2016-12-07 09:10:02 更新

概要

提督と艦娘たちが鎮守府でなんやかやしてるだけのお話です

注意書き
誤字脱字があったらごめんなさい
基本艦娘たちの好感度は高めです
アニメとかなんかのネタとかパロディとか
二次創作にありがちな色々
長い


前書き

36回目になりました
楽しんでいただければ幸いです お目汚しになったらごめんなさい
ネタかぶってたら目も当てられませんね

以下、ちょっとしたプロフィール。長いので、興味ない人は飛ばしちゃって下さい

提督
練度:神頼み 主兵装:刀
「えぇ…。やだよ、めんどくさい」
長髪で黒髪、何時も気だるげな表情をしてる
一応、白い制服を着けてはいるが、上から羽織っている浴衣が全てを台無しにしている、不良軍人
そもそも、軍人どころか人ですら無い、元土地神様
覚えている人もいなくなり、ようやく開放されたと思えば、深海棲艦が湧いてきて…
3食昼寝付きの謳い文句も手伝って、提督業を始めだした
性格は、ほとんど子供。自分でやらないでいい事はまずやらない、明日できることはやらないで良い事
悪戯好きで、スカートめくりが好きなお年ごろ
また、結構な怖がりで、軽度は人見知りから始まり、敵は全て殲滅する主義

皐月ー愛称:さつきちゃん・さっちゃん・さっきー
練度:棲姫級 主兵装:12・7cm連装砲(後期型 好感度:★MAX
「え、司令官かい?そりゃ…好き、だよ?なんてな、えへへへ♪」
初期艦で秘書艦の提督LOVE勢。提督とは一番付き合いの長い娘
その戦闘力は、睦月型どころか一般的な駆逐艦の枠から外れている程…改2になってもっと強くなったよ
「ボクが一番司令官の事を分かってるんだから」とは思いつつも
まだまだ照れが抜けないせいか、ラブコメ時には割とヘタレである

睦月ー愛称:むつきちゃん・むっつー・むっつん
練度:褒めてっ 主兵装:12・7cm連装砲(後期型 好感度:★MAX
「提督っ、褒めてっ!」
わかりやすい提督LIKE勢、「ほめて、ほめて~」と、纏わりつく姿は子犬のそれである
たとえその結果、髪の毛をくしゃくしゃにされようとも、撫でて貰えるのならそれもよしっ
好感度は突っ切っているが、ラブコメをするにはまだ早いご様子

如月ー愛称:きさらぎちゃん・きさら
練度:おませさん 主兵装:12・7cm連装砲(後期型 好感度:★9
「司令官?ふふ…好きよ?」
やらかした提督LOVE勢。一昔前、司令官と仲良くなろうと色々頑張ったが
振り返ってみると、かなりアレだったことに気付き、思い出す度に悶絶する毎日
しかし、一度派手なことをやった手前引くに引けず、ラブコメをする度に黒歴史が増えていく毎日

弥生ー愛称:やよいちゃん・やよやよ・やーよ
練度:無表情 主兵装:3式爆雷 好感度:★7
「司令官?好きだよ、普通に」
感情の読めない提督LIKE勢。瑞鳳に卯月が取られて、手が空いた反動か結構好き勝手やりはじめた
最近は ゆーにあることないこと吹き込むのがお気に入り
「もちろん、いい娘に育てるよ?」私のようにねっ
ラブコメはするより見るのが好き…て、思ってたんだけどなぁ

卯月ー愛称:うーちゃん・バカうさぎ
練度:ぴょんぴょん 主兵装:超10cm高角砲★MAX 好感度:★7
「司令官?そんなの大好きに決まってるぴょんっ」
ぴょんぴょんする提督LIKE勢。毎日ぴょんぴょんと、あちこちで悪戯しては怒られる毎日
主な対象は瑞鳳、「だって、からかうとおもしろいだもん」なんのかんので構ってくれる瑞鳳が好き
ラブコメというより、騒がしい妹

水無月ー愛称:みぃ
練度:うん、わかるよ 主兵装:12・7cm連装砲(後期型 好感度:★6
「司令官、呼んだかい?」
鎮守府の新人さん。遊び回ってる姉妹たちに安心したのも束の間
その練度の差には、内心もやっともしている。あと球磨ちゃん怖い
提督に対しても好意的で、可愛がってもらいたいお年頃

文月ー愛称:ふみ、ふーみん
練度:ほんわか 主兵装:12・7cm連装砲(後期型 好感度:★8
「しれいかん?えへへー…なーいしょっ♪」
ふんわりとした提督LOVE勢。空気を読んでいたつもりが空気に飲まれたここ最近
司令官を見てドキドキするのは、きっと姉や妹の影響だ、きっとそう
そうなってくると、いつものスキンシップでさえ気恥ずかしい上に
弥生お姉ちゃんが、変な道に突き進んでいるのを止めたりと最近は忙しい

長月ー愛称:なつき、なっつん、なっつ
練度:頼りになる 主兵装:5連装酸素魚雷 好感度:★8
「司令官…いや、まあ…いいだろ別にっ」
おでこの広い提督LOVE勢。司令官に ちゅーしてこの方
自分の感情を見ない振りも出来なくなり、最近は割りと素直に好意を見せてくれたりもする
自分の感情に振り回されるくらいにはラブコメ初心者。あと、シスコン(菊月)

菊月ー愛称:菊→菊ちゃん→お菊さん→きっくー→くっきー
練度:威張れるものじゃない 主兵装:12・7cm連装砲B型改2★MAX 好感度:★7
「司令官か?好きだが?」
箱入り提督LIKE勢。おもに長月に過保護にされてるせいでラブコメ関連はさっぱり
しかし、偶に見せる仕草はヘタなラブコメより攻撃力は高い。やっぱり如月の妹である
大艦巨砲主義者、主兵装は夕張に駄々を捏ねて作らせた。それとシスコン(長月)

三日月ー愛称:みつき・みっきー
練度:負けず嫌い 主兵装:12・7cm連装砲(後期型 好感度:★9
「し、しれいかん…そ、その…好きですっ!」
おませな提督LOVE勢。どこで仕入れたのか変な知識は一杯持ってる
そして、変な妄想も結構してる。すぐ赤くなる、可愛い
提督と望月に、からかわれ続けたせいで、たくましくなってきたここ最近
ラブコメモードは基本に忠実

望月ー愛称:もっちー、もっち
練度:適当 主兵装:12・7cm連装砲(後期型  好感度:★MAX
「司令官?あー、好きだよ、好き好き」
適当な提督LOVE勢。とか言いつつ、好感度は振り切ってる
だいたい司令官と一緒に居られれば満足だし、司令官になんかあれば不言実行したりもする
ラブコメには耐性があるが、やるとなれば結構大胆

球磨ー愛称:ヒグマ
練度:強靭・無敵・最強 主兵装:46cm…20.3cm(3号 好感度:★MAX
「提督?愚問だクマ」
突き抜けてる提督LOVE勢。気分は子グマの後ろに控えている母グマ
鎮守府と提督になんか有ろうものなら、のっそりと顔を出してくる、こわい
積極的にラブコメをすることもないが、昔は提督と唇を奪い合った事もある
大艦巨砲主義者。最近、私製46cm単装砲の命中率があがった、やったクマ

多摩ー愛称:たまちゃん・たまにゃん
練度:丸くなる 主兵装:15・2cm連装砲 好感度:★6
「提督?別にどーとも思わないにゃ?」
気分は同居ネコ。とか言いつつ、なんのかんの助けてくれる、要は気分次第
絡まれれば相手もするし、面倒くさそうにもするし、要は気分次第
特に嫌ってるわけでもないし、いっしょに昼寝もしたりする、要は気分次第
ラブコメ?何メルヘンなこと言ってるにゃ

北上ー愛称:北上様・北上さん
練度:Fat付き 主兵装:Fat付き酸素魚雷 好感度:★7
「提督?愛してるよん、なんちって」
奥手な提督LOVE勢。気分は幼なじみだろうか
このままゆるゆると、こんな関係が続くならそれで良いかなって思ってる
最近の趣味はFat付きをばら撒いて海域を制圧すること

大井ー愛称:大井さん・大井っち
練度:北上さん 主兵装:北上…53cm艦首(酸素)魚雷 好感度:★8
「提督?愛してますよ?」
分かりにくい提督LOVE勢。そうは思っていても口にはしない、絶対調子に乗るから
足と両手が埋まったなら、胸…艦首に付ければいいじゃない、おっぱいミサイルとか言わない

木曾ー愛称:きっそー、木曾さん
練度:悪くない 主兵装:甲標的 好感度:★7
「提督?まあ、アリなんじゃないか?」
カッコイイ提督LOVE勢。提督に赤くさせられたり、提督を赤くしたりと、まっとうなラブコメ組
そういうのも悪くはないが、本人はまだまだ強くなりたい模様
インファイター思考だけど、甲標的を使わせたほうが強いジレンマ

金剛ー愛称:こう・こうちゃん・こんご
練度:Burning Love 主兵装:Burning…46cm3連装砲 好感度:★MAX
「提督…Burning Loveです♪」
分かりやすい提督LOVE勢。提督の為ならたとえ火の中水の中
何時からだったのか、出会った時からか
ならそれはきっと運命で、この結果も必然だったのだろう
けれど、鎮守府ではオチ担当、艦隊の面白お姉さん
取り戻せ、お姉さん枠

瑞鳳ー愛称:ずいほー・づほ姉ちゃん
練度:卵焼き 主兵装:99艦爆(江草 好感度:★6
「だれがお姉ちゃんよっ」
気分は数ヶ月早生まれな幼なじみ。ラブコメルートもあった気がしたけど、何処行ったかな
卯月にからかわれて、追っかけまわすのが日課
だからって、別に卯月を嫌ってるわけでもなく実際はその逆である

夕張ー愛称:ゆうばりん
練度:メロン 主兵装:軽巡に扱えるものなら何でも 好感度:★6
「ゆうばりんって…気に入ったのそれ?」
気分は一個上のお姉さん。卯月や菊月の駄々に付き合ったり
球磨や提督の無茶振りで、アレな兵装を作ったりと、信頼と安心の夕張さんである
特に決まった装備は無く、戦況次第でなんでも持ち出すびっくり箱、安心と実績の夕張さんである

大鳳ー愛称:大鳳さん
練度:いい風 主兵装:流星改 好感度:★9
「提督、愛してるわ」
素直な提督LOVE勢。金剛見たいにテンションを上げるでもなく、息を吐くように好意を伝えてくる方
ラブコメに悪戯にと我慢強い方だが、許容量を超えると…
その落ち着いた物腰からは、艦隊の保護者っぽくなっているが、内心は見た目通り歳相応だったりもする

U-511ー愛称;ゆー、ゆーちゃん
練度:ですって 主兵装:WG42 好感度:★6
「Danke…ありがとうって…」
鎮守府のこと、皆のこと、Admiralのこと
いろんな事があって、知らないことも知ってることも増えてって
それが明日も続いてく…明日は何をしようかな?

