MONSTER HUNTER μ's 1 狩猟解禁!
モンハンとラブライブのクロスオーバーです。設定は2ndGをベースにしています。ダブルクロス? 知らんな。
ドンドルマより東。テロス密林に、三人の人影があった。
各々武器を持ち、ある一方を睨んでいた。
「ギャァ!」
その先には、全身を青い鱗で覆われた、大きなトサカを持ったトカゲのようなモンスター。
「来る……!」
「ギャアッ!」
飛びかかってきた大トカゲを、一人が背丈ほどもある大きな剣の腹で受け止める。ほんの少しだけ後退したが、そこで踏みとどまる。
「……やっ!」
そこへ、側面からナイフのような小さな片手剣で斬りつける別の人影。
「ギィウ……!」
それを鬱陶しそうに、大トカゲは横を向く。
「そこだ!」
そのガラ空きの横っ腹に、大剣の強烈な一撃が叩き込まれる。
「ギャギャッ⁉︎」
大トカゲが怯んだ所で、
「できました! こっちです!」
二人の背後から、声が飛んだ。それを聞いた二人は、顔を見合わせて頷き、走り出す。
当然、背後から大トカゲは追ってくる。
「さあ、早く!」
二人が走る先では、大きな弓に矢をつがえるもう一人の姿が。
「よろしく!」
「っは!」
勢いよく放たれた矢は、大トカゲに吸い込まれていく。そして、その猛攻に速度を緩めた大トカゲの足元で、スパークが巻き起こった。
「ギィッ……⁉︎」
不自然な体勢で身体が止まり、小刻みに悶える大トカゲ。
「さあ、今です!」
弓を持った人物が、横を駆け抜けた二人に声をかける。
「やっ!」「えいっ!」
二人はその声とほぼ同時に、何かを投げつけた。
「ギャウ……」
それは大トカゲへ命中すると、薄い煙を撒き散らし深い眠りへと誘った。
「やったぁ! ドスランポス捕獲成功だよ!」
「やったね穂乃果ちゃん!」
「ことりちゃんのナイスサポートのおかげだよ〜」
大剣を持つ穂乃果と呼ばれた人物と、片手剣を持つことりと呼ばれた人物はハイタッチ。
「ちっともよくありません!」
そこへ、鋭い声が飛んだ。
「海未ちゃん……?」
海未と呼ばれた人物はポーチの整理をしながら、厳しい視線を向ける。
「ドスランポスにシビレ罠と捕獲用麻酔玉を使って……。コストが高すぎます」
「え〜でも、『その方が確実だ』って言ったの海未ちゃんじゃん!」
「そのはずだったんです。あなたが支給された物資以外を使い込まなければ、でしたが。穂乃果!」
ビシッと指さされた穂乃果は、一瞬気圧されるもすぐに反撃する。
「だって私は剣士だもん! 遠くから狙う海未ちゃんとは違うの!」
「それならことりを見習いなさい!」
「ことりちゃんは、片手剣だもん……。穂乃果より武器が軽いじゃん!」
「あなたが無鉄砲に突っ込むから、余計なダメージを負うんです! もっとモンスターの動きを見極めて、慎重に立ち回って下さい!」
「海未ちゃんも大剣やれば穂乃果の大変さが分かるよ!」
「やらずとも、穂乃果の動きに無駄が多い事は分かります!」
「あ、あの〜、二人共そのくらいで……」
モンスターの鳴き声がなくなった密林で、人間の言い合いが青空に吸い込まれていった。
穂乃果、ことり、海未の三人はギルドの馬車に揺られながら、ドンドルマへ到着した。
「今日もくたびれましたね」
「だね〜。美味しいご飯食べて、ゆっくりしたいなぁ」
「さっきのクエストでお金貯まったから、武器作ってくるね!」
「穂乃果……話聞いてましたか?」
早速導火線に火が付いた海未を、
「ま、まあまあ海未ちゃん。ことり達も、新しい装備作れそうだよ?」
ことりが即座に鎮火する。
「はぁ……そうですね。そうしますか」
穂乃果が動き出した時点で、そもそも止める事は不可能だと海未も知っている。
