高坂穂乃果・お昼のお悩み相難コーナー
穂乃果ハピバ二つ目!
誤字ってないですよ?
「おひふのほうほー?」
パンを頬張っていた穂乃果は、首を傾げた。
「食べながら話さないで下さい。行儀が悪いですよ」
すぐに横から海未の説教が飛んだ。
「……んぐっ。で、お昼の放送って何?」
答えるのは、正面に立つヒデコ。
「言葉通り、お昼の時間に放送部で流す校内放送の事。部員に欠員が出ちゃったみたいで、それならμ'sのリーダーでリーダーシップもある穂乃果に、一日だけでもお願いできないかなって話なんだけど」
前にも一回やってるでしょ、とヒデコは付け足す。
「ああ、第二回ラブライブの予備予選の前だっけ……。海未ちゃんが恥ずかしがったやつだよね〜」
ニヤニヤと穂乃果が隣に視線を送ると、
「なっ……穂乃果だって、大声出して全校生徒に迷惑かけたじゃないですか!」
赤面した海未が噛み付く。
「ま、まあまあ……」
それをことりがなだめるという一連の流れを苦笑して見ていたヒデコは、
「で、やってくれる?」
「うん! 私で良ければ!」
快諾を聞いて満足そうに頷いた。
「じゃあ、突然で悪いけど明日一日お願いね」
「それで、何を放送するの?」
「ああ、それは……」
「お悩み相談?」
あの場でヒデコに言葉を濁された穂乃果は、翌日に放送室の前で概要を聞かされた。
「そ。波乱万丈なμ'sを立ち上げて、引っ張ってきた穂乃果なら、ピッタリだと思ってさ。事前にオトノキの生徒に悩みを募集してもらってあるから、それを読んで解決案を出す、って企画」
「ふむふむ……面白そうだね! 分かった!」
「穂乃果は性格自体前向きだし、解決策もポジティブなの期待してるよ」
「前向きというか……能天気なだけでは……」
「ほ、穂乃果ちゃんなら大丈夫だとことりは思うけどなぁ」
放送室に入るのは穂乃果と放送部員の二人だけだが、
「穂乃果がマトモな解決策出せるとは思わないんだけど……」
「変わってあげたい気もするけど、私はもっと無理だしなぁ……」
「仮にも私が推薦した生徒会長なんだから、これくらい乗り切ってよね……穂乃果……」
「穂乃果ちゃんが言う事なら、大体何とかなりそうって思えそうやから怖いなぁ」
「ここはやっぱり、スーパーアイドルのにこの出ば「にこちゃん黙るにゃ」……ってうおぃ」
μ'sのメンバー全員、外から不安そうに見守っていた。
「それでは、今日も元気にお昼の放送始めましょう! 本日は特別ゲストとして、この方にお越しいただいてます! どうぞ!」
進行役の放送部員に手で示され、
「皆さん、こんにちは! μ'sの高坂穂乃果です!」
穂乃果は元気に挨拶。
「ここまでは順調ですね……」
「まだ自己紹介しかしてないじゃない……」
外では、海未が保護者のようにドア窓にしがみついていた。
「と、いう訳で、オトノキを代表するスクールアイドルであるμ'sのリーダー、高坂穂乃果さんをゲストにお招きしてお送りします!」
「よろしくお願いしまーす」
「早速ですが、オトノキの生徒から沢山の悩みが届いています。私が読み上げますので、穂乃果さんはズバッとその解決策を答えて下さい! 数が多いので即興形式で行きます!」
「任せて!」
「では最初のお悩み。『恋人ができて一ヶ月になるのですが、未だに手を繋げません。勇気の出るアドバイスお願いします』だそうです!」
「ファイトだよっ!」
「言うと思いました……」
部屋の外で、海未は頭を押さえる。
「大好きな気持ちがあるなら、簡単だよ! 穂乃果だって、海未ちゃんとことりちゃんが大好きだからよくハグしたりするもん!」
「なっ……」「ほ、穂乃果ちゃん……」
「あーあー、相変わらず天然タラシな事で」
撃沈する幼馴染二人を見て、にこが息を吐く。
「なるほどなるほど……。大好きな気持ちは隠さずに相手に伝えればいい訳ですか!」
「うん! 穂乃果はいつもそうしてるよ!」
「参考になりましたか〜? それでは次のお悩みです! 『もうすぐ夏休みですが、宿題が憂鬱でなりません』との事です。ふーむ、確かに、夏休みの宿題って多いですよねぇ。穂乃果さんはどう思いますか?」
「穂乃果もそう思う!」
「…………!」
「海未ー、落ち着きなさい」
