2015-09-22 18:20:23 更新

概要

ため息提督と第9鎮守府の続きです

文字数の限界が近いので次に行きたいと思います・・・次から別枠で書きます。

1000pv突破・・・・嬉しいなぁ。今回これを記念として設定集を書きます!・・・・・いつかね?






コメントも随時受け付けています・・・どんどんどうぞ



駄文ですが楽しんでいただけたら幸いです、あとまだまだ初心者なのでアドバイス等いただけるとうれしいです。

独自設定があり、口調、性格等違う部分もあります。


前書き

人物紹介


隊長 本名 無し
元特務機動戦隊1番隊隊長。いまは第9鎮守府に配属され遊撃部隊の指揮官となる。最近ため息はついていない。プロトタイプと言うものと関係があるらしい。


時雨
白露型2番艦。単純な戦闘能力では第9鎮守で一番である。提督と一夜を共にし少し明るくなった。特技研で改良型の艤装を与えられた。酒は飲むがタバコは吸わない。眠る、ボーっとするのが趣味。ゲームで言うと改二の艤装。年齢は20歳ぐらい。現在は夕立の艤装のスペアを借りている。

雲龍
雲龍型航空母艦1番艦 もと特務機動戦隊2番隊隊長。艦娘として覚醒したため戦闘能力が大幅に向上した。射撃が得意でたまにレールガン所持で出撃することがある。本名、年齢共に秘密

榛名
第1鎮守府の秘書艦 名無し提督の秘密を知っている数少ない人物の一人。この榛名の大丈夫は本当に大丈夫。
年齢は22歳

明石
第1鎮守府所属の艦娘 普段は特技研にて艤装の開発、強化を担当する。名無し提督の秘密を知っている。提督曰く格闘戦では無類の強さを誇るらしい。年齢は30歳

秋津州
飛行艇母艦兼工作艦 艦娘だが艤装自体にほぼ戦闘能力が無いため実戦には参加せず特技研で装備の開発研究を行っている。明石とは違いまるっきり戦えない。以前はオリジナルをの主任研究員だった。年齢34歳

阿賀野  元第3提督 被験者No.3  
名無し提督からはトロワ呼ばれていた。 元特務起動戦隊 3番隊隊長オリジナル。性別は女性。表向きは第3鎮守府の提督であったが艦娘の適正があったらしく今回で軽巡洋艦『阿賀野』になった。一応提督だが実際の執務は副官が行っているため現在は艦娘として出撃する機会が多くなりそうだ。年齢は不明

先代あきつ丸 本名 二ノ宮 優華
3年前の日本近海海戦の際に轟沈したはずの艦娘、元特務機動戦隊2番隊副隊長。今は2代目が着任しており彼女は先代にあたる。隊長の恋人で名付け親。 ちなみに見た目はゲームに出てくるあきつ丸とは別人です

青葉
青葉型重巡洋艦1番艦。元特務機動戦隊1番隊隊員。現在は表向きは広報部、裏では諜報部に所属している。普段は広報部として各鎮守府を回りながら青葉新聞の取材、同時に諜報部として反乱や犯罪の調査を行っている。年齢は21歳

雪風
陽炎型駆逐艦8番艦。今は最前線である第7鎮守府で旗艦をしている。天龍と同じもと第1艦隊出身。その実力は常軌を脱しており、マトモに戦える艦娘は片手で数えられるほど。雪風が呼び捨てにするのは自分と対等と認めた者のみでそれ以外は敬語で話す。年齢は似た目に反して26歳


特Ⅲ型駆逐艦2番艦。以前天龍が所属していた第4鎮守府にて主に指導艦をしている。第1艦隊への所属経験がないのは面倒だからと言う理由で断り続けた為で実力は雪風には及ばないものの時雨と同等以上の能力をもつ。年齢は29歳

皐月
睦月型駆逐艦5番艦。第8鎮守府に所属している。雪風と同じ時期に艦娘になったいるため最古参。艤装性能の差で雪風達より一歩劣るがその分を持ち前の抜け目無さでカバーする。隊長とも面識があるが男嫌いな為あまり付き合いは無い。23歳。

