2017-12-18 20:26:25 更新

概要

提督と艦娘たちが鎮守府でなんやかやしてるだけのお話です

注意書き
誤字脱字があったらごめんなさい
基本艦娘たちの好感度は高めです
アニメとかなんかのネタとかパロディとか
二次創作にありがちな色々
長い


前書き

45回目になりました
楽しんでいただければ幸いです お目汚しになったらごめんなさい
ネタかぶってたら目も当てられませんね

今回はやりたい放題の球磨ちゃんと、首輪の外れた ゆーちゃんと
ひたすら鬱陶しい卯月と、そろそろ可哀想になってくる暁で構成されています

ーそれでは、本編をはじめましょうー


↑前 「提督と改2(文」

↑後 「提督とクリスマス(3年目




提督と遠征



ー執務室ー



提督「なんで私らが…」


珍しい。いや、普通であるべきだが、提督が仕事らしい事をしていた

ソファに座る提督、その対面のみつよ様。二人して面倒くさそうな話をしていた


大日本帝国の大本営の大元帥の 御代 みつよ様。ようはお偉いさんである

座右の銘は「大は小を兼ねる」好きな言葉は「大きい事は良い事だ」

白い制服に墨でも流したような黒髪と、勝ち気な瞳が印象的だ

年の頃より体格はこぢんまりとしてはいるが、その態度は有り余るほどにでかかった


みつよ「あら、実績作りは大事よ?実際ね…」


机に付いた肘に顎を乗せて、前のめりになりながら話を続ける みつよ様


提督 「ここいらの海域が異様な程に静かなだけで十分じゃない?」

みつよ「十分じゃないから言ってるのよ…と、言うよりも…」


みつよ様がソファにふんぞり返ると

隣で控えていた大和が、空いた隙間にさっとティーカップを差し込んでいた


みつよ「ふぅ…」


音も立てずに紅茶を嗜む みつよ様

対して、提督の前にグラスを置く金剛。浮かぶ氷に透けて綺麗な紅茶の水色が映えている

が、そんな情景を提督が楽しむはずもなく、グラスが汗をかくその前に一気に飲み干すと

空になったグラスが からから と笑い声を上げていた


金剛「ぶーっ」


その笑い声が気に入らなかったのか、みるみると表情を曇らせる金剛さん


みつよ「私、紅茶をラッパ飲みする人ってどうかと思うのよ。いくらアイスでもね…」


あくまでも、あくまでも優雅に紅茶を飲み進める みつよ様


提督「ん、美味しいとは思ってるよ?」


少なくとも自分で淹れるはよっぽど

どれだけ手間をかけているのか、少なくともポッドに茶葉を直接放り込んではいないだろう


みつよ「伝わらない感謝は無いのと同じよ?」


「ほっ」と、息を吐き、ゆっくりとカップを机の上に戻す みつよ様


提督「ん?」


見上げる金剛の表情、確かに不満そうだ

けれど紅茶一つに見た目を香りをと言われても、私としてはさっさと飲ませて欲しいのだが


それはそれか…


提督「金剛(こう)…おかわり」

金剛「良いけどさー…」


カラリ…響く氷の音

納得いかない顔をしながらも、透明なグラスが紅茶の水色に染まっていく


ごっくん…


提督「ふぅ…」

金剛「ぶぅー」


同時に息を吐く2人。片方は満足そうに、もう一方は不満そうにではあったけど


提督「で?」


むくれる金剛に おかわりを要求しながらも話を続きも要求する


みつよ「敵は討たねば。貴方の好きな言葉でしょう?」

提督 「藪蛇をする趣味はないよ?」

みつよ「蛇が怖いなら藪ごと焼けば良いと思わない?」

提督 「道理だが…」


そして最初の疑問に到達する


提督 「なんで私らが…」

みつよ「そりゃっ、馬鹿みたいな練度のっ馬鹿みたいに暇な娘達なんて都合の良い連中が他に無いからよっ」

提督 「お隣さんだって大概だろう…」


ビスマルクだって戦果上げたがってたし

夕立あたりなんか、持て余しすぎて喜んで駆け回りに行くだろうさ


みつよ「子供の言い訳ねっ」

提督 「でしょうけど」


「さて」言葉一つ、席を立つみつよ様


提督 「まだ何もは言ってないんだけど…」

みつよ「聞く必要はないわっ」


先だって大和が開いた扉をくぐる みつよ様。一つ礼をした後に、大和もその後に続いていった


提督「強引な…」


ソファに身体を投げ出し天井を見上げる

別に何があるわけでもないけれど、そうせずにはいられなかった


提督「で、金剛は何をむくれて?」


その視界の片隅には不満げな金剛が映っていた


金剛「べっつにーっ、ほんとお茶の淹れがいがないよねっ」


唇を尖らせて、つーんっとどっかを向く金剛さん


提督「私がポットに茶葉を放り込んだら怒るくせに」

金剛「当たり前でしょっ、あんなっあんなものはねっ」

提督「じゃあ良いじゃないか。金剛が淹れてくれた方が美味しいのはそうなんだし」

金剛「なーんか、なーんか、ずるい言い方ね…」

提督「嘘はいってない」


その証拠に、空になったグラスを金剛に差し出した


金剛「いいですけどー」


納得は言ってないが悪い気もしないのか、ぶつくさ言いながらもお茶を注いでくれた


提督「皐月…」

皐月「うん」


そんなラブコメも一息付いた頃

少しばかり真面目な提督の呼びかけに、しっかり頷く皐月だった




瑞鳳「しつもーん」


おもむろに手を挙げる瑞鳳


瑞鳳「なんで提督が仕事してんの?」


招集がかかるまでは良いとして、作戦の説明をしているのが提督という事実の方が不可解だった


提督「寝ていいならそうするけど…」


それでも一応は提督って立場もある

近海警備なら勝手にどうぞだが、遠くにまで行ってこい話で何もしないのも座りが悪い

かと言って、何が出来るでもないのはそうだけど

帰ってくる場所は守ってるから、なんてそんな深刻な戦況でもないのだし


球磨「別に構わねークマ」


お偉いさんに何を言われたかは知らんが

ようは、行って張っ倒して帰るだけ。どこかの騎馬民族も推奨していたはず

上の事情はどうあれ、球磨たちが考えるのはこの程度の話でしかないのだから


大鳳「変に改められると逆に不安というかまあ…ね?」


この人が寝っ転がってる限りは大抵の事はどうでも良い話だと言い切れるから

起きてる方が逆に不安なくらいで、そのままで寝てて欲しいまではある


提督「大鳳さんまで…。皐月、私って人望ない?」

皐月「日頃の行い…」


なんて傍らの皐月に縋ってみるも、バッサリと切り捨てられた


提督「さっちんまでそういう事を言う…提督かなしい…」


分かりやすい嘘泣きをしながら、「およよ…」机の上に泣き崩れる提督


弥生「大丈夫、弥生がいるよ?」


傷心の提督の袖を引き、ぐっと無表情のまま親指を立てる弥生


提督「やーよー…」

弥生「よしよし」


弥生に抱きつくと、邪魔な身長差を埋めるべくそのまま抱き上げる提督


卯月「それで?うーちゃん達なにすればいいの?」


不思議そうに首を傾げる卯月


提督「ああ、囮だってさ」

卯月「ぷっはっ」


それを聞いて突然吹き出す卯月だった


卯月「まーっ、ずいほーだしー?囮くらいが丁度いいぴょんっ」


ばっかみたいに笑いながら、意味なく瑞鳳の背中を叩き始める


どうしてだろうか、わざわざ言う必要のない煽り文句を口にするのは

どうしてだろうか、そんなしょうもない事なのに そこまで楽しそうなのは


誰もがそう思いながらも、誰も口にはしない そんな日常的な光景だった


提督「いや、お前も行くんだけどね?」

卯月「ぴょん?」

瑞鳳「ふふっ」


今度は瑞鳳が吹き出していた


瑞鳳「まあ?卯月なんて囮で十分だしね?」


どうしてだろうか、わざわざ構う必要もないのに煽り返すのは

どうしてだろうか、そんなしょうもない事なのに そこまで楽しそうなのは


瑞鳳「ふふふふふっ」

卯月「うぷぷぷぷっ」


しばらく2人で微笑み合う

そこで切り取れば随分と仲が良さそうなものだけど


「なによっ」「なんなのっ」


それはすぐにケンカに発展していた


弥生「ねえ、司令官?」


抱え上げていた弥生が、耳元で話しかけてくる


弥生「あの2人を選んだ理由は?」

提督「目立つと思って」

弥生「だと思った」


弥生のお墨付きも貰えた




大鳳「でも空母2人、出しちゃって大丈夫なの?」

提督「近海なら基地航空隊が使えるし。何より、向こうで頭の上取られるの嫌くない?」

大鳳「それは…」


確かに、保険の掛けづらい環境だと そうなんだろうけど

かと言って、基地の空母が全くなしってのも少々心配ではあった


大鳳「だとして、航空隊の練度、大丈夫なんでしょうね?」


その疑問はもっともで、だからこそ胸を張って返さなきゃ


提督「今なら大鳳さんにだって勝てるよっ」

弥生「ゔい」


えっへんと胸を張る提督の隣で、小さくピースサインの弥生


大鳳「うん、ちょっと外出ましょうか…」

提督「あ、ごめんなさい言い過ぎました」

大鳳「素直で宜しい。で、ホントのところは?」

提督「瑞鳳の下くらいじゃない…」

大鳳「…」


不安しかない

いや、瑞鳳の下が悪いんじゃない。そこを気にしたら彼女の努力に失礼だ

問題は、どこまで下になるのか…せめて足元まであれば 数で賄えるけど


球磨「良いだろう。別に姫様たちがぽんっと出てくるわけもないクマ」


ゼロではないが。砂浜に落とした貝殻探すレベルの話をしてもしょうが無い

仮にでてきたとしても、皐月が残ってるなら気にするほどの話もないだろう


球磨「それよりもだ。金剛まで連れて行く気か?」

金剛「そうですよっ。大鳳達を出すならせめてっ」

提督「同上だよ。出先で火力不足はどうにも怖い」

球磨「心配性め」

提督「それに囮だよ?大型艦が多い方が目立つし、無視もできないでしょう?」

球磨「雷巡は?火力の問題ならそれでも良いはずだクマ」

提督「脆すぎてちょっとなぁ…。殴り込みかけるならともかく…」

球磨「まぁ、それもそうクマ…」


遭遇戦から最悪の撤退戦まで考えると継戦能力的にも不安と言えばそう


金剛「むぅ…。でもぉ…」


理解はしたが、納得はしてないそんな顔

いや、納得だってしてるんだろう。あとは心境の問題で、そこまで心配されるのは素直に嬉しいけれど


提督「金剛なら皆を守ってくれるでしょ?」


彼女の手をとり両手でつつむと自分の胸に押し当てて、まっすぐに伝える視線は信頼を


金剛「ぅっ…そういう言い方は…分かりましたよ…もう」

皐月「大丈夫だよ、金剛さん。ボクもいるし皆だって、ね?」

金剛「OK。任せましたよ、皐月」

皐月「うんっ、まっかせてよっ」


頷きあうと、2人の拳が重なった




「任せたよ、弥生…」

「うん、任せて司令官…」


小さく手を振る弥生に手を振り返す

「行ってきます…」その一言だけを残す弥生の背中を見送った


「皐月」


いつものように彼女の名前を口にする

何も付け加えることもない、それだけで伝わるだろうと思ってたし、実際それで十分だった


「うん。そろそろ来るんじゃない?」


「ほら?」まるで合図でもしたみたいにぴったりだった

小さく開く扉の隙間から、小さな頭が覗いている


「Admiral?ゆーに御用?」

「うん、ゆーに御用」





ー工廠ー



ポーラ「えっ!?ないんですかっ」


意外や意外

空母が居ない今こそポーラの出番だと思ってたのに

水上戦闘機は色々と難しいのかもしれないけども


ポーラ「ずいうーん とか、こないだお祭りまでやってたのにっ」

夕張 「ああー、それねぇ…」


大本営のお遊びは置いといて

瑞雲が優秀なのはそう。強いか弱いかで言えば弱いのだろうけど便利なのは違いない

それでも何故 用意してないかと言われれば


夕張「ポーラが来るまで誰も積めなかったし…ねぇ?」


言わんや、金剛さんに無理やり積むかって話も無くはなかったけど

逆に、そこまでするか?という意見にコレと言った反論も出来ずに、なぁなぁと先延ばしになっていた

何より、基地航空隊なんてものを増勢してしまうと、近海が大好きな私達にとっては…というのが止めだった


ポーラ「でもでもっ、ポーラが来てからそこそこ経ちません?」

夕張 「提督(あの人)の事だし、忘れてるんじゃない?」


かくいう自分もその一人なのは置いといて、責任だけは提督に丸投げしておく


ポーラ「なんという…」


がっくりと項垂れると、固いコンクリートの床に四つん這いになるポーラ

これが呑んだくれた後なら、ばーっといきそうな体勢にも見えた


ポーラ「も、もしかしてポーラ…意外と期待されてません?」


そりゃ、積めると言っても航空巡洋艦なんて面白艦種じゃありませんし

猫の額を雀の涙で濡らす程度のものですけど、有ると無いのって結構違うと思いません?

