オビトが逆行7
本日何度目かの神威空間、そこでマダラと対峙する。
「オビトよ、須佐能乎以外にもハンデを付けてやる。輪廻眼の使用禁止、木遁の使用禁止、だ。」
指を三本立て、ニヤニヤしながらこっちを見てくる。
完全に舐めてやがんなクソジジイ・・・
「すぐに後悔させてやる!!」
それを聞いてさらにマダラの口角は上がる、オビトは俺に煽られると案外乗ってくれるのだ。
ちょっとした優越感に浸りながらもマダラは万華鏡写輪眼を開眼して走ってくるオビトを見て気を引き締めた。
舐めてかかっては俺でも足をすくわれかねんからな・・・
“火遁 豪火球の術”!!
オビトの火遁によってマダラの孫との戯れは開始された。
クソっ、ジジイめ。ああ言えば俺が乗ってくると思っていやがったな。
まぁ、今回の戦いは正直なことを言えば俺にとってもありがたい。
俺と本気でやりあえる奴なんてそうそういないし、いたとしても全力を振るう機会はない。
案外ストレスは溜まるものなのだ。
そんな事を考えているとジジイの陰遁による棒が飛んでくる。
万華鏡写輪眼で見切りながらかわし、作戦を練る、まともにやりあっていてはチャクラ量の問題で俺が先にやられてしまう。
体術を中心に攻め立てるか・・・
オビトは先手を取るためにクナイを袖の中で準備しながらマダラへと突っ込んだ。
オビトは確かにマダラに比べてチャクラ量は少ない、それにマダラは今穢土転生体なのでチャクラに際限がない。
しかし、オビトのチャクラ量が少ないとは言っても、柱間細胞、そして元々のうちはとしてのポテンシャルも相まって常人の比ではない。
これもマダラの教育による負の遺産『忍の基準の錯誤』である。
オビトは袖の中に用意しておいたクナイをマダラに向かって投げる。
陽動になればとは思ったがマダラに指で挟んで止められてしまいマダラを動かす事すらできない。
「どうしたオビトォ!そんなものではないだろう!!」
マダラが目をキラキラさせて突っ込んで来る、マダラの孫とのスキンシップはその後一時間にも及んだ。
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結局オビトは“木遁”さらには“陰陽遁”を使い、なんとかマダラをメッタ刺しにする事に成功した。
マダラはうつ伏せのまま、陰遁の棒と挿し木によってメッタ刺しにされていた。
(ハンデがあり、俺も本気を出していたのにこれか。やはりジジイは強いな・・・)
オビトは哀れな姿になったマダラを見ながらもっと修行が必要だな、と考えていた。
マダラは正直驚いていた。
確かに俺にはハンデがあった、『輪廻眼』『須佐能乎』『木遁』の使用は禁止したが、それだからこそ体術と忍術は結構本気でやったのだがオビトは柱間細胞の補助があるとはいえ俺の“火遁 豪火滅失”を自前の“水遁 大瀑布の術”で打ち消して見せたのだ。
オビトは『うちはの落ちこぼれ』等と呼ばれていたらしいが成長した今そんな事は無かった。
確かに昔はそうだったかも知れないが今は努力が実を結び『火』『水』『土』『雷』『風』さらに『陰』『陽』と使いこなしている。
もちろん得手不得手はあるのだが全ての属性を扱えるものなどこの世界に一握りもいないだろう。
まぁ、俺は出来るけど・・・
孫の予想外の成長にマダラは機嫌が良かった。
(ジジイがメッタ刺しのままニヤニヤしてやがる・・・)
しかし長門に俺が使えない属性のコツとか聞いといて良かったな。
風遁とかは苦手だが覚えておいて損は無さそうだしな。
(取り敢えず棒を引き抜くか・・・)
後片付けをしなければ。
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暁の拠点の一つ、木の葉の里に近い場所にある拠点にて長門と今後の計画について話をしていた。
大筋は前回と同じなのだが、前回と全く同じ事が出来るわけが無く少しずつズレが生じる。
それを修正するための計画を長門に伝え二人で手直しをしていた。
「よし、これでいいだろう。少々手荒だが仕方あるまい。」
今回は暁としての活動があまり目立つと弥彦達雨隠れに飛び火しないとも限らない。