葛葉 頼道 第1提督
第1鎮守府の提督であり階級は大将。日本海軍では事実上トップである。隊長曰く完璧超人。阿賀野曰く真面目な狂人。名家である葛葉家当主で榛名の事を愛している。年齢は27歳。

金剛 
金剛型戦艦1番艦 大本営第1鎮守府の旗艦。艦娘のなかでも最も多くの戦果をあげている。実家の名も無い拳法を会得しており格闘戦もこなし砲撃火力による中距離から遠距離戦もこなすオールラウンダー。普段はエセ外人風の口調だが感情が高ぶると荒っぽい口調となる。日本とイギリス系のハーフでアメリカ人。年齢は24歳

瑞鶴
翔鶴型航空母艦2番艦。大本営第1鎮守府の副艦で新生1航戦旗艦でもある。実力は非常に高く、同じ新生1航戦の加賀とパートナーを組んで多くの戦果を挙げている。見た目に反し切れ者で戦略の組み立ても得意。艦娘の見た目的に加賀よりかなり胸が小さいのが最近の悩み。年齢は19歳

加賀
加賀型航空母艦。大本営第1鎮守府に所属する。瑞鶴と共に新生第1航空戦隊として多くの戦火をあげている。見た目に反して激情家。瑞鶴とは実家が近所で幼馴染、同級生でもある。艦娘の見た目的に瑞鶴よりかなり年上に見られるのが最近の悩み。年齢は19歳

本谷 ムジカ   第5提督
第5鎮守府の提督。もと艦娘研究者であり様々な装備の開発を行ってきた。その為艦娘を知り尽くしており、その膨大なデータを元に戦術を練り上げ戦果をあげてきた。性別は女性。時雨曰く夕立との関係は夫婦と言うよりは飼い主とペットに近い。

夕立
白露型4番艦 第5鎮守府の旗艦を勤める。戦果自体は決して多いほうでは無いが実力は高いためナイトメアシステムの被験者となるなど新しい装備を優先的与えらる。ムジカとケッコン済み。時雨とは艦娘になる以前からの付き合い
恐らく20歳・・・別に女性好きと言うわけでないらしい。時雨曰く頭がよくない分体は頑丈。

桐生 創
第7鎮守府提督。最前線に着任しているだけあり能力は高い。ふざけた言動が特徴だが2年ほど前までは真面目だった。

名城 大介
第3鎮守府副官、阿賀野の代わりに執務を行う・・・実質提督で扱いもほぼ提督に準じている。真面目で優秀だがほかの提督と比べると地味になってしまう。


第2提督 本名 海藤 正行  
第2鎮守府の提督。提督にふさわしい能力と出自をもつ。第1提督とは折り合いが悪く、艦娘に対していい感情を持っていない。第2鎮守府には艦娘の配備は進んでおらず、通常艤装兵と無人機部隊が主な戦力となっている。


航空戦艦 本名 不明
オリジナルの1人、武人のような性格でコマンダーに忠誠を誓っている。オリジナルの中では最強とされている。西洋の甲冑のような装備で肩に主砲が取り付けられている。飛行甲板兼両手剣と主砲が主な武器。

正規空母
オリジナル コマンダーとは敵対しているようだ。肩からの長いマントを羽織っている・・・武装は迎撃用の二挺拳銃型機銃とマントの内側に隠された艦載機。男性


[1]



時雨「・・・朝か」



カーテンから朝日が差し込んでいる。・・・今日は非番だったはず、もうちょっと寝れそうだ。・・・だがいつもと何かが違う。



時雨「あれ?不知火?」



いつもなら支度を終えてテキパキと動いている不知火がいない。と言うよりいつもと部屋が違う、それになんか肌寒いし?服・・・・?



