけれど
大鳳「さて、次はだぁれ?」
大鳳の周りを囲むように、烈風の群れが飛び回っている
その中心に佇む大鳳は、いっそ使い魔を従えた魔王の様にも見えなくもない
このまま指先ひとつでも動かせば
直ぐ様次の目標に向かって行くだろうことは明白だった
菊月「なぁ…球磨、謝ったほうが良くないか…」
球磨「それで許されると思うクマ?」
睦月「にゃしぃ…」
多分、いや絶対無い。だって、もう目が笑ってないもの
戦闘中か、それ以上に恐ろしい
許されてもお仕置きはされるだろう。さっきの瑞鳳見たいに
球磨「皐月…あれ、止められるか?」
皐月「やりたくはないかなぁ…」
球磨「…くぅまぁ…」
詰みか。認めたくはないが…いや、こっちも指輪使えば良いんだけど…
しかし、こんな下らんことで使えるわけもない…
大鳳「相談は終わったかしら?」
鉄面皮。その言葉が似合うほどに、涼しい顔で口をひらく大鳳
球磨「艦隊旗艦より、各艦へ…撤退だクマ」
言うや否や、後ろ向いて猛ダッシュを始める球磨
なんでもいい、大鳳の頭が冷えるまで逃げるしかあるまいよ、それが結論だった
球磨が逃げ出した途端、蜘蛛の子散らすように、豆撒きに参加していた全員が逃げ出した
大鳳「今度は鬼ごっこ?良いわよ…どこまでも追い詰めるから…」
慌てて逃げ出す娘たちとは対照的に、音もなく一歩、また一歩と歩き出す大鳳
控えていた烈風たちは、それぞれに散開してターゲットを追っていった
ー
北上「良いかい皆。大鳳さんは怒らせちゃダメ、OK?」
こくこく、と。炬燵周辺に集っていた娘たちが一斉に頷いた
ー
やり過ぎね、とは自分でも思う
最初は軽い脅しと悪戯心とか、そんな程度ではあったのだけれど
正直に言えば、ちょっと楽しくなって来ていた
私の言動一つで逃げ惑う娘達…それを一人ずつ追い込んで…うふふ…
まあ、多少なりと指輪のせいで高揚してるのも有るのだろう
その場の勢いとはいえ、使ってしまったのは不味かったかもしれない
けど、考えても見て?地味に熱い大豆がチクチクと肌を刺す感覚を
それを頭の上から浴びせられたら、誰の堪忍袋だってズタボロになるはずよ?
なんて言い訳をした所で、結局の所は偶には私もはしゃいでみたかった
そう、それだけのこと…
それに、後一人だもの…今更止まれないわ…
提督が戻るまでにかたづけないとね…うふふふ…
ー鎮守府、正門前ー
玄関の扉を開き外に出る
さっと辺りを見回した所で、正門側に銀色の髪が流れていくのが目に入る
地面に目を向けてみれば、ちょうど子供くらいの足跡が続いていくのも見て取れた
大鳳「うふふ…みぃつけた…」
微笑む大鳳
玄関前の小さな階段をぴょんっと飛び降りると
残された足跡を上書きしながらその道筋をなぞっていった
ー
菊月「はぁっはぁっ…し、しれいかぁぁぁんっ!」
提督「ん?菊ちゃん?どったの?」
木曾「なにをそんなに…」
提督たちが鎮守府に戻ってみれば、正門からすごい顔した菊月が飛び出してきた
狐に化かされた、というよりは、プレデターにでも追われてる感じだ
菊月「た、たいほうがっ」
提督「おっとっと…」
勢い良く飛び込んできた菊月を受け止める
そうなると、その小さな体がカタカタと震えていのが伝わってきた
何事かと聞こうとも思うが、その前に
提督「木曾」
木曾「ん…とっ」
菊月を抱いたまま一歩下がると、入れ替わりに前に出る木曾
そして、腰の軍刀を抜き一閃…遅れて、ハラリと烈風が地面に転がった
大鳳「きっくづきちゃんっ、あっそびましょ?」
声のした方に顔を向けてみれば、ニコニコとした大鳳が正門からひょいっと顔を出した所だった
木曾「おい、なんだあれ…」
提督「さあ?」
大鳳「あ…」
目が合う。別に大鳳が此処にいる事自体はどうでもいいが
上機嫌というよりは、酔ってる様なその仕草に違和感を覚える
なにより、「あ…」とか言ってるし、バツが悪そうになってるし
提督「大鳳…何やってんの?」
大鳳「は、早かったのね…提督…」
予想では夕方までは帰ってこないと思ってたが
今は丁度おやつ時、予想より大分お早いご帰還だった
提督「そりゃおまえ…なぁ?」
提督が大鳳に左手を見せてみれば、指輪に淡い光が灯っていた
そう、確かに何もないなら、夕方頃まで海の上で木曾さんとイチャついてたんだろうけど
鎮守府のど真ん中で指輪を起動されれば気にもなる
大鳳「あ…」
木曾「おい。あ、とか言ってんぞ、あいつ…」
そうして、パタパタと慌て出す大鳳さん
不味い…完全に失念していた、指輪を使ったのくらい提督にだって伝わるのに
そりゃ気になりもするわ…
どうしよう、見られた…見られちゃった
一応これでも、綺麗で格好いい大鳳さん
いつだって頼りになる大鳳さんをやってきたし、そう思われてる自負もあった
それはだって、皆から頼られるのは誇らしいし、提督に頼られるのは素直に嬉しかったから
しかしどうだろう?
今の自分は客観的に見てどう映るだろうか?
怯える幼女を笑顔で追いかけ回してる娘
ああ…そうだ、その絵面には覚えがある
たとえば、卯月たちを追いかけ回してる大井さんとかはよく見る光景だ…
…そんなの良くても、ただの面白お姉さんじゃないの…
と、とりあえずは、なんとかごまかさないと…
大丈夫、大丈夫よ大鳳…私は人生のあらゆる困難を乗り越えてきたんだから…
大鳳「こ、これは、そのちがうの、その、ちがうんだからね?」
しゅんっと、大鳳の体を包んでいた桜色の光はなりを潜め
構えていたボウガンは体の後ろに回して無かった事にしはじめる
提督「何が違うの?」
敵もいない鎮守府のど真ん中で、指輪を使い、艤装を展開して、菊月を追いかけている
これが大井なら何ともは思わないのだけれど…大鳳がなぁって…
大鳳「きょ、今日はだって、節分だし、お豆投げられたし、だからその…」
提督「ああ、節分の鬼か…」
大鳳「そうっ、それっ」
提督「どっちかといえば、なまはげの類に見えたけどなぁ」
木曾「うんうん」
大鳳「うぐ…それはだって、鬼なんだし鬼らしくしないとって」
提督「ふぅん…」
まぁ、そう言われれば分からん話でもないけれど
大鳳「ほ、ほら菊月。鬼ごっこはもうお終いだから、こっちおいで?ね?」
今度は菊月を宥めようと試みているが
その所作は平時に比べてどこか ぎこちなさを覚える
菊月「嘘だっ。そうやって私も冥府魔道の彼方に送るつもりなんだろっ、球磨達みたいにっ!」
提督にぎゅぅっと抱きつく菊月
涙目で振り返ると、がるるるるーっと大鳳を威嚇している
木曾「冥府魔道って…」
何処で覚えた…は良いとしても。今日日アニメでもきかねーぞそんな言葉
大鳳「ちょっとっ、菊月っ!?」
提督「大鳳…おまえ…」
怯える菊月を抱きしめて一歩後ずさる提督
大鳳「お、送ってないからっ、そんな所知らないからっ!」
パタパタと両手を振って、首を振って、慌てて否定する大鳳
提督「だ、大丈夫だよ、大鳳…提督も、そういうの大好きだから」
大鳳「ちがうからっ、ちょっと菊月が大げさに言ってるだけだからっ!」
まあ、それはそうだろうとは思うんだけど
菊月「ひっく…違うもんっ、姉さん達だってっ…ぐすんっ、あられもない格好にしてたじゃないかっ!」
相変わらずがるがると威嚇してる菊月
よっぽど大鳳が怖かったらしい、ちょっと泣きそうになってる
提督「大鳳…」
さらに一歩後ずさる提督
大鳳「してないっ、そこまでやってないっ!」
提督「大丈夫だよ、大鳳…提督もそういうの大好きだから…」
多分にフォローにはなってないだろう、それは分かる
大鳳「お、おちついて提督。話せば分かるから、ね?」
それは分かるんだけど…動揺してる大鳳を見るのがとても愉しい
木曾「なぁ、提督…お前があんまり甘えるもんだから、あいつちょっと疲れてるんじゃないのか?」
提督「え、なに?私のせいなの?」
木曾「ちがうってのか?」
提督「…そう言われると…」
思い当たるフシはいくらでもあるんだけどさ…
提督「ねぇ、大鳳?」
大鳳「な、なにかしら…」
提督「わたし、もっと良い子になるから…とりあえず、落ち着こ?ね?」
大鳳「ぁぁぁ…もぅ…」
へたんっと、その場に崩れ落ちる大鳳
いつもの落ち着いた雰囲気は何処にもなく
ただただ、小さな女の子が肩を震わせているだけだった
木曾「ふふっ…悪い顔してんぞ?提督…」
提督「木曾さんだって…」
木曾「いや、だってなぁ…」
提督「ふひひひひ…」
意地の悪い笑みを浮かべる二人
だってしょうが無いじゃない、初めてなんだもん
今までだって眉根を動かすくらいはしていたが
ここまであからさまに動揺してる大鳳を見るのは
大鳳「…だって、だってぇぇ…良いじゃない、少しくらい、私だって…くすん…」
さめざめと、肩を震わせている大鳳
その胸中に渦巻くのは、羞恥だったり後悔だったり
ー食堂ー
バレンタイン前日
大豆の匂いが落ち着いたと思えば、今度はチョコレートの甘い匂いが広がり出す
金剛「できた…YES、YES♪」
そんな食堂の調理場。金剛さんが一人、小さくガッツポーズをしていた
銀色に輝く作業台の上には、一口サイズのチョコレートが並んでいる
満足気な金剛さんの様子からは、どうやら上手く出来た様であった
金剛「後はwrappingネっ。何が良いデスかね~♪」
鼻歌交じりに戸棚を漁りだす金剛さん
あまりド派手なのは嫌がるでしょうからSimpleな方が良いでしょうか?
Simple、シンプル、しんぷる…となると、落ち着いた大人の雰囲気で…
金剛「提督っ、これ…私からのプレゼント…受け取って?」
金剛「ありがとう金剛。この包装、君みたいに大人っぽいね」(←提督の真似
金剛「そんな大人っぽいだなんて…」
金剛「ああ、そうだね。金剛は大人っぽいんじゃなくて、色っぽいんだったね」(←提督の真似
金剛「なーんて言われちゃったりして、きゃーきゃーきゃー♪♪♪」
いつしか戸棚あさりの手は止まり
妙な妄想を呟きながら、恥ずかしそうに自分の体を抱きながら、くねくねしている金剛さん
その様は、乙女のようといえばそうなのだけれど
提督「いや、どっちかといえば子供っぽいだろ…それ」
金剛「へ…て、ていとく?」
ビクっと、金剛の肩が跳ねると
カタカタと、壊れた時計みたいに首を回して後ろを向く金剛さん
金剛「い、いつから…」
提督「そうだね…そこまでいくともう、子どもっぽいんじゃなくて、馬鹿っぽいなって、言えるくらいには」
金剛「かはっ…」
金剛の頭の天辺から湯気が吹き出し、脱力した挙句にその場にへたり込む
終わった…ほとんど最初からじゃねーデスカ、全部見られてんじゃねーデスカ
終わりました…金剛のバレンタインは色艶もなく、寒い笑いでおわってしまったヨ…よよよよよ
提督「あむ…むぐむぐ。あ、でもチョコレートは美味いな」
裸のままに放置されていたチョコレートを摘んで、口に放り込む提督
舌の上に乗っかると、ゆっくりと溶け出し、特有の芳醇な香りが口の中に広がる
甘さの後に残るほろ苦さが少し大人な感じがした
奇をてらって複雑怪奇な味がするわけでもなく、シンプルなまでにチョコレート
どストレートに好意をぶつけてくる、金剛見たいといえばそうかもしれない
金剛「へ…ちょこ? てっ、あああああああっ!?」
提督「なによ?急に大きな声出して」
チョコ、その単語に意識を呼び戻された金剛が、慌てて提督に飛びついた
金剛「ちょっ、な、なんで今、食べてるのっ!」
バレンタインは明日ダヨっ、今食べたらダメじゃないのっ
提督「まあ、落ち着けよ…」
金剛「これが落ち着いてられますかっ!」
ガタガタと、提督を揺さぶりだす金剛さん
提督「そうは言うがな…」
明日はバレンタインだ、そうなると大なり小なりチョコを貰うことになるだろう
となれば、いくら金剛のチョコレートが美味しいからといっても
食傷気味になるのは避けられない、となれば今食べてしまったほうが
金剛の愛情をしっかりと受け取れると思わないか?