そのためあまり派手な動きはしていなかったのだが、このままだと三年後に動き出すには資金が少々心もとないのだ。
なので、手荒だが角都を中心に賞金首を狩ることにしたのだ。
「あぁ、そうだな。あまり人を殺すのは良くないのだが・・・」
長門は煮えきらない様子だったが仕方が無いのだ。
それに俺は、必要な犠牲だと割り切っている。特に何かを感じる事は無い。
「いい加減慣れろ、相手は犯罪者だ。容赦する必要は無い。」
「・・・それを狩るのも犯罪者なんだけどな・・・」
長門の笑えない冗談にオビトは何も言えなかった。
重い沈黙が続きしょうがないから帰ろう、と言おうとした時外からこちらへと走ってくる二つの大きなチャクラと小さなチャクラを薄らと感じた。
「!!、長門・・・」
「あぁ、分かってる。こっちに向かってきているな・・・。!?、このチャクラは!」
長門が驚いていたので何事かと思ったが近づいてきたおかけで俺にもその二つのチャクラが誰のものなのかハッキリと感じることができた。
向こうもこちらに気付き一旦は止まったが、俺達のチャクラを感知したのかすぐにアジトへと入ってくる。
「こんな場所でお二人で一体何をしていたんですかねぇ?」
扉を開けながら大柄の忍がもう一人の忍を支えながら入ってきた。
青みがかった肌と明らかに人外のものであるエラ、さらには一人でうずまき一族である長門やナルトを遥かに凌駕するチャクラ量、常人には到底扱えないであろう大刀鮫肌を使いこなす男、干柿鬼鮫である。
「ただの作戦会議だ。お前達こそ何をしている?」
休憩だったらアジトは使わないはずだしな
まぁ、何となく察してはいるが・・・
「木の葉の里に行っていたか・・・」
鬼鮫に支えられながら息をきらしているイタチを見ながら言った。
「ええ、そうなんですよ。何でも木の葉で行われた中忍試験に大蛇丸が潜入して、木の葉崩しをしたらしく・・・」
で、ダンゾウへの牽制の意味を込めてサスケの様子を見に行ったというところか・・・
(ゼツ、念のため詳細を調べておけ)
(了解、オビト)
テレパシーでゼツに木の葉崩しの詳細を調べるように頼んだが、何となく予想は出来ている。
大蛇丸の力量では四代目を倒すことは不可能だ。勝算があるとすれば三代目の方だろう。
おそらくだが四代目は里の外におびき出されたのだろう。そうすれば里の中にいる最高戦力は三代目になるからだ。
「大丈夫かイタチ!?こっちに来て少し寝ていろ!!」
俺がそんな事を考えているうちに長門がイタチの介抱をしてくれていた。
それにしてもイタチは弱り過ぎじゃないか?
なぜだ?弟の成長のベクトルが違いすぎてショックでも受けたのか・・・
取り敢えず体調を調べておくか
「鬼鮫、イタチはチャクラを無理に使ったのか?」
「ええ、イタチさんは万華鏡写輪眼『月詠』と『天照』両方を使っていました。」
両方か・・・
俺は万華鏡写輪眼を乱用しているが、俺とイタチは根本から違う。
俺には右半身の柱間細胞がある。
もちろん最初のうちは視力の低下や使っている時の激痛等があったが、柱間細胞のおかげで視力の低下は一日で治ったし激痛はチャクラ消費の激しさから来るものだったのでこれも柱間細胞の補助でいけた。
今では視力の低下も激痛も感じてはいない。
あとは慣れだな。
なのでイタチが万華鏡写輪眼を一日に何回も使い、チャクラ切れで倒れてもおかしくはない
(それにしたって様子がおかしい・・・)
荒い呼吸、じっとりとした脂汗、熱
チャクラ切れを起こしただけならばこんな症状は出るはずがない。
何か病気にでもかかったか・・・
「鬼鮫、長門、こいつを医者に見せるぞ。この様子は普通じゃない。」
「確かにそうだが、こいつは抜け忍だ。そこらの医者に見せるわけにはいかないだろう?」
確かにそうだ、どうしてもそれがネックになってしまう。
しかし、このまま放っておけば命に関わるかもしれない。
かと言ってイタチほどの忍をむざむざと殺してしまうのは惜しい。
俺が柱間細胞のチャクラを使い無理やり治してもいいが、それだとこいつの体力が持たなそうだ。
でもこの様子だと体力は回復しそうにないな・・・
あっ!そうだ!
