Halloween μ'sic!
ハロウィンで繰り広げられる、μ'sのドタバタ劇です
「ハロウィンだよ!」
部室で、唐突にリーダーがテーブルを叩きました。
「何よいきなり……」
このリーダーが唐突なのは最初からなので、そこは誰も気にしません。ただし内容までは分からないので、そこは訊くしかありません。
「今日は何月何日? はいことりちゃん!」
「えっと……今日は十月三十一日だね」
「そう! だから今日はハロウィンの日だよ!」
それはメンバーも知っています。秋葉原の街も、延いては音ノ木坂の生徒も、ハロウィンのムードに包まれています。
「つまり……どうしたいんです?」
言い出した以上何かしらの魂胆がある事を、この幼馴染はよーく知っています。そしてそれが、自分の本意に沿う事が滅多にない事も。なのでできれば、先手を打って阻止したいのです。
「仮装しようよ! ハロウィンだもん!」
大方予想はできていました。ならば策もあります。
「何言ってるんですか。第一仮装できる衣装が無いじゃないですか」
「実は、こんな事もあろうかと用意してました♪」
「ほらことりもこう言っ……て……? ことり? 今、何と言いました?」
見当違いのセリフすぎて、危うく聞き漏らす所でした。
「私も、ハロウィンで仮装できたら可愛いだろうなぁ〜って思ってて。だから、いくつか衣装を作っておいたのっ」
「おお! さっすがことりちゃん!」
「…………」
海未は開いた口が塞がりません。
「でもね、衣装は四着しかないの。全員分は間に合わなくて……」
「それなら、残りはここにある物で代用しようよ! そしたらみんなでハロウィンパーティーだ! 穂乃果、あったまいい〜!」
「ちょ……私はやるなんて一言も……」
なおも抵抗を続けようとする海未の両肩に、真姫と絵里がポンと手を置き首を振ります。
誰だって分かっています。穂乃果とことりがノリノリな企画は、もう止められない事を。
「…………」
しばらく呆然としていた海未でしたが、ガクッとうなだれました。決定事項です。
何だかんだで楽しそうだと、メンバー揃って準備をします。
ことりが準備した衣装四つと、即興で作った衣装五つで、ひとまず九人分の衣装が揃いました。
「クジ作ったで〜。これで決めよ?」
希が簡易クジを用意し、せーので引きます。
クジの結果に、喜ぶ人、青ざめる人、想像がつかない人。様々ですが、公平なクジ運に文句は言えないので諦めて担当になった衣装に着替えます。
「じゃーん! 穂乃果は吸血鬼だよ! 血を吸っちゃうぞ〜!」
ノリノリな言い出しっぺ、穂乃果は蝶ネクタイと黒いマントが映える吸血鬼です。牙が欲しいと駄々をこね、海未に小遣いで買えばいいと言われ少し拗ねたのは秘密です。
「私は魔女なのね……。何て言えばいいかしら。世界で一番美しいのは私よ! とか?」
「絵里ち、それは童話だし断言したらお話終わるで?」
楽しそうに言い放った直後にダメ出しを食らった絵里は魔女です。先の折れた黒いトンガリ帽子に、膝上のタイトスカートはスタイルのいい彼女によく似合っています。
「本当は、これを海未ちゃんに着て欲しかったのになぁ……」
「とんでもないです……! 絵里、感謝します」
「海未、さりげなく私をスケープゴートにしないで」
そんな海未は、死神です。メンバーが見つけた黒いローブに、ことりが背中に黒い羽を縫い付けています。それっぽく見えるように、と前髪で限界まで目元を隠しています。枕を持っていたら全員震え上がっていたでしょう。
「ドロドロドロ〜。お化けだぞ〜。おやつにしちゃうぞ〜♪」
こちらは逆に、癒されそうなゴースト、ことりです。白い布を縫い重ね合わせて着ています。手を出す穴を作らなかったので、遠目には照る照る坊主にも見えます。
「凛はゾンビにゃ〜!」
あえて緑や灰や茶を無秩序に合わせた衣装を身に纏うのは、凛です。
「……元気ありすぎるでしょ。どんだけハツラツしたゾンビなのよ」
「きっとそういうゾンビもいるんだよ! それにホラ! マジックで顔に血っぽいの描いてみたんだよ!」
笑顔で赤く塗った口元を見せてくる凛。それが油性で泣きそうになるのは、もう少し後です。
「ふえぇ……。どうして私がこれなのぉ……」
若干涙目なのは、花陽。彼女の衣装は、サキュバス。全員の中で一番露出が高いです。
「でも花陽、あなた意外とスタイルいいんだし似合ってるわよ?」
「そ、そうかな……」
「そうだよかよちん! 自信持って!」
「えへ、ありがとう、真姫ちゃん、凛ちゃん」
「ちょっと胸元と腰回りがキツいかなぁ。手直ししてあげるね」
「……もしやことり、その衣装も私に合わせてはないですよね?」
「…………えへ♪」
「ことり……!」
一番可愛らしい見た目をする幼馴染に、海未は誰よりも恐怖を覚えます。
「……これ、片目見えないんだけど」
包帯をグルグルに巻かれたのは真姫。ミイラです。