などと、金剛にガタガタ揺さぶられながら解説してみる提督
ま、そんな事言ってるから、プレゼント商戦が1月以上も前から始まったり
1月なのに2月号の雑誌が出たりするんだが…
金剛「む…それは、一理あるかも…でも」
でも、それでも、例えそうだとしても
ムードとタイミング位は考えて欲しい…
折角用意したのに、おやつみたいに食べられては少々悲しい…
提督「ま、そうやって、一喜一憂している金剛が見たいだけってのもあるけど…」
言いながらも、さらにチョコレートを口に放り込む提督
取ってつけたように言ってはいるが、実際の所こっちが本音だったりする
金剛「あっ!あああああーっやっぱり、そっちが本音なんじゃないデスカっ!」
どぉうしてぇぇっ、なぁんでぇぇっ、とかなんとか言いながら
さらにさらに、ガクガクと揺れる提督の体
金剛「どうして、そんな意地悪ばっかりするのーっ!」
もはやただの駄々っ子のようにも見えてきた
提督「どうしてって…そんなの…金剛が可愛いから、つい?」
しょうが無いねって感じて首を傾げて見せる提督
金剛「ついじゃネーですよっ!可愛いとか言えば、金剛がデレるとお思いですかっ!」
金剛はそんな安っぽくありませんからねっ!
なんて言いつつ、そっぽを向く金剛さん
提督「金剛…そんな怒んなくても…」
金剛「しーりーまーせーんー…そんな意地悪ばっかりする提督なんて…その、き、きききき…きらいデスっ!」
さあ、どうです提督
金剛に「嫌い」なんて言われたら、ショックでしょう?悲しいでしょう?
少しは反省すると良いネ…でも…提督に嫌いって言っちゃった…
どうしよう…分かってくれますよね?本気じゃないのよ?
提督「…」
たしかに、金剛の口から「嫌い」なんて言われれば冗談でもショッキングだけれど
そんな動揺して言われてもなーって思わなくもない
提督「ねぇ、金剛?」
金剛「つーんっ」
怒ってますアピールをしながら、そっぽを向き続ける金剛
なるほど、そっちがその気ならそうだな
提督「そうかぁ、提督はこんなにも金剛の事が大好きなのに、金剛は私の事嫌いかぁ」
金剛「甘いねっ、シュガーみたいスウィートね。そんなんで釣られるほど今日の金剛は甘く無いデスっ」
う、うれしいけどっ、だめです、だめです私
ここは心を大鳳に…じゃない鬼にしてっ、提督に分かってもらうのよ
提督「ふふふふ…」
いいや、つられてもらうぞ金剛
黒糖だろうが、グラニュー糖だろうが、溶けない砂糖はねーんだよ
ー5分後★ミ ー
金剛「はぁ…はぁ…す、ストップ、提督…も、もうやめ、わかりました、わかりましたから…」
頬を染め、熱っぽい吐息を漏らす金剛
何かに耐えかねるように、小刻みに体が震えていらっしゃる
時間と場所によっては大分扇情的な絵ではあるが
あいにくと日も高い内のキッチンだ…いや、それが良いって人もいるか…
結局のところ5分間の間
提督が金剛に、可愛いだの、大好きだの、愛してるだの、言い続けた結果がコレである
正直もう少し持つかと思ったけど意外と早く落ちたな…しかし、追い打ちは掛けるものと見つけたり
提督「いいや、金剛。お前は何も分かってない。私がどれだけ君のことが好きかっ」
金剛「いーやーっ、やめてっ、金剛がっ、私が悪かったからっ!これ以上はぁぁぁぁっ」
しぬ、しんでしまう、頭が沸騰してぱーんってっなって
金剛、愛に溺れて溺死とか、恥ずかしすぎて2度死ねる
何としても提督の口を塞がないとっ
提督「良いかい…むぅっ」
と、開きかけた提督の口を塞ぎに掛かる金剛さんだった
ー
ゆー「…ねぇ、やーよ?」
弥生「ん?」
キッチンの入り口からその様子を眺めていた二人
ゆーと一緒にチョコでも作ろうかと思って来てみたら、随分な現場に出くわしたものだ
ゆー「あれは、何をやっているの?」
弥生「うん、あれはね…」
かんかんこれこれ…
ゆー「そう、あれが…」
弥生「うん…」
ゆー「ねぇ…やーよ…えっちなのはいけないと思いますって…」
弥生「うん、そう…ん?」
うん、そうだねっと…自然に頷こうとしたけれど
感じた違和感に、思わずゆーを2度見してしまっていた
そんな言葉どこで覚えたんだろう?
ー
提督「で、金剛?さっきから見られてるわけだが?」
金剛「へ…?」
見られている?何を?そりゃ今のをでしょうけど…へ?
カタカタカタカタと、壊れたねじ巻きのように金剛の首が回っていく
弥生「やっほ…」
ゆー「…」
そうして後ろを向くと
小さく手を振っている弥生と、その背中に身を隠し、こちらの様子を伺っているゆー と目があった
金剛「い、いつから…」
弥生「んー…そう、だね」
たとえばそう
弥生「好きだー、お前が欲しいー、こんごー…とか?」
ゆー「あとあと…こんごぅ、あいしてるんだ、こんごぅ…だって…」
などと、シーンの一部を棒読みで再現するお二人
金剛「ぎゃぁぁぁっ、やーめーてーっ、思い出させないでーっ」
いつからとかなんとか関係なく、ほとんど最初からじゃねーデスかっ
みーらーれーたーっ、きーかーれーたーっ、はーずーかーしぃぃぃぃっ!!
などと、面白いくらいに真っ赤になった金剛が、耳を塞いで頭を振り回している
金剛「はっ!…ていうか提督っ、あなた気付いてたでしょうっ」
提督「うん」
提督が一つ頷いてしまえば、金剛の疑念はあっさりと晴れ渡った
金剛「なぁぁんでぇぇぇっ、どぉぉしぃぃてぇぇっ」
提督「いいじゃねーか。別に減るもんでもあるまいよ」
金剛「お・だ・ま・りっ。だいたいっ、提督はっ提督なのにっ提督だからっ!!もうっもうっもうっ!!」
もはや言葉に意味はなく、バカバカ言いながら提督をボカスカ叩きだす金剛さんでした
ゆー「ねぇ、やーよ…あれは何をやってるの?」
弥生「うん、あれはね…ただイチャついてるだけ」
ゆー「だよね…」
さすがにからかう気も無くなり始め、生暖かい視線で見守る二人でした
ー執務室ー
お日様が顔を出したからといって、提督が起きる理由にもならず
いつものようにソファで寝っ転がっていると
ふと、執務室の扉が開く気配がする
誰だろうか?皐月ならこの時点で「起きろーっ!」とか言ってくるし
なにより、こそこそする理由もないだろう…
いや、今日がバレンタインって事を考えれば、なにかのサプライズって線もあるが
次第に足音が近づいてくる
音の軽さに歩幅を考えれば…皐月たちか、ゆーくらいなものだけど
寝たふりをしたまま、そんな事を考えていると
足音が直ぐ側で止まり、ふわりと連れられた風が頬を撫でる
がさごそと聞こえてくる物音
何かの包みを開けているようなそんな感じだ
その音が止んだかと思えば、不意に気配がすぐ近くに感じられる
吐息でもかかっているのだろう、規則的な空気の流れが頬をくすぐってくる
提督「…で、何やってんの…文月?」
文月「んもも~ふぁふぃふぁっふぁぁ…」
提督「食べてから喋りなさいな」
文月「ふぁーぃ」
珍しいと思った。人の寝込みに顔を近づけてくるなんて
如月じゃあるまいに、あるいは妙なテンションになった三日月もやりそうではあるか
どうしてか、目を開けてみれば文月の顔が近くにあった
おまけに、その口には一口大のチョコレートが加えられて、ポッキーゲームのお誘いかとも思えてくる
文月「おはよーございまーす。しれいかん♪」
チョコを口の中に収めて、舐め回す
自由になった口から最初に聞こえたのは朝の挨拶だった
提督「ああ、おはよ…で?」
文月「で、とは?」
とぼけてらっしゃるな
提督「朝駆けなんて趣味あったの?」
文月「にひひひ~。趣味は作るものなんだよ、しれいかん?」
わかってないなーっと、提督の顔を覗きこむように小首をかしげる文月
提督「寝込みを襲うだなんて、あまりいい趣味とは思えんがっと」
言いながら、ゆっくりと体を起こす提督
文月「あれれ?ドキドキしなかった?司令官、こういうの好きかなーって思ったけど?」
提督「そりゃまぁ…」
好きな娘に寝こみを襲われて
ポッキーゲームのお誘いなんて、喜ばない人はいないと思うけども
提督「でも私寝てたしなぁ?もっかいやって欲しいかなぁ?」
文月「えー。起きてたくせにぃ?」
からかうように笑みを浮かべる提督を、「この、このぉ~」っと、肘で小突く文月
そう、起きてるのは知ってたけど
けど、どこで目を開けるかはやってみてのお楽しみだった
結果として、ポッキーゲームになったとしても
咥えているのが小さなチョコレートな分、どうしたってそうなってしまったとしても
ちょっとドキドキするけれど。せっかくのバレンタインだ、少し位は良いかなぁっとも思ってた
文月「ふみ からのチョコレート、そんなに欲しいの?」
提督「欲しい、欲しい」
文月「しょうが無いにゃぁ…ぁんっ」
スカートのポッケから、チョコレートを取り出す文月
さっきの物音の正体見たり、チ◯ルチョコ…随分と安上がりである
まぁ、チョコレート何て余程手間を掛けないかぎりは大幅に味が変わるものでもない筈
であるなら、作る課程より、渡す課程に重きを置いた彼女の行動は、そう間違ったものでもないだろう
まあ、だからといってコレが本命だとも限らんし
バレンタインの浮ついた空気に乗っかった悪戯の可能性も無きにしも
文月「んー」
提督の肩に手を置いて、チョコレートを加えたままに、ゆっくりと顔を近づけていく文月
やっぱりちょっと恥ずかしい…
司令官に顔を寄せるだけ、普段なら意識しないそんな行為も
チョコレートを加えながらの、ちょっと尖らせた唇では
まるでちゅーをせがんでいるみたいで、距離が詰まるほどにドキドキが激しくなってくる
でも、なんでだろう、意外と楽しい?
