戦国ラブライブ!♯7
パンって美味しいと思いません?
戦国ラブライブ第七幕になります。
今回も駄作ですので、是非お読みください。
それでは、μ'sが作る戦国の世界をごゆっくりお楽しみ下さい。
因みに、語り手を私にしました。楽しいです。
「パン食べたいよぉぉぉお!!!」
鹿嶋城には穂乃果の悲鳴が響き渡っていた。
「パンはないと言っているでしょう!? 白米で 我慢して下さい!!」
「嫌だ嫌だ!穂乃果はパンが食べたいの!!」
「パンはありません!!一体いくら言えば分かるのですか!!」
「いくら言っても分からないよぉ〜だ!今日は絶対パンしか食べないもん!!」
「穂乃果ぁぁぁぁあ!!!!」
2人はなんとくだらないことで喧嘩をしているのか。今日も高坂家は平和なようである。
「あーもう、うるさい!!何なの!?夫婦喧嘩は外でやりなさいよ!!」
その騒がしい声を聞いて、戦国の高嶺のフラワー・西木野真姫が現れる。
「あ!真姫ちゃん聞いてよ!!」
「真姫!聞いて下さい!!」
「海未ちゃんが!!」「穂乃果が!!」
「いっぺんに喋らないでよ!!私は聖徳太子じゃないのよ!?」
聖徳太子は10人の言うことを一度に聞くことが出来たらしい。一体どんな耳をしていたのか。
「穂乃果はパンが食べたいのに、海未ちゃんがお米食べろってうるさいの!!」
「パンはないって言っているのに、穂乃果はパンしか食べないと聞かないんです!!」
「だから!!いっぺんに喋らないで『真姫ちゃん!!』 『真姫!!』
「「どっちが(どちらが)悪いと思う(思います)!!?」」
「あぁぁぁぁぁぁぁぁあ!!!!」
真姫の悲鳴が晴れ渡った空へと舞い上がった。
「……で? 真姫が夫婦喧嘩に巻き込まれて、今の状態に至るわけね?」
「せやね」
穂乃果と海未の戦争は凄いものとなっていた。
2人は顔を真っ赤にし、未だに口論中。その横には魂が抜けたように倒れている真姫がいた。
「今回の喧嘩は史上最大だよぉ…」
「犠牲者が1人でたからね。信じられないわ」
真姫は2人から迫られ、あの叫び声をあげた後にふらふらと床にへたり込んでしまったという。
「どうする?放っておく?」
「それはどうかと思うけど。…ことり!」
「ピィッ!?」
「あなた、この戦を収めることはできる?」
「今回はちょっと…」
「…なら放っておきましょうか。時間が解決するはずよ」
「そもそも、喧嘩の原因もアホみたいなことやしね」
「とりあえず、真姫を回収しましょうか。部屋に運んであげましょう」
「「はーい」」
しかし、放っておくという手段は甘くはなかった。この鹿嶋城は非常に小さな城。その為、声がほとんど筒抜けなのである。
これが意味することは………
「……ぁぁぁぁあ!!!うるさい!!うるさすぎるわ!!」
「絵里ち、ただでさえ騒がしいのにそんな大きな声出さんといてや。うち、もう頭痛いねん」
そう。あの大声の喧嘩が城内全てに響き渡る。
これは一大事であった。
「とんだBGMね…。ちょっと散歩してくるわ。希も行く?」
「あー、うちもそうするかなぁ…。絵里ちはどうするん?」
「うるさいうるさいうるさいうるさいうるさい……」
絵里は何かに取り憑かれたように「うるさい」を念仏のように唱えている。ホラーだ。
「あらら…。絵里ち、超ポンコツゾーンに入ってしもうたようやんね」
あれは超ポンコツゾーンというのか。一体どんなゾーンなんだろうか。
「それじゃ2人で行ってきましょうか」
「よっしゃ!にこっちとデートや!」
「百合営業はしないわよ〜」
ポンコツ化した絵里を置き、にこと希は逃走。真姫は未だに意識不明、ことりはマカロン作りに熱中。
そして例の2人は……
「パンパンうるさいんですよ!!このパン大名!!」
「あー、結構結構!パン大名で結構!!この鬼軍曹!!」
「鬼軍曹…誰が鬼軍曹ですって!!?」
「誰って…。海未ちゃんに決まってるじゃん!!この分からず屋!!」
「分からず屋はどっちですか!!パンはないと言っているでしょう!!?ないものねだりは止めて下さい!!」
「知らないよ!!もう穂乃果のパンを食べたいゲージはMaxを通り越してエクセレントだよ!!」