ーそれでは、本編をはじめましょうー


↑前「提督と水無月」

↑後「提督とクリスマス2」



提督と秋祭り



やばいと思った


どれくらい前の事だったろうか

家に北上様と大井さんが着任したのは


ソファの上、提督の膝の上に座っていた文月

仕事をしているのは片手間で、実際の所は提督に対する重石であった


文月「今日はね~、新しい娘が来るんだよ~」


何気ない一言

いきなり部屋に入ってこられるよりは、心の準備も出来るだろうと思いもしたが

同時に逃げる時間も与えてしまったのは不味かった

結果として、ありもしない理由をでっち上げる提督の膝の上が、今日の仕事場となっていた


北上「球磨型軽巡3番艦、北上」

大井「同じく4番艦、大井」


「着任しました」と、声を揃えて敬礼をする二人

ゆるふわ系な北上さんに、真面目そうな大井さん

どっちもどっち、方向性は違っても

優しそうな娘達で良かったなって、その時は思ったの


大井「よろしくお願いしますね、提督」


そう言って、にっこりと大井さん が笑みを浮かべるまでは


やばいと思った


完璧だ、完璧に作り笑顔だ

女の子に慣れてない人なら ころっと騙せそうな程だ

もしかすると、新たな悲恋の始まりまであるかもしれない


けどそれは良い、作り笑顔でも笑顔は笑顔

つっけんどんと、喧嘩腰に来られるよりは波風が立たないだけ良いとさえ思う

正し、向けられる相手が家の司令官じゃなければの話だ


固まっている、固まっていた

背中の腰に伝わる感触、心臓まで止まってるんじゃないかって程引きつってる

お腹に回された腕がぎゅぅっとなって、そろそろ苦しいくらい


何を考えているか分からないそんな笑顔

いや違う、あれは予防線だ

波風を立てる気もないけど、それ以上はもっとないっていう類の


そしてそれは、家の司令官が苦手なタイプで

今でこそ文月が重石になってるから良いものの

そうじゃなければ、とっくの昔に霧散している頃だ


やばいと思った


司令官がいつまで我慢できるか分からない

大井さんから仕掛けてくることは無いだろうけど、それも司令官次第だと思う


北上「てか何さ?仲いいじゃん?」


からかうような北上さんの声

助かる、すっごい助かる

今は少しでも司令官の気を逸したい


文月「でしょー?仲良しだもんねー?」

提督「うん、まぁ…」


いつも以上に甘えてみせる文月

少々わざとらしいと思いもするが、そんな事は気にしてられない

気にしてられないのに、とうの司令官は文月の後ろに隠れたまま

ポニーテールに顔をうずめてしまっている


いい加減誤魔化しきれない

どことなく大井さんの視線が冷たい気がする

「そかそっか」と、笑っている北上さんが頼もしい


多摩「にゃぁぁ…。北上、大井、ちょっと付いてくるにゃ」


あくびを一つこぼすと

ソファの隅で丸くなっていた多摩が、背伸びをしながら体を起こす


全くしょうが無い、今日は一日寝てるつもりでいたのに

慌てふためいている文月を見続けるのも忍びない

荒療治的に、いっそケンカでも始めれば面白かったけど


多摩「多摩が暇な内に鎮守府を案内してやるにゃ…」

北上「お、いいねぇ。そいじゃ、提督。また後でねん?」


ひらひらと手を振りながら多摩のあとを付いていく北上


大井「では、私もこれで」


結局、終始笑顔のまま一礼すると、北上の後に続いて部屋を後にする大井だった


文月「もう行ったよ、司令官」


扉が閉まり、遠のく足音が聞こえなくなる頃

ようやく提督の体から力が抜けた


提督「私…あの娘むり…」

文月「そう言わないでさー。良い娘だよ、きっと?」


希望的観測って訳じゃない

初対面の相手に笑顔を向けられるくらいには

周りに気を配れる娘だって言うのは信じていい

その中身が真っ黒じゃない限りは、良い娘だとは思う


提督「文月より?」

文月「ぇぇぇ…」


そんな究極の選択肢を迫らないで欲しい

頷こうが首を振ろうが、文月の立場が苦しくなる


提督「ほら…」


やっぱりそうじゃんっと、声を落とす提督


文月「あぁ、もうっ。文月よりもっ」


ほとんどヤケだった


提督「おやつ賭ける?」

文月「賭けるからっ」

提督「そっか…」


文月がそういうなら そうなんだろう…

しかし、なーに考えてんだかわかんないんだよなぁ、あの顔




それから数日

距離を取りまくったり、皐月達の後ろに隠れる提督と

表面上は穏やかな大井さん

それもあってか、特に何が起きるでもなく

特に何も起こらない以上、関係性に変化も望めなかった


多摩「で…ちったぁ、マシになったかにゃ?」

北上「いやぁ…いっそケンカでもしてくれた方が良いくらいだよ」


自室にて、畳の上に寝っ転がっている多摩と

ちゃぶ台に伏せっている北上


そう、いっそケンカでもしてくれ方が、お互いの理解が早まる分まだ良い

何も無いのでは、こちらもどうして良いか分からない


北上「いや、参ったよ…。提督はなんとなくそんな感じはしたけれど」


人見知り、厄介なことだ

放っておけば良いと多摩は言うけれど

見てない所で爆発でもされたら怖いったら無い


北上「まさか大井っちまでとは…」


艦娘になって、人の身にもそれなりになってきたのは良いが

余裕が出来た分、一番厄介なのはその心根だと気付かされる


最初こそ笑顔で接していた大井

しかし後々、代わり映えのない笑顔に違和感が出てくる

球磨や多摩はもちろん、他の娘相手ならそれなりに表情に変化が出ても来たが


多摩「にゃ。人見知りにとって身内以外は全て敵に見えているからな」

北上「んなバカな…」

多摩「にゃんにゃら大井にでも聞いてみると良い」


提督の事どう思っているのかって?

きっと答えは「別に…」だろうけど

しかし、質が悪いのは「別にどうでも良い」じゃなく

「別に何でも良い」何もしてこない内はってのがな


北上「どうにかしてよ、多摩っちぃぃ…」


ぐてーっと、ちゃぶ台の上に溶けていく北上


多摩「放っておくにゃ…」


要は慣れ、解決できるものは時間しか無い

解決できなくても波風立てない分大人な対応だ


北上「空気がさぁ…固まるんだよぉ、二人が顔合わせるとさぁ」

多摩「そりゃ、文月がドン引きする程度の笑顔じゃにゃぁ」


完璧すぎる笑顔は能面と何ら変わらないもんだ


結局、どうにかしたい北上と

どっちでも良い多摩の間で意見が一致することはなかった




「怒られますなぁ」


肩に乗せていた妖精さんがポツリと呟く


提督「だってしょうが無いじゃない?」


夜の海からこっそりと戻ってきた提督

深海棲艦がうろついてたのだ、やらなきゃ…


提督「それに、バレなきゃ犯罪じゃないのよ」

妖精「バレぬとお思いか?」


使いまくった弾薬(残弾0)をどうやって誤摩化すというに


大井「あら、提督ごきげんよう」

提督「…ぅ」


「げっ…」と、出かかった声を妖精さんが慌てて抑えにかかる


提督「ごきげんよう大井さん…えーっと、んじゃ…」

大井「何か、バレたら困ることでもあるのでしょうか?」

提督「…」


その言葉に足を止める

触らぬ神に何とやら、距離を取っていたらやり過ごせると思ってたのに


提督「何もはないさ…」

大井「勝手に海に出ておいて、何もないってこともないでしょう?」

提督「散歩だよ」

大井「妖精さんを連れて?」

提督「一人じゃ寂しいんでな」

大井「皐月さん達でも誘えばいいじゃない?」

提督「なら君が付き合ってくれる?」

大井「ご冗談を」

提督「じゃ、そういう事さ…」


やっと出来た話の区切りに、此処ぞとばかりに歩みを再開させる


大井「待ちなさいな」

提督「こんどは…ぅっ」


まだ何かあるのかと振り返った矢先、彼女は目の前に立っていた


大井「アンタ、自分の身に何かあったらどうする気よ」


何が気に障ったのだろうか

いつも張り付いている能面は無く、生の感情が見え隠れしている


提督「どうって…すぐに変わりが来るんじゃない?」


軍隊なんてそんなものでしょ?

ただの冗談。質が悪いにしても、呆れさせて会話が終わるならそれでいいと

頬を叩かれる迄はそう思っていた


大井「さいってい…」


提督を睨みつけ踵を返す大井


最低だ。最初の印象もそうだったけど、少しは期待した私がバカなのか

文月の後ろに隠れていた提督を見たときからそうだった

コイツが提督かと呆れもしたが

邪魔をしないならそれでも良いかと一応の区切りは付けていた


しかし、時間が立つにつれ

どうにも好かれることは好かれているらしいと

少なくとも、駆逐艦連中には懐かれているし

家の姉たちも良く良く気にかけているようだった

そうなれば、自分の偏見を疑うべきなのか?


その必要は無かったようだけど…


懐かせるだけ懐かせておいて、勝手にいなくなるとかってどういうつもりよ…


理屈じゃ抑えきれない感情

放っておけばいいのに、バカの戯言と切り捨てればいいのに

知らず体は動いてしまっていた


大井「ほんと、最低だわ…」




「だからって、何も叩くこたねークマ」


港から戻り、鎮守府の扉に手をかけた所で声をかけられる


大井「覗き?趣味の悪い…」


足を止め、柱に寄りかかっていた球磨を睨みつける


球磨「夜遊びの治らん子供がいるからな」

大井「…」

球磨「ま、言いたいことは分かるが」

大井「無いわよ、そんなもん」

球磨「そうか?ま、フォローはしとくクマ」

大井「別に…」


大井の肩に手を置くと、入れ替わりに大井の来た道を戻っていく球磨


球磨「まったく。どいつもこいつも手のかかる…」


空を見上げ、ふぅっと息を吐く球磨だった





「痛った、何も叩くこと無いじゃない」


港についた球磨が、何を言うでもなく提督の頭を小突く


球磨「やかましい。勝手に出歩くなって散々言ってるクマ」

提督「じゃあ、球磨ちゃんが付き合ってくれるっての?」

球磨「そう聞こえなかったか?」

提督「む…」


それは心外だと、迷いのない返答に言葉を詰まらせる提督


球磨「大井達の練度が上がれば…まぁ、ちったぁマシになるクマ」

提督「大井、ねぇ…」


なんとなく彼女の去っていった方へと視線を向ける

後ろ姿は既に無く、暗い夜道が続くだけ


提督「嫌われたかなぁ…」


未だにジリジリとひりつく頬

思い出すのは能面じゃない素の表情

叩かれた後とはいえ、あっちの方がまだとっつきやすいと思う


球磨「そういう台詞は好かれる努力をしてから言うクマ」

提督「あははは、違いない…」


力なく笑う提督

明日にでも謝っておくべきか

その時の事を考えると憂鬱にもなるが

以前に…なんで叩かれたのだ私は…


球磨「いっそ乳でも揉んでやればいい、意外としおらしくなるかもしれんぞ?」

提督「今度こそ魚雷撃たれるな私」

球磨「安心しろ。骨くらいは拾ってやるクマ」



くまくまくまくま♪と、妙な笑いをこぼす球磨

その笑い声からでは、本気なのか冗談なのかイマイチ判別がつかない

仮にそれを実行して、明日の朝日が拝めるかもわからない

荒療治だな。他人事だと思って好きに言いよる


提督「まったく…」


わしっ…


球磨「なぁに、やってるクマ…」

提督「意外としおらしくなるのかなって?」


わしっ…


提督「何してんのよ…」

球磨「ちったぁしおらしくするクマ」


「くまくまくまくま…」「うふふふふ…」


微笑み、笑い合い、見つめ合う

言い出しっぺとか、何方が先とかは問題ではない

やったことが、やられた事が重要だった


「くまぁぁぁぁぁっ!」「うらぁぁぁぁぁっ!」




北上「うわっ…なぁにやってんのさ、あれ」


騒がしくなる窓の外。何事かと覗き込んでみれば

朧気な外灯の光の下で、取っ組み合っている姉と提督


多摩「そりゃ…」


気だるげに視線を動かす多摩

まあ見なくても分かる、見てしまえば呆れもした


多摩「乳繰り合ってるんだろうよ…」

北上「やだ、乳とか言わないでよ恥ずかしい」


頬染めては見せるけど

そうとしか言いようのない光景ではあった


北上「こっちは仲いいのにねぇ…」


なぜあっちになるとダメなのか


ついに、と言うべきだろうか

馬鹿騒ぎから視線を外し、その先の暗がりへと目を向ける

何があるわけでもない、ありもしない大井の影を追っているだけだ


そうだろうとは思った

先に手を出すなら大井の方だろうと、しかし…


北上「ほんとにやるかねぇ…」


喧嘩の原因はなんだ?提督の夜遊びか?

けど、その程度なら見咎めはすれど手を上げるほどでもないような…あるような?


北上「たーまーにゃぁぁぁん」


しかしそれよりなによりだ、北上さんからすればそれどころじゃぁないんだよ


多摩「そう言えば…明日は大井と秘書艦業務だったにゃぁ」

北上「変わってよぉぉぉ…」


気が重い、重すぎる

蓋を開けたら取っ組み合いを始めていたらどうしよう?