加工屋に向かった三人は、それぞれ武器の強化に必要な素材と、通貨のGを差し出す。
「えーっと、“鉄鉱石”六個と、“マカライト鉱石”一個、あとは“大地の結晶”五個……それと千四百G!」
穂乃果は持っていた《バスターソード改》を加工屋に預ける。
「私は、“鉄鉱石”三個に“マカライト鉱石”一個と、“大地の結晶”三個、あとは八四十Gだね」
ことりは、《ハンターカリンガ改》を手渡す。
「私は……まだ素材が足りませんね」
「何が足りないの?」
新しく《バスターブレイド》を受け取った穂乃果と、
「まだ会った事ないモンスター?」
《アサシンカリンガ》を受け取ったことりが顔を向ける。
「はい。“ドスギアノスの爪”という素材が必要なようです」
「ドスギアノス? 確か、寒い地方に住むドスランポスの仲間だよね?」
「ええ。仕方ありませんね……。明日、ドスギアノスを狩りに行きましょうか」
「うん! 早く海未ちゃんの武器も強くしたいもんね!」
「お願いします」
その日はそれで宿に戻り、各々床についた。
翌日、ドンドルマの中央集会所へ三人は集合。ドスギアノスを狩って欲しいという依頼書を手に取ると、クエストを受諾する。
準備を終えて出発しようとした所へ、
「ちょっといいかな?」
背後から声をかけられた。
「あ……ギルドの……」
そこにいたのは、何度か見かけた事のあるギルドの所属の男だった。
「何か私達に?」
「うむ、君達は、ドスギアノスを狩りに行くようだね?」
「ええ、そのつもりです」
「という事は、フラヒヤ山脈へ向かう」
「そう……ですね。あの、それが何か?」
男の意図が分からない海未は、受け答えしながら首を傾げる。
「君達は、ポッケ村という村を知っているかな?」
「確か……フラヒヤ山脈近辺にある、山岳地帯中腹にある村だったかと」
「うむ。実は、そこに赴いて、専属のハンターとなってもらいたいのだ」
「「「はい?」」」
三人揃って、首を傾げる。
「現在ポッケ村には、専属ハンターが二人いる。しかし、どちらも駆け出しで、村の安全を全て守るには不安だし負担も大きい。そこで、お三方にはポッケ村へと赴いて村を守って欲しいのだ」
「なるほど……。そういう事でしたら、分かりました」
少し思案顔の海未だったが、事情を把握し大きく頷いた。
「おお、本当か。お二人も、それでよろしいか?」
男は穂乃果とことりにも目を向けたが、
「もちろんです!」
「頑張りますっ」
肯定が返ってきた。
「では、私から手配しておこう。ポッケ村には、年老いてはいるが聡明な龍人の村長がいる。村に着いたら、その方を訪ねるといいだろう」
「はい、ありがとうございます」
「いやなに、礼を言うのはこちらだ。よろしく頼むよ」
そう頭を下げると、男は去って行った。
「ポッケ村だって」
「どんな所なんだろうね〜」
「それより先に、ドスギアノスの狩猟ですよ。今の内に、事前の情報を確認しておいて下さい」
海未は、二人に生態についての書類を渡す。
「「はーい」」
テロス密林よりさらに北。フラヒヤ山脈へ到着した三人は、BC(ベースキャンプ)の支給品が入ったボックスから、それぞれ必要な物資をポーチに詰める。
「いいですか、ドスギアノスの動きはドスランポスと殆ど同じ。ですが、ここは年中雪が降り積もる雪山です。充分に用心して下さい」
海未の指示に、穂乃果とことりは頷く。
「さあ、行きましょうか」
BCから出た三人は、段々になった岩を登って山の内部へと入る。
「ううっ……やっぱり寒いね……」
絶えず冷風が吹き付ける内部の洞窟は、壁は凍りつき頭上には巨大な氷柱が垂れ下がっていた。足元に積もった雪のおかげでスリップは免れているが、凍えるような冷気はどうしようもない。身体の体温を保つ為に、スタミナが減っていくのを感じた。
