2015-08-11 18:01:48 更新

概要

提督と艦娘たちが鎮守府でなんやかやしてるだけのお話です

注意書き
誤字脱字があったらごめんなさい
基本艦娘たちの好感度は高めです
アニメとかなんかのネタとかパロディとか
二次創作にありがちな色々
長い
EXパートは思いつき小ネタです


前書き

20回目になりました
楽しんでいただければ幸いです お目汚しになったらごめんなさい
ネタかぶってたら目も当てられませんね

それではこの番組は

提督「今日は木曾回にするぞーっ」
睦月「おー♪」
卯月「ポロリもあるぴょんっ」
如月「おー♪」
弥生「球磨さん、今日の罰ゲームは?」
球磨「そうだな、今日一日中体操服で過ごすクマ」
文月「また、マニアックだねぇ」
菊月「長月、体操服はまにあっく、なのか?」
長月「しらんでいい」
望月「司令官も好きだよな、体操服」
三日月「え、そうなの?」
皐月「いや…どう、だろう?」
金剛「OK皐月。今度私が試してみるネ」
夕張「やめなって、金剛さんが体操服なんて付けたら…」
瑞鳳「…(また胸の話かっ)」
大鳳「瑞鳳、多分違うわそれ」

北上「だれも木曾っちの罰ゲームを疑わない件について」
大井「もう、日課なんでしょう?」
木曾「…かつもん、次はかつもん…」
多摩「ああ、木曾がイジケルからもうさっさと始めるにゃ」