「何がエクセレントですか!!何故Maxを通り越すとエクセレントになるというのですか!!」
「ベンジョンソンが決めたの!!Maxを越したらエクセレントだって!!だからもう穂乃果はエクセレントだよ!!」
※穂乃果の喋っていることは全てデタラメです。 ご注意下さい。
「そんな馬鹿みたいな話をしている暇があったら早くご飯を食べて下さい!!勿体ないでしょう!?」
「だ・か・ら!パンが食べたいの!!もうお米は飽きたの!!」
「農民達が頑張って育てたお米に向かってそれは何ですか!!最低の発言ですよ!!」
「……そうだね。それは穂乃果も思ったよ」
「ではしっかりとお米を食べて下さい!農民に感謝をして…」
「でもそれとこれとは別だよ!!パンが食べたいぃぃ!!」
「もう少し素直になったらどうですか!!パンはないのです!!」
「自分の気持ちに素直になったらパンが食べたいんだよ!!パンパンパンパンパンパンーー!!!」
「あぁぁあ!!!お米お米お米お米お米お米お米ぇぇえ!!」
なんと醜い争いであろうか。人間はこうして戦争を繰り返すのだ。
「あー、スッキリしたぁ♪」
「本当よ…。いつも冷静な海未まであんなにムキになっちゃって…」
「まぁ、喧嘩の相手が穂乃果ちゃんやからね〜。ムキになるのも当たり前やない?」
「そう?」
「そう。高坂と園田は何代も前から繋がりがあってな?穂乃果ちゃんと海未ちゃんは生まれた時からずっと一緒…。スーパー幼馴染なんよ。途中から高坂に拾われて仕えることになったうちらには分からん何かがあるんよ、きっと」
「…にこ達に分からない何か、か。運命ってやつ?」
「さぁ?でもうちは、あの2人は運命共同体やと思っとるよ。それ位深い絆で結ばれとる。そんな気がするんや」
「へー…。ていうか、希も意外と真面目な話できるじゃない。あんたちょっとふざけすぎなのよ」
「いきなりの話題転換やね、にこっち。…真面目な話ばっかりしてても面白くないやん?せやからうちはふざけるんよ。いつ死ぬか分からん命。楽しく生きんとな♪」
「希…。重い。重すぎる」
「えぇー?にこっちがこの話させたんやろ?」
「さて、そろそろ戻りましょうか。喧嘩も収まってるかもしれないし」
「無視かいな…」
にこは今来た道を引き返そうと方向転換し、スタスタと歩き出す。希もつられて戻ろうとした。
——その時だった。希の視界が前方から迫るものを捉える。
「にこっち!!」
「本当にしつこいですね…!!パンはないと!!」
「海未ちゃんこそしつこい…!!パンしか食べたくないって!!」
「「言ってるでしょ(言っているでしょう)!!?」」
2人の声が調和する。何だかんだ仲は良いのだ。
「やむを得ません…。これだけはしたくありませんでしたが…」
「穂乃果だってしたくないけど…」
「「実力行使です(だよ)!!」」
「表へ出て下さい、穂乃果。木っ端微塵にして差し上げましょう」
「こっちのセリフだよ!穂乃果が勝ったらちゃんとパンを用意してもらうからね!!」
「ええ。しかし私が勝ったら文句を言わず早くご飯を食べてもらいますからね」
2人は木刀を手にとり、城門へと向かった。
微かに甘い香りがする。その匂いを嗅ぎとったのか、今まで気絶していた真姫が目を覚ました。
「……。ん…?」
「あ!真姫ちゃん、気がついた?」
「……。えぇ、まぁ」
「よかった♪あ!そうだ!マカロン食べる?」
「…?マカロンなんてあるの?」
「うん!ことりが作ったんだ♪」
ことりが差し出したマカロンを受け取る。
形は完璧。どこからどう見てもマカロンだった。
「へー…。あなた凄いわね…。こんなに完璧なマカロンを作る人、初めて見たわ」
「うふふ〜♪でしょ?今回はちょっと自信あったんだ〜♪」
「食べてもいい?」
「もちろん!」
ことり作マカロン、いわば「チュンチュンマカロン」を真姫は口に運ぶ。
そのマカロンは一口サイズのもので、間食にはもってこいである。
「……」
「どぉ?」
まずは舌の上でマカロンを転がし、マカロンの形をもう一度、目視ではなく感触で確かめる。
(形はやっぱり完璧ね…)
次は味。舌の上で十分湿らせ、より柔らかくなったマカロンに歯を入れる。
(——————!!!!)