「その為のホットドリンクです」
三人は、赤い液体の詰まった瓶を取り出し飲み干す。
にが虫と調合する事で薬膳効果を持ったトウガラシの成分が、身体を内側から温める。
「ふう……あったまる〜」
「だね〜」
白い息を長々と吐き出す穂乃果とことり。
「のんびりしてる場合ですか。早く行きますよ」
言うが早いか、海未はすでに歩き始める。
「もう、海未ちゃんったらせっかちなんだから……」
「まあまあ、クエストにはギルドが定めた時間があるんだし、急ご?」
三人は山の内部を抜け、山頂付近へ出る。
チラチラと雪が降る中、三人は討伐対象を探す。
「……いました」
先行する海未が、二人を手で制す。
前方を見やると、人間より一回り大きい、白い鱗に覆われたトカゲのようなモンスターが闊歩していた。
「あれがドスギアノスかぁ……」
「その周りにいるのが、ギアノスだね」
ドスギアノスの周りには、やや小さいサイズの同じようなモンスターが跳び回っていた。
「基本的な立ち回りは、ドスランポスの時と同じです。寒い地方に適応した攻撃方法もあると思うので、それには注意して下さい」
「了解!」「うん!」
「さあ、行きますよ!」
海未の言葉を合図に、三人は飛び出す。
「ギュイ? ギュイ! ギュイ!」
すぐにドスギアノスに気付かれ、臨戦態勢を取られる。
「よーし……!」
穂乃果は正面から駆け寄ると、背中の強化された大剣を掴み真っ直ぐ振り下ろした。
間一髪のバックジャンプで躱されたが、
「まだまだ!」
そこから身体を捻ると、横薙ぎに斬り払う。今度は、命中し鱗を削る。
「ギュイィ!」
すかさず反撃に出るドスギアノス。鋭く伸びた爪を、振り下ろしてくる。
「穂乃果ちゃん!」
そこへ、ことりが飛び込んでバックラーで防ぐ。
「ことりちゃんナイス!」
反動で仰け反ることりの背中を、穂乃果は支える。
なおも追撃を試みるドスギアノスへ、
「はぁっ!」
海未の弓が射抜く。
堪らず怯んだドスギアノスは、
「ギュイイッ! ギュイイッ! ギュイイッ!」
空に向かって吠える。
「ギアノスを呼んでいるようですね……。不利な状況になる前に、叩きましょう!」
海未は矢をつがえると、引き絞って放つ。ことりも細かい連撃を繰り出し、ドスギアノスを撹乱。その隙を突いて、穂乃果が重い一撃を叩き込んだ。
「いいペースです。これなら……」
海未が呟いた直後、
「ギュイ!」
ドスギアノスが高く跳び上がると、海未目掛けて発達した後ろ脚をぶつけて来た。
「くっ……!」
ギリギリで回避した海未は、受け身を取って転がる。
「すぐに距離を……っつ⁉︎」
立ち上がって駆け出そうとした海未を、背後から小さな衝撃が襲った。ダメージこそ少なかったが、不意を突かれて膝をついてしまう。
慌てて顔を上げると、
「…………」
黄色い爬虫類の眼光と目が合った。
ドスギアノスは口を開くと、何か白い塊を吐き出した。
「海未ちゃん!」
それは、割り込んできた穂乃果へと直撃した。
「穂乃果⁉︎」
「え……う、動けないよ⁉︎」
白い塊が直撃した穂乃果を、一瞬にして白い氷が覆った。
歩けばするものの、膝下が辛うじて動く程度で、走る事すらできない。
「落ち着いて下さい! すぐに除去しますから!」
慌てふためく穂乃果に海未は矢を一本握ると、思い切り横に薙いだ。
「うひゃっ!」
その一撃で、氷は砕けて穂乃果は自由を取り戻した。
「ありがと海未ちゃん」
「対処しておくようにと言ったじゃないですか!」
海未の叱咤が飛んだ時、
「二人共危ないっ!」
「ギュイィッ!」
ドスギアノスの強烈な蹴りが襲った。
「うわっ!」「ぐっ……!」
直撃を受けた二人は、吹き飛ばされて雪原を転がった。なおも追撃を仕掛けようとするドスギアノスへ、
