提督と◯◯38 「提督と初詣」
提督と艦娘たちが鎮守府でなんやかやしてるだけのお話です
今回はひたすら鬱陶しい卯月が4と
延々とからかわれ続ける暁が4、くらいの配分です
そういうものに、抵抗がある方はご注意願います
注意書き
誤字脱字があったらごめんなさい
基本艦娘たちの好感度は高めです
アニメとかなんかのネタとかパロディとか
二次創作にありがちな色々
長い
38回目になりました
楽しんでいただければ幸いです お目汚しになったらごめんなさい
ネタかぶってたら目も当てられませんね
ーそれでは、本編をはじめましょうー
↑後「提督とバレンタイン3」
ー食堂ー
年末。丑三つ時にはまだ早いような そんな時間
騒がしかった娘達も、銘々に部屋に戻って寝こければ
ようやっと、夜らしい静寂が訪れていた
ぼぉぉ~ん
のったりとした鐘の音。今年最後の鐘の音で、今年最初の鐘の音
生の鐘を用意するのは面倒だったので
適当な音源を流してみれば、まぁまぁ鹿威し程度の雅さは確保できていた
太鳳「今年も、色々あったわね…」
振り返るような、染み染みとした大鳳の声
返事はない。けれど、何か思う所はあるのだろう
皆一様に、何を見るでもなく視線を遊ばせていた
北上「そうさねぇ…」
例えばなんだろう?
あんな事も、こんな事もあったろうかと口を開く北上様
北上「春は金剛さんが咲き乱れて…」
金剛「?」
夕張「あぁ…夏は金剛さんが吹き荒れて大変だったわねぇ…」
金剛「??」
北上に合わせて言葉を重ねていく夕張
瑞鳳「あははっ。秋は金剛さん狩りもしたっけ?」
金剛「???」
更に言葉を重ねる瑞鳳
しかし、言葉が積み上がる程増えていく疑問に
金剛の眉根が、どんどんと寄っていく
木曾「今も金剛が降り積もってるしなぁ…」
それとなく視線を窓へと向けてみれば、都合よく粉雪が舞ってもいた
金剛「????」
もう訳がわからなかった
混迷を深めていく疑問。それは、すなわち…
ー金剛とは何か?ー
いっそ、哲学的な思想の様にも思えてくる
金剛「Wait!。ウェイト、うぇいとっ。STOP!、ストップリーズっ。お願い待ってっ」
疑問に耐えかねた金剛が、手を上げ、声を上げる
金剛「金剛って、金剛って何?」
とうぜん自分の事だと思いもしたが
咲き乱れるし、吹き荒れるわ、狩られては、降り積もる
何のことだかさっぱりだった
「…何って?」顔を見合わせ見れば、皆一様に首を傾げてみせる
「近くて遠いものだクマ」
「そこにあってないものだにゃ」
提示されたのは、答えになってない答えだった
金剛「概念なのっ!?金剛はっ!?」
驚きの新事実だ
いえ、艦娘なんて概念みたいなものだと言えばそうだけれど
そこまで抽象的だったとは予想外で、ここまで来ると現象と同義だった
金剛「提督はっ!提督はどうなのっ!金剛って、金剛ってなんなのっ!」
押し付けるように提督に身を寄せる金剛
逃げるように顔をそらしながらも、「さて?」と、一思案を始める提督
ー私にとって金剛は何なのかー
大切な娘?大好きな娘?私の艦娘?
言い方の問題だろう。結局、無限にあっても一つしか無いんだから
だからそう、こういう時は…そうだな
提督「空気かな?」
「ぶっ」と、誰かが何かを吹き出した音が聞こえた
瑞鳳「ちょっ、提督…空気は、空気はないんじゃ…」
提督「そう?」
夕張「ほら…金剛さん沈んじゃってるじゃない…」
金剛「…」
何か問題があったろうかと首をかしげる提督
その隣では、白くなった金剛の口から、何かしら抜け出そうになっていた
金剛「はっ!危ない危ない、危うく提督の口車に乗るところでしたよっ」
瑞鳳「あ、復活した…」
夕張「早いわね…」
何時もなら、この後一両日中は使い物にならなくなってそうなものなのに
金剛「空気…良い言葉ね」
瑞鳳「そうかなぁ…」
居ても居なくてもって、邪険にされてるようにも聞こえるその言葉
金剛「だってそうでしょう?」
わざとらしく提督に体を預け、上目遣いで見上げながら一言
「提督は…金剛がいないと生きてけないのよね?」
そう言って、得意気に微笑む金剛さん
提督「…」
金剛「提督。沈黙は同意と受け取るわ」
提督「…」
金剛「♪」
夕張「わーなにあれー。すごいイチャついてるんですけどー」
瑞鳳「見てる方の身にもなれってのよ…」
木曾「やってらんねー」
「ほんとですねー、飲まなきゃやってられませんねー」
ふと、聞こえてきたのは聞き慣れない声
それに続いて、喉越し爽やかに飲んだくれていくような音
大井「一つ、良いかしら…。アンタ、なんでいるのよ?」
細めた目を横に向け、訝しむようにソレを見る大井
ポーラ「そんな寂しいこと言わないでぇ。ポーラも仲間に入れてくださいよぉ、大井っちさーん」
大井 「大井っちっていうなっ。後、擦り寄っても来るなっ、酒臭いのよアンタはっ!」
押しのけようと伸ばした手が、ポーラの頬に当ると、ムニムニとその形を変えていった
大井 「提督っ!イチャついてないで、コレっ、どうにかっ、なさいってのっ!」
ポーラ「良いですよねぇ、ていとくさーん。ポーラ意外と役にたちますよー」
提督 「意外とってもなぁ…」
そうは言われても
ゆーが拾ってきてこの方、酔ってる所しか見たこと無い上に
なんで居座ってるのだろうという疑問しか湧いてこない
ポーラ「今なら、なーんでもしちゃいますよー」
提督 「ほぅ…なんでも、ね…」
じゃあ、そうだ、例えばそう…
提督「服、脱いでみよか?」
試しては見たかった
あるいは、酔いどれてる状態が素なんじゃないのかと
意外と理性は残ってるんじゃないのかと
冗談半分でもあったけど、ほんとに脱ぎだしても、まぁ損はしないし
ポーラ「はいっ!一番ポーラっ、ぬっぎまーすっ!」
そうして、躊躇なく上着を脱ぎ捨てたポーラだった
「…」
沈黙&沈黙
止めるものは一人もなく、予想通りと言えばその通りで
呆れを通り越して怒る気にすらならなかった
ー
「たのしそうだね?」
小さな声だった
ポーラのテンションと、周りの冷えた空気の間に入り込むような
ポーラ「あははっ。たのしーですよー、ゆーさんも脱ぎますかぁ?あはははっ…あー?」
酔った勢いのまま、下着にまで手を伸ばしたポーラの手が止まる
ポーラ「ゆー…さん?」
カタカタと、ゼンマイ細工の様に斜め下へと視線を落としていくポーラ
赤らんでいた頬からは血の気が引き、元の白い肌を晒している
ゆー 「ちゃんを付けてって言いました」
ポーラ「はぃ、ゆーさんちゃん」
ゆー 「ゆーちゃんさん」
ポーラ「ゆーちゃんさん」
ゆー 「はい、良い子。そうだよね?ポーラ?」
念を押すように、重たい視線を送る ゆー
ポーラ「はい、ポーラは良い子です。ちゃんと服も着ます…」
ゆー「うん、えらいえらい」
頭を撫でるような優しい声音
まるで許されたかのような、心地よさを感じてしまう
ゆー「…話があるからこっちに来て」
それも一時。ふわっと暖かくなった心は
突き刺さるような冷たい声音に凍りついた
ポーラ「ひぃっ。提督さんっお助けをっ!」
縋るように伸ばされるポーラの手
その視線の先では…
提督「金剛…見えないんだけど」
金剛「みせないのっ!」
金剛に目を塞がれてる提督の姿
ポーラ「イチャついてらっしゃるっ」
ゆー 「ポーラ?Admiralになんかようなの?」
ポーラ「ぃ、ぃぇ…とくには、ありません…」
伸し掛かるようなゆーの視線に口を塞がれると
そのまま、部屋の外に、引きずられて、いった…
大鳳「図太くなったわよね…」
誰がとも、何がどうとも言わないけれど
何をどうしたら ああなるのかと
初めてあった時は本当に真っ白だったのに…
球磨「良い感じだクマ」
くまくまくまと、笑いを零すクマ
圧倒的な練度に裏打ちされた自信
彼女に足りなかったもので、球磨たちにも必要なもの
「大きいのは金剛だけでいいのっ」
「おっとっ、大井っちの胸だって、あいたっ!」
「巻き込むなっ」
「金剛のがデカかったのはそうだけどな」
「まじでかっ」
「まじまじ、木曾さんの倍くらいあったもん」
「何言ってやがる?触ったことあんのかって」
「え、良いの?」
「訳あるかっ!」「訳ないデショっ!」
「目を輝かせなさんな…」「ばっかじゃないの…」
大鳳「金剛さんも金剛さんで…」
遠慮がなくなったと言えば聞こえはいいのかもしれないけど
球磨「図太くはなったが、面倒にもなったクマ」
多摩「アレはアレで扱いやすいからよしとするにゃ」
翌朝、廊下で正座をしているポーラが発見されました
ー執務室ー
人の気配に目を覚ます
こんな朝方に誰だろうか?
皐月や三日月が来るにはまだ早いし、望月が起きてるわけもない
大鳳「おはよ、提督?」
提督「…おはよ…。なに、してるの?」
重いまぶたを開けてみれば、笑顔の大鳳と目が合った
だが分からない、本当にそれだけだった
静まり返った部屋の空気からは、今しがた起こしに来たという感じはなく
それよりもっと前から、何をするでもなくそこに居ただけのように感じる
大鳳「何って?そうね…」
口元に指を当て、小首を傾げて見せる大鳳
それも一時、すぐに笑みを取り戻すと
大鳳「今年最初に見えるのが、私だったら良いなって?」
試すように、からかうように、覗き込んでくる大鳳の視線
提督「…」
目をつぶり直した、寝返りを打った、そのまま狸と同義になった
大鳳「照れてるの?」
大鳳に背中を突っつかれるが知らん振りだ
まったくの不意打ちだった、新年早々そんなこと言われるなんて思わなかった
自分がどんな顔してるかなんて考えたくもない
背中に広がる彼女の体温
首筋に、耳元に掛かる吐息がくすぐったい
目をつぶっているのに、ソファに顔を埋めているのに
だからこそ余計に、身を寄せ、顔を寄せられているのが分かってしまう
「でも、起きたほうが良いわよ?」
期待…していた言葉とは違うが
不穏な響きに、思わず顔を上げる
同時に、窓の外から聞こえて来る音
それが次第に大きくなり、立て付けの悪いガラスを揺らし始める
提督「ちっ」
跳ね起きた。私は知っている、私はアレが何かを知っている
だいたいロクなもんじゃない事を知っている
窓に駆け寄り、開け放ち、「さみぃって」なんて望月の抗議は無視をして
提督「卯月っ!」
身を乗り出した先に見えた、赤い髪の女の子の名前を叫んだ
「ぴょんっ!」
確認と同意を一鳴きで終えると、すぐに艤装を展開して上空へと砲身を向ける卯月
ー鎮守府・上空ー
「うわっ!?、おひいさま、おひいさまっ。撃ってきたかもっ」
通信機の向こうから、キャンキャンと甲高い悲鳴が聞こえて来る
みつよ「ああ、大丈夫よコレくらいっ」
「おひいさま は良くても大艇ちゃんが良くないかもっ!」
みつよ「私より大艇ちゃんの心配?」
「死んでも死なな無いくせにっ!」
みつよ「酷いわねっ。大口径主砲の一つで死んじゃう か弱い身の上よっ」
「それで死なないほうがオカシイかもっ」
むしろ中口径以下なら平気なのかって、増えた疑問が空恐ろしいほどに
みつよ「それもそうねっ!」
鎮守府上空
そこに在ったのは二式大艇。その上に立っていたのは 御代 みつよ
大日本帝国・大本営の大元帥
見た目は黒髪ロングの ちんちくりんだが立派なお偉いさんではあった
みつよ「ま、どっちにしろ、落とす気ならとうに落とされてるわよ」
撃ってきているのが、その辺の女童な艦娘なら兎にも角
あの娘が相手ならどうしようもない
さっきから当てる機会は幾らでもあるだろうに、良い感じに掠めてくるのが恐ろしい
きっと、あいつが指を鳴らした瞬間、木っ端微塵になるのでしょうね
「なおさらっ」
みつよ「ま、そこまで言うなら此処でいいわ」
「へ…ちょっとっ!?」
一歩、踏み出した
先なんて無い。青い空の先は海と鎮守府の敷地だけ
どころか、対空砲火でさえ飛んできてる始末
踏み外す、それは当然。足場なんて初めから無い
さらに一歩、もう一歩、踏み外しては踏み外す
不思議と、落ちること無く、階段の様に落ちていった
ー
瑞鳳「うわぁ…。なに、あの無駄な練度…」
見上げる瑞鳳の視線の先
足場を作るように、順繰りに段差を作っていく零戦の編隊
龍鳳「無駄とは心外ですね」
何を仰るお馬鹿さんとでも言いたげな龍鳳
龍鳳「これも全て、おひいさまの為。ごらんなさい…ほら」
龍鳳が手を向ける先
ぴょんっと、最後の一段を飛び降
ふわりと、音もなく地面に足をつける少女の姿
龍鳳「あんなに可愛らしい」
うっとり…と、頬を染める龍鳳
仕上げとばかりに、みつよ様の周りに紙吹雪が散らされてもいる
審査員席でもあれば、全員10点満点の100点だろう
身内びいきも良い所だ、不正どころの話じゃない
瑞鳳「あ、うん…なんでも、いいや、うん」
「よくありませんっ。しっかり見て下さいっ、ほらっ、ほらっ」
「ぁぁ、もぅ…めんどくさい…」
ー執務室ー
みつよ「私よっ!来てやったわっ!」
弾かれるように開いた扉
提督「帰れっ!」
同時に投げつけられる枕
「ぴょんっ!?」と、響く鳴き声
半身を引きスマートに避けたみつよ様
行き場を失くした枕は、その後ろ、卯月の顔に直撃していた
みつよ「枕投げなら夜になさいっ、相手になるわよっ」
提督「夜まで居座る気か…コイツは…」
みつよ「貴方しだいよっ」
カツカツと、軍靴を響かせ中に押し入ると
ソファの上にドカっと腰を下ろした
ー
話としては つまらないものだった
大して戦果を上げていない艦隊が、自分たちの背中を守っているのは不安がある
ここいらで一つ、腕試しをさせてみちゃくれないかと