お酒だって、赤ばっかりよりも白があった方がいいし、シャンパンにビールにって、まさか…


ポーラ「お、お酒ばっかり飲んでるからでしょうか…賑やかし要員って事ですか…」


ゆーさんがお酒飲むなって言ってたのはそういう…

こないだ執務室で潰れてたのがいけないんでしょうか

それとも年甲斐もなくすっぽんぽんになったのが…いや、あれはお風呂場だったしセーフのはず…


夕張「大丈夫?お酒飲む?」


打ちひしがれるポーラにそっとお酒の瓶を差し出す夕張さん


ポーラ「のむ~♪」


ちょろい、なんて言われようとも実際飲まなきゃやってられなかった

コルク栓を指で弾き飛ばし、透明なボトルを口の上でひっくり返していると


妖精「出来ました」

夕張「あ、間に合ったのね。よかったよかった」


ちょちょいと肩を叩かれると、親指を立てる妖精さん

急造とは言え間に合ったのは丁度いい


「豆鉄砲を大きくしただけですが」

「空しい努力ですな…」

「涙ぐましや…」


夕張「…」


とまあ、改造してくれた妖精さんたちからしてもそんな意見なんで、性能的にはお察しかもしれない

それでも、やけ酒を始める娘には そこそこ効果はあったようだ


夕張「提督からのプレゼント、使う?」


手の平に当の妖精さん(Ro.44水上戦闘機)を乗せてポーラに差し出してみる


ポーラ「ぉ…」


眼と眼が合う。見慣れた茶色の飛行帽、ふわっふわの金髪

そして何より、ぐっと握りしめた拳は その気合を伝えてくる


きっと、握手が出来たら手を握り合っていただろう

夕張さんの手から その娘をすくい上げると静かに立ち上がる


ポーラ「旗艦ポーラ、出撃します…」


妖精さんを肩に乗せ、颯爽と歩き出すポーラ

その後ろ姿はついのさっきまでやけ酒をしてた娘とは思えないほどキリッとしていたけど

床に転がる空き瓶が、何よりも飲むものは飲んでおくと語っていた


夕張「現金だこと…」


「さて…」ポーラを見送ると自分の装備の準備が待っていた

今年も何故か始まる秋刀魚漁、夕張さんは色々と忙しいのです



ー海上ー



卯月「ぷーっ、どうして うーちゃんが瑞鳳の護衛なんか」

瑞鳳「うっさい。嫌なら大鳳さんにでも付いてりゃ良いじゃない」

卯月「はぁー?言葉が違うでしょっ「うーちゃん、ちゃんと私を守ってねっ」とか、司令官がときめきそうな事言えないのっ」

瑞鳳「あの人がときめいたらロクな事になんないじゃないっ」

卯月「そうだけどっ、そうじゃないぴょんっ」

弥生「瑞鳳お姉ちゃんは意地っ張り」

瑞鳳「誰が意地っ張りですかっ。私はいつもこんなんですぅっ」

弥生「真似しないで、それは弥生のだから…」




大鳳「楽しそうね?」

球磨「やかましいだけだクマ」

金剛「目立つというのもわかりますねぇ…」


「いったぁっぁぁいっ」言ってる側から、後方で悲鳴が上がっていた


卯月「たいほーっ、ずいほーがぶったーっ」

大鳳「もう。瑞鳳はすぐ手を上げるんだから」

弥生「金剛さん…瑞鳳お姉ちゃんったら、弥生の真似ばっかり…」

金剛「Oh。瑞鳳もまだまだ子供ですねー」

瑞鳳「ちょっと球磨。旗艦なんでしょっ、どうにかしてよっもうっ」

球磨「クマぁ…」


遠足か、これは…。遠征と聞いていたが遠足だったのか

卯月と瑞鳳、確かに目立つが…


球磨「クマ…?」


空気が変わる。何か湿った、捻れたような…


大鳳「とりあえず、頭は抑えるわ」

球磨「クマ。金剛…」


さすが大鳳 話が早いクマ

既に艦載機の発艦を始めている大鳳を横目に今度は金剛へ


金剛「OK。では提督への愛を込めて…」


最大出力で電探照射。四方八方へと自分達の位置を知らせるように

こっちの位置がバレるのはそうだけど、囮なのだから都合が良いし

むしろ相手の位置が分かるのだ、悪いことなんて一つもない


球磨「とんだ怪電波(ラブレター)だクマ…」


次いでに飛ばされる無駄な電文

歯が浮きそうな恋文の中から暗号を抜き出すと、とりあえずはそれっぽい作戦概要が埋め込まれていた


球磨「瑞鳳も、いつまでも遊んでるな…」

瑞鳳「遊んでって…もうっ」

卯月「ぷぷっ、怒られてやんの」

瑞鳳「…あとで覚えてなさいよ…」

弥生「うん。卯月も少し静かにしようか…」


そうして楽しい遠足は一旦お預けになり

静かだった海はにわかに慌ただしくなっていく



ーー



暁「これでっ」


主砲を構える。もう放っておいても沈みそうではあるけれど

手を出した事への責任と、艦娘としての義務感と…


電「まって欲しいのですっ」


それでも、せめての情けがその手を掴んでいた


傷ついた深海棲艦に向けられている主砲

もう一つ指でも動かせば、それで終いの最中を引き止める声


暁「…あーはいはい、深海棲艦なんて居なかった、これで良いんでしょ」


肩の力を抜く暁

流石に主砲を下ろすまではしないでも、今すぐどうにかする気も無くなっていた


電「早く行くのです。出来ればもう、現れないで欲しいのです…」


それが無理だと分かっていても、傷ついた相手を余計に傷つけるのは心苦しかった

ならせめて、このまま引いてくれるならと、願う事しかできなかった


言葉が通じたとは思えない

だって、姫でも鬼でも、まして人型でもないただの駆逐級だ

けれど、それが通じたように不味い動きで反転しながらゆっくりと後退していった


電「ふぅ…」


良かった、本当に

一時しのぎにしかならないとしても、無駄な犠牲が出るのは嫌だった


響「一応…」

電「はわっ!?」


軽く、ではあったが

それでも、痛みは感じる程度に頭を小突く


響「あまり褒められたものでは無いからね」

電「はい…。ごめんなさい…」

響「私に謝ってもしょうが無い…」


願わくば、見逃した駆逐級がいらない被害を産まないことを

とは思いつつも、妹の奇行を許しているのはとんだ矛盾ではあった


雷「良いじゃないっ。あんなの次出てきたら またぶっ飛ばせば良いのよっ」

暁「そうよっ。暁の、私達の敵じゃないんだから」

雷「ま、暁が一撃で落としておけば、こんな事にはなってないけど」

暁「なぁっ!?雷だって外してたでしょっ」

雷「外したんじゃないわっ、牽制よっ」

暁「私だってそうよっ。次の一撃で落とすつもりだったんだからっ」

電「あのあのっ、ケンカは…」

響「やれやれだ…」


考え過ぎではある

こんな広い海で、自分達が逃した駆逐級が次の誰かを襲う確率なんて…


突然だった…


爆発、そして海を突き破り、駆逐級の腹に風穴が開くと粉々と崩れ落ちていった

その、残骸を押しのけて姿を表す少女が1人


「随分と、面白いことをしてるんだね…」


「って」と、思い出したように可愛らしさを貼り付けると

白金の髪を翻し、肩越しに青い瞳を覗かせていた



ーー



球磨「慢心だな…」

大鳳「そうね…」


金剛の怪電波(ラブレター)の甲斐もあったのか、思った以上に敵が集まっていた

幸いといえば、八方塞がりになるまでの若干の暇があったくらい

戦いは数だというのはその通り。でもそれは、よーいドンで始めた場合

そうでないなら崩しやすい所から崩せばいい

囮の役に徹するなら、適当に引きつけて一点突破で逃げてもいいが


「ま、別に全部倒しても構わんだろう?」とは、旗艦様(球磨)のお言葉で

実際問題、八方の内の残りは2方程度。やってやれない事もないどころか、片手間で事足りる気ではいた


瑞鳳「ごめん皆、ちょっと…」


瑞鳳が中破してなければ、だが


そもそもが、近くに爆弾落とされて、卯月に笑われた後いつものケンカに発展しようとした所にもう一発

自業自得としか言いようのない結果ではある


それでも放って置いたのは

いつもの事だという慣れと、ちょっとした賑やかし…やはり慢心だというしかない


金剛「さて、どうするね?もう退いても十分過ぎますが…」


新しくアイアンボトムサウンドが作れそうなくらいは蹴散らしてるし

囮どころか、今頃本体は楽してらっしゃると思えば、コレ以上は不要かとも


大鳳「平気?」

瑞鳳「平気よ。自衛ぐらいなら、まだ出来るから…」


大鳳の視線に頷いて返すと、頭を振って矢を番え直す


球磨「良い返事。なら球磨が全員引きずり倒すまで気張っているクマ」


キラリ。金属を弾く音と共に、放り投げられた銀色の指輪が陽の光を照り返す


「エンゲージ」


そして、音もなく左の薬指に指輪が落ちると同時に、球磨の体から桜色の光が噴き出した


大鳳「提督には負担掛けるわね…」

球磨「知らんクマ。どうせ今頃はサンマ食って遊んでるんだろ」

大鳳「まぁ…」


時期的にはそうだろうし、そうだろうと思うと「まぁ、良いか」とも思えてくる不思議

ボウガンのカートリッジを入れ替えて大きく深呼吸、そして…


大鳳「エンゲージ…」


ふわりと広がる桜色の光


球磨「上は任せたクマ」

大鳳「了解…。突っ込むのは良いけど、無茶しないでよ?」

球磨「無茶?それは向こうに言ってやるクマ」

大鳳「頼もしいことで」


ネ式エンジンもかくやという風体で

轟音を上げるスクリューと噴出する桜色に押し出され、球磨が敵陣の只中に突っ込んでいった






金剛「ん~♪」


紅茶が美味しい

開放的な海のど真ん中、澄み渡る空は何処までも清々しい

硝煙の匂いも慣れたもので、今では良いアクセントにさえ思えてくる


金剛が紅茶を嗜んでいる その隙きに、こっそりと旋回を続ける主砲(46cm

カップから口を離し、受け皿に戻すと同時に上がる砲火

遅れて数秒の後、1つ2つと敵艦が水柱の中に飲み込まれていった


思うに、もう出番は無いだろうと。前線では球磨と大鳳が暴れている、指輪付きで

取り逃すことはあっても状況終了は時間の問題だし、その取り逃しは自分が処理してまわればいい


ええ、そう、何一つ逃しはしませんとも


目に見える戦果があるのが良いというのなら せっかくだ、作っておいて損もなし

主砲が火を吹き、紅茶が波紋を描く。それに口を付ける頃には、またぞろ逃げ出した敵が沈んでいた


残る問題はと言えば…


そっと後ろを覗き見る。手傷を負った瑞鳳から離れようしない卯月

指輪の一つでも使って飛び出すかとも思ったけど、随分と懐いたものだと思う


金剛「それで弥生。あなたは何をしているの?」

弥生「しー…」


人差し指を口に当て、静かにと促す弥生

空いた手には、お手玉を転がすように弄ばれている爆雷


ぽんっ、ぽんっ、ぽんっ…


1つ、2つ、3つ…


跳ねて、跳ねる、放った…


綺麗なオーバスローだった

ドラム缶状の爆雷が真円に見えるほどに乱回転を起こし、急に角度を変えた思えば鋭く海面に突き刺さる

外れたか?と錯覚するほどの間、期待と諦めが入れ替わり始めた頃

海面が膨れ上がり弾け飛ぶ。吹き出した水飛沫の中には黒々とした何か織り交ざっていた


弥生「やった…」


小さくガッツポーズ


金剛「おぅ…」


お見事としか言いようがない、カップが無ければ拍手さえしていたくらいには


弥生「さあ、金剛さん」

金剛「?」


潜水艦の撃破を確認すると、音もなく金剛に向き直る弥生

そうして静かに腕を広げると「褒めて」と…


弥生「弥生をもっと褒め称るの」


それはまた無表情のままで、広げられた両手だけが賞賛を期待していた


金剛「ぐーれいとー♪やっぱり弥生が一番ですねっ」


親指を立ててサムズアップ。正直これでいいのかと、小学生並みの感想ではないのかとも思ったが

「そうでしょうそうでしょう」と、弥生が満足そうに頷いているのなら、きっと正しいのでしょうね


弥生「あ、球磨さん足元…」


かと思えば、耳に手をあて球磨に通信を飛ばす弥生


金剛「クレバーですねぇ…」


頼もしいというかなんというか






それは金切り声なのか何なのか。金属の悲鳴、悲鳴のような金属音だった

装甲が拉げ、指が食い込む。上体が海から離れると、あとは一気に上空に放り投げられていた

が、戻ってこない落ちても来ない。突然爆発し、黒い雲の中から艦爆が飛び去っていく


球磨「さて…」


爆風に揺れる長い髪。飛び出したアホ毛がクルクルと周り、一方向を指して動きが止まる

ルーレットの結果は重巡。何の事はない姫でもないなら対して変わりもしやしない


球磨「くぅまぁぁ…」


地獄のそこから漏れ出した様な声だった

漏れた吐息からは桜色の燐光を溢し、節々から噴出する光は濃度を増しに増して、いっその血の色のようにさえ見えてくる


機関最大、全速前進

急激に加速したかと思えば、伸ばした腕に駆逐級を引っ掛け一足飛びに重巡に飛び込む

飛んでくる砲弾、引きずり倒した駆逐艦を投げ飛ばし体よく盾に使うと

さらに砲撃を追加して向こう側へと吹っ飛ばす


前からも後ろからも、両側からの砲撃にどちらにも行けず空中で踊り続ける駆逐級

そこへ追いついて来た球磨が飛び蹴り(ラムアタック)をかまして、ついには重巡の元へとたどり着いた


交差する視点。開かれる瞳と瞳、驚愕と殺意とを乗せて混ざり合う


慌てた様に主砲を向ける重巡。目と鼻の先に開いた砲口、次の瞬間には火を吹くであろうそれに手を伸ばした

砲口に蓋をして、逃さないように握りつぶし、手元に引き寄せ、近づいてきた奴の顔を頭突きで受け止める

掴んだ腕が鎖になり目いっぱいに伸びきる。その隙に、その隙間に、展開した山の様な25mm三連装機銃を一斉に叩き込んだ


沈みはしない。腐っても重巡の装甲だ、たとえ装甲が抉れて、肌が傷つこうがその程度

さらに その程度の上に銃弾を重ね続けると、ついには爆発が起こり始め、流れる血が隠せなくなっていく


球磨「終わりだクマ…」


手を放す。身体を捻り、伸ばした足をしならせて目一杯に叩き込んだ

「ガッ…」悲鳴か、あるいは絶命したか、そんな今際も炸裂した魚雷が掻き消してしまった


やりたい放題だった。艦の戦い方じゃないし、艦娘のそれかどうかも怪しいくらい

いっそ獣かそれ以外の何かと言う方がしっくりくる程の強引さで、「クマクマ」言って振りまいている可愛さが余計に恐ろしく見える


「あ、球磨さん足元…」


球磨「クマ?」


不意に届いた弥生の通信。言われて下を覗いてみても海は広いし とても深い


相変わらず雑だクマ…


「どこだよ」と言いかけた言葉を、どこでも良いかに変換すると

オモチャ(私製46cm単装砲)を取り出して、その先を海面へと向ける


「機関一杯…」「砲弾装填…」「炸薬よろし…」「信管調整…」「総員衝撃そなえー…」


次々に妖精さんたちから上がる報告、そして最後の締めに


「撃てます…」


球磨「サケが来たら…こうだクマ」


ニヤリ、歪む口元。引き金を引けばそれまでだった

衝撃で足元が沈み込むがその先は更に酷い


抉れるわ、割れるわ、爆発するわ、吹き飛びわ、弾け飛ぶわ


およそ考えられる天変地異の全て局地的に発生していた


「どうして球磨さんは そう強引なの?」


通信機の裏側から弥生の呆れた声が聞こえてくる


球磨「お前が言うなクマ」


球磨が強引だと言うなら、弥生は雑ではないかと


「酷い…ちゃんとそこにいたじゃない」


球磨「くまくまくまくま♪ なら、何も問題はないクマ」


「それはそう」


適当な娘達だった






大鳳「球磨、あなた もう少し丁寧に戦えないの?」


その肉を切らせて…見たいな戦い方、見てる方が心配になる

ていうか他の娘達に見せられたものではない、ドン引きされるか、萎縮させるならまだしも

真似しようとか思われたら堪らない、特に菊月とか…幸い あの娘には向かない戦い方だから良いものを…


球磨「傷は艦娘の勲章だクマ」


修復剤(つば)でも付けてりゃ すぐ治るのだ、死ななきゃ安いとはまさにこれ

まあ確かに、おなじく指輪を使っておいての この差は性格に寄るものか、艤装に寄るものか興味はあった


球磨「壊し方を選ぶのが そんなに上等クマ?」


大鳳を中心した同心円状に散らばる深海棲艦の残骸

涼し気な当人とは打って変わり、凄惨なその光景は戦後であることを物語っていた


大鳳「選ぶ余裕もないなんて、人形(ぬいぐるみ)と一緒じゃない?」


らしくもない挑発だとは口にしてから思ってもしょうがないけど…

ダメね…。戦いの熱に浮かされてるのもあっただろうけど

正直に言えば球磨(コレ)を抑えられるのかと…。自分の実力の程が気にはなっていた


球磨「ぬいぐるみじゃねークマ…」

大鳳「そうだったかしら…」


膨れ上がる戦いの気配。戦闘の後だと言うのに始まる前より異様に、異常なまでに

叩きつけられる桜色を やんわりと受け流す花びら

すぐにも吹き飛ばされそうなのに、どうしてかそこを境に拮抗していた


「スットプよっ、二人とも…」


横から割り込んできた金剛の通信に、暴発しそうだった空気が一瞬緩む


「そんな事より今は瑞鳳でしょう…じゃないと、じゃないとーっ…」




金剛「お願い、まって弥生っ。落ち着いて下さいぃっ」

弥生「何を言っているの金剛さん?弥生はすっごく冷静だよ…」

金剛「なお悪いよっ」


弥生の首にぶら下がる指輪。そこへ伸びる細腕を必死に抑えている金剛

どこにそんな力があるのやら、戦艦の腕力を引きずりながら刻々と胸元に指が近づいていった


弥生「別に怒ってないよ、弥生は怒ってなんか全然ないけど…」

金剛「うそっ。怒ってるわっ、弥生はいっつもそうよっ」

弥生「別に…弥生ただね?」


瑞鳳と卯月を連れて帰投したいだけなのに、バカがバカみたいにバカ騒ぎを始めようとするものだから、仕方ないかなって、弥生だって心苦しいんだけど、口で言ってもしょうが無いから黙らせるしか無いかなって思うじゃない?ねぇ、金剛さんどうして邪魔をするの?金剛さんもその一人なの?度し難い、あぁなんて度し難いの…司令官のお願いも聞かなきゃいけないってのに、こんな所で遊んでる暇なんかないんだよ、しょうがないったらしょうがないよね…ほんと弥生は怒ってなんかないんだけどさ、冷静に客観的にね?弥生の本分を果たすよ…えんげ…むぅ


金剛「だから駄目ですってばっ」


慌てて弥生の口も抑えて羽交い締めにする。いま此処で そんな事をされたら埒が明かない所か収集が付かなくなる

指輪付き3人のじゃれ合いを止めるなんて、こっちもその気じゃなきゃやってらんないよっ

そんなの第三次世界大戦の方がまだマシに思えるわっ




「球磨っ、大鳳っ、今おっぱじめたら後で酷いよっ!!」


金剛の上げる悲鳴の隙間、抵抗する弥生の音がノイズの様に入り乱れていた


球磨「…戦いの空気じゃねーな…」

大鳳「…そうね、戻りましょうか…」


囮機動部隊作戦…状況終了



ーー



「はわっ」「あんたは…」「げっ…」


響「これは…」


突然の来訪者に姉妹たちがそれぞれに驚いている中、響の背中には嫌な汗が流ていた


どうする?どうして彼女が此処にいる?