はじまりまーす


↑前「提督と七夕」

↑後「提督と夏休み」



提督と木曾さん


~回想~


~食堂~


何の事の無い いつもの昼下がり

食堂の一角で、多摩が机に身を投げ出してだらけていた


多摩「にゃぁぁ~…」


気怠げなあくびをこぼし、体を伸ばしてはまた丸くなる


木曾「なぁ…多摩よぉ…」


そんな だらけ放題の姉の横で、木曾が難しい顔をしていた


多摩「?」


無言のまま、視線だけを木曾に向けて先を促す多摩


木曾「俺…提督に何かしたか?」

多摩「…なに急に色気づいてるにゃ…恋のABCなら如月にでも習うといい」


聞くだけ無駄だったと、木曾から視線を外す


木曾「そんなんじゃねーよ…そんなんじゃねーけど…理由も無く避けられて良い気はしねぇだろって…」


ため息をこぼすと、悩ましげな表情に深みが増していった


多摩「提督のあれは発作みたいなもんにゃ…ほっとけばそのうち近づいてくるくる…なんなら餌で釣ればいい」

木曾「餌って…んな、ネコじゃあるまいに」

多摩「多摩と一緒にしないで欲しい」(←即答


間延びしていた声を引き締めて、きっぱり否定する多摩


木曾「おめえは艦娘だろうが」

多摩「忘れてしまったにゃ、艦娘なんて言葉」

木曾「…この後の任務まで忘れたとか言わねぇだろうな?」

多摩「…ちっ」


完璧な舌打ちだった


木曾「こいつは…」


木曾が着任して そこそこ経つが、未だに提督とまともに会話が出来てなかった

鎮守府中を探しても見つからず、見つけたと思えば逃げられて、あまつさえ


大井「ちょっと木曾さん、あんまり提督の事脅かさないでくれません?」(←後ろに提督


などと、大井まで盾に使われた時は何事かと思ったほどに


木曾「発作ねぇ…」


姉を見習ってか、机に身を投げ出す木曾


多摩「だいたい、そんな眼帯なんて付けてるから怖がられるにゃ…」

木曾「む…それは、けどな…」


一理あるか、とも思ったが…眼帯の下の事を思えば、それはそれで怖がられるような気もする


多摩「眼帯つけてないと、力が抑えられないなんて設定は忘れるべき」

木曾「そんな設定はないっ!」

多摩「えー」


ぷーっとつまんなそうに、頬を膨らます多摩ちゃんだった




皐月「ほら、司令官。木曾さん困ってるじゃんか」


食堂の前で、立ち聞き、ないしは盗み聞きをしていた2人

いい加減焦れた皐月が、提督を小突いていた


提督「まあ、そうね…そうよねぇ…」


扉の前で まごついてる提督

その手には、一振りの軍刀と外套が握られていた


皐月「…えいっ!」

提督「ちょっ!?」


勢い良く扉を開ける皐月

そして、提督の足が後ろに下がるその前に、その背中を扉の向こうに押し込んだ


皐月「じゃっ、がんばってっ!」


開けた時と同様に、ピシャっと扉が閉じられる


提督「あ…」


扉を開けようと手を伸ばしてみるものの、鍵でも掛けられたのか、ガタ付くだけで簡単には開きそうには無かった


木曾「何やってんだ、お前…」

提督「う…」


いきなり飛び込んできた提督に、怪訝な顔で声をかける木曾


提督「あー…」


木曾の方に向き直る提督

言葉を探しているのか、意味のない音が口から漏れていた


木曾「いー」

提督「うー」

木曾「えー」

多摩「おー…なんて言うと思ったか」


「いってるじゃねーか」

なんて、声を揃えて多摩に突っ込む2人


提督「ふふっ…あーもう良いか、うん」

木曾「なんだ、急に?」


小さく笑いを零した後

腹を決めたのか。提督がしっかりとした足取りで木曾の前に立つ


提督「おめでとう、重雷装艦」


殊更に芝居がかった口調で話だす提督


木曾「重雷って…おれは軽巡だぞ?」


その疑問に答える様に、一振りの軍刀を木曾の前に差し出す


木曾「これは…」


軍刀を手に取る。初めて触れるはずなのに、それはしっかりと手に馴染んだ


提督「あとこれも」


さらに外套を木曾の肩へと羽織らせる


提督「球磨型軽巡・木曾改二。あらため、雷巡木曾だ」

木曾「…」


受け取った軍刀と外套を交互に見比べた後、軍刀に目を落としたまま固まってしまう木曾


多摩「いつの間に…」

提督「大昔の改造案に、現用してる北上と大井のデータを合わせて、ほにゃららしたらしいよ?」


詳しいことは知りませーんって感じの説明だった


多摩「多摩には?」

提督「働きたいの?」

多摩「にゃ」


首を横にふって、短く否定を口にする


提督「たまには働いてよ?」

多摩「多摩だけにって、やかましいにゃ」

提督「なははははっ」


固まってる木曾の横で、じゃれてる提督と多摩ちゃん


木曾「ふっ…アリだな」


しかと軍刀を握りしめ、外套をしっかりと羽織直す


提督「お?」

木曾「提督…」


艤装を展開する木曾

それが、しっかりと雷巡へと変化しているのを確認すると

拳を提督の前に突き出した


木曾「いいぜ、おまえに最高の勝利を与えてやる」

提督「おう」


一つ頷くと、木曾と提督の拳が触れ合った


~回想お終い~


ー食堂ー


皐月「その後くらいかなぁ、司令官が木曾さんにベタベタする様になったのは」


昔話を終えると、ティーカップに注がれた紅茶に口をつけ、一息ついた


大鳳「なるほど。みんな色々大変だったのね…」


話を聞き終えた大鳳が、しみじみと感想を口にする

その主だった話題は、提督との昔話だった


如月「馴れたら馴れたらで、木曾さんのスカートめくったりしてたっけ、ふふっ」


そんな昔の話でもないのに、何処か懐かしくも感じもしてくる


弥生「うん、卯月も一緒になって追いかけられてたね…」

文月「だって木曽さんだけスカートなんだもん、司令官ならやるよねー」

弥生「ねー」


2人で顔を見合わせ、小さく笑い合う

いらん信頼のされ方だった


大鳳「やっぱりするのね…あの人」

三日月「あははは…えと、まあ…」


曖昧に笑う三日月


大鳳「されたの?」

三日月「…」

大鳳「…そう」


三日月が頬を染めて俯く、沈黙の肯定だった


睦月「ふっふっふっ。まあ、でも?睦月は提督とすーぐに仲良くなったけどねっ」


自慢気に、無い胸を張る睦月

まあ、確かに早い方ではあったかもしれないけども


皐月「あった早々、司令官に唸られてたよね?」

睦月「あうっ」

如月「一人にしないで~とか、言われた気もするわね」

睦月「はうっ」


当時の状況を知ってる2人に突っつかれて、睦月の肩がしょぼんと落ちる


睦月「しかしだっ、だがしかしだ、妹達よっ!」


が、それも束の間。すぐにシャキッと背筋を伸ばす


睦月「今は提督と仲良しだしっ、過程の問題では無いのだよっ!」


「結果だっ、結果こそが全てだしっ」なんて宣言をなさる


大鳳「ふふっ。そうね、結果も大事だけれど…でもこれは、家庭の問題だと思うわ」


鎮守府の皆は家族です、なんかそういう理屈らしい


文月「大鳳さんに座布団1枚…は、無いから あたしのクッキーあげるねー」


お茶請けに用意されてたクッキー1つ、大鳳のお皿に移す


大鳳「ありがとう。それじゃあお返しに、私のを…」


受け取ったクッキーとは別のフレーバーを選び、文月のお皿へと


文月「えへへへ、ありがとう大鳳さん」

大鳳「どういたしまして」


2人でクッキーを取り替えると、笑顔を交わす


弥生「良かったね、三日月…」

三日月「…私は別に…」


「司令官と家庭を持てて」なんて、言外に語る弥生

「お嫁さんになりたいとか、そんなんじゃ…」なんて、言外に良い訳する三日月

姉妹の感で成立するそんな会話

「お嫁さんになれ」までは言っていないのだけれど…

とは思いつつも、口には出さない弥生だった


睦月「あれ?やっぱり過程も大事?」


大鳳の冗談。その意味を分からずに、答えを探すように姉妹たちの顔を見る


皐月「そりゃね?」

如月「睦月ちゃんも、大人になれば分かるわよ」

睦月「睦月は大人だしっ」

皐月「大人は自分のこと大人だ、何て言わないらしいよ?」


前に司令官がそんな事を言っていたっけか


睦月「なんとっ…じゃ、じゃあ…子供でもいいかにゃぁ…」


しゅんと、肩を落として丸まって見る睦月


如月「早く大人になりましょうねぇ」


さわさわっと、睦月の頭を撫でる如月


睦月「あれ?子供扱いされてるような…」

如月「気のせいよ」

睦月「そっか♪」


素直な娘だった


大鳳「んーでも、そうなると。提督、私の時は随分と丸くなってたのね…何があったの?」


皆の昔話を聞く度に大きくなる疑問

それはだって、自分の時も普通とは言い難かったけれども

露骨に逃げられたり、警戒されたりはされなかったような?


