2017-06-20 00:31:06 更新

概要

千歌ちゃんが頑張るお話第二弾。


旅館、十千万。そこにある自室で、アイドル雑誌を読む少女の姿があった。

「ふむふむ……μ'sのにこちゃんには小悪魔な一面もあったんだ……」

キラキラな内容を読むその姿勢は、真剣そのもの。

「確かに、こんな可愛いのに小悪魔なセリフ言われたら、たまらないよね〜」

そうしてちょっとだけ妄想をし、

「よし、決めた! 私も小悪魔を目指す!」

高海千歌は、拳を握り締めて宣言した。

「……で、小悪魔って何だろう?」

勢いだけは良かったものの、腕を下ろして首を傾げる。

「悪魔だから、悪いんだよね? あ、でも“小”悪魔だから、そこまで悪くないって事なのか……。ちょいワルな感じ? ちょいワル……ちょいワル……。う〜ん…………」

至極どうでもいい事を、知恵熱を出して悩む千歌。

「おはヨーソロー!」

そこへ、敬礼をしながら曜が入って来る。

「あー千歌ちゃんまたアイドル雑誌読んでる。朝から読んでたら、また遅刻しちゃうよ〜」

「む〜…………」

「……千歌ちゃん?」

脳内で試行錯誤を繰り返す千歌に、曜の声は聞こえない。

「入ってくる曜ちゃんを大声で驚かせる!」

「わっ……いきなりどうしたの? てかそれ、本人の前で言っちゃう?」

大声を上げた千歌に、曜は苦笑い。

「ん?」

そこで初めて、千歌は後ろを振り返る。

「……………………。曜ちゃん⁉︎ いつからいたの⁉︎」

「あ、気付いてなかったんだ……。ついさっきだよー。私を驚かすとかどうとか言ってた時」

「もぉーいたなら言ってよ〜! いきなり失敗しちゃったじゃん!」

「えっと……何が?」

当然曜には、千歌が何を企んでいるのかなんて分からない。

「実は……かくかくしかじかで」

「ふむふむ」

「……という事で、千歌はヤンキーを目指してみるのだ!」

ドヤッ、と言い放った千歌に、

「また変なものに影響されちゃったのか……」

曜は慣れたように小さく息を吐いた。

「バレちゃったからには、曜ちゃんにも協力してもらおう!」

「協力って……具体的に何をするの?」

「そこなんだよねぇ……。思い付きだから、これといって案があるワケでもなくて」

「あ、そこは自覚あるんだ……」

「む〜……。学校に遅刻するとか!」

「いやそれ、先生に怒られるだけだし……。というか、現在進行形でそうなりそうなんだけど」

曜は壁の時計をチラ見する。あと五分以内に出ないと、バスが行ってしまう。

「あえて歌詞を書かない!」

「それは梨子ちゃんが怖いよ……」

千歌も状況を想像したのか、神妙に頷く。

「旅館の部屋を掃除しない!」

「それは後で、美渡さんに絞られるよ?」

「う、旅館の神様には、逆らえない……」

アホ毛がヘニャり、これも断念。

「スイーツ食べまくってカロリー大量摂取!」

「ダイエットで泣いても知らないよ……」

「ダイヤさんのプリンを食べちゃう!」

「それは、絶対にやめた方がいいかな。うん」

「図書室の本を借りっぱなしにして放置!」

「図書委員の花丸ちゃんに迷惑かかるよ?」

「差し入れと称して、お菓子持って理事長室に邪魔しに行く!」

「鞠莉さんならむしろ、喜びそうだなぁ……」

「果南ちゃん家のボンベを勝手に使っちゃう!」

「普通に営業妨害だから、やめようね? 昔持ち出そうとして、ボンベ一本割ってこっぴどく怒られたよね?」

「ルビィちゃんにガ○ガリ君のシチュー味をプレゼント!」

「多分泣き出すよ?」

案を出す瞬間に却下され、

「もぉー何していいか分かんない!」

千歌は頭を抱えた。

「あはは……」

そろそろ諦めるだろうと、曜も特に止めたりはしない。

「あとは……あとは…………」

千歌はしばらく唸った後、

「善子ちゃんの配信に乱入する! 新衣装持って!」

「いいね! やろう!」

「へっ?」

まさかの賛同が返ってきて、千歌は変な声を上げる。

「えっと……曜ちゃん?」

「ちょうど一着だけ仕上げた衣装があったんだよね〜。みんなの感想聞きたいし! リトルデーモンさん達にも協力してもらおう!」

「そんなに乗り気になるとは……思わなかったなー?」

もはや戸惑う千歌。

「ほら千歌ちゃん! 早くしないと学校遅刻しちゃうよ!」

「あ、うん」

曜に連れられるまま、部屋を飛び出す。

「あ、そうそう千歌ちゃん」

「ん?」

「千歌ちゃんはそのままで充分可愛いんだから、キャラ作りとか必要ないよ」

「そ、そうかな……」

「ちょっとおバカな方が、千歌ちゃんらしいもん」

「こらー! おバカってどういう事だー!」

「あ、千歌ちゃんが怒った〜。逃げろ〜」

「待てー!」





後日、

「はぁい、リトルデーモン達。会えて嬉し「お、やってるやってる」「お邪魔しまーす」い……は?」

「ねえねえ、新しい衣装作ってみたんだけど、どう思う?」

「可愛いよねぇ。キラキラだよねぇ〜」

「ふむふむ……ホントに⁉︎」

「良かったね曜ちゃん! みんな可愛いって言ってるよ!」

「よーし、じゃあ次の衣装はこれでいこう!」

「けって〜い!」

「早速、帰って衣装作り始めないと!」

「頑張ろ〜!」

「「お邪魔しました〜」」

「……………………」





「何しに来たのよ!」


このSSへの評価

このSSへの応援

このSSへのコメント


このSSへのオススメ


オススメ度を★で指定してください