たしかに司令官が陽動の部隊がくるとはいっていたが…

まさか彼女がそれという事もないだろうし、だいいち海域は此処ではなかったはず

何よりだ…私たちはこの状況、なんと答えれば正解になるのか…もし、いまのを見られでもしていたのなら


響「いや、手間を掛けさせたね?」


ともあれ、黙っていても仕方がない。一先ずは、何食わぬ顔をするのが無難だろうとは


ゆー「良い。魚雷の分はそっちに請求しますって」

響 「それは、駆逐一つに高く付いたかな…」

ゆー「?」


そこで、ゆーが首を傾げた。不思議そうな顔で「何を言っているの?」と言いたげに

嫌な予感が鎌首もたげてくる、正直に一番考えたくなくて一番最初に蹴り飛ばしたパターンだ


ゆー「いえ、もう一つですって」


艤装の片割れ、その艦首が響の後ろ、一番奥にいる1人に差し向けられる


暁「ちょっとあんたっ、いきなり何よっ!」


同時に、響を押しのけて暁が姉妹たちの前に立った

遅れて、雷が電を庇うように後ろへと下がっていく


ゆー「何って?」

暁 「不思議そうな顔すんなっ。いきなり魚雷突きつけて、どういうつもりかって聞いてるのっ」

ゆー「あぁ…」


魚雷を下げると、替わりにWG42を両脇に展開する ゆー


暁 「ちっがーうっ!!武器の話なんかしてないわっ、ケンカ売ってんのかって言ってるのよっ」

ゆー「まさか。ゆーは良い娘ですので」

暁 「アンタが良い娘だったらっ、私なんかスーパーレディよっ」


えっへんと鼻を鳴らし堂々と胸を張る暁

そんな、ポーラのより小さいものを見せびらかされても面白くもなんともないのだけど今はどうでも良いっては思う


ゆー「…」


白い目。呆れるように目を向けた後


ゆー「たわけたことを…」


ぽつりと、それは海面にでも投棄するような一言だった


暁「むっかっ!」

響「落ち着いて姉さん…」


相変わらず口の悪い娘達だが、我が姉の煽り耐性の低さも大問題ではある


暁「何よっ、コレが落ち着いて」

響「うん、ならせめて黙ってくれないか?」

暁「なぅ…」


鋭い視線と、強めた語気に押されて。口からでかかった文句も喉の奥へと押し込まれてしまった


響 「一つ良いかい?」

ゆー「なーに?」

響 「キミは…何をしに来たんだい?」


恐る恐る…でも聞かなければ行けない、彼女が自分達の海域の外に出てまで何をしにきたのか…

ましてや、自分の妹に魚雷を向けている理由を…たとえ、大方の予想がついていたとしても


それが、ハズレであることを願わずにいられなかった


ゆー「ああ、そんな事…ゆーはね?ゆーはただね…」



ー大本営・執務室ー



大和 「本当に良かったのですか?」

みつよ「ダメだったの?」

大和 「いえ、それは…。ただ、アレに任せるのは少々不安といいますか、不満といいますか…」

みつよ「それは個人の嗜好でしょう?」

大和 「私が、アレのことが苦手なのは認めますが…」

みつよ「えらいわっ、言葉は選ぶものよねっ」

大和 「茶化さないで下さい…」

みつよ「まさか自分が出たかったとでも?」

大和 「いえ、不向きなのは理解しています。私達では目立ちすぎますから…」

みつよ「結構っ。じゃあ良いじゃない?」

大和 「おひいさま…彼女を沈めるおつもりですか?」

みつよ「まさか…。私の命令聞いていなかったの?」

大和 「言葉通りには受け取れません…」

みつよ「そうね、まあ、そうよね…でもね大和…」


近頃、散見されるようになった手負いの深海棲艦

いや、あるいはもっと前からではあったのだろう、ここ最近に気になりだしたと言うだけで

たまには取り逃すこともあるだろうとも考えたが、それにしてはあまりにもあんまりだった

手負いの深海棲艦くらい…とも思うでしょう、しかもその大半が駆逐や軽巡の小型艦…

ちょっと訓練を積んだ艦娘なら歯牙にもかけない程度ではある

が、それでも人は死ぬ。今でこそ一般航路に影響は無いけれど、あってからでは遅すぎるし

回復したらまた襲ってくる上、それでさえ海に上がったばかりの小娘達には脅威だろう

慈悲か情けか知らないが、死ぬならまずは自分から死んでみせろとも…


そのためにわざわざ遠征なんかさせたりして、ついでに目障りな泊地攻略も進んで結構な話しではあったけど


「私、結構怒ってるのよ…」



ー海上ー



ゆー「そんな娘は居なかった…って」


なんて、Admiralにお伝えするだけの簡単な お仕事


響「…それは」


何とでも取れる言い回しだ。暁なんか意味がわからなくてキョトンとしている

「そんな娘は居なかった…」なんて、都合よく考えれば此処で電を説得して揉み消したって一応は通るが

彼女がそんな手間をかけに来た風にとても見えない、あの目はあの殺気は間違いなく…


そんな娘は居なかった(沈めた)って報告するつもりなんだろう


ゆー「ねぇ…敵を助ける味方は…どっちだと思う?」


話はお終いとばかりに、呆れるばかりだったゆー目が 冷たくなっていった


暁「響っ!」


妹の肩を叩いて、後ろへと突き飛ばす

アレが何を言っているのか分からないが、分からないなりに分かったことは

電をどうにかしようって考えてるらしいってことだった


響「な、姉さんっ」

暁「あんた、電連れて下がりなさい。雷、悪いけど付き合ってもらうわっ」

雷「まっかせなさい。なんなら姉さんも逃げてくれて良いんだけど」

暁「そうねっ。コイツどうにかしたらそうさせて貰うわっ」

電「お姉ちゃんっ、雷ちゃんっ。これは電が悪いのです、逃げるなら2人が先にっ」


「うっるさぁっぁぁいっ!!!」


電「はわわわっ!?」


泣きそうな言葉を飲み込んで暁の声が電を黙らせる


暁「どうにかしなさいっ。響っアンタそういうの得意でしょっ!」


認めたくないけど暁はおバカだから、体張るしか妹を守ってあげられない

それにしたって、雷まで巻き込まなきゃ行けないのが悔しいけども

そんな背伸びは後回しだ、今は海面にスクリュー付けてしっかり進まないと…じゃないと…


ゆー「逃げる?良いけど、4人でなら勝てるかもしれないよ?」

暁 「はっ、その手には乗らないわっ」


相手は潜水艦だ。奇策奇襲不意打ちなんて手数の打ちのはず

乱戦に巻き込んだ隙きになんて事になったら目も当てられないじゃないっ


雷 「それでも2対1なんですけど?アンタの方こそ逃げるなら今のうちよ?」

ゆー「おバカさん…」


WG42の狙いを電から眼前の2人へ

どうでも良いけど、どうでも良いだけに邪魔かなってはおもう


響「すまない二人共。少しでいい、私達が海域から離れるまでっ…」


その間に司令官に状況の確認と最悪救助もか…


電「響ちゃんっ、でもっ」

響「逃げるんだよっ。もたもたしてたら余計に危なくなるだろっ」

電「は、はいっ」




暁「潜水艦って言ったって、潜られなきゃ良い的でしょっ」

雷「卑怯とか言わないでよねっ」


主砲構えてすぐさま放つ

なんであれ、一発でも当てればそれで済むはず、逆に言えば…は、今は考えないっ


ゆー「言わないけど…」


1つ2つ、次々に着弾して海面が弾け飛んだ


雷「ちょっ!?やばくない?直撃でしょ…あれ…」


いくらなんでも避けると思っていた

むしろ、全部避けられるなんて考えを頭の隅に追いやっていたくらいなのに


暁「せ、せーとーぼーえーよっ、暁たちは悪くないわっ」


それでも潜水艦だ。至近弾にしろカスダメにしろ潜れなくなれば暁達の勝ちだと思っていた


雷「さ、流石ね姉さん。難しい言葉知ってるじゃない」


どう見ても直撃だった。回避行動を取ったふうにも見えなかったし…


暁「と、当然よっ」


胸は張って見せるけど、小刻みにその小さな肩は震えていた

理由はどうあれ艦娘を撃沈したとあれば

例え誤射であろうが敵艦を見逃すよりヤバイのは暁の頭でも良く分かる

見逃しただけなら言い訳のしようもあるが、これは完璧にアウトだろう


混乱に困惑し、2人して焦燥に惑っていると次第に煙が晴れてくる

が、そこには何も無かった。残骸も残響も残像の一つでさえ

なにもない所に主砲をぶっ放した自分達が馬鹿みたいに思えてくる程に静かだった


ーおばかさんー


そんな声が聞こえた気がした

二人して後ろを見やる、恐る恐ると、壊れたオモチャみたいにぎこちなく


そこに居た、小さな背中がそこにあった


「だから言ったのに…おばかさんって…」




響「っ!?この音…」


振り返り、海を見渡した時だった

すれ違う、流れる白金の髪に、凍った様に冷たい瞳と


ゆー「おまたせ…」


響達を追い越し向き直ると、余った慣性に引きずられて海面を滑っていく ゆー


響 「まさか…魚雷をボート代わりに使うなんてね…」

ゆー「はい、酸素魚雷は とっても良い娘。ゆーと同じにね…それじゃあ、ばいばい…」


小さく手を振る ゆー。その意味が分からずに響が困惑していると


電「響ちゃんっ!」

響「なっ!?」


突然に腕を引かれ、強引に後ろに引き寄せられる

ゆーが手放した魚雷2本。それが弧を描いて戻ってきていた

そうして足元へ、さっきまで自分が立っていた場所に2本の魚雷が交差して…


「あうっ」「つぅぅぅっ…」


これは海水なのか、それとも冷や汗なのか

背中を流れる冷たい水が服と張り付いて気持ちが悪い


ゆー「ふーん…良いけど」


とても良くは無さそうだった

それならそれだったとしても、もう一発撃ち込んでくるのは明白だった


電「そんなに、そんなにいけないことなのですかっ」


思わず叫んでいた

駆逐級を一隻見逃した程度で、こんな…こんなのって…


ゆー「?」


不思議そうな顔をされた

何を言ってるのかわからないと首を傾げられていた


ゆー「それでも人は死にますって?」

電 「それは…それでも…」


単純な正論に口が塞がれる

たとえ駆逐級だろうが、手負いだろうが、一般の船が襲われればそれまでで

一般航路じゃないから良いだろうの話ではない、万が一でも起こりうるならそれはダメで

そんな事はわかってる、そんなものは最初から分かってるけど

だからって、そんな風に戦い続けていたら何時までたっても


電 「そんなんじゃ戦いが終わらないのですっ」

ゆー「?」


まただ、また不思議そうな顔をされている

言葉が通じていない…会話になっていない…とかそんなんじゃなくて もっと別の違和感


「終わるよ?敵を全部倒せば…ね?」


ああ、そうか、そうなんだ、考え方がまるで違うんだ…

酷い言い方かもしれないけれど「艦娘同士」なんて言葉が役に立ちもしない程に離れきっている


ゆー「あなただって その1人…」


静かに魚雷を向けられた

そう…それはそう…敵を見逃した電は あの娘にとっては敵…なのでしょうね…

それを庇った お姉ちゃん達だって…それは、それだけは…


ーぱんっぱんっぱんっー


ゆー「ん?」


乾いた音、手を叩いたようなそんな音。海の上には不釣合いで、この状況では不可解でもあった


龍驤「あーキミ?その辺にしといてくれんか?」


その声は手を叩いた張本人で、独特のシルエットをした ちんちくりんだった


ゆー「はぁ…」


なんか増えた

駆逐艦の一つなら楽だと思ってたのに、後でAdmiralにご褒美をもらわないとやってらない


でもその前に…


やれやれと、疲れたように首を振りながらも 音もなく指輪を嵌める ゆー


龍驤「ちょちょちょちょっ!?まちぃって、ほんま頼むわぁ…」


何やコイツ。おっかないとは聞いてたけど、ここまでかいな

誰やねん、飼い主にしか懐かない番犬なんて言いおったのは。猟犬やんコレ、狼まであるでほんま

合言葉は見敵必殺ってやかましいわっ


ゆー「どうして?あなたも敵なんでしょう?」

龍驤「敵やないでー。ほーれ ええ娘やから、とりあえず指輪から手ぇ離してくれんか?」

ゆー「…」


うっわー、めっさ疑っとるわぁ。いややわぁ、めっちゃ怖いわぁ、コイツ

あぁ、この目あれやね。やる気まんまんの球磨とおんなじ目してるね、うん

鍛えるのはええけど、限度は分かれって…。ああ、もう敵に回したないなぁ…もぅ


まぁ、それでも大きく深呼吸

ようはコイツに「そんな娘は居なかった」言わせりゃええって話しだし

なにも戦火を交えることも無いって


電「り、龍驤さん…どうしてここに…」

響「良かった…間に合ったね…」