如月「何って、それは…ねぇ?」

弥生「うん」

皐月「まあ、ねぇ?」

三日月「ですね」

睦月「にゃしー」

文月「ねー、こんごーさーん♪」


お子様たちの視線が、さっきから黙りこくっている金剛さんの元へと集まる


金剛「うっ…」


集まった視線から逃れるように、ちょっと顔を背ける


大鳳「ああ、なるほど」


そんな周囲の反応からか、普段の金剛の言動からなのか

あっさりと、納得してしまえた


金剛「何を納得してるのデスか貴女は…」

大鳳「それは、だって…」

金剛「良いですか大鳳。そもそも提督と、私は、健全なお付き合いをデスね…」


などと、連々と口が回り始める

良い訳をする時、言葉を重ねるタイプの金剛さんだった


如月「ねぇ、大鳳さん。防犯カメラに当時の映像がたっぷりあるのだけれど…」(ひそひそ

大鳳「あら、気になるわね、それ…」(こそこそ


金剛の長い良い訳をBGMにして、こそこそと話はじめる2人


金剛「うぐっ…」


丸聞こえだった。もちろん わざとである


金剛「如月…ちょっとちょっと」

如月「なにかしら?」


金剛に手招かれるままに、傍に寄る如月


金剛「これを…」


そして、その小さな手の平の中にクッキーを1枚忍ばせた


如月「あら、悪いわね?」

金剛「いえ。デスから、なにとぞ、なにとぞっ…金剛の名誉のために…」

如月「さぁて、どうしようかしら?」

金剛「ごむたいなっ」


駆逐艦(少女)を買収する戦艦(淑女)の図

しかもクッキー一枚とは随分と安上がりな


弥生「…」


そんな2人の傍へそっと近づく弥生


金剛「?」

弥生「…」


そして、無言のままに両手を差し出し、「ちょーだい」と言わんばかりに小首を傾げてみせた


金剛「…orz」

弥生「…♪」


金剛の皿からまた一枚とその数を減っていく


睦月「…(じゅるり」

文月「こんごーさん♪」

皐月「ボクにはないのかい?」

三日月「えと…」


追加される手が6つ

1人、三日月だけが申し訳無さそうにしてるのが救いといえばそうかもしれない


金剛「ぉぅ…」


真っ白な陶器のお皿の真ん中に、ぽつんと取り残されるクッキーが一つ

結局、三日月含め、全員にクッキーを配ったらこうなった


予想通りと言えばそう

提督との昔話なんて、矛先がこちらに向くのは時間の問題でしか無い

だから、黙りこくって話題を逸らすチャンス伺っていたのに…逃げきれるものでも無いらしい

それはだってあの時は…提督を追い掛け回したり、色々したけれども

今となっては良い思い出と同時に、時間が経てば経つほどに、恥ずかしさが増すばかりの思い出でもあった


大鳳「それで、金剛さん?」

金剛「Why?」

大鳳「私には無いのかしら?」


にっこりと、いい笑顔を見せる大鳳


金剛「うぅぅぅっ!もってけドロボー!」

大鳳「うふふふ。冗談よ、じょーだん♪」


その後も、散々からかわれる金剛さんだった


ー執務室ー


提督「なーがーつーきー、寒いわー」

長月「はぁ…なら、エアコン止めろよ…」


エアコンが全力稼働している部屋の中

提督がソファーの上で長月を抱きかかえていた

提督の膝の上に抱えられながらも、書類を片手に仕事を進める長月

夏場とは言え、全力稼働中のエアコンの中

部屋の中は少々肌寒くなってきている

正直な所、抱きついている司令官の体温が心地よくはあるが

そもそもが諸悪の根源なので、お小言以外には出ようがなかった


提督「ダメだよ、それじゃ暑くなるじゃない。長月に引っ付いてられないわ」

長月「私は仕事中なんだがな」

提督「仕事と私どっちが大事なのっ!」


いやに芝居がかった声で、提督がさらに強く長月を抱きしめる


長月「仕事だよ」(←即答

提督「ひどいっ」


バッサリだった。何の躊躇いもなく仕事を取られた


望月「どーよ、司令官。女を仕事に盗られた感想は?」


反対側のソファーの上

毛布に包まり、季節外れの雪だるまみたいになってる望月が、にやにやしていた


提督「私、寝取られはするほうが好きなのよ…」

望月「それはそれで、趣味ワリィなおい…」

長月「バカを言ってないで、少しは手伝え」


提督に書類の一つを押し付ける長月


提督「…手伝ったら、構ってくれる?」

長月「はいはい、終わったらな…」

提督「じゃ、やる」


といっても、確認のサインくらいしかやる事が無いのだけれど

どうせなら婚姻届けでも突っ返して困らせてやろうか…

などと提督が思案していると


突然の爆音

聞き慣れてしまったと言えばそうだろう

この鎮守府であんな音出すのは、球磨が主砲を斉射した時くらい


卯月「お、始まったぴょん」

菊月「ははっ、相変わらず派手じゃないか」

木曾「どーせ、また球磨の1人勝ちなんだろうけどな」


球磨達の演習と聞いて待機中だった3人

肌寒さを、木曾の外套の下でやり過ごしていた卯月と菊月

そして、まとわり付く2人を引き釣りながら、窓側に身を寄せる木曾

すっかり、観客席になった執務室だった

外に出たほうがよく見えるだろう、何て質問には


「暑いぴょんっ」


なんて、答えが返って来た


ー海上ー


海面すらも震え上がらせる程の爆音の後

僅かばかりに遅れて、海面に無数の水柱が立ち昇る


夕張「ひぅっ!ちょっともぅ、かんべんしてよぉ」


次々と撃ち込まれる砲弾の中

なんとか反撃しようと試みるも、射撃体勢どころかロクに射撃位置にも付けないでいた


球磨「くまぁぁぁっ、夕張っ!逃げてたって、始まらんクマぁぁぁっ!前を向かねー者に勝利は無いクマぁぁぁ!」

夕張「それっ、自分のっ、提督の前でっ、言ってみなさいよぉぉぉっ!」


避けながらも何とか反論だけはしてみる

まあ、私の提督でもあるんだけど


球磨「あー…あれはもういいクマ。逃げ切ったのなら、それはそれで勝ちだクマ」


ならばお前はどうするのだ、と

球磨の照準が逃げまわる夕張にを徐々に追い詰めていく


夕張「ああ、そうっ。逃げるが勝ちって事ね…それじゃ、私もっ!」


艤装切り替え:新型缶x2・改良型タービンx2


球磨に背を向ける夕張

装備を足回りに集中させて一気にその場から逃げ出した


球磨「くまくまくまくま♪逃げるか…だが夕張。海のクマさんはそんなに甘くねーぞ」


逃げる夕張の背中を追いかけ、球磨も走りだした




多摩「ずーいほぅ…そんな上からバラ撒いても当たらんにゃ。軽空母に絨毯爆撃は無理無理」

瑞鳳「むぅぅ、少しはじっとしてなさいよっ」


そんなこと言われて足を止めるわけがない

落ちてくる爆弾の中をすり抜け、邪魔なものは的確に撃ち落としていく


瑞鳳「だったらっ」


頭の上を艦爆で抑えてる間に、艦攻で取り囲む


多摩「悪くはない…少し前の多摩が相手なら…」


対空カットイン

12・7cm連装高角砲+高射装置:25mm3連装機銃集中配備:14号電探


多摩が腕を振るうと

その腕が伸びたかのように、機銃弾が尾を引き艦攻の一群を横薙ぎに撃ち払う

合わせて、高角砲を上に向け

直撃コースを取る艦爆を撃ち落とす

爆散した艦爆の破片を気にも掛けずに

更に更にと、機銃群と高角砲を振るって回る


多摩「何も練度を上げてるのは、瑞鳳たちだけじゃないって話…ふわぁ」

瑞鳳「いつもはダラケてるくせに、こんな時だけは…」

多摩「ふっふっふっ。脳ある多摩は爪を隠すのにゃ」

瑞鳳「この…」


勝ち誇っている多摩に、一矢報いてやりたいけれど

そんな状況でもない現状だった


ー執務室ー


卯月「あーやっぱり、瑞鳳ダメぴょん」


がっくしぴょーんっと肩を落とす卯月


木曾「そうか?多摩相手によくやってるとは思うが?」

菊月「よくやってる、では意味が無いな…」

卯月「そうぴょん、そうぴょん。敵を倒せなきゃ意味ねーぴょん」

木曾「むっ、それはそうだな…」


めずらしくまともな2人の反論に、口を紡ぐ木曾


提督「…負けが越したか」


そんな木曾を視線だけで眺めていた提督

長月の頭に顎を乗せて抱きついたまま、ポツリと呟いた

木曾にしては弱気目な発言だったなと


長月「かもな…だが」(←抱っこされてる

提督「分かってるよ、本人に言うことじゃあないね…」

長月「そうだな」(←抱っこされてる


そうして、また仕事に戻る2人


卯月「ずーいーほーうっ!がーんばるぴょーんっ!」


声を張り上げ、瑞鳳の応援をしてみる卯月


菊月「ここからじゃ、聞こえないんじゃないか?」


静かな海ならまだにしも、戦闘中の爆音の中じゃ流石にと


卯月「こういうのは気持ちぴょんっ」

菊月「それはそうだが…なら、これはどうだ?」


ひょっこりと菊月の手の上に、探照灯の妖精さんが立っていた


卯月「探照灯で何するぴょん?」

菊月「モールスだ。ここからでもまあ、見えるだろう」

卯月「…うーちゃん、SOSしか知らねーぴょん」


探照灯を装備して、とんとんとん つーつーつー とんとんとん と探照灯を光らせてみせる


木曾「ここからSOSって打つ気かよ…」

菊月「はっはっはっ、助けて欲しいのは向こうだろうにな」

卯月「じゃーどうするぴょん?」

木曾「はぁ…しゃーねーな」


木曾が探照灯を取り出して、点滅させる


木曾「なんて送るよ?」

卯月「ぷっぷくぷー、で」


煽ってるようにしか聞こえないが

まぁ、卯月に見られてると分かれば多少気合も入るかもしれない

下手に負けたらまたからかわれるだろうし


木曾「…まあ、いいけどよ」


執務室の窓から身を乗り出し、探照灯を点滅させる木曾さん


長月「…ん?」

望月「なー…今のって」

長月「ああ…」


その発光信号に違和感を覚えた2人が、顔を見合わせた


ー海上ー


瑞鳳「ん?」


瑞鳳の視界の片隅に、とんつーとんつーと見慣れた符丁が点滅する









瑞鳳「…(イラっ」


瑞鳳に届いた光の符丁が、見事なまでに神経を逆撫でしていた

すぅっと、矢を番え執務室に狙いを定める


夕張「ずーいーほーうっ!」

瑞鳳「なに?」


もう一息という所で、大声で名を呼ばれて振り返ってみれば

夕張がもの凄いスピードでこっちに向かってきていた


瑞鳳「夕張?なんでここまで来てるのよっ」

夕張「ごめーん、でもあれどうにかしてぇぇぇっ!」


喋りながらも、ずんずんと距離を詰めてくる

そしてその後ろ。飛沫を蹴散らして進む夕張を追うように、砲弾が次々と飛んでくる


瑞鳳「げっ!ちょっとあんたっ、なんてもの連れてきてっ!」

夕張「褒めないでよ、照れるじゃない?」

瑞鳳「褒めてないっ」