「えーでもいいやん。真姫ちゃん、クールやからこういう仮装似合っとるよ?」
「そ、そう? まあ私だし当然よね」
「………………チョロいなぁ」
おだてておきながら黙ってしまう希。
そんな希は、
「おー、これはフランケンシュタインやな? このネジとか、流石ことりちゃんやな」
「えへへ〜」
希の頭には、大きなネジが一本刺さっています。が、勿論本物ではなく、小道具にヘアピンを固定したものです。「みんなの衣装を考えてる内に、できるようになった技なんだよ〜」
「不思議なスキルも身につけてるやん」
希も顔にツギハギの縫い跡をペイントしていますが、こちらはちゃんと水性です。
そして最後はにこ。ハロウィン定番中の定番、カボチャのお化け、ジャック・オ・ランタンです。目鼻をくり抜き段ボールの形を整え、それを頭から被っています。以上です。
「ぬわんでよっ!」
「おわビックリした。どしたんにこっち」
「どうしたのじゃないでしょ! 何でにこだけこんな手抜きなのよ! しかもこれ、顔見えないじゃない!」
「真姫ちゃんだって顔見えへんよ?」
「髪型で分かるでしょ!」
「あ、それなら大丈夫よ。みんなすぐににこだって分かるから、安心して」
「ホントに⁉︎」
流石はμ'sの常識人、絵里。ちゃんと解決策を用意してあったのだと安堵するにこ。
「にこはμ'sで一番背が低いから、消去法ですぐ分かってもらえるわ」
「消去法かい!」
悲しいツッコミが部室に響きます。
「でもにこちゃん、存在感は中々にゃ」
「そうですね……。その頭でイタズラするぞと言われたら、本能的にお菓子を渡してしまいそうです」
「全っ然褒められてる気がしないんだけど。あと、頭って言うな」
やさぐれ出す部長。威厳なんてありません。
「そうだ! それなら、誰が一番お菓子を貰えるか競争しようよ!」
吸血鬼がさらなる閃きを口にします。
「はあ? いきなり何言い出すのよ」
「そもそも、誰に貰いに行くのよ。そもそも、そう都合よくお菓子持ってる人もいないでしょ」
カボチャとミイラが首を傾げます。
「放課後だから、学校にもあまり生徒は残ってないし……」
「アキバの街に行くにゃ?」
「確かにそういうムードではありますが、仮装を楽しんでいる方がメインなのでお菓子を貰えるかと言うと……」
いくら何でも突発的すぎると案が流れそうになりましたが、
「穂むらだよ!」
リーダーは怯みません。そもそもネガティブな意見など聞き入れるつもりもありません。突っ走ります。
「穂むらでハロウィンキャンペーンやってるから、トリックオアトリートればお菓子貰えるよ!」
トリックオアトリートは、動詞ではありません。誰かのそんなツッコミは風に消えました。
「さあ! みんな行くよ!」
拒否権はありません。強制参加です。
半ば強引に、九人は穂むらへとやって来ました。お店の前には、そこそこ人だかりができています。
「おお! 繁盛してるねぇ! じゃあ穂乃果達も行こう!」
先陣を切り、勢いよく店内へ入っていった穂乃果。
「トリックオアトリー……」「ああっ! お姉ちゃん何やってたの!」「穂乃果ちょうどいい所に! やる気も充分みたいね!」
「うえぇっ⁉︎ 何なの⁉︎」
姉妹親子の会話が聞こえ、そして穂乃果は出てきません。
『……?』
状況が分からない残った八人は、とりあえず店内に入ってみます。
「あら、みんなも来てくれたのね! 手伝い、よろしく!」
手伝い? と首を傾げる間に、チラシや看板を次々に持たされるメンバー。
「わざわざ仮装してヘルプに来てくれるなんて、みんないい子ね。いっちょよろしく!」
高坂母の言葉に、何となく状況を理解します。
ようは混んでいるから手伝え、と。
『『『…………』』』
ここでも、拒否権は無いようです。八人は一瞬顔を見合わせ、
「穂乃果はお菓子が欲しかっただけなのに〜!」
「子供か! 文句言わずに働いてよお姉ちゃん!」
若干涙目な穂乃果を見やると、苦笑しながらも持ち場を決めて動き始めました。
「はい、ハロウィン饅頭三つですね?」
「トリックオアトリートしてくれたら、ちょっとだけサービスしちゃいま〜す♪」
「ちゃんと順番守らないと、お菓子あげないわよ〜?」
「ちっちゃな子は、凛とジャンケンするにゃ〜!」
「えぇっ⁉︎ さ、撮影はダメですぅ〜!」
「顔が見えないって、仕方ないじゃない。そういう仮装なんだもの……」
「んー? 今日はワシワシじゃなくて、よしよししてあげるやん」
「にっご……! ちょっと! この段ボール大きすぎてにこにーできないんだけど!」
かしましい声に包まれる穂むら。その中で、
「え〜ん! イタズラできなくていいから、お菓子食べたいよぉ〜!」
リーダーの悲しい心の叫びがこだましたとかしないとか。
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