「一人だけあてがある。」
「え!?」
「腕がよく、口が堅く、抜け忍でも診てくれそうな人物が一人だけ思い当たる。」
「そんな方いらっしゃるんですか?」
金さえ払えば、だがな
「あぁ、三忍の綱手姫だ」
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今日は朝から調子が悪い、何回スロットを回しても同じ柄が出やしない。
おまけにそんな私を嘲笑うかのように隣の男はものすごい勢いで絵柄を揃えていく。
もう既に玉を入れるための箱は10段以上積み重なっている。
「はぁ」
ため息をつき、冷静に考えてみる。
私が調子が良かった時があったのか、と
悲しいことに一回も無い、子供の頃から賭け事は弱いのだ。
それなのに賭け事を続けているのはどうなんだろうか、と自問し。それでもおもしろいから、と勝手に結論づけた。
そんな事を考えていると隣の男が動き出した。
チラと見れば、整った顔立ちに腰くらいまである少しはねた髪の毛、世の中の一般論ではイケメンの部類に入るのではないだろうか。
男は換金に行くらしく、10以上の箱を一回で持ち運んでいた。
(私には関係の無いことだね・・・)
男の体つきを見るに忍である事は間違い無さそうだった、小分けにして運んでいた一つくらいくすねてやろうと思っていたのに。
なんて事を考えながらシズネのいないうちに羽を伸ばすべく、自分のスロットに集中することにした。
「お!ようやく揃った!」
今日何百回目かは分からないがようやく絵柄が揃う。
「よぉし、この調子で・・・」
「いこう」と言いかけた時だ、誰かに背後に立たれた気配がして動きを止めた。
「三忍の綱手姫だな?頼みがある」
見るとその男は橙色の面をつけていた。
見るからに怪しい人物だ、こういう輩は適当に流すに限る。
「私は見ての通り忙しいんだ、他を当たりな」
「それはできない相談だ、アンタに診てもらいたいヤツがいる。アンタなら口が堅そうだし腕も確実だ」
コイツはしつこそうだ、何言っても聞かないタイプだろう。
しょうがないな・・・
「だったら三千五百万両用意しな!そしたら考えてやるよ」
三千五百万両なんて額はこの貧相な見た目では持っているはずがない。払えるとすれば、大名やどこぞの金持ちくらいだろう。
「三千五百万両だな?」
男がそう言うと男の目の前、何も無い空間からケースが出現した。
「四千万両ある。五百万両は口止め料だ」
「!!」
綱手が驚いていると面の男が印を組んだ。
白い煙と共に現れたのはさっきまで隣に座っていた青年だった。
「さっき稼いだ額で足りて良かったよ」
青年は爽やかな笑みを浮かべた。
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元々おれはかなり運はいい方だ。
綱手姫を探す道すがら宝くじを5枚ほど購入し、そのうちの4枚が当選していた。
そして綱手姫を見つけた後は彼女についてパチンコ屋に入った。
変化を使い、彼女の隣で真似をしてみた。
すると7の数字が三つ並び玉がたくさん出てきた。
(案外楽しいな・・・)
あっという間に箱が一つ埋まり、次の箱もすぐに埋まる。
10箱以上重ねた所でおそらく十分だろう、と思いカウンターに持っていき金に変えた。
あとは綱手姫にイタチの治療を頼めばいいだけだ。
俺は一旦変化を解いて綱手姫の背後に立った。
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結局綱手は俺に協力してくれた。
イタチの症状は俺にはよく理解できなかったが取り敢えずは大丈夫らしい、三日ほど安静にしていれば安定するそうだ。
イタチの顔には俺が幻術をかけていたのて綱手にはイタチの顔は見られていない。
しかし、イタチの死因の半分は病気のせいなのすっかり忘れてた・・・
「という訳で、イタチはもう大丈夫らしい」
イタチを連れて最初にいたアジトへと戻ってきた俺は長門と鬼鮫に報告をした。
イタチが死ぬのは三年後だったはずだ。
早期治療が大切、という事だろう。
「そうですか、取り敢えず安心ですねぇ」
「良かったな・・・」
二人も胸をなでおろしていた。
これでイタチが死ぬ事は無さそうだ、自分の弟の尻拭いも自分で出来そうだな・・・
「これで憂いは晴れた、長門は分かってると思うが勝負は三年後だ。三年後、我々は尾獣狩りを始める。十尾を復活させ、その段階で国同士が手を取り合う構図を作る。簡単に言えばこういう事だ」
気を引き締めるように、と念を押し俺と長門は帰ることにした。鬼鮫はイタチが目覚めるまで待って一緒に戻ると言ったので、アジトに残って数日休むらしい。
俺は長門を神威で送り届けた後一人で神威空間で思考の海にしずんでいた。
タイムリミットまであと三年、出来ることはまだあるな・・・
“あれ”の準備も進めておくか・・・
俺がこの三年で出来ることは少ない、裏から手を回している分影響力は微々たるものだ。
だが『塵も積もれば山となる』と言うしな、今出来ることを着実にやっていくしかないな。
そう結論を出した後でオビトは体のバネを使い起き上がる。
まず木分身を作り出し自分の前に立たせ自分はチャクラを練り上げ木分身に向かって“術”を発動させた。
すると、“術”をくらった木分身は段々と人間味を無くしていき、最後にはただの木になってしまった。
それを見て満足したのか片手印を結んで木を焼き払う。
(これが精密に出来れば・・・)
オビトはほくそ笑んでからその修行を続ける。
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時は巡りあっという間に三年の月日は流れた
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