時雨「昨日は・・・朝からボーっとしてその後雨にぬれて,提督と・・・あ」



提督「起きたか?」



時雨「きゃあぁぁ!!て、提督??」



提督「うわぁ!!びっくりした!!って服はどうした?」



時雨「ごめん!!ちょっと探すから向こうみててくれるかな・・?」



提督「う・・・うんむわかった」



シーン・・・静かになった。急いで探そう、こんなところ皆に見られたらどうなることか・・・



時雨「あんなとこに、よっと」



シュルシュル、取りあえず急いで服を着る。こんなでいいか取りあえず急いで自室に戻らないと・・・不知火は僕が帰ってないことに気づいてるはずだ。どうしたものか・・・適当な嘘をつけば何とかなるだろうか。



提督「出るぞ、準備はいいか?・・・あ」



時雨「ふぇ?」



提督が扉を開けた時はすでに手遅れだった。目の前にいたのは6人、索敵の結果・・・駆逐艦1、航巡1、軽巡1、正規空母1、航空戦艦1、副官1だった。終わった。敗北だ。



最上「おぉ~時雨ちゃぁん」



山城「朝帰りなんて悪い子ねぇ~ふふふ」



ニヤニヤ。この言葉が実によく似合う表情をしている。腹が立つ。すごく腹が立つ顔だ。



不知火「ふむ・・・大人の階段をのぼってしまったようですね、祝福しますよ時雨」



副官「まぁ・・・本人の同意の下だというならなぁ・・・おめでとうでいいのかな?」



この二人は真面目なくせに変に天然だ。まず何もしていないし、その階段はもうとっくにのぼっているし、まず表現が古い。



天龍「・・・ふぅ」



雲龍「・・・まったく」



この二人は飽きれているのか、怒っているのか・・・この二人も提督のことが好きだったりするのだろうか・・・ん?二人も?




提督「取りあえずお前ら・・・何もしてないからな?」



時雨「うん、ちょっと寝てただけさ、皆が面白がるような事はないよ?」



最上「ふ~ん?そう言われてもねぇ?」



山城「雨に打たれながら抱き合ってたのを見たらねぇ?」



山城&最上「信じられないよねぇ~」



時雨「提督?この二人をシメる許可をもらえるかな?」



提督「かまわんが俺も参加する、お前ら1000に演習場に来い。相手をしてやる」



最上「まったくー冗談だってぇ」



山城「ふふふ、ちょっとやりすぎたかしら?」



時雨「やりすぎだよ?まったくさ」



雲龍「冗談はここまでにしなさいよ、で?何の用事で呼んだの?」



ここで雲龍が場の雰囲気を変えてくれた。正直助かった。このままでは最上と山城にやられっぱなしになるとこだった。



天龍「時雨とのイチャツキを見せるためじゃないよな?」



提督「んな訳あるか・・・予定が変わってな、艦娘運用艦「方舟」の最終調整をこちらでやることになった。それで今日のうちに第1鎮守府に取りに行くんだ」



艦娘運用艦「方舟」・・・海上自衛隊時代に建造された護衛艦を改造したものらしい。そんなものが役に立つのか正直不安であるが・・・



不知火「まさか全員で取りに行くんですか?」



提督「いや…第1鎮守府には俺と副官で行く」



副官「私と?護衛は良いのですか?」



時雨「そうだね…方舟とやらもそうだし副官さんや提督にも護衛がいるんじゃないかな」



最上「提督の護衛なら時雨でいいんじゃないかな?」



時雨「なんだい?随分と含みがあるじゃないか・・・」



提督「ふむ・・・確かにな、時雨頼めるか?」



雲龍「隊長?」



提督「ん?なんだ怖い顔して…」



天龍「おいおい…そこまで怒るなよ、俺も時雨で賛成だな」



雲龍「怒ってなんて・・・で?時雨1人でいいの?」



提督「最上」



最上「ボク?いいけど」



副官「確かに最上君の瑞雲がいてくれれば心強いな」



提督「よし・・・では1000にここを出るから準備を進めてくれ」



天龍「じゃあ俺達はいつも通りの哨戒任務ってヤツだな」



提督「あぁ、頼む。なにかあったら連絡してくれよ」



雲龍「ええ、わかったわ」



取りあえずこの場は解散となった。1000に出発、今は0820・・・ゆっくりお風呂に入る時間ぐらいはありそうだ。汗臭くはないがやはり気になる。なんというか色々・・・うん色々ね。僕は足早に浴場に向かうことにした。





[2]