夕張「よしっ,冗談返す元気はあるねっ。じゃ、多摩は引き受けるから、あの羆おねがいっ」


右手を顔の前に立てて、ごめんねって軽く頭を下げる


瑞鳳「もうっ、けどそんな長く持たないからねっ!」

夕張「OK♪」


すれ違いざまにガッチリと二人の手が重なる

そのまま瑞鳳を軸にして、ハンマー投げの要領で夕張を振り回し多摩の方へと向けて手を離す


瑞鳳「直掩機、これしか出せないからっ!」


夕張を投げ飛ばしたままに体を回転させる

その手には弓矢、流れる景色の中で矢を番え、引き絞り、回転を止め、多摩の方へ艦攻を発艦させる


夕張「十分っ」

多摩「何が十分なものか…多摩になら勝てると?」


舐められたものだと、呆れ気味に首を振る


夕張「1人じゃまだ無理ねっ、けどっ!」


艤装切り替え:15・2cm連装砲x4


多摩「げっ」


ずらりと、夕張の艤装の上に並ぶ砲塔を見て、露骨に嫌そうな顔をする多摩


夕張「あなたのお姉さんに教えてもらったわ。ゴリ押しってこういう事でしょっ!」


一斉に火を吹く主砲群

残念だけど、球磨や卯月みたいに格好良く狙うなんてまだ無理だけど

こんだけ撃てば、当たらずとも遠からず、動きくらいは止められる

後は、足さえ抑えたなら


夕張「全機突入!一発でも良いから当ててきなさいっ」


夕張の火力支援を受けて、艦攻達がツッコんでいった




球磨「ゆーばりーん♪どーこまで逃げるクマー♪」


そのうちスキップでもしそうな感じで、楽しそうに夕張を追いかけている球磨


球磨「むっ!」


その足元に、砲弾が叩き込まれて球磨の足が止まる


瑞鳳「だーれが行って良いって言った?」

球磨「ほぅ…」


瑞鳳から煙が上がっていた

正確に言うなら、艤装から生えていた15・5cm3連装砲からだが


球磨「空母が砲撃戦をやるつもりクマ?」

瑞鳳「やっちゃダメってことも無いでしょうよ?」

球磨「その意気やよしっ、だが相手が七面鳥ではなっ!」

瑞鳳「言ってなさいよっ!」


瑞鳳が15・5cm砲で牽制しつつ、艦爆を発艦させる

卯月を脅かしてやろうって、練習してたのに

まさかこんな所で使うことになるなんてね…


球磨「ええいっ、鬱陶しいクマ」


両手の15・5cm砲はそのままに

無理やり振り回していた、20・3cm砲を畳んで機銃に取り替える

忌々しいが、航空機を落とすには少々取り回しが悪すぎる


球磨「やはり見掛け倒しクマ。そんなもの装備しただけじゃ、球磨落とせないクマ」


片方の15・5cm砲で瑞鳳を牽制しつつ、残った砲と機銃で艦載機に対応する

性格は雑なくせに、小器用に戦うものだと感心しそうになる


瑞鳳「…まずい、かな」


次第に数を減らしていく艦載機

20・3cm砲を塞げたまでは良い物の、また取り出されるのも時間の問題かな

ならいっそ、これ以上数を減らされる前に、一気に突っ込ませた方がまだチャンスはあるかとも思う


夕張「お待ったせぇぇ!」


瑞鳳の思考を打ち切る様に夕張が叫ぶ

それと同時に、その主砲が一斉に放たれた


瑞鳳「遅いってのっ、全機散開してっ」


球磨の頭の上を飛び交っていた艦載機が一斉にはける

それと入れ替わるように、夕張から放たれた主砲弾が球磨の元に降り注いだ


球磨「むっ。多摩、取られたか…ええいっ」


反転して、2人から距離を取る球磨

その後を追って、主砲弾が次々と海面に突き刺さる


夕張「さっきとは立場が逆になったわねっ!降参しても良いのよっ」

球磨「だーれがっ、球磨を止めたきゃ沈めてみせろっ」

瑞鳳「上等っ。夕張っ、押し切るわよっ!」

夕張「当然っ」


夕張の主砲群からの制圧射撃で牽制し、高高度からの急降下爆撃

ダメ押しにと、低高度からの反跳爆撃もねじ込んで

軽巡1隻にはやり過ぎな程に、火力を集中させていく


夕張「はぁはぁ…やった、かしら?」

瑞鳳「ああ、うん。その台詞を聞かなきゃね…」

夕張「そんなベタな話…」


球磨が居たであろう地点から、もうもうと煙が立ち込める

あんな煙の中で、未だに無事な艦がいるとは思いたくは無いけれど


「何を勘違いしているにゃ…」


夕張「げ…」

瑞鳳「ほら来た…」


「まだ球磨達のバトルフェイズは終了してないクマ」


主砲の轟音に黒煙が吹き飛ばされる

中にはボロボロになりながらも、球磨の姿

そして、その反対側

夕張達の後方には、同じくベコベコになりがらも多摩の姿


夕張「ちょっと…そんな状態でまだやるっての?」

多摩「まだ中破になっただけ…」

球磨「そんな台詞は、せめて大破にしてから言うのだな」


幽鬼の様に立つ軽巡2人

放たれる威圧感のせいか、無傷の時とは別の艦のようにもみえた


夕張「…今日の夕飯何だったっけ?」

瑞鳳「現実逃避してんなっての…無事な姿で夕飯食べたきゃね…」


「さぁ、第2ラウンドの開始クマ(にゃ」


ー執務室ー


「きゃぁぁぁぁっ…」


菊月「お、おぅ…」

卯月「ぴょーん…」


戦場から突き抜けてきた悲鳴と

その惨状に2人が身を震わせる


木曾「ま、こうなるな。2人にしては良くやったほうだろう」


外套を翻し、扉へと向かう木曾

もう結果は見えたと言いたげだった


提督「ねえ、木曾さん…」(←膝の上には長月

木曾「なんだ…」


提督に呼び止められ、木曾の足が扉の前で止まる


提督「新人だった2人が意外と強くなってて、ちょっと焦ってる先輩の様な顔をして何処へいくの?」(←膝の上には

木曾「…そんな事は無いと言いたいが、その通りだな…」

提督「素直ね?」

木曾「そこまで言われたら、誤魔化す意味もないだろう」

提督「それもそうだ…」

木曾「ふんっ」


扉を開け、その先へと進む木曾


木曾「俺もそろそろ…な?」

提督「そう…いってらっしゃ~い」


去り際に置いて行かれた言葉と背中に手を振って


提督「勝てるかねぇ…」

長月「練度だけなら届いてるとは思うがな…」(←提督の膝の上

提督「後は執念?」

長月「それと、時の運だな」

望月「…なぁ」


割と真面目な話をしている2人

その会話を遮るように、望月が言葉を挟む


望月「そんな格好で、真面目な話すんなよ…反応に困るじゃねーか」

提督「だってさ、長月?」

長月「主にあんたのせいだがな…」


などと、悪態をはきつつも

結局、仕事が終わるまで司令官のお膝の上に居座る長月だった



ー海上・夜ー


黒く揺れる波間に、月明かりが切れ目を入れる

僅かばかりの月灯りが、対峙した2人を照らしていた


球磨「こんな所に呼び出して、どうするつもりクマ?」

木曾「そりゃおまえ、夜中に人を呼び出す理由なんてそう多くはないだろ?」


木曾が外套を翻すと、瞬時に艤装が展開される


球磨「くまくまくまくま♪木曾にしては良い覚悟だ…良い訳の準備は出来たか?」

木曾「必要ないな。勝つのは俺だっ!」

球磨「むっ!」


勢い良く踏み込み、軍刀の刃を叩きつける木曾

不意打ち気味に叩きこまれた一撃を、手にした砲塔で受け止める

火花が散り、甲高い音が2人の耳を叩く

刀と砲塔とが擦れあい、ジリジリと嫌な音が鳴り響く


球磨「不意打ちか?随分と…」

木曾「はっ、戦場で突っ立ってる奴が悪いんだよっ」

球磨「くくっ、その通りだクマッ!」

木曾「ちぃっ」


球磨が腕に力を込めて、強引に木曾を弾き飛ばす

押し戻された足を海面に突き刺し、後ろに下がる体を固定する木曾

そして、足に力を込めて再び球磨へと肉薄する


球磨「ほぅ、頑張るじゃないか」

木曾「その余裕もこれまでだっ」


刀を振り下ろす木曾、それを難なく受け止める球磨

が、今度は鍔迫り合いになる前に、木曾が刀から力を抜き球磨の横へと回りこむ


球磨「むっ!」


球磨の横から後ろへと流れるように移動する木曾

すれ違いざまに外套を脱ぎ捨て、球磨の顔に引っ掛け視界を覆う

後ろに回った木曾が、球磨に向き直り更に後ろに下がる


木曾「これで、決まりだっ!」


開いた距離を埋める様に、一斉に放たれる酸素魚雷


球磨「ちっ、小賢しい」


木曾の外套を破り捨てると、丁度目の前では木曾が酸素魚雷を発射していた


球磨「…ふむ」


1本2本じゃ兎も角、この距離じゃ回避も迎撃も追いつかないか…

バルジで耐える?ダメだなやはり数が多い…となると


球磨「はぁ…しゃーねークマ」


三式爆雷を握りしめる球磨


木曾「爆雷?」

球磨「ふんっ、木曾の魚雷に落とされるよりはマシ クマっ!」

木曾「なっ!?」


魚雷が群がるその足元に、爆雷を叩きつける球磨

当然の様に爆発が起こり、集まっていた魚雷も一斉に起爆する


木曾「自爆しただと…おまえ、どんだけ俺に負けるのが…」


が、そこで言葉を飲み込む木曾


木曾「まだやる気のようだな…」

球磨「くくくくくくっ…三式爆雷のちょっとした応用クマ」


爆発が収まってみれば、球磨が不敵な笑みを浮かべて立っていた

無傷とは言わないまでも、せいぜいが小破止まりといった所だろうか


球磨「ま、言うほど難しいもんでもないクマ」


爆雷で無理やり魚雷を誘爆させて

自分は爆雷の爆発に大人しく吹っ飛ばされるだけ

酸素魚雷の直撃食らうよりは余程良い

言うや易し。だが、実行する度胸はどれほどのものか


球磨「結果は見ての通りクマ」

木曾「だったら、もう一度っ」

球磨「再装填などさせるもんか」


言うやいなや、球磨が主砲を放ち、木曾の魚雷発射管を吹き飛ばす


木曾「ちぃっ」

球磨「木曾、褒めてやろう。この球磨に手傷を負わせたことは。だが、木曾。お前は勝利を取り逃したクマ」


そしてターンは球磨に移る

球磨の主砲群が火を吹く

頼みの魚雷は破壊され、単純な砲火力は雷巡には望めない

ここに形勢は逆転し、木曾がジリジリと追い詰められていく


ー鎮守府・屋根の上ー


提督「あーあ。これは決まったかなぁ…」


屋根の上から戦火を眺めていた提督

そのまま押し切れる未来も見えたかと思ったけれど


提督「思い切りの差か…」


やはりそこは球磨だったか


北上「お、やってるねぇ」

大井「騒がしいと思えば…」


2人が、階下の窓よりひょっこりと顔を出す


提督「こんばんは、2人共」

北上「…提督?何やってんの?」

大井「そんな高い所で…馬鹿なんですか?頭の中まで煙なの?」

北上「大井っち、そんなに言うと提督泣いちゃうからさ…」


呆れ顔で提督を見上げるお二人


提督「…泣かねーし。観戦してただけだし。それに、馬鹿でもないし…」


吹けば飛ぶ程度の、煙のようなメンタルの提督だった


北上「はいはい、で状況は?」


