のんデレラ
童話シリーズ第二弾。
前回が何故か好評だったので
今回の犠牲者……及びナレーションは誰でしょうか?
むかしむかし、ある所に…………ってちょっと待ったぁ!
「の、希ちゃん?」
「いきなりどうしたの?」
どうしたもこうしたもあらへん! 前回ナレーションやったウチがどんな目に合ったか、忘れたとは言わせへんで!
「それは……申し訳なかったというか」
「ていうか、にこ達もワシワシされたんだからお互い様じゃ……」
何か言うた?
「……何でも」
という訳でウチはナレーションはやらへん! 花陽ちゃん代役よろしく!
「私ナノォ⁉︎」
「かよちんごめん……希ちゃんには逆らえないにゃ」
「凛ちゃぁん……」
え、えっと……。むかしむかしある所に、のんデレラという女の子がいました。
のんデレラには意地悪な継母と、同じく意地悪なお姉さん達と一緒に住んでました。
「はー、掃除はしんどいなぁ。主役は嬉しいけど、大変やなぁ」
あ、あの希ちゃん、シンデレラはそんな性格じゃ……。それに希ちゃん、いつも神田明神で掃き掃除してるよね……?
「細かい事を気にしたらアカンで花陽ちゃん。こんなの、ウチら流のアレンジを加えてこそやん」
えぇ……。
「__のんデレラ、掃除は終わったかしら?」
「お、絵里ち。堂々として似合ってるやん」
「ふふふ……。私も反省を生かして、今回はできるだけマニュアルを用意してきたのよ! これでどんな展開が来ても対応できるわ!」
マニュアルってこれ……? 旅行のしおりみたいに薄いけど……。というか絵里ちゃん、こんなマニュアル作るくらいなら、代わりに台本作って欲しかったかも……。
「…………」
だ、黙っちゃった……。
「マニュアル不備だらけやん」
「だ、大丈夫よ! ストーリーの進行には差し支えないわ! __という訳でのんデレラ! 掃除は終わったかしら?」
「うーんウチ、あんまり掃除とか得意やないし。ウチより得意そうな絵里ちにお願いしたいやん?」
「いや、それはあなたの仕事でしょう?」
「えーでも、どうせなら絵里ちのお手本が見たいなぁ〜。絵里ちは何でもこなせる、ウチの相方やからね」
「希……。__もう……仕方ないわね。ちゃんと見てるのよ?」
ちょ、絵里ちゃん? 雑巾持ってどうするつも……。
「やあぁぁぁぁっ!」
って行っちゃった……。これも……マニュアル?
「きっとそうやんな。流石は絵里ち!」
何かごめんね、絵里ちゃん……。
「何で絵里が雑巾掛けしてるのよ……」
「どうせ、希に上手く丸め込まれたんでしょ」
そこにやって来たのは、姉の二人でした。
「のんデレラ、仕事は掃除だけじゃないわよ〜?」
「お、にこっち、小悪魔な役ピッタリやん」
「ふふ〜ん。当然でしょ。にこはどんな役だって、完璧にこなしてみせるわ。だってにこは、大銀河宇宙ナンバーワンア「脇役が何言ってるのよ」……せめて最後まで言わせなさいよ!」
「真姫ちゃんも何か、偉そうな感じ似合うやん」
「……それ、褒めてるの?」
「当然やん。ウチは嘘は言わへんで?」
「……でも、本当の事も話してくれないわよね」
「その話は無かった事にしてーや。ウチだって大変だったんやから」
「はいはい」
……あの、劇やろうよぉ……。私ナレーションなのに、全然喋れてないよ……。
「あっ、そうね」
「希がマイペースすぎるのよ……」
「だってウチ、型にハマった事って好きやないし」
「ったくもう……。気を取り直して続けるわよ」
「__のんデレラ、あなたには舞踏会の衣装を作ってもらうわよ」
「衣装なら、ことりちゃんに任せた方がいいんやない?」
「話をややこしくするんじゃないわよ! いいからさっさと作る事! いいわね⁉︎」
「はーい」
意地悪な姉達に言われ、のんデレラは舞踏会の衣装を作り始めました。
「用意された衣装を出して、っと……。これでオッケーやんな!」
……あの、確かに用意はしてあったけど、もう少しそれっぽく演技してもいいんじゃないかなぁ……?
「甘いで花陽ちゃん。スケジュールが厳しいんや。巻きで行かんと」
何の話……?
「スピリチュアルのその先や」
もうダレカタスケテ……。
そして舞踏会の日がやってきました。継母と姉達は、のんデレラを置いて舞踏会へ行ってしまいました。のんデレラは一人、お留守番です。
「はあ〜あ。ウチも舞踏会行きたかったなぁ」
のんデレラが悲しんでいると、コンコン、と誰かがドアをノックしました。
「誰やん? ウチは機嫌悪いんや。恨みは無いけど、ちょっとワシワシさせてもらおか?」
だからそれ、主人公が言う事じゃないよぉ……。
のんデレラがドアを開けると、
「魔法使い、参上ですっ♪」
そこには、フリフリのローブを着た魔法使いがいました。……可愛いローブだなぁ。流石ことりちゃん。
「のんデレラさん。ことりの魔法で、あなたを舞踏会へ連れて行ってあげます♪」
「ホントに?」
「勿論です♪」
魔法使いは魔法の杖を取り出すと、呪文を唱えました。
「マカマカマカロ〜ンお〜いしい! すきすきぷわぷわ! ことりのおやつにしちゃうぞ〜!」
「これだけで癒されるわぁ」
「え〜い!」
魔法使いが杖を振ると、のんデレラの着ていたボロボロの服が煌びやかなドレスに変わりました。
「おおっ、ええやん!」
「そしてそして〜?」
もう一度魔法使いが杖を振ると、畑のカボチャが立派な馬車に、……えっと、……近くにいた穂乃果ちゃんが、御者になりました。
「穂乃果が連れて行くよ! さあ乗って!」
「はぁ〜ん♡ ホノカチャン可愛いっ♪」
……これ、希ちゃんが主人公だよね?