逃げながらも打電していたかいもあったかと、肩から力をぬく響


龍驤「どやろな。自分らがやったことわかってるん?」

響 「それは…」

龍驤「妹に甘いっても、限度ってあるやん?」

響 「…」

電 「待って欲しいのですっ響ちゃんは何もっ」

龍驤「なら責任とるかいな?」

電 「責任って…」

龍驤「見りゃ分かるやん?そこにおるこっわーい嬢ちゃんが何をしに来たか…」

電 「…」


目に見えて顔が青ざめていく

期待も安堵の色も失せて、諦めと…そろそろ覚悟も決まったような空気も見えてくる


龍驤「ま…分かればええねん」


泣きそうだった電の頭に優しく手を置く


龍驤「説教は家の人の仕事やし」


脅すだけは脅したし、反省の色も見て取れる…後は家の提督に任せるとして、残る問題は…


龍驤「なぁ、こないな事くらいで貴重な艦娘を喪失するのも不味いと思わん?」


この娘にはキツく叱っとくさかい、ここらで手打ちにせぇへんか…って、思ったんやけどなぁ…




あぁ…もう、めんどくさい、いったいなんなんだろう

どうして ゆー(Admiral)のじゃまをするんだろう

それはなにか、とってもとっても…


ゆー「黙って…それから聞いて…ゆーはゆーだよ、U-511。提督の潜水艦ですって…」


「敵は討たねば…ですよね、Admiral…」

此処には居ない誰かに目を向けながら呟くと同時に、少女の影から桜色の花びらが沸き立ち始めていた


龍驤「そうかい…」


つまりは問答無用っちゅうわけか…

いや、ちゃうな。初めからこっちのことなんて見てもない

なるほど どうして、狼というより番犬やね…


なら仕方がない。飼い主がここにいない以上、首輪の外れた番犬はしまっちゃうしかないわ


「じゃーアンタが黙っとき…」


待機させていた艦爆へ指示を出す

気は進まんけども …話ができんなら力づくなのは敵も味方も変わらんか、世知辛いでほんま


爆弾が落ちる。空気に穴を開ける嫌な音がしばし続くと、正確にゆーの頭上に飛来する


「ほら、やっぱり敵だった…」

爆発の合間に聞こえる声は、その騒々しさを押しのけて淡々としたものだった


龍驤「女神(バリアー)かい…」

ゆー「その通りですって…」


煙が晴れると、トンカチ担いだ女神様が笑っていた

まさかと思うが、そんなんで爆弾をホームランしたのかと考えると空恐ろしい


動こうにも動けない。それも向こう同じなのだろう、様子を伺うようにこっちを眺めている

手加減は…たぶん無理やろな…此処まで来ると、いける か あかんかしかあらへん

やけども、それをするとどっちもタダではすまんし…


正直、正直なぁ…お家帰りたいわ…

がんばって威圧してみせても、これ多分効かんやろうし…

これやから、提督至上主義者(LOVE勢)は始末が悪いって…

なら、始末が悪いもんどうし、始末を付けるしか無いんかなぁ…


「ゆー、すとっぷだよ…」


無表情な声だった。けれど、それが首輪になったのか、ゆーの肩から力が抜けていく


ゆー「やーよ?」


どうして?と、振り返りながらも首をかしげる


どうして止めるのか?どうして此処にいるのか?

それにどうして、敵を討ったらいけないの?とか…聞きたいことは色々あった


弥生「どうしても、だよ?」

ゆー「分かりません…」

弥生「それでも…」

ゆー「でも…」


分からない。やーよの言うことは聞いてあげたいけど…どうしてもAdmiralの命令が上にくる

なにか、なにかそれらしい理由でもあれば良いのに、引けとだけ言われても…


弥生「ゆー、良い娘でしょう?」

ゆー「ですって…」


それが止めだった

良い娘、そう言われてしまっては頷かないわけにもいかなかった

仕方ないけど、構えていた魚雷を降ろし、WG(ロケットランチャー)も回収する


龍驤「なんや急に…そんな魔法の言葉あったんかい。ほな、ええ娘はさっさ お家帰りぃや?」

ゆー「やーよ…」


下げかけていた魚雷を持ち上げる。狙いは言うまでもなかった


弥生「だーめ…」


再起動しかけた ゆーの手を抑えると

後ろから抱き竦めながら 、飛び出しそうな ゆーを落ち着かせる


次いでに…


弥生「うちの娘に変なこと言うのやめて…」

龍驤「…あ、あははは…。すまんなぁ、響にはよう言っとくわ…」

響 「まて、巻き込まないでくれないか…」

電 「酷い濡れ衣なのです…」


冗談ではない、本当に

今にも噛み付いてきそうな、いや唸り声だって聞こえてきそうなの前にそんな事を


弥生「それじゃ、戻るよ…」

ゆー「はい。ばいばい…」


弥生に背中を押されると、それは普通の少女のように

小さく手を振ると、音もなく海の中に消えていった




龍驤「…おおきになぁ…って誰が言うかーっ!!」


いっとるやんけーっ

なんやねん、人の話はなんも聞かんかったくせにっ、どんな育て方したらあんなネジの外し方するんやほんま…

後でおぼえてろや球磨吉っ


龍驤「でも…間に合ってよかったわ…」


いつのまにか追いついて来ていた暁と雷

泣きながら抱き合ってる4人を見ながら、ほっと息を吐く龍驤だった


気がかりと言えば一つだけ

「月夜ばかりと思わないで…」去り際に弥生の残した一言


「ほんま、次は冗談ではすまんやろなぁ…」


その前に、この娘らの練度をあげるか…

あるいは、首輪を締めなおすかせんと いかんかもな…



ー※※鎮守府:執務室ー



「ほな、おおきに…」

「ああ、気をつけて戻れ…」


龍驤からの報告も終わり、力が抜けた様に受話器置く


そこにあるのは机だけ。良く言えば簡素、悪く言えばつまらない

そんな部屋の主が机の上で頭が痛そうに頭を抱えていた


※※鎮守府提督:龍道 一(りゅうどう はじめ)

デカイ ゴツイ ガタイで構成された 筋肉モリモリマッチョマンの提督さん

その筋肉、軍人としては大正解なのだが、たまに向けられる艦娘達からの妙な視線が気になる年頃(中年)

基本的には優秀な部類だが、野ばし放題の無精髭の示す通り私生活は お察しください


球磨「何か?」

一 「いやな…」


そして、壁に背を預けた お嬢さんはそう返す

「何か?」と、「何か問題でもあったのか?」いや「あったクマ?」と言いたげに


取り逃しか…。初めはそうかと、そういう事もあるかと思っていたが、如何せん頻度が多かった

それとなく探りを入れてみれば「逃げる相手を撃つなんて…」と来たもんだ

それの何が怖いって、どうするかは置いといて誤魔化し掛けようと思った矢先に

大元帥様が「私よっ、来てやったわっ」と、こっちの都合もお構いなしに現れた事だった


一説によると千里眼に地獄耳を装備しているらしいと言うのは、案外と本当じゃないのかねと思ったよ


ーー


みつよ「で、どうするの?」


どこからどう見ても ちんちくりんなのに

隣に控えている大和も手伝ってか、その仁王立ちは異様な威圧感を放っていた


一「どうしますかね…」


おっさんに年頃の娘の考えなんて分かるわけもない

見た目もそうだし、数えで言うなら赤子も同然だ。いくら常識があろうとも、感情まではそうはいかない

例え軍人であっても制御出来ない奴のが多いぐらいなのだから。それをしろというのも酷な話だ


一  「私の方から言って聞かせますんで、今回は多めに…」

みつよ「ごめんですむなら私は来てないわっ」

一  「おっしゃる通りで…」


「拒否権は?」と問われれば「あるけど無いわっ」と返すそんな方だ

それに泣かされた提督も少なくもないだろう。匿名掲示板では「あるけど無いわ」がスラングになってるって噂も聞く


つまり、コレが来ている時点で詰んでいる


一  「どうされるおつもりで?」

みつよ「おしりぺんぺんよっ」

一  「は?」

みつよ「だから、おしりぺんぺんよっ。悪い娘にはそうするのが定石でしょう?」


そう…断言されては、そんな気もしてくるし、間違ってもないのはそうだろう

が、だとしての問題は…


一  「私にやれと?」

みつよ「いやだわ大和、変態よ…」

大和 「度し難いですね。焼却しましょう」


不穏な言葉に、不穏な動作。向けられたのは大口径の主砲


一「いえいえ、一応責任者なのでね…」


両手を上げて、降参の構えを取る。意味もなく冤罪を吹っかけられた気分だった


みつよ「なるほど、一理あるわねっ。そこまで言うなら任せるけどっ」

一  「まさか この歳になってまで、年頃の娘のパンツ降ろしてお尻叩かなきゃいけないとはね…」

みつよ「誰もパンツまで降ろせなんて言ってないわよ…」

大和 「度し難いですね。滅却しましょう…」


大和の後ろに隠れる みつよ様と、主砲を構え直す大和。女性陣はドン引きだった


みつよ「まっ、あなたの性癖はどうでも良いのよっ」

一  「そりゃどうも…」


その性癖にロリコンってルビが振られている気がするが、話が進まないので見ないふりだ


みつよ「泊地攻略の準備は?」

一  「明日にでも…」

みつよ「結構よっ。じゃあ、こっちから陽動を回してあげるわっ、咽び泣いて感謝なさいっ」

一  「どこから?前線にそんな余裕は…」

みつよ「あるけど無いわっ」

一  「は?」

みつよ「流行ってるのでしょうっ、コレ?」

一  「私の口からは何とも…」


匿名か…言い出したやつの安否が気遣われるお言葉だ


「流行語大賞狙えるかしら?」「お待ちを…大淀…」


そういうの職権乱用って言わないのかとか、無駄口を叩きそうになる光景

だが、落胆する大和の表情を見るに、電話の向こうの娘は割りとまともなのが唯一の救いなのかもしれない


「ノミネートするのが精々だと…」「結構よっ。一位は実力で勝ち取れってことねっ」


大丈夫なのだろうか…いや、考えるだけ無駄かもしれないが


一  「で、結局どこから?」

みつよ「前に無いなら後ろからっ、簡単でしょう?」


言うほど簡単でもないと思うが、それを簡単にしてしまえるあたりは流石ではあった


みつよ「ついでに怖い番犬も用意しておくわっ。飼い主にしか懐かないから手を噛まれないようになさいっ」


ーー


怖いのはどっちなのか。それでも譲歩はされたのだろう

身内でなぁなぁに済まさせる気はないが、痛い目には合ってもらうと…


そうして、その結果は…


一「泣きべそかいてたなぁ…」


思い出すだけで心苦しい。もう少し早く気づいてやれればとの後悔も湧いてくる

龍驤を止めに行かせなかったら、ほんとにどうなってたのか分からないのが一番怖い


そんな不安を誤魔化すように、タバコに火を付けると椅子に身体を投げ出した


一「なぁ、嬢ちゃんよ。手負いの敵を逃すのはそんなに悪いことか…」


良い悪いで言えば そりゃ悪い

俺らは軍人で、彼女らは艦娘で、敵を見逃すとかありえない話だが

それでも、その優しさまで否定して良いものかどうか…


球磨「球磨にそれを聞くクマ?」


暗に愚問だと鼻で笑われた


一 「お前だから聞きたいわ…ほんと」

球磨「敵は討たねば…。見逃したソイツは明日には仲間を殺しにくるクマ」


不幸の先延ばしなんて誰も得をしない

敵は倒す、全部倒す、戦いは終わって、誰も悲しまない世界の完成だクマ


一 「安心するな。その割り切り用…」

球磨「でないと死ぬクマ」


球磨からしてみれば、手加減できる余裕もないくせに敵に情けをかけるとか、おかしくって腹が痛いクマ


一 「あ、そう言えば。あの怪電波、何だったんだ…」


作戦中に全周波数帯でぶちまけられた謎の怪文

やりたいことは分かるんだが、平文があまりにもあんまりすぎやしないかと


球磨「は?怪電波に意味なんかあるわけないクマ」

一 「いつも通りってことな…」

球磨「クマ…」


それでさえ呆れ気味に頷いていた



ーー



夢か、そんな賢しい感想を抱きながら、湧いてくる記憶を遠くから眺めていた


瑞鳳「ちょっ!?卯月っ、あぶなっ」

卯月「ぴょん?」


ふざけていた私も悪かったし、絡んでくるアイツも悪かった

結果はまあ…中破ですんで良かったな…て所か

帰ったら球磨にボコボコにされるんだろうとか、笑顔で励ましてくる大鳳さんにスパルタかけられるとか

逐一憂鬱な想像は湧いてくるけど、まぁ…取り敢えずは卯月が無事でよかったと胸を撫で下ろしていた


意外だったのは、流石に本気出して飛び出すかと思ったら

終始私の側から離れようとしなかった事だろうか?


珍しい…罪悪感でも感じたんだろうか?