提督の事情なんて、どうでも良さそうな北上様


大井「木曾さん…負けてるみたいね」

提督「結構頑張ってたんだけどね」

北上「努力は報われるとは限らないっと、世知辛いねぇ」

大井「というより、負けすぎて苦手意識染み付いてるだけじゃないの、あれ」

北上「ああ…」

提督「苦手意識か」


負けて当然、次がある、口にはしないものの心の隅で重りになってるんじゃないかと

大井が言うにはそういう事らしい。ま、概ね同意する

球磨を引き合いに出すのなら

たかだか演習に、自爆してまで継戦続行する方が怖いと言えばそう


提督「勝てるかね?」

大井「無理でしょ」

北上「冷たいねぇ、大井っち。妹が頑張ってるんだよ?応援してやりなよ」

大井「応援するのと、これは別でしょう?」

提督「それじゃ、大井っち」

大井「何よ?」

提督「木曾が勝ったら、私とデートしようぜ」

北上「わお、提督ってばだいたーん」


冗談めかしてそんな事をいう提督に、北上様も茶化して見せる


大井「良いわよ?」


しれっと、それが当然の様に返ってくる答え


提督「は?」

北上「え?」


耳を疑う2人

ほんとなら、大井に小言を言われて、笑い飛ばしてお終いと

そんなプランだったはずなのに…


大井「何よ?勝ったらでしょう。良いわよ、どうせ負けるから」


どうせ負けるからってのも、大概ないいようだとは思うけど


提督「ふーん、つまり木曾が勝てばいいんだな?」


提督の頬が楽しげに釣り上がる

北上達から見えてないのを良い事に、きっと悪い顔になっていた


大井「ええ、まあ…」

北上「ていとくー、悪い顔してるよー」

提督「そっからじゃ見えんだろう」


屋根を挟んで丁度真上の提督。顔色なんて伺い知り様も無いはずだけれど


北上「まぁ、なんとなくねぇ…」

提督「だいじょーぶだよ。悪いことはしないさ…」

大井「何もしないとは言わないのよね…」

北上「怖い怖い…」



ー海上ー


木曾「はは、さすがに不味いか」


既に苦笑いがやっとといった所か

魚雷は開幕で破壊された上に、主砲も既に沈黙している

幸い足回りはまだ動くようだが


木曾「…ここまでか」


ま、手傷を与えただけ良いのか

単純な諦めと、また次があるという保証の無い逃避

それらが木曾に重石となってのしかかり、その足を絡めとっていった


球磨「あの馬鹿もの…そんなだから姉ちゃんにいつまでたっても…」


いい加減一度沈めんと分からんのか

主砲の照準を木曾へと向ける

狙うまでもない、あんなもの目を瞑っていても当てられる

そして、無機質に機械的な動作で球磨の主砲が放たれた


「諦めるのかい?」


不意に、提督の声が頭に響く

どうやって、そんな当たり前の疑問と同時に

どうしろと、なんて諦めの言葉も浮かんでいた


「ねぇ、木曾さん。負けるのは嫌でしょう?」


当たり前だ


「ねぇ、木曾さん。球磨に勝ちたいのでしょう?」


当然だ


「ねぇ、木曾さん。私に最高の勝利をくれるのでしょう?」


そういえば、重雷装艦になった時にそんな事も言ったか

これがあれば球磨に勝てるかとも思ったが…

それでもダメで、負けを重ねて…随分と長い事忘れていたように思う


「ねぇ、木曾さん…うふふふふ…」


それっきり、まとわり付くような笑い声を残して提督の声が遠のく


木曾「ったく、好き勝手言いやがって…」


今のが応援のつもりなら大分捻くれてるな…

だが、そうだったな。最高の勝利を…ああ、そうだった

どうして忘れていたのか。いや、見ないふりをしていただけか…

そうだな、そうと決まれば取り敢えず

目の前の、あと数回も瞬きをすれば、直撃しそうな砲弾からどうにかしないとな




球磨「あーあ、つまらんクマ。木曾…昔の、軽巡だった頃のお前はもっと輝いていたクマ」


立ち昇る黒煙が晴れるのを、つまらなそうに眺めてる球磨

手応えはしっかりあったし、あの状態の木曾が避けられるとも思えない

甲標的の一つでも仕掛けてるかと思えば、それもなし

最初に突っ込んできた時は、少しは楽しめるかとも思ったのに


球磨「さー木曾。帰ってねーちゃんと罰ゲームの時間クマー」


黒煙が晴れる

まだ立っているのは意外と言えばそうだけど


木曾「いや、まだだ…」

球磨「クマ?」


爆発の衝撃か、木曾の右目を覆っていた眼帯がそこにはなく

その奥、傷の入った目と金色の瞳が球磨を見据えていた


球磨「くまくまくまくま♪面白い冗談だクマ。魚雷もない、主砲もないでどうする?」

木曾「まだ、これがあるっ!」


手にした軍刀を逆手に持ち帰ると、その切っ先を海面に叩きつける


球磨「ほぅ…、忘れてるのかと思ったぞ」


球磨の耳に魚雷の発射音が届く


木曾「忘れてたさ、けどなぁ…」


最初に魚雷をばら撒いた時に、忍ばせていたは良いものの

球磨の隙を狙う、なんて理由を付けていたらこの様だった

とはいえ、ここまで来たらしょうがない

これ以外に手段が無いし、何より


木曾「戦いは懐に入ってやるもんだっ」


甲標的で球磨の足元を抑えつつ、木曾が球磨との距離を詰める為に走りだす

そうだ、相手の懐へ

物理的になんかじゃない

その心に、その奥に奥にある勝気をもぎ取るもんだ

そうだ、球磨がいつも言っていた

忌々しいまでに、呆れるほどに、あいつはそれをやっていた


球磨「くくくく…くっくっくっ…くまくまくまくま♪」


笑っていた、それはとても愉しそうに

迫りくる木曾の姿を真に受けて、球磨がたいそう楽しそうに笑っていた


球磨「きぃぃそぉぉぉっ!」


木曾の名前を叫び、主砲を放つ球磨

足元にまとわり付く魚雷を避けながら、木曾へと向かって一気に距離を詰める


飛び散る火花

交差する砲塔と軍刀から上がる金切り声


球磨「やれば出来るじゃないかぁぁぁっ!」


球磨の背中に背負われた20.3cm砲が、鍔迫り合ってる木曾へと砲口を向ける


木曾「さっきから、うっせーぞっバカクマっ!」

球磨「っ!」


再度、甲標的から魚雷が発射される

球磨がそれに気を取られた一瞬の隙に、木曾が力の向きを変えて球磨の横へと逸れる


球磨「逃すかクマっ」


すかさず放たれる20.3cm砲

その砲弾が木曾の頬を掠めて、髪を散らす

それと同時に炸裂する魚雷

爆発する海水が、弾丸のように飛び散り2人の体を打ち据える

そんな事などお構いなしに、球磨が両手の15・5cm砲を矢鱈滅多に撃ちまくる


木曾「ちっ、可愛げねーなほんとっ」

球磨「可愛げで敵が倒せるなら、幾らでも媚び売ってやるクマっ」


砲撃が四方に飛び散るなら、まだ可愛げもあったろうに

放たれる砲弾、その全てが

木曾の足を止めるために

木曾の心を折る為に

そして、木曾本人を撃ち抜くために

慈悲も遠慮も無駄も無く、走る木曾へと追いすがる


牽制の為の砲弾など歯牙にもかけず、砲弾と向き合う木曾

その一つ一つを軍刀で切り払う

砲弾を弾く度に軍刀から悲鳴が上がり、それが衝撃となって木曾の腕を痺れさせていた


木曾「いい加減にしやがれっ!」


再度、砲弾の一つを弾くと、そのままの勢いで軍刀を球磨へと投げつける


球磨「くまくまくまくま♪ そんなんじゃ球磨は倒せないクマぁぁ!」


飛んでくる軍刀を、砲塔で難なく弾き返す

その一瞬、ゆるくなった砲撃の合間を縫って、木曾が球磨に肉薄する

その道中、弾かれた軍刀を空中で掴み取り、構え直し、振り抜いた


球磨「むっ」


当たりはしない、が

その切っ先が球磨の服を捉え、真一文字に切り裂いた


球磨「惜しかったクマっ、けどここで終わりクマっ!」


右手の主砲を掲げ、眼前の木曾へと狙いを定める球磨


木曾「終わらねえよっ!」


主砲が放たれるその一間に

木曾の手が、球磨の手を引っ掴み自身の方へと引き寄せる


球磨「クマっ!?」


砲身が、木曾の肩を飛び越えて背中へ抜ける

遅れて発射された砲弾が海面を叩く

そして、体勢を崩した球磨が木曾の方へと倒れこんだ

その体を受け止めるように、木曾が球磨のおでこに頭突きをかましす


「っ!」


その衝撃に、2人が漏れそうになる声を無理矢理に押さえつける


木曾「この、石頭が…」

球磨「さすがは姉ちゃんの妹クマ…」


お互い様だと言いたいらしい


球磨「くくくくくくっ、さあどうする?このまま殴り合いでも始めるか?」


ぎゅぅっと拳を握りこむ球磨


木曾「はっ。そんなもん、いちいち付き合ってられるかっ!」


お互いの額を押し付け合い、睨み合う2人

その足元。水底から魚雷が発射される


球磨「自爆する気か…」

木曾「まさか。三式爆雷のちょっとした応用、だったか?」

球磨「クマっ!?」


木曾の手には爆雷がしっかりと握られ

次の瞬間には、球磨の足元へと叩きつけられていた

爆雷の爆発が、ぶつかりあっていた2人の体を強引に引き剥がす

程なくして魚雷も到達し、もう一華咲かせるだろう

上手いこと逃げられるかどうかは、賭けではあったが

球磨を爆発の範囲に押し込める事には成功していた


球磨「くぅぅぅぅぅっまぁぁぁぁっ!」

木曾「なぁっ!?」


爆発の衝撃を引き裂き

球磨の手が、吹き飛ばされる木曾の胸ぐらをガッチリと掴み上げる


球磨「勝ちは…勝ちだけは、くれてやらんクマ…」


掴みあげた胸ぐらを引き寄せ、抱きしめる様に木曾の体を抑えこむ


木曾「この…負けず嫌いが」

球磨「くまくまくまくま♪」


そして、木曾が抵抗する間もなく魚雷の爆発が2人を巻き込んだ


「よくやったクマ…」


ふと、そんな声が聞こえ、頭を撫でられた様な気がする…

だが、そんな感覚も爆発の衝撃と轟音に飲まれていった



ー鎮守府・屋根の上ー


提督「…引き分け、か」


さすがにあの爆発では、どっちが立ってるって事もなさそうだけど


大井「…ほっ」


屋根の上の提督にばれないようにと、小さく息を吐く大井


北上「あれ、大井っち?もしかしてちょっと焦った?」

大井「べつにそんな事は…」

北上「にひひひ。ていとくー 残念だったねぇ」


屋根の上の提督に呼びかける北上様


提督「いいよ。引き分けの時は北上様とデートする約束だし」

北上「お?行っちゃうかい?」


そんなしてもない約束があっさりと承認される


大井「ちょっとっ、北上さんが行くなら私がっ」

北上「どうぞどうぞ」

提督「やったー♪」

大井「あ…」


失言だった。だが、大井が口をつぐむ前に、いらん言葉が口から溢れる

それをしかと聞き届け

ニヤけた顔でデート権を譲る北上様と、目標達成ばかりに喜ぶ提督だった.