それならまだ良い方で、お互い視線で牽制し合っていたら

その間に挟まれでもした日には…


多摩「やだ」

北上「そんにゃぁぁ…」


ザックリと、切り捨てるような一言だった

後は座して死を待つのみか…短い人生だったわ




大井「何だらけてるのよ、だらしのない…」

北上「誰のせいよ、だれの…」

大井「は?」





ちっくったくちっくたっく…


繰り返される時計の音


ちっくったくちっくたっく…


変化のない雑音


ちっくったくちっくたっく…


執務室。そこにあったのは静寂だった

時計の音がイヤに耳につくほどに静まり返っている


無人なのか?しかしそうではない

3人だ。3人も雁首揃えて声の一つも聞こえない


ぱっぽぅっ…


何度目かの鳩が顔を出す

飛び出した鳩でさえ、口を噤みたくなるほどの静けさだ


何か言うべきだろうか?


本来なら提督が座っているであろう机に収まっている北上

その視線は、ソファの上で向かい合っている提督と、大井の間を右往左往していた


昨日の今日だ。一悶着は覚悟していた

しかし、何も無いなら無いで空恐ろしいものがある


「昨日は二人で何をしていたんだい?」


そう聞きたくはあった

大井が提督を引っ叩いたまでは見ていたが

その原因はついぞ検討がつかなかったから


だからって、聞けんよなぁ…


短すぎる導火線に火を付けるようなもんだ

シュッとしてボンって…危険よなぁ

なんちて…うふふふふ…はぁ…


笑いをこぼせる雰囲気でもなく、濁ったお茶はますます淀むばかりだった



何か言うべきだろうか?


昨日引っ叩い事を咎められるかと思えばそうでもない

むしろ、いつも以上に距離を取られてる気がする


弱虫…


そう罵りたくもあったが…それが正しいのかどうか

人前では固まるくせに、一人になると好き勝手して

ああ、でもそれは…


私と一緒か…


人に本音言えないから、適当な笑顔を見繕って

人に素顔を見せたくないから、適度に距離を取り続ける


同族嫌悪?だとしたら自己嫌悪まで併発しそうだ

すぐに逃げ隠れする提督よりマシだと言いたい


「だからって、何も叩くこたねークマ」


姉の言葉を反芻する

謝るべきだろうか?でも、何で私が…

好き勝手して、球磨達に心配をかけているのはコイツなのだから

悪いのあっち、絶対そう、だから私は…



何か言うべきだろうか?


目の前では会話を避けるように仕事を続ける大井さん

それは良い。私のやる事が無くなる程に捗るのだから、楽ちんぽんだ


問題は、私は謝るべきなのだろうか?

腑に落ちないままにごめんなさいと?

何で叩かれたのかも分からないのに?

それはなんというか


イヤだな、とても…


「いっそ乳でも…」

球磨の言葉を反芻する。馬鹿げている…とは思う

しかし、やられたからにはやり返したい

だからと言って引っ叩き返すのは気が引ける

そう考えると、それも良いのかと思えてきた




ちっくったくちっくたっく…ぱっぽぅ…


気まずそうに鳩が時を告げてくれる

彼だってお呼びじゃないのは承知の上だが、それが仕事なのだから仕方がない

そして、眼下に広がる光景に見ない振りをしながら窓の奥へと引っ込んでいった


大井「提督?この手はなんですか?撃ちますね?」


いつもの笑顔の大井さん。しかし今回は分かりやすい

何を考えているかなんて、怒っているに決まっているのだから


しっかりと、その手に握られた単装砲が提督に向く


北上「ちょっとまったぁっ!?」


手を伸ばし慌てて飛び出す北上


触らぬ神にと思っていた時期もあったが、流石に不味い

いくらなんでも提督に単装砲をぶち込むのは収集が付かなくなる


大井「あの、北上さん?この手はなんですか?」

北上「ふふ、良いかい大井っち。これで あたしと提督は同罪…」


何を言ってるんだろう?それはこっちが聞きたいくらいだったが

押し切るしか無い、冗談ってことにして大井っちを呆れさせれば あたしの勝ちってもんよ


北上「提督を叩くって事は、あたしも…」


ごんっ!!


「いったぁぁぁいぃぃ」


鈍い音。後の悲鳴は二人分


「だめじゃん北上さんっ」

「提督がいらんことするからさぁ」

「アンタ達バカなんじゃないの」


鈍く広がる痛みに頭を抱えて蹲る二人

発砲こそされなかったが、その角で叩かれては痛い事この上ない


大井「これでチャラよ…」


単装砲を引っ込めると、仏頂面を引っ付けて そっぽを向く大井


提督「チャラって?」

大井「昨日の…」

提督「あぁ…別に。ていうか、何で叩かれたの私?」

大井「はぁっ?」


まさかそれを聞かれるとは思わなかった


大井「アンタがっ!人に心配ばっかりかけるからっ!」

北上「なに、大井っち?心配してたの?」

大井「私じゃなくてっ!」

提督「なによ、大井っちてば。ちょっと照れるじゃない」

大井「大井っちって言うなっ!」


あぁ、でも。やっと得心がいった

それなら仕方がない、冗談だったとはいえ質が悪かったのはそうなのだから


大井「とにかくっ!アンタ今度勝手に海に出たらっ」

北上「良かったじゃん提督。大井っちが付き合ってくれるってさ?」

大井「はぁ!?なんで私がっ!」

北上「別にあたしでも良いけど?」

大井「なっ!?き、北上さんが行くくらいなら私が…」

北上「どーぞ、どーぞ」

大井「うぐっ…」

北上「あ、それとも…て・い・と・く?」


妖しげな笑みを浮かべて、提督にすりよる北上


北上「両手に華が良かったりするん?」


息を吹きかけるようにして、提督の耳元で囁く北上さん


提督「そりゃ、悪い気はしないけど…」


問題があるとすれば、たんぽぽの隣がバラって点だけで


北上「あはははっ。正直だねぇ」

大井「ちょっとアンタっ!北上さんからはなれなさぁぁぁいっ!」





北上「あの時の大井っちはさぁ…」

提督「ていとくーていとくーって、いっつも私の後をついて回って」


染み染みと、懐かしい思い出を振り返っている二人


大井「あんたらは…何時の話をしているのよ…」


自分の思い出話のはずだったのに

気づけば、とんと身に覚えがないのものすり替わっていた


北上「思い出は作るもんだよ大井っち」

大井「捏造って言うのよそういうのは…」

提督「それの何がいけないっていうの?」

大井「どうして良いと思ったのよ…」


いつかの様に仕事をすすめる3人

ただ、いつかと違ったのは随分と和気藹々としていることだった





水無月「たっだいまー司令官っ」


元気な声と一緒に、元気よく開いた扉

水色の髪を弾ませて、水無月が執務室に飛び込んでくる


水無月「水無月達勝ったよっ」


褒めて褒めてーっと、提督に駆け寄っていく水無月

その襟首が急に引かれ、ガクッと足が止まる


皐月「こらっ、怪我してるんだから先に入渠だろ、もうっ」

水無月「そんな事言ってっ、さっちんだけ褒めて貰おうってんでしょっ」

皐月「じゃなくてっ、見えてるんだってばっ!もうっ!」

水無月「あ…」


途端、水無月の抵抗が止み、ズルズルと皐月に引きづられていく


スカートみたいに、ヒラヒラと引っかかっている破れたズボン

派手に千切れた上着は、辛うじてその役目を果たせているかどうかで

白いお腹は惜しげもなくさらされていた


ぱちんっ!


得意げに指を弾く提督

同時に、不自然に巻き起こった風が無遠慮に水無月の衣服をはためかせた


水無月「わーっわーっ!!」


慌てて服の切れ端を抑えに掛かる水無月

白と紺のコントラストが揺れている、時折覗いて見える青い縞模様が愛らしい


皐月「こらーっ、何やってるのさっ司令官っ!」

提督「あははははははっ」


いつかやろうとは思ってた

水無月ってばいつもズボンなものだから

今ならきっとやれると確信した


大井「全く…子供かっての」

北上「ほらほら、早く行った行った」


眉間を抑え、呆れる大井さん

ひらひらと手を振る北上に押し出されるように

皐月に引きずられ、扉の向こうへ消えていく水無月


と思ったら、ひょっこり顔を覗かせて


水無月「覗くなよっ、混浴とかも無しだからねっ!」

皐月「もうっ、いいからっ!」

水無月「あっ、もうっ、引っ張んないでって、今大事な話をーっ」

皐月「何言ったって、屁理屈こねられるんだからっ」

水無月「まだ何かあるってのっ!」

皐月「知らないよそんなことっ、司令官に聞きなよってっ」

水無月「聞けるかーっ!」


バタンっ


いささか乱暴に扉が閉じれば、落ち着きを取り戻す執務室


大井「何やってんのよ、アンタは…」

提督「大井さんが好きにしろって…」

大井「限度っ、限度ってあるでしょよっ!」

卯月「ふふふっ、忘れちまったぴょん。限度なんて言葉」

大井「なら思い出せて…って。なに、いたの?」


単装砲を握りしめ、立ち上がった大井さん

しかし、ひょっこりと顔を出した卯月を前にその動きが止まる


弥生「最初から、ね?」


そう言って、報告書を北上に差し出す


北上「ごめんよ、騒がしくってさぁ」

弥生「良い。卯月よりは静かだから」

北上「あははは。そりゃそうだ」

卯月「ひどい言われようだぴょん…」


報告書を受け取り、そこに目を落とす

書いているのはいつもの内容

目に付くものと言えば「水無月:中破」の項目くらい


弥生「あの根拠ない自信が直れば…少しは」


そういう意味では、最初の内に球磨さんにボコって貰ったのは良かったかもしれない

危なっかしいのに変わりはないけど

無茶無理無謀の限界は染み付いているようだった


「くすぐりはうーちゃんのー」


ふと、騒がしくなる後ろの方


大井「ちょっと…ふふふっ、もうっほんとにっ」


大井の後ろに回った卯月が、その脇腹に細い指をワラワラと這い回していた


大井「止めなさいってばっ」

卯月「ぴょんっ!?」


こそばゆさに身を捩る大井

その直後には、卯月の頭にグーが落とされた


卯月「しーれーかーん、大井がぶったぴょーんっ」

大井「おだまりなさい」


泣きついてきた卯月を抱きとめ、よしよしとその頭を撫で回す提督


大井「あなたがいらんことばっかりするからでしょ」

提督「だからって、叩くことないだろ…」

卯月「べーっ」


提督を味方に付けたのに気を良くしたのか

提督の腕の隙間から大井を覗き見ると、ちろっと舌を出してみせる


大井「いらっ…」


もう一発いこうか


弥生「卯月、司令官。悪戯もそのくらいで…そろそろいくよ?」


その選択肢が採決される間際、弥生の声で先送りにされる


卯月「はーいっ」


ぴょんっと、提督の腕から抜け出ると弥生の後に続いていく卯月


弥生「それじゃ、司令官…また後でね?」


小さく手を振ると、音もなく扉の向こうへ消えていった




弥生「ふぅ…」


扉を閉めると同時に、小さく息を吐く弥生


今日はダメだな


有った事も無かった事も、思い出して、考えて…


卯月「弥生?どうかしたぴょん?」


疲れたのだろうか?

心配そうに、その顔を覗き込む卯月


弥生「気にしないで…何でもないから」


卯月の頭に手を置くと、そそくさと歩きだす弥生


卯月「??」


そうは言われても気にはなる

何でもないと言って、何とも無かった試しなんかないし


卯月「あ、もしかして…」


ぴょんっと、一人歩いて行く弥生の背中を追いかける


卯月「司令官の事考えてたりとか?」


三日月だったら、コレで面白い顔をしてくれるのだけど

弥生は?という好奇心が、適当に口を動かしていた


弥生「…ばーか」


再び覗き込んでくる卯月のおでこを弾くと

その話題を振り切るように、一人で歩いて行く


卯月「否定は…しないんだ…」


弾かれたおでこを、両手で抑えながら一人呟く卯月だった




提督「ねぇ…弥生、なんか変じゃなかった?」


気になるようなならないような、さり際に見えた横顔


大井「変って?」

提督「なんか…最初の頃の大井さん見たいな顔してた」

大井「どういう意味よ」

北上「写真見るかい?」

大井「止めなさい」

北上「うぃー」


この際、提督がどういう風に私を見ていたかは置いといても

まぁ、言いたいことは分からなくもなかった


大井「あの娘の仏頂面なんていつもじゃない?」

提督「それは…そうだけど」


だから余計に

最近はそうでもなくなってきた分

無理やり仏頂面を作っているような違和感が、余計に気になっていた


何処か怪我をしているようには見えなかったし、悩み事だろうか?