大本営 第1鎮守府



1050 大本営第一鎮守府に到着した。執務室で解散した後は色々大変だったらしい、提督は天龍にからかわれ雲龍にくどくどと説教を食らっていた。説教が長引いたおかげで提督の支度が遅れ、雲竜と天龍の二人を巻き込んで何とか支度を終えたらしい。そのおかげで帰ったらまた説教が待ってるらしい。提督は行きの車内で深いため息をついていた。時雨はと言うと部屋に戻った際、不知火の生暖かい視線に耐え切れずかなり早めに執務室に向かった。だがそれを山城と最上に見られていたようで、また提督をネタにいじられ続けていたらしい。そのせいで車内では疲れて眠ってしまった。護衛がこれでは意味が無いと思うのだが・・・・ここは謝罪する最上に免じて許すことにした。



副官「・・・ここが大本営第一鎮守府ですか」



そんなこんなで着いた大本営だが、かなり大きい鎮守府だった。私のように初めて来た者では絶対に迷ってしまうだろう。



最上「あれ?副官さんは来たこと無いの?」



副官「恥ずかしながら、そうですね」



提督「珍しいことではないな、此処は艦娘を統括しているが、他の軍人は第2鎮守府で辞令や訓練を行ったりするからな」



時雨「だとしたらなぜ提督はここに来たことがあるんだい」



提督「提督だからな、艦娘を直接指示する立場にある軍人はここで研修するのさ」



副官「では提督もここで研修を?」



提督「いいや、してない」



副官「・・・はい?」



提督「お?・・・案内役が来たぞ」



そう言った提督の目線の先には巫女のような服を着た一人女性が立っていた。美しい女性だ、艦娘はなぜ皆こうも美人なのだろうか。艦霊も意外とミーハーだったりするのだろうか。



榛名「第9鎮守府の方々ですね?私は第1鎮守府の秘書艦の金剛型高速戦艦3番艦、榛名と申します」



提督「榛名、久しぶり」



榛名「はい!隊長さん・・・あ、今は提督でしたね」



提督「そうだな、そう呼んでもらえると助かるよ」



榛名「そちらは最上さんと時雨さん、貴方は・・・副官でよろしいですか?」



最上「そうだよ」



時雨「うん」



副官「その通りです」



榛名「それでは早速、方舟のドックに向かいましょう。こちらです」



私達は榛名と言う艦娘についていく、はぐれないようにしよう・・・ここではぐれたら確実に迷子だ。35過ぎて迷子というのは恥ずかしすぎる。方舟・・・何隻もの自艦を沈めてきた私に与えられた恐らく最後のチャンス・・・おっと、考えすぎると迷子になってしまう。今はドックに着くことに専念しよう。