場合によっては、戦力補強も兼ねて、こちらの艦隊を…以下略
そこから、指揮権とか諸々掠め取っていく腹積もりだったのは容易に想像出来る話だった
提督「たかいたかーい」
卯月「ぴょーん♪」
提督「ひくいひくーい」
卯月「うぷぷぷぷ♪」
提督「もーっとたかいたかーい」
卯月「ぴょっ、危なっ、ぶつかるってっ!?」
そんな話の最中、部屋の隅で卯月と戯れている提督
みつよ「聞いてないわねっ!」
弥生 「司令官にそんなつまらない話をする方が悪い」
みつよ「あら、怖い顔ねっ」
弥生 「普通だよ。弥生いつもこんな顔…」
つっまらなそうに、迷惑そうに目を細める弥生
怒ってるわけじゃない、表情が固いのはいつもの事
ただ、正月早々、面倒事を、持ち込まれて、甚だ、不愉快なだけで
もっと言えば、家に、司令官に、何をしてくれるのか、とか何とか思うくらいで
弥生「別に、怒ってなんかないよ…」
ふんっ、鼻を鳴らしてそっぽを向く弥生だった
皐月「ごめんなさい、ごめんなさい」
弥生の隣で、頭を下げまくっている皐月
みつよ「いいわっ、つまらないってのは本当だし」
実際、失礼だとか、非礼だとか、無礼だとかはどうでも良かった
みつよ「結果よっ。私が欲しいのはそれだけ」
大鳳「そうは言うけれど…」
人数分のお茶を淹れ終えると、三日月の隣へと席に付く大鳳
寝床を奪われた望月の頭を自分の膝へ招くと、優しくその頭を撫で始めた
みつよ「難しいことはないわっ。要は演習で勝てばいいのよっ、簡単でしょ?」
三日月「簡単って…そんな」
それこそ、簡単に言ってくれるというものだ
主力、じゃないにせよ。相手だって弱くはないだろうに…
負けたらどうなるのか…。想像するとちょっと怖い
知らない人の、知らない艦娘。自分たちはまだしも、司令官が…
そう考えると、どうしても気が重くなってしまう
「ねぇ?しれーかーん?」
我関せずだった方から聞こえてくる声
何を憂うでもなく、いつもの様に、いつもの調子だった
提督の顔を覗き込みながらも
こっそりと、視界の端っこで弥生の様子を伺う卯月
無表情で、そっぽ向いて…。まぁ、怒ってるな、激おこだぴょん
卯月「うーちゃんがそいつら やっつけたら、司令官はうれしーい?」
提督「そりゃ、嬉しいけど…」
良いか悪いかで言えば良いだろう
面倒な話だ、卯月が片してくれるなら、それはとても嬉しい
しかし、それでいいのかと、みつよ様へ視線を投げる提督
こういうのに限って、メンツだのなんだの
お行儀の良い話が絡んでくるんじゃないのかと
みつよ「…」
その視線に気づいた みつよ様が一つ、肩をすくめてみせた
提督「そ…」
「好きにすれば?」つまりはそういう事らしい
投げやりな…とも思うが、面倒が増えないだけ良いだろう
提督「卯月」
卯月「ぴょんっ!」
抱え上げていた提督の手から
ぴょんっと床に降りると、元気よく扉に走っていく卯月
開きっぱなしだった扉の前で振り返ると
「いってきまーす」と、手を振りながら走り去っていった
弥生「はぁ…」
好奇心、兎を殺すって
どうして、卯月はいつもこう…何でもかんでも首を突っ込みたがるのか
そりゃ…いらんことしぃ と言えば可愛いらしいけれど
ふと、手を振って走り去る卯月と目が合った
笑ってらっしゃる…どうにも お呼びらしい
仕方がない、仕方がないったら仕方がない、放っておく訳にもいかないのだから
弥生が出たいわけじゃない、弥生が戦いたいって訳じゃない、けど…
弥生「司令官」
提督「任せた」
弥生「うん」
音もなく席を立つと、卯月の後に続く弥生
一発殴ってくる機会が出来たのは良い事、なのかな…
弥生「三日月も、良い?」
三日月「私?良いけど…それじゃあ、望月も…」
弥生「もう行ってる、から」
三日月「へ?」
気付いたときには、その背中は卯月と一緒に廊下の角を曲がる所だった
三日月「こんな時だけ早いんだから…」
ー海上ー
「もぅっ、だーかーらーっ!ボーキサイト取りに来ただけって言ってるじゃないっ!」
「もー…、だーかーらー…。ここで待ってって、言ってるじゃない…」
「真似するなーっ!」
「ゆーはそんな子供っぽくありませんって」
「むっきーっ!?だれが子供よっ、だーれーがっ!」
「だれともは言ってませんが?」
「こっち見てるじゃないっ!?」
冬の海に響く声
やたら甲高い声と、海水みたいに冷たいそれ
響「暁、それくらいで…」
暁「けどぉっ」
白い声と一緒にその手が伸び、暁の肩に置かれる
響「姉さん、叫んでるだけじゃ話が進まない」
暁「うっ…。わ、わかてるわよ、そのくらい…」
響「うん。良い娘(レディ)だね」
姉?と、首を傾げたくなる光景ではあったが
一息付くと、響がゆーの方へと向き直る
響 「ゆーさん、で良いかな?」
ゆー「はい…」
響 「向こうで何かあったのかい?」
ゆー「さぁ?Admiralが待たせとけって言ってました。それ以上は ゆーの与り知らぬ所ですって」
そう言って、小さく頭をさげる ゆー
その様子からは、これ以上は答えられないと
もし、押し通るというのなら…。の、続きが滲み出していた
響 「はぁ…仕方ないな。二人とも、一旦待機だ」
振り返り、後ろで様子を伺っていた二人に告げる響
押し通るほど、切羽も詰まってない上に
仮にそうだとしても、お互い、ただで済みそうにはないとの予感があった
雷「えーっ、じゃーなに?この寒い中で待ちぼうけなわけ?」
電「早くお休みしたかったのです…」
響「悪いね。もう少し我慢してくれ」
響に言われ「はーい」と、渋々ながらも返事が返ってきた
ー
「みーつーけーたー…ぴょんっ!!」
「わぷっ!?」
べたり と、横合いから飛んできた何かが、暁の顔にへばり付き
飛び出した悲鳴が中途半端に塞がれる
ゆー「うーちゃん姉さん?」
卯月「ぴょんっ。卯月、参上だぴょんっ!」
暁 「もうっ、今度は何よっ、今度は誰よっ、一体何なのよっ!」
響 「どうどう…」
顔にへばり付いた何かを投げ捨てる暁
塞がった口が封を切り、不平を不満を並べ立てる
雷「なによ、これ?」
電「手袋…みたいなのです?」
暁が投げ捨てたそれを拾い上げ、しげしげと眺める二人
暁 「いきなり人に手袋投げつけてっ、アンタは一体なんなのよっ!」
卯月「ぴょん?古式ゆかしい決闘の合図だぴょん?」
「そんなことも知らないの?」と首を傾げて、暁の顔を覗き込む卯月
にっと、釣り上がる口の端が何処か小馬鹿にしているようだった
暁「しっ、知ってるわよっそのくらいっ。レディだもん、当然だわっ」
取り繕ったように胸を張ってみせる暁
卯月「それじゃ、合意と見て良いぴょん?」
暁 「当然よっ。アンタ達もいいわねっ!」
後ろで成り行きを見守っていた妹たちに振り返ると
ビシっと指先を突きつける
雷「えぇー…いまから?」
電「…めんどくさいのです」
余り反応は良くなかった
暁「面倒くさいとか言うなっ!いーまーすーぐーにっ!暁型がバカにされた黙ってられないわっ!」
雷「バカにされてたの暁だけじゃん?」
暁「うるさーいっ。やるったらやるったらやーるーのーっ!」
電「少しは人の話を聞いて欲しいのです。電たちはボーキサイトを回収できればそれで良いのです、面倒事は御免被りたいのです」
だと言うのに
暁「じゃあっ、暁たちがっ、勝ってっ、たんまり貰えばいいじゃないっ!どうなのっ!」
忙しく正面に向き直ると、今度は卯月に指先を突きつける
卯月「なるほど。名案だぴょん、実現不可能な事に目をつぶれば…」
「ぴょん♪」と、可愛らしく、にっこりと笑ってみせる卯月
その笑顔の割に腹黒さが透けて見えていた
暁「むきーっ!」
雷「あ、うん。今のは流石にイラッと来たわ」
ー
弥生「大変だね、そっちも…」
響 「釣りやすいだろう?」
弥生「うん、とっても」
そっとほくそ笑む弥生
苦労人、かと思えばどうにも煽る側に見える その笑顔
あるいは、あの兎娘をけしかけたのは、そうなのかとも思えてくる様な
響「やれやれだ…」
諦めた様に首を振る響
こうなっては止めるのも一苦労
幸いお互いやる気なようだし、発散させてしまった方が良いだろうか
ー執務室ー
窓の外を見ていた
卯月達の背中はもう見えないけど、なんとなくだった
心配か?と言われれば その通りで
だからと言って、気に留めるほどでもなく、宙ぶらりんの心境だった
皐月「ボク…。行かなくて良かったのかい?」
すぐ片付けてくるのに、と言いたげだった
その自信は頼もしい。実際、駆逐艦の4つくらいなら
皐月一人でも片が付いたようにも思う
提督「うん。そう、なんだけどね…」
視線を動かす
卯月たちが向かった方とは別の側
提督 「なぁ、みつよ様。この茶番…2個艦隊も使う程のものなのか?」
みつよ「2つ?」
素直に傾く首、しばしの沈黙、鎌首もたげる不安
「あ…」
提督「よし、こいつ今「あ」って言ったぞ」
皐月「おっけ。そっちが本命だね」
となればボクの出番だねっと
苦笑しながらも、席を立つ皐月だった
ー工廠ー
「はぁはぁっ!た、大艇ちゃんはっ!?」
工廠の重い扉を押しのけて、飛び込んできたのは秋津洲だった
北上「ん、あぁそれかい?」
得意げに「直しといたからっ」と、彼女の肩に手を置いて
腕を広げ、それを指し示す
秋津洲「た…大艇、ちゃん…」
北上 「どうよ?ぴっかぴかじゃん?」
秋津洲「こ、こんな、こんな…」
がっくりと、肩を落としその場に膝をつく秋津洲
秋津洲「なんで こんなお目出度くなってるのかもっ!」
そして叫んだ
北上 「題して「錦大艇」なんちて?」
新年の装い、紅白に彩られた二式大艇
もとのカラーリングなんて見る影もなくなっていた
秋津洲「それ去年もやった奴かもっ!」
毎年毎年、紅白に塗られたのではたまったものではないと叫んでは見るものの
それに怯む様子もなく「へぇ…」と、興味深そうに声を漏らす北上様
北上「それは、いつの去年だい?」
殊更神妙に、秋津洲に問いかける北上様
秋津洲「いつって、去年は去年かも…」
北上 「キミにとってはそうだぁね。しかし、私の去年にそれは無かったよ?」
秋津洲「へ?いや、でもだって…へ?」
北上 「さぁ、よーく考えてごらんよ?」
秋津洲の肩に両手を乗せて、じっと瞳を見つめる北上様
北上 「それは何時?それは何処?それは誰だったんだい?」
秋津洲「え、あ、その…だって、去年は、秋津洲は、かもで、あれ?」
思考が鈍ってくる、記憶が濁ってくる
去年、去年とは何時だ、あれは何時だった、もしかしたら一昨年だった?
あの時は誰がいた?誰が色を塗っていた…、秋津洲はそこに、そこが、あれ?
大井「お・ば・かっ」
「かもっ」「あいたっ」
鈍い音を立てて、大井の拳が両人の頭に落とされた
大井「なに屁理屈並べ立ててるのよ…」
北上「いやぁ、ついね?あんまり素直なもんだからさぁ」
ぐーの落ちた頭をなでさすりながら、苦笑いをする北上様
大井 「あんたも。自分の記憶くらい自信持ちなさい」
秋津洲「ご、ごめんなさい…」
ー
多摩「にゃ?」
工廠前。開きっぱなしの扉から漏れてくる喧騒
何かと思えば、だれかと思えば、秋津洲が北上にからかわれている様な絵面
いつもの事かと、見るべくもなく通り過ぎようとしたが
ふと、思い出したように足が止まっていた
何だったろうか、何処かで見覚えのある光景
似ているわけでもないが、どこか同じような空気が、匂いがする
ああ、そうか…
多摩「阿武隈か…」
納得と、疑問が解ければ足は再び動き出していた
何処の鎮守府にもいるものだにゃぁ
からかい がいのある奴というのは
家だったら誰だろうか…木曾か、睦月も面白い反応するにゃ
ああ、でも多分
多摩「金剛だにゃ…」
最近は特にそう思えるのだった
ー海上ー
荒天のそれより酷く、海面が弾けては飛んでいく
流石に、と言った所か
当たりこそはしていないが、良い所を狙ってきてはいる
三日月「わぁ…、綺麗な艦隊行動…」
素直に感嘆の声が漏れた
ここらじゃ滅多にお目にかかれない光景だ
だいたいがして、皆が皆、好き勝手に殴り合いを始めるのだから
望月「あたしらもやってみる?」
弥生「むりむり…」
弥生が首をふって見せれば、後の二人も続いて頷いた
もとより、そんな訓練などしていないのだから
敵の倒し方なら幾らか教わった気もするけども
ー
前方の暁型
綺麗に隊列を組んで、その射線を一方へと向けている
「ここまでおいで~ぴょんぴょんぴょ~ん♪」
だとか
「鉛玉がもったいないぴょん、豆鉄砲にでも取り替えたら?」
だとか
「どこ狙ってるぴょん?魚にエサでもあげてるつもりなの?」
なんて、ぴょんぴょん聞こえる度に
「あぁっ!もうっ!ちょこまかちょこまかってぇぇぇっ」
だとか
「反撃する暇もないくせにぃぃぃ、何強がってんのよっ、ばーかーばーかっ!」
だとか
「その無駄口に叩き込んであげるんだからぁぁぁぁっ!!!」
なんて、きーきーきゃーきゃー騒ぐ度
「姉さん、落ち着いて…」と、響に宥められるが、もはや聞こえてはいなかった
ヒートアップしていく姉に釣られて、妹たちも熱を上げていくし
その内、艦隊行動すら乱れてきそうだった
響「まずいな、これは…」
開幕早々 一人飛び出した卯月( ぴょん吉)を見た時は、すぐに片付くだろうと思ったが
実際はどうだ?あれからどれだけの無駄玉を使わされた?
これからどれだけの無駄玉を使わされる?
魚にエサをやってるわけじゃない、てのはその通りだ
至近弾もそこそこ合ったが、それですらわざとらしい上に、煽りのネタに使われる始末
何より、他の3人はどうして捨て置いている?