司令官の行動を予想して、色々想像して、実際やってみて
それが、思うようにいったりいかなかったり、そんな些細な事に一喜一憂している
なにより、一番思うようにいかないのが自分自身だったりするのだから分からないものだ
ただ、一つ分かったことは、そういった事に他の娘達がきゃーきゃーしている理由かなって
提督「…」
近づいてくる文月の顔
差し出されているのはチョコなのか唇なのか
どうにも気恥ずかしくなり、目の前のチョコに視線を固定してはいるけれど
こうも近づかれては、それもあまり意味はなく
結局、文月の顔とチョコの見たり見なかったり繰り返す
まぁでも、良いのかなとも思う
そんなちっちゃいチョコを咥えて差し出されたら、触れ合ってしまっても許容範囲だろう
それが嫌ということは断じて無いのだし、むしろウェルカムまである
そんな風に腹をくくってしまえば、近づいてきたチョコに自然と顔が吸い込まれていった
卯月「しれーかーんっ!ハッピーバレンタインだぴょーんっ♪」
ばばーんと、勢い良く執務室の扉が開け放たれると飛び込んでくる卯月
突然の乱入者に、提督と文月がそのままの体勢で固まり、視線を向けるとちょうど卯月と目があった
卯月「お…ぉぉぉ。ま、まさか ちゅーをなさっているとはつゆしらず…とんだごぶれいを」
なんか日本語がおかしくなっている卯月
それはまあ、飛び込んだ先の光景が
司令官の肩に手を置いて、顔を寄せている文月なのだから誤解も招くだろう…
いや…誤解でもないかもしれないけども
文月「ふまもっむむぅぅぅ…」
卯月「食べてから喋るぴょん、お行儀悪いぴょん」
まったくもって正論だった
文月「むぐむぐ…ん。みぃたぁなぁー」
チョコ飲み込んだ後。ありがちなホラー映画のシーンを演出してみる文月
卯月「きゃー、うーちゃんは何も見てないぴょん、文月のターンが終わるまで伏せて待ってるぴょんっ」
頭を抱えてその場に蹲り、見ないふりをしてターンエンドの卯月
文月の番が終わるのを待ってるのは姉の気遣いなのか
だとしたら、部屋の外で待ってるって選択肢もあったろうに
だからきっと今のこの娘は、文月の姉よりも、その先の展開が気になってるおませさんを選んだのだろう
文月「えへへへ、どうしよっか?」
少々照れくさそうに微笑み、問いかける文月
だって、蹲ってはいるものの全力で卯月に覗かれている
となれば、二人っきりの時よりは恥ずかしさも倍増だ
提督「私は欲しいな?」
文月「…もぅ、しょうがないにゃぁ」
再び、いや、三度、チョコを咥える文月
司令官の肩に手を置いて、そっと顔を寄せていく
さすがに3回めともなれば慣れたものだ
卯月に覗かれてはいるものの、まあ無視できない程でもないし
それで卯月が顔を赤くしているなら、それはそれで面白い
睦月「たのもーっ!!提督っ、チョコ持ってきたよっ…よー…よよっ!」
文月と提督がポッキーゲームを始める寸前
卯月が開け放ったままだった扉をくぐり、睦月が飛び込んできた
同時に、彼女の目にも随分な光景が飛び込んでくることにもなった
睦月「およよ…。ま、まさか ちゅーをなさっているとはつゆしらず…とんだごぶれいを」
ああ、やっぱり姉妹だなっておもった瞬間だった
文月「もっもっ…」
睦月「食べてから喋るし。お行儀悪いよ?」
そして、まったくもっての正論である
文月「むぐむぐ…ん。みぃたぁなぁー」
睦月「おっ、お姉ちゃんは何もみてないよっ!文月が終わるまで待ってるからっ!」
と、卯月の横に蹲る睦月
なんかこう、デジャビュを覚えるには余りにも記憶が新しい絵面になっていた
もしかして、ここまでが仕込みだったのだろうか
文月「だってさ…どうしよっか?って…あれ、あらら…」
提督「どったの?」
文月「さっきのでチョコ最後だったみたい?」
ざーんねーんっと、苦笑する文月…だったけど
提督「いや、まだ残ってるよ?」
文月「え、ふぇぇっ!?」
文月の体に手を回して、ぐっと引き寄せると、驚くほど簡単に腕の中に収まる
提督「ほら、こっちに…」
文月「こ、こっちって…ぁぅ…」
司令官の指が唇に触れている…下手にちゅーするより恥ずかしかもしれない
そりゃだって、さっきまでチョコ加えてたし、唇に付いちゃってるけども…
これ、こんなの…ポッキーゲームじゃなくて、完全にちゅーじゃんっ
それは恥ずかしい、とても恥ずかしい、ほっぺにでもなく、チョコを挟むでもなく
口と口で…きゃーきゃーきゃーきゃー、やばいやばいやばい
焦っちゃうってもんじゃないよっ、てーそーの危機だよっ
文月「え、で、でも皆見てるしぃ…」
って、姉に助けを求めるように視線を送ってみるも
卯月「きゃっ♪」
睦月「きゃっ♪」
わざとらしい悲鳴を上げて、顔を覆った両手の隙間からのぞき見しているばかりなり
当てにならん、役に立たん、おませさんたちめっ
提督「いや?」
文月「じゃ…ないけど…」
なーいーけーどーっ!
なんだよーっ、いつもへたれてるのにーっ、調子に乗るとこれかーっ!
ええいっ、ままよっ、文月だって女だっ
誘って良いのは誘われる覚悟があるやつだけだっ
文月「んっ!…はいっ、おしまいっ、それじゃっ!」
不意を付き、唇に…じゃなくて、ほっぺに押し付けて
慌てて提督の腕の中から逃れると、きゃーきゃー言いながら執務室から逃げ出す文月だった
睦月「にゃしぃ…い、妹が、知らぬ間に大人になってたで候」
卯月「ぴょーん…おなごの成長は早いものよのぉ…」
妹の成長をしみじみと受け止める姉二人
日本語が怪しいのは割と動揺してるのかもしれない
大井「おはよ…」
そんな珍妙な空気はどこ吹く風と、文月と入れ替わりで入ってくる大井さん
ま、扉は開けっ放しだったし、となれば赤面した文月とすれ違ったろう
大体の事情は察してる筈なのに、それは全てスルーしてソファに腰を下ろすと
書類を広げて作業を開始したのだった
ー
チクタクチクタク…時計の音が執務室に響いている
その合間に、紙をめくる音、ペンを走らせる音が付いて回る
静かなものだった、さっきまでの喧騒が嘘のよう
睦月「し、しかし妹よ…」
卯月「ぴょん?」
睦月「チョコ…渡しづらいな…」
卯月「ぴょん…」
覗いてた自分たちも悪いが、さすがにアレの後にチョコを渡すのは大分勇気がいる
おまけに大井さんがお仕事をなさっている
いや、たしかにそんな時間だ。真面目に仕事をしている彼女は正しい
下手にラブコメをやったら、酸素魚雷を突きつけられそうだ…
大井「はぁ…」
溜息を一つ吐き、ペンを止める大井さん
チョコくらいさっさと渡せばいいものを…
ここに私が鎮座してるからやり辛いというのもあるだろうけども
だからって仕事の手を止めるほど優しくは無い
とはいえ、さすがにあのレベルのラブコメの後では意気消沈もするか…
仕方ない、か…言い訳としては、そう…いつまでも居座られると邪魔って所でいいでしょ
大井「提督…これを」
丁寧にラッピングされた小箱を取り出すと、すっと提督の方へ寄せる大井
提督「大井?相変わらずマメというか、律儀というか」
意外だとは思う。用意してくれた事にではなく、このタイミングで?
仕事の手を止めてまで渡すとは思ってなかった
大井「それ、褒めてないでしょう?」
提督「いえいえ」
大井「まぁ、提督が一つも貰えなくて、落ち込まれても面倒ですからね」
提督「皮肉かそれは?」
大井「さあ?でも、いらない心配ではあったみたいだけど、ね?」
大井の視線が、睦月と卯月の方へ向く
睦月「…はっ!?」
その時、睦月に電流が走った
今だ、今しかないっ、此処を逃せば明日になるっと
睦月「提督っ、睦月からもチョコ貰ってっ!」
提督「お、おぅ…」
がばっとチョコの入った小袋を提督に押し付ける睦月
卯月「あっ、あぁぁっ!?ずるいぴょんっ、うーちゃんからもあるぴょんっ!」
姉に続いて、提督にチョコを押し付ける卯月
睦月「それじゃあ、提督。ちゃぁんと食べてね♪」
卯月「残したら、うーちゃん達泣いちゃうぴょーん♪」
じゃねっと、二人仲良く手を振って執務室からささっと出て行くと
思い出したかのように、開けっ放しだった扉がゆっくりと閉じていった
ー
そうして、今度こそ静かになる執務室
たまに下らない事を口にしつつも、大井さんの仕事を手伝っている提督
普通逆だと思うけど、今更だ
提督「優しいのね…」
大井「別に…」
端的な会話だった
つまるところ、睦月達にチョコを渡すタイミング作るために
わざわざ変なタイミングでチョコを差し出した大井さんは、なんのかんので優しいと思う
大井「ちゃんと食べなさいよ…」
提督「わかってるよ…」
人の好意は素直に受け取れって、いつぞやに言われたか
ま、貰っておいてどうこうするくらいなら、最初から受け取ってはいないけど
提督「それじゃ、大井さんのから…」
大井「なんでそうなるのよ…」
提督「そういう気分なの…」
大井「あっそ…」
悪態を付きながらも、お茶の用意をしてくれる大井さんは、やっぱり優しいと思う
ー食堂ー
提督「おっ、望月めっけ」
望月「お?司令官じゃん、なにしてるのさ?」
その辺を彷徨っていた提督が
甘い匂いに誘われて食堂に顔を出してみれば、机の上で伸びている望月を発見する
提督「んー…望月からチョコ貰おうと思ってな」
望月「催促とかするもんじゃねーだろ…」
提督「何を言う。変に期待するくらいなら、此処で手に入れるか、玉砕した方が気が楽じゃないか」
望月「潔いっていうのかねぇ、これは…ま、あるにはあるけどさぁ」
そういう望月の視線の先
4号(12cm)サイズ位だろうか、小さめのチョコケーキが置かれていた
提督「あるんじゃないか」
望月「飾り付けがまだだからって、三日月が…」
提督「頂きまーす」
望月「うぉぉぉいっ!」
ケーキを見つけるやいなや、どこからかフォークを取り出し、さっと手を伸ばす提督
望月が慌てて止めようとするけども、すでにフォークの切っ先はケーキに届いていた
三日月「だぁぁぁめぇぇぇっ!」
提督「がふっ!?」
だが、その切っ先が突き刺さる直前
提督の後方から大声が聞こえたかと思えば
ドスッと、勢い良く三日月が飛びついた
提督「痛いよ、三日月…」
三日月「あ、ごめんなさい…でも、司令官がいきなり食べようとするから…」
提督「ん?三日月が食べさせてくるとか?」
三日月「ち、違いますっ違いますっ」
顔赤くして、両手をパタパタと振って否定してくる三日月
三日月「まだ未完成だからって…望月っ、見張ってて言ったのにっ」
望月「いや、止めたんだよ?あたしは?…司令官が聞かなかっただけでさ?」
提督「食欲を抑えれなかった、今は反省している」
いやだって司令官がさーって、望月に視線を向けられてみれば
一応は、反省のポーズを取る提督だった
三日月「はぁ…まったく。もう少しで完成ですから、望月で遊んで待っててくださいね」
油断もすきもありゃしないと、チョコケーキを持って調理場に下がる三日月
提督「さりげに生け贄にされたな…望月」
望月「たくましくなったねぇ…」
望月と…ではなく、望月で…日本語って難しい
ー
それから少しの間
机に寝そべっていた望月を、撫でたり突っついたりして遊んでいると