けれど「どうしたの?」と聞いても「気にしないで」と返される気はするし


大井「ふーん」

提督「なに?」

大井「別に、アンタでも人の心配するのねって」

提督「好きな娘の心配くらいさせてよ」


逆に言えば、それ以外はどうでも良いということにもなるが


北上「そんな提督にこれっ」


ひょいっと投げ込まれるチラシ


提督「秋祭り?」


チラシには派手な花火を背景に、達筆な筆文字でデカデカとそう書かれていた


北上「あの娘に大人しく休めーとか言っても聞かないだろうしさ?」

提督「…皆で遊んでこーいってか」

北上「そそっ」

提督「それも良いか…」


流石に全員で、とはいかないが


提督「大井さんも行ってくる?」


チラシを摘んでひらひらと見せびらかせてみる提督


大井「良いわ。あの子達に遊ばせてきなさいな」

北上「ひゅー、大井っちかっくいいっ」

提督「提督惚れちゃいそう」

大井「ばーか。その分あなた達の仕事が増えるのよ?分かってんの?」

提督「北上様が何とかしてくれると信じてっ」

北上「はっはっはっ、面白い冗談じゃん、提督」


おもむろに机から立ち上がる北上様

そのまま素知らぬ顔で部屋を後にしようとするが


大井「どこへいこうというのかしら?」

北上「ちっ」


大井の側を通りかかると同時に、服の裾を引っ張られ足を止める


大井「良いから仕事をなさいな、3人でやればすぐ終わるでしょうに」


「はぁ…」


そうして、やれやれと3人の溜息が重なった





祭り囃子に人の波

日も陰ってくれば、屋台の灯りも連なって

またぞろ賑やかしさも増してくる


大鳳「撃つんじゃなくて射抜くように、狙いの一つ後ろに的を絞って…」


そんな屋台街の一角

うぐいす色の着物に身を包んだ大鳳

そこに描かれた小鳥と一緒に水無月に寄り添うと

彼女の着物に咲いた朝顔に、小鳥が止まって見えた


大鳳「そう…落ち着いて、ゆっくり深呼吸…」

水無月「すぅ…はぁ…」


小さな胸を膨らませ、ゆっくりと息を吐く水無月

その手にはオモチャの銃が握られていた


緊張しているのか気がはやっているのか、小刻みに揺れる銃身

深呼吸の度にマシにはなるが、それでもフラフラと定まらない


水無月「た、大鳳先輩…ま、まだ撃っちゃダメ?」

大鳳「だーめ。ほら…もっと力を抜いて、ね?」


大鳳の手が水無月の手に重ねられる

解すように撫でていくと、次第に銃身のブレが収まっていった


水無月「すぅ…はぁ…」

大鳳「ん、いま…」

水無月「っ!」


耳をくすぐる声に押されるまま引き金を引く


ぽんっと空気が抜けて、こんっと何かが倒れる音がする


水無月「おっ…ぉぉぉっ!」

大鳳「お見事」


いわゆるラストシューティングだった

撃てば撃つだけ外しまくる水無月

見かねた大鳳が少しばかり手を貸しての成果だった


水無月「さっちんっ!ふみちゃんっ!みてみてっ、景品取れたよっ」


アポ◯の小箱を高々と掲げ


水無月「ちくしょーめーっ!」


途端に、悔しさに声を上げて大鳳に泣きついた


皐月「ん?」


琥珀色の浴衣の皐月、その隣には高々と積み上がった景品の山と山

構えていた銃を下ろし、描かれた藤の花を揺らしながら振り返る


なにかあったのかな?


ふっくれ面で大鳳に泣きついている妹の背中


大鳳「あなた達ね…」


少しは加減して上げなさいよと


水無月「へ?それ大鳳さんが言うの?」


埋めた胸元から顔を上げ、首をかしげる水無月

出会った初日に かけっこを挑んだら

全力で追い抜いていった娘の言うことなの?


大鳳「なぁに?」

水無月「うっ…」


微笑む大鳳が、水無月の口元に人差し指を添える

それは、良く見る「静かにしてね?」というよりも

「今度余計なことを言うと…」と言った凄みを孕んでいた


水無月「いえ、なんでもないっす。大鳳先輩は今日も素敵です」


目を逸し、棒読みの賛辞を送る水無月

それに「ありがとう」と笑みを返すと、おもちゃの銃を手に取った


大鳳「水無月ちゃん?どれが欲しい?」

水無月「ふぇ

構える

水無月にもさせたように、一回二回と深呼吸を繰り返す


風が止む、音が遠のく

周囲の人達にも伝わるほどに、空気が張り詰めていく


1発、続けて2発、3・4・5…


張り詰めた空気の中、気の抜けた発砲音が繰り返される


大鳳「さっ、これでどうかしら?」


得意げに景品を積み上げる大鳳


文月「やっぱり、引き分けになっちゃうねぇ」


橙色の浴衣姿の文月

ころころと笑みを浮かべると、描かれたクチナシの花も一緒になって揺れている


弾数に制限がある以上避けられない現実ではある

いや、これを百も二百と繰り返せば何処かで勝負はついたろうけど

お祭り屋台でそこまでする訳にもいかない


大鳳「水無月ちゃん?」

水無月「へ?」


あぽ◯の小箱を抱え俯く水無月

右も左も百点満点じゃ気落ちをするのも無理もない


そんな彼女の肩に手を置く大鳳

そして、水無月の手元に視線を落とし、自分の積み上げた景品の上を指差した


水無月「おっ…おぉっ」


うつむき加減から一転して顔を上げ手を伸ばす


大鳳「はい。これで私達の勝ち、ね?」

水無月「へっへーんだっ」


vっと自慢げにピースを掲げる水無月


皐月「ちょっ、それズルくないかい?」


そりゃ、確かに皆で勝負だって話だったけど

いきなりチームを組むのはどうかと思う


文月「それなら文月達だってーっ」


対抗して景品の山を2つ並べる二人


水無月「こーらーっ、大人げないぞーっ!」

大鳳「ほんとに」


体全体で講義する水無月の隣で、小さく頷く太鳳さん


皐月「大鳳さんが それ言っちゃうの…」


それは何というか、理不尽とまでは言わないけど…腑に落ちない

短くもない付き合いになってきて思うのは

この娘、案外と舵とかブレーキとかの加減が雑だったりする


大鳳「ん、なぁに?」


怪訝な顔をする皐月に、笑みを持って返す大鳳


文月「なんでもないよー、大鳳さんは今日も素敵だなーって」

皐月「むぅっ…」


皐月の口を抑えて、ずるずると引きずっていく文月


大鳳「ふふふっ、ありがとう」


作り笑いに愛想笑い、見かけだけは平和なやり取り


「ダメだよ、皐月ちゃん。ホントのこと言っちゃっ」

「でもさ…」

「美人で優しいお姉さんで通すつもりなんだよっ、見守ってあげないと」

「…文月って結構アレだよね」

「ダメだよ、皐月ちゃん。ホントの事言っちゃっ」

「否定しなよ」


などと、ブツブツと聞こえて来る小言


水無月「でも太鳳さんも意外と大人げないよね…」


ついだろうし、うっかりだろう、それでも口をついて出た言葉に

「あ、言っちゃった」と、姉妹二人の動きが固まる


大鳳「まったく、水無月ちゃんは可愛いんだから」

水無月「へ?」


水無月を後ろから抱きすくめる大鳳

そっと、優しく、慈しむように、愛おしむように


水無月「く、くるしっ…ぎぶぎぶぎぶ」


どちらかと言えば羽交い締めだった





「もし、そこのお方?」


皐月「ん、ボクかい?」


ふと、背中から掛けられる声

振り向いてみれば、綺麗な金髪をした眼鏡の良く似合う


はち「はい。やっぱり皐月さんでしたね」

皐月「ん…ああ、はちさん、こんばんは」

はち「はい、こんばんは」


礼儀正しく、会釈をしてみせる はち

なんとなく覚えた違和感は、真っ当に浴衣を着こなしているせいだろう


皐月「一人かい?」

はち「いえ…。皆で来たのだけど…」


言おうか言うまいか、少々言いよどんだ後


はち「阿武隈さん、見ませんでした?」

皐月「あぁ…」


妙に納得してしまった自分がいた


はち「まったく、少し目を離したらチョロチョロと…」


困った娘ですねと、首をふってみせる はち


皐月「見つけたら、捕まえとこうか?」

はち「いえ…。でも、一つお伝えいただいても宜しいでしょうか?」

皐月「ん、何だい?」


そうして、あった時と同じように、丁寧に会釈をして人波に紛れていく はち


さり際の言伝は


「迷子センターに呼ばれたくなければ、さっさと合流しなさい」


だった





卯月「哀れだぴょん」


浴衣に描かれた夜桜を引き連れて

瑞鳳の後ろから手元を覗き込む卯月

そこには破れたポイと、水だけの入った茶碗


瑞鳳「これからよ…これから…」


紅白姿の瑞鳳。その浴衣姿は何処か改装前の懐かしさを覚える


瑞鳳「まだ、端っこの方残ってるし…」


何度目かのチャレンジ

破れたポイが水に浸かり、より一層頼りなく見える


ゆっくり、ゆっくりとポイを動かし金魚の下へ

慎重に、慎重に、ポイを引き上げて…


びりっ…


卯月「ぷふっ…」

瑞鳳「むっかっ…」


哀れだと言いたいのか、鼻で笑う卯月の声が耳に障る

縁日なんて人混みの中で追いかけっこなんてしたくはないけど


仕方がない、そう仕方がないのだ

卯月がいけないんだからこれは必要悪なんだって、自分に言い聞かせて立ち上がる


三日月「少し、良いですか?」

瑞鳳「え、あ、うん…」


立ち上がりかけた瑞鳳を引き止めるように

三日月の小さな手が伸び、瑞鳳からポイと茶碗を受取った


瑞鳳「でも、それ…破れて…」

三日月「うん、平気…」


艶やかな黒髪の合間に浮かぶ月夜

黒地の浴衣に白い首筋がよく映える


破れ切ったポイを水に浸ける三日月

そして、真剣な面持ちのまましばらく水槽を見つめ続ける


「?」


何方からでもなく顔を見合わせる瑞鳳と卯月


ぱしゃんっ


ふと、その耳に水が跳ねる音が届く


ぱしゃんっ、ぱしゃんっ


更に、2回3回と響く水音


卯月「うわぁ…ずっこいぴょん…」


音につられるように視線を戻す卯月

そこには、ポイの枠を使って

器用に金魚を跳ね上げている三日月の姿


三日月「ふぅっ…はい、どうぞ」


何かやり遂げたように息を吐き

ピチピチと金魚の跳ね回る茶碗を瑞鳳へと差し出す三日月


瑞鳳「えーっと…」


正直に、こんなに要らない

でも好意は好意、素直に受取るのも優しさだと思う一方

店の人の視線がめっちゃ気になる


三日月「あぁ…」


困惑する瑞鳳

それを見て、何を悟ったのか


ぱしゃんっ


金魚が追加された


瑞鳳「まってっ」

三日月「?」

瑞鳳「不思議そうな顔をしないでっ」

三日月「でも?」

瑞鳳「いいから、増やさなくていいからっ」

三日月「金魚、欲しかったんじゃ?」

瑞鳳「そうだけどっ」


そう、最初はそうだった

一匹くらい部屋に飾るのも良いかなと思った

けど取れない、しかも卯月に笑われる

最終的には卯月を見返してやりたい意地だけが残っていた


卯月「三日月…返してやるぴょん…」

三日月「あぁ…」


三日月から受け取った茶碗をひっくり返すと

水槽の中に散っていく金魚たち

寂しそうに、残念そうにその背中を見送る三日月


三日月「あの子達…いつまで生きられるんでしょう…」


何気ない一言だった


瑞鳳「嫌なこと言わないでよ…」


縁日の金魚の寿命なんて、たかが知れていると言えばそうなのだから

此処で掬ってやれば、まだ生きながらえたかもしれないけども


卯月「まったく、金魚さえ救えないとか、瑞鳳はほんとに救いようがないぴょん」


「哀れだぴょん」と嘲笑する卯月

しかし、その笑みは直ぐに「いったーいっ」と悲鳴に変わっていた





賑々しい屋台街の一角

浮世離れに浮かれている周辺とは裏腹に

どこかひっそりとしていた


カリカリカリカリ…


周囲の喧騒がなければ、そんな音も聞こえたろうか

皆一様に、手元を見つめて黙々と作業を続けていた


夕張「よっし、出来た」


薄紅色の小さな板を削り続けて十数分

余分を切り落とされた板は、綺麗に傘の形になっていた


夕張「これでどう?」


もみじ柄で薄緑な浴衣を揺らし

店の人に得意げに見せびらかす夕張さん

文句のつけようもなかったのか、大人しく景品と取り替えてくれた


睦月「できたーっ!」

夕張「およ?」


意外と言えばそうだろうか

聞こえた来た声に、そんな事を考える


途中で割るか、早い内に飽きると思ってたのに

思っていたよりは器用だったようだ


夕張「どれどれ?」


浴衣に添えられた山茶花と一緒に掲げられた睦月の作品

確かチューリップの型を選んでいたような…?