「させないもん……!」
ことりが駆け寄り、《アサシンカリンガ》を振りかぶった。
飛び上がっての斬り降ろし、そこから逆袈裟に斬り上げ、もう一度斬り降ろし左から右へ薙ぐ。大きく踏み込んで刃を振り下ろすと、最後は自身を回転させて斬り払った。
「ギュイッ……!」
怒涛の連撃に怯んだのか、ドスギアノスは背を向けると岩肌の影に姿を消した。
「エリアを移動したみたい……」
ことりは安堵すると、
「穂乃果ちゃん! 海未ちゃん!」
すぐに二人に駆け寄った。
「大丈夫?」
「うん、穂乃果は何とか。それよりも海未ちゃんが……」
「私も問題ありません。少し攻撃を受けただけです」
「でも海未ちゃん、ガンナー装備は……」
穂乃果やことりのような剣士装備とは違い、弓を扱う海未のガンナー装備は軽量化を重視しその分装甲が薄くなっている。同じ素材を使っても、防御力は半分ほどにしかならない。
「まだ、ダウンするほどのダメージではありませんよ。安心して下さい」
海未は真っ直ぐ二人を見つめると、気丈に立ち上がった。
「海未ちゃん……無理はしないでね?」
「それはむしろ、私から穂乃果に言いたいですよ」
「酷いよ海未ちゃ〜ん!」
海未はギルドから支給される応急薬を嚥下すると、自身の回復効果を高める。
「ふう……さあ、行きましょう。ホットドリンクの効き目もそろそろ切れるでしょうから、飲み直しておきましょうか」
隣のエリアでドスギアノスを発見した三人は、総攻撃を仕掛ける。
ことりが撹乱し、ドスギアノスが動くタイミングに合わせて海未の矢が飛来し、生まれた隙に穂乃果が一撃を叩き込む。
そんな応酬が五分ほど続いた時、
「っせぇい!」
ことりと海未の攻撃に横を向いたドスギアノス目掛けて、振りかぶって限界まで力を溜め込んだ穂乃果の一振りが襲った。
「ギュイッ⁉︎ ……ギュァ…………」
その一撃に耐えられなかったのか、ドスギアノスは力なく弾き飛ばされると痙攣して動かなくなった。
「やった……。倒したよ!」
「うんっ、やったね!」
「お疲れ様です」
三人は駆け寄ると、右手を掲げてハイタッチ。笑顔を見合わせた。
それから討伐したドスギアノスから素材を剥ぎ取り、成果を確認する。
「ふむ、どうやら無事素材は集まったようですね。これで武器を強化できます」
「ホント? やったね!」
「じゃあ、帰ろっか。ドンドルマ……じゃなくて、ポッケ村に!」
「はい!」「うん!」
三人がいた狩場から、少し離れた場所にて。
「待ってよ〜……」
「早く早く〜!」
「そんな急がなくても、ポポは逃げないよぉ」
「でも麓にいなかったから、早くしないといなくなっちゃうかもよ?」
「それは……どうしてだろう? こんな山頂近くまで見つからないなんて……」
「まあまあ、そんな事考えても分からないし、探そ探そ?」
「うん……」
「あ、噂をすれば、あそこにポポが!」
「あ、ホントだ。良かったぁ……って、これ……やられてる?」
「まさか、他のハンターさんに討伐されちゃったの⁉︎」
「うーん……狩場は被らないようにギルドが調整してるはずだし、わざわざ草食モンスターを倒して放置するのも変だし……剥ぎ取りもされてないもん」
「じゃあ、誰が?」
「それは分からないけど……」
「ギアノスとかかなぁ?」
「ギアノスも全然見なかったから、多分違うと思……」
「どうしたの?」
「……なんで、ギアノスが一匹もいないの? 普段なら、群がってもおかしくないのに……」
「…………っ⁉︎ う、後ろ……」
「後ろ? 何かいたの?」
「ゴオオオォォォォォォォォォォォッ!」
「「きゃあぁぁぁぁぁぁぁぁっ!」」
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