三日月「はーい。三日月特製チョコケーキ、完成です」
おまたせしまたっと、三日月がチョコケーキを持って戻ってくる
チョコのスポンジだけだったケーキの土台が
白いホイップクリームで飾られて、見た目にも鮮やかになっていた
それが3つに切り分けられ、それぞれに一個ずつイチゴが乗せられていた
提督「ほぅ…これは…」
三日月「えっと、どこか変だったでしょうか?」
じーっと、差し出されたケーキを眺めていた提督
その様子に、何か失敗でもあったのかと恐る恐る声を掛ける三日月
提督「いや、なんか三日月みたいなケーキだなって」
三日月「へ?そ、そうでしょうか?」
提督「うん、だってほら、黒と白だし?」
チョコケーキに白いクリーム
三日月の制服だって黒地に白いスカーフと、ツートンカラーでお揃いだ
それだけなら、皐月以下の睦月型は大体そうだけれど
三日月の髪が黒い分、余計にその印象が強まっていた
提督「もしかして、わざと?」
三日月「へ?」
きょとんとする、そんな言葉が似合うほどに、三日月の顔から力が抜けている
予想外。だって、普通にチョコケーキを作っただけだったのに
気づけば、プレゼントは私です、みたいな流れになってるんだもの
そんな金剛さんじゃあるまいし、なんて言ったら彼女に失礼だろうか
三日月「ちっ、ちがいますっ、ほんとに違うからっ!」
ぽふっと、赤くなる三日月の顔
ほんとに予想外だったのだろう、あたふたと一生懸命否定してくる
望月「でもさぁ、三日月」
三日月「な、なに?」
助け艦?なんて期待が三日月に宿る
望月が自分の分のイチゴを三日月のケーキにちょこんと乗っける
望月「ほれ、これで上から、赤白黒。ますますそっくりじゃね?」
にひひひっと、いたずらっぽく笑ってみせる望月
制服の黒白に、頬を染めてるその表情
まさに、上から赤白黒である
提督「望月、お前天才だな」
望月「ふっはっはっはっ。もっと褒めるが良いぞ?」
そして、すっごく感心する提督と、調子に乗る望月
三日月「っ~~!」
言葉もなく、頬を膨らませる三日月
なんで余計な事言うのって、睨みつけてはみるものの
素知らぬ顔で流された
提督「そう怒るなよ、イチゴあげるから」
三日月「むぅぅぅ…」
提督の分のイチゴが更に追加されるも、むすーっとしたままの三日月
イチゴ3つに膨れ上がったケーキは、頬を膨らませてる様にも見えた
別にイチゴが嫌いって訳じゃない、むしろ大好きだけど
なんか、こんなタイミングでもらっても、からかわれてる気しかしない
というか、その通りなんだろうけど
三日月「ふんっだ。返してっても返さないんだからっ」
乗せられたイチゴを摘み上げると、ぱくっと口に放り込む
はぁ…結局こうなっちゃった
そりゃ、バレンタインにケーキなんて渡したら、少しくらいは仕方ないけどさ
もう少しくらい、素直に受け取ってくれてもいいと思う
いやいや、そうするべきだって、うん
望月「…」
あーあ…三日月のやつ、やきもきしてるなぁ
あんな口尖らせてたら、司令官だってわかってるとは思うけど
提督「~♪」
ちらりと、提督の方を盗み見る望月
それはもう愉しそうに、三日月の様子を眺めてらっしゃった
望月「はぁ…」
分かってるのかねぇ…三日月が可愛いのは分かるけどさぁ
ほんと、手のかかる子達だねぇ
望月「ほら、司令官も一緒に食べようぜっと」
言いながら、三日月のすぐ隣、肩が触れそうな位置まで移動する望月
三日月「も、もちづき?」
どうしたの?と、困惑する三日月は置いておいて
司令官の方へ、こっちゃこいっとアイコンタクトを取ってみる
望月「…」
提督「…」
それを受取る提督
詳しいことは分からんが、その辺にしとけってことらしい
提督「そうだな。それじゃ、頂きますっと」
三日月「ええっ?司令官?」
望月に習って、その反対側に腰を下ろす提督
もちろん、三日月にべったりくっつけるような位置取りで
三日月「え、なに?二人共?」
右左、左右と、右往左往する三日月
それはだって、拗ねてみせたと思えば、両隣に妹と司令官が擦り寄ってきてる
また何かされるんじゃないかとか、考えてもしまうというもの
望月「べっつにー。偶には甘えたくなる年頃なんだよぉ」
こつんっと、三日月の方に頭を乗せる三日月
提督「いつもありがとな…三日月」
と、今度は司令官に頭を撫でられる三日月
三日月「っ~~」
意味がわからない…
望月に甘えられて、司令官に頭を撫でられて
嬉しいけども、意味がわからない
コレならいっそ、普通にからかわれたほうが安心するってほどに
三日月「そ、そんな事したって…イチゴ、かえさないからね…」
結局、どんな顔をしていいか分からず、俯いたままイチゴを頬張る三日月
提督(…可愛い)
望月(…可愛い)
なんて二人が思うのはほぼ同時だった
ー廊下ー
廊下を歩いていると、その先に見慣れた後ろ姿
歩く度にサラサラと揺れる緑色の髪は、風にそよぐ木の葉の様で
そしてもう一つ、キラキラと光を返す銀色の髪、月の光に揺れる波の様
なんて格好付け過ぎな気もするけど、本人は喜びそうだな
とか思いつつも、見つけてしまったのならやるしか無い
提督「なーがーつーきー♪」
長月「おっと…お前なぁ」
無遠慮に、長月の後ろから抱きつく提督
そのまま頬ずりまで始める提督を、面倒くさそうにしながらも好きにさせてる長月
長月「んで、なにか用か?」
一通り、提督が満足した所で先を促す長月
提督「そんな、用がなければ帰れだなんて…提督寂しい」
長月「そうは言ってないだろう…」
提督「そんな、いつまでも一緒にいてね、なんて…長月ったら大胆ね」
長月「そこ、までもっ…いや、べつに、いいけど…」
提督「あら~…」
そこで照れられると、言ってる私も恥ずかしいんだけどな…
気恥ずかしさに顔を逸らす長月
ほんのりと、耳まであかくなっている その顔はどんな表情をしてるだろうか
菊月「んで?」
いつものやり取り
それが一段落した所で、菊月が端的に先を促してくる
軽くラブコメやった後に、顔色一つ変えてないのは
興味が無いのか、分かってないのか
提督「菊ちゃんって、結構マイペースよね…」
菊月「そうか?」
提督「そうだよ」
菊月「そうか…そうだな」
司令官がそう言うならそうなんだろうと、納得しておく菊月
そのまま小袋からチョコを取り出すと、もぐもぐと食べ始める
提督「あ、M(むつき)&M(むつき)」
菊月「うむ。睦月から貰ってな」
どうやらあの後、配って歩いてたらしい
提督「菊ちゃん、菊ちゃん…」
チョコの入った袋を指し示す提督
菊月「なんだ、欲しいのか?」
提督「うんうん」
菊月「そうか。ほら…」
提督「あー…ん」
菊月が差し出したチョコを、そのまま口で受け取る提督
一口サイズのチョコレート
それを受取るとき、少しだけ菊月の指先に唇が触れたりもしたけれど
菊月「美味いか?」
提督「むぐむぐ…うむ」
菊月「そうか、良かったな…ん、むぐむぐ」
そんな事気にせずに、チョコを摘んで自分の口に運ぶ菊月
じみーに、間接キスってことになるけれど
興味が無いのか、分かってないのか…
大穴で分かった上でって線もあるけど、如月じゃあるまいし…
いや、如月の妹だしって見方もあるにはあるが
提督「で、なつきはチョコくれないの?」
長月「は?いや、別に、私じゃなくても、皆から貰えるだろう…」
こんな時期だ、そんな事も考えなくもないが
拙い手作りをプレゼントして困らせてもあれだし…
だいたい、皆から貰うだろうし…
本人だって、チョコ漬けになるーとか言ってたし…
提督「がーん。なつきがチョコくれないなんて…」
わざとらしく、おおげさに、落胆してみせる提督
長月「おいちょっと待て、お前だってチョコ漬けになるーとか言ってたじゃないかっ」
提督「それはそれ、これはこれ」
長月「なんだよ、それ…」
子供みたいな理屈に、口を尖らせる長月
提督「いいもーん。なつきがくれないなら、菊ちゃんから貰うから」
菊月「ん?ふふっ、食いしん坊め…ほら」
突然、矛先を向けられたにもかかわらず
当然の様にチョコを差し出す菊月
提督「あー…ん…むぐむぐ」
菊月「ん…むぐむぐ」
提督「美味いな」
菊月「うん、美味いな」
二人して美味い美味いとか言いながら、M&Mを頬張り続ける
視界の端で、長月が唇を尖らせているが可愛いからほっとこう
提督「あー…ん?」
菊月「姉さん?」
長月「いや、別に…なんだ、その…」
再度、菊月からチョコを貰おうとした時だった
提督の口に入る前のチョコレートを、不意に長月が横から掻っ攫っていた
自分でも良く分かってないのだろう
掻っ攫ったは良いが、自分で食べるわけでもなく、困ったような顔をしていた
提督「ふむ、それじゃ…長月。あー…」
チョコを持ったまま固まっている長月
そんな彼女に、口を開けて見せる提督
長月「ぁ…うん。ほ、ほらっ…」
提督「ん…むぐむぐ」
半ば押しこむように、提督の口にチョコを突っ込む長月
そんな自棄気味にやってしまえば、チョコを摘んだ指先は当然の様に提督に唇に触れてしまい
それがまた、彼女の頬を赤くさせていた
長月「今回は、これで…その、我慢してくれ…」
提督「にひひひひひ…」
長月「笑うんじゃないっ!まったくもう、まったく…ほんとに」
困ったやつだな
菊月「むぐむぐ…甘いな…」
そんな二人の様子を眺めつつ、チョコを食べ続ける菊月だった
ー工廠 前ー
夕張「それで?提督はチョコもらえたの?」
夕張が、スティックタイプのレーションを片手に、からかうように聞いてくる
それはだってそうだろう、貰えてないはずがないのだから、それは夕張だって知っている
提督「モテモテだぜ?大井さんにー、むつきとうづきともちづきとみかづきときくづきとながつきに…」
「づき」の文字がゲシュタルト崩壊しそうな字面だと思う
瑞鳳「早口で言われると、お経みたいね…はい、これ」
時刻はお昼時。提督が工廠の前までやって来たら
ちょうど、瑞鳳がお弁当を広げていたものだから、ご相伴に預かった次第だった
冬空の下、少々肌寒くはあるものの、鉄と油臭い工廠内よりは余程良いだろう
提督「ありがと…ねぇ、瑞鳳?」
瑞鳳「んー?」
受け取ったのは、おにぎりと卵焼き、やはり卵焼きは外せないらしい
食事を作れば、いつでも付いてきてる気がする
まあ、それだけ何度も作ってるだけあって、味の方はお墨付きだ
だから心配したのはそこじゃない…ただ、中身が気になって
提督「おにぎりとか、玉子焼きの中にチョコとか入ってないよね?」
瑞鳳「いれるかそんなもんっ」
提督「ほっ…そりゃよかった」
さすがに朝からチョコを摘んであるいてたのだ
そろそろ、塩気があるものが欲しくなってきていた
提督「いや、季節柄やりかねんなーって思わなくもなかったし」
瑞鳳「あのね?作ったとして、食べたい?」
・・・卵味のチョコか、チョコ味の卵か…
まあ、チョコケーキだって卵とチョコだ…やりようはあるんだろうけどなぁ
提督「夕張が味見してくれるってっ」
夕張「いーりーまーせーんっ」
べーって、舌を出して拒否なされた
夕張「素直に自分で食べればいいじゃないの?」
瑞鳳からのーって言われたら、断れないでしょ?