特殊艦用ドック



榛名「こちらが艦娘運用艦「方舟」です」



副官「・・・これが方舟?・・・これって」



時雨「なにこれ?実際の艦ってこんなもんなんだね」



最上「バランスが悪いよねぇ・・・」



副官「てんりゅう・・・こんな物で戦えるとでも思ってるのか!?」



榛名「?」



提督「なに?天龍だって?」



副官「えっと・・・てんりゅうです海上自衛隊時代の訓練支援艦ですよ」



海上自衛隊時代に運用されていた訓練支援艦「てんりゅう」。無人標的機の管制の行い対空射撃訓練の支援を行う艦だ。どう考えても戦闘用の艦ではない。



最上「へぇ・・・詳しいね」



榛名「・・・副官さんが何をいいたいのかわかりませんがこの方舟の性能は十分実用可能なレベルですよ」



副官「本当か・・・?」



榛名「ええ・・・よろしければ開発者も呼んで開発時のデータと実験時のデータをお見せしましょう」



副官「早速、頼めますか?」



榛名「はい、納得するまでお付き合いしますよ」



提督「それでは・・・俺は行きたいとこがあるから遠慮するよ」



榛名「特技研ですね・・・案内は・・・」



提督「大丈夫さ、一人で行ける」



最上「ボクは副官さんとここで軍艦談義に付き合うから、時雨は提督と一緒にいってきなよ」



副官「さすがに護衛なしでは・・・つれてきた意味がありませんからね」



提督「いや・・・それは」



榛名「私としても一人で行かせるのは心苦しいので・・・それに」



ふと榛名が提督に近づき小声で話始めた・・・気になるが聞くのは野暮だ。



榛名「身体の秘密を知ってもらうのは、これからの提督には必要なことですから」



提督「・・・」



榛名「それに・・・時雨さんなら」



ふと榛名が時雨に目線をやった。事態を静観していた時雨としても驚いたようで不思議そうな顔になった。



榛名「あの子なら・・・貴方を信頼してますから大丈夫です」



提督「榛名の大丈夫なら、信じよう」



榛名「はい,榛名の大丈夫は大丈夫です」



提督「時雨・・・一緒に来てくれるか?」



時雨「ん?・・・うんわかったよ」



提督「では副官、先に方舟で待機しててくれ」



副官「了解しました。こちらもじっくり話すつもりですのでごゆっくりどうぞ」



最上「じゃあねー”護衛”しっかり頑張ってー」



時雨「・・・はいはい」



榛名「それでは副官さん、最上さんこちらにどうぞ」



副官「はい・・・お願いします」




第1鎮守府 特技研前



時雨「特技研・・・聞いたこと無いなぁ」



提督「・・・」



時雨「ここって関係者以外立ち入り禁止だし・・・」



提督「・・・」



時雨「ていうか提督って関係者だったんだね・・・」



提督「・・・」



時雨「提督?・・・・んっと」



提督「・・・」



廊下にはカツカツと歩く音だけが響く、僕が暇だから話をしても提督は何も反応がない・・・考え事か?・・・緊張してるとか?・・・だとしたら聞いてないのだろうか・・・ふーむ。



時雨「て・い・と・く?私・・・ちょっと疲れちゃったなぁ・・・向こうでゆっくりしない?」



提督「・・・」



時雨「・・・・」



提督「・・・」



時雨「・・・ルァ!!」



どんなに話しかけても,誘惑しても反応しない提督を見たら無性に腹が立った。気づいたら僕は提督のケツにミドルキックを叩き込んでいた。



提督「いってぇ!!時雨!!何を!?」



時雨「やあっと喋ったね・・・この長い距離を会話なしってのは結構辛いんだけどね?」



提督「す、すまんかった・・・考えごとしててな・・・」



時雨「なれない一人称使ってまで気を引いたんだけど・・・で?」



提督「で?・・・なんだよ」



時雨「考え事について・・・相談のろうか?」



提督「いや・・・いい。どうせこの先でわかることだからな」



時雨「ふーん、そうかい」



提督「取りあえず、行くぞ・・・あぁケツが・・・結構いてぇな」



時雨「そりゃぁそうさ、本気の蹴りだからね」



再びカツカツと歩く音が廊下に響く。しばらくすると歩みを止めた。目の前にはいかにもな扉がある。ここで変なもの作ってますよとでも言いたげそうな扉だ。この先に何があるのだろうか。僕には想像もつかないが・・・なんとなく嫌な気分なりそうな気がする・・・ホントになんとなく。提督がコンソールをいじると扉が開いた。





特技研



扉が開くとその先では1人の女性が立っていた。ピンク色の髪、髪は長くて美しい、セーラー服で袴の様なミニスカートを穿いている。その女性がこちらに気づくと笑顔で駆け寄ってきた。