真姫の口に衝撃が走った。程よい甘さに微かに香るチェリーブロッサムの匂い。そして口にベタベタと残らず、サラッとした印象を与える、何とも言えない後味。
まさに味の協奏曲やぁ!!!!
「す、凄いわ…、ことり!!今すぐにでも商品に出来る位の美味しさよ!!」
「ほ、本当?」
「ええ!外国の有名パティシエにも負けてないわ!」
「そこまで褒められると照れちゃうなぁ…♪真姫ちゃんありがと!」
普段あまり感情を表に出さない真姫であるが、この時ばかりは目を輝かせ、「美味しい」ということを心から表現していた。
チュンチュンマカロン恐るべし。
※実際に、マカロンを舌の上で転がすなどという汚い食べ方はしてはいけません。真姫ちゃんもこんな汚い食べ方は実際しません。ご注意下さい。
「にこっち!!」
「ん?どうしかした?…って何でそんな焦ってるのよ」
「あ…あれ、あれ!」
にこは希が指差す方向を見る。標的を指す希の指は震えていた。
「あれ…?あれって…」
そのさされたものとは馬に乗り、頭に白い頭巾を被った武士であった。
ん?待てよ?頭に白い頭巾を被った武士?そんな感じの人どこかでみたような?白い頭巾?武士?希の焦り?
「…うぇぇぇぇぇえええ!!?」
にこの頭の中で全てが繋がった。そしてそれと同時に信じられない位の絶叫が飛び出る。
「なっ、な、ななな何でここに上杉謙信がいるのよ!!!」
「うちに聞かんといてや!!これは大変やで…!すぐ城に戻って伝えな!!!」
「え、えぇ!そうね!早く戻らなきゃ…」
お気づきの方はもういいのだが、白い頭巾を被った武士…といえば「上杉謙信」が有名であろう。彼は越後(新潟)を治める大名。その為、彼が敵国である、関東の高坂領に出現しているのは非常におかしなことなのである。大事件だ。
にこは猛然と走る。
早くこのことを皆に伝えなければ。
上杉と高坂の戦争が始まるかもしれない。
もしかしたら今日は穂乃果を殺しに来たのかもしれない———。
「やぁぁぁぁあ!!!」
「はぁぁぁぁあ!!!」
その頃、城門では合戦が行われていた。巌流島の決戦ならぬ、鹿嶋の決戦である。
木刀同士がぶつかり合い、鈍い音を立てる。いくら相手が剣豪・海未と言っても、穂乃果はスクールアイドルを始める前は、剣道部に所属していて、大会では無双していた実力がある。
2人の対決は互角だった。
「くっ…。やりますね…」
「海未ちゃんこそ…。さすがいつも鍛えてるだけあるね…」
「ふっ…。こうなれば必殺技を出すしかないようですね…」
「…!?必殺技…!?」
なんだと、海未には必殺技があるというのか。
「必殺…」
「必殺…?」
穂乃果は身構える。喉がゴクリと音を立てた。
「—つばめ返しっ!!」
——海未よ、お前は佐々木小次郎なのか——
つばめ返しとは巌流島の決戦で宮本武蔵と死闘を演じた佐々木小次郎の必殺技。
斬りおろした直後に真上に斬り上げる。仮に斬りおろしを避けられたとしても、再び真下から刀が自分に向かって上昇してくる。まさに必殺技である。
カァァァアン——
乾いた音が戦場に響きわたった。
「…な…。な…っ!?」
そこには1つの木刀が地面に転がっていた。
「甘いよ…?海未ちゃん…♡」