見間違いだろうか?


十字の下に横倒しの三日月

何処かで見たことのあるようなエンブレム


夕張「なにこれ?」

睦月「EDF!EDF!」

夕張「うん、EFSFね。Eしかあってないね」

睦月「そうそれっ!」


むしろ、元がチューリップの型だったことを考えると何一つあってない


夕張「ていうか…どうやったらこうなるのよ…」


エンブレムを摘み、目の前でかざしてみる

型抜きとしては失敗だけど、その完成度は文句のつけようがなかった


そして結果は


睦月「やったー、飴玉ゲットにゃしーっ」


手放しで喜ぶ睦月

その隣では、顔を見合わせ苦笑する店の人と夕張さん

要は一つの参加賞だった


睦月「ねぇねぇ、如月ちゃん睦月飴玉貰ったよっ…およ?」


もらった飴玉を見せびらかそうとする睦月

いつもなら「良かったわね」と、微笑んでくれる筈なのに


如月「…」


飴玉から目を背けるみたいに そっぽを向く

心なしか、その浴衣のアネモネも萎んでいるように見えた


睦月「如月ちゃん?」


その先へと睦月が回り込むと、梟みたいに首が反対へと逃げていく


睦月「え?え?なんで、なんで怒ってるの?如月ちゃん?」

如月「怒ってないもん…」


困惑する睦月に、そっぽを向く如月

怒ってないもんとか言われても、誰がどう見たって不機嫌だ


夕張「あぁ…」


その理由は、恐らく手元のそれか

割れた型抜きの板

猫の型だろうか。最後の仕上げと、残っていた細い尻尾の部分が綺麗に折れていた


「出来たーっ!」と、睦月が声を上げた時かな

驚いた拍子にバキっといったに違いない


だからって睦月が悪いわけじゃない

それは如月だって分かってるはず

怒ってないってのも本当だろう

それならこれは…


夕張「何拗ねてんのよ?」

如月「…すねてませーん」


とか言いつつも、ほっぺが膨らんでいく如月

その膨らんだほっぺを突っつくと

尖った口の先から、空気が抜けて萎んでいく

ちょっと面白い


夕張「ふーん…それじゃ」


ポッケからスマホを取り出すと

手慣れた様子でボタンを押していく


カシャリ


如月「へ?」


取ってつけたようなシャッター音に顔を上げる如月


夕張「如月ちゃん、イジケ中なうっと」


後はボタン一つで提督の目にとまることだろう

なに、ふくれっ面も十分可愛いのだ問題はありはすまい


如月「まってっ、まってってっ!どうするのっ、それをどうするつもりなのっ!?」


夕張の指が送信ボタン掛かるその前に

慌ててその腕にしがみつく如月


夕張「ん?わかってるから止めたんでしょ?」


変な娘ね?と、首をかしげる夕張さん


如月「やめてっ…ていうか止めて下さい」


お願い、というか懇願だった


夕張「提督に見せられない顔してる方が悪いでしょっと」


指先で如月のおでこを突っつくと、取り敢えずスマホから指を放す


如月「だって…」


あとちょっとで完成だったのに…

そりゃ睦月ちゃんが悪いわけじゃないけれど

少しくらい拗ねて見せたってバチは当たらないと思う


夕張「物憂げな表情も悪くないわね…」


かしゃり


如月「あーっあーっ、もうっもーうっ!?」

夕張「あーはいはい。別に送ったりしないから」


言葉も忘れて、ポカポカ叩いてくる如月を適当に宥めると

さてっと、気を取り直して歩きだす


夕張「ほら、そろそろ次行くわよ?」

如月「…はぁ」


諦めたように息を吐く如月

写真はいまだ彼女の手の中

これ以上イジケていたら、本当に送信ボタンを押されかねない

ていうか…消してはくれないのね…


睦月「あの…如月ちゃん?」

如月「ん?」


ああ、そうだそうだった

何のかんので一番困ったのはこの娘のはず


如月「いきましょう?睦月ちゃん」


不安気に揺れている睦月の手を取る

いつもそうしているように、もう怒ってないよって伝えるために


睦月「うんっ」


不安気な表情は何処へやら

ぎゅっと、握り返すと二人仲良く夕張の後を追っていった





「あっ」


別々の方から伸びた手が触れ合い、お互いに手を引っ込める


菊月「ん?なんだ、長門か」


久しいなと、軽く手をあげると

手にぶら下げていたビニール袋が音を立てた

中には、焼鳥やら たこ焼きやらと、祭りの定番が押し込まれており

とうの本人も、灰色の浴衣に菊の模様を転がして、完全にお祭りモードだった


珍しい…いや、意外というべきだろうか


長門の格好、白と黒の浴衣

いつもの制服を、そのまま浴衣にデザインし直したような印象を受ける

あんまり、ヒラヒラした格好は好まないだろうと思っていたが

ただ、本人の嗜好はともかく、良く良く似合ってるように思う


長門「変、か?」


菊月の視線に気づき、恥ずかしそうに身じろぎをする長門

阿賀野達には囃されるし、提督も妙な顔していたな…やはり、私が着るのは


菊月「いや、そうは言ってないが?」

長門「そうか…」

菊月「そうだな」


長門「…」

菊月「似合ってるんじゃないか?」

長門「そうか…」

菊月「そうだな」


長門「…」

菊月「提督も喜んでいたろう?」

長門「そこまでか?」

菊月「違ったか?」

長門「いや、どうだろう…」


なんだこれ、会話なのか?