逸った駆逐艦なんて放っておいて、隊列を組み直すというのは間違いではないが…
意外と、暁の勢いに乗ってさっさと ぴょん吉を倒すのは
暁の頭を冷やす意味でも正解かもしれない
何を考えているのかは分からないが、数の有利は取れる内に取って…
「艦娘神拳奥義、二兎真空把だぴょんっ」
「へ!?あ、ちょっ、いぃったぁぁっ!」
「ぷはっ!バカ丸出しだぴょーん」
「わらうなーっ!!」
違うな…暁の理性が残ってる内に終わらせないと
響「いや、でも、地味にすごくないか…今の…」
ー
三日月「艦娘神拳…完成してたんだ…」
ただの大道芸だと思ってたけど、ああしてみれば使い所はあるのかもしれない
なんて、素直に関心の声を漏らす三日月
望月「にしても、わからん殺しだよなぁ…あれ」
勢いを増した砲撃。それをまあ綺麗に避ける避ける
理屈、じゃなくて勘なんだろう
卯月にとっては、飛来する航空機を落とすのも
飛んでくる砲弾を避けるのも、大して違いが無いようだった
弥生「うん。だから、魚雷が主体になる前に片付けよっか」
あの子はどうにも足元がお留守になりがちだし…気づかれる前に終わらせないと
弥生 「三日月、あれ…抑えられる?」
三日月「あれ…ね…」
意識を卯月から その周りへと広げると
暁が一人、飛び出しかけていた
確かに、切り崩すならそこだろうけど
いくら卯月にご執心とはいえ、突っ込めば砲火は確実にこっちに来る
それを4つ全部となると、抑える前に抑えられそうだ
三日月「2つ…ううん、一つ、抑えてくれれば何とかします」
弥生 「一つで、良いんだ…そっか」
なんとも頼もしい妹だ。こっちの難易度がだだ下がりも良いところ
お姉ちゃんの面目がまるでたちやしない
それならせめて、一番効果が出そうな所を抑えようかな…
弥生「望月、魚雷…」
望月「ん?こんな所から、あたんねーぞ?」
弥生「良いよ?別に?」
そんなのは分かってる
むしろ、こんな距離で当るようなら、いまごろ遊び飽きた卯月一人に制圧されているだろう
望月「…別に、ねぇ…」
当るわけない。自分で言ったことだ、自分が一番よくわかっている
けども、それが当然みたいな反応をされると、どうにも捻くれたくなった
弥生「?」
望月「別にさ、倒しちまっても良いんだろ?」
弥生「もちろん。それじゃ…一緒にいこうか」
主砲を構える弥生
望月「あいよっと」
それに合わせて、望月も魚雷を発射した
ー
響「暁っ!」
暁「え、なにっ!?きゃあっ!?」
制止する響の声に、僅かに行き足が緩む
その直後、暁のすぐ手前に砲弾が落ちた
響「魚雷も来てるっ!雷っ、電っ」
雷「あぁっ!もうちょっとでアイツ落とせたのにっ!」
電「口惜しいのですっ!」
響の指示に従い、海面に機銃を叩き込むと
遅れて、1つ2つと海面が膨れ上がって弾け飛んだ
望月「やっぱダメか」
弥生「ううん、大成功」
分かりきった結果に首を振る望月だったが
それに対して、弥生は満足げであった
望月「なにしたよ…とっと」
弥生「ん、お姉ちゃん疲れちゃったなぁ…」
しなだれかかるように、甘えるように望月にもたれかかる弥生
望月「重いっての…」
その影で、小さな手のひらからポロリと爆雷を投下していた
ー
響「まだ、来るか…」
魚雷の爆発が収まった後、聴音機の蓋を開いた響
さっきから、潜水艦の影が見えないのが気にはなる
撃ち込んでくるなら、この当たりが適当なんじゃないかと
「おばかさん…」
そう、見えた気がした
確かに彼女の口元がそう動いたように…
響「まずっ…いっっぅぅぅぅ!?」
素っ頓狂な場所で起こる爆発。だが、気づくのが遅すぎた
聴音機の蓋を閉じる前に届いた音が、響の耳を潰し、頭を揺さぶった
「響っ!?」
突然、苦悶に顔を歪め蹲る響
それに釣られて艦隊の足が止まる
響「良いから、前を…くるぞ…」
暁「くるって、あのバカの事?」
響「ちがうっ…あんなの、ただの…」
そうだ、あんなの ただの囮だ
弱い所を見つけるための、時間稼ぎにしか…
「三日月…突撃しますっ」
暁「え?」
その声に振り返ると
黒い影が派手な航跡を上げ、真っ直ぐに突っ込んできていた
暁「何よ今更っ。いいわっ、この暁とやろうっていうのねっ、だったらまずはアンタからっ!」
主砲構えた暁が、1発2発と続けざまに発砲する
雷「電っ私たちもっ!」
電「なのですっ!」
暁に続き、主砲を構える二人だったが
雷「…」
電「い、雷、ちゃん…」
ベタリと、雷の顔に何かが張り付く…
昆布の様なワカメの様な、海のその辺に浮かんでそうな海藻の切れ端
点々と、ダラダラと、雫を作り、肌を伝い、冬の冷たい海水が服に滲んでいく
うなじ から背中へ、首筋から胸元へ、制服を滲ませ、染み渡り
ほんのりと、赤く色づいた肌を浮かび上がらせ
冷えた体の震えと一緒に、わなわなと、得も言われぬ感情がが込み上げてくる
雷 「アンタ…アンタねぇ…」
卯月「遊んでくれなきゃつまんないぴょ~ん♪」
ぷっぷくぷ~っとか吹聴しながら
なんか良くわからない海藻をぐるぐる振り回している卯月
雷「アンタって奴はぁぁぁっ」
出会ってこの方、鬱陶しいという感想意外まるでてこない
最初は暁がからかわれているだけだった、それはいい、いつもの事だ
レディならもう少しと思うけど、それが暁、家の姉なのだから
しかし、交戦を続ける内に、口喧嘩を重ねる度に
チクチク、チクチクと、積み上がっていく怒りボルテージ
イライラ、イライラと、堪忍袋の尾が伸びに伸びて
雷「こんのぉぉぉっ!お調子者がぁぁぁぁっ!!」
切れた。その音が頭の中に鳴り響くと同時に
主砲を構え、矢鱈滅多に撃ちまくる
卯月「ハズレだぴょーん、べろべろばーっ」
首を傾げ、半身反らし、くるりと回って当たらない
ワカメを振り回し、昆布を広げ、絡め取っては投げ返す
それはもう、初めから当たらないのが分かってるかのような器用さだった
電「雷ちゃんっ、落ち着いて欲しいのですっ!」
雷「うっさいっ!邪魔すんなっ!」
飛び出した雷の袖を咄嗟に掴むが、まるで聞いちゃくれなかった
やばいのです。どうして、昆布とワカメで砲弾を弾いてやがるのですか
意味分からんのです、艦娘神拳より そっちのが意味分からんのです
おまけに雷ちゃんまで頭に血が上ちゃってるのです
相手さんも動き出して、いつまでもこんなバカうさぎに付き合ってられんのです
隊列を…早く体勢を立て直さないと、各個撃破され、て…
ぞっとした…初めからそのつもりだったのかと、兎の1羽に滅茶苦茶にされたのかと
そんなまさか、そんなバカな、いや、でも違う…違うはず
暁ちゃんが、雷ちゃんが、短気だからで、響ちゃんだって…でも…
それじゃあ、その原因を作ったのは誰、なのです?
「で、いつまで魚にエサあげてるの?いっそ漁礁にでもなると良いぴょん」
電「…」
耳に付く声
それは、耳障りな程に、ぴょんぴょん、ぴょんぴょんと、耳に、頭に、全身で跳ね回っている
やれやれと、手を振り、首を振り、あくまでもからかい続けるウサギさん
いちいち反応している雷ちゃんもおバカですなのが、今はそんな事はどうだってよろしいのです
聞き捨てならない、生かしちゃおけねぇ、その言葉…
漁礁…漁礁って…
相も変わらず うぷぷと笑っているウサギさん
何を仰るウサギさん、何か言ってるウサギさん
本当に、本当に、人の神経を逆なでするのが得意なウサギさん
電達は艦娘なのです
それをそれをそんなかんたんにさいごのごほうこうにじゅんじろなどと
おもしろいじょうだんなのですどはつてんをつきそうなのです
いまわのきわにじせいのくをひゃくまんまいかかせてやれねばきがすまぬのです
電「うふふふ…」
雷「いな、ずま?」
ふと、袖を引いていた力が緩む
流れ弾にでも当たったかと心配になり振り返ると
小刻みに体を震わせながら、妹の口の端から引きつった笑い声が漏れていた
電「絶対泣かしてやる…」
雷「え、ちょっとっ、電っ!?まって、待ちなさいってぇっ!」
いきなり飛び出した電に面食らった雷
止める方と止められる方が入れ替わり、慌てて雷が電を止めに入っていた
ー
望月「おーおー、ぐっちゃぐちゃだな、もう」
弥生「意外と、みんな血の気が多かったね」
もう隊列なんて何処へやら
右へ左へ散っていく様は、蜘蛛の子のようだった
望月「あたしらもいくかい?」
今突っ込めば、余裕で壊滅させられる自信があった
それで、この茶番になりさがった乱痴気騒ぎもお終いだと
弥生「三日月がダメだったら、ね?」
しかし、姉は首を横に振る
そんな必要も無いだろうと、気を抜いてさえいる
望月「そうかい…ふわぁぁぁぁ…」
あくびを零す望月
だってそれは、すっごく退屈しそうな話だったから
ー
三日月「…3・2・1…増速」
飛んでくる砲弾。それをくぐるように加速して やり過ごす
次は減速して、加速して、右へ左へ逸れること無く最短距離で目標へと突っ込んでいく
暁「ちょっとっ!?なんで当たんないのよっ」
もう少し冷静になればいいのに
それでは当てられるものも当てられない
本当に卯月様々だ。なんでこんな人をからかう事は上手いんだろうか…
3つ分の砲撃が来るかと思えば2つは卯月にご執心だし
弥生はきっちり頭を抑えているし
あとは自分の仕事をするだけって…こんな簡単でいいのかな?
考えてる間に近づいていく距離
そろそろ加減速だけで乗り切るには厳しいか
三日月「でも、此処までくれば…えいっ!」
下げていた防盾を投げつけ、飛んできた砲弾ぶつけて弾く
三日月「機関最大(ブースト)…後はぶつけるだけっ!」
姿勢を低く、砲弾の爆発の中を潜り抜け、一気に駆け出す
暁「えっ…こんのっ!」
暁が気付いた時には、今まで以上の速さで滑り込んでくる三日月
慌てて主砲を構え直すが、先に砲撃され主砲を弾かれる
暁「きゃっ!?」
怯んだ隙に、さらに踏み込んでくる三日月
暁「でも、お生憎様ねっ」
接近戦。確かにそれなら艤装の性能よりも練度の方が圧倒的に大事になってくる
それはそう、あなたは確かに正しいし、その勇気は認めるけど
しかーしっ!暁はっ!接近戦だってっ!
暁「レディでっ、優雅でっ!エレガントなんだからぁぁぁぁっ!!」
錨を手に取り、大きく振りかぶる
そして、飛び込んできた三日月を叩き落とす様に全力で振り下ろした
ー
三日月「こちら三日月、状況終了です」
弥生 「お疲れ様」
海面に寝そべる暁に主砲を向けながら
姉に作戦完了のお知らせをする三日月
チーン…
効果音を付けるのなら、きっと そんな鐘音が似合っただろう
暁「しくしく…しくしく…」
どうしてこうなっちゃの?
それより、なにより、何が起こったの?
でもでもだって、たしかに暁は…
飛び込んでくる あの娘に、錨を振り下ろして
それから…それから…、そこからどうなったの?
弥生「まさか、飛び蹴り(ラムアタック)掛けるとは思わなかったけど…」
暁と三日月、一瞬は拮抗したかに見えたが
加速した勢いと、全体重を乗っけた飛び蹴り(ラムアタック)に、錨ごと纏めてふっ飛ばされる暁だった
三日月「あはは…なんか、手っ取り早いかなって…えへへ…」
恥ずかしそうに はにかむ三日月
その見た目の割にやることはとっても大胆だった
望月 「魚雷投下しなかっただけ恩情よな」
三日月「そんなこと…」
考えなくもなかったけど
ー
ゆー「はい、たっち…」
頭を振り、衝撃から立ち直った響の背中に、可愛らしく手が置かれていた
響「これは…まいったな、そういうことかい?」
軽く両手を上げて、後ろをみやる響
視界の端々では、各々で大惨事になっているのが見て取れた
ゆー「理解が早くて助かりますって…」
響 「はぁ…まったく」
これはもう…消化試合だったかな
ー
戦闘開始前の事を思い出す
暁「ふっふーんっ、なんならそこの潜水艦も一緒でも良いのよ?
ハンデよ、ハンデ。艤装の性能で負けたとか言われたら堪んないわ」
とかなんとか、ない胸を えっへんと反らしている暁
弥生「…」
ゆー「…」
その言葉に一瞬見つめ合う二人だったが
すぐに頷きあうと、音もなく後ろに下がり、海中に消えていった ゆー
ー
「ふーん…。後で泣き言言っても聞かないんだからねっ」
とか暁は言っていたっけか
それでも、気をつけてはいたつもりだった…
彼女たちは、「出ない」なんて一言も言っていなかったのだから
響「…いや…そうか…」
「おばかさん」と、今になって彼女の言葉が耳に響く
そうやって潜水艦を警戒させて…そんなだから…
暁「あーっ!?そこの潜水艦っ、あんた響になにしてっ!」
ルール違反よっ、ルール違反って、ホイッスルでも持たせたら
ぴーぴー、ぴーぴー吹き鳴らしそうであった
響「はぁ…」
やっぱりか…。うちの姉は、アレで潜水艦が下がった気でいたらしい
けれど、どの道だろう…
警戒しないならしないで、最高のタイミングで横合いから殴りつけられたのだろうから
響 「降参…だね」
ゆー「ですって」
ー
雷「なんで…なんで当たんないのよ…」
電「絶対おかしいのです…」
がっくりと、その場に崩れ落ちる二人
結局、事が終わるまで卯月を追い回していた挙句に
気づけば弾がなくなり、鬼ごっこの終焉よろしく卯月に肩を叩かれていた
卯月「ねぇねぇ、見てみて?」
海面から何かを拾い上げ、落ち込む二人に見せびらかす卯月
「お魚さんが一杯浮いてるぴょん?」
「漁でもしてたの?」
「サンマの時期は過ぎてるのに?」
「ねぇ?ねぇ?」と小馬鹿にする様に二人を周りをクルクル回りながら
「いまどんな気持ち?」と、伺うように二人の顔を覗き込んでは
ニヤニヤと小憎たらしい笑みを見せびらかしていた
雷「むっかぁつぅくぅっぅぅぅ」
電「末代まで祟ってやるのです…」
ー執務室ー
所変わって執務室
皐月と大鳳が、連れ立って席を立てば
自ずと残されたのは二人きりであった
如月「司令官?今日ボーキサイト取りに来るって話が…」
それから少しの後、執務室に顔を覗かせた如月
我が物顔でソファに座っている みつよ様に会釈をしながら、提督の側に歩いて行く
如月「へ?あ、きゃっ…」
そうして、小さな悲鳴が残響を残して消えていった
ー海上ー
金剛「う~ん♪なかなか…いい腕してるじゃない?」
温かそうに湯気を立てているティーカップ
茶器の擦れる音が、海上に不釣り合いな程に目立って聞こえてくる
球磨「ふん、つまらん」
金剛「そう?」
見るべくもないと、鼻を鳴らす球磨
金剛からすれば、秩序だったその動きは私達にこそ必要なのでは?