そして、フー…ッと穂乃果が一つ、細い息を吐く。木刀を頭上に振り上げ、右足を踏み出す。
「めぇぇぇぇぇえん!!!!!」
木刀が海未の頭をかすめる。
心・技・体そして残心が完璧に揃った面であった。一本、穂乃果の完全勝利だった。
「……」
「あはは…。大丈夫?海未ちゃん?」
「あなたいつの間にこんな…」
「えっと…。剣道やってたし?」
「穂乃果…」
「?」
「私の負けです…」
海未はがっくりと崩れ落ちた。その長い髪が前に垂れ下がり、まるで貞子である。
「まさか…。穂乃果に負けるとは…」
「う、海未ちゃん?そんなに落ち込まなくても…」
「今まで一度も穂乃果に負けたことのなかった私が!!何故…!」
「まぁ、穂乃果の方が強かったってことだね♪」
「つばめ返しまで防がれるとは…」
「えへへ…。ちょっとつばめ返しには耐性があってね〜」
つばめ返し耐性とは一体何なのだ。
「くっ…。仕方ありません…。パンを用意しましょう」
「やったぁ!優勝商品だね♪」
「では、私はパンを調達してきますので……って?」
「穂乃果ぁぁぁぁあ!!!」
そこに、物凄い形相のにこ襲来。
「に、にこ!?一体どうしたんですか!?」
「あ、海未もいたのね。ってか喧嘩はもういいの?」
「うん!穂乃果の勝ちだよ!」
「ほ、穂乃果の勝ち?あの喧嘩に勝ち負けなんてあった…って!!それどころじゃないのよ!!」
「いや、にこちゃんが喧嘩の話をし始めたんだよ?」
「あー、うん、それもそうね…って!!それどころ『あー、はい。そのくだりはもういいですので。何があったんですか?』
——海未はツッコミを覚えた!——
「う、う、ううう上杉謙信が!!」
「「上杉謙信が?」」
「せっ、せせ攻めてき『謙信殿が穂乃果ちゃんに話があるって来てくれたみたいやで♪』
「「は?」」
そう言った希の背後から上杉謙信が現れる。
「これはこれは…。高坂家は賑やかですな…」
「うわぁ!け、謙信さん!!?」
海未はすぐさま膝をついていた。クラウチングスタートのような体勢である。
「これは…?園田殿ですな?そんなにかしこまる必要はない。頭を上げんか」
「い、いや…。しかし…」
「大丈夫やで、海未ちゃん!謙信殿はいい人やし!」
「希…。というかあなたは何でそんなに謙信殿と仲が良くなってるのですか?」
「ん?世間話してたらな〜♪」
「左様。希殿は面白くてな」
謙信はご機嫌そうに高々と笑う。
「そ、そうですか…。しかし、希!あまり失礼な事はしていませんね?」
「そりゃぁもちろん。うちかてそれ位分かっとるって!」
「それで…。高坂殿。そなたに話があり参上したのだが…。大丈夫か?」
「あ、はい!大丈夫です!」
「それでは謙信殿。客間へご案内します故、私に付いてきて下さりますか?」
「承知した」
海未は謙信を引き連れ、鹿嶋城内へ入っていった。謙信が人に連れられているとは…。凄い絵面である。
「謙信さんって、意外と優しそうな人なんだね!」
「せやな〜♪まさか軍神があんなに優しい人だとは思わんかったで」
「うんうん♪じゃあ穂乃果達も中に戻ろっか!謙信さん待たせるわけにはいかないからね〜」
そう言って穂乃果と希は城内へ戻ろうとする。
しかし、待てよ?何か忘れてはいないか?読者の皆様はお気づきだろうか?