提督「む…それは、まあ…」
瑞鳳「ふーん…にひっ♪」
難しい顔をして頷く提督
なんのかんの言っても受け取ってはくれるらしい
と、そこで瑞鳳が笑みを浮かべて、続く言葉は…
瑞鳳「作ってこよーかなー?」
提督「え、まじ?」
なんて、からかうように提督を覗き込む瑞鳳
あははは、困ってる困ってる
何時も人をからかってるんだ、たまには からかわれる側になってもいいはずだ
…ほんとは作ろうかとは思ったんだけどね
でも流石に、食べて貰う人が素直に喜べないものはどうかと思うし
夕張「あははははっ。モテるってのも大変ね、提督?」
提督「からかうなよって…っても、何処も似たようなもんじゃない?」
夕張「そうねぇ…鎮守府なんて女所帯になりやすいし…」
なりやすいどころか、提督からして女性ってこともザラだし…
作業員は妖精さんだったり、それですら女の子っぽいし…いや、妖精に性別があるかは不明だけど
瑞鳳「その中で一個も貰えない提督さんってさぁ…」
提督「…」
夕張「…」
「可哀想過ぎる」…それが3人の答えだった
本命である必要はない、義理ですら、もののついでですら渡してもらえないって
どんだけ厳しいのか、あるいはどれだけ嫌われればそうなるのか
提督「というわけで、私が特別モテてるわけじゃないって、さ?」
夕張「そんなこと言って、照れてるだけなんでしょ?」
提督「うるさいよ…」
夕張に小突かれ、逃げるように顔を背ける提督
まあ、自分で言ってて分かってる筈だ
チョコ一つに乗っかってる好意の程は、じゃなきゃ今日一日逃げまわってるタイプの人だし
ていうか、事あるごとにラブコメはじめて、見てるこっちが恥ずかしいっての
それで貰うのが義理ばっかりってそれこそありえない
瑞鳳がチョコ入りの玉子焼きを作っちゃった、なんて言い出すほうがまだ現実味があるってもんだ
提督「それにアレだぞ?私一人でホワイトデー全員分とか、ひでー話じゃないか」
夕張「そこは甲斐性ってやつでしょ?」
瑞鳳「うんうん。っても、どうせ今年もカレー作るんでしょ?」
提督「嫌なら市販のお菓子詰め合わせにするぞ…」
いや、割りとまじでそこまで考えて良いと思う
瑞鳳「わーい♪瑞鳳、提督のカレーだいすきー♪」
夕張「普通に美味しいからね、普通に」
提督「おまえら、褒めてないだろ…」
なんて言ったら、「もちろん」っと二人同時に返って来た
夕張「それじゃ、これ」
提督「ん?」
差し出されたのは、夕張が頬張っていたレーションだった
夕張「提督のカレー引換券?みたいな?」
提督「ああ、そう…」
これやるから、カレーくれってことらしい
瑞鳳「あ、私は卵焼きと交換でいいよね?」
提督「ええ、ええ、良いですとも。極力美味しいの作りますよ」
期待されてるんだか、されてないんだか分からんけども
作る以上はまあ、やるだけやらないとなぁ…
「よし、金剛に手伝ってもらお」
「やめなさい」
「カレーうどんになっちゃうよっ」
そんな、お昼の一時でした
ー食堂・キッチンー
如月「~♪」
鼻歌交じりに火の前に立つ如月
そのリズムに合わせて、フリルの付いたエプロンがふわふわと揺れている
提督「たのしそうね?」
如月「あら、司令官?」
そんな彼女の後ろから顔を覗かせる提督
覗いた先には、湯煎されたチョコがドロドロに溶けていた
提督「にしても…すげー量だな」
寸胴とまではいかないまでも
大きめの鍋に溶かされたチョコは、2,3人でかかってもお釣りが来そうな量だった
如月「ええ、皆から余ったチョコを集めてね」
提督「…まさか、これ…私にとか言わないよな」
それは流石にきっつい…鍋ごととか勘弁して欲しい
如月「うふふふ。大丈夫よ、司令官のは別に用意してるから」
提督「ふぅ、それは助かるけど…じゃあ、これは?」
如月「皆のおやつにね?この間の大豆も余ってるし」
湯煎されたチョコの側には、ざるに盛られた大豆が鎮座していた
提督「まーだ、こんなにあったのか…」
如月「流石にただの大豆じゃね…」
おやつに…とは言ったものの、ただの大豆を好き好んで食べる娘もおらず
節分を過ぎれば過ぎるほど、山積みのまま放置されていた
如月「それでね、チョコフォンデュみたいにすれば食べてくれるかなーって?」
提督「ああ、なるほど…」
確かに、豆にチョコの組み合わせは良くあるし、案外といけるかもしれない
如月「それよりも司令官。お願いがあるのだけれど?」
提督「ん?」
如月「ゆー?いつまでも隅っこにいないで、こっちおいで?」
ゆー「あの…Admi…て、提督?」
如月が声を掛けると、キッチンの奥からゆーが顔を見せる
だが、どうにも歯切れが悪い
元から活発な方でも無いけれど、それに輪をかけて もじもじしている
良く良く見てみれば、後ろに手を回して何かを隠しているようだった
如月「からかったらダメよ?」
提督の袖を引き、ちょっと背伸びをしてから
その耳元で、そんな事を囁く如月。お願いというのはそういう事らしい
ゆー「えと…その…これっ」
おどおどと、提督の前にまで歩いてくる ゆー
すこしの間、逡巡する様に視線を彷徨わせた後
意を決して、背中に隠していたものを差し出した
ゆー「バレンタインはチョコを渡すものだって…だから、一生懸命作りました…」
その手には、赤と黒のチェック柄で包装されたチョコレート
ゆー「あの、えっと…ゆーの初めて、貰ってくださいって…はい…」
提督「…」
如月「…」
如月と二人でしばしの沈黙…
いや、まあ、分かる…分かっている
ゆーの初めて (作ったチョコレート) 貰ってください…
うん、きっとカッコの中が足りないだけだ
そうでなければ、このチョコと思わしき箱の中身が、本当にチョコなのか大分怪しくなってくる
そう、普通に受け取れば普通の言葉
変な風に受け取った奴は、きっとロリコンかロリコンの振りをしたロリコンだろう
提督「…」
無言のままに、隣の如月へ視線を投げる
「おまえ、変なことおしえてないだろうな」って言葉を含めて
如月「…」
すると、「私じゃないわ」っと、少々大げさに首を振って否定してくる
ゆー「あ、あの…まちがってた?」
反応の薄い提督に、不安になり恐る恐る声を掛けるゆー
提督「あー、いや。ちょっとビックリしただけだよ、ゆーから貰えるって思ってなかったし」
チョコを受取ると、ゆーの頭に手を置いて くにくにと撫で回す提督
ゆー「ぁぅ…そ、それじゃ、失礼しますって、はい」
ずれた帽子を直し、小さく礼をして、たたっとキッチンから出て行く ゆー
照れているのだろうか、去り際の横顔が少し赤くなっていた
如月「ふふっ。可愛いわね…ほんと」
昔は自分も ああだったろうかと、染み染みとしてみる如月
しかし、思い返しては見たものの…
提督にからかわれてばっかりの思い出が半分と
後は…黒歴史…とまでは言いたくないが、その場の勢いでやってしまったような
小っ恥ずかしい思い出が、ちらほらと出てくる出てくる
提督「如月も昔はああだったよね?」
如月「そ、そうね…」
ほら、司令官もこう言っているし…なんて、そんなわきゃない
冗談だって、それは分かるが…あんまり否定もしたくない
私だって、あんな風に初々しい頃はあったはずだ、多分
記憶の彼方に埋もれてるだけだ、きっと
そう思えばこそ曖昧に頷いてみせていた
提督「…ふふっ」
如月「なんで笑うのよっ!」
堪えきれず、吹き出した提督を小突く如月だった
ー
提督「そいや、私のチョコは別にあるって言ってたけど?」
如月「さぁ?どうだったかしらねぇ…」
つーんっと、そっぽを向く如月。どうにも、ご機嫌斜めのようだ
提督「何拗ねてるのさ?」
如月「拗ねてないもん…」
そう、別に拗ねてはいない
ちょっと意地悪したくなっただけ、私だけからかわれるのは不公平だ
提督「もんって…。だったら、くれてもいいじゃん?」
如月「…そんなに、欲しいの?」
提督「めっちゃ欲しい」
如月「もぅ、しょうが無いわね…それじゃあ…」
フリルの付いたエプロンを揺らして後ろを向く如月
湯煎され、ドロドロになったチョコを小皿に移すと、提督の方へ向き直った
まぁ、結局…渡したくてしょうがなかったのだ
ただ、提督に欲しいとか言わせたかっただけで…
如月「はい、如月味のチョコレート…め・し・あ・が・れ❤」
小皿に小指を伸ばしてチョコを掬い上げると、その指先を提督の方へと差し出す
提督「…」
よくやる、と…本気で思う
これに比べたら昔の小っ恥ずかしい思い出なんて、初々しいの部類に入るんじゃないのかと
如月「ほーら。早くしないと溢れちゃうわ?」
言ってる側から、如月の細い小指の先にチョコが雫を作り始めている
ていうか、早くして欲しい…こっちだって恥ずかしいの我慢してるんだから
一思いにパクっといくなり、指先を舐めるなり、どうとでもして欲しい
提督「うん。それじゃ、頂きます…」
意を決して、如月の指先に口を近づける提督
まあ、恥ずかしいのは最初だけ、こんなもんは勢いだ、やってしまえばどうとでもなる
それに、ここで「できませーん」って言うのも、負けた気がするし
如月「ぁ…」
如月の小さな口から、小さな声が漏れる
不意に出てしまった、溜息のような艶めかしい吐息
提督の唇が触れている、小指の先に触れている、キスでもする見たいに触れている
そして、ちろっと子犬がそうするかのように、舌先でチョコを舐めとるとゆっくりと唇を離す
その途中、残ったチョコが名残惜しそうに糸を引いていた
提督「ごちそうさま…」
如月「お粗末さまでした…。あはは…思ってたより恥ずかしいわね」
照れ隠しの代わりに曖昧に笑って、赤くなった顔を誤魔化す見たいに笑顔を浮かべる如月
提督「まあな…。でも、私はてっきり、唇にチョコ塗って ちゅーでもせがまれるかと思ったけど…」
如月「・・・あ」
提督「あって…」
そうかそうだわそうだった…その手があったか
いやでもまって、それってこれより恥ずかしいんじゃないの…
ああ、でも…司令官とちゅーできるならアリ?
などと、どうしようもない思考に意識を浸していると
がたっと、物音が聞こえてくる
なんだろう?と、如月が顔を上げてみれば
キッチンの入り口から、気まずそうにこちらを覗いている ゆーと目があった
如月「・・・え?ゆー…どう、して?」
どうしてここにいるの?さっき出て行ったじゃない?