とか言いたくもあったが、まぁそこはそれ
球磨(旗艦様)の言いたいことは大体予想が付くし
自分自身、すっかりそれに染まってしまった自覚もあった
球磨「きっと奴らこういうクマ。皆で頑張りましょうねってな」
そんな言い訳。そんな都合の良い言い訳など
球磨「そして最後はこうだクマ。チームプレーが悪かったって」
ありもしない何かに責任をなすりつけるのだ
もっとひどけりゃ、アイツがオマエがと仲間割れだ
金剛「ですね…」
金剛の手から零れ落ちた茶器が、海面に吸い込まれるように消えていった
金剛「結果、事が成ればそれでよい。チームワークとはそういうもの」
皐月「結局、ワンマンアーミーって事だね、ボクらはさ?」
指輪(ライセンス)もあるしと、それが見えるように手を広げる皐月だった
水無月「ねーねー、木曾先輩?皆、何の話ししてるの?」
最後に、指輪を合わせる様にハイタッチをして
締めくくっている3人を不思議そうに眺めている水無月
木曾 「あれか?言いたいだけだよ…」
とは言ったものの、その中身自体は理解している自分も大概だとは思う
水無月「ふーん…」
要領を得ずに、とりあえず頷いている水無月
木曾 「ま、気にすんな」
水無月「にひひ…くすぐったいって…」
その頭に手を置いて雑に撫で回す木曾
ゆー でさえそうなのだ。いずれコイツも、と考えると
今のうちに可愛がって置こうと、少しだけ優しくなれる木曾さんだった
ー
大鳳「はい、制空権確保っと…」
「突っ込みたいなら、ご自由に?」と、球磨に合図を送る大鳳
球磨「ふん、意外とあっけないクマ」
大鳳「そうでもないわよ?」
弱くはない、が物足りない。言ってしまえばそんな所で
そんなんでどうして喧嘩を売りに来たのかは分からないけど
球磨「そうでもない、だけだろう?」
言いながらも、私製46cm単装砲(オモチャ)を展開する球磨
妖精「不明なユニットがー」
球磨「やかましいクマ、さっさと準備するクマ」
妖精「あい」
小突かれると、パタパタと発射準備を始める妖精さん
「投錨…固定確認」
「…砲弾装填…薬室閉鎖…」
「諸元入力…補正…1番から10番まで…確定」
「機関反転…耐衝撃準備…」
ー46cm砲…撃てますー
球磨「全力あの世に持ってくクマーっ!!」
海が沈み込む
衝撃で押し出され、錨に引きずられる体を逆転させた推進機で何とか押さえ込む
爆音と共に発射された砲弾が、空気を捩じ切りながら突き進み
目標点に到達すると、その暴力を周囲に撒き散らした
金剛「HIT!ど真ん中とはいきませんでしたね」
球磨「くまくまくま♪当たればよかろうなのだ」
腐っても46cm砲、至近弾にしたって良い脅しになる
球磨「さて、球磨の提督に手を出したこと、後悔させてやるクマ」
握りこぶしを手のひらに打ち付けて、微速前進を開始する球磨
皐月「そうだね。ボ・ク・の、司令官にちょっかい掛けるなんてね」
それに続き球磨の隣に並ぶ皐月
球磨「…」
皐月「…」
上から下へ、下から上へ、合わない目線を繋げる二人
「くくくくく」「ふふふっ」
笑い合う、見た目だけならそうであった
冷笑を、微笑みと見間違えればそう見えた
球磨「一番多く倒した奴の勝ち…クマ?」
皐月「勝ったほうが司令官と初詣、だね?」
当然じゃんと皐月が頷くと、鷹揚に球磨も頷いた
「先手必勝!」と、二人の同意に割り込む声
金剛「恋も戦いもっ、負けないよっ。ヴぁぁぁぁニングっ!!」
抜け駆けと書いてフライング気味に、主砲を展開する金剛
試合開始の合図の次いでに、そのまま終わらせるつもりで
2基6門の46cm砲を狙いすます
皐月「知ってたよっ!球磨っ!!」
球磨「任せるクマっ!」
金剛「えっ、ちょっ…きゃぁっ!?」
文字通りの水面蹴り
飛び込んできた球磨に足を払われると、バランスを崩して、尻もちを付くように倒れ込んだ
悪いことに、無理やり乗せてる主砲のせいで、余計なまでに体が水底に沈んでしまう
金剛「もうっ!何するのっ!」
球磨「くまくまくま♪良かったな、濡れ透けとか提督の大好物だクマ」
皐月「じゃ、おっさきー♪」
水浸しになった金剛に背を向けて、敵陣に突っ込む二人
その背中に「おぼえてろーっ」なんて捨てゼリフがぶん投げられた
ー
滅茶苦茶だった
砲撃で海に穴が空き、爆撃で削られていく様な光景
敵も味方も関係ない、全てを一緒くたにして攻撃が重ねられていた
皐月「あはははっ。金剛さん、撃ってきたねっ」
その中に突っ込んでいる皐月達も例に漏れず
相手を攻撃しながらも、片手間にお互いを牽制しあっていた
いや、もしかしたらその逆かもしれない
皐月と球磨の応酬
そこに割り込んできた奴から落とされていく理不尽な世界
その不条理から逃れようとすれば、流れ弾の様に飛んでくる戦艦の主砲に晒される悪夢
球磨「クマ…。来たか、皐月っ!」
皐月「うんっ、まっかせてよっ!!」
主砲を機銃に持ち替え、次いでにカミ車をだして浮き砲台代わりに使用する
そして、狙いを上空へ。プロペラの音を引き連れて、飛んできた爆弾へと叩き込む
ー
大鳳「うーん…。やっぱり、皐月がいると抜けないわね…」
卯月が跳ね回っているより幾らかマシではあるけれど
やはり、あの対空火力はいかんともしがたいものがある
皐月一人抑えるだけなら なんとかなる、はず…にしてもだ
残りの相手に、球磨と金剛…流石に…怪しくなってくるかな
意地を張って無茶をしても本末転倒だし…
相手側がもう一歩、踏み込んでくれれば まだ隙きも出来るだろうに
大鳳「だらしないのこと…」
そう独りごちて、皐月から手を引く大鳳だった
ー
水無月「…ねぇ、木曾先輩。これ、水無月…いる?」
あはは…と、苦笑しながら、木曾の外套、その裾を引いている水無月
木曾「当たり前だろう」
馬鹿なことを言うなと、水無月の疑問を投げ捨てると
木曾 「俺を一人にするんじゃねぇ…」
水無月「あ、うん。わかるよ…わかるけど、さ…」
悩ましげに空を見上げる太鳳先輩、喜々として砲撃を続ける金剛先輩
ここからだと良く分かる。狙っているのは、相手じゃなくて こっち側
その流れ弾が、外れた腹いせに相手に噛み付いているような状況だった
木曾 「ま、頃合いか」
水無月「ん?」
「ほら」と、差し出された軍刀
首を傾げながらも、それを受け取る水無月
これをどうしろというのだろうか?
まさかのまさかで、アレに突っ込んでこいとか言われるんだろうか?
それは、とてもとても遠慮したい
木曾 「適当に小突いてみろ」
水無月「いい、の?」
手持ち無沙汰に揺らしていた軍刀と一緒に首を傾けてみるも
「はやくしろ」と、急かされてはしょうが無い
それに、本音を言えば一度くらいはやってみたかったと思う自分もいた
水無月「それじゃ、いっくよー。てぃっ!」
大きく振りかぶる
軍刀の重さに体を仰け反らせながらも何とか踏み止まり
その勢いのままに振り下ろした
木曾「…おい」
こんっと、軽い音と共に木曾の頭に乗っかる軍刀
水無月「え、あー、ちがった?にひひ…いや、その、ね?」
なんとなく違う気はしていたし、実際違ってもいた
でもでもだってさ、欲望には勝てなかったんだよ
誰だって、誰だって、刀を渡されたら何かやりたくなるでしょうと?
水無月「ごめんなひゃいっごめんなひゃいっ」
その結果がこれだった
木曾に、ほっぺをつねられ引っぱらて、涙目になって悶えている
木曾「俺じゃなくて、こ・こっ。おーけー?」
1回2回と、突くように指先を下に、海へと向ける木曾
水無月「おーけーおーけー。水無月にまっかせてよっ」
ほんのりと赤く染まった頬を撫でながらも、気を取り直して軍刀を構え直す
ここで天丼をしたら面白いかな?と、木曾の方を伺ってみると
今度余計なことをしたら…と、睨まれたので
顔を覗かせた天邪鬼を叩く様に、軍刀を海へと振り下ろした
水無月「うっひゃっ!?」
軍刀に散らされた水しぶきが顔にかかる、それは良い
それより何より驚いたのは、さっちん達が暴れている場所より一つ後ろで
どかーんっと、爆発が起きたことだった
ー
気づけば、下がらせていた空母勢が撃破されていた
陸奥「なによ…なんなのよ、これ…」
なにがどうなった?どこがどうなっている?
敵は何処で、味方はどれだ?
制空権が取られたのは悔しいが、それは良い
趨勢が決まりかけているのも理解は出来る
だがそれでも、この状況は受け入れがたい
こっちを見向きもしない戦艦の主砲
敵も味方も巻き込んで落とされる爆弾
あまつさえ、突っ込んできた二人で撃ち合いを始めては
「じゃまっ」「すっこんでるクマっ」
と、それに巻き込まれた味方が損害を受けて下がらされる
艦隊行動とは何かを考えさせられる光景
こんなものを教科書に載せたら、一瞬で戦線が崩壊するだろう
これはもう演習ですらない
遭遇戦より尚酷い、内輪揉めに巻き込まれただけなんじゃないのかと
陸奥「ストップっ!すとーっぷっ!ちょっと待ちなさい、ほんとに、待ってってっ!!」
ちょうど、飛び込んできた二人の間に割り込む陸奥
けれどもそこは長門型。飛んできた流れ弾を弾き飛ばすと
自慢の41cm方を両者に向けて、その動きを牽制する
「何だクマ?」「なにさ?」と、二人の視線が初めて陸奥を視界に収めた
陸奥「あなた達ねぇ…。何よ、ほんとに…その、えーっと…なんなの?」
引く付くコメカミを押さえ込み、言葉を探すがこれと言って見つからない
言いたいことは山ほどあったが、この状況に置いてけぼりの頭が上手く言葉を作れないでいた
皐月「何って、皐月だよ?」
球磨「球磨だクマ?」
「?」と、陸奥越しに視線を交わし首を傾げる皐月と球磨
陸奥「じゃなくてっ。知ってるわよそのくらいっ!」
陸奥ですよろしくお願いしますって、自己紹介がしたいわけでもないし
すでにその段階を通り越して、終わりの方になってもいる
球磨「戦う気がないなら下がってるクマ」
一人、悶々としている陸奥に、邪魔だと言う球磨
陸奥「そうっ!それよっ!戦うってっ、あなた達ねっ、一体誰と戦ってんのっ!?」
そうだそれだ。根本的な疑問はそこしかない
皐月「誰ってそりゃ…」
球磨「動くもの全部だクマ」
陸奥の割り込みで出来た間隙に、砲弾と魚雷とを装填し直す二人
陸奥「違うでしょっ、敵はこっちっ、私たちっ、私でしょっ」
大きな胸を平手で叩き、こっちを見なさいとアピールする陸奥
その瞬間
言葉尻をかき消すように陸奥の砲塔が爆発した
陸奥「きゃっ!?な、なに、砲撃っ」
流石の長門型、ダメージ自体は軽微ではあったが
慌てて、右へ左へと視線を飛ばす
皐月「しーらないっと」
鉾を収め、その場から離脱する皐月
ならばと、もう片方へ向き直る
陸奥「ちぃっ!」
直後、再びの砲撃を今度は片手で弾き飛ばす
陸奥「もうっ、いきなりっ…なんなのよっ」
球磨「何を言っているクマ。敵なんだろう?」
的だと思って甘く見てれば、提督(球磨)の敵を自称する
なら、撃つだろう?討たなきゃ嘘だクマ
もはや別人だった
それと認識した途端、戯れあっていた空気はなりを潜め
一直線に、陸奥を攻め立て始める
陸奥「くっ…速い…それに…」
近すぎる
主砲を向けるが、すぐに射線から逸れて狙いが付かない
砲塔を回し、体ごと旋回させても、まるで追いつかない
そうこうしている間にも、射線を潜り抜けてきた球磨が魚雷を投射する
陸奥「このっ、好き勝手してっ!」
主砲を下へ向け発射
海水ごと掻っ攫うように、魚雷を破壊する
あわよくば球磨まで巻き込んでいればと
淡い期待も込めて周囲に目を配ると、ひょいっと放物線を描いて何かが投げ込まれる
陸奥「あら?」
もはや癖になっていたその行為
駆逐・軽巡は元より
重巡の主砲でさえも避けるより、こうした方が早いとあしらうように爪弾きにしていた
ただ、今回はそれが悪かった
弾いた途端に手元で爆発が起こり、爆炎が肌をヒリヒリと撫でていく
陸奥「ぁっ…なに?今の…爆雷、なの?」
ダメージ自体はさしたるものでもないが
熱風と爆煙が、邪魔くさくてしょうが無い
陸奥「あぁっもうっ!?煩わしいわねっ!」
続いて2個3個と投げ込まれる爆雷
大爆発するのが分かっては、手で払う気にもなれず機銃掃射で全部撃ち落とす
陸奥「これでっ、て、ちょっ!?」
残り一つ、だと思えば
煙に穴を開けて、一直線に突っ込んできたのは酸素魚雷だった
驚いた拍子を縫って飛来する酸素魚雷
機銃で落とそうにも、そんな距離はとうに過ぎ
逸らした頬を掠めながら、辛うじて後ろへ飛んでいった
けれど、驚いてばかりもいられなかった
背中越しに、炸裂する魚雷の爆風を受けながら
魚雷が穴を開けた煙の中に、回り込もうとしている球磨の姿が見える
正しいと言えばそうだ
軽巡が長門型と真正面からやりあおうなんて馬鹿げてはいる
ただ、無駄に態度が大きかった分
目くらましや、不意打ちなんて、せせこましい手段に拍子が抜けはする
陸奥「そこっ!」
主砲を横へ向け、爆煙の陰から顔を出した球磨に向け発射する
流石に、終わったかしら…
一直線に吸い込まれていく砲弾を見ながらそんな事を考える
あれならどう避けても艤装を掠めるだろうし
私の主砲なら、撃破できなくても、そう好きに動けなくするぐらいは出来るだろう
強くはあったわね
無茶苦茶されて、面食らった部分もあったけど
真面目にやればこんなものかと…すこしばかり残念にも思う
陸奥「え…」
思考が止まった。その光景が理解できない
あの娘は、何をどうやった?
そうだ…足を振り上げて、砲弾を…踏んづけて…
陸奥「っ!」
止まりかけた役に立たない頭は捨て置いて、反射的に体が動く
あれは脅威だと、今すぐ排除しなければと
警報の様に跳ね上がる心臓に急かされるままに、全砲門を前方へと向けた
だが、その体でさえも一瞬で硬直してしまった
球磨「くくくくくっ♪」
私製46cm単装砲
大艦巨砲主義の極み、軽巡にあるまじき大砲
その暗い砲口が陸奥を見据えていた
ー
そうだろうそうだろう、おまえはコレを知っているはずだクマ
わざわざ見せびらかしたんだ、よもやオモチャとは疑うまいよな
ああ、そうだクマ。この距離なら外さない…
球磨「お互いに…クマ♪」
にっと口の端を釣り上げる球磨
だが、妖精さんの顔は芳しくはなかった
妖精「良いんですかい?」
その一言は暗に「このまま撃ったら艤装ごと吹き飛びますぜ?」と告げていた
41cm砲を踏みつけるなど、流石に無理がたたっか
普通に戦う分ならまだ良かったが、オモチャを使うほどの余裕は無くなっていた
球磨「ふんっ…かまわんクマ」
どうせ脅しに過ぎない…いや、実を言えばどっちでもいい
プランAがBに代わる程度だ、要はアイツの足が止まれば良いのだから
ー
陸奥「それ、は…」
歯噛みした所で、事態は変わらなかった
どうする?ハリボテだと思えれば幸せであっただろうけど
最初は驚いたし、いつから球磨型はモニター艦になったのだと笑いもしたが、こんな所で邪魔をする
構わず撃ち込む?