金剛さんもついてるし、良いから行ってこいっても聞かないし

ちょこちょこ後ろをついて回る卯月が可愛いとか思ったのは内緒

だって、口にしたらどこまで調子に乗るか分かったもんじゃないもの


そこまで思い返していると、ふと息苦しいのに気づく

気づいてしまえば後は早かった。鮮明に浮かんでいた記憶も すぐに霞がかかり

溢れてくる白い光に目を閉じる。光も収まり再び目を開くと、清々しいまでの朝日と知らないベッドの上だった


瑞鳳「あー…あん?」


「すぴー…」


なんだろう、息苦しい原因が目の前にあった

人のお腹を枕代わりにして、バカ(卯月)が卯月(バカ)見たいな寝息を立てていた


引剥そうか…


息苦しさに嫌気がさして、卯月の頭に手を伸ばす

けれど、どうにも…馬鹿みたいに幸せそうな顔をしてらっしゃる

おまけに、布団に潜り込むでもなく…備え付けの椅子から伸びている体

まるで一晩中見てましたと言わんばかりの様子だった


瑞鳳「はぁ…」


深呼吸は溜息に。一度大きく息を吸ってしまえば多少は呼吸も楽になった


まぁ…いいか…

自業自得とはいえ、変に心配をかけてしまったのはそうだし…


伸ばした手で卯月の頭を撫でる

いつもこうしてれば可愛いのにとか、一瞬考えもしたけれど、想像するだに気色が悪いの却下した


断言できる。例え泉の女神が、可愛い卯月と綺麗な卯月を差し出してきても、いつもの卯月を引き取る自信はある

「素直な瑞鳳には両方上げるぴょん」とか言われても絶対いらないけど


瑞鳳「ばーか…」


あとで、皆にも謝らないとなぁ…

そんな事をぼんやりと考えている内に、そのまま寝息を立てていた…




ーおしまいー



提督とF作業



ー海上ー



ポーラ「えー、それでは皆さんにはサンマ漁をして頂きたいと思います」


呑気にのほほんと、夕暮れを背景に今回の任務を説明するポーラ


ポーラ「質問のある娘は挙手をお願いしまーす」


「はいっ」そうして真っ先に手を上げたのもポーラだった


長月 「お前が手を上げてるんじゃないよ…」

ポーラ「さんまってなんですかっ!」

水無月「そこからなのっ!?」

睦月 「お魚かな?」

文月 「お魚じゃないんじゃないかな?」

菊月 「なに、違うのか…」

如月 「ややこしくなるから黙ってましょうね」


「はーい」元気よく帰ってくる姉妹たちの返事に「よろしい」と 笑顔を返す如月


ポーラ「もーしかしてー、なんですけどー」


甲高い音がなる。砲撃の音でもないし、艤装が煙たいわけでもないが、どこか不穏な音だった


ポーラ「さっきからポーラの背中にぶつかって来るコレですか?」


ポーラが背中を向けると、そこにはサンマのようでそれよりトゲトゲしい魚が突き刺さっていた

もしそうならば、これは狩りではなかろうか? 魚雷の如く飛んでくるこの魚…もはや漁では済みますまい


水無月「って、ダツじゃんそれっ」

ポーラ「だーつ?あはははっ、さしずめポーラは的ですねっ!」


ポーラはキメ顔でそう言った

なるほどどうして、その紅白柄はダーツの的に見えなくもなくはないけれど


水無月「キリッとしてないでさっ。光り物かくして…っ」


夕日の残り火が、キラリと反射して水無月の瞳に差し込んでくる


水無月「それそれっ、そのワインボトルっ」

ポーラ「…」


めちゃくちゃ嫌な顔をされた…


ポーラ「ポーラに死ねと、そうおっしゃられる?」

水無月「そんな事言ってないでしょっ!」

ポーラ「良いんですかぁ♪一生飲んでもっ」

水無月「そこまでも言ってないでしょっ!」


そうこうじゃれ合っているうちに、それは砕け散っていた


「あ…」


概ね その場の全員が声を漏らす

周囲に広がる芳醇な白の香り、けれどそれはすぐさま潮風に流され消えていく

残ったのはポーラの服の袖を濡らすワインの残りと

パラパラと砕け散り、海の藻屑になっていくボトルの名残

それを成し遂げた一匹の魚は海面に突き刺さり、音もなくどこぞへと去っていった


ポーラ「…」


袖を持ち上げると、染み込んだワインが雫を作り出す

虚ろな瞳でポーラがそれを見つめていると、そっと、おもむろに、顔を傾け口を開く


如月 「おやめなさい、行儀の悪い」

ポーラ「行儀を守って酒が飲めますかっ!」


引かれた袖を振り切ると、残ったお酒が飛沫となって飛び散った…もったいない


睦月「その息や良しっ。だけどただの酔っ払いだし…」


カッコイイのは勢いだけで、ちょっとでも冷静になれば情けのないことこの上なかった


文月 「それをゆーちゃんの前でも言えたらね~」

ポーラ「言えますともっ、ポーラ強いんですから」


えっへんと、見せつける様に胸を張るポーラだったけど


文月「これなぁんだ?」


文月の手には小さな機械。申し訳程度の液晶画面には、キラリと光る「●REC」の文字


ポーラ「すみませんでしたぁ…」


少女の前にかしずく女性

慈愛の手を差し伸べるように、少女の小さな手が女性の頬にそっと触れる

確かに、救われたのだろう、この瞬間に、この女性は希望を見たのだ


文月「だーめ♪」


その少女の笑顔を見るまでは


ポーラ「あんっひどいですっ、ポーラの気持ちを裏切ったんですねっ」

文月 「裏切るだなんてそんな…。勝手に期待して勝手にそんな気になってるだけでしょ?」

ポーラ「そんな難しい日本語並べて、ポーラに分かるわけ無いでしょうよっ」

文月 「わかってよっ」

ポーラ「分かりたいですよっ」


だんだんと良くわからない展開になっていく

救いを求める女性の絵は裏切られ、誤解と理解の板挟みで苦しんでいた


睦月「ふはははっ、争え、争うがいい。そうして最後に残ったものが…」


そうして突然に現れるラスボス


水無月「あ、これ…最後に二人に倒されるやつだ」

如月 「そして黒幕はわ・た・し…」

水無月「さらさら だったんだ…」


もうこれ わっかんないや…




菊月「サンマは…魚だよな?」


神妙な顔で首を傾げる菊月


長月「サケもな…」


一応でも、不安ではあったので付け加えておく


菊月「ん?何を言ってるんだ長月は?」

長月「その顔をやめろ、私が間違ってるみたいだろう」


そんな当たり前の事をと、不思議そうな顔する菊月だった






そうこうしている内に日も暮れて、夜の帳に包まれた頃


「はーっ、どっこいしょーどっこいしょっ!」「そーらんっそーらんっ」


テンションが有頂天に達したポーラを囲んでサバトの様なサンマ漁が始まっていた


提督「きーそーさんっ」


睦月たちの用意した大発の上、猫がそうするように木曾に擦り寄る提督


木曾「はしゃぎやがって…落ちても知らねーぞ」


ふって湧いた提督の席を開けようと端に寄る木曾だったが

空いた隙間なんて気にもせず、腕の隙間から頭を滑り込ませ、柔らかい太ももの上に頭を落ち着けた


提督「木曾さんが助けてくれるでしょ?」

木曾「ほっとくかもしんねーぞ?」

提督「なら一緒に落ちるまでよ…。どこまでもどこまでもひきずりこんでやるわ…」

木曾「こわいこわいこわい…」


「うらめしや~」なんて安い幽霊の真似事をする提督

冗談とは分かっていても、コイツが言うとシャレにならない部分がなくはなかった


提督「あははっ、とりついたっ!」

木曾「子供かよ…」


すきを見て木曾の外套に潜り込む提督


提督「私は子供だっ、子供でたくさんだっ!」

木曾「威張んなバカっ。てか、寒いんだよっ!」


秋、それも夜ともなれば そこそこに寒い、肌寒いを通り越して寒い

外套の端を引き上げると、引っかかった魚みたいに提督も水揚げされてきた


提督「だったら二人で懇ろすればいいじゃないっ」

木曾「ね…っ」


一瞬、頭をよぎりかけた桃色の想像を振り払うと、何でもない風を装って提督から顔を背ける


提督「お…今何考えたの?」


「ね…ね…ね…?」しつこいぐらいにねっとりと、絡みつくように這い上がってくる提督

「なんでもねー」と、あしらっている内に、やがては木曾の横顔にまで顔を近づけてくる


提督「したらばごめんっ」

木曾「あっ、おまっ!?」


提督の手が頬を撫でたと思いきや、指に何かを引っ掛けて一気に引き抜いていた


提督「眼帯とっぴっ!」

木曾「何処まで精神年齢下げるつもりだお前はっ」


慌てて眼帯を抑えるが時既に…

提督の頭上高く掲げられ、秋の夜風にさらされていた


提督「だって木曾ってば、あんまりそっち側見せてくれないじゃない?」


取り返そうと伸びてくる木曾の手首を抑えて強引に引き寄せる

突然の事にバランスを崩した木曾が、ぶつかるように、抱きつように、提督に胸に倒れ込んでくる

そのまま顔を上げてみれば、愉しそう笑顔が自然と目に入ってくる


「もっと見せて?」


近づいてくる顔。最後の一線を引くように、おでこ同士が重なった

見つめ合う瞳。金には黒が、黒には金が、互い違いにうかんでいる


「見せびらかすもんでもないだろ…」


気恥ずかしさと、少しばかりの抵抗感に押されて目をそらしていた


この金色が嫌いな訳じゃない。むしろ、ちょっとカッコイイとか思っていた時期もあるが

落ち着いてみれば互い違いの瞳の色、そんな違和感が残ってしまっていた

確かに、眼帯を外した所で誰も何もは言わないだろう

現にしたって、風呂では外してるんだ。結局はその程度の話でしかない

あとはせいぜい「木曾が本気出したー」とか からかわれるのを数日我慢すれば静かになるだろう


けど、考えられる限りそれが一番面倒なんだよなぁ…


「私は好きだよ?」


しょうもないことを考えていると、逸らした視線の端っこから提督の声が聞こえてきた

一瞬、喉から出そうになる何かをぐっと堪える

その手には乗ってやらねぇ、騒いだら負け、ここで騒いだら負けと言い聞かせながら


「はいはい、瞳の話だろ。そりゃどーも」


とりあえずは ぶっきら棒を振ってみる

この後は泣き落としでくるか、あるいは…


「君の瞳だから好きなんだよ?」


後者だった…。浮きそうになる歯を必死に抑える

いっそ、泣き落としの方が気が楽だとさえ思っていた


「分かったから…近いって…」


結局やりきれずに、だんだんと染まっていく頬を自覚しながらも、やんわりと提督を押し返すのが精一杯だった


ーにまぁ…ー


それが不味かった

そんな中途半端な事をしたせいで、面白がって余計に顔を近づけてくる


木曾「うおっ…おまっ、なにしてっ」

提督「ちゅー」

木曾「アホかっ!?場所を考えやがれっ」

提督「場所考えれば良いんだねっ」


「良い訳あるかーっ!!」

「あはははっ!木曾さんが怒ったー♪」


チラチラと周りの視線が痛かった






水無月「なんかさー、なんてーかーさー」


探照灯の灯りに照らされる水無月の横顔は何処か不満そうだった


長月「どうした?」


声につられて見れば、行き場の無くなった感情が その足をバタつかせてもいた


水無月「ながなが はさー…良いの?あれ…」


あれと指差す先、狭い大発の上で きゃっきゃっなさっている司令官と木曾さん


長月「良いも何も…」


ああいう生き物だ。他人が怖いくせに、他人をからかわずにはいられない

怖がりで、寂しがり屋の甘えん坊…下手な子供より子供っぽい…


なんて、ひと に言えた事でも無いかもしれないが


水無月「司令官ってば、からかえれば誰でも良いかなって…」

長月 「相手は選んでるぞ…」


相手が悪いと姿さえ見せようとないのは問題しかないとは思うが


水無月「つまり水無月は選ばれた艦娘ってことだねっ」


気を取り直して、えっへんと小さな胸を張っては見るものの


長月 「そんなに嬉しいか…?」

水無月「あははは…全然…」


首を振るしかなかった

まあ、嫌というわけでもないのだけど…

でも、嫌という訳ではないから余計に気になってしまうのが厄介だった


好きになって貰えたのは良いんだけど…、ネコ可愛がりをされている木曾さんを眺めていると何とも言えない気分にもなる

睦月(むっつん)みたく、素直に大喜びできればよかったんだけど…

あそこまで振り切れないというか、気恥ずかしいというか、照れくさいというか、なんかこう置き場所に困る感情が溢れてもきていた


長月 「おまえもいい加減…」

水無月「でもさー、またちゅー…とかされたらさー…」


嬉しいような、なんというか、なんとも言えない ふわふわする


長月「良いけど。どっちに転がっても あいつは喜ぶだけだしな…」


愉しそうな司令官の笑顔。人をからかっている時は本当に愉しそうだ

もし、アイツが人をからかうのを止めたらどうなるんだろうか

もしかしたら、あるいは、そんな想像を、益体もない想像を…


「そこだよっ、そこっ」


飛び込んできた水無月の言葉が吹き飛ばしていた


水無月「水無月ばっか やきもきしてっバカみたいじゃんかっ」

長月 「いや、実際バカっぽいぞ…」

水無月「マジでかっ!?」

長月 「マジでな…」


だってそれは、身に覚えが無くもなかったから…

なるほど、傍からは こう見えていたのかと思うと…思うと…


水無月「ねぇ、ながなが…。ながながは その…司令官のこと…」


「好きだぞ…」


その問を口にするまえに答えを返す

あんなんでも、あんなんだからか…。今となってはどっちでも良いが、最後まで一緒に入れたらと、それは本当に…


水無月「そか…」


何も言えなかった。そもそも何が聞きたかったのかさえ もうあやふやだ

探照灯に照らされる横顔。それはいつも通りの ながながの顔、見つめる先には…


ついには司令官が海に投げ飛ばされていた…


水無月「…ねぇ?」


「ほんとにアレでいいの?」それを言って良いものかどうか、しかし黙っていられずに声だけをかけていた


長月 「良いさ…あれでもな」

水無月「そっか…ふーん…」


その、大事なものを見つめているような横顔に…

何故か、何だろう、ああ、自分って意外とそうなのかな…とか思えてきて

もうしばらくは、この悩みと付き合うことになりそうだった






占守「へーい、むっつーんっ」

睦月「へーい、むっしゅーっ」


お互いの両手を重ね、正面向いて はいポーズ


「二人合わせてバロンでーす」


国後「…」


眉間を抑える。取り敢えず一呼吸を入れて その意味を考えるけども

何を言ってるのか、何をやってんのかまるで分からなかった


国後「ごめん、如月さん…アレ、なに?」

如月「よーく見て?アレが何か考えてる顔に見えるの?」


国後の陰からこっそり指を指す如月

その先では勢いのままにおちゃらけて、慣性のままに笑い合う二人の姿

そこに思慮なんてものはどこにもなく、なんか良くわからないけど楽しそうでは合った


国後「ううん、無理」

如月「じゃあそういうことよ」


如月さんの手が優しく肩に置かれた。それは、深く考えるなと暗に告げてもいる


恥ずかしい…。眉間を抑えていた指が広がってついには両手で顔を隠す

あんた 「むっしゅ」言うなって言ってたじゃな

なのに何で「バロン」になってんのよ階級上げてんじゃないわよ


とかなんとか、言いたい事は色々あるけど

ぽやぽや している姉が見てられなくて顔を隠すのが精一杯だった


如月「そう言えば択捉ちゃんは?」

国後「あの娘なら、新人というか妹と別のとこ」


と、言うのは半分建前で、正直アイツとあんまり関わらせたくなかったりする


如月「ふーん…」


こっそりと提督の様子を伺う国後

その視線が含む所までは分からないけれど、その娘の事を気遣ってるのは見て取れた


如月「あの人が泣かせちゃいそう?」

国後「絶対ね…。って、会ったことあったっけ?」

如月「ううん。あなたがそんな顔してた」

国後「どんな顔よ…」

如月「あんな?」


微笑みながら、何も考えていない二人を指差す如月


睦月「ここに二式爆雷があるよっ」(←何も考えてない顔

占守「ひゃっはーっ!!漁なんて面倒くさいっすっ、まとめてなめろうにしてやるっすよっ!」(←何も考えて…


そこには何の理性も浮かんで無い、姉とその友人の笑顔があった


国後「やめてよ、そんな…。って、止めなさいよっアンタ達っ、漁場が壊れるでしょうがっ!!」

占守「クナっ、今はサンマっすっクジラのようにっサンマっしゅ」

睦月「そして睦月達が そのクジラを捕るとっ」

占守「おおっ、流石っす むっつん。一石二鳥じゃないっすかっ」

国後「何処がよっ。あんたら クジラの腹かっさばいてまでサンマ食べる気なのっ!?」

睦月「でたなシーシェハ。ード」

占守「やる気っすかっ、水ぶっかけてやるっすよっ」

国後「ちょっ、やめっ…て、もうっ」


「こらーっ!!」「「わーいっ」」


ついには耐えきれなくなった国後が声を上げると、楽しそうに追いかけっこが始まっていた


如月「あーあ…」


はしゃいでるのは分かるけど

でも少し、もう少しだけ、理性を取り戻してほしいかなって…思わなくもなかった






ポーラのそ◯らん節を中心にサンマ漁?が続く中

篝火の陰でひっそりと動く娘達がいた

1つが2つ、2つが3つに。騒ぎに乗じて、騒ぎに紛れて、小さな爆発が起こっていく


文月「ふぅ…」


主砲を振ると、流れる硝煙が煙を巻く


多摩「終わったかにゃ?」

文月「んー…」


くるり、辺りを見渡す。闇夜に乗じて悪さをする子はいねーべかーっと…

弥生お姉ちゃんのネジの外れた対潜能力まではいかないでも

改2となったこの文月から逃れられる潜水艦などあんまり居ないのだ


文月「多摩さん?上は?」

多摩「静かなものだにゃ…そっちは?」


少しばかり、大きく開いていた多摩の瞳

それも軽く辺りを見回す頃には気怠げに瞼が落ちていった


文月「んー…ちょっとまっててねー」


音もなく、滑るように微速前進を始める文月

多摩から少々距離を開けた所で足を止めた


文月「…文月きっく…」


仄暗い海面につま先を突き入れる

そのまま掬い上げるように足を持ち上げると、一緒になって海中から何かが引っかかてきた


黒くてもやもやしたなにか、長い髪のようにも見えるその塊

それが顎を蹴り上げられ、仰け反るように海面から顔を出した途端


爆発した


問答無用を体現し、即座に砲身を向けると海に押し込んで一発

それっきり、上げた煙と一緒にボロボロと崩れながら暗い海の底へと沈んていく


文月「何でもなかったよー」


にぱっと笑顔。軽く手を振りながら戻ってくる姿は非常に愛らしい


多摩「にゃ…」


そういうのは「片付けた」っていうんだが、言うだけ藪蛇だろうと お口にチャック

そのまま抱きついてきた文月を受け止めると適当に頭を撫で回していた


菊月「なんだ、こんな所にいたのか?」

文月「あれ?菊ちゃん、サンマは良いの?」

菊月「良いというかな…」


「あれ」と振り返ってみせる菊月

そこでは、木曾さんに 戯れ付きまわった挙句に、海に投げ飛ばされてる司令官の姿


多摩「にゃぁぁ…」


悩ましい光景だった、頭が痛いとも言っていい

ころころと、可笑しそうな文月の笑い声が唯一の癒やしだった


仕事しろだとか、サンマ獲れだとか、言いたい事は…いや、そんなにも無いけれど とりあえず


多摩「その眼帯はなんにゃ?」

菊月「似合うか?司令官に貰ったんだっ」


嬉しそうに眼帯を見せびらかす菊月

けれどそれは、どう見たって木曾のものだし、遠目に見てもそれが無くなっているのが見て取れる


文月「まさか菊ちゃん、右目がうずくとか…」

菊月「それも良いがな。こう…するのがな?」


わざわざ取り付けた眼帯を蓋を開けるようにパカパカ動かしてみせる

あれだ片目の視力だけが異常に高かったり、幽霊とかがみえてたり、ただのハンディキャップだったりする奴


文月「ああ、わかるわかる。なんか強くなれそうだよね」

菊月「だよなっ」


楽しそうに両手を握り合う姉妹たち


多摩「にゃぁぁ…」


あくびを一つ噛み殺す。楽しそうで何よりだ、眼帯一つでそこまで遊べるのは才能だと思う


サンマ漁ってなんだっけ?