無意識に立ち上がった海未を、にこが肩を掴んでしゃがませる。
「まったく穂乃果……あなたという人は……! 生徒会長として模範的な生徒でいようとは考えないのですか……!」
「穂乃果を模範にしたら、廃校を阻止してもオトノキ壊滅するわよ」
サラリと酷い事を言う。
「それはそうですが……」
外野の声は、穂乃果には届いていない。
「ドンドン行きます! 『仲の良い友達とケンカをしてしまいました。どうにかして仲直りがしたいです』」
「自分の気持ちをぶつけるの! ワガママ言っちゃえ!」
「『料理が上手くなるには、どうすればいいですか?』」
「にこちゃんに訊こう!」
「責任転嫁するんじゃないわよ……!」
「『穂乃果さんみたいな生徒会長になりたいです。どうすればいいですか?』」
「分かんない! 穂乃果、絵里ちゃんに言われたからなっただけだし!」
「…………つ、次行きます。『μ'sの衣装は、どれも最高に可愛くてキラキラしていると思います。どうやったら、あんな衣装が作れますか?』」
「衣装はことりちゃんと、あと花陽ちゃんが頑張ってくれてるから穂乃果は全然知らないよ!」
「…………えー、『穂乃果さんはパンがお好きなようですが、私はパサパサ感がちょっと苦手です。私でも食べられそうなオススメのパンはありませんか?』」
「じゃあ穂むらのほむまん! 美味しいよ!」
「パンじゃないわよそれ……」
「『一クラスしかないのに、まだ友達らしい友達ができません。どうすればいいですか?』。おっと、少しヘビーなお悩みが来ましたね」
「一クラスって事は、一年生だよね? じゃあ凛ちゃんに話しかけてみよう!」
「にゃ⁉︎」
「みんな仲良いから、友達すぐにできるよ! 真姫ちゃんだってできたんだから!」
「どういう意味よ!」
外野が騒ぎ立てるが、穂乃果は気付かない。
「続きまして、『私は凄い方向音痴です。何とかして治す方法はないでしょうか』」
「私は凄いおっちょこちょいだよ!」
「張り合ってどうすんのよ……」
「ダンスの練習してても転んじゃうし、よく授業のノート取らずに海未ちゃんに怒られるし、寝坊して雪穂……妹に起こされるし……」
「おや、μ'sのリーダーとオトノキの生徒会長を兼任する穂乃果さんでも、そんな事があるんですね」
「へ? うん、そうだよ。穂乃果、そんな特別な人じゃないもん」
「でもμ'sを結成して、実際に廃校を阻止してしまった功績は素晴らしい事だと思いますよ?」
「そう言われると照れちゃうけど……。それは、みんながいてくれたからだよ。ことりちゃんが賛成してくれて、海未ちゃんが歌詞を書いてくれて、花陽ちゃんが入ってくれて、凛ちゃんが元気にしてくれて、真姫ちゃんが曲を作ってくれて、にこちゃんがアイドルを教えてくれて、絵里ちゃんがダンスを教えてくれて、希ちゃんが見守ってくれて、みんなが応援してくれたから、今のμ'sとオトノキがあるんだよ。穂乃果一人じゃ、何もできなかった」
『『『…………』』』
放送部員も、八人のメンバーも、ひょっとしたら音ノ木坂学院の放送を聴いている全員が、穂乃果の話に黙って耳を傾ける。
「穂乃果は頼りないし、バカだから迷惑かけちゃうけど、みんながいてくれるから頑張れるんだよ。だから、これからもよろしくね!」
その場にいる者にしか伝わらない笑顔で“お願い”した穂乃果に、
「……まったく、穂乃果はどこまでも穂乃果ですね」
メンバーは慣れたものだと苦笑い。
「そろそろお時間のようです。穂乃果さん、今日はありがとうございました!」
「こちらこそ! あれで良かったのか分からないけど、穂乃果も楽しかったよ!」
「いえいえ、とても有意義な時間だったと思いますよ。また機会があったら、その時はよろしくお願いしますね」
「もちろん! あ、その時は、μ'sのみんなを呼んでやろうよ! きっと楽しいよ!」
そんな穂乃果の思いつきは、
『巻き込むなー!』
メンバーの過半数の反対意見により、却下された。
「えー何でー? 絶対楽しいよー!」
「アンタにお悩み相談は無理!」
「そんなぁー!」
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