高坂穂乃果生誕祭2017
ハッピーバースデー穂乃果!
私がその人に出会ったのは、三年前だった。
第二回『ラブライブ!』最終予選の、ライブ映像。たまたま遊びに訪れた友人の家で勧められた、三分弱程度の短い映像。それに私は、心を撃ち抜かれた。季節外れの八月、雪のように儚い恋心を歌った一曲『Snow halation』に、その歌詞とダンス、全てに心を奪われた。九人の中心で、プレッシャーなんて微塵も感じさせない笑顔を振りまくその姿に、私は時を忘れて見入った。
スクールアイドルの存在は何となく知っていた。人気だったし、どこにいたって話題は耳に飛び込んできた。その中で『μ's』というグループが頭角を現してきた事も、記憶の片隅にはあった。
と、言うのも、私は元々スクールアイドルにはさほど興味が無かった。所詮は素人の集まり。プロには遠く及ばない。そんな思いがどこかにあったのだと思う。
そんなつまらない私の性根を、あの人は根こそぎ吹き飛ばした。
「やりたいから。楽しいから。」
確かに廃校を救う為という目的はあったかもしれない。それでも、あの人の姿からはそんな難しい考えなんて感じさせない、シンプルな想いが溢れていた。
私はその日友人宅を後にしてからすぐ、『Snow halation』を購入した。何度も何度も聴いた。レコードだったら間違いなく擦り切れるほどに、何十回、何百回と。それからネットを漁って、可能な限りの知識を吸収した。
μ'sが三人しかいなかった過去を知り、本気で驚いた。初めてだと言うライブ映像。確かに素人目から見ても、ダンスに拙い部分はあった。ただ一つ変わらなかったのは、笑顔。今この瞬間を全力で楽しむ。そんな想いがヒシヒシと伝わってきた。私が憧れ、魅了された一番の魅力。
そこから七人、九人とメンバーが増えてのライブ。きっと、μ'sのメンバーはあの人の最初のファンなんだと思う。あの人の笑顔に直接触れ、手を差し伸べられた人達。だから、メンバー全員、例外なく輝かん笑顔を浮かべている。
そう、あの人の笑顔は伝播する。人から人へ。まるで波紋のように。余談だが、つい先日友人に、“最近明るくなった”と言われた。きっと私にも伝播したのだろう。
順調かと思われた第一回『ラブライブ!』は、μ'sは唐突の棄権をした。あの人の体調不良が原因だったそうだが、事実しか確認できない私にはこれ以上の感想が出て来ない。当時を知る人は、どんな気持ちだったのだろう。
そして訪れる第二回『ラブライブ!』。私が出会った『Snow halation』は、この時に生まれたのだ。当日の大雪であわや欠員という事態に、全校生徒で雪かきをしたという美談を知り、私の心は震えた。例外なく全校生徒が自発的に協力するなんて、なんというリーダーシップだろうと。
前大会優勝者のAーRISEを下し決勝大会へ進んだμ's。その直前のキャッチフレーズで、私はあの人の笑顔の正体を知った気がした。
『みんなで叶える物語』。
あの人の笑顔はあの時、私にこう言っていたのかもしれない。「あなたも、μ'sの輪の中にいるんだよ」と。あの人だけでも、μ's九人だけでもない。ファンや携わる人全員を含めた大きな輪が、μ'sの魅力なのだろう。そしてその中心にいるのが、あの人なのだ。全方位に均等に分け隔てなく向けられる笑顔が、巨大な輪を生み出したのだ。
この頃になると、μ'sの曲はかなり増えてきていた。ライブで歌われた曲以外にも、色々と。私は全部聴いた。一つも取りこぼしが無いように、全てを。
一週間もしない内に、私はすっかりあの人の、μ'sの大ファンになっていた。
最高に幸せだった。私の知らない、こんなに楽しい世界があるなんて夢にも思わなかった。
そして私は、知ってしまう。
μ'sはもう、活動していない事を。
各学年三人ずつのμ'sは、三年生が卒業してしまえばフルメンバーではいられない。μ'sは九人である事に意味がある。あの人が残したコメントだった。
それは、分かる。きっと沢山悩んだ事も。悩み抜いた末の、結論だと。
それでも私は、ショックを隠せなかった。結局私は、μ'sの軌跡を追いかけるだけ。存在してしまったゴールへ、向かうだけ。共に歩む事はできない。あの人と足並み揃えて、『みんなで』物語を紡ぐ事はもうできないのだ。
本気で後悔した。どうしてもっと早く、出会わなかったのか。チャンスはいくらでもあったはずなのに。
悔しかった。泣きそうにもなった。自分のマイペースさを呪った。
でもそんな時、浮かぶのはあの人の笑顔だった。画面越しにも関わらず、真っ直ぐな笑顔は私に問いかけた。“何を悩んでいるの?”と。“私はいつだって、ここにいるよ!”と。“つらいなら、私が笑顔にしてあげるよ!”と。
名状できない感情で涙を流したのは、これが初めてだった。溢れる涙を拭う事もせず、ただひたすらに感謝した。あの人の笑顔で私の人生は変わり、そして私という人間が救われたのだ。
ねえ、高坂穂乃果さん。
単なるいちファンでしかない私の声は、直接あなたには聞こえない。直接会う事も叶わない。あなたは私の、顔も名前も知らない。私という人間がいる事も、知らないだろう。あなたは幻想のような、私にとって別次元の存在。
それでも構わない。何故なら確かに、あなたはいる。その事実があるだけで、私は充分。あなたから受け取った笑顔と想いを胸に、毎日を生きていく。
八月三日。今日は私があなたに出会って、三年目の記念品。そして、高坂穂乃果さん、あなたの誕生日。私の声は届かないけれど、精一杯お祝いします。
感謝と尊敬の意を込めて。私はいつまでも、あなたのファンでい続けます。いつまでも、あなたは私の太陽。みんなの太陽。全てを等しく照らす、その眩しくも輝きであるあなたに、私はこの言葉を送ります。
お誕生日おめでとうございます。高坂穂乃果さん。
私はあなたが、大好きです。
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