明石「あ、隊長!!久しぶりですねぇ」



提督「明石・・・今は提督でな」



明石「ん?・・・あぁそういえばそうでしたね・・・忘れてました」



提督「わかってくれたならいいさ」



明石「はーい!!で、この娘は?」



提督「時雨だ、俺の部下になる」



明石「それは知ってますよぉ・・・なぜここに?」



ふと明石と呼ばれた女性の声が真剣になる。さっきまでの気の抜けた喋りから一変している。だが表情は一切変わってない・・・それが余計に怖く感じる。



提督「榛名の推薦でね・・・これから遊撃部隊に所属する以上、力になってくれる人間が必要でね」



明石「榛名さん?・・・ふーむ」



じぃっとこちらを見る。僕としては話がわからない以上何もいえない何もできない。少しニコッとわらって見ようか・・・・やめとこう、そんな空気じゃない。



時雨「・・・」



明石「・・・実力やよし」



時雨「は?」



明石「うん?あぁ錬度を見てたのよ・・・貴女の錬度は十分高いわね、数字にしたら83くらいかしら?」



時雨「・・・83?ねぇ?」



明石「新型の艤装を試してみない?かなり強くなるし・・・あなたの戦闘スタイルに合わせて改造もできるし・・・」



時雨「え?・・・あ、はい」



ぐいっと近づき話し始める、かなりの迫力であったため自然と後ずさりしてた。そのため後ろの扉に追い詰められてしまった。



提督「明石」



明石「はい!?」



提督「俺の調整を頼めるか?」



明石「あ・・・はいはい準備してきますねぇ」



時雨「・・・はぁ」



提督「災難だったな」



時雨「う、うん・・・ホントだよ」



提督「今から俺は調整を行ってくる・・・できれば見ていてほしい」



時雨「うん・・・わかったよ、でも」



提督「どうした?」



時雨「どうして僕なんだい?」



提督「・・・特に考えて無かったな」



時雨「そ、そうか・・・」



提督「と言うのは嘘だ」



時雨「ふぇ?」



提督「まぁ・・・秘密ってことで」



時雨「秘密・・・まぁ取りあえず、なんらかにしても理由はあるんだよね?



提督「ああ・・もちろんだ」



時雨「なら良かったよ」



提督「ありがとう、時雨」



時雨「う・・・うん」



明石「てーいーとーくー!!準備OKでーす!!」



提督「・・・では行くか」



時雨「そうだね・・・」



一体何の理由で僕を選んだのかはわからなかった。・・・でも確実に何か理由が会って選んでくれたようだ。今はそれだけでもうれしく思えた。うれしい?・・・どうしてこんな風に思ったんだろう。わからない・・・帰ったら誰かに聞いてみようかな・・・いや、やめよう、ろくなことにならない気がする。とりあえず今は提督の秘密についてだけを考えよう。




時雨「これは?・・・」



明石「提督専用の調整槽でぇす」



時雨「・・・」



調整槽と呼ばれた大きな機械の塊・・・普通人間が入る必要があると思えない、そんな禍々しい物のように見える。調整槽の横には赤い液体が大量に入ったタンクが見える。タンクはもうひとつあり、そっちは空のようだ。



提督「よし・・・じゃぁ失礼するぞ」



明石「はーい、それじゃあ早速調整を・・・っと」



明石「んー内臓機関の稼働率は・・・・30%ね。えっと生身の部分への影響は・・・それと・・・」



明石がブツブツ独り言を言いながらパソコンをいじっている。こちらとしては置いてけぼりで意味がわからない。



明石「うーん異常なし!・・・後は血液の交換ね・・」



そういった明石が調整槽のコンソールを操作すると機械が動きはじめた。すると横にあった空のタンクに赤い液体が満たされていく。血液の交換・・・・明石は今そんなことを言っていたような。



明石「後は終わるのを待つだけねー」



時雨「えっと・・・明石さん?聞きたいことがあるんだけど」



明石「うん?改良型の艤装のこと?」



時雨「そうじゃなくてね・・・提督のことさ」



明石「あぁ・・・なんだそんなことか」



時雨「そんなことって・・・」



明石「ごめんごめん・・・さっきのを見てもらえばわかると思うけど、提督さんは普通の人間ではありません」



時雨「・・・」



明石「時雨ちゃん・・・ディープライド鉱石って知ってる?」



時雨「んっと10年前に発見された・・・莫大なエネルギーを閉じ込めた石だったよね」



明石「正解です・・・それで提督はそれを身体に組み込んでいまーす」



時雨「・・・なんで?」



明石「わかんない」



時雨「はぁ?何でさ」



明石「私がやったわけじゃないもの」



時雨「そ、そうか・・・確かにね」



明石「何にしても体に埋め込まれたディープライド鉱石のおかげで血液の消耗が激しくてね。1ヶ月に一回は血液を交換しないといけないのよね」



時雨そうしないとどうなるの?」



明石「消耗した血液が内臓と言う内臓を破壊してしまいますねぇ」



時雨「つまり死んでしまうってこと?」



明石「はい・・・ですのでぇ、今入った機械で血液を交換してます」



まるで今日の晩御飯の話をするように軽く言い放った。明石と言う艦娘は頭のねじが何本か飛んでいるのだろうか?