なんて言おうと思ったけれども、動揺した口は上手く動かず
ぎこちない言葉が出るだけだった
ゆー「いえ、その、あどみ…て、ていとくが、チョコ、食べてくれるかなって…それだけだから…」
どうやら、渡したチョコの行方が気になって覗いていたらしい
随分と可愛らしい事をする…なんてものは提督の感想だった
如月「えーっと…見た?」
端的な問い。しかし、これ以上のない問いでもある
ここで、素直に「何を?」と、返ってくるならそれで大丈夫なはず
ただ、でももし、例えばそう…
ゆー「い、いえ、ゆ、ゆーは何も見てませんって…」
こんな風に視線を逸らして動揺された日には…確定だと思っていい
如月「あのね、ゆー?その、変な事をしていたわけではないのよ?」
そう、別にやましいことをしていた訳じゃない
ただ、人に見られるのはちょっと憚られるってだけで…
ゆー「はい、分かってます…Admiralと良いことをしていただけですって…はい」
ほんのりと、ゆーの白い横顔に朱色が差し込んでいた
如月「待ちなさい、良い事って…別にそんなんじゃ…なくてね?」
そう、ただのスキンシップ。まうすとぅまうす ですらない
いや多分きっと、この場合そうであったほうがまだ良かったのかもしれないけれど
でもただのスキンシップです、そう言い張りたい
ゆー「あの、ゆー…ちょっと、用事を思い出しました…って」
すっと、一歩後ずさる ゆー
そのうち後ろを向いて全力疾走しそうな空気が漂ってくる
如月「あの、逃げないで?大丈夫、大丈夫だから…」
ゆー「はい、ゆーは大丈夫です、へっちゃらですって…では…」
そしてついに、如月に背中をむけると、たたっと、その場から走り去った
先ほどチョコを渡した時は、照れ隠しの一環のようであったが
今回はどうにも逃走という言葉が似合っていた
「ちょっ、まっててばーっ」
「いや、如月姉さんっこっちこないで、ゆーにも乱暴する気でしょうっ」
「どこで覚えたのよっそんな言葉っ」
「はいっ、うーちゃん姉さんが言ってましたってっ」
「あんのっばかうづきーっ!!」
「あとあとっ、あぁいうのしってますっ ふじゅんいせいこーゆーですってっ」
「随分と難しい言葉覚えたじゃないのっ!」
「はいっ、やーよが一杯教えてくれましたってっ!」
「やぁぁよぉぉいぃぃぃっ!!」
そんな風にバタバタ遠ざかっていく足音
提督「明るくなったもんだ…随分と」
誰に似たのやら…いや…
提督「誰でもないか…」
あれは、あのテンションは…この鎮守府の日常だ
朱に交われば赤くなるかな…
「如月姉さんのっえっちぃぃっ、不潔ですってっ」
「不潔って…あなたねぇ…もうっ、逃さないんだからぁぁっ」
騒々しさが1ランク上がった鎮守府、如月の明日はどっちだ
ー
遠ざかっていく二人の喧騒を見送る提督
提督「で…お前は ゆーをどうしたいんだ?」
それは、どうしても問いかけずにはいられない言葉だった
弥生「どうって?そんなの…いい娘に育てるよ?そう…私のようにね」
小さな胸に手を置いて、自身の正しさを主張している弥生
これが卯月や睦月だったら、得意気にドヤ顔にでもなってるのだろうけど
相変わらずの表情は固いままだった
提督「…」
あ、これはダメかもわからんね
それが素直な感想だった
弥生「それより司令官…ちょっと、いい?」
提督「ん?」
弥生「これ…」
そっと、差し出されたのは一枚の封筒
薄い紫で、ハートのシールで止められているあたりは季節柄だろうか
提督「これは…まさか、中に紙切れみたいなチョコが入ってたり?」
弥生「しないしない」
提督の戯れ言をサクッと否定して、本題に入る弥生さん
弥生「要件は中に書いてるから…ちゃんと読んでね?」
提督「ふーん…」
弥生「すとっぷ…」
ピリっと、封を切ろうとした所で、弥生に手を捕まれ止められる
提督「ん?」
弥生「本人の前で読むようなものじゃない…司令官はデリカシーが足りない」
そう、わざわざ目の前で読ませるようなら
さっさと口で言っている、それが出来ないから文に纏めてるというのに
提督「デリカシーね…」
ぴりぴり…
弥生「ちょっと…」
納得した風を装い、更に封を解こうとすると、目を細めた弥生に睨まれた
提督「冗談だって…んじゃ、後でな」
弥生「うん、後で…」
提督が封筒をしまうと、ようやっと弥生も手を離す
弥生「あ、でも、夕方までには読んでね?」
提督「細かいな…」
弥生「ムードとタイミングは大事…うん」
そこまで言うなら、今読んでもいいじゃないと思うが
複雑な乙女心か、あるいは準備に手間取ってるのか…
提督「…それ、一人で読んでね、って続くの?」
弥生「当然」
何を当たり前な事をと
大して表情は変わってないけど、そんな事を言いたげに見えた
提督「分かった分かった。夕方までに一人で読めば良いのな?」
弥生「うん…読んだだけって意地悪もなしだから、ね?」
提督「信用ないね」
弥生「司令官の悪戯好きには困ったもの…」
提督「自分の妹に言ったらどう?」
弥生「うん、後で言っとくね」
だからといっても、提督の悪戯好きの称号は外してくれないらしい
弥生「それじゃ…」
軽く手を振って、去っていく弥生
その途中、何度か振り返りながら
「絶対読んでね?」「忘れちゃやだよ?」と、念を押していた
提督「…ラブレターって風でもなさそうだな…」
弥生なら、突然「好き」とか言い出して
困惑してる人の横で不思議そうな顔してそうだ…
提督「いや…でもないか」
益体もない想像を頭を振ってかき消す
弥生だって女の子だし、まあ色々あるんだろう
どっちにしろ後で分かる話だ、此処で考えてもしょうが無い
提督「さて…」
再び歩き出し廊下へ出る、喧騒はとうに聞こえなくなっていたが
ゆーは捕まったのだろうか…
ー球磨達のお部屋ー
提督「たーまーにゃーんっ、ちょこちょーだーいっ」
多摩「何をメルヘンな事を言ってるにゃ…」
部屋の隅、畳の上で丸くなってる多摩
そこへゴロゴロと転がっていく提督が、多摩にぶつかって動きを止める
提督「多摩よ…夢は見るものだよ」
よっこいしょと、多摩のお腹に頭を乗せてくつろぎだす提督
多摩「んにゃ…それには大いに同意するけども…」
そんな提督に、何を言うでもなく好きにさせてる多摩
その視界の端っこ、意味もなく付いていたTVがCMから何かの番組に切り替わっていた
多摩「…」
毎週同じ時間にやってるアニメ番組
多摩にとっては時報と大して変わらない程度のそれ
ただまぁ、毎週毎週耳にするせいか…なんとなく最初の入りだけは耳に残っていた
多摩「ふふっ…多摩のチョコレートか…欲しけりゃくれてやるにゃ…」
提督「あぁ…。さがせ、この世の全てをそこに置いてきた」
多摩「世はまさに…」
と、此処で言葉を区切り、提督と息を合わせて、せーのでっ
北上「あ、チャンネルかえるよーん」
二人が口を開くその前に、無慈悲に切り替わるテレビ画面
多摩「にゃんという…」
提督「北上様…せめて最期まで言わせてよ…」
北上「ふっふっふっ…君たち、そんな事を言ってる暇があるのかね?」
不敵に笑う北上様
そして、その言葉通りに球磨が居間にやってくる、肉を抱えてやってくる
球磨「お前たちーっ、肉の時間だクマぁぁぁ」
でかいお皿に肉が山盛りにされている
それをウェイトレスよろしく、手の平で支え両手で運んでいる球磨
その後を七輪片手に続く木曾さん
多摩「提督…遊びは此処まで…」
提督「そうね…」
よっこいしょと。多摩のお腹から体を起こす提督
多摩も体をぐーっと伸ばすと、ずるずるとちゃぶ台の方へと向かって行く
そこには、すでに七輪が用意され、席についてみれば炭火の熱さが伝わってくる
球磨「提督よ?チョコはたくさん貰えたか?」
姉妹たち、そして提督が席に着いたの確認すると、ゆっくりと口を開く球磨
提督「おう」
球磨「くまくまくまくま♪それは、良かった…しかし、此処から先は大人の時間…」
チョコなんて女子供の食べ物だクマ、肉だ肉を食うクマ、以上も以下もなく肉を食うクマ
そう、ただそれだけのこと
しかし、ただそれだけの喜びは最上級の幸せだ
球磨「それでは皆さんご一緒に…いただきます」
球磨が両手を合わせると、続いて「いただきます」と、皆で礼
それは試合開始を告げるゴングの代わりでも合った
木曾「おいっ球磨っ、おまえっそれほとんど生じゃないかっ!」
球磨「生の何が悪いっ、焼く奴がいて食べる奴がいるっそれだけの事クマっ、球磨の食事はまだ終わってないクマっ」
木曾「そんなの食べる奴の理屈じゃねーかっ、せめて火を通せっ火をっ」
じゃないとその内、皿の上の肉にかぶりつきそうだ
提督「あいつ、その内生肉に食いつかないだろうな…」
大井「平気よ、一応…刺し身でも食べられる物だから」
どうせこうなるだろうからと、準備は抜かり無く
多摩「よく出来た妹だにゃ…」
提督「嫁に欲しいくらいだね」
北上「安心しなよ提督。もうケッコンしてんじゃん?」
にひっと笑いながら、提督を小突く北上様
提督「おおっ、そうだったな」
大井「ばか言ってないで…良いから、さっさと食べなさいな」
焼けた肉を皿に取り、提督の方へ回す大井さん
提督「…ピーマンが…玉ねぎが…キャベツもか…」
焼き肉を食べてるのに、どうして野菜が盛られているのだろう
大井「なにかご不満かしら♪」
笑顔の大井さん。笑顔だけども、暗に黙って食えと言われてる気がする
提督「多摩ちゃん、君の妹怖いよ…」
多摩「自分の嫁じゃないか…面倒くらい見るにゃ…」
大井「聞こえてますよ♪ ん♪」
じろりと、笑顔で睨まれると、素知らぬ顔をして肉を食べ始める二人
まったく、からかうのも一苦労だ。そもそも、からかうなって話でもあるのだが
好きな娘には、ちょっかい出したくなるお年頃なんだからしょうがない
北上「ほい、提督。これ使ってみてよ?」
そう言って差し出された小皿には、黒い液体が波打っていた
提督「これは?」
北上「良いから良いから、とりあえず肉にべたーってさ?」
中身を聞いては見たものの、北上様を信じてーっと言われるだけだった
提督「…ま。北上様が言うなら良いけども…」
若干の不安はある。なにせ、どことなくチョコの匂いがする
朝からチョコ尽くしだったし、体に染み付いてるだけかもとも思ったけど
それに肉を付けてみたら、さらにふわりっとカカオの芳醇な匂いが広がった
提督「…ほんとに大丈夫なんだよな…」
箸を肉を摘み上げる…滴るのは肉の脂と混ざった黒い液体
北上「不味かったら、何でもいう事聞いてあげるよん?」
提督「あむっ」
北上様がそう言うやいなや肉にかぶり付く提督だった
北上「早いね…」
即断即決。最初からこう言っとけば良かったと思う程、あっさりと肉を口に放り込んだ
多摩「何でもとか言うから…きっと今頃、頭のなかはピンク色になってるにゃ」
北上「Bまでにしてくれると助かるんだけどねぇ…」
ま、それも不味ければの話だ
単純に不味いのと、口にあわないのでは意味が違ってくるが…ま、屁理屈かしらねこれは
提督「…北上様」
北上「どうだった?」
ゴクリとお肉を飲み込んだ後、姿勢を正して北上様に向き直る提督
そして、おもむろに北上様の手を取ると…
提督「結婚して」
北上「おーけー提督、落ち着きなって。もうしてるからさ?」
提督「そうだったなっ」
手を取り合う二人の指には、お揃いの銀色の指輪がキラリ★
北上「ていうかなにさ?そんなに不味かったかい?」
確かに何でもするとは言ったが、ABCすっ飛ばしてケッコンしろなどとは…
小首をかしげた北上が、黒い液体に肉を浸して口に運ぶ
ドンッと舌に乗っかる肉の旨味、それを口の中に広がったカカオの風味が優しく受け止める
バラバラに溶けていきそうな、二つの味を黒胡椒の刺激がキリッとまとめ上げ
飲み込んだ後には、カカオの酸味とほんのりとした甘みが
肉の脂でクドくなった口の中を落ち着けてくれる
うん、美味しいと思うんだけどねぇ…
提督「いや、逆逆。とっても美味しかったから言ってるのだよ?」
北上「お気に召したようで何よりだぁね」
食べた後で言えることは
カレーにだってチョコ入れたりするんだから、それが不味いって事はない
要は使いようだ。とか言っても、メシマズ勢にそれをやらせると大変なことになりそうだなとも思うけど
隠れてない隠し味ほど恐ろしい物はない
球磨「しかしあれだクマ…薄い肉はさっさと食えるのは良いが」
肉厚が足りないせいか、いまいち満足感が足りないな
球磨「次はステーキにでもするか…」
いじいじと、爪楊枝を口の中に突っ込みながら
次の肉へと思いを馳せる球磨ちゃん
木曾「やめろよ。それこそ生のまま食うだろう、おまえは」
球磨「木曾よ。生とレアは別物だクマ」
木曾「分からん…」
レア派とウェルダン派の溝は深かった
多摩「あっちには色気が足りないにゃ…」
多摩の右側ではラブコメやってるし、左側では豪快に肉を食ってる姉と妹
大井「そういう貴女はどうなのよ?」
多摩「にゃ?そんなの、付かず離れずにゃ…猫とはそういうもの」
確かに、本人がそういうように
良く良く一人で転がっているのを見るが、そうかと思えば誰かと戯れてたりもする
そう見ると、猫っぽくはあるのだけれど
大井「猫じゃないんじゃなかったの?」
多摩「猫とは被るものだよ?」
にゃしっと、口の端を釣り上げる多摩
大井「化けの皮…じゃないでしょうね?」
多摩「にゃししししっ、大井程ではないよ?」
大井「ん♪今なにか♪」
多摩「おー怖いにゃー怖いにゃー」
大井「ふんっ」
だが実際の所、姉の事がよく分からんってのは確かだった
いつも、にゃーにゃークマクマと、取ってつけたように口にしている
同じように、ぴょんぴょん言ってる奴もいるけれど
面白半分で可愛さアピールしてるアレとは何か毛色が違うような気がする
この違和感は…そう、例えば…その語尾から、にゃーとかクマを取り除くと
大井「あんた達って…結構、口悪いわよね?」
多摩「ふふっ。妹よ、それ以上はいけないな…」
大井「…ま、良いけどね…」
意味ありげに微笑む姉から視線を逸し、なんとなく木曾の方へと目を向ける
こいつも、「木曾だキソー」とか、言い出したら強くなんのかしら?