大井「もうっ、知りませんっ」


悪戯っ子2人に背を向けて、階下へと向かっていく大井


北上「あ、大井っち何処いくのさ?」

大井「何処って…あの2人引き上げてこないと」

北上「ああー…」


演習とはいえ、あのダメージじゃろくに動けないだろうって


北上「じゃ、提督。あたしらはちょっと行ってくるよ~ん」

提督「ん、頼んだ」

北上「たのまれたっ」


そういって、大井の後を追っていく北上の足音が遠のいていった


提督「…私も行くか…」


ー海上ー


夜の波間にプカプカ漂うバカ二人


木曾「くっそ、次は負けねー」

球磨「なにを、木曾のくせに生意気クマ。ちょっと出来るようになったくらいで、姉ちゃんに勝てるなどど」

木曾「あん?なんならここで沈めてやろうかっ!」

球磨「面白い冗談クマ、指先一つ動かん体で何を言ってるクマ」

木曾「てめーだって、大差ねーだろうがっ」

球磨「指くらい動くクマ。やわな木曾と一緒にしないで欲しい」


辛うじて動く指を動かして、海水を木曾の顔に引っ掛ける球磨


木曾「あっ、てめぇ、やめろってっ」

球磨「くまくまくまくま♪ほーら海水鼻から吸って痛がるクマ」

木曾「けほっ、後で覚えてろよっ」

球磨「おー怖い、今の内にもっとやっとくクマぁ」

木曾「くまぁぁぁっ!」

球磨「くまくまくまくま♪」


などと子供かそれ以下の喧嘩を続ける2人


提督「意外に元気そうだな…」


ふと、何処からとも無く現れた提督が、波間に漂う2人を見下ろしていた


木曾「なっ…いきなり出てくるなよ、お化けじゃあるまいに」

球磨「覗きとは趣味が悪いクマ」

木曾「あんなドンパチやっといて、覗きもへったくれもあるかって」

球磨「クマ、それはその通り。で、木曾に何をした…」


球磨の目がすぅっと細められて、提督を見据える


提督「何もは…そうだな、せいぜい「きゃー木曾さんがんばってー♪」って言ったくらいよ?」


妙な猫なで声をあげる提督


球磨「妙な声を出すんじゃないクマ。気持ち悪い」


そんな提督に、容赦なく投げつけられる暴言


提督「ひどいっ、泣くぞっ」

球磨「やかましい」

提督「ぶー…お?」


なんて、球磨とじゃれていると

ふと、提督の視線が木曾の右目

普段は眼帯に覆われている場所に止まる


提督「…(じー)」

木曾「なんだよ…」


じっと見つめられて、座りが悪そうに身動ぎする木曾


提督「いや、木曾の右目、初めて見る気がするなって…」

木曾「そりゃ、な?」

提督「どして隠してたの?」

木曾「…お前がそれを言うか?」

提督「?」


呆れる木曾に、何それ?っと疑問符で返す提督


木曾「俺のこと怖がって逃げ回ってたの誰だよっ」

提督「木曾、ひとつ言っておく」

木曾「なんだよ?」

提督「都合の悪いことは忘れたっ」

木曾「おぼえてるじゃねぇかっ!」


都合の悪さを取捨選択しといて、忘れたとは何事か


提督「だって、球磨がっ。眼帯が外れたら発作で暴れるから気をつけろってっ」

球磨「…」(←知らんぷり

木曾「おい、バカグマ。てめーのせいか」

球磨「都合の悪いことは忘れたクマ」

木曾「覚えてるだろっ」


本日2回めの木曾のツッコミ


木曾「だいたい、お前もなぁ…信じてんじゃねーよ、そんな下らん話」

提督「そうはいうけど、じゃーなんでずっと隠してるのさ…」

木曾「…そりゃおまえ。こんな目見せたら、余計怖がられるんじゃねーかってよ、な?」


そう言って、提督から右目を隠すように顔を背ける木曾

傷ついた目に、色の違う瞳

避けられる理由には十分だろうと


提督「木曾さん」

木曾「なんだよ」

提督「好きだよ」

木曾「ぶふっ!おまっ、いきなり何言ってっ」


直球な告白だった

あんまりにも唐突過ぎたのか、木曾が吹き出し

顔にへばりついていた、海水が弾け飛ぶ


提督「何って、その目だよ?キラキラしててカッコいい」

木曾「…」


恨みがましい視線を向ける木曾

さすがにそんな顔をされれば誰だって分かる、木曾にだって分かる

提督が、してやったりとニヤついているんだもの


提督「どう♪ときめいた♪」


木曾の右目以上に、キラキラした目を向けて

木曾の反応を楽しむ提督


木曾「うっせーっ!悪いかっ、このクソ提督っ!沈めんぞっ!」

提督「あはははははは。怖い怖い、沈められる前に逃げましょう、そうしましょう」


木曾が動けないことを良い事に

さんざ からかった後、逃げるようにその場から掻き消える提督


木曾「はぁはぁ…ったく」

球磨「妹よ…」

木曾「んだよ…」

球磨「ラブコメはやめるクマ」

木曾「やかましいわっ!」

球磨「くまくまくまくま♪」


木曾の叫び声と、球磨の笑い声が重なり、夜の海に響渡る


北上「元気そうだねぇ…」

大井「なんか、助けるの面倒臭くなってきたんですけど…」


大井と北上が到着してみればこれだった


北上「帰ろっか…」

大井「ええ」


くるりと反転する2人


球磨「あ、ちょっと待つクマ、助けて欲しいクマ、沈みそうクマ」

木曾「すまん、大人しくしてるから、せめて手位は引いてくれ…」


体が動けば土下座でもしてそうな勢いだった


北上「はぁ、世話のやける」

大井「本当に…」


そうして、北上と大井に曳航されて帰投する2人だった


本日の勝敗:引き分け


ーおしまいー



EX:今日の木曾さん


どうも提督です。ここから先はおまけだよ

木曾さんが弄られるだけの簡単なお話なので

もう木曾さんはお腹いっぱいって人は注意な

じゃ、始まりまーす


ー鎮守府ー


「さぁ木曾っ!罰ゲームの時間クマっ」

「ちっくしょぉぉぉっ!」


鎮守府に響く球磨の私刑宣告と、木曾の悲鳴

改二に、重雷装艦に改装されてこの方

いつにも増して、木曾が球磨に勝負を挑んでいた

ま、結果は上記の通り

もはや日常茶飯事で、鎮守府の娘達からしてみれば


「あ、また負けた」

「やっぱり今回もダメだったぴょん」


とまあ、こんな感じだった


ー鎮守府・廊下ー


菊月「どうだ、似合うだろうか?」

木曾「ま、もう少し背が伸びたらだな」


木曾が菊月の頭に手を置き、やさしく撫でる

まぁ、艦娘の体が成長するのかどうかは置いておくとして


菊月「むぅ、そうか…」


菊月の肩には、木曾の外套が掛けられていた

廊下ですれ違った2人

せがまれるままに、外套を羽織らせてみたは良いものの

身長が足りてないせいか、裾が床にぺたーっと広がり残念な印象を受ける


提督「…」


そんな2人を後ろから眺める提督

外套を脱いだ木曾

最近は外套に隠され見る機会も減ってはいたが

その下は軽巡だった頃の制服のままだった


提督「…(じー」


気になってしょうがない

何が?スカートが

姉2人はハーフパンツなのに、なんで木曾さんだけ…


卯月「しれーかん?何してるぴょん?」

弥生「こんにちは」


ぼけーと木曾のスカートを眺めていた提督

そんな提督の顔を覗き込み、卯月が顔をだす

その隣では弥生が小さく頭を下げていた


提督「はい、こんにちは…いや、あれさ…」


すっと、木曾の方を指差す提督


弥生「木曾さん?」

提督「うん。なんでスカートなのかなーって」

弥生「なんでって…」


それはだって、木曾さんだって女の子…


卯月「そんなの、可愛さアピール狙ってるに決まってるぴょんっ」

弥生「…」


なんて言う前に卯月に遮られた


提督「なるほど」

弥生「…(違うと思う)」


訂正するべきかと、逡巡する弥生


提督「それなら、構ってやらないと失礼だな」


にたーっと提督の頬が釣り上がる


卯月「司令官…悪い顔してるぴょん」

提督「卯月はいつも可愛いな。そんな顔してても」

卯月「とーぜんぴょんっ!」


自慢気に無い胸を張る卯月

鏡合わせの様に、ニヤついた2人の視線が木曾の方へと集まる


卯月「で?何するぴょん?」

提督「こうするぴょん」

弥生「…あ」


弥生が止めようと、手を伸ばすが

それよりも早く、提督が指を弾き