それなら球磨は確実に倒せるけど
私だって無傷じゃすまない…46cm砲の直撃…沈みはしないだろうけど…
残りの敵は…さっきの駆逐艦は…長波が…だとしても、後ろには戦艦と正規空母が控えている
戦艦1と軽巡1のトレードじゃ割に合わない…
どの道、艤装にだって、特に足回りにダメージは入ってるはず
もう2・3も撃ち合えば こっちの…なら、今無理をしてこの娘を倒す必要は…
決断は早かった
瞬き一つ分の間の後、主砲を強引に傾ける
同時に、機関を全力で回し、斉射した砲と合わせて46cm砲の脅威から身を逸らす
「おりこうさん…」
同時に、足元が爆ぜた
陸奥「きゃっ!?どこからっ!?
明後日の方から飛んできた46cm砲
無理な体勢も祟ってか、足元を掬われる様に艤装ごと横倒しになる
球磨「もう一つ、持ってくクマ」
放り込まれた爆雷。それが、中空で爆散すると
キラキラと輝きながら煙を撒き散らし、視界を埋め尽くす
陸奥「煙幕っ!?もうっ、ご丁寧に欺瞞紙(チャフ)までっ」
電探さえも潰されて、完全に視界を塞がれる陸奥
球磨「さて…後は魚雷を…」
発射管を回してみるが、悲鳴を上げる一方でまるで動きやしない
妖精「動きませんな…」
球磨「ちっ、まあいいクマ」
41cm砲を踏み潰したんだ、それはそれは仕方がない
球磨「照明弾」
妖精「あいあいまむ」
花火の様に空へ伸びる光の線
それを目印に、花火以上の爆音を響かせ46cm砲が飛来した
ー
長波「ったく、大したもんだな、ホント…」
主砲を一発打ち込み、その足を止めると
漸くとその背中に追いついた
皐月「ん?それは褒めてるのかい?」
お疲れ様、とでも言いたげに振り返る金髪娘
脅しの一発でビビる様子もなく、あくまで自然体だった
長波「一応はな。こっちはひでー損害だよ」
空母がやられ、護衛で残ったのは私だけ
陸奥さん頑張ってっけど、雲行きは怪しいなぁ…あれ
軽巡相手に手こずってんなよ、と言いたいが
アレが真っ当な軽巡じゃないのはよく分かっていた
皐月「損害って…キミと、あっちの陸奥さんだけなら もう少しやれたんじゃないかい?」
長波「こっちにも色々あんだよ」
それはその通りではあったが、色々と言っても今更だ
戦力配分を間違えたのはしょうが無い
言い訳ができるなら、ガチ勢が混じってるなんて聞いてないって話だ
皐月「ふふふっ。それは大変だったね」
長波「なに、大変なのはこっからだろうさ?」
くすくすと可愛らしく笑っている金髪娘
主砲を突きつけた所で、絶えることのない笑みが空恐ろしく見えてくる
これで睦月型、これが睦月型って、それこそ何かの冗談のようだ
皐月「ボクとやりあう気なの?」
そこでようやくと、長波に向き直る皐月
長波「手ぶらじゃ帰れんって」
内輪の都合というのはもう良い。今は自分の意地のほうが大事だ
ここまで好き勝手にされて、ハイそうですか、というわけにもいかんのだ
せめてこいつは持っていく
皐月「あははは。かわいいねっ!」
長波「おまえには負けるよっ!」
ー
砲弾が交差する
牽制のつもりなのか、単に外しただけなのか
そんな事を考えている暇はなかった
次の、次の次の一撃の間には距離がつまり
避ける余裕も、狙う暇も無くなっていく
駆逐艦なんてのは結局
一番早くに近づいて、魚雷を叩き込んだ方の勝ちってもんだ
退けば老いるぞ、臆せば死ぬぞって
どっかの爺さんが言ってたがそのとおりだと思う
長波「これでっ!」
皐月「残念だけどっ!」
魚雷を構える長波
だが、皐月の放った砲弾が発射管ごとそれを破壊する
長波「まっだまだぁっ!服を切らせてぇぇっ!」
魚雷が吹っ飛んだならそれでも良い
そんな事よりこの距離だ、駆逐艦同士なら主砲でさえ撃ち抜ける
同士討ちにしたって、こっちのが幾らかは堪えられるだろう
皐月「それもゴメンっ」
長波「なっ!?」
ひょいっと、投げ込まれたのは爆雷に見えた
手の届きそうな距離で、自爆覚悟かっ、どんだけだっ、とか思ったのも一瞬で
キラキラと輝く白い煙に視界を覆われる
皐月「悪いけど、尋常な勝負なら また今度ねっ」
白く広がっていく煙から逃げるように距離をとる皐月
皐月「大鳳さんっ、お願いっ」
皐月が照明弾を打ち上げると
次々と飛んできた爆撃機が火の海を広げていった
「覚えてろよぉぉぉ、また来るからなぁぁぁぁっ!!!」
断末魔の叫びとともに、煙幕と炎の海から砲弾が滅茶苦茶に飛んでくる
皐月「おっとっ。こわいなぁ…」
避けたつもりだったが
掠めた砲弾が、頬に線を引き、金糸の髪を千切っていった
皐月「また、来るのかなぁ…」
負けるつもりはないけれど…正直面倒くさい
夕立さんでもけしかけようかな、きっと喜々として戦ってくれるだろうし
ー執務室ー
睦月「てーいーとーくーっ」
開きっぱなしの扉から駆け込んでくる睦月
「にゃしー♪」と みつよ様に挨拶をすると一直線に提督の側まで寄ってくる
睦月「夕張さんがねっ、ずるいよっ!」
提督「は?」
いきなり飛び込んできたと思えば
夕張がズルいというのは、流石に意味がわからない
意地悪でもされたのか…アイツが?無くはないだろうが珍しい、とは思う
提督 「夕張が、なに?」
みつよ「ちがうでしょ?」
提督 「は?」
訳知り顔で微笑んでいる みつよ様
その答えは すぐに睦月の口から飛び出した
睦月「如月ちゃんっ!」
如月「えっと、その、ちがうのよ?」
睦月「何がっ!何でっ!」
だってそうじゃないっ
夕張さんに如月ちゃんが戻ってこないから様子見てきてって
それがなんだ、提督に抱っこされているではないか
それはダメだ、それはいけない、それはそれはとても羨ましい
如月「司令官が放してくれなくて、だから、その…ね?」
私は仕事をしたいけど
司令官が放してくれないなら、仕方がなくてしょうが無い
だから、これは 違うんだと言っていい
みつよ「嬉しそうな顔して言うこと?」
無駄に提督に体を預け、赤くなってる頬を隠しもしない
傍から見たら、いや、傍からこそ良く良く分かるという事もある
如月「え?いや、そんな顔…して、ないもん…」
睦月「えっ?嬉しくないのっ」
「だったら変わってよっ」と、身を乗り出し来る睦月
如月「へ!?いやっ、そのっ、嬉しくなくも…ない、けど」
いやさ、プライベートなら良かった
しかし、夕張さんにお使いを頼まれておいて、司令官とイチャついてるなどと
さすがに気まずくて口が重くもなる
提督「嬉しくなくもないなら、睦月ちゃんに変わっても良いのよ?」
なんて、意地の悪い笑みを浮かべながら
妙な声音で、如月の言葉を引き継いで見る提督
如月「…」
そんなだというのに。司令官は…この人は
また人の事をからかおうとするものだから、性質がわるいったら
私に何を言わせたいのよ…私をどうする気なのよ…ほんとに…
如月「やだ…」
ええ、そうでしょうよ、そうでしょうとも
こう言えば満足するんでしょうね、こうすれば喜ぶんでしょうね
生暖かい視線から逃れるように、提督の服を握りしめ、顔を埋める如月だった
ー海上ー
球磨「で、勝ったのは誰だクマ?」
大鳳「うーん、そうね…」
煙幕が晴れた頃。意外と言うか、流石というか
他の娘達は見る陰もなく、白旗揚げて海に浮かんでいたが
陸奥と長波だけはまだ何とか浮いていた…と、言うことは
大鳳「私と、球磨と皐月で一点ずつ…金剛さんは…」
金剛「だって、だって、球磨が邪魔するんだもん…」
球磨「くまくまくま♪」
膝を折り曲げ、海面にのの字を書いてイジケている金剛さん
皐月「あれ、じゃー…引き分けかい?」
それならどうしようか?
さすがに死体蹴りにサドンデスってのは気が引ける
水無月「いや…その…水無月が…2点、だったり?ぇへへ…」
遠慮がちに手を上げている水無月
そこへ、目を丸くした4人の視線が突き刺さる
大鳳「でも、だって…あなた…」
飛び入り参加は良いとしても、こんな後方で駆逐艦がどうやって…
球磨「木曾…お前…」
球磨の視線が水無月の手元、そこに握られている軍刀に注がれている
木曾「あははははっ。どうだ、全員出し抜かれた気分はよ?」
久しぶりに歯噛みする姉の顔を見て、楽しそうに笑っている木曾さんだった
皐月「で、も…ありなの、それ?」
木曾さんが、その2点分を主張するなら兎にも角
木曾「攻撃命令だしたの、コイツだしな」
指先で、水無月の頭を突っつく木曾さん
それに「じゃあ俺の2点をコイツにやるよ」と言ってしまえば白だって黒に近くもなる
水無月「とまぁ、水無月が活躍しちゃったり?やるなぁ、自分、えへへへっ」
グレーゾーンとはいえMVPはMVP
そこは自慢してもいいし、照れくさいながらも、はにかんで見せる水無月
球磨 「つまりだ…」
水無月「へ?」
ぞっと、水無月の背筋に悪寒が走った
球磨 「あと一人倒せば、球磨が4点で一等賞だクマ」
水無月「いや、その…点数多くないかい?」
最後の問題で、今までの苦労が全てパーになりそうな点数配分だった
球磨「何を言う、2点、抱えているじゃないか」
水無月の懐を指差す球磨ちゃん
1点(水無月)と、それが持ってる2点分
最後に球磨のを合わせれば、何も計算に間違いはない
水無月「でもでも…演習は終わってるんじゃって…ねぇ?」
ジリジリと、微速後進を始める水無月
助けを求めるように姉の表情を伺ってみる
皐月 「水無月。帰るまでが演習だって、お姉ちゃん言ったよね?」
水無月「えっ!?今聞いたよっ、それっ!?」
皐月 「うんっ♪今言ったからねっ!」
水無月「ちょっ!?さっちんっ、それずるいっ!」
木曾 「あはははは。ほらほら、にげろにげろー♪」
木曾に勢い良く背中を叩かれると
同時に、クルッと反転して最大戦速で逃げ出す水無月
水無月「木曾のバカーっ!!」
振り返り、木曾に文句の一つでも投げつけるが
追いかけてくる球磨と皐月の姿が目に入る
「うわぁぁぁぁぁんっ」
もう、涙目だった
ー
大鳳「意地悪なんだから…」
苦笑しながらも木曾を小突く大鳳
遠くには、砲撃に混ざって水無月の悲鳴が聞こえてきそうな気さえする
木曾「くくくくっ、まぁ偶には良いだろう?」
それでも、目論見が上手く行ったことに
忍び笑いが治まらない様子ではあったが
大鳳「それと、金剛さん?」
金剛「ぁぅっ…」
そろりそろーりと、海域から離脱しようとしている金剛の首が引かれる
金剛「放して大鳳っ。金剛もっ、金剛も追いかけないとっ!」
今なら主砲がまだ届く
3点をかっさらえば、逆転優勝ってなもんだ
大鳳「あなたはダーメ」
金剛「どうしてっ!」
大鳳「罰ゲーム?」
特に設定していたわけでもなかったが、手っ取り早い理由としては丁度良かった
金剛「だったらっ!今から貴女を倒してっ」
が、途端に大鳳が振り下ろしたマガジンの角が
金剛の頭に突き刺さり「いたいっ」と悲鳴が聞こえたきた
金剛「しくしく…しくしく…」
木曾「おまえ…ほんと、おまえは…くくくくくっ」
お腹を抱えて、忍び笑いを続ける木曾さん
最近は吹っ切れたと思ったが
吹っ切れたせいか、精神年齢は下り坂を転げ落ちていた
こんななりして、言動が睦月たちとそう大差なかったりもする辺り
ここ最近は見ていて本当に飽きない
大鳳「陸奥さん達、曳航しないと…ね?」
一応でも、まだ浮いてはいるが
あの様子だと、自力航行さえ怪しくみえる
金剛「放っておけばいいじゃない…提督だって、そういうよ…」
涙声で、ぶーぶー文句を言っている金剛さん
木曾「いや、まぁなぁ…」
大鳳「そりゃ、提督だったらそうでしょうけど」
だからって、放っておくのも後味の悪い話だ
一緒に演習をした仲というのもあるし
コレ以上の後腐れは、という打算もあった
木曾「ま、諦めろ。どうせもう追いつけねぇだろう?」
話している間にも、どんどんと小さくなっていく3人の背中
主砲はそろそろ射程外だし、いくら高速戦艦と言えど
最大戦速の軽巡・駆逐に追いつけるはずもない
金剛「ぶー…。分かりましたデスよーだ。市中引き回しにしてこれば良いんデショっ」
ふんっと、鼻をならして陸奥の方へ向かっていく金剛
木曾「普通に引っ張ってけよ…ったく」
大鳳「私たちも行きましょうか」
木曾「おうよ」
苦笑しながらも、残りの娘達を回収に向かう二人だった
ー母港ー
「うぷぷぷぷ」と、笑い声を響かせて卯月たちが戻ってくると
静かだった港が一気に騒がしくなる
長月「騒がしいと思えば…。おつかれ、どうだった?」
卯月「外れだぴょん」
演習相手かと思えば
ボーキサイト取りに来ただけとか、肩透かしも良い所だった
暁 「ハズレって言うなっ!」
菊月「で?なんだ、このちんちくりんは?」
何か煩いものでも見るように目を細めている菊月
暁 「ちんちくりんって言うなっ、あんただって大して変わんないじゃないっ」
菊月「?」
しかし、言葉の意味を測りかねたのか首を傾げている菊月
長月「不思議そうな顔してこっちを見るんじゃない」
まるで自分がそう見たいではないか
菊月「しかしだな…」
暁の隣に立つと、その頭に手を置く菊月
菊月「な?」
暁 「な?じゃなーいっ!手を置くなーっ、ナデナデするなーっ!」
駄々をこねるみたいに手を振り回すが、面倒くさそうに菊月が手を伸ばすと
暴れる手は服に掠るばかりでほんの少し届いていなかった
卯月「撫でられたくらいで、子供だぴょん」
やれやれと首を振る うーちゃん
その隣では「まったくだ」と、菊月も一緒に頷いていた
卯月「背が小さいどころか心まで小さいとか、ほんと救いようが無いぴょん」
長月「お前も、いちいち煽るんじゃないよ」
卯月「?」
長月に小突かれるが
なんで?どうして?と、首をかしげる卯月
長月「お前も…不思議そうな顔をするんじゃ…」
「小さいって言うなっ!」と、長月の言葉尻を遮って割り込んでくる声
暁「大体っ、アンタ何もしてないじゃないっ!」
考えてみればそうだ
暁たちが負けたのは仕方がない
けど、けれども、それは三日月達に負けたのであって
逃げ回ってた卯月に負けたんじゃないもの
卯月「へぇ…」
暁 「な、なによ?」
「へぇ…」と声量がフェードアウトしていくのに比例して
いやらしく釣り上がっていく卯月の口元
長月「…」
いやらしい顔だ。何を考えているか想像も付くし
コイツとアイツでは、この後の展開も予想ができるというもの
そうして、長月が妹の手をとり、その場から一歩下がった所で
「ぷはっ♪」と、入れ替わるように破顔する卯月
卯月「何もしてない奴に負けてるぴょ~ん、恥ずかしいぴょん、惨めだぴょん、哀れだぴょーん♪」
うぷぷぷぷ♪と、お腹を抱え体を捩り、堰を切ったダムの様に嘲笑を吐き出す卯月
暁「な、な、なぁぁぁっ!?もうっ、も、もぅもぅっ!なんなんのっ、なんなのよっあんたはっ!」
違う、そうじゃない。そう思ってはいても、負けたという事実が暁の口を重くする
コイツに負けたんじゃない、卯月に負けたんじゃない
「今度は絶対に勝つんだから」と、言い返そ言うにも言葉にならず
ままならない不満が口から漏れるばかりで
行き場をなくした感情が、目尻に涙を集めだした
ー
「あ、あのっ!!」
もはや喧嘩にもなっていない二人の間に割り込む声
思った以上に大きく出た声に自分で怯みながら、もすぐに真っ直ぐと卯月を見据える
電「もう止めて欲しいのですっ!暁ちゃんをこれ以上イジメないで欲しいのですっ!」
懇願と嘆願。勝者の権利と言えばそうだけども
暁ちゃんも大概だというのも分かるけど、流石にそろそろ見ていられなかった
暁「電…あなた…」
引っ込み思案な妹が、卯月の前に立っている
その勇気に、暖かさに、たまり始めた涙も乾いていきそうな気がしていた
電「ほんとならボーキサイト持って返って、司令官さんに褒めてもらう腹づもりだったのですっ」
それが手ぶらで返った挙句に、演習にもボロ負けしちゃって、合わせる顔がないのです
恥の上塗りも良いところなのです、面目次第もござらんのですっ
だからコレ以上の辱めは、どうか、どうか勘弁してあげて欲しいのですっ
「うわぁぁぁぁぁぁん」
そして、ついに泣き出した
電「はわわっ!?暁ちゃん泣かないで欲しいのですっ」
雷「いや、アンタのせいでしょ…今の」
電「酷い誤解なのですっ」
響「はぁ…やれやれだ」
ー
菊月「なぁ、長月?」
姉に手を引かれたまま、その様子を眺めていた菊月
菊月「あれは、とどめを刺したのか?」
長月「そうだな」
卯月「うーちゃんは悪くないぴょん…」
バツが悪そうに、妹たちの隣に避難してくる卯月だったが
「いや、それはどうだろう?」と、二人の声が重なった
ー
水無月「ふみちゃーん」
文月 「みぃーちゃーん」
あと少しで港に着くかという距離で、姉と妹が手を振りあっていた
その光景自体は実に微笑ましかったのだが
水無月「手を振るならこっち向いて♪」
文月 「やだよー、なんか怖いのいるしっ♪」
水無月「だから助けてってっ」
文月 「今は無理かなー」
そう、今はまだ…
理由は分からないけども、水無月を追い回している皐月と球磨
水無月がいらん事をしたか、あっちで何かとちったか
どちらにせよ、2対1なら文が加勢したとしてもいいかなって思う
本音が言えば、手持ち無沙汰だっただけで、面白そうかな?って首を突っ込んだだけだけど
さて、勝利条件は何だ?