単語単語でぶつ切りになり、どちらかと言えば質疑応答の様にみえる

口下手が集まると、こうも面倒くさいのかと

菊月とお揃いの浴衣姿で、ため息をつく長月だった


しかし、綿あめか…

辺りに漂うのは甘い匂い

くるくる回り、膨れ上がっていく綿飴が、朧気な電球に照らされている


「長月、綿飴を食べよう」

そう菊月が言い出したときには、これも成長かとも思ったが


長月「食べないのか?」

長門「あ、いや、私は…」


そう言いながらもチラホラと揺れる視線

まるで いつかの菊月のようだ


長門「持って帰れば、チビ達が喜ぶんじゃないかとだな…」

長月「ふぅん…」


それらしい理屈ではあるが

なら堂々と買えばいいのにという疑問は残る


長門「なんだ…」


疑わしげに目を細める長月に、眉をひそめる長門


長月「別に…」


そもそも私たちと遭遇したのが、長門にとってイレギュラーなのだろう

ならばここは、大人しく見ない振りをして次に行くのも優しさか


菊月「ぁむぁむ…」


そんな二人を余所に

目的の物を手に入れ、満足そうに頬張る菊月


軽い食感。口に入れると、ふわりと溶けて滲み出してくる甘さ

美味しいか?と聞かれれば「甘いな」と答える程度で、特別美味しいという訳でもない

美味しさだけなら金剛にスコーンでも焼いてもらった方が何倍も良い

ただ、祭りでしか食べられないという特別感と

食べてるのに食べている気がしないという変な感じが何となく好きだった


そうして、4分の1くらい食べ終えた所で満足したのか

ふぅっと一つ息を吐いて顔を上げた


長月「もういいのか?」

菊月「うん」


残った分を長月に譲る菊月


長門「仲が良いのだな相変わらず」


微笑ましそうに頬を緩める長門


長月「ん?そういうんじゃないぞ…これ」

長門「それは?」


手にぶら下げていたビニール袋を掲げて見せる長月

その中は大量のお祭り食の余り物


大好きな姉と半分こ、とか言えば可愛らしいが

実際の所は食べ飽きただけの向きが強い


たこ焼き、りんご飴、焼きそば、焼き鳥、たい焼き、そして綿飴とかその他諸々

祭りの定番から、たまに見かける変な食べ物まで、何となく食べ歩いてきた二人

食べた種類の割にお腹が埋まらないのは

すぐに食べ飽きる菊月とで一人分を食べて回っていたからだろう


長月「こいつ、食べたがる割に直ぐに飽きるからな」


じとーっと目を細めて、菊月の頬を引っ張る長月


菊月「むぅ…」

長門「…菊月、あまり食べ物を粗末にしてはだな」


眉間に手をやり、緩んだ頬を締め直す長門


菊月「違うぞ。二人で食べたほうが色々と食べれていいじゃないか」


もっともらしい反論ではあったが、それならば


長月「リンゴ飴一口かじって、こっちに投げてくるやつの言うことかよ…」

菊月「好きだろう?りんご飴」

長月「りんご飴に限らずじゃないか…」


そう、りんご飴が一番酷かっただけで

概ね4分の3はこっちに回ってきていた


長月「というわけでだな、半分食べてくれ」


余った綿飴を、さらに半分に千切って差し出す


長門「なら…仕方ないな」

長月「あぁ、仕方ないな」


仕方ない仕方ないと言い合いながら

受け取った綿飴の欠片は、長月達の手にあった頃よりどこか小さく見えた





ゆー「もっち、もっち。ここ、どこ?」


サツキの花があしらわれた白い浴衣姿のゆー

ここはどこ?と首を傾げてみても

見えるものは、人・人・屋台・屋台と、何処もかしこもおなじに見える


望月「さぁ?」


そう言われても肩を竦めるしかない

ゆーに引っ張られた袖と一緒に、浴衣に描かれたススキ野原と満月が揺れるだけだった


ゆー「望月…迷子?」

望月「あたしがそうなら、ゆーもそうだろうよ?」

ゆー「むっ、失敬な…ゆーは迷ってませんって。道がわからないだけですって」

望月「そういうのを迷子っていうんだよ」

ゆー「もぅ、ああ言えばこう言うんだから」


自分は悪くないと言いたげに、唇を尖らせる ゆー

実際の所、良いか悪いかで言えば悪い方に入るだろう

祭りの喧騒の中、一人でチョロチョロした結果がこれだ


幸い、望月が尻尾を掴んで追いかけたから良いものの

人波を越えて、どうにかその手を掴んだときには、うっすらと涙すら抱えていた


望月「泣いてたくせに」

ゆー「泣いてないもん」


一応は懲りたのだろう

何だかんだと言いつつも、望月の手にしがみつき離れようとしないのは

ただ、歩きにくいったらないが

また勝手に彷徨かれるくらいなら、まだ良い方かと諦めることにする


ゆー「もっち、あれ…」

望月「んー?」


ゆーが指差す先

電飾や提灯やらで賑やかしい屋台街の中でも目立つ赤い色


ゆー「提灯が動いてますって…」

望月「いや、あれは…」


鬼灯みたいに赤い色、その髪の毛は見覚えがあるものだった


望月「鬼怒じゃねーか」

鬼怒「おぉっ、望月ちゃんおひさー」


声をかけると、人懐こい笑顔で迎えてくれる鬼怒


ゆー「こんばんは、鬼怒も迷子?」

鬼怒「はい、こんばんは。ゆーちゃんは また迷子かな?」

ゆー「ゆーは違います」

鬼怒「あははは。ナチュラルに鬼怒を迷子扱いしてくるねこの娘…」

望月「そりゃ、あれだよあれ…」

鬼怒「そっかぁ…そうだよねぇ…」


自分と同じか、それ以下の奴がいると安心するっていうやつ


ゆー「きーぬ。それはなぁに?」

鬼怒「ん?あぁ、これはねぇ…」


それと、指さされたものをよく見えるように持ち上げると

にっと笑みを浮かべて一言


鬼怒「ポイっぽい、なんちて」

望月「ぁー…」

ゆー「?」


呆れる望月に、首をかしげる ゆー


鬼怒「あ、あれ?面白くなかった?」

望月「一つ。それ、本人の前で言ったのか?」

鬼怒「うん。バカっぽいって言われたねっ」

望月「だよなぁ…」


夕立の赤い瞳が細くなるのが、容易に想像できるというものだ


ゆー「ねぇねぇ…きーぬ。今のどういう意味?」

鬼怒「…そっかぁ、そうだよねぇ…」


何となく分かっていた

この娘が首を傾げた瞬間、ああこうなるんだろうなぁって


鬼怒「えーっとねーこれはねー」


慣れていくのが自分でも分かる

腰をかがめて、ゆーに視線を合わせると

とりあえず、ポイの説明から始める鬼怒だった





祭り会場から少し離れた場所


木曾「此処でいいか」


あぶれた喧騒と照明が届く中、レジャーシートをどかっと広げる

いつも羽織っている黒い外套を、そのまま浴衣にしたような地味な格好で

特に人目をきにするでもなく、夜空を見上げるように寝っ転がる


花火が始まるまで後どれくらいか、人の集まり具合からすればまだ少し間がありそうだが

だからと言って、あの人混みを練り歩くのゴメンだったので場所取りという名目で一足先に休んでいた


木曾「星…あんま見えないな」


手を夜空に翳してそんなことを思う。祭りの灯りのせいだろうか?

見慣れている鎮守府からの夜景、特にどうとも思わなかった筈なのに

こうして見上げる場所が変われば、空の色も変わるものだと感慨にふける


木曾「って…」


慌てて周りを見回す

こんな所多卯月にでも見られたら また何を言われるか


幸いにして、その心配はなさそうではあったけど


「ねぇーっ、みんなどこーっ」


きーんとやたらと耳に響く声

薄暗がりでも目立つ金色の髪がひょこひょこと揺れていた


木曾「あぶくまー…」


おーいと声をかけては見るものの

聞こえていないのか、辺りを見回しながらトコトコ歩き続けていた


木曾「あーっぶーっくーっまーっ!」


仕方なく、少し音量を上げて見る木曾


阿武隈「ひゃっぃぃぃっ!?」


今度は、しっかりばっちり聞こえたのだろう

ビクッと肩が跳ねると、ピンっと背筋を伸ばしぎこちなく振り返る


木曾「お、おぅ…わりぃ、そんな驚くとは」


予想外の驚きように面食らう木曾


阿武隈「い、いえいえいえ…って、木曾さん…」


木曾の姿を見つけた途端、それはそれで また体を固くする阿武隈


木曾「はぁ…北上たちなら来てねーぞ?」

阿武隈「ほっ…」


その言葉に安心したのか、ようやくと肩から力が抜けていく


木曾「そんな嫌ってやるなよ」

阿武隈「だってぇ…」


合う度合う度、何かされるんだもの

警戒の一つや二つしても、まだ足りないくらいだ


木曾「ま、家のに問題がねーとはいわねぇけどよ」


北上いわく「なんか反応が面白くってつい」とか言ってたし

大井は「別に…」とか言ってたが、北上の気が向いてるのが面白くないんだろう


阿武隈「へ?問題がない人なんていたんですか?」


先ずをもって、提督からしてアレなのだ

続く球磨型なんて目も当てられない気がする

類友とは良く言ったものだと感心するほどだ


木曾「はっはっはっ。おもしれー冗談じゃないか」


ぐいっと、阿武隈のほっぺを引っ張る木曾

喧嘩なら何時でも買う所存だし、少なくとも自分はまともな部類のつもりだ


阿武隈「ごめんなひゃい、ごめんなひゃいっ」


パタパタと無駄な抵抗を続ける阿武隈を

ひとしきり弄んだ後、ようやくと手を離す


木曾「ったく。で、お前は迷子か?」

阿武隈「ちがいますぅっ。みんなが勝手にはぐれたんですぅ」


つままれた頬を手で擦りながら、唇を尖らせる阿武隈


木曾「きっと皆もそうおもってるだろうな」

阿武隈「うぐ…」


こういう場合は多数決だ

一人逸れた阿武隈と、皆で行動してる方、どっちが正しいかと言われれば


ぴんぽんぱんぽーん♪


聞こえてきたのは、ありがちなお知らせを告げる音


「迷子のお知らせです。鎮守府よりお越しの阿武隈ちゃん、至急迷子センターまでお越しください」


繰り返します…


木曾「…」

阿武隈「…」


2度に渡る呼び出しの後

じっと阿武隈を見つめる木曾と、視線を逸し続ける阿武隈の間に沈黙が訪れる


木曾「呼ばれてるぞ、阿武隈ちゃん?」

阿武隈「うるさーいっ!わかってますよっ、いくもんっ、いきますよっ、さようならっ!」


肩を怒らせ、鮮やかな金髪を逆立てると

ぷんっと、後ろを向いてドカドカと歩きだす


木曾「…逆だぞー」

阿武隈「…」


一瞬動きが止まったかと思えば

踏み出しかけた足を強引に反対へと蹴り出す

そのせいで、崩れた体勢を強引に直しながら

2歩、3歩と、危なっかしく歩いて行った


木曾「まぁ、気持ちはわかるがな…」


頼りない…は、言い過ぎか?

そうだな、良く言えば素直なんだろう

感情表現が実に分かりやすい

からかってみれば、打てば響く太鼓みたいに応じてくれる


木曾「妹がいたら、あんな感じなのかもな…」


阿武隈を見送った後、再び夜空を見上げる様に寝っ転がる


木曾「妹か…」


なんとなく口にした言葉を反芻する

欲しいのか? 要らないということもないが…


「あ、阿武隈ちゃんだぴょん」

「阿武隈ちゃんさん、こんばんはです」

「阿武隈ちゃんですって…」

「よぅ、阿武隈ちゃん」

「迷子センターならあっちよ?」

「睦月が案内してあげようか?」

「阿武隈…ちゃん?」

「さんも付けなきゃダメだよ、水無月」

「要らないと思うけど…」


「むっきーっ!!」


「阿武隈は何を怒ってるんだ?」

「さあな…」


木曾「はぁ…。いらねぇか、当分は…」


近づいてくる妹たちの喧騒を聞きながら、一人ごちる木曾だった




夜も深くなり、時期に花火という時刻

日が完全に落ちきってしまえば

鎮守府からでさえ、祭りの灯りが賑やかしくみえる


金剛「はーなびはなび♪英語で言うとー」


中身のない鼻歌を歌いながら、鎮守府の廊下を行く金剛

提督とお祭りに行けなかったのは残念ではあったけど

遠目でもいい、せめて花火くらい見えないものかと玄関の扉に手をかけた


金剛「ファイアーフラワーでーすっ!」


勢い良く扉を開ける金剛

潮気混じりの夜風が肌に冷たく、秋の訪れを感じさせた


弥生「fireworks、だと思うんだけど…」


気のせい?と、首を傾げる弥生

今に始まったことでもないけども、この娘そろそろ英語を忘れてるんじゃないだろうか


金剛「Non♪こんなんわかりゃいいんですよっ、わ・か・れ・ば・ねっ♪」

弥生「伝わるといいね…」


多分みんなおヒゲのおじさんを想像すると思うけど


金剛「って、弥生?こんな所でどうしたの?」


玄関前、そこには

柱に背中を預けて、夜空を見上げている弥生の姿

紺色の浴衣に梅の花柄。祭り帰りに見えるが、実際にその通りではあった


弥生「別に…ただ…」


強いて言うならそう…


弥生「おまじない、かな?」

金剛「おまじない、ですか?」

弥生「うん」


それ以上は答えずに、小さく首を動かす弥生

いつもと変わらない表情。とりわけ変わることもあまりないけれど

今日に限って言えば、どこかぎこちない気もする


金剛「あっ、分かりましたっ」


途切れそうになる会話を繋ぐように

ぱんっと、胸の前で手を合わせ、思いつくままに口を開く金剛


金剛「提督ですねっ。提督が出てきたら一緒に花火を見ようとか言うやつでしょ?」


何とも乙女チックな発想だとは思う

花占いと同義か、少しマシな程度

まぁ、やろうとしていた私が言うのも何ですが


金剛「もうっ、弥生ったら意外と可愛い事…」


自分の頬に手をあてて

頬を染めながらくねくねと体を攀じる金剛さん


弥生「すごい…。どうして分かったの?」

金剛「へ?」


違う意味で目を丸くする二人だった





まさかのまさかよ…如月ならそうだろうとも思うけど

弥生がそこに足を踏み入れるとは思わなかった


弥生「一緒に待ってる?」


本気なのか冗談なのか

無表情のままに、誘われはしたものの流石に辞退して

今はもと来た廊下を辿っている所だった


金剛「うぅぅぅぅ…」


鼻歌交じりで通った廊下を、今度は唸り声で歩いている


どうしましょう?どうしましょう?

やっぱり提督を呼んでくるべき?

しかしそれは、余計なおせっかいとも思うし


球磨「別にほっとけばいいクマ」

金剛「でも…って、球磨?」


不意に掛けられる声

つられて顔を上げてみれば、壁に背を預けている球磨の姿


球磨「他人がどーこーするもんでもあるまいよ」


むしろ、この手の話に首を突っ込んだ所で

悪化はすれど、好転したことなんてどれ程有るか

「おまじない」とはよく言ったものだ

結局、なるようにしかならんのだから


金剛「そうかもだけど…」


玄関口で、一人待ちぼうける弥生の姿

提督が来なければ、花火が終わるまで ああしてるつもりなんだろうか?

それを考えると少しばかり胸が痛い


金剛「ねぇ…球磨。やっぱり、私…」

球磨「…お節介が」


「しらねーぞ」と、首を振り、呆れ混じりに笑う球磨


金剛「ふふ、ですよ?」


それに微笑を返すと、執務室へと足を向ける金剛だった




「ふぅ…」


未だに暗い夜空を見上げ、小さく息を吐く

空になった体に入り込んでくる空気は冷たく

秋の訪れを感じさせると同時に、きゅっと胸を締め付けた


「司令官…弥生は、弥生はここにいるよ…」


誰に聞かれる事も無かった言葉が、秋の夜空に溶けていった





金剛「ていっとくー。金剛と一緒に花火を見るよーっ!」


ぱーんっと執務室の扉が開くと

遠慮する風も無く、とったかとったか押し入ってくる金剛


提督「いきなりだな…」

金剛「いきなりなもんですか。外はお祭りだっていうのにっ、それぐらい良いでしょっ」

提督「まぁ…そうだけど…」


それはそうだけど…

なんとなく、さりげなく、こわーいお姉ちゃんの方へ視線を向ける提督


大井「…良いわよ」


提督の視線に気付くと「好きになさいな」と、頷いてみせる大井


金剛「Thanks、大井。せっかくだし、貴女達も一緒にどう?」

大井「遠慮。ラブコメに付き合う気はないわ」

北上「だってさ?」


肩をすくめ、苦笑してみせる北上だった





北上「どうしてそうかねぇ?」


金剛に引きづられていく提督を見送った後

ふと、口を開く北上


大井「何がよ?」


呆れ混じりにため息を吐かれても

こちらには、そんな覚えなどありはしないのだけど


北上「その仕事、今じゃなくても良いやつじゃん?」


何なら明日の明後日でも良いくらいだ


大井「別に。今やっても変わらないでしょう?」


おまけに誰がやっても変わらないのだ

それなら、やってしまえばいいと思う


北上「金剛さんに遠慮したかい?」

大井「ないない」


からかうように笑みを浮かべる北上を、追い払うように手を振る大井


あれと色恋沙汰をしている自分が想像できない

良くも悪くも出来の悪い兄だか弟だかと言った所だ

手のかかる、本当に手のかかる


けれど、と思い返して見れば

数年前の、此処に着任したての自分は あれを身内だと認められていただろうか?