乾いた音を廊下に響かせていた


菊月「あ、長月♪どうだ、木曾から借りたんだが…」


長月の姿を見つけて、菊月が後ろを向いたその瞬間だった


木曾「っ!?」


突然、木曾の足元から突風が巻き起こった

別に人が、ましてや艦娘が怪我をするような風でも無かったけれど

布切れを、スカート一枚を180度回頭させるには十分な威力だった


提督「…」

卯月「…」

弥生「…」


固まる3人

見てしまった、いけないものを

いや別に、もとからスカートめくるつもりだったのだ

その本懐が木曾の反応を楽しむ為とはいえ、その下が見える分には何も問題はなかった

そう、それが予想どおりに、色気の無いものだったり

そう、それが期待通りに、ちょっと過激なやつだったりと

その分には何も問題はなかった筈だった


提督「うーちゃん、うーちゃん…」

卯月「しれーかん、しれーかん…」

弥生「…」


互いを呼び合う2人

言葉にしなくとも、お互いに目の前の現実の確認を取り合っていた


提督「…わんもあ?」

卯月「おけ」

弥生「…」


突然、捲れ上がったスカートを抑えて固まってる木曾

その背後に、音もなく忍び寄る3人


ひらり…

提督がその端を掴み、今度は手動で持ち上げる


木曾「…」


はらり…

弥生が、スカートを持ち上げている提督の手を抑えて、下に下ろす


卯月「…」


ひらり…

卯月がその端を摘みあげ、中を覗き込む


木曾「…」


はらり…

その手を掴み、弥生が元に戻す

2度と3度と、上下する木曾のスカート


木曾「てめぇら…何やってやがる…」


と、いい加減 硬直から復帰した木曾が背後の2人を睨む


「何って、スカートめくり(ぴょんっ」


見て分からないの?って顔をしながら重なる2人の声


木曾「よし分かった、バカだなお前たちは…」


拳を握りこみ、振り返る木曾


弥生「…」


一緒にしないで欲しい、とか思いながらも

一抜けたとばかりに、卯月達からそっと距離を取った


提督「木曾、遺言位は良いだろう?」

木曾「ああ、いいぜ聞いてやる」

卯月「その くまさんパンツは一体何処に需要があるぴょん?」


代弁、卯月、直球ストレート


木曾「しずめぇぇぇっ!」


雄叫びを上げ、木曾が軍刀を引きぬいた


「逃げるぞ(ぴょんっ」


逃げる、あるいは追う

思惑は兎も角、一斉に走りだす3人

長い廊下をスプリントコースがわりにして、疾走していった


弥生「…」

球磨「なんだ、あのバカ共は…」


走り去る3人を見送る球磨と弥生


弥生「ねぇ、球磨さん?」

球磨「?」

弥生「今日の木曾さんの罰ゲーム、何?」

球磨「ああ、今日はな…」

弥生「…」


それを聞いて、だいたいの事情を把握する球磨と、閉口する弥生だった


長月「裾、余ってるぞ…」

菊月「せ、背伸びで何とか…」


ぐーっと体を伸ばしてはみるものの

床に広がる外套の面積はさほど変わらなかった


長月「はぁ…まったく」


菊月の後ろに回り、外套の裾を折り曲げ、持っていたヘアピンで仮止めしていく

多少の不格好さは残るものの、床に広がっていない分、少しは見栄えもするだろうと


菊月「おおっ、これなら平気だな」


嬉しそうに外套を翻して見せる菊月


菊月「ふっ…アリだな」


木曾の真似をして格好を付けて見る菊月


長月「それ、本人の前でするなよ?」

菊月「ん?だめか?」

長月「だめだ」

菊月「そうか…」


しゅんと肩を落とす菊月

やる気だったのかと、少々不安になる


長月「で、あの3人は何をやっていたんだ…」

菊月「ん?」


今気づいたとばかりに、後ろを振り返る菊月

その視線の先には、軍刀を振り回して、提督と卯月を追いかける木曾の姿


菊月「しらんっ、鬼ごっこか何かだろう」

長月「そうか…」


まあ、ろくな事じゃないんだろうな

3人の背中が廊下の角を曲がり見えなくなる

だというのに相変わらず喧騒だけは聞こえてくる

今日も騒がしくなりそうだった


木曾さんの罰ゲーム

本日のお題:今日一日中くまさんパンツな

球磨型だけに、くまくまくまくま♪


ーEX:今日の木曾さん・おしまいー


後書き

はい、というわけで最後まで読んでくれた方。本当にありがとうございました
貴重な時間が少しでも楽しい物になっていれば幸いです

それではこの番組は

提督「はいっ、ここで木曾さんがモールス分かんねーんじゃねーかって件について」
望月「あれはねーよな…」
長月「わざとだろう、さすがに…」
瑞鳳「何よ…あれ、卯月じゃなかったの?」
卯月「うーちゃんにそんなの分かるわけないぴょんっ」
三日月「そんな、胸張って言うことじゃ…」
弥生「SOSできただけでも、えらいえらい」
菊月「ふっ、そのくらい私にだって」
睦月「睦月にだって、出来るしっ」
如月「ええ、できるわね。SOS位は」
夕張「もしかして…この娘達って…」
大鳳「明日は座学ね…」
金剛「・-・-- ・- ・・-・・ ・・・-  --・-- ・-  ・・・ --・・ ・・  -・・-- ・--・-」
文月「はーい、木曾さん。↑の信号は何でしょう?」
木曾「あーえー…ちょっとまて」
皐月「あははは…あ、球磨さん達は分かるかな?」
球磨「わからぬ」
多摩「しらぬ」
北上「ぞんぜぬ」
大井「…て・い・と・く・あい・らぶ・ゆー…」
球磨型「ああ、それそれ…」
大井「…ま、今日はここまでよ…」

もろもろのメンバーでお送りしました


ー以下蛇足に付きー


♪教えて皐月ちゃんのコーナー♪

提督「どうも、戦闘シーンの度に語彙不足を痛感する提督です」
皐月「戦闘シーンに限った話でもないけどね」
提督「それはまあ…」
皐月「ちなみに司令官、モールスは?」
提督「分かるわけ無いだろう」
皐月「うん、知ってた」
提督「あ、そうだ。本編中のSOSの符丁はあってると思うけど」
皐月「後書きの金剛さんの部分は間違ってたらごめんね」

提督「さて、それじゃー。今日の補足は球磨ちゃんの艤装だな」
皐月「公式イラストに描かれてる砲塔部分に20・3cm砲、後は両手に15・5cm砲括りつけてるイメージだね」
提督「ま、両手に括りつけられる物なのかって話にもなるけれど」
皐月「ボクらの主砲だって、片手サイズだし?」
提督「ま、確かに。ま、後は見栄えと描写のしやすさの問題とかね」
皐月「艤装に全部生やしたら、扶桑さん達みたいになっちゃうし…」

♪皐月ちゃんラジオ♪

皐月「はい、それじゃーお手紙という名のコメント返しだよっ」
提督「それで、今回は?」
皐月「うんっ、こんな感じだよ」

・制服X→征服○
・おひい様の将来
・大和おばあちゃん
・うーずい
・他の提督について
・20回記念
・提督の神社について
・SSってなんだっけ?
・皐月と三日月可愛い
・長月と三日月のイラスト
・ガンダムのお話
・おもしろかったよー

皐月「こんな感じになってるね」
提督「じゃ、早速行こうか」

・制服X→征服○

皐月「短冊の部分間違えたのかとおもったら」
提督「その後の大淀さんの所だったね…」
皐月「ご指摘ありがとうございます」
提督「ほら、「せいふく」だけで変換すると、ね?」
皐月「はいはい。良いから素直に謝りなよ?」
提督「…ごめんなさい」
皐月「あ、ちなみに あの子はあれでも元帥だから、一応」
提督「きっと私なんかより優秀」

・おひい様の将来

皐月「そうだね。艦娘で喩えるなら、ビスマルクさん見たいなイメージになるかな」
提督「中身は兎も角」
皐月「…いや、案外中身も変わらないような?」
提督「ああー…うん。でもまあ、ちんちくりんのままが良いって人もいるだろうし」
皐月「その辺りは好きにイメージしてくれて大丈夫だよ」

・大和おばあちゃん

みつよ「おばあちゃん(笑」(←元帥閣下
大和「ちょっと、待って下さい。私がおばあちゃんなら、金剛さんや皐月さんだってっ」
みつよ「大和っ。下の者を見つけて叩くなんて敗者の思考だわっ」
大和「うっ」
みつよ「そんなだから、おばあちゃんって言われるのよっ」
大和「はい、ごめんなさい…」