そう…。
それは——
「ちょぉぉっとぉぉぉ!!!」
「うわぁ!!にこちゃん!!」
「びっくりさせんといてや!寿命縮まってまうやろ!」
「ぬぅあんでにこが話そうとすると割り込みが入るわけ!?ありえないんですけどぉ!!?」
にこよ、それは貴女がそういう立場だからなんだ。許してくれ…。
「この宇宙No. 1侍のにこにーを放っておくとか…。言語道断よ!!」
「あはは…。この時代のにこちゃんは宇宙No. 1侍なんだね…」
「あー、はいはいにこっち!そんなに怒らんと!にこっちはそういう役目なんやし!」
「どぉいう役目よ!!」
「ほらほら、にっこにっこにー♪」
「にっこにっこにー♪…って!それどころじゃないって言ってるでしょう!?」
「穂乃果ちゃん、謙信さん待たせたらあかんから行っててええよ!この暴れ馬はうちが処分しとくから…」
「誰が暴れ馬よ!!…それと!!処分って何!?処分って!!」
「それじゃあ希ちゃん、よろしくね!」
「任せとき〜」
「にこの話を聞きなさいよ!!!」
「にこっち…。…あ!あんなところに空飛ぶおにぎりが!!」
空飛ぶおにぎり??
こんな変な誘いを間に受ける人が……。
「え、え!?どこ!?それは凄いわよ!!」
いた。
「あー、にこっち!あっちやあっち!」
「あっち!?あっちにあるのね!?」
「せやせや!ほら、早う追っかけな、飛んで行ってまうで!」
「分かったわ…。必ず捕まえて功名とするわ!」
おにぎりを捕まえて功名とする…。どんな話なのだろうか。
「待ってなさい!!空飛ぶおにぎりぃぃぃぃい!!!」
そう叫んでにこは遥か彼方へと駆けていった。
「…。まさか本当に騙せるとはなぁ…。にこっち…あんなんで大丈夫やろか…」
ええ、私も心配である。
そんな頃、鹿嶋城内は多少のパニックに陥っていた。その原因は勿論、上杉謙信がいきなり城内に現れたからである。
「では、謙信殿。こちらが客間になります。穂乃果が来るまで少々お待ちください」
「承知した。園田殿、感謝する」
海未はスーッと客間の襖を閉める。さすがの海未も謙信が相手となると緊張したのか、少し汗ばんでいた。
「う、海未?」
「あ、真姫!先ほどは申し訳ありませんでした…」
「いや、もう大丈夫だからいいのよ。…それより、何で上杉謙信が…?」
「なんでも、穂乃果に話があるみたいで…」
「…だとしても凄いわね。謙信自ら参上するなんて」
「はい。普通ならあり得ませんからね」
「謙信は何を考えてるのかしら…?」
謙信が客間に入ってから少々の時間が過ぎたところで、穂乃果が登場した。
「これは高坂殿。突然押しかけて申し訳ない」
「いえいえ!全然大丈夫です!」
「それにしても、高坂家は皆楽しそうでいいですな」
「あはは…。まあそれが高坂の良いところだと思ってるので…」
「賑やかなのは軍の士気が上がる故、素晴らしいと思うぞ」
「そうですか?ありがとうございます!」
「…そういえば、何故家臣達はそなたの事を名前で呼んでいるのだ?普通じゃあり得ぬぞ?」
「だって…。みんな仲良しの方がいいじゃないですか!身分とか関係なく、高坂はみんな仲間であり、友達なんです!」
それを聞いた謙信は再びご機嫌そうに笑う。
「流石は高坂殿よ。私の目は間違っておらんかった!」
「それは光栄です!」
こんな感じで、高坂穂乃果と上杉謙信の対談は和やかなムードで始まった。
一方、その頃高坂家臣達は客間の前に集結していた。穂乃果と謙信の会話を聞くためである。
「何かすごい和やかに始まったけど…。上杉ってこんな感じなのね…」
「ええ。私も最初あった時は驚きました」
「それにしても、上杉は何の為にこっちに来たのかしら。しかもわざわざ自分が来るなんて…」
「かなり重要なことなんと違う?」
「それはそうでしょうけど…」
高坂家臣達は未だ謙信の行動を理解出来ずにいた。謎めいた謙信の行動。これが意味することは一体何なのだろうか?
