2017-01-01 09:56:58 更新

概要

あけましておめでとうございます。今年も一年、よろしくお願いします。


ホカホカと身体を温めるコタツ。その魔力は、時にあらゆる誘惑を凌駕する。

「ぐぅ…………」

その誘惑に、早速屈しようとしている人物が一人。

机に置かれたミカンをつまんでいたのは少し前。今にも涎を垂らしそうな幸せそうな笑顔で眠るのは、穂乃果。

時は年の瀬、その夜。紅白歌合戦も終わり、後はカウントダウンを待つのみとなった時間。

「えへへ……雪穂、お茶……」

寝言を漏らす穂乃果。ちなみに呼んだ名前の本人は、穂乃果の横でコタツに収まり呆れた目をしている。

「まったく……ハイ、お茶」

雪穂は、机の上にあった湯のみを姉の頬に当てる。先ほど淹れたばかりの、お茶の入った。

「あっっっっつぅいっ⁉︎ 雪穂何するの⁉︎」

当然飛び起きた穂乃果は、涙目で妹を睨む。

「お茶って言われたから、渡しただけだよ」

あくまで雪穂は、澄まして返す。

「ぐぬぬ……」

「それにホラ、もうすぐ年明けるよ」

雪穂はテレビの画面を指差し、そこに映されたカウントダウン表記を見やる。

「…………」

穂乃果は無言で座り直すと、釈然としない表情で雪穂に視線を送った。

「お姉ちゃんはさ、やっぱり凄いよね」

「……? どうしたの突然」

「だって、本当にスクールアイドルで有名になって、学校を廃校から救っちゃったんだよ?」

「それは、私一人の力じゃないよ」

「うん。でもさ、お姉ちゃんがいなかったら、μ'sは生まれて来なかっただろうし、廃校も救えなかった。それってやっぱり、凄い事なんだと思う」

「……どうしたの? 急に真面目になって」

「私だって、スクールアイドルの端くれだもん。お姉ちゃんがどれだけ凄いのかは、よく分かってる」

「雪穂……」

「だから、ありがとね。私に、私達に、道を残してくれて」

穂乃果の顔を見据えて、雪穂は小さく笑った。

釣られるように、穂乃果も笑う。

「……さ、もうすぐ新年だよ! カウントダウンしなきゃ!」

気まずい空気を打ち消すように、雪穂が手を叩いてテレビに視線を向ける。

「新年、かぁ……」

穂乃果も、お茶をすすりながらその時を待つ。

十、九、八、七、六、五、四、三、二、一…………











「あっけおめにゃぁ〜っ!」

「ぶっ⁉︎」

新年で最初にやってきたのは、超元気な猫の声。

「あちゃちゃちゃ⁉︎」

思わずお茶を噴き出した穂乃果は、その熱湯に悲鳴を上げる。

「り、凛ちゃん⁉︎」

涙目で振り返った穂乃果の目の前には、居間の襖を開け放ち、エッヘンと胸を張る新リーダーの姿が。

「な、何でここに⁉︎」

「サプライズしたかったんだにゃ! 大成功!」

笑顔でVサインを突き出した凛に、高坂姉妹は口を開けるしかない。

「ちょっと凛、一応夜中なんだから、静かにしなさいよ」

「穂乃果ちゃん、ご、ごめんね〜?」

その後ろから、仁王立ちのクラスメイトが顔を覗かせた。

「真姫ちゃん、花陽ちゃん!」

「明けましておめでと、穂乃果」

「今年も一年、よろしくお願いします」

ついで、というように挨拶する真姫と、深々と頭を下げた花陽。

「お、おめでとう……よろしく……」

状況が整理できない穂乃果。そして、彼女達はその暇を与えない。

「いつまで部屋着でいるのよ。早く初詣行くわよ!」

「穂乃果ちゃん、おめでと〜」

「サプライズは成功、って所かしら?」

一年生の後ろから、ビシッと指を差され、マイペースに手を振られ、ドヤ顔を向けられた。

「にこちゃん! 希ちゃん! 絵里ちゃん!」

「おめでとうございます! 穂乃果さん! 雪穂も!」

「亜里沙ちゃんも!」

混乱しているせいか、名前を呼ぶ事しかできない穂乃果。

「え、え、何で? どうしてみんながここに……?」

「新年は、μ'sで祝いたいとの事でしたので」

「あけましておめでとう、穂乃果ちゃん」

三年生のさらに後ろ、そこから、

「海未ちゃん! ことりちゃん!」

幼馴染の二人が顔を見せた。

ようやく頭の整理が追いついてきた穂乃果は、

「みんな……外で待ってたの?」

口々に肯定の返事が返ってくる。

「あは、ははは……ありがとう。みんなありがとう!」

少しずつ笑顔になっていく穂乃果。一度全員の顔を眺め、それからいつもの満面の笑みを浮かべた。そして、

「みんな、あけましておめでとう! 今年もよろしくね!」

全力で新年の挨拶を送った。

「近所迷惑です! そのくらいは考えなさい!」

「……はい」

新年一発目の説教を食らった。


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