提督「じっさい、お茶とお煎餅似合いそうよね」
皐月「…今回は、見た目じゃなくて、行動のせいだと思うけどなぁ」

・うーずい

提督「…イッたか」
皐月「…イッたね」

弥生「うん、先ずはどっちが受けで、どっちが責めなのかから、確認は大事
    私は卯月が楽しそうならどっちでも良いんだけど」
文月「はーい。お姉ちゃーん、戻っておいでー」
弥生「あ、まだ話が…」

提督「お前の姉だろう?早く何とかしろよ?」
皐月「司令官の艦娘でしょ?早くどうにかしてよ?」
提督「ま、正直2人がここまで仲良くなるとは思ってなかったけど」
皐月「喧嘩友達くらいに収まるかなーって感じだったのにね、最初は」
提督「分からんもんだ」

・他の提督について

提督「まとめると、次は同期でライバルキャラか」
皐月「そんな予定あったっけ?」
提督「うーん、艦娘は一杯いるし、どっかで宛てがっても良いけどな」
皐月「現時点の話なら、ライバルキャラの設定は特には無いんだけど」
提督「美味しそうだから、そのネタもらっとくね♪ありがとうございます」
皐月「引きこもりの司令官に、わざわざ突っ掛かるライバルキャラってどんな人なのさ…」
提督「そこは…ま、これからだな。適当に理由をでっち上げるところからだね」

提督「あとは、先輩後輩までは決めてないけど。おっさん、お姉さん、昔の知り合い、位の予定はあるかな」
皐月「いつになるかは分からないけど。出てきた時はよろしくな」

・20回記念

提督「20回記念は、木曾さんのパンツです」
皐月「今決めたでしょ、それ」
提督「あははは。まあ、そうだな、ごめんなさい、特にイベントは考えてなかったです」
皐月「季節ネタとかで枠埋まっちゃうしね」
提督「それにほら、皐月だって「司令官がいれば、ボクにはいつも、特別な日だけどね」って、てことは毎日記念日だねっ」
皐月「あ…えと、まぁ、そうなんだけど…うん」
提督「かわいい」
皐月「うっさい…次行くからねっ」
提督「はいはい」

・提督の神社について

皐月「そんな設定を覚えていてくれた人がいる事に驚き」
提督「ちゃんと読んでくれてるものだね。ありがとうございます」
皐月「で、あるの?」
提督「あるよー、一応だけど。EXも含め、本編に出る機会はあるのかどうかだけど」
皐月「出さないのかい?」
提督「私の昔話をしてもしょうがない。恥ずかしいしな…ちなみに、今は誰も管理してないのでボロボロです
    場所は山の方だから、鎮守府とはちょっと離れるかな。木曾さんの釣りしてる河の上流の方とだけ」

・SSってなんだっけ?

提督「S(サイド)S(ストーリー)」
皐月「うん、ついに突っ込まれたね」
提督「い、一応一話完結っぽくはしてるから…」
皐月「そのうち前後変になったり…」
提督「ないない」
皐月「その代わりに文字数は増える」
提督「次行こう」
皐月「あ、逃げた」

・皐月と三日月可愛い

提督「しってる」
皐月「ほんと、いっつもボクらの事からかってさ」
提督「でもあれだろ?急に構わなくなると、逆に不安になるってパターン」
皐月「ないから」
提督「じゃ、次からは三日月とだけ遊ぶとしよ」
皐月「…ばか」

大鳳「ほんとは、自分が一番寂しいってオチなのよね」
提督「うっさいよ、そこ」
大鳳「はいはい」

・長月と三日月のイラスト

提督「これは…」
皐月「ごめんね、司令官絵心無いから…」
提督「日本語書くのだって下手だぞ」
皐月「それはどうかと思うんだけど」
提督「20回記念とか言って、イラスト描ければ良かったんだけどな」
皐月「うん。司令官の拙い文章で想像してくれると助かるかな」

・ガンダムのお話

皐月「みんな好きだね、ガンダム」
提督「種死はきっと、シン意外に面白い人がいなかったのが問題」
皐月「なんで、そんなシンの事気に入ってるのさ?」
提督「実は妹が生きていて、それを目の前でまた失ったりした日にはあいつはどんな反応するんだろうって
    そう考えたら、もうもうもう…にひひひひひ」
皐月「うわ、趣味悪い…」

提督「っと、プロヴィデンス戦の時はあれだ。キラだって頑張って切り払ってたし、ミーティア事体もデカイとは言え
    それなりに機動力あるはずだからね」
皐月「それでも、しっかり壊されてたし。やっぱりあのサイズはネックだね」
提督「高機動戦艦見たいな装備だしな」
皐月「そういう意味では金剛さんかな?」
提督「それより、大和をおんぶして戦う長門の絵ってどう思う?」
皐月「笑えばいいと思うよ?」

提督「ウルトラマンダイナか、私もそう思ったよ」
皐月「次のガンダムは、主人公がガンダムに変身とか」
提督「悪くはないが…ガンダムじゃなくていいよね?」
皐月「うん」

提督「空母の艦載機はファンネルだったのか?」
大鳳「そうね、似たようなものだけれど。ある程度は自立で動いてくれるから、多少のジャミングなら平気なはずよ?」
皐月「…素直にファンネルって言葉を受け入れてる大鳳さんって…」
大鳳「ん?皐月だって、そうでしょう?」
皐月「まあ、そうだけどさ…」

提督「MSVだと、私はアストレイGフレーム天が好きだな」
皐月「そういうの好きだよね、司令官は」
提督「カッコいい悪役なくして、物語は映えないよ?」
皐月「司令官の場合、楽しそうにしてる人が好きなだけだと思う」
提督「それもあるけどね」

・睦月型は最高で最強

提督「最近の睦月型は凄いぞっ、最高だっ!」
皐月「あと2人、早く着任できるといいねっ」
提督「改2と追加ボイスと季節限定イラストでもいいのよ?」
皐月「…結構欲張りなお願いだよね」
提督「そんなの、睦月型に限らず。嫁艦のアプデは皆望んでるでしょ?」
皐月「うん、それもそうだね」

・おもしろかったよー

皐月「うん、喜んでくれて何よりだよ」
提督「大したお返しもできませんが、いつもありがとうございます」
皐月「さっきも書いたけど、司令官 絵心とか無いしね」
提督「別に描いてくれてもいいのよ?」
皐月「露骨な催促、いやらしいんだ」
提督「にひひひ。というわけで、このお話は、私の妄想と、皆さんの想像力で成り立っております」

皐月「それじゃ、今日はここまでだよっ」
提督「最後までのお付き合い、ありがとうございました」
皐月「今回で、木曾さんの株が少しでも上がれば嬉しいかな、ボクは」
提督「それでは、また次回も縁があればお会いしましょう」
皐月「まったねー♪」

提督「でも…なにげに、球磨が目立ってるよな」
皐月「立場的にはしょうがないんじゃ」
提督「だって…球磨が木曾に負ける未来が最後まで見えなかったんだもの、あれでもテコいれしたんだよ?」
皐月「球磨さんって…」
提督「こわいこわい」


このSSへの評価

3件評価されています


2015-08-10 21:19:21

SS好きの名無しさんから
2015-08-06 09:46:23

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2015-08-03 15:01:14

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2015-08-10 21:19:22

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2015-08-06 09:46:19

SS好きの名無しさんから
2015-07-29 09:23:12

このSSへのコメント

5件コメントされています

1: SS好きの名無しさん 2015-07-29 09:27:49 ID: snvLYFWl

面白かったよ〜。木曾さんカッコかわいいな。同じ眼帯の天龍とは、えらい違いだ。

ジャスティスは、ガンダムもウルトラマンもいるよな。ガンダムの方が先らしいけど。

2: SS好きの名無しさん 2015-07-30 08:08:58 ID: VubQkmlR

球磨は最強だし、多摩はフリーダムだし、木曾は弄られるし、睦月型はかわいいし、最高だなこの鎮守府。

ちなみに、作者さんのリアル艦これは、どんな状況なんですか?

3: SS好きの名無しさん 2015-08-01 11:05:57 ID: 5RAY3bL9

実際にあったやり取り
友提督「睦月型って装甲薄いから、使えねぇんだよな〜」
俺「でも最近の睦月型はかわいいぞ。最高だ。」
友提督「つい、そっちに目覚めたか」

睦月型好きが、ロリコンと思われる風潮、どうにかなりませかね〜?

4: SS好きの名無しさん 2015-08-06 09:47:39 ID: uEKq2Ara

はぁ、睦月型とジュウコンしたい

5: Японский перец 2015-08-10 21:38:06 ID: B2nng1Xa

睦月型は正義って、それ一番言われてるから
ロリコンではない、好きになった人がロリだっただけです
運用なら愛と運と愛、これ、大事

木曾さん、奮戦
してやったりですね
まぁいつも通り弄られる事に変わりは無い模様ですが...

ニヤニヤの止まらないラブコメ文章、流石です

次回も、待っております


このSSへのオススメ

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1: SS好きの名無しさん 2015-07-29 09:24:39 ID: snvLYFWl

睦月型がいない艦これなんて、牛肉のない牛丼みたいなもの


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