だいたいソーラン節はニシンだにゃ、漁場に爆雷なげてんじゃねぇ、ラブコメなら後にしろ


多摩「夕張…どうにかするにゃ…」

夕張「まって今 サンマが…」


私が獲らなきゃ誰が取るって、それはその通りで実に頼もしいのだが


多摩「にゃぁ…」


あくびは溜息に変わっていた。しくじった、保護者がいねぇ…

それを多摩にやれって?御免こうむる、多摩はいつだって楽がしたいのだ

せめて、大井でも連れてこればよかったにゃ…



ー母港ー



北上「あったかいねぇ…」

望月「そうだねぇ…」


七輪を傍らに暖を取る二人

その上にはサンマが置かれ、その身をチリチリと焦がしていた


北上「今年も大漁かねぇ…」

望月「だといいなぁ…」


続かない会話、それもそのはずで

二人の視線は じっとりと網の上のサンマに注がれていた


ちりちり…じりじり…


サンマと一緒のその身を焦がす


ちりちり…じりじり…


まだか今かとその時を待っている


ちりちり…じりじり…


溢れた涎を飲み込んで


大井「もういいわよ…」


呆れ気味に大井が手を叩くと

嘴のように伸びた箸が、一斉にサンマを掻っ攫っていた


湯気の上がるご飯と焼きたてのサンマ、これが大正義で無いはずもなかった


望月「うへぇ…。よく内蔵までたべれんなぁ…」

北上「んー?お子ちゃまめ、この苦いのがいいんだよん」

望月「あたしがお子ちゃまだったら、北上様はおっさんじゃね?」

北上「お…ぉ…ぉぉぅ…」


箸が止まる。舌鼓が鳴り止むと、壊れたブリキ人形の首が大井の方を向いて止まる

指差す先は自分自身、まいねーむいずきたかみ…言わんとするのはただ一つで


「おっさんに見えるん?」


大井「日本酒…下げたら?」


目を伏せたし首も振った

サンマを内蔵まで食べ、隣に日本酒まで置かれては言われても仕方がないし、そこは開き直って欲しいとも


北上「遠回しにいうんでねぇっ、言いたきゃおっさんっていいなよってえやんでぇっ!」

大井「どうして江戸っ子風味なのよ…」


そう言いながら、日本酒を煽る北上さんは おっさんと言われても仕方がないと思う


北上「そういう大井っちは何なのさっ。そんな綺麗に骨とっちゃって几帳面かよぉ」

大井「何って…」


言われて手元に視線を落とす

綺麗に外れた背骨と、十分に削がれた小骨…。子供が食べても安心出来るほどだった


確かに、ここまでする必要もなかったか。自分で食べるんだものね…小骨くらいうっちゃといても良かったのに

ならどうしてって…ついというか、何というか。小骨を取っ散らかして食べるのがいるからしょうが無い

それも今は海の上なのだから、本当についとしか言いようがなかった


望月「返ってくる頃には冷めてんじゃね、それ?」


お猪口を片手に遠くの海を眺める望月

今頃どうしているかだなんて、きっと誰かをからかっているんだろうってのは容易に想像が出来る話


大井「…あの人は関係ないでしょう」


別に用意したってわけじゃない。無意識だっただけで、図星と言われても半分くらいなもののはず

どっちにしろ、小骨がないならそれに越したことはないのだし、あくまでも自分の分と自分に白を切りつける


けれど、返ってきたのは怪訝な顔をした二人の視線だった


北上「ちょっと見ました望月さん?今の間はなんなんですの?」

望月「言わせんなよ恥ずかしい」


「うひひひひ…」


大井「…何キャラなのよアンタたちは…」


酔っ払いどもめ…



ー執務室ー



あれ…なんだろ


寝ぼけ眼の向こうに感じる灯り


寝ちゃったのかな…


何をしていたんだっけ…確か執務室で…


いいかな…


急ぎの用でもなかったはずだし…それに何だか…司令官の…

戻ってきたのかな…だったら、知らない振りでそのままでも…なんて…


「し…れい…かん…」




なんか可愛い寝言を聞いた気がした

司令官が使っている毛布をかけたせいだろうか


きゅっと、小さな手が毛布を握りしめる。まるで誰かに抱きついているみたいだった


「おやすみ、三日月…」


灯りを落とし、静かに外にでた



ー執務室・前ー



皐月「おかえり…」

提督「ただいま…」


「司令官」「皐月」


後ろ手に執務室の扉を閉めると、ちょうど司令官が戻ってきたところだった


皐月「大漁?」

提督「ちょー満足♪」


大漁…ではなく、満足なんだね…


皐月「何しに行ったのさ…」


言葉通りにその顔は満足気に綻んでいた

国後さん達も近くに来てるって言うし、何かされてなきゃ良いけれど…


皐月「おっと…」


不意に、バランスを崩した司令官を支える皐月


皐月「素直に休んでれば良かったのに…」

提督「いや、あいつら好き放題やってるな…」

皐月「きっとあれだよ?「どうせサンマ食って遊んでるだけだクマ。構うこたねー」とかさ?」

提督「ありえるな…」


実際その通りでもあった


皐月「あ、そうだ。三日月寝てるから…静かにね?」

提督「寝落ち?珍しい…」

皐月「だね。それじゃ、おやすみ司令官」


もう寝ろと言わんばかりに提督の背中を叩くと、そのまま歩いて行く皐月


提督「おや、さっちんは良いの?」


その背中に、悪戯混じりに声をかけると


皐月「ボクは良いのっ」


からかう様に笑顔を返す

だって、明日の朝がちょっと面白くなりそうだから






「っ~!!」


言葉もない。いやいっそ、喉をつまらせたことに感謝したいかもしれない


確かに昨日は、そのままソファで寝ちゃった気もするけれど…

なんで、どうしてって? そりゃそうだ、司令官のソファだもの司令官が寝てたって不思議じゃないじゃない


問題なのは、いま喉を詰まらせている原因は、自分が抱きまくらにされている という事実だった


司令官が近い、近いと言うかゼロ距離だ

首を伸ばせば き…ぁぁっぁっぁぁっ。慌てて首を振っていらん事を振り払う

顔を見ないように目をつぶって胸元に埋めてみたら、司令官の音が余計に聞こえてきて、自分の音がやかましくて…

逃げ出そうにも後ろは背もたれで、そもそも司令官に抱かれて動けないしで…


ふと、反対側のソファで寝ていた望月と目が合った


それだけだった。にやっと口元を歪めたと思ったら寝返りをうって見ない振りをされた


皐月 「おはよ、三日月」

三日月「ね、姉さん…こ、これ…この、なに?」


誰が見なくても余裕が無いのが見て取れた

司令官を指差したり、ボクとを見比べたり、ろくに身動きも出来ないし騒げもしないで大変そうだ


皐月 「昨日遅かったんだから、起こしちゃダメだよ?」

三日月「ぇぇ…、ちょ、でも…」


「しー」人差し指を口に重ねて、姉が静かにと言ってくる

なんか からかわれてるみたいで、いや実際多分そうなんだろうけど、望月だってきっとそうだ

「べーっ」なんて、子供みたいに舌を出して姉に投げ返すと、くすくすと小さく笑われてしまった


もういいもの、こうなったら不貞寝してやるんだから

司令官が起きるまで お仕事なんてさぼってしまえ、言い訳は目の前にあるんだから もう知らないだもん

いっそ役得だと思えばいいんだ、今日一日独り占めして困らせしまっても良いのかもしれない

姉さんが後でヤキモチやいたって知らないんだから…


半ば…いや、全力で理屈を積み上げた後。ぎゅっと、司令官に抱きついた…

後は目を閉じて知らんぷりだ、二度寝をしてしまえばきっと…きっと…


頭の片隅で理屈が音を立てて崩れていく


寝れるわけがなかった



ーおしまいー



卯月と暁



ー海上ー



「勝負よ卯月っ!!」


そうやってカチコミをかけられたのがついのさっきで、あれよあれよと海の上まで引きずり出されたのが今さっき


卯月「それで何のようだぴょん?」


うーちゃんはこれでも忙しい。例えば瑞鳳の悪戯(かんびょう)をしたりだとか

たとえ「うっさいから連れてけ」とか言われて追い出されたとしても

目の前の…えーっと…名前はたしか…


卯月「ふだつき?」


そう、多分そんな名前だった気がする


暁「ぐへへっ、ねーちゃんいいちちしとるやんけ♪…ってっ!誰が札付きよっ、不良かっ!!」


違ったみたい。いい感じにハマっていたのに勿体無い…


卯月「じゃー…そうだぴょんっ♪ キツツキだったぴょんっ」

暁 「そうよっ穴を開けるのが得意なんだから…ってっ、ちっがーうっ!! 鳥かっ!!」

卯月「飛行機だぴょん」

暁 「いいえっ、あれは…」


「「UFOよっ(だぴょん)」」


それは示し合わせたようにぴったりだった


暁「あーっ!!もうっもうっ!あーっあーっ!!!」


自分から乗ってきたのに地団駄を踏んでらっしゃる

もしかして情緒不安定なのだろうか、最近の若者はキレやすいと言うし


暁「響っ、ひーびーきっーっ!! コイツっ、コイツったらもうっなんなのよっ」

響「ぁぁ、うん。分かったから姉さん、少し静かにしていてくれ…」


姉の肩に手を置いて後ろに下がらせると、呆れ気味にため息混じりに前にでる


響 「すまない うーちゃん。少しで良いんだ、姉の話を聞いてやってはくれないだろうか?」

卯月「え?何だぴょん?よく聞こえないぴょん?」


それと分かるようにわざとらしく耳を両手で抑えると、聞こえないアピールをする卯月


響「…」


流石にイラッとくるな、これは…


「勝負しろって言ってんのよっこのバカうさぎぃぃっ!!」


かと思えば、人の横で突然叫び出すわで


響「…」


流石にイラッとくるな、これは…


今ならきっと…姉はうーちゃんに夢中だし、うーちゃんは耳をふさいでいるしスキだらけだ


さて…やりますか…


カタカタカタ…


静かにけれど確実に揚弾機の歯車が周りだしていた


「ひ、響ちゃん…落ち着いて欲しいのです…」

「そうよ…バカに付き合ってたら やってらんないわ…」

「大丈夫さ、すぐ終わる…」

「笑顔が怖いのです」

「全然大丈夫じゃないじゃない…」


などと後ろで妹たちが わちゃわちゃ してることなんて気づきもせずに


卯月「しょーぶー?そんなの…こないだ うーちゃんが圧勝してやったではないか」


ぱーふぇくと に えくせれんと に そして何よりも えれがんとに…だ


暁 「カタカナばっかり並べて偉そうにっ。あんな出落ち見たいな結果で認められると思ってるのっ」

卯月「受け入れろ。それが現実だぴょん」

暁 「お断りよっ。あんなの 暁の全力じゃないんだからねっ」


そう、なんてった暁に改2がある

今回は司令官にだって許可は取ったしっ、こんな奴なんかに負けるわけないんだもん


卯月「そう言って勝った奴なんかいないぴょん。負けフラグだぴょん、うぷぷぷぷ…」

暁 「だったらっ!」


叩きつけるように肩に探照灯を載せる暁

ぼぅっと熱を帯びたように探照灯に灯りが灯ると、枷が外れたみたいに体から余計な力が抜けていった

そのお陰か、頭に昇っていた血も波が引くように落ち着いてくる


暁 「さぁ、これで…」


これからだ、忌まわしき過去を振り払って、暁が一歩前に進むために

そんな大事な一戦だとおもってたのに


「ひっく…えっく…」


鳴き声が聞こえる

どこからって、そりゃもう目の前からで


卯月「うーちゃん…睦月型なのにぃ、特型が改2になんてなったら勝てるわけないぴょーん」


そうしてもう一度「ひっく…えっく…」

強めに目尻を手でこすり、それとなく赤みを帯びさせていた…


卯月「暁はれでぃーなんでしょっ、大人げないと思わないのっ」

暁 「そ、それは…」


たしかに単純な艤装の性能なら元からこっちが上で、その上でさらに改2にまで持ち上げて…

そんなんでコイツに勝って暁は本当に良いのだろうか、それがレディーのやる事なの?