港目指して突っ込んできてるんだし、ゴールテープは陸の上かな?
ま、違ってても司令官の所まで走れば落ち着くだろうか
その結果、司令官に悪戯されても責任は取れないけど
そろそろ、かな…
ここまで逃げてこられなければ、見捨てる腹づもりでも合ったけど
無事辿り付きそうなので、予定を続行するとしよう
減速して、反転すると、勢い余った水無月が横を通り過ぎていく
水無月「へ?文ちゃん?」
文月 「こっちみんなっ!早く行ってっ、そんな長く持たないからっ」
後ろ手に水無月を押し出すと
「ごめんっ、ありがとっ、大好きっ!」と、背中越しに聞こえてくる声
文月「文月も…」
振り返って、みーとぅーと、返したいがそんな暇も余裕も無い
今のやり取りで、ノーマルモードがハードモードになってしまった
時間にして、もう一秒ほど稼がなくちゃいけなくなっただろう
文月「…エンゲージ」
そう呟くと、桜色の光が溢れ出し
束ねたポニーテールが可愛らしく揺れ動いていた
文月「さぁ、お姉ちゃんたち。10秒間ほど付き合ってもらうよ」
ー
雷「はぁ…なによ、あれ…」
泣いてる暁、それ所じゃなかった
駆逐艦と軽巡が殴り合っている
ま、こいつらがこんなんなんだし、そこは良いとしても
それは、あまりにも乱暴だった
殴り合いに等しい距離、実際に手や足でさえ伸びているし
あれじゃ、近すぎて魚雷も使えないだろう
お互いに主砲と主砲をぶっ放し、ギリギリを掠めては撃ち返す
雷「なんで、避けないのよ…」
チキンレースやってるわけじゃあるまいし
あれだけ動けるなら、避けるタイミングくらいあるでしょう
響「どうかな。今避けて次避けても、その次で直撃しては意味がない」
雷「は?そんなエスパーじゃあるまいし」
相手の動きなんて、逐一予測できるわけもない
響「そうだね。そうじゃないけど…」
隙を作るために本気で撃ち込んでいる
だから、避けるに避けられない、下手に避けて動きが止まるくらいなら
最小限に抑えて相手を叩いた方が安上がりだと
結果として、目の前に相手を倒すことしか頭にないような戦いっぷりだ
響「まぁ、指輪のサポートもあるんだろうけどね…」
雷「だからって…」
自分の姉の方を見る
果たして? 果たして果たして、自分の姉はあれほど動けるのだろか?
たださえ調子に乗りやすい姉。お陰でむやみに使うんじゃないと、釘を差される始末
あれはもう、どっちも、家の秘書艦と同レベルなんじゃ…
雷「なに、あんなのと戦ってたの私達…」
響「向こうの 卯月(ぴょん吉)がそうだとは限らないけど…」
遊ばれていたのは事実だし。全く、ぞっとしない話だった
「ん…ぴょん吉ってなに?」
「ぁぁ…ぴょんぴょん言っていたからな、つい」
「そう…いいけど、ね」
ー
球磨「切りがねぇっ。皐月っ、さっさと追っかけるクマっ!」
皐月「了解っ!」
文月「行かせるわけっ!」
皐月「とっ!?無理するなぁっ…でもっ。球磨っ、こっち抑えるからっ」
球磨「ったく、使いたくは無かったよっ!」
文月「その時だけを待ってたよっ!」
皐月「へっ!?」
球磨が46cm砲を構えた時だった
向けらた皐月の主砲を抱え込み、自分の砲を球磨に、正確には46cm砲に向ける
球磨「ええいっ!」
展開直後、そうじゃなくても
動き回るようには出来てないそれでは避けようもなく
次の瞬間には、46cm砲が吹っ飛ばされていた
文月「さ、これでもう。届かないんじゃない?」
今から走っても、水無月は岸に上がるだろうし
球磨や皐月の主砲ぐらいなら、まあ何とかなるだろう
46cmで一発逆転も今潰した所だし
時間稼ぎはここまで、時間にして きっかり10秒…流石にキツイかったな
でも、文月さんはやりました。今さっちゃんの主砲が火を吹いたって後の祭りだもの
球磨「ぬぅ…」
皐月「あーあ。逃げられたね…」
桜まつりは終わりだと、お互いの華が散っていく
文月「で、なんで みぃちゃん追っかけてたの?」
一息つくと、思い出した疑問を口にする文月
皐月「知らないで邪魔されったてのもなぁ…」
流石に悔しいなこれは
ー執務室ー
夕張「ちょっと提督?如月とむつ、き…何やってんの?」
いや、ほんとに何やってんの?
開けっ放しなんだからと、遠慮もなしに入った執務室
当然のように くつろいでるみつよ様は良いとして
問題はその反対側。提督の膝の上に収まっている睦月
まあいい、それは分かる。では、その睦月の頭をくしゃくしゃに撫で回している提督は?
そこもまあ、よく見る光景だ。では、その隣で睦月の髪を直している如月は?
そしたらまた、頭をわしゃわしゃと撫で回されて、嬉しそうにしている睦月は?
夕張「ていうか、それ。いつまで続ける気なの?」
エンドレスだった。まるで餅つきの様だ
睦月「いつまでも~かにゃ~ん♪」
大好きな提督に、妹に、頭を撫でられ続けて半分惚けかかっている睦月
にゃはーと、だらしなく口を開いて、嬉しさを抑えようともしていない
夕張「…ま、睦月はいいや。で、そっちは?」
もうダメだ放っておこうと結論すると、今度は如月へと目を向ける
夕張「ミイラ取りを使いに出したつもりはないけれど?」
如月「…ミイラでいいもん」
夕張から目を逸らしたまま、ぼそっと口にする如月
夕張「ダメか。じゃ、最後…提督?」
最後と言っても、この二人よりも望みが薄いんだけど
一応はと、聞くだけ聞いてみる
提督「だって…なぁ」
提督の視線が動き、その視界に みつよ様がちらりと映り込む
夕張「…ああ、そう…まだ、ダメなのね…」
たまにしか来ないとは言え、知らない仲でも無いでしょうに
いや、たまにしか来ないから問題なのか…入り浸られたら それはそれで問題なんだけど
みつよ「まぁ、いいじゃない?この私が許すわっ。それにね、夕張?何か間違いがあったら困るでしょ?」
龍鳳 「!?」
その途端、部屋の隅から聞こえて来る物音
みつよ「大鯨っ」
龍鳳 「…」
ピシャっとした一声で、すぐに静まり返る部屋の隅
夕張 「みつよ様…一つだけ」
みつよ「何かしら?」
夕張 「この人にそんな度胸があれば私達も苦労してません」
みつよ「あははっ、道理だわっ」
今度から、お使いを出す人は選ぼうと思った夕張さんだった
ー浴場ー
静まり返っている浴室内
どうしてか、設置されている鹿威しが鳴いてる以外これといった音もなかった
無人、という訳でもない
暁型の姉妹達が、入渠も兼ねて一緒ではあったが
お湯に体を浸けたまま、どこか呆けているように何も喋らなかった
やはりと言って良いのか
良く言えば賑やか、悪く言えば煩いと、そんな4人組
少なくとも、こんな無言でいる時間のほうが短い
火に油を注ぐ雷に、それを扇で、本人は火消しのつもりで煽る電
仕方なく水を掛ける響と、そんな役回りであったが
肝心の火が、暁が静まり返っている
あれだけ からかわれ続ければ無理も無いだろう、落ち込むのだって理解できる
ただそうなると、どうにも手持ち無沙汰になる3人だった
暁「そうよっ、それだわっ」
パンっと、顔に水をかけ頬を叩き、面を上げる暁
その表情に迷いはなく、落ち込んでる様子は欠片も残っていなかった
響「ふふっ。どうしたんだい?」
知らず口元が緩んでしまう
やはりこうだな、やはりこれだな
懲りないめげないが家の姉だ、良くも悪くもだが
暁「艦娘神拳よっ」
そう、姉は宣われた
言葉も無い。姉妹3人目、呆れとも諦めとも付かない表情で姉を見つめている
響「一応、聞くけれど。それでどうしようと言うんだい?」
放っておきたいのは山々だが
話が進まないので先を促してみる響
暁「思ったのよ。二兎真空把を二兎真空把で返せば当るんじゃないかってっ」
雷「できるわけ無いでしょ、あんな大道芸」
電「怪我する前にやめるのです」
暁「アイツに出来て私に出来ないわけ無い無いじゃないっ
なんとも成れば、指輪だってなんだってっ」
響「それは、無闇に使うなと言われてるだろう?」
暁「けどっ!」
「なら…」と、湯船から上がる響
ちょうど良さそうな大きさの物を見繕い
手近にあった石鹸を拾い上げる
響「試してみるかい?」
暁「いいわっ、来なさいっ」
響「ふぅ…」
デジャビュ…とは違う気がするが
ありありと浮かんだ数秒先の光景に
思わず息が漏れてしまう
響「いくよ…」
サイドスロー気味に投げられる石鹸
スナップを聞かせた手首が、石鹸に回転を与えて
クルクルと回りながら暁に向かって飛んでいく
ぽーんっと、鹿威しの音がなる
暁「見えたわっ」
腕を伸ばし、指を立て、石鹸を受け止めて
「いったぁぁぁいっ」
響いたのは悲鳴だった
指の間を滑り抜けた石鹸が、暁の額に突き刺さっていた
雷「ぷふっ…だっさっ…」
電「がっかりなのです…」
お腹を抱える雷と、嘆息を隠しもしない電
暁「わーらーうーなーっ。アンタ達っ、帰ったら特訓なんだからっ」
雷「あ、わたし司令官のお世話あるからパスで」
電「…めんどくさいのです」
響「やれやれだ…」
あまり反応は良くなかった
ーおしまいー
「で、水無月と、初詣に、行くんだね…」
最後の方に「ボクの事置いてさ…」と、ぶつくさ付け加えながらそっぽをむく皐月
頬杖をつき、横目でチラチラと提督の方をみながら
空いた指の先で、机をコツコツと突き続けている
水無月「えっと…、さっちんも一緒に行くって?」
そう。あんまりにも拗ねるもんだから、さっきから誘ってはいるんだけど
「良いって言ってんじゃん」の、一点張りだった
水無月「何怒ってるのさ…」
皐月 「怒ってないっ」
水無月「ぷっぷくぷーってなってんじゃんっ」
皐月 「なってないっ」
水無月「もうっ、だったら さっちんが先行ってきなよっ」
皐月 「そういう話もしてないのっ」
完全に平行線の会話。まるで埒が開きやしない上に
熱の上がってきた口論は、そろそろ姉妹喧嘩にまで発展しそうだった
提督「水無月…。行くよ」
ソファで転がっていた提督が立ち上がると
何でもない風を装って扉へと向かっていく
水無月「え、あ、うん…でも?」
慌てて、その後を追いかけるが
やはり気になるのか、視線はそっぽを向いた姉の事を追いかけていた
ー
水無月の視線が扉の向こうに消えた頃
ようやっと、子供みたいな喧嘩に区切りがついた
一時の静寂
拗ねてみせたは良いが、その相手が居なくなると
どうにも、目のやり場、身の置き所に困ってくる
おまけに、生暖かい視線が2つほど
見ないふりでも良いけれど、ちょっかい掛けられてるみたいで気にはなる
皐月「なにさ…」
そうして、辛抱堪らずに声をかけてしまった
望月 「いや、別に…?」
三日月「そう、ね?」
三日月の膝に頭を乗せて寝っ転がってる望月
まるで、対岸の火事でも見ているような空気だ
望月 「ただ、まぁ?今頃、司令官さ…」
三日月「嬉しそうしてるんだろうなぁって…」
「ねー」っと、わざとらしく調子を合わせる二人だった
ー
水無月「ねぇ…司令官。なんで そんな嬉しそうなの?」
二人並んで幾星霜
鎮守府から遠のく程に、後ろを気にしながら歩いている水無月
見えているのは姉の ふくれっ面
この席を横から掻っ攫った罪悪感も手伝ってか、後ろ髪が引っかかってしょうが無い
だと言うのに
とうの司令官は、何を思い出してか楽しそうにニヤけている
正直ちょっと怖い
提督 「ん?みぃ は嬉しくないの?」
水無月「へ?いや、嬉しいは嬉しいけどさ…。さっちんが…」
提督 「可愛かったよねぇ…にへへへへ…」
水無月「へ?」
まただ、またニヤけだした
そりゃ さっちんは可愛いけども、あれは絶対怒ってた
それでも可愛いなんて、怒られて喜ぶタイプなのかな
水無月「いや、だから…なんでそんな嬉しそうなの?」
提督 「ん?みぃ と一緒だからね」
水無月「そっちじゃなくて」
そりゃ、水無月だって嬉しいけども
聞きたいのはそっちじゃなく
提督「好きな娘がさ?」
「あぁ、そっち?」と、一つ間を開けると
神妙な面持ちで口を開く提督
提督「自分のせいでヤキモキしてるのみるのって、ちょー楽しくない?」
そうしてまたニヤけだす提督
水無月「うん、ごめん、水無月わかんない」
好きな娘には笑ってて欲しいとかなら全然理解できるのに
なんで こんな屈折しているんだろうか
提督「でもさ?」
好きな娘が、自分のせいでヤキモキしている
好きな娘が、自分のせいで右往左往している
今だけ、その時だけは、あの娘の中は自分で一杯になっている
それはどんなに素敵だろうと
満足感が、充足感が、優越が、愉悦が止まらない、溢れ出しそう
提督 「てな?」
水無月「こわいこわいこわい」
必死に頭を振って、それを振り払うように否定する水無月
提督 「そう?卯月は分かってくれたのに」
水無月「うーちゃん…」
だからか…
毎日毎日、主立っては瑞鳳お姉ちゃんに
そうでなくても他の誰かに、じゃれついて回ってるのは
悪戯っ娘世に憚る?