大井「ふふっ…ないわ」
自分で想像しておいて、思わず吹き出す大井さん
いやだって、今更だが あまりにも雑過ぎる。せめて何か動物系にでもするべき
例えばそう…「木曾だワンっ、お前に最高の勝利を届けるワンっ」
大井「あふっ…ないない」
堪らず口元を抑える大井さんだった
木曾「…なに人の顔みてわらってんだ?」
大井「別に、木曾さんには可愛げが足りませんよねって?」
木曾「おいおい、冗談はよしてくれ、鏡見たこと無いのかよ?」
大井「あら?貴女よりはしっかり見てますわよ?」
木曾「曇りガラスじゃ意味ねーぞ?」
「…」
じりっと、いつの間にか睨み合ってる二人
球磨「てめーら…食事中にくだらねー事で騒いでんじゃねークマ」
「げっ…」
じとっと、二人の背中に流れる冷や汗
やばいやっちまったと、同時に思うがもう遅い
球磨「そんな元気があるなら、海(おもて)に出るクマ、食後の運動だクマ」
「ひっ…」と、縮こまる二人の首根っこを掴んで
ずるずると引きずりながら出て行く球磨ちゃん
「お前が突っかかってくるからっ」
「あんただって、あのくらいさっと流しなさいよっ」
廊下の向こうから聞こえてくる言い合いも次第に小さくなっていった
ま、数分後にはまたドンパチと騒がしくなるんだろうけど
北上「そいじゃ、残りの肉食べちゃいますか」
やがて、黄昏の水平線にドンパチと始まる砲雷撃戦
それをBGMに、「はーい」「にゃー」と、提督と多摩の声が重なった
ー母港ー
日も落ちて、球磨たちの演習(姉妹喧嘩)が一段落して見れば
港も平時の静けさを取り戻し、ただ潮騒の囁きが寄せては返している
「あれ?」
そんな中、二人の足が止まった。片方は皐月で、もう片方は提督さん
お互いに向かい合うと、不思議にそうに首を傾げ合う
皐月「こんな所でなにしてるのさ?」
提督「そっちこそ?」
別に、港にいるのが問題ということはないけども
タイミングを図ったように、鉢合わせになったのが気にはなる
皐月「ボクはちょっと弥生に、ね?」
続けて「司令官は?」と、目配せをしてくる
提督「多分同じ…此処に来いってさ」
懐から、薄紫の封筒を取り出してヒラヒラ見せびらかしてみる
皐月「…ぁぁ、そういう」
提督「みたいね…」
気遣いなのか,お節介なのか
今朝方、司令官に渡すチョコもって此処に来て
なんて言われた時には、何を企んでいるんだか、なんて思わなくもなかったけれど
だって、わざわざ夜の海にチョコ持ってきてなんて、あからさま過ぎる
どっちみち、二人のときに渡したかったし丁度いいと言えばそうなんだけど…
多分、いや絶対確実に、どこかで覗いてるんだろうなぁって…まぁ、仕方ないかな
途中で割り込んでくるなんて、野暮なことはしないだろうし
恋のキューピットか?あるいは面白半分か、判断には困るけど
まあ、夜の海に二人きりって絵面も悪くはないかな
皐月「うん…じゃあさ…その、これ?」
そっと、両手を差し出す皐月
その上には、赤い包装紙で包まれた小箱、三日月型の飾りが可愛らしい
それは、誰がどうみたってバレンタインで渡すようなそれであった
皐月「ちょ、ちょっと小さいけど、さ?ほら、でも、一杯合っても食べるの大変だろうし、皆からも貰ってるだろうけど、その…」
受け取って欲しい
たったそれだけの言葉なのに、恥ずかしさで口が滑り、紆余曲折と曲がりくねっていく
提督「…」
なんだろう…照れてる皐月なんて、いつも見ているのに
こう改まられると、こっちまで恥ずかしくなってくる
あいにくと月の光は顔を出さず
光源といえばまばらな外灯と、鎮守府から漏れてくる光だけ
そんな拙い灯りの中で、浮かび上がる彼女の姿
目に付くのは金色の髪。薄暗がりの中、黒い制服も相まって
そこだけ、切り取ったようにキラキラと輝いて見える
顔を伏せているせいで、目元は前髪に隠れて見えないけども
ほっぺや首筋は、それと分かるくらいに赤くなっていた
皐月「だから、その…受け取って欲しいかな、なんて、さ?」
提督が皐月の様子に惚けていると
ようやっと、受け取って欲しいと、口にする皐月
提督「…」
皐月「し、司令官?」
チョコを受取るでもなく、黙ったままの提督が気になり
おっかなびっくり、顔を上げる皐月
そんな風にして、上目遣いで見上げてくる皐月を見ていたら
あ、ダメだな…そう思っていたし、そう思った時には、自然と手が伸びていた
皐月「へ?わわっ!?」
提督の両手がチョコをすり抜け、皐月に伸びると
そのまま、きょとんとしている皐月の両脇を掴み、ゆっくりと持ち上げた
最初はさ、チョコ貰って照れてる所を見られるのもアレだし、どうやってからかおうかなって考えていた
けどダメだったよ。小さなチョコを手に、恥ずかしさに もじもじしている皐月を見ていたら
からかうとか、なんだとか、そんな気はとうに失せていた
自分で抱き上げた皐月を見上げていた
満天の星空を背景に見上げていると、なるほどどうして彼女自身がお月様にも見えてくる
皐月「お、降ろしてよ司令官」
ふらふらと不安定に揺れる皐月の体
確かに、両脇を抱えたられたままではちょっと苦しいか
で、あるならと
抱き上げていた皐月を手元に引き寄せて、落とさないようにぎゅっと抱きしめる
皐月「え、ぇぇっと…ど、どうしたのさ…」
わかんない。だって、からかわれるくらいは覚悟してたのに
なんでこんな、こんな風に…ぎゅぅって抱きしめられてるの?
あとで、ドッキリでしたとか言われるのかな…でも、だとしても…
すっごいドキドキする…ボクの音のはずなのに、ボクのものじゃないみたいな
でも、もしかしたら…こうやって抱きしめられてるなら、ちょっとくらい、さ?
期待しても良いのかな、これが司令官の胸の音だって…
皐月「ちょこ…潰れちゃうよ?」
そんな訳はない。チョコケーキでも無いのに、抱きしめられたくらいで潰れるはずがない
けど、ただ、黙っているのに耐えられなくなって、気恥ずかしさを誤魔化すために口が動いていた
提督「大丈夫…食べればおんなじ」
皐月「何だよそれ…折角作ったのに」
提督「うん、ありがとう」
皐月「…今日は素直なんだ…」
提督「うん、皐月が可愛いからね」
皐月「ぅ…ばーか」
提督「かもね」
夜の港、寄せては返す潮騒の音
やがて、遅刻気味に顔をのぞかせたお月様が
照れてるみたいに輝いて、二人を照らし上げていた
ー
そんな二人の様子を覗いていた弥生さん
弥生「…うん、良い。じつに良い」
君に良いし、私に良い
ただ、二人共…ちょっとやり過ぎ。見てるこっちの事も考えて欲しい
心なしか、自分の頬が赤くなってる気がする
ここで、艶っぽい溜息でも吐けば三角関係の構図でも成立するだろうか
卯月「あれ、やよやよ?なーにしてるぴょんっ?」
なんて、益体もない想像に耽っていると
背後から卯月が顔を覗かせる
弥生「ううん、なんでもないよ?」
卯月「ん?そっちに何かあるぴょん?」
弥生の覗いていた方へ、卯月も顔を出そうとするが
その肩を弥生が押しとどめて、後ろを向かせる
卯月「ふへ?」
弥生「なんにもないない。ただ、卯月のいたずら好きには困ったものだなって、思ってただけ」
卯月「ちょっと待つぴょんっ、うーちゃんまだ何にもしてないぴょんっ」
その抗議はもっともだが、そんなこと聞く気も無く
卯月の背中を押していく弥生さん
卯月「え、ちょっと、押さないでって」
弥生「うん、キリキリ歩く。いち、にー、いち、にー」
卯月「ふぇぇぇ?」
困惑する卯月を建物の中に押し込むと、港の方に目を向ける
弥生「…」
ふと、弥生の口が動きかけたが
結局、言葉を紡ぐ事もなく、ゆっくりと扉が閉まっていった
ー
時刻は明け方、そろそろ日も昇ろうかと言う所
大鳳「ふぅ…」
日課のランニングを終えた大鳳が一息付いていた
タオルで汗を拭いて、深呼吸をして息を整える
落ち着いた頃に、ぐぅっと体を伸ばしてひと心地
大鳳「提督、まだ寝てるかしら…」
まあ、寝てるだろうけども…
季節はバレンタイン、気にしないと言えば大嘘だ
どちらかと言えば、気になってしょうがないまである
あるんだけど…バレンタインの前、節分の折にはしゃぎ回ってたのが尾を引いていた
別に怒られた訳じゃないし、あれから皆に避けられたなんてこともない…そりゃ、多少からかわれはしたけれど
皆からしてみれば、珍しく大鳳さんが はしゃいでたって程度だったらしい
大鳳「…はぁ」
気にし過ぎなのはそうだろう…でもやっぱり気にはなる、提督はどう思っているのだろうって
でもだって、あんないきなり指輪つかって、あげく鎮守府中を豆だらけにして…
どんな顔してればいいってのよ…
大鳳「笑っとけば…とか、言うんでしょうね、提督は」
結局気まずいと思ってるのは自分だけなんだろう…
そんな感じで悶々と日々を過ごしていたら、カレンダーは2月の15日、バレンタイン終了のお知らせだった
まあ、それはいい。どうせチョコなんて用意できてないのだし
ただ、チョコよりも、いい加減気まずいままって方が問題だった
大鳳「…よし」
頬を叩いて気合を入れる
そうしてみれば、足は自然と執務室に向いていた
ー執務室ー
提督「ん?」
薄ぼんやりとした意識の中、それがそろそろ朝だと告げている
だからといってこのまま起きる気にも慣れず、思考を止めて2度寝しようかと思ったが
ふと、頭の後ろに違和感を感じる
不快なものではないが、はて?寝る前にこんなもの挟み込んだだろうかと
枕ではないその感触、それよりも暖かくて、例えるならそう…
提督「大鳳…なにやってんの?」
大鳳「おはよ、提督」
目を開けてみれば、あっさりと答えが返ってくる
何故か目の前に大鳳の笑顔、丁度見上げるようになっているということは
今、頭の裏にあるのは彼女のふとももだろう
提督「ああ、うん、おはよう…んで?」
大鳳「用って程ではないのだけれど…」
ただ、あなたと夜明けのコーヒーでも、なんて思っただけ
提督「そりゃ、構わないけども…私、コーヒー苦手よ?」
大鳳「うん。だから、ココアにしてるわ」
提督「そっか…」
そうして身を起こすと、大鳳からココアの入ったカップを受け取って、ちまちまと口をつける
しばらくそうやって、お互いの肩を寄せ合ったまま、湯気の立つカップに口をつけていた
大鳳「…」
私の事好き?…聞きたいのはそんな所
けど、そんな事恥ずかしくて言えないし、いきなり言われても困るだろう
だからって、このままってのはどうにも座りが悪い
どうにかこうにか、提督の気持ちを確認できないものか…
提督「そういえば…けっきょく大鳳はチョコくれ無かったね」
大鳳「へ?あ、あぁ…」
そうか、なるほど、その手があったか、渡りに艦とはこの事か
過ぎたとはいえ、バレンタインだったわね
大鳳「欲しかったの?」
提督「ま…期待しなくもなかったな」
大鳳「ほんとに?」
提督「ん?まぁ…」
大鳳「ほんとにほんと?」
触れ合っていた肩から、身を乗り出して提督を覗きこむ大鳳
提督「な、なんだ…やけに食いつくな…」
大鳳「あ、いえ…べつに…うふふ」
提督「…どうした?なんか面白かったか?」
大鳳「へ?」
面白かったか?なんて言われて、頬に手をやってみれば
なるほどどうして、私は笑っていたらしい…でもだってしょうがないじゃない?