暁「ふんっ、まあ、いいわっ。確かにアンタの言うとおりね…」


パチリ…探照灯から灯りが落ちた


暁「さあっ、これで公平でしょっ」


それでも、自分が負ける事なんて微塵も考えてない暁だった




響「あぁ…ダメだアレは…」


うーちゃんの口がよく回る。それはそうなんだけど、うちの姉がバカすぎる…

どうして気付かないのだろうか…有りもしない涙を拭ったその手の後ろで、ウサギが微笑んでいるのを




暁 「なんだったら先攻だって譲ってあげるわよっ」

卯月「いいの?」


途端に爆音が鳴り響いた。その後の悲鳴さえをも掻き消して


暁「あっ、あっ、いたっ、いったっ…」


おでこを抑えて零れそうになる涙を必死に抑えている暁


暁「あんた、あんたねぇっ…」


だからって撃つか?今すぐ撃つのものなのか


卯月「良いって言ったのに…どうして うーちゃんを悪し様に言うの?」


あれ、落とすつもりで撃ったのに…外した?うーちゃんが?この卯月が…

だとしたら、意外と面倒なことになるかもしれない…なーんて…


卯月「暁っ、UFOだぴょんっ!!」

暁 「え、うそっ!」

卯月「うっそぴょーん♪」


続いて第二射。寸分違わず暁の後頭部にのめり込むと、前のめりになって海に突っ込んでいった


暁「かぁぁぁぁぁ~…」


後頭部を押さえ、海の上で転げ回る暁


雷「うっわ…痛そう…」

電「なのです…」


不意に漏れる妹達の感想が全てを代弁していた


卯月「もうこれは勝ったで良くはないか?」

暁 「いいわけ無いでしょっ。暁は絶対負けないんだからっ」


手の平を海に叩きつけると、勢い良く立ち上がる

力強い視線の先には卯月を見据え、そのやる気だけはますます燃え上がっていた


卯月「ならどうして勝つって言わないの?」


首を傾げ、ニヤついた口元をグーで隠しながら暁の顔を覗き込む


暁 「な…」

卯月「本当は分かっているんでしょ?」


うーちゃんには勝てないって…だからそうやって「負けない」なんて遠回しな言い方をするんだぴょん

そうやって言い訳をしてるんだぴょん。負けてない負けてないって往生際が出来るから

そして、次はきっとこういうぴょん…


暁 「そんなのっ、絶対に勝つに決まってるでしょっ」

卯月「てね?」


得意げに指先を突きつける卯月


暁 「はっ!?暁の心を読んだって言うのっ」




電「読心術?ていうのでしょうか…」


素直に感心する妹に、姉二人が溜息を吐くと


雷「次に電はきっとこういうわ…」

電「すごいのです…」

響「…てね?」


多少強引ではあったけど、カラクリとしてはこんなもの

凄くもなんともない、最後にしたり顔で「ほうら、そういった」と宣言すればいいだけの後出しジャンケン

まあ、暁相手で難易度が低いのもあったろうけど、それを成立させた説得力は「すごいのです」と評して良いのかもしれない


電「とんだ詐欺師なのです…」


妹はご立腹のようであったけど




卯月「絶対に勝つ?そんな当たり前の事を口にしている時点でっ」


「暁は負けてるんだぴょんっ」宣言して、指先をビシっと暁に突きつけた


暁「な、そんなの…て…」


明らかに声が小さくなっていく暁

最初の勢いは何処へやら、少なくとも口喧嘩の勝敗は見えていた


卯月「いいや、分かるぴょん。戦場で勝つだなんて声高に叫ぶやつはなぁ…自信が無いだけのただのヘタレなんだぴょんっ」

暁 「や、やってみなきゃわかんないでしょっ」




雷「あれ、辞書があったら載せたいわね…」

響「だね。ああ言えばこう言う、いい見本だと思うよ…」


けっきょく「負けない」と言おうが「勝つ」と言おうが、言い負かされてる結果は変わらなかったわけだ




卯月「じゃあ、答え合わせだぴょん…」


手の平を返し、くいっと招くように煽ってみせる


暁「くぅ…バカにしてぇ…」


落ち着きなさい暁

勝てないわけ無いじゃない。響だって言ってたわ、練度ならそう対して変わらない、どころか暁が上なくらいだって

それなら、暁に足りないのは…そう、戦術?とかなんかそんなヤツよ…それだったらっ


暁 「卯月っUFOよっ」

卯月「ぴょん?」


それはもう素直に、暁の指差す先に顔を向ける卯月


「ちゃーんす」到来だと千載一遇だと拍手喝采鳴り響く


暁「もらっ…きゃんっ!?」


第三射…またしてもの爆音が暁の口を塞いでいた




雷「丸パクリって…どんなよ…」

電「情けない限りなのです…」

響「そういうな。相手を模倣する、戦術として全てが間違ってるわけでもないさ…」


誤算と言っていいものかは分からないが…

恐るべきは うーちゃんの射撃能力か…視線も介さずに暁の主砲を弾き飛ばして…

あるいは暁の行動でさえも予想の範囲だったのか…

口が回るだけならまだしも、その結果までも頭の中にあるのなら…

もしかしてアレは、ウサギの振りをしている何か、なのかもしれない




「ねぇ、暁?」

「へ…??」


それは目の前にやってきた、ぴょんと跳ねるように現れた様にさえ見えた

そして、こう問いかける「ウサギの耳はどうして長いと思うぴょん?」子供が不思議を尋ねるようだった


「そんなの…」


律儀に答えようとする暁

その一瞬の隙間、目の前の卯月から思考がよそに回った隙に「えんげーじ…」魔法の言葉が紡がれていた


「ぶっぶー。時間切れ…正解はね?」

「なっ、うっそ…!?」


突然の煌めき、桜色の輝きに目を細める。よそに行っていた思考を慌てて戻した時にはもう遅かった


嫌な感触だ。生ぬるい鉄の棒をお腹に押し付けられている、そんな経験なかなか出来ないだろう

けれど何より、次の瞬間には足が海から離れていた

衝撃に気づいたのは何時ぐらいだったか、少なくとも卯月の頭を見下ろしていた様な気がする

向けられた主砲が、その身が焼けるのも構わずに火を噴き続ける。その度に自分の体が少しずつ上に持ち上がって最後には…


「お前の悲鳴を聞くためだぴょんっ!」


空が燃えた。大量にぶち撒けられた30連噴進砲が右も左も関係なく、打ち上げられた暁ごと空を焼き尽くした


「ふぅ…また、うーちゃんがさいきょーであることが証明されてしまった…」


「ぴょん」と、赤熱化した砲身が外れ海に落ちると、勝利を彩るように水蒸気が立ち昇っていた




雷「…」

電「…」


なんか、良くもわからない光景に何と言って良いのかも分からない


とりあえず何がおかしいって…こんな、こんな私闘の様な演習に突然 全力を踏み倒して来たことだろうか?

とりあえず何がおかしいって…この、画面の端にHIT数が表示されていそうな完全なエリアルコンボだろうか?


空いた口が塞がらないとはこの事で

じゃれ合いが突然に修羅場と化し、勝敗は一瞬でついてしまっていた


響「良いかい二人とも。今度アレと戦う事があったら…」


「分かっているね?」万感の思いを込めて妹二人の顔を見る


雷「ええ…わかってるわ」

電「なのです…」


その視線にしっかりと頷いて返す妹たち

そこに、姉の仇をとる…なんて殊勝な心がけはなく

むしろ、まともに付き合うなと、現実的な心構えだった


やってられる訳がない、あんなギャグ時空に片足突っ込んだヤツの相手なんて

正気で勝機が得られるわけが無い、無視かあるいはこっちも振り切らないと…




卯月「ねぇねぇ、大丈夫?」


ざばーっと、それはもう雑に頭の上から修復剤(バケツ)をひっくり返す卯月


暁「なによ…笑いなさいよ…」


今心配されても素直に受け取れないし、バケツなんてかけられても嬉しくもなかった

悪態なのはわかってるし、れでぃーのする事でも無いけれど何かこうモヤモヤしてしょうがなかった


卯月「…」

暁 「…」


そんな悪態に何を言うでもなく黙って暁を見つめている卯月

ついには居心地が悪くなって、暁がそっぽを向いた時だった


ぷふっ…


空気の抜けるような音…いや、それが声だとわかった時には大笑いに変わっていた


卯月「うぷぷぷぷぷっ♪」

暁 「…」

卯月「ねぇねぇ?いまどんな気持ち?負けないんだっけ?絶対に勝つんだっけ?」

暁 「…」

卯月「あはれ暁は負けてしまったぴょん…ぷはっ、こっけい だぴょーん♪」

暁 「…」


我慢の限界だった


「うらぁぁぁっ!」

「いったーいっ!?。もうっ、いきなり何するのっ」

「うっさいわねっ、何かムカつくのよアンタのそれっ」

「笑えって言ったのそっちでしょっ」

「煽れなんて言ってなーいっ」




電「なんか…元気そうなのです…」

雷「ばっか見たい…てっしゅー」

電「なのです…」

響「はぁ…やれやれだ…」



ーおしまいー



後書き

さて、戦ってばっかりの回でしたがいかがでしたでしょうか?
雰囲気だけでも伝わっていれば何よりですが

指輪開放時の球磨ちゃんがそろそろ艦娘ですらない何かになりかけてますが
インフレには気をつけないと青天井になりそうで…

暁をからかうのが楽しくてしょうがありません。良いですよね、打てば響く娘って

初登場の龍驤さん、関西弁の加減がおかしいとか、その手の筋の方がいらっしゃいましたら ごめんなさい

はい、というわけで最後まで読んでくれた方。本当にありがとうございました
貴重な時間が少しでも楽しい物になっていれば幸いです



ゆー「うーちゃん姉さんの…」
弥生「やってみたかっただけのコーナー…」
卯月「だ、ぴょんっ!」
ゆー「ぱちぱちぱち…」

球磨「ゆーから始めると静かだクマ」
弥生「静かな立ち上がりもたまには良いと思う」
ゆー「今日はクマ?」
球磨「今日は球磨だクマ」
卯月「本編でやりたい放題だったのに、まだ足りないっていうの?」
球磨「本編でやったらいけないこともあるクマ」
弥生「嫌な予感しかしないけど…」

球磨「エンゲージ…クマ」

節々から噴出する桜色の輝き、吐き出す吐息にさえ同色の燐光が漏れ出している
一つ、大きく息を吸う。大きく、大きな深呼吸
吐き出した燐光を再び飲み込み、噴出する輝きを束ねるように
肺を胸を身体を膨らませ、全身に輝きを漲らせ押し込んでいく

息が止まる。噴出していた輝きが失せると、変わりに球磨の身体、毛先の一本までにも光に縁取られていた

空気が漏れる。唇の隙間から、歯の間から、喉の奥から…そうして、飲み込んで光が奔流となり

「クマぁぁぁぁぁぁっ!!!」

空気が捩じ切れ、海面が抉られる。吐き出された光が一直線に突き進み

「ゔぇぁぁぁぁぁぁっ!?!?」

悲鳴とともに掻き消えていった

球磨「くぅ…まぁ…」

ゆー「…」
弥生「…」
卯月「…」

球磨「すっきりしたクマ…」
ゆー「クマはすごいね…」
球磨「くまくまくまくま♪」
弥生「たぶん褒めては無いと思うけど…」
卯月「これ本編でやったらダメな奴だぴょん…」


ー以下蛇足に付き


皐月「重巡棲姫って娘かわいそう…」
提督「口からビームはロマンだと思う」
皐月「球磨さんがアレだと、ボクは刀使って、空間ごと真っ二つにしないといけなくなりそうだね…」
提督「インフレって怖いね」



龍驤「なんや、このままやと うちらスルーされそうやね」
一 「おっさんの自己紹介なんて誰が喜ぶんだ…」
龍驤「うちは嬉しいよ?」
一 「といっても。言うことなんて本編で言った通りだ、後は秘書艦が龍驤ってくらいだろう」
龍驤「もう一個。うちの娘らが この人見て そわそわしとんのは、ええ身体しとるから」
一 「なんだそりゃ、むさ苦しいだけだろ?」
龍驤「ちゃうちゃう。男の子が おっぱいみてきゃーきゃー言うてんのとかわらんて」
一 「おまえ…一応な…言葉はな…」
龍驤「はっはっはっ。もう、恥じらうような歳でも無いしなっ」
一 「艦齢で数えるなよ…」
龍驤「ろり◯◯◯かて需要あるんよ?って、だれが◯◯◯やっ!?」
一 「自分で言ったんだろうが…」

名前の由来は電って漢字を見てると、電撃・稲妻・熱風…が頭から離れなかったからです



暁「暁よっ、コメント返しを始めるわっ」
響「姉さん…うーちゃんが欄外編にでてるからって…」
暁「そんなんじゃないんだからっ」
響「そうかい…まあ、嗅ぎつけられる前に進めようか」



・新人提督さんへ

暁「凄いわ、新人さんよ」
響「こちらこそ、いつも読んでくれてありがとう」
暁「あーけーど…専門らしいけど」
響「資金繰りの苦労は察するよ、下手なガチャよりきついんじゃないだろうか」

暁「テストお疲れ様ね。今回が上がってる頃には終わっていると良いけれど」
響「息抜きになっていれば尚嬉しいね。あとはほら、無理しない程度にゲーセンに行ってくるんだよ」

・金剛さん

暁 「ふふっ、オチ担当ですって」
響 「こら、笑うものじゃないよ。明日は我が身なんだから」
暁 「どういう意味よっ!?」
金剛「言葉通りですよ、さあ早くコッチに来ると良いね」
暁 「いやよっ。暁はそんな風になんかなんないんだからっ」
響 「いや、既になっていたような気もするが」
暁 「アレはアイツが悪いのよっ」
響 「うーちゃんに関わったら負けなのはそうだろうけど…」

暁 「睦月レーダー?何よそれ?」
金剛「探信儀のちょっとした応用らしいですよ?」
暁 「???」
響 「理屈は分かるんだけどね。本当にやるとは思わなかったよ…」
暁 「それでこれ、金剛さんも出来るの?」
金剛「戦艦に探信儀は…そもそも、指輪の繋がりで見つけられないのに…」
響 「睦月にお願いしても躱されただろうね。どのみち文月の味方するだろうから結局だと思うけど」
金剛「ですよねぇ…」

響「すまない、この疑問は持たせてしまったのは此方のミスだね。要反省だ」

・球磨ちゃんとデート

球磨「誰がBBAだクマ…」
響 「うん、誰もそこまでは言ってないね」
暁 「良いじゃない熟年夫婦。素敵だと思うわ」
球磨「ただの腐れ縁だクマ」
響 「その割には良く乳繰り合ってるようだけど?」
暁 「ちち?」
球磨「別に、ただ過保護なだけだクマ」
響 「過保護…自分で言う言葉じゃないね」
球磨「球磨が見てないと危なっかしくてしょうがないからな、仕方ないクマ」
響 「そうかい」
球磨「クマ…」
暁 「ちょっと、何二人で納得してるのよっ」

・深海棲艦

響「正解だよ。白い子は潜水新棲姫。すまない、アーケード専門だと流石に分からなかったね」
暁「やっぱり名前とか入れとくべきだったのかしら?」
響「どうだろうね。彼女たちが そんな風に呼び合ってるイメージもないし
  伝わらないならってそれはそれで、モザイクかかってるみたいで良いかなって考えも合ったみたいだよ」
暁「そう言うの開き直りって言わない?」
響「開き直りっていうんだよ」

暁「深海棲艦…ほんとに全滅させないとダメなのかしら?」
響「電みたいなことを言うんだね。良いか悪いかはともかく、今はやるしか無いよ…じゃないと」
暁「わかってるわ。中途半端はどっちにも…」
響「うん、そうだね」

響「ちなみに、この話を我慢できなくなったのは潜水新棲姫のせいだね
  また、我慢ができなくなった時には泊地とか空母の水姫が出るかもしれないね」


・提督の悪戯

提督「ばぁっ!」
暁 「ひゃっ!?」
提督「あははははっ、びっくりしたびっくりしたっ、あっはははははっ」
響 「うん、まるっきり子供だね」
提督「それの何が悪い?」
暁 「いいわけ無いでしょっ、いい年してっ」
提督「お子ちゃまがレディを名乗るなら。いい年して子供を名乗ったって良いはずだ」
暁 「え…あー、それも…そう…???って、誰がお子ちゃまよっ!」
響 「ただの屁理屈だよ。真に受けないように…」

響 「悪戯も良いけれど、その分皆を褒めて上げたらどうだいって話もあるけど?」
提督「…なんか照れるじゃない?」
響 「子供か…」
提督「いやまあ、どっちが我慢できなくなるかチキンレースを仕掛けるのも良いんだけど…」
暁 「そういうのをやめろって言ってんのよっ」

・対レ級

響「単艦で…」
暁「出来るわけ無いでしょ、そんなのっ」

皐月「やりたくはないよね…」
球磨「大和に出来て球磨に出来ん道理もないクマ」

暁「じょ、冗談…よね」
響「そう聞こえるんなら幸せだろうね。口からビームを吐いて消し飛ばしたりしないことを願うよ」
暁「なによそれ…怪獣じゃないんだから」

・睦月型の強さランキング

響「最近のラノベよろしく、ステータス一覧でも作れば分かりやすいんだろうけどね」
暁「雰囲気よっ。その場の見栄えが何より大事」
響「それを前提で良ければ…概ね…参考までに他の娘もつまみ食いしつつ…」