提督「ま、みぃも好きな娘出来りゃ、そのうち…」
そう言って、水無月の頭に手を置く提督
水無月「分かるかなぁ…」
その理解は、怖いような、楽しみなような?
ー
そんな話をしていると、気づけば賽銭箱の前に立っていた
水無月「でもさ、これ…。司令官にお願い事した方が早くない?」
仮にも土地神様って話だ
何かしら、ご利益とかあるんじゃないかと期待はしてみるが
返ってきたのは「祟るよ?」なんて
水無月「こわいこわいこわい」
再び、振り払うように首を振って否定する水無月
提督 「あはははっ。だから、真面目な神様にお願いすると良いよ」
水無月「うん、そうする…」
ぱんっ、ぱんっ…
折り目正しくお辞儀をして、手を鳴らして、目を閉じる
何をお願いしているんだろうか?
その横顔、水のように青い髪
白い肌と、冬の寒さに色づいた頬
突っついたら面白いだろうか?
そんな悪戯心が鎌首もたげてきた時
ちょうど、目を開いた水無月と目が合った
水無月「司令官はさ?なに、お願いしたの?」
当たり前のような問い掛け
好奇心に満ちた瞳が見上げてくる
提督「私?」
水無月のほっぺを突っつきたい…
正直に言えばそれしか無かったが、もう少しオブラートに包むのなら
提督「水無月と もっと仲良くなれますように?」
そうして「じゃあ、水無月は?」と、当たり前の様に聞き返す
水無月「水無月はねぇ…」
勿体ぶるように間を置いた後
水無月「司令官と もっと仲良くなれますように、だよっ」
「一緒だねっ」と、ほんのり染まった頬もそのままに
はにかんで見せると、跳ねるように階段を下りていく
水無月「それじゃあ、司令官。もっと仲良くなりにいこうか」
階段の上。照れくさそうにしている提督に、手を差し出す水無月だった
ー執務室ー
「あれ…」
そっと、目を覚ますと、部屋は真っ暗で
何時からそうして、どれだけ経ったのか、イマイチ分からないでいる
おまけに妙だ
最後の記憶は、司令官の机に付いてたはずなのに
机の硬い感触も、体を包み込む椅子の広さも感じられない
あるのはそう、頭の後ろ側に、暖かくて柔らかい…
皐月「何やってるのさ、司令官…」
ぼやけた瞳が焦点を結ぶと
薄暗い室内に、ぼんやりと浮かび上がる司令官の顔
「起きた?」なんて、なんでも無さそうに返ってくる返事
一体、何時からそうして、どれだけ経ったのか
提督「何って、そうね…」
視線を逸らして、少し考え込んだようだったけど
すぐに、その瞳がボクの顔を覗き込んできた
提督「皐月が最初に見るのが、私だったら良いなって?」
皐月「なんだよそれ…」
思わず視線を逸らしてしまう
反抗心だとかじゃなく、ただ単に照れくさかったから
一体、どんな顔をして そんな言葉を口にしてるんだろう
薄暗がりの中ではイマイチ司令官の表情が分からない
でも、それはお互い様
司令官にだって、今ボクがどんな顔をしているのか…
今、ボクは…どんな顔をしているんだろう
司令官達を見送ったときには、唇を尖らせていたはずだ
やきもちだ、拗ねてたんだ。だからって、妹の賞品に便乗するのも、横取りするのも大人げない
分かってる、分かってるから、余計にどんな顔して良いか分からなくって
唇を尖らせて、拗ねて見せたり…それで司令官が喜ぶのが余計に腹が立って
けれど、その間はボクの事考えてくれてるだなって思うと…止めるに止められなくて
皐月「…言ってて恥ずかしくないのかい?」
結局、口から出たのは そんな憎まれ口だった
提督「大鳳に言ってあげると良いよ?」
皐月「なんだよ、それ…」
もやっとする
今朝は大鳳さんとそんな事してたんだと思うと
大鳳さんが嫌いな訳でも、司令官とイチャ付いてるのがダメだって訳でも
ただ、ただ今は、あんまり聞きたくなかったかもしれない
それっきり、会話がなくなった
言葉が出ない、言いたい事も聞きたいことも無いわけじゃない
初詣がどうだった?とか、水無月と仲良くなれたの?だとか…
ボクを置いてった事に対する愚痴から何まで…いいたい事も、言えないこともあるけれど
どうしてか、何も言えずにいた
沈黙が重い
頭の後ろ、首の付根が熱い、司令官と触れ合ってる所がどうしようもなくて
寝起きで下がった体温が肌寒さを感じているのに
そこだけが、熱くて熱くてしょうが無い
体を起こそうにも、沈黙の重さに負けて動けずにいる
重くて重くて、体を動かすのも億劫で
寒くて寒くて、この熱さにでも縋っていたくなる
皐月「…なんかよう?」
身じろぎ一つ
ようやくと、寝返りを打つように体ごと顔を横に背けると
その拍子に、つっけんどんっと言葉が付いて出る
提督「初詣、行こうかなって…」
今更、そんな今更
今から行ったって、暗いばかりで何もありはしないのに
今から行ったって、後回しにされた事実は変わらないのに
同情?埋め合わせ?今更、そんな今更…
何も言えない
違う、ホントは言ってしまいたい
「ボクだって行きたい」って
後回しにされたのだって、勝負の結果だ…ちょっと、ずっこい気もするけども
けれど、あんなに唇を尖らせて、今だって不貞腐れたままで
今更、そんな今更行きたいだなんて…
どの口で、どんな顔して言えば良いのさ…
提督「ま、今度でいいか…。時間も時間だし…」
沈黙を否定と受け取ったのか、諦めたような その声音
ふと、頭の後ろが、首の付け根が寒くなる
さっきまで熱いくらいに熱かったのに
なくなってしまえば、ビックリするほどに肌寒い
残ったのは無駄に柔らかいソファの感触、それでさえも既に冷え始めている
続いたのは響く足音と、それに揺られ、泳いで行く着物の羽音
その遠さ、冷たさに、ありもしない予感と、くすぶっていた不安が煽られていく
提督「ん?」
ふと、提督の足が止まると
何か、引っ掛かった先でも見るように振り返る
気づけば手を伸ばしていた、思わず手繰り寄せていた
このまま明日になったら余計に合わせる顔がない
もっとどんな顔をして良いのから分からなくなる
きっと、いつか見たく自分から逃げて回るだろう
なんとなく、そんな予感がしていた
そうして最後は、イラッと来た誰かに蹴飛ばされるんだって
それは、イヤだった
誰かに蹴飛ばされるのが どうとかじゃなくて
もっと単純な、他愛のない事で
ボクだって、一番最初に司令官に「おはよ」て言いたいんだと
皐月「…行く」
固かった口がようやく動いた
かじかんだ指を動かすように、緩慢で不器用に、ただ一言を呟いていた
ー
三日月「行った、みたいね…」
覗き込んでいた窓から顔を離し
珍しく、部屋のベッドで横たわっている望月の方を見る
望月 「どうだった?」
三日月「はしゃいでた」
望月 「そうかい…」
三日月「うん、そう…」
どちらからでもなく、小さく笑い合う二人だった
水無月「ほっ…」
思わずため息が出る
さすがに、自分のせいで、自分は楽しんでおいて
二人が喧嘩しっぱなしなのは寝覚めが悪いというものだ
望月 「だから、平気だって言ったろ?」
水無月「うん。それは、そうなんだけどさ…」
一つ問題が片付くと、また一つ、浮かんでくる問題
昼間の疲れもあってか、どっと押し寄せてくる眠気
水無月「もっち…。そこ、水無月のベッド…」
いやさ、元は望月のベッドだったんだろうけど
現状、360日位は執務室で転がってるから使っていいよって話で
望月「ん?」
ちらっと、被っていた布団を捲り上げる望月
なにか、誘われているようだった
姉妹で同衾…。それはまた、少々こっ恥ずかしい響であった
そりゃ、イヤって訳じゃないし、場合よっては、うぇるかむ まであるけども
望月 「…三日月とが良いんだってさ?」
振られたわ、と首をヨソヨソと首を振る望月
三日月「そう?私は良いけれど」
一緒に寝るの?と、その視線を水無月に向ける三日月
水無月「え、なに?そういう話なの?これ?」
答えに窮している内に、ころころ変わっていく流れ
でも、それはたしかにそうなる
そうでなければ、水無月は床と一緒に寝なければいけないと
水無月「あいやまたれよっ」
しかし、だがしかしだ
さっと手を挙げると、不思議そうに二人がこっち見つめてくる
そう、ここは逆転の発想だ。水無月はお姉ちゃんなのだ
甘えるのではなく、甘えられる側なのだと
水無月「みぃお姉ちゃん一緒に寝たい人っ」
そう宣言した
そして「おやすみなさい」と、銘々に返された
もぞもぞと布団に包まる望月と、いそいそと2段ベッドの階段を上がっていく三日月
水無月「ごめんなさいっ、ごめんなさいっ。誰か一緒に寝てくださいっ、一人にしないでっ」
そうして、妹達の布団に潜り込む水無月だった
ーおしまいー
はい、というわけで最後まで読んでくれた方。本当にありがとうございました
貴重な時間が少しでも楽しい物になっていれば幸いです
前回はコンパクトまとめたつもりが、今回は倍加してしまいました
3万すぎると思えば4万字になってました、2正面作戦なんてやるからいけないんだ
言い訳するなら、これでも2.3パート削ってるんよ
ちなみに、陸奥と長波様の僚艦はご想像におまかせします
吹っ飛ばされるだけのモブで誰か使うのも何か可哀想な気がした上に
流石に扱いきれないのと、まともに描写したら文字数が…ラノベかっての
ーそれではこの番組はー
卯月「うーちゃんのーっ」
ゆー「やってみたかっただけのこーなー…」
弥生「ぱちぱちぱちぱち」
ゆー「ねぇ?どうしてお風呂からスタートなの?」
弥生「サービスシーンは大事」
ゆー「特に描写もしないのに?」
弥生「見えないほうが良いこともあるの」
ゆー「ふーん…。で、あれはなぁに?」
卯月「まぁ、見てるぴょん。きっと面白くなるぴょん」
弥生「BGM流しとくね」
♪我が心 明鏡止水~されどこの掌は烈火の如く♪
球磨「球磨のこの手が真っ赤に燃えるーっ、陸奥を倒せと轟き叫ぶぅぅっ!」
陸奥「げぇっ、球磨ぁぁぁっ!」
球磨「ひぃぃさつっ!第三砲塔粉砕爆雷(シャイニングフィンガー)」(←3式爆雷握りしめてる
陸奥「ちょっとっ!?なんでそんなピンポイントなのよっ!?」
球磨「わかりやすい弱点晒してるからだろぉぉぉっ」
陸奥「ならせめてネタくらい統一なさいよっ!」
球磨「ぜっこうちょーだクマぁぁぁっ!」
陸奥「ひぃぃぃぃぃっ」
どっかーん
長波「おい、止めてやれよ…」
皐月「キミが行ったら良いじゃんか」
長波「やだよ、おっかねぇ」
球磨「ふぅ、満足したクマぁぁ」
陸奥「しくしく…しくしく…」
ゆー「修復剤取ってきますって…」
弥生「そして振り出しに戻るんだね」
卯月「やったね陸奥ちゃん。もう一回」
陸奥「やめてっ」
ー諸々のメンバーでお送りましたー
ー
ー以下蛇足に付き
ー
♪皐月ちゃんラジオ♪
提督「さーっちゃん♪」(←ニヤついてる
皐月「うるさい…」(←そっぽ向いてる
提督「いつまで照れてるの?」
皐月「照れてない。だいたい、今回ドンパチするだけって、なんでラブコメしてんのさ」
提督「イヤだった?」
皐月「…」
提督「にへへへへ」
皐月「わらうなぁ」
ー
皐月「ほら、コメント返し…」
提督「はーい♪」
皐月「わらうなぁぁ」
ー
・睦月型
皐月「じゃあ、まずはボク達からだね」
癒やされるんじゃー
提督「うん、わかるよ」
皐月「なに水無月みたいなこと…」
提督「いや、意外とこの台詞便利でさ。「まぁ、そうなるな」に通じるものが」
睦月姉妹の団子
皐月「結局、望月巻き込まれてんじゃん…」
望月「イヤとは言ってないさ」
提督「面倒くさいなら変わってよって」
望月「変わんなくても、毎日誰かとひっついてるだろ」
提督「4人くらい並べたら消えそうだよね」
皐月「ふよふよ?」
弥生
弥生「ちょっと待って欲しい。アレ、アレ言われてるのはどういうことなの?」
皐月「自分の胸に聞いてみたら」
弥生「?」(←皐月の胸に手を置いて
皐月「いや、ボクじゃなくて。不思議そうな顔もしないでさ」
あまーい
弥生「これは弥生かな?」
皐月「もしくは、太鳳さんとか?」
弥生「じゃあ弥生、だね」
皐月「その自信は何処から?」
弥生「ここ」(←自分の胸に手を置いて
皐月「…そこには置くんだね」
・瑞鳳
提督「両手に花で修羅場か…定番をやるなら…」
卯月と瑞鳳が追いかけっこ→なんやかんやでぶつかる
ラブコメみたいな体勢で組んず解れず、良い感じに服が開けてる所へ
水無月「この泥棒うさぎっ!だねっ!」
提督 「それそれ」
瑞鳳 「変な想像すんなっ」
提督 「えー。こないだ一緒にやったじゃん」
水無月「やったのっ!?」
瑞鳳 「事故よっ事故よっ」
水無月「ぁ、ぁははは…やるには、やったんだね…」
瑞鳳 「いや、それは…」
・北上様
北上「付かず離れずがモットーだよん」
大井「そういうの、奥手っていうのよ」
北上「おっと、人見知りな大井っちに言われたくはないなぁ」
大井「ごめんなさい、ヘタレって言い直すわね」(←ちょー笑顔
北上「あ、ぐさっと来た」
大井「ちなみにね、ギリギリ一歩の所で線を引くのが北上さん
手の届かない所に線を引くのが提督。迫られたらって想像は概ね合ってるわ
幸せになって欲しいってのも同意するけど…。どっちもヘタレよ?何時になるやら」
・太鳳
太鳳 「そんな…家族を焼いたりなんて…私はただ、間違ってる事は間違ってるって…ね?」
瑞鳳 「あ、うん、はい、そうですね」
水無月「死人に口なし?」
卯月 「ううん。瑞鳳は災いの元だぴょん」
瑞鳳「災いの元はアンタでしょうがっ、まいかいまいかいまいかいまいかいぃぃぃ」
卯月「だったら追いかけ回すのやーめーるーぴょーん」
水無月「いっちゃった…」
太鳳 「どっちも子供なんだから…」
水無月「…」
太鳳 「なぁに?」
水無月「ううん、なんでも…えへへへ」
やることはやってる
水無月「あれさ…ぽ。きーゲームていうか…ほとんど…」
太鳳 「ほとんど?」
水無月「いや、だから…」
太鳳 「ほとんど、なぁに?」
水無月「良いよもう…しんないっ」
太鳳 「うふふ。赤くなっちゃって」
・誤字
誤字の指摘、ありがとうございます。こっそり直しておきますね
理路整然だと、言葉の意味になるようですね。不勉強で申し訳ありませんでした
・愛宕さん
リクエストありがとうございます、それと ごめんなさい
試しに話して見ようとしたんだけど、会話が続かんのです
リクエスト自体は嬉しいのですが、かなり選り好みが激しいので何とも言えないことのが多いです
金剛達でさえ、最初は比叡との方が話しやすかったくらいで
何か思いついたら別の所で出すかどうかということで一つ
・更新まってます
拙作をお楽しみいただきありがとうございます
月1くらいで上げられれば、といった所ですので、気長にお待ち頂ければ幸いです
ー
さて、最後までご覧いただきありがとうございました
コメント・評価・応援、オススメまで、重ねてお礼申し上げます
ジェット機を導入しようかと思えば、三川艦隊をどうにかしないといけないようで
おまけに青葉しか持っていないこの状況、皆様は如何お過ごしでしょうか?