「…!この丸いものは甘くて美味しいの…。これは何というものなのだ?」
「あー、それは、マカロンって言います!」
「ま、まかろん?」
客間にはお茶と世界の西木野を唸らせたマカロンが用意されていた。
「はい!ことりちゃんが作ったんです!」
「ほう…?南殿が作ったのか…。高坂は人材豊富じゃの」
謙信は次々とマカロンを口に運ぶ。こんなに頬張っている謙信はかなりレアである。
「謙信さん?」
「ふぁんじゃ?」
何ということでしょう!謙信が口に物を入れながら喋っている!これではまるで穂乃果ではないか…。かっこいい謙信のイメージが総崩れである。
「あ、えっと…。うちに来た要件は…?」
「あぁ、そうであった。忘れていたわ」
忘れていたのか。
謙信はしっかりと座り直し、穂乃果に頭を下げた。
「上杉と同盟を結んでほしい」
「な、な、な、なななっ!?」
「上杉が高坂と同盟ですって…!?」
「シーッ!!声が大きいで!」
勿論、この様子はしっかりと家臣達が盗み聞きしていた。
「上杉と同盟を結べれば…」
「高坂の後ろに上杉がつくってことになるね!」
「…ということは?」
「「高坂は安泰よ(です)!」」
わーっしょい、わーっしょい。客間の前ではちょっとしたお祭り騒ぎになっていた。
「上杉がついてくれれば…!」
「武田なんて怖くないにゃ!」
「まさか謙信殿から寄ってきてくれるなんて…。さっき言ってた要件ってこれやったんね」
「やったわよ、希!高坂は安泰よ!」
「分かっとるって、絵里ち。せやからそんなに騒がんといてな?」
しかし、この中に1人、冷静に物事を見つめている者がいた。
「待って」
それは、世界の西木野の高嶺のフラワー・真姫だった。
「…?どうしたのよ、真姫?」
「おかしいと思わないの?」
「何がですか?」
「上杉が同盟を結びたいってことよ!普通に考えてみなさい?上杉が高坂と同盟を結んだとして、上杉側に何かメリットがある?」
流石。あっぱれだ。完璧な分析である。
「……。そう言われてみれば…」
「全くないわね」
「でしょう?どう考えてもおかしいのよ」
「じゃあ、何で上杉は凛達と同盟を結ぼうなんて…?」
「さぁ?知らないわよ。毘沙門天の考えていることなんて」
「まさかやけど…。うちらを裏切るつもりじゃ…?」
「一理あるわね。同盟関係を結んで私達を安心させておいて…」
「高坂がどこかと戦をする時に援軍を出すふりをして、背後から攻める…。ということでしょうか?」
「まぁそんなところでしょうね」
「軍神ともあろうものが…。落ちぶれたわね」
「穂乃果は一体どうするのでしょうか…」
「穂乃果達と同盟を?」
「あぁ。そなた達となら武田はおろか、織田も倒せると思ってな」
「へぇ…。そんなに高坂ってかわれてるんですね」
「それは勿論。武田の襲撃を二度も跳ね返したとなると勝手に名は世に広まる」
「そうですか…。じゃあ同盟を結ぶ前に、1つだけ聞いてもいいですか?」
「いくらでも答えてやろう。何だ?人質についてか?」
「…謙信さんはどんな世界を作りたいですか?」
「どんな世界…?」
飛び抜けた質問に謙信は少し困った表情を見せた。
「ふむ…。それは上杉の世であろうな」
「上杉の世?」
「上杉がこの世界を治め、皆我々に従うのだ。…勿論、今回同盟を結んでくれれば上杉と高坂、この世を半分にして治めようと思うておる」
この言葉を最後に、暫しの沈黙があった。
約5分くらいあったであろう。
穂乃果がようやく口を開いた。
「…じゃあ」
「?」
「同盟は結べませんね」
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次回予告!
謙信からの同盟の依頼を拒否してしまった穂乃果。この判断は吉と出るのか、凶と出るのか。
また、謙信の行動に不審感を覚えていた家臣達。この予感は的中するのか…?
そして、謙信の本当の思惑は…?
次回へ続く——
最後まで見ていただき、ありがとうございました。
最近鼻血がよく出て大変です。誰か血を恵んで下さい、ええ。
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