私からのチョコ欲しかったなんて言われたら嬉しくもなる
大鳳「うふふっ。まあ、面白いっていうか、今飲んでるじゃない?」
提督「ん?ああ…なるほど。遅刻だぞ、大鳳」
大鳳「日の出はまだよ?セーフセーフ」
提督「屁理屈っていうのよ?そういうの」
大鳳「理屈は理屈よ?」
提督「まあね…」
そうやって、他愛もない会話を続けていると
だんだんと、お日様が顔を見せ始め
執務室の窓からは、暁の水平線が良く良くみえた
大鳳「綺麗ね…」
なんとなく口にしていたその言葉
そして、多分この後は…
「お前のほうが綺麗だよ」
ばっちりと重なる二人の声
大鳳「うふふふっ、やっぱり言ったわね?」
提督「むぅ…」
コロコロと、楽しそうに笑っている大鳳から視線を外す
まぁ、これで元通りか…気にしてないって言っても、中々信じてくれなかったのは困ったものだったが
大鳳「提督、ココアのおかわりいる?」
提督「いるいる」
空になったカップを受取ると、ポットからココアを注ぐ大鳳
そうやって、肩を寄せあいココアで暖を取りながら
しばらくイチャイチャしている二人だった
ーおしまいー
はい、というわけで最後まで読んでくれた方。本当にありがとうございました
貴重な時間が少しでも楽しい物になっていれば幸いです
それではこの番組は
如月「やーよーいーっ、貴女まで、ゆーに変な事教えて、もう」
弥生「ん?でも待って欲しい、具体的に変なことって?」
如月「へ?いや、それは…ほら、あれとか、それ、とか?」
弥生「姉さん、それでは分からない、さあ、具体的に」
如月「いや…だから「…」とか「…」とか?」
弥生「…姉さん、さすがの弥生もそこまで言ってない」
如月「っっっっぅ~!?弥生のばかぁぁぁぁっ!」
弥生「ふふっ、勝った」
卯月「弥生は何と戦ってるぴょん?」
ゆー「…Admiral、「…」とか「…」ってなぁに?」
提督「ああ、それは…」
大鳳「やめなさい」
ー諸々のメンバーでお送りしました
ー
ー以下蛇足に付きー
ー
♪教えて皐月ちゃんのコーナー♪
提督「さて、なにげに30回めだな」
皐月「結構続いたね…」
提督「まぁ、でもやることは変わらん。イチャイチャしながらたまにドンパチやるくらいだ」
皐月「それで、今回のメインディッシュは?」
提督「皐月…と言いたいが、去年やろうとした如月のネタ引っ張り出してきただけの、小ネタ集」
皐月「小…ネタ?」
提督「思ったより長くなったのは秘密」
♪皐月ちゃんラジオ♪
皐月「はーい。それじゃ、コメント返しの時間だよっ」
提督「今回はー」
・短い?
・皐月ちゃん
・長菊
・大鳳さん
・金剛さん
・取り付く島
・初詣の衣装
・北上様のマーマレード
・球磨・長良の打ち合い
・提督の神様的お仕事
・鎮守府の配置
・イタリア艦の登場予定
・オリジナルの艦載機
・猫のお話
皐月「今回も一杯のコメントありがとな」
提督「では、さくっと上から」
・短い?
提督「まあ、確かに今回は最低限必要なシーンだけにしてみた感はあるけど」
皐月「読みやすかったって、コメントもあったね」
提督「うん、それは ありがとうございます。でも、ちょっとはしょりすぎた感もあったかな、たしかに」
・皐月ちゃん
提督「YSK!YSK」
皐月「なにさ、それ…」
提督「やっぱり皐月ちゃん可愛い」
皐月「…」
提督「最後の最後で全てを持っていく娘。正妻ポジション」
皐月「ちょっと、やめて…まじ恥ずかしいから。大体、正妻って…そんなの、ただ付き合いが長いだけだって」
提督「それだけ?」
皐月「そうだよっ」
提督「ほんとに?」
皐月「…うっさい、次いってっ次っ」
提督「YSK」
皐月「もぅっ、やめてってばぁ」
・長菊
皐月「結構、好かれてるよね長月と菊月」
提督「可愛いからね、しょうが無いね」
皐月「YNKとかYKKとか?」
提督「それそれ」
皐月「みかんを剥いてる菊月が可愛いってのも合ったね」
提督「小さい子が一所懸命みかんを剥いてるのを見ると、きゅんっとなるよね」
皐月「最後の方は、司令官に揺すられてカタカタいってたけど…」
・大鳳さん
提督「笑顔でボーガン構える大鳳さん。怖かったねっ!」
皐月「そりゃ…あんだけ散らかしたらさ…」
大鳳「そうよ?私だって怒りたくて怒ってるんじゃないんだから?」
提督「冥府魔道…」
皐月「ボク達をあられもない姿に…」
大鳳「やめてっ」
・金剛さん
皐月「ダメだよ、司令官。あんまり金剛さんからかったら」
提督「皐月が言う?」
皐月「少なくても、司令官に言われたくない」
金剛「提督っ、そろそろ金剛にもカッコイイシーンをっ!」
提督「その反動でギャグキャラ要因が加速してもいいなら?」
金剛「うぐ…」
皐月「金剛さんの、カッコよさと面白さはトレードオフだからね」
提督「しかたないね」
・取り付く島
皐月「よかったね司令官。座布団貰ったよ」
提督「やったね。滑ったらどうしようかと思ったけども」
皐月「じゃあ、座布団は金剛さんに?」
金剛「素直に喜んでいいんでしょうか…」
提督「良いんじゃない、これも金剛のおかげだし」
・初詣の衣装
提督「私、ラノベとかイラスト見てて思うのよ。どうしてそんな服飾のデザインでてくるのって」
皐月「制服とか凄いよね。同じのって見ないし…」
提督「まあ、みんな振り袖でっても考えたんだけどさ
私の振り袖のイメージって、401ちゃんがつけてたアレしかないのよね」
皐月「つまり?」
提督「ごめんなさい、私の怠慢です。実際、振り袖装備ではある…というか、いつもの格好だと目立ちそうだし」
皐月「素直でよろしい」
提督「脳内変換できた方。その感性を大事にしてください」
・北上様のマーマレード
皐月「…ごめん北上様。ちょっと田舎のおばあちゃんっぽいって思った」
提督「でも、割烹着来て、グツグツとマーマレード仕込んでる北上様って、けっこう絵になると思う」
皐月「すごい、簡単に想像出来るね…」
・球磨・長良の打ち合い
提督「ギャグ漫画補正を前提に。テニス◯王子様だったのが、ドラゴン◯くらいになるよっ」
皐月「羽根つきで地球がヤバイ…ていうか、あんまり変わらなくない?」
提督「いくらテニスのーでも、地球は壊さんだろう…」
皐月「ああ、それはそうか」
提督「どうせ最後は、能力の無効化の無効化の無効化で、一般人には普通に見えてくるんだよ」
提督「現実的な話をしたらさ…砲弾を素手で弾き飛ばす腕力とか膂力で試合するってなると…」
皐月「たまに検証してる人いるよね…」
提督「という事で、多分そんな感じになるんじゃない?」
皐月「大惨事だね」
・提督の神様的お仕事
提督「祀られなくなって久しいからね。地元の人も誰も覚えてないと思うよ?
だからどっちかって言うと、今は妖怪に近いんじゃないかな、扱いは
強いて言えば、提督業がある意味神様っぽい仕事だよ」
皐月「唯一のね…あとは悪戯しかしないじゃんか…」
提督「仕方ない、そんなんだから祀られたんだし…」
・鎮守府の配置
提督「正直に、あんまり考えてないよっ」
皐月「うん、放り投げたね」
提督「うん、最初の頃それで失敗したからね。下手に決めると書きづらくなるからな」
強いて言えば、私らの鎮守府は舞鶴側ですってくらい?
主戦場が太平洋側なせいで、閑職あつかいだけど
でも艦これって演習のほうが、経験値効率いいのよね…そんなんだから」
皐月「夕立さんとか、長良さんとかと、ドンパチやり続けた結果かな…きっと」
提督「だから多分、今まで出てきた娘達は日本海側で適当に配置されてるかな?」
・イタリア艦の登場予定
提督「あるよっ。やりたいネタはあるけど、冒頭で終わっちゃうから保留だよ」
皐月「風船があっても空気がないって感じだね」
・オリジナルの艦載機
みつよ「みなさい秋津洲っ!二式大艇にネ式エンジンを搭載してみたわっ」
秋津洲「あばばばば…な、何やってるかもっ!」
みつよ「なにって?近代化改修よ?」
秋津洲「これは、ただの魔改造かもっ!」
みつよ「なにが不満なのよ?4つも付けたのに?」
秋津洲「数の問題じゃないかもっ!」
みつよ「大艇がマッハで飛ぶのよ?カッコイイじゃない?」
秋津洲「もぅ…それじゃ、ター◯ネーターかもぉぉ…」
提督「多分こうなるよ?本編に出るかは分からんけど」
皐月「秋津洲さん…」
・猫のお話
皐月「ネタの提供ありがとう」
提督「なるほど、定番ではあるね…つまりあれか?イタリア艦が猫連れてこればいい?」
皐月「いけそうかい?」
提督「5割かな…穴が埋まればそれで行こう」
ー
皐月「それじゃ、今回はここまでだよっ。ここまで読んでくれてありがとなっ」
提督「今回もたくさんの、閲覧、コメント、評価、お気に入り、応援と、誠にありがとうございます
そして、皐月改2きたよっ、やったね皐月ちゃんっ改2になれるよっ」
皐月「うんっ、これでもっと司令官っ…いや、皆を守れるねっ!」
提督「ふふふふ…YSK♪YSK♪」
皐月「それ、やめてってばぁ」
提督「なので、次は皐月改2です」
皐月「…よ、よろしくね?」
提督「それでは、ここまで読んでくれてありがとうございました
まだまだ寒いですが、お風邪など召されませぬよう」
ああぁ…如月が弥生が皐月が長月が菊月が三日月ぎ望月が、というか睦月型が、私の脳を溶かす……
やったの。主様よ。皐月改二ぞ。
なるほどの。大井さんは面白女っと...
やっぱり僕的には余裕のない大鳳さんの方が好きですね
あとひそかに弥生のかわいさアップしてますね
最後に皐月改二おめでとう(*≧∀≦*)!
改も改二もどっちもかわいいから艦隊には皐月が2人いる状況ですって
ついに大鳳さんの鉄の仮面が…!
提督としては念願の可愛く動揺する大鳳さんが見られて大満足。まさに棚ぼたですね。
球磨さんに「こんなくだらんことで」と言われる大人気なさで無双する様は、かつての大浴場での大井さんを彷彿させました(笑)
しかし、大鳳さんは艦娘になっても自爆属性持ちだったのか…
陰の策士から年相応の純情乙女にコンバートの文月と、鎮守府の面々に順調に毒され…ゲフンゲフン、馴染んできているゆーちゃんかわいいですって。
そして北上様。
昨年のバレンタインで何かやってみようかという答えが焼き肉のタレ(チョコレート風味)は予想外過ぎました(笑)
もうちょっとデレても良いんですよ?
今回も大いに楽しませて頂きました。
次回ですが、もし余裕があれば文頭に所属艦娘の簡単プロフと好感度復活を希望します。
素直にデレるようになった長月や、かつてのアグレッシブさが黒歴史となりつつある如月など、以前と比べると提督との関係が変わってきている娘も多いので、一度現在の艦娘達の状況をおさらいしてもらえるとありがたいです。