皐月・夕立
弥生(対潜戦闘時

卯月(テンションMAX

ー ブレイクスルー ー

長月・時雨
睦月・如月・望月・三日月・文月(普通に戦ったら)暁(冷静だったら
弥生・響・島風・雪風

ー 普通の壁 ー

天津風・時津風
卯月(通常時)電・雷
菊月・水無月
暁(頭に血が昇ってる)

卯月(やる気無い



暁「おかしいわ…やっぱり暁の方が練度高いんじゃない…」
響「うーちゃんに勝つつもりなら、口喧嘩に勝たないとね」

響「こうは書いたけど、指輪使ったらそれこそ どうなるか分からないよ
  今回のうーちゃんよろしくギャグ時空に片足突っ込むか
  球磨さんよろしく怪獣映画一歩手前になるからね」
暁「あくまで現時点の参考よっ。次には入れ替わってる可能性もあるわ」

・北上様

響 「それでどうなんだい?」
北上「なにがさ…」
響 「言って欲しいのかい?」
暁 「当たって砕けろって言うじゃないっ」
北上「砕けたくないから困ってんじゃん…」
響 「何も変わらないとは思うけどね。提督は何処まで言っても提督だから」
北上「響もさー、ラブコメシーンが始まったら分かると思うよん?」
響 「楽しみだね…どんと来いだ」
暁 「へ?響って好きな人いるの?」
響 「そりゃ、姉さんの事は好きさ…」
暁 「そう?私も響の事は好きだわっ」
北上「欲しいのはLOVE MEなんだよねぇ…」

・大鳳さん

大鳳「レディはいつだって控えめに、そうよね暁ちゃん?」
暁 「とうぜんよっ」
響 「でもやることはやるんだね?」
大鳳「当然ね?」
暁 「結局何してたの?」
大鳳「(笑顔)」
響 「うん、聞かないほうが良さそうだね」

・文月

文月 「突風なんて酷いんだー。あたしは そよ風の様に優しいのに」
水無月「でも そよ風は さっちんの事蹴っ飛ばしたりしないと思う」
文月 「…」
水無月「…」
文月 「どうして みーちゃんは余計な事を言うのかなぁ…」
水無月「ごめん、ごめんってばーっ」

響「彼女も彼女で得体が知れないというか…」
暁「そうなの?良い娘じゃない?」
響「そうだね。どうあれ風の様っていうのはいい表現かもしれないね…」



響「今回はこんなところだろうか」
暁「コメントありがとうね。長文だってどんとこいよっ」
響「そもそも この作品自体が長文だからね」
暁「SSってなにかしらね…」



さて、最後までご覧いただきありがとうございました
また、いつも コメント・評価・応援・オススメも合わせ、重ねてお礼申し上げます

過ごしやすいを通り越して、寒くなってきたこの頃
年末に向けて色々あるでしょうが、風邪などめされませぬよう ご自愛下さい




ー以下プロフィール(長いー


提督
練度:神頼み 主兵装:刀 物理無効・神出鬼没
「触らぬ神に祟りなしって、言うだろう?」
長髪の黒髪、何時も気だるげな表情をしてる癖に、人をからかうときだけはすっごい楽しそう
一応、白い制服を着けてはいるが、上から羽織っている浴衣が全てを台無しにしている、不良軍人
そもそも、軍人どころか人ですら無い、元土地神様
覚えている人もいなくなり、ようやく開放されたと思えば、深海棲艦が湧いてきて…
3食昼寝付きの謳い文句も手伝って、提督業を始めだした
性格は、ほとんど子供。自分でやらないでいい事はまずやらない、明日できることはやらないで良い事
悪戯好きで、スカートめくりが好きなお年ごろ
また、結構な怖がりで、軽度は人見知りから始まり、敵は全て殲滅する主義

皐月ー愛称:さつきちゃん・さっちゃん・さっきー
練度:棲姫級 主兵装:12・7cm連装砲(後期型 好感度:★MAX
「え、司令官かい?そりゃ…好き、だよ?なんてな、えへへへ♪」
初期艦で秘書艦の提督LOVE勢。提督とは一番付き合いの長い娘
その戦闘力は、睦月型どころか一般的な駆逐艦の枠から外れている程…改2になってもっと強くなったよ
「ボクが一番司令官の事を分かってるんだから」とは思いつつも
まだまだ照れが抜けないせいか、ラブコメ時には割とヘタレである

睦月ー愛称:むつきちゃん・むっつー・むっつん
練度:褒めてっ 主兵装:12・7cm連装砲(後期型 好感度:★MAX
「提督っ、褒めてっ!」
わかりやすい提督LIKE勢、「ほめて、ほめて~」と、纏わりつく姿は子犬のそれである
たとえその結果、髪の毛をくしゃくしゃにされようとも、撫でて貰えるのならそれもよしっ
好感度は突っ切っているが、ラブコメをするにはまだ早いご様子

如月ー愛称:きさらぎちゃん・きさら
練度:おませさん 主兵装:12・7cm連装砲(後期型 好感度:★MAX
「司令官?ふふ…好きよ?」
提督LOVE勢。良い所も悪い所もあるけれど
むしろ、悪い所の方が目立つけど、それでも あなたが大好きです
だから、何度でも言いたいし、何度でも言われたいの、ね?司令官?

弥生ー愛称:やよいちゃん・やよやよ・やーよ
練度:無表情 主兵装:3式爆雷 好感度:★9
「司令官?好きだよ、普通に」
普通の提督LOVE勢。変わらない表情をそのままに平気で悪戯をしてくる娘
表情が変わらないならと、大袈裟なリアクションも いつもの澄まし顔で本気に取ってもらえない
結局は卯月の姉、卯月絡みで何かあったら半分くらいは弥生のせいと思っていい

卯月ー愛称:うーちゃん・バカうさぎ、うーちゃんねーさん
練度:ぴょんぴょん 主兵装:超10cm高角砲★MAX 好感度:★7
「司令官?そんなの大好きに決まってるぴょんっ」
ぴょんぴょんする提督LIKE勢。毎日ぴょんぴょんと、あちこちで悪戯しては怒られる毎日
主な対象は瑞鳳、「だって、からかうとおもしろいだもん」なんのかんので構ってくれる瑞鳳が好き
口が滑る水無月と違って、一言多いタイプそれもわかった上、いらん事をよく言う2人である

水無月ー愛称:みぃ
練度:うん、わかるよ 主兵装:12・7cm連装砲(後期型 好感度:★7
「司令官、呼んだかい?」
よく笑う提督LIKE勢。艦娘として姉として妹として仲間として
頼って欲しいと自己アピールは欠かさない。欠かさないけど裏目にでる
胸を張った途端の平謝りが板についてきた
一言多い卯月と違って、よく口が滑るタイプ、いらん事を良く言う2人である

文月ー愛称:ふみ、ふーみん、文月さん
練度:ほんわか 主兵装:12・7cm連装砲(後期型 好感度:★9
「しれいかん?えへへー…なーいしょっ♪」
ふんわりとした提督LOVE勢。ちゃっかりと美味しい所はいただくタイプ
ラブコメをする姉妹たちの背中を押したり、喧嘩の仲裁に入ったり
緩衝材みたいに立ち回りつつ、実際はプロレスのロープみたいに跳ね飛ばしてくる
二人っきりになるとそこはしっかりと、ラブコメだってやってみせる
本人曰く「大福餅」白くて甘くて…その先は内緒

長月ー愛称:なつき、なっつん、なっつ
練度:頼りになる 主兵装:5連装酸素魚雷 好感度:★8
「司令官…いや、まあ…いいだろ別にっ」
おでこの広い提督LOVE勢。司令官に ちゅーしてこの方
自分の感情を見ない振りも出来なくなり、最近は割りと素直に好意を見せてくれたりもする
自分の感情に振り回されるくらいにはラブコメ初心者。あと、シスコン(菊月)

菊月ー愛称:菊→菊ちゃん→お菊さん→きっくー→くっきー
練度:威張れるものじゃない 主兵装:12・7cm連装砲B型改2★MAX 好感度:★8
「ながなが?ながなが ながなが」
箱入り提督LIKE勢。おもに長月に過保護にされてるせいでラブコメ関連はさっぱり
しかし、偶に見せる仕草はヘタなラブコメより攻撃力は高い。やっぱり如月の妹である
大艦巨砲主義者、主兵装は夕張に駄々を捏ねて作らせた。それとシスコン(長月)
最近、司令官との共通言語が出来た。合言葉は「ながなが」

三日月ー愛称:みつき・みっきー
練度:負けず嫌い 主兵装:12・7cm連装砲(後期型 好感度:★9
「し、しれいかん…そ、その…好きですっ!」
おませな提督LOVE勢。どこで仕入れたのか変な知識は一杯持ってる
そして、変な妄想も結構してる。すぐ赤くなる、可愛い
提督と望月に、からかわれ続けたせいで、たくましくなってきたここ最近
ラブコメモードは基本に忠実

望月ー愛称:もっちー、もっち
練度:適当 主兵装:12・7cm連装砲(後期型  好感度:★MAX
「司令官?あー、好きだよ、好き好き」
適当な提督LOVE勢。とか言いつつ、好感度は振り切ってる
だいたい司令官と一緒に居られれば満足だし、司令官になんかあれば不言実行したりもする
ラブコメには耐性があるが、やるとなれば結構大胆

球磨ー愛称:ヒグマ・球磨ちゃん
練度:強靭・無敵・最強 主兵装:46cm…20.3cm(3号 好感度:★MAX
「提督?愚問だクマ」
突き抜けてる提督LOVE勢。気分は子グマの後ろに控えている母グマ
鎮守府と提督になんか有ろうものなら、のっそりと顔を出してくる、こわい
積極的にラブコメをすることもないが、昔は提督と唇を奪い合った事もある
大艦巨砲主義者。最近、私製46cm単装砲の命中率があがった、やったクマ

多摩ー愛称:たまちゃん・たまにゃん
練度:丸くなる 主兵装:15・2cm連装砲 好感度:★6
「提督?別にどーとも思わないにゃ?」
気分は同居ネコ。とか言いつつ、なんのかんの助けてくれる、要は気分次第
絡まれれば相手もするし、面倒くさそうにもするし、要は気分次第
特に嫌ってるわけでもないし、いっしょに昼寝もしたりする、要は気分次第
ラブコメ?何メルヘンなこと言ってるにゃ

北上ー愛称:北上様・北上さん
練度:Fat付き 主兵装:Fat付き酸素魚雷 好感度:★7
「提督?愛してるよん、なんちって」
奥手な提督LOVE勢。気分は幼なじみだろうか
このままゆるゆると、こんな関係が続くならそれで良いかなって思ってる
最近の趣味はFat付きをばら撒いて海域を制圧すること

大井ー愛称:大井さん・大井っち
練度:北上さん 主兵装:北上…53cm艦首(酸素)魚雷 好感度:★8
「提督?愛してますよ?」
分かりにくい提督LOVE勢。そうは思っていても口にはしない、絶対調子に乗るから
足と両手が埋まったなら、胸…艦首に付ければいいじゃない、おっぱいミサイルとか言わない

木曾ー愛称:きっそー、木曾さん
練度:悪くない 主兵装:甲標的 好感度:★7
「提督?まあ、アリなんじゃないか?」
カッコイイ提督LOVE勢。提督に赤くさせられたり、提督を赤くしたりと、まっとうなラブコメ組
そういうのも悪くはないが、本人はまだまだ強くなりたい模様
インファイター思考だけど、甲標的を使わせたほうが強いジレンマ

金剛ー愛称:こう・こうちゃん・こんご
練度:Burning Love 主兵装:Burning…46cm3連装砲 好感度:★MAX
「提督…Burning Loveです♪」
分かりやすい提督LOVE勢。提督の為ならたとえ火の中水の中
何時からだったのか、出会った時からか
ならそれはきっと運命で、この結果も必然だったのだろう
けれど、鎮守府ではオチ担当、艦隊の面白お姉さん
取り戻せ、お姉さん枠

瑞鳳ー愛称:ずいほー・づほ姉ちゃん
練度:卵焼き 主兵装:99艦爆(江草 好感度:★6
「だれがお姉ちゃんよっ」
気分は数ヶ月早生まれな幼なじみ。ラブコメルートもあった気がしたけど、何処行ったかな
卯月にからかわれて追っかけまわすのが日課。弥生に唆されてモヤモヤするのも日常
だからって、別に卯月を嫌ってるわけでもなく実際はその逆である

夕張ー愛称:ゆうばりん
練度:メロン 主兵装:軽巡に扱えるものなら何でも 好感度:★6
「ゆうばりんって…気に入ったのそれ?」
気分は一個上のお姉さん。卯月や菊月の駄々に付き合ったり
球磨や提督の無茶振りで、アレな兵装を作ったりと、信頼と安心の夕張さんである
特に決まった装備は無く、戦況次第でなんでも持ち出すびっくり箱、安心と実績の夕張さんである

大鳳ー愛称:大鳳さん
練度:いい風 主兵装:流星改 好感度:★9
「提督、愛してるわ」
素直な提督LOVE勢。金剛見たいにテンションを上げるでもなく、息を吐くように好意を伝えてくる方
ラブコメに悪戯にと我慢強い方だが、許容量を超えると…
その落ち着いた物腰からは、艦隊の保護者っぽくなっているが、内心は見た目通り歳相応だったりもする
最近は大人気ないと周知の事実、本人は一応否定してるつもり

U-511ー愛称:ゆー、ゆーちゃん
練度:ですって 主兵装:WG42 好感度:★8
「Admiral…提督さん、次は何をすれば良い?」
好きとか甘いは良く分からないけれど、Admiralの お手伝いが出来ればいいなって思います
素直、とても素直、素直すぎてすぐ手が出るくらい素直
鎮守府の番犬・猟犬・あるいは狼も通り越して、やっぱり番犬の位置に落ち着いている
如月に貰った三日月型の髪飾りは宝物

ポーラ-愛称:ポーラさん
練度:赤ワイン 主兵装:白ワイン 好感度:★7
「提督さん?面白い人ですよねー」
ゆーの舎弟。あんまりな言い方をすれば、そういう立場
酒は飲んでも飲まれるな。口も態度も緩くなるが、意外と理性は残ってる
酔が醒めると口も態度も固くなるのを気にしてか、平時はもっぱら酔いどれている


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2017-11-20 11:41:25

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2017-11-20 11:41:26

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1: SS好きの名無しさん 2017-11-11 12:57:24 ID: axS_Hnm_

全部見て来ました 初コメです 球磨ちゃんのシビアな考え方いいですねえ 敵は倒せる時に倒すってやつですね    次回も楽しみに待ってます♪

2: SS好きの名無しさん 2017-11-12 12:04:17 ID: tQ_J9RHC

こんにちはアーケードの新人提督です
質問に答えて頂きありがとうございます

今回は球磨ちゃんとゆーの無双回でしたな‼さすがだ…(ガクブル)…ていうかこの鎮守府最強じゃないですかヤダー

電がプラズマの方じゃなかった…他のssを見てるとプラズマがちょくちょく出てくるから…あっ私はどちらでもいいんですがね‼可愛いから!

次の回はなんだろなー。さっちゃんが可愛い話ならなんでもいいんですがね!我が嫁が可愛ければ‼という訳で期待しておりますよ提督さんグヘヘ

私も敵は殲滅する主義です‼だって我が艦娘たちが活躍している姿が見られるから!そのためならどんな犠牲も厭わない…他の提督さんたちも同じ気持ちですよね?

今回も面白かったです‼次回も待ってます‼


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