もし、その時の自分に問を投げられるのなら

その答えは、きっと単装砲の角で打ち返していたのだけは想像がついた


ならもし?


もしかしたら、そういう未来もありえるのだろうか?


大井「ないわ」


本格的にそれだけは


北上「そんな否定しなくても…」

大井「それを言うなら、そっちこそどうなのよ?」

北上「おっと、そろそろ花火の時間だ…」


わざとらしく、椅子をくるりと回し

窓の方へと顔を背ける北上


大井「良いけど…。あとで後悔するんじゃないの、そう言うのは?」


言いたいことだけ言うと、再び書類に目を落とす大井


北上「…」


返事はない

別に期待もしていない

そも、何も言わないということは、何か思う所があるのだろう

それが分かってるなら、これ以上は蛇足でしか無かった


北上「…なんかさ、ずーっとこのまんまってのはどうかなって?」


ぽつりと、弱音のような本音が溢れる

付かず離れずというか、友達以上恋人未満というか

家族というか親戚みたいな…友達の友達…よりは近いほうがいいけど


大井「ありえないでしょ」

北上「そだね…」


淡々と否定されては、頷くしか無かった

たとえ自分達がそうであっても、周りがそういうわけにはいかないだろう

まして、艦娘なんてボーナスタイム、後どれほどあるのやら


大井「行って来れば?」

北上「…後でね」

大井「後でね…」


これ見よがしに聞こえて来る大井のため息は聞かないことにする

後でやるはやらないフラグ、提督が良く言ってる事だ

それは分かる…じゃあ、今やればいいの?


それをして、一歩踏み込んで、提督とイチャイチャしてさ…あたしも金剛さん見たく


北上「ばーにんぐらーぶ…って、どうよ?」

大井「ばっかみたい」

北上「うん、ちょっと傷ついた」


なかなか遠い後になりそうだった





「先に行ってて」と、提督の背中を押した後

食堂に身を潜めることにした金剛

そこには、お腹がすいたのか

はたまた待っていたのか、球磨が食べ終わった焼き鳥の串で櫓を組んで遊んでいた


金剛「ねぇ、球磨」

球磨「ん?」


気落ちした声だった

お節介とは言っても、流石に思うところもあるのだろうか

愚痴の一つや二つ聞いてやらんこともないが


金剛「私も…」


開きかけてはまた閉じる

そうやって何度か口ごもった後


金剛「私も、金剛も…浴衣、用意したほうが良かったでしょうか?」

球磨「…お前は何を言ってるクマ?」


心配して損したとはこの事だ

泣き言の一つでも来るかと思えば、なんだそれは

ようやく吹っ切れたのかと思えば、頭のネジまで飛んだんじゃないのか


金剛「だってぇぇ。皆で浴衣でお出かけしてっ、ずるいじゃないっ、私だってっ、金剛だってっ」


駄々っ子のそれの様にジタバタと両手を振り回す金剛

その度に、巫女服見たいな制服の裾がパタパタと揺れまくる


球磨「好きで残ったくせに、何を今更」

金剛「そうだけどっ」

球磨「浴衣なんか着なくても、年がら年中着物みたいなかっこしてるクマ」

金剛「それもそうだけどっ。そうじゃなくてっ」


もっと可愛い格好したいのっ

提督に見せびらかしたいのっ

ドキッとさせたいのっ

ドキッとして欲しいのっ

ドキッとしたいのっ


球磨「めんどくせぇ…」

金剛「面倒くさいとか言わないでっ。だいたい貴女だってっ」

球磨「クマ?」


焼き鳥を食べては、櫓の増築に勤しんでいたクマ

聞き流していた金剛の話、その矛先が自分に向き、はたと手を止める


揺れる振り袖

白い布地に舞い散る緋色の牡丹


球磨「似合うだろう?」

金剛「…はい」


不敵に笑う球磨の顔、絞り出すような金剛の声音

悔しいが、とても可愛らしかったデス





そろそろ花火も始まろうかという時刻

人の流れも緩慢になり、皆どこか空の様子を気にし始める


瑞鳳「あれ、弥生は?」


逸れたのだろうか?

ふと、気づけば弥生の姿が見えなくなっていた


卯月「いいの」

瑞鳳「いいって…」


だと言うのに

澄まし顔で、訳知り顔で、何でもないと言うように


卯月「良いたら良いの」

瑞鳳「??」

卯月「それとも、うーちゃんと二人じゃイヤ?」


小首をかしげ、からかうように瑞鳳を見上げる卯月


瑞鳳「え?いや…べつに、やじゃ、ない、けど…うん…」

卯月「にひひひ。それじゃ行くぴょん」


その答えに はにかんでみせると、瑞鳳の手を取る卯月


瑞鳳「な、なんなのよ…」

卯月「いいから、いいから」


ぴょんと花火が上がると、ぴょんっと瑞鳳に寄りかかる卯月

そのまま二人、卯月にじゃれつかれながら花火を見上げていた





少し前のやり取りを思い出す

自分で誘って来た割に「先に行ってて」と、金剛に背中を押されてみれば

そこに居たのは、祭りに行ったはずの弥生だった


提督「私を待ってたとか?」


冗談半分からかい半分のつもりではあった


弥生「驚いた…」

提督「へ?」


目を丸くする弥生

金剛さんに続き司令官にまで…


弥生「弥生は、そんなに分かりやすいかな?」


それが正解と言わんばかりの顔だった


まさかのまさかよ…

けれど、そうであるなら金剛の不自然な行動にも合点がいく

さらに考えてしまうのは…


提督「まさか、なんか元気なかったのって…」

弥生「そう、見えた?」

提督「まぁ…」

弥生「そっか」


持たれていた柱から背を離す


弥生「行こ、司令官?花火、始まっちゃう」

提督「あ、うん…」


恋煩い?一瞬、そんな単語が過るのだった




頼りない外灯が点々とあるだけの、薄暗い母港

提督と弥生が、特に何を言うでもなく ぼんやりと空を眺めていた


弥生「気にしないでも良かったのに」


ぽつりと、呟く弥生


提督「ん?」

弥生「秋祭り…」


急に行って来いって、気を使わせたのだと分かると

ちょっと申し訳なくなってくる


提督「別に…」

弥生「うん…ありがと…」


盗み見るように、提督を見上げる弥生

照れてるのかな?薄暗がりじゃ、表情は良くわからない

まぁ、表情以前に年がら年中良くわからない人だけど…


提督「ん…始まったな」

弥生「うん…」


遠くの空が、華やかに彩られる

遅れて来た花火の音が頬を震わせた


提督「たーまやー…」


特に意味もなく口にしてみた言葉


弥生「…多摩さん、大丈夫かな…」

提督「?」

弥生「弥生が戻る前、ずーっと金魚見てたから…」

提督「…」


一抹の不安を抱えながらも花火は続く

1回2回、大きく小さく、賑やかに華やかに


「たまにね、考えちゃうんだ…」


花火の音に隠すように聞こえてくる声


「沈んだらどうしようって」


淡々と、咲いては散っていく花火を見ながらも


「沈むのは嫌だなって」


どこか、遠くの方をみつめているようで


ダメだな

言うつもりは無かったのに、こんなこと言われても困るよね

けど、こんなに花火の音が響いてるなら、少しくらいって…


提督「…」


「大丈夫、君は沈まない」とか言えば良いのか

「俺が護ってあげる」とか言えばカッコイイのかな


それを言うのか、提督が…私が…

であるなら、最初から出撃させなければいい、もっというなら初めからが間違っている


提督「エンゲージ…」


自分の指に嵌った銀色の指輪

それに口を付けると、ぽつりと呟いた


弥生「へ?」


弥生の胸元

紺色の浴衣の隙間から溢れ出てくる桜色の光


提督「見てるから…ずっと、さ?」


精々がこの位だろう、私にできることなんて

カッコの悪いことだ

けど、これが精一杯でもある


弥生「司令官…。覗きはダメだよ?」


子供を叱るみたいに、目を細める弥生


提督「それはまた」


本気なのか、冗談なのか

いまいちズレた反応に、思わず苦笑してしまう


弥生「でも…」


少しの間の後、一つ頷くと


弥生「それも良い、かな…」


胸元から指輪をとりだし、指にはめる弥生


温かい光

舞い散る桜の花のように

ひらひら、ふわふわ、ゆらゆらと

遠くの花火よりも、なお色鮮やかに


一歩、前に出ると、ふわりと浴衣を揺らして花火に背を向けた


どうせなら、ちゃんと見て欲しい

どうせなら、可愛く見られたい

わがままを言うなら、目を離さないで欲しい


「ねぇ、司令官…」


貴方の瞳には、弥生はどう映ってますか?


「花火と弥生、どっちが綺麗?」


そういって、柔らかく微笑むのだった



ーおしまいー




おまけ・愛称



提督「ねぇ、くっきー?」

菊月「ん?」


ある日の執務室

暇を持て余した提督が、同じく暇を持て余している菊月にじゃれついていた


水無月「そいやさ、クッキーって…」


前々から気にはなっていた

愛称だとは思うけど…菊月がどうやったらお菓子の名前に変貌するのかと


皐月「あぁ、あだ名だよ」


提督の机で書類を纏めていた皐月

水無月の疑問に顔をあげ

遊んでいると司令官と菊月を、微笑ましそうに見つめながら その問に答えた


水無月「それは分かるけど…なんで、クッキー?」

皐月「菊月→菊→きくちゃん→きっくー→くっきー。らしいよ?」

水無月「あははは…。全然わかんない」

皐月「ふふっ、そうだね」


ボクだってそうなのだから

水無月だって分からないのは当然だ

とりあえず、愛称を変化していった順に並べていったけど

それでさえ、司令官の気分で右へ左へと変わるのだから、多分意味なんてないんだろう

強いて言えば語感かな?


望月「あれでも前は嫌がってたんだぜ?」


ソファの上で寝っ転がりながら

いつしかの菊月の反応を思い出し苦笑する


水無月「そうは見えないけど…」

三日月「可愛いとかはいやだーって、言ってましたね」


変われば変わるものだと、染み染みと頷く三日月

あれは何時だったかと、その時の様子を語り始める




提督「くっきーってどう?」


それはあまりにも突然で

意味を測りかねた菊月が、言葉通りに疑問を返す


菊月「どうって…食べたいのか?」

提督「そうでなくて。愛称だよ、あだ名だよ」

菊月「それ…私のことなのか?」


笑みを浮かべる提督とは対象的に、曇っていく菊月の表情


菊月「やだ」


そして一言、バッサリと切り捨てた


提督「えー、可愛くない?」

菊月「可愛くない」


再度切り捨てる菊月


菊月「どうせならカッコイイのが良い…」

提督「…んー」


それならと、一瞬悩む素振りを見せた提督


提督「菊一文字。うん、菊一文字・菊月」

菊月「…いい、な」


また茶化されるかと思いきや

割りとまともな案に菊月の心が揺れ動く

無意味に菊の字が被ってるのがお洒落だ


提督「でも長いね」

菊月「まあ、たしかに…」


悪くはない、良い部類だが

愛称と言うには少々長すぎるのは その通りか


提督「じゃ、やっぱりくっきーだね」

菊月「どうしてそうなるんだ…」


ブーメランのように手元に戻ってきた結論に、頭を抱える菊月だった


それから、暫くの間


提督「くっきー」

菊月「あのな…」

提督「くっきー」

菊月「だから…」

提督「くっきー」

菊月「まったく…」

提督「くっきー」

菊月「ん?」


菊月がその呼ばれ方に諦めを覚え

反比例するように提督が飽き始めた頃


提督「ねぇ、菊月?」

菊月「…」


いく日かぶりに普通に名前を呼んでみたが、特に反応がない


提督「菊月ってば」


怒らせたのだろうか?