「まあええやん。ことりちゃんならよくある事や」
そんな認識でいいんだ……。
「いざ舞踏会に向かって、出発!」
カボチャの馬車に乗ったのんデレラは、魔法使いのおかげで舞踏会に行く事ができました。
「風を抜けて〜走ってく! 今日も君は〜走ってく!」
それは自転車!
「むぅ〜。じゃあ! __パァっと朝の眩しさが、ほっぺたをつねる〜!」
それも違うような……。
「お、もうお城見えたやん」
そうだった。私はナレーション、私はナレーション……。
のんデレラの乗った馬車は、無事に舞踏会の行われているお城へ到着しました。
「じゃあ私はここで待ってるからね! 行ってらっしゃい!」
御者の穂乃果ちゃんに見送られ、のんデレラはお城へ入りました。
「おー、やっぱりゴージャスやんな」
のんデレラが大広間に現れると、一瞬で注目の的になりました。
そこへ、国の王子が近寄ってきました。
「美しいお嬢さん、凛と一緒に踊って欲しいにゃ!」
凛ちゃんが王子様なんだね。可愛いよ!
「えへへ。ちょっと照れるけど、ありがとにゃ〜」
王子に誘われたのんデレラは、その手を取って踊り出しました。
「パッショネ〜! だんだんリズム燃える〜!」
「ちょ……その振り付けよく知らんのやけど⁉︎ というかそれについて行けるの穂乃果ちゃんだけやん!」
というか凛ちゃん、舞踏会でタオル振り回すのは……。
「(>ω</)〜!」
「聞いてないやん……」
凛ちゃぁん……。
ハイテンションな王子とのダンスに夢中になっていたのんデレラは、
「振り回されただけやん……」
……真夜中の鐘の音を聞いて我に返りました。
「おっとっと、早く帰らんとね。じゃあ凛ちゃん、また後で」
「え〜? まだまだ踊り足りないにゃ〜」
「……ウチ、もう限界なんやけど」
やっぱり凛ちゃんは凄いなぁ。
慌てて帰っていくのんデレラは途中で、履いていたガラスの靴が脱げてしまいました。
「これ……あの人の落し物かにゃ?」
のんデレラを追いかけてきた王子は、そのガラスの靴を見つけ、拾い上げました。
「よし、これであの人を探すにゃ!」
王子はガラスの靴の持ち主にもう一度会うため、大臣と共に国中を回り始めました。
やがてのんデレラと継母達が暮らす家にやって来ると、
「この靴の持ち主を捜しています。心当たりはありませんか?」
と大臣が訊きました。
「ふふふ、それは私の物に決まってるわ!」
そう言って立ち上がったのは、継母でした。
「ここで自信満々に演技する事で、完璧な私を見せる事ができるわ!」
丸聞こえだよ絵里ちゃん……。
「__全く、ガラスの靴などと非効率的な靴を履くなんて……。柔軟性が皆無なので動きづらいでしょうし、何より割れて怪我をする可能性も高いじゃありませんか。一体誰が考案したのでしょうか……」
いや、海未ちゃん、これ、昔話だから……。そんな真面目にならなくても……。それに、
「えっと……この流れで私、履かないといけないのよね?」
絵里ちゃんが可哀想だよ……。
「あなたが言ったのでしょう? 早く履いてみて下さい」
「うう……」
ちょっぴり泣きそうな継母は、仕方なさそうにガラスのを履きました。が、
「サイズが合いませんね。どうやらあなたの靴ではないようです。それでは王子と結婚させる事はできませんね」
「……知ってるわよ、そんな事」
拗ねちゃった……。
「さあ次は二人よ! 履いてみなさい!」
継母は、娘の二人にガラスの靴を履くよう促します。
「嫌よ」
「にこもー」
「どうしてよ⁉︎」
「だって結果知ってるし」
「選ばれない事が分かってるのに、応募してもしょ〜がないも〜ん」
「そ、そんな! これじゃ私だけ損したみたいじゃない! じゃあいいわ! のんデレラ、早く履いちゃって!」
ナレーション殺しだよぅ、絵里ちゃん……。
「えー、でもウチ、絵里ちと一緒にいたしな〜」
「えっ……」
「ごめんなー、凛ちゃん。やっぱりウチ、絵里ちを選んでもええ?」
「分かったにゃ!」
分かっちゃうノォ⁉︎
「だって凛は、かよちんが一番だもん!」
凛ちゃん……。
「__よーし! みんなで踊ろーっ!」
「穂乃果⁉︎ あなたの出番は終わったはずですよ!」
「だって今回、ちょっとしか出てないんだもん! つまんない!」
「劇なのですから、仕方ないでしょう! 大体、穂乃果は前回主役だったじゃな」
「いいもん! もうライブしちゃうもん!」
「ちょっと待ちなさい! 穂乃果ーっ!」
「あはは……やっぱりこうなっちゃうよね……」
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