私は大鳳改2で、ジェット機が使えるのを祈るばかりです
暑いと思ったらいきなり吹雪いたり、良くもわからない年明けですが
体調などにはお気をつけてお過ごしください
提督「睦月」
睦月「はーいっ。それじゃぁ みんなっ、はりきってまいりましょー♪」
「これでいいかにゃ?」
「うん、おっけ」
「そうかっ」
「そうさ」
「いぇーい」
ー以下プロフィール(長いー
提督
練度:神頼み 主兵装:刀
「えぇ…。やだよ、めんどくさい」
長髪で黒髪、何時も気だるげな表情をしてる
一応、白い制服を着けてはいるが、上から羽織っている浴衣が全てを台無しにしている、不良軍人
そもそも、軍人どころか人ですら無い、元土地神様
覚えている人もいなくなり、ようやく開放されたと思えば、深海棲艦が湧いてきて…
3食昼寝付きの謳い文句も手伝って、提督業を始めだした
性格は、ほとんど子供。自分でやらないでいい事はまずやらない、明日できることはやらないで良い事
悪戯好きで、スカートめくりが好きなお年ごろ
また、結構な怖がりで、軽度は人見知りから始まり、敵は全て殲滅する主義
皐月ー愛称:さつきちゃん・さっちゃん・さっきー
練度:棲姫級 主兵装:12・7cm連装砲(後期型 好感度:★MAX
「え、司令官かい?そりゃ…好き、だよ?なんてな、えへへへ♪」
初期艦で秘書艦の提督LOVE勢。提督とは一番付き合いの長い娘
その戦闘力は、睦月型どころか一般的な駆逐艦の枠から外れている程…改2になってもっと強くなったよ
「ボクが一番司令官の事を分かってるんだから」とは思いつつも
まだまだ照れが抜けないせいか、ラブコメ時には割とヘタレである
睦月ー愛称:むつきちゃん・むっつー・むっつん
練度:褒めてっ 主兵装:12・7cm連装砲(後期型 好感度:★MAX
「提督っ、褒めてっ!」
わかりやすい提督LIKE勢、「ほめて、ほめて~」と、纏わりつく姿は子犬のそれである
たとえその結果、髪の毛をくしゃくしゃにされようとも、撫でて貰えるのならそれもよしっ
好感度は突っ切っているが、ラブコメをするにはまだ早いご様子
如月ー愛称:きさらぎちゃん・きさら
練度:おませさん 主兵装:12・7cm連装砲(後期型 好感度:★9
「司令官?ふふ…好きよ?」
やらかした提督LOVE勢。一昔前、司令官と仲良くなろうと色々頑張ったが
振り返ってみると、かなりアレだったことに気付き、思い出す度に悶絶する毎日
しかし、一度派手なことをやった手前引くに引けず、ラブコメをする度に黒歴史が増えていく毎日
弥生ー愛称:やよいちゃん・やよやよ・やーよ
練度:無表情 主兵装:3式爆雷 好感度:★9
「司令官?好きだよ、普通に」
普通の提督LOVE勢。
いつからだろうか?姉妹たちが司令官にからかわれてるのを見て羨ましく思い始めたのは
弥生にもして欲しいって、弥生だって構って欲しいって、司令官にとっての弥生はどうなのかなって
どうすればいいんだろう?
笑えば良いの?拗ねればいいの?甘えて見せれば良いのかな?
ねぇ司令官…あんまり気づいてくれないと…怒るよ?
卯月ー愛称:うーちゃん・バカうさぎ
練度:ぴょんぴょん 主兵装:超10cm高角砲★MAX 好感度:★7
「司令官?そんなの大好きに決まってるぴょんっ」
ぴょんぴょんする提督LIKE勢。毎日ぴょんぴょんと、あちこちで悪戯しては怒られる毎日
主な対象は瑞鳳、「だって、からかうとおもしろいだもん」なんのかんので構ってくれる瑞鳳が好き
ラブコメというより、騒がしい妹
水無月ー愛称:みぃ
練度:うん、わかるよ 主兵装:12・7cm連装砲(後期型 好感度:★6
「司令官、呼んだかい?」
鎮守府の新人さん。遊び回ってる姉妹たちに安心したのも束の間
その練度の差には、内心もやっともしている。あと球磨ちゃん怖い
提督に対しても好意的で、可愛がってもらいたいお年頃
文月ー愛称:ふみ、ふーみん
練度:ほんわか 主兵装:12・7cm連装砲(後期型 好感度:★8
「しれいかん?えへへー…なーいしょっ♪」
ふんわりとした提督LOVE勢。空気を読んでいたつもりが空気に飲まれたここ最近
司令官を見てドキドキするのは、きっと姉や妹の影響だ、きっとそう
そうなってくると、いつものスキンシップでさえ気恥ずかしい上に
弥生お姉ちゃんが、変な道に突き進んでいるのを止めたりと最近は忙しい
長月ー愛称:なつき、なっつん、なっつ
練度:頼りになる 主兵装:5連装酸素魚雷 好感度:★8
「司令官…いや、まあ…いいだろ別にっ」
おでこの広い提督LOVE勢。司令官に ちゅーしてこの方
自分の感情を見ない振りも出来なくなり、最近は割りと素直に好意を見せてくれたりもする
自分の感情に振り回されるくらいにはラブコメ初心者。あと、シスコン(菊月)
菊月ー愛称:菊→菊ちゃん→お菊さん→きっくー→くっきー
練度:威張れるものじゃない 主兵装:12・7cm連装砲B型改2★MAX 好感度:★7
「司令官か?好きだが?」
箱入り提督LIKE勢。おもに長月に過保護にされてるせいでラブコメ関連はさっぱり
しかし、偶に見せる仕草はヘタなラブコメより攻撃力は高い。やっぱり如月の妹である
大艦巨砲主義者、主兵装は夕張に駄々を捏ねて作らせた。それとシスコン(長月)
三日月ー愛称:みつき・みっきー
練度:負けず嫌い 主兵装:12・7cm連装砲(後期型 好感度:★9
「し、しれいかん…そ、その…好きですっ!」
おませな提督LOVE勢。どこで仕入れたのか変な知識は一杯持ってる
そして、変な妄想も結構してる。すぐ赤くなる、可愛い
提督と望月に、からかわれ続けたせいで、たくましくなってきたここ最近
ラブコメモードは基本に忠実
望月ー愛称:もっちー、もっち
練度:適当 主兵装:12・7cm連装砲(後期型 好感度:★MAX
「司令官?あー、好きだよ、好き好き」
適当な提督LOVE勢。とか言いつつ、好感度は振り切ってる
だいたい司令官と一緒に居られれば満足だし、司令官になんかあれば不言実行したりもする
ラブコメには耐性があるが、やるとなれば結構大胆
球磨ー愛称:ヒグマ・球磨ちゃん
練度:強靭・無敵・最強 主兵装:46cm…20.3cm(3号 好感度:★MAX
「提督?愚問だクマ」
突き抜けてる提督LOVE勢。気分は子グマの後ろに控えている母グマ
鎮守府と提督になんか有ろうものなら、のっそりと顔を出してくる、こわい
積極的にラブコメをすることもないが、昔は提督と唇を奪い合った事もある
大艦巨砲主義者。最近、私製46cm単装砲の命中率があがった、やったクマ
多摩ー愛称:たまちゃん・たまにゃん
練度:丸くなる 主兵装:15・2cm連装砲 好感度:★6
「提督?別にどーとも思わないにゃ?」
気分は同居ネコ。とか言いつつ、なんのかんの助けてくれる、要は気分次第
絡まれれば相手もするし、面倒くさそうにもするし、要は気分次第
特に嫌ってるわけでもないし、いっしょに昼寝もしたりする、要は気分次第
ラブコメ?何メルヘンなこと言ってるにゃ
北上ー愛称:北上様・北上さん
練度:Fat付き 主兵装:Fat付き酸素魚雷 好感度:★7
「提督?愛してるよん、なんちって」
奥手な提督LOVE勢。気分は幼なじみだろうか
このままゆるゆると、こんな関係が続くならそれで良いかなって思ってる
最近の趣味はFat付きをばら撒いて海域を制圧すること
大井ー愛称:大井さん・大井っち
練度:北上さん 主兵装:北上…53cm艦首(酸素)魚雷 好感度:★8
「提督?愛してますよ?」
分かりにくい提督LOVE勢。そうは思っていても口にはしない、絶対調子に乗るから
足と両手が埋まったなら、胸…艦首に付ければいいじゃない、おっぱいミサイルとか言わない
木曾ー愛称:きっそー、木曾さん
練度:悪くない 主兵装:甲標的 好感度:★7
「提督?まあ、アリなんじゃないか?」
カッコイイ提督LOVE勢。提督に赤くさせられたり、提督を赤くしたりと、まっとうなラブコメ組
そういうのも悪くはないが、本人はまだまだ強くなりたい模様
インファイター思考だけど、甲標的を使わせたほうが強いジレンマ
金剛ー愛称:こう・こうちゃん・こんご
練度:Burning Love 主兵装:Burning…46cm3連装砲 好感度:★MAX
「提督…Burning Loveです♪」
分かりやすい提督LOVE勢。提督の為ならたとえ火の中水の中
何時からだったのか、出会った時からか
ならそれはきっと運命で、この結果も必然だったのだろう
けれど、鎮守府ではオチ担当、艦隊の面白お姉さん
取り戻せ、お姉さん枠
瑞鳳ー愛称:ずいほー・づほ姉ちゃん
練度:卵焼き 主兵装:99艦爆(江草 好感度:★6
「だれがお姉ちゃんよっ」
気分は数ヶ月早生まれな幼なじみ。ラブコメルートもあった気がしたけど、何処行ったかな
卯月にからかわれて、追っかけまわすのが日課
だからって、別に卯月を嫌ってるわけでもなく実際はその逆である
夕張ー愛称:ゆうばりん
練度:メロン 主兵装:軽巡に扱えるものなら何でも 好感度:★6
「ゆうばりんって…気に入ったのそれ?」
気分は一個上のお姉さん。卯月や菊月の駄々に付き合ったり
球磨や提督の無茶振りで、アレな兵装を作ったりと、信頼と安心の夕張さんである
特に決まった装備は無く、戦況次第でなんでも持ち出すびっくり箱、安心と実績の夕張さんである
大鳳ー愛称:大鳳さん
練度:いい風 主兵装:流星改 好感度:★9
「提督、愛してるわ」
素直な提督LOVE勢。金剛見たいにテンションを上げるでもなく、息を吐くように好意を伝えてくる方
ラブコメに悪戯にと我慢強い方だが、許容量を超えると…
その落ち着いた物腰からは、艦隊の保護者っぽくなっているが、内心は見た目通り歳相応だったりもする
U-511ー愛称;ゆー、ゆーちゃん
練度:ですって 主兵装:WG42 好感度:★7
「Admiral…提督さん、次は何をすれば良い?」
好きとか甘いは良く分からないけれど
Admiralの お手伝いが出来ればいいなって思います
「敵は討たねば」球磨がそう言ってたので、そこから頑張りたいと思います
なんども全巻読み直してます!
次の更新待ってます!
明けましておめでとうございます。
今年も作者さんのSSが楽しめることを嬉しく思います。
六駆登場。
安定の弄られレディ(自称)な暁にとって、防空だけでなく撹乱・誘引もスペシャリストな卯月は相手が悪過ぎた。
飛び蹴り…三日月は普段は大人しいのに戦闘ではかなり前のめりですね。その意外性がかわいい。
けど陸では見られるから控えた方が良いよ。何がとは言わないけど。誰にとも(以下略)
10秒程度とは言え○○鎮守府最強コンビを完封したふみぃ…強い。
金剛(戦艦)ではゆー(潜水艦)に勝てないような艦の相性は横に置いて、単純に練度の話だと文月はかなり上位に食い込みそうですね。大鳳さん並み?
「不勉~」
→なんの、自分なんてぼた餅に食われるレベルですから(笑)……orz
毎度、長い文ですみません…。
これからも作者さんが楽しんで作り上げた作品を楽しみにしています。