心配になり、無防備なほっぺを突くと、ようやくと こっちに気付いて顔を上げる


菊月「…ん?あ、あぁ私か…どうした、司令官?」


「ぷっ」


執務室に響く忍び笑い


菊月「なんだ…」


笑われてる理由が分からず、眉根をひそめる菊月


提督「いや、別に…意外と気に入ってたのかなーって?」


これはしたり…と、口の端を持ち上げる提督


菊月「あっ…いや、ちがうぞっ。司令官があんまりにしつこいからっ」

提督「いや、くっきーは可愛いなぁ」


いやらしい顔で「むふふふ」と笑う提督

からかう様に菊月の頭に手を伸ばし、わしゃわしゃと撫で回す


菊月「やめろってばーっ」




三日月「結局、くっきーで落ち着いたみたいだけど」


そうして、話を締めくくる三日月


水無月「…いいなぁ」


口元に指先をあて、羨ましそうにじゃれ合う提督と菊月を見つめる水無月


望月「良いって…みっきーとか言われたいのか?」


「ははっ」って笑い声が聞こえてきそうだ


水無月「それでも良いけど…もっちー、みつき でしょ?」


二人の愛称を呼びながら、確かめるように指をさす


水無月「水無月もなんか欲しいなぁって」

望月「欲しがるようなもんかねぇ」

三日月「ちょっと照れるよね…」


持ち得るものだけに、分かる理解で頷きあう二人


水無月「ぶー…」


「照れる」ってなにさ、「恥ずかしい」じゃだめなんですかっ

それに、なんか可愛い顔してるし


どうせあれでしょ、おっぱいあっても肩がこるだけだよーとかいうやつだ

そういう問題じゃないのだ、水無月は欲しいのだ

それで肩が凝るのなら、それでさえ実感したいのだ…故にっ


水無月「よしっ」


気合一つ入れ直し、菊月にじゃれてついてる提督の所へと


水無月「司令官っ、水無月も愛称で呼んで欲しいなっ」


直談判だった


提督「なんだ、いきなり?」

水無月「水無月だって、可愛がられたいんだよー」

提督「素直なことで…」


擦り寄ってくる水無月の頭を適当に撫で繰り回す提督


水無月「でっ!」


催促する様に声を出す水無月

頭を撫でられ、満足しそうになる心を押さえつけると

それでっ、どうなのっ、と提督に詰め寄った


提督「菊月、なんかない?」

水無月「ちょっとっ」

菊月「私か?そうだな…みなみな、とか?」

提督「あぁ…」

長月「こっちみんな」


何処かで聞いた語感を頼りに顔を向けてみると

追い払うような目で長月に睨まれた


提督「だ、そうだけど。みなみな?」

水無月「…それ、なんか恥ずいからダメ」


頬を染め、顔を背けると

何か言いたそうな顔をしている長月と目が合った


菊月「可愛いと思うぞ、みなみな」

提督「みなみな可愛い」

水無月「やめてっ」


今なら分かる。長月が「ながなが」言われたくなかったのが

呼ばれるだけなら兎にも角、絶対司令官にからかわれるんだもの…


水無月「もういいよっ。そうやって、司令官はすーぐ人の事からかうんだからっ」


恥ずかしさに耐えかねて、その場から離れると

怒ったように背を向け、扉へと歩いて行く


「みぃ」


ふと、その背中に掛かる声

聞き慣れた声なのに、聞きなれない言葉


水無月「…え?今の…」


けれど、なんとなく呼ばれた気がして、思わず振り返っていた


提督「きくきくってどう?」

菊月「やめろ」

提督「あははははは」


ノータイムの否定に楽しそうに笑う提督


水無月「ちょっ、司令官っ今のもっかいっ」


何事もなかったような二人のじゃれ合い

けど確かに、言ったはずだ


提督「今のって…きくきく?」

菊月「おこるぞ」

提督「あははははっ」

水無月「そっちじゃなくてっ」


違う、聞きたいのはそれじゃない


提督「みなみな?」

水無月「やめてっ」


それはもっと違うっ


提督「ながなが~♪」

長月「こっちに振るんじゃないっ」

水無月「あーもうっ!」


あくまで知らっばくれる提督に、しびれを切らす水無月

もと来た道を大雑把にたどると

提督に詰め寄り、逃げられないように顔を近づける


水無月「さっきのっ「みぃ」って言ったじゃんかっ」


アレでもない、コレでもない

水無月が聞きたいのは…


提督「可愛いだろ、みぃ?」

水無月「うんっ!」


しっかりと頷いてみせると、満足そうに笑う水無月だった


ーおしまいー




後書き

はい、というわけで最後まで読んでくれた方。本当にありがとうございました
貴重な時間が少しでも楽しい物になっていれば幸いです

ーそれではこの番組はー

ゆー「ゆーちゃんのー」
弥生「やってみたかっただけのコーナー」
卯月「…なんか取られたぴょん」
弥生「大丈夫、Uでも うーって読むでしょ?」
卯月「そんな強引な…」

弥生「それで、どうするの?」
ゆー「はい。ポイっぽい…ですって」(←金魚掬いに使うやつ持ってる
弥生「…ちょっと卯月」
卯月「…うーちゃんじゃないぴょん」
ゆー「?」

ゆー「面白くなかった?」
弥生「ううん。大丈夫…これから面白くする。卯月…」
卯月「ぴょんっ。もしもし球磨ちゃん、あのねあのね・」
弥生「あ、もしもし鬼怒さん?今そっちに球磨さん行ったから」

鬼怒「へ?球磨ちゃん?ってうわっ、ほんとに来たっ」
球磨「ゆーにくだらねーこと教えてんじゃねークマぁぁぁっ」
長良「人ん家で何を騒いでるのかしら…球磨型の…」
夕立「あははっ。夕立もまぜるっぽーいっ」
ビス「ちょっとっ、アンタ達何を騒いでっ」
く&な「すっこんでろっ!」
ビス「え、ちょっ、きゃぁぁぁぁっ!?」
阿武隈「ちょっとっ、煩すぎ何ですけどってっ、きゃぁぁぁっっ!?」

鬼怒「ちょっ、弥生ちゃんっ!これどうすんのっ!?」
弥生「さぁ?弥生は知らないし、そろそろ時間だから切るね」

卯月「うぷぷぷぷぷ…阿鼻叫喚だぴょん」
ゆー「結局、どうなったの?」
弥生「うん、面白かったよ、ゆー」
ゆー「そっか、良かった」

ー諸々のメンバーでお送りましたー


ー以下蛇足に付き


♪皐月ちゃんラジオ♪ 

提督「間に合ったー。まだ10月だー」
皐月「どうして、時間なくなってから慌てるかな」
提督「余裕があるから、余裕を見せるのさ。無くなってからが本番なんだよ」
皐月「それ、絶対後で後悔するやつじゃん」
提督「余人の総意だよ。知りながらも突き進んだ道だね」
皐月「自業自得っていうんだよ、そういうのは」
提督「違いない」

皐月「それで、今回は何がしたかったのさ?」
提督「北上と大井の話を考えてたら、弥生の秋ボイスを聞いてしまって…まとめてやってしまった」
皐月「詰め込みすぎじゃないかい?」
提督「同意。けど、書きたい時に書きたいだけ書きたいように、ね?」



皐月「それじゃ、コメント返しをしようかな」
提督「今回も、ありがとうございます」



・水無月
・金剛
・久しぶりの方
・長月助けて



提督「以上の4本でお送りします」
皐月「それじゃ、上からだね」

・水無月

皐月「いいとこ見せようと、突っ走って大コケしたりと…」
水無月「いや、だってさぁ。みんな練度高いし、司令官と仲良くしてるし、焦るじゃんっ」
皐月「まぁ、分かるけど。金剛さん見たいって言われてるよ」
水無月「それは…褒められてるの?」
金剛「もちろんでーすっ。もっと自信を持ってっ、ねっ!」
水無月「え、あ、うん。がんばるっ」
皐月「不安しかないんだけど…」

提督「新メンバーは、夕月までは頑張るよっ。重巡とか入れても面白そうだけどっ、未定だよっ」

・金剛

皐月「水着を貰って一線越えたのかなって?」
金剛「Non.一線なんて最初に合ったときから越えてるよっ。ただ、ちょーっと素直になっただけで」

金剛は最初から、貴方の、貴方だけの、貴方の為のー

金剛「金剛でーすっ」
提督「いっそ怖いんだけど…」
金剛「なんでっ!」
球磨「正直、前のが扱いやすかったクマ」
金剛「どういう意味よっ!」
皐月「相変わらずって意味じゃないかな」

提督「金剛はもうアレだけど。他の★9な子達は落ち着いてるみたいだし
   今後どうなるか、自分でもよく分かりません」

・久しぶりの方

提督「騒がしいだけの鎮守府ですが、楽しんで頂けたなら幸いです」

題名はこっそり直しておきました、ありがとうございます

・長月助けて

提督「そこで思考を止めたらダメだよ。さぁ、想像するのです」

可愛い長月を、もっと可愛い長月を、もっともっと可愛い長月を

さぁ、想像しましょう?

浴衣で、水着で、パジャマで、下着で…
海上、部屋で、お風呂で、ベッドで…
泣いて、笑って、怒って、照れて…

アナタの言動に、一喜一憂する彼女の姿を

それはとっても…

提督「可愛いだろ?」



水無月「それじゃ、今回はここまでかな?」
皐月「うん。たくさんの閲覧、コメント、お気に入り、評価、応援、前回はオススメまで、ありがとうねっ」
提督「私の自己満足にやる気が加わって、とても嬉しいです」

いい加減寒くなってきたこの頃、時期的には一旦小休止でしょうか
雪が振る頃には、クリスマスに年末新年バレンタインと、一気に忙しくなる季節
皆さんも体調管理には気をつけて、防寒着でモコモコになる艦娘達を想像しながら
良い艦これ生活を送りましょう

提督「皐月…」
皐月「うん。それじゃ、皆、また一緒に遊ぼうねっ」
水無月「ばいばーい」


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SS好きの名無しさんから
2016-12-03 22:54:34

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2016-11-03 18:40:55

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このSSへのコメント

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1: SS好きの名無しさん 2016-11-02 16:13:39 ID: -A9Mncqp

北上様と大井さんの過去話来た!
以前リクを出させて頂いた者です。どうもありがとうございます<(_ _)>

提督さんと大井さんは、心を許せない相手には厚い壁を作る者同士。どうやって距離を詰めたのか気になっていましたが…衝突してこじ開けてたんですね。
一度胸襟を開いてしまえば、実は困った人には世話焼きなお姉ちゃん気質の大井さん。ダメな人代表の提督さんをほっとけるはずがない(失礼)

そして、その過去話を前置きに秋祭りでは弥生ちゃんが提督に猛アピール!
最近はゆーちゃんをアレな道に導くことに熱心で、そっち方面の話は来ないものとノーマークでした…やられた(^^)

今回も大いに楽しませて頂きました。
次回も楽しみにしています。

2: SS好きの名無しさん 2016-11-04 22:12:03 ID: 4FX2irQr

ここの睦月型が可愛すぎて、二次元が現実だと思い込んでしまった。
罰としてもっと可愛く書いてください。何でもしませんから

3: SS好きの名無しさん 2016-12-03 22:56:28 ID: C3OLytVt

作者さん!
初めてのコメントです!
更新を心より待ってます!
続き読みたい!
無理せず頑張ってくださいね!


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1: SS好きの名無しさん 2016-11-02 16:23:51 ID: -A9Mncqp

今回は大井さんと北上さんの着任した頃の過去話から始まります。
そして秋祭りでは睦月型のあの子が提督に猛アピール!意外な子が見せる積極さに提督もタジタジにw

水無月も加わって一層賑やかさを増した鎮守府での物語。
睦月型と球磨型スキーの方は必見です。


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