時雨「そう・・・」



明石「ショック?」



時雨「ん・・・たぶん違うかな?」



明石「へぇー」



時雨「なんだい?」



明石「普通なら嫌悪感ものだと思うんだけどな」



時雨「どうしてさ?」



明石「だって普通の人間じゃないんだよ?」



時雨「・・・それを言ったら艦娘も普通の人間じゃないよ?」



明石「あ、そうだねぇ・・・艦霊に身体を弄くられたわけだし」



時雨「鉱石が埋め込まれているぐらいじゃあね?・・・」



確かに身体に何かが埋め込まれているのは異常だとは思う。だがそれは僕たち艦娘も似たような物なはずだ・・・ではなぜ提督はあそこまで秘密にするのだろうか?



明石「・・・それなら本当のこと話しても大丈夫かな?」



時雨「!?本当の事?」



そう言った明石の顔は今までのそれとは違っていた。真剣な目・・・本当の事とは何だろうか?明石は右手で合図した。オフィスで話したいようだ。急な変わりぶりに驚きながらも僕は明石について行く事にした。




方舟 艦橋



提督と時雨と別れた後、副官さんは1時間ほど開発者と話していた。正直その間ボクは退屈だったけど。まぁ聞いた話を要約すると・・・この方舟は旧海上自衛隊時代の護衛艦の機関をディープライド鉱石を原料にした機関に変えて・・・えっと深海棲艦用の武器と装甲を取り付けたものらしい。他にも色々言ってたようだが覚えてない。それでこっちが終わってすぐに提督たちが戻ってきた。その後すぐに方舟に乗って帰ることになったわけだが・・・



提督「・・・」



時雨「・・・」



副官「・・・」



最上「・・・」



なぜか・・・・なぜかわからないが空気が重たいのだ。鎮守府に帰るたった数時間とはいえ、これでは身が持たない。



最上「・・・・・・・・あーもう!!」



提督「どうした?最上」



最上「空気が重い!!何があったのさ!!」



最上「まずは副官!!」



副官「へ?・・・私ですか?えっと」



最上「その次は提督と時雨!!」



提督「え?」



時雨「・・・」



最上「考え込んでる皆はわからないでしょうけど僕にはここの空気は重たい!!」



提督「ああ・・・なんだかすまん」



最上「何考えているのか知らないけどさぁ・・・ただでさえ慣れない船の上でストレスなのに、その上空気が重たいんじゃやってられないよ」



提督「ふーむ・・・しかしなぁ」



提督がそういいかけた瞬間、彩雲から敵影発見の報告を受けた。正直助かった・・・これでストレスを発散できる。



最上「どうするの?迎撃する?逃げる?」



提督「ふーむ全部で25体ほどか・・・ならばここは・・・」



不意に館内放送が流れてきた・・・先ほど紹介された明石さんだったか」



明石「あーあーこちら機関室」



提督「明石か?」



明石「まだ方舟の装備は主砲ぐらいしか使えないからね?逃げるにしても迎撃するにしても気をつけてよ?」



提督「そうかまず最寄の鎮守府に救援要請を・・・その間に機動力の高い俺と時雨で迎撃する。最上は方舟の護衛を頼む」



副官「わかりました・・・御武運を」



提督「よし・・・では行くぞ」



方舟 出撃ハッチ



時雨「提督、作戦はどうするの?」



提督「作戦か?それはな・・・」



敵の数は25体、そしてこっちの戦力は3人。普通に真正面からの戦いでは負けはしないだろうが、損傷が多くなるだろう。こちらとしては方舟が安全に脱出できる時間を稼ぐか、救援部隊の到着を待てばいいだけなので無理はしない。作戦はこうだ・・・まず時雨と俺で迎撃に向かい敵の陣形を乱し同士討ちを誘う。その後混乱した敵に方舟の主砲をぶち込み打撃を与える。そしてその隙に救援部隊と合流し脱出する。



提督「と、言う感じかな?」



時雨「ふぅん・・・わかったよ」



最上「ボクの出番はないのかな?」



提督「もしもの保険さ」



最上「そうかいそうかい・・・まぁいいさ」



時雨「ならさっそく・・・」



提督「そうだな・・・出撃」



艦の中から出撃するのは初めてだったが、特に問題はなさそうだった。艦娘運用艦というだけはあり、これなら着艦にも問題はなさそうだ。・・・取りあえず今は迎撃に集中しよう。



戦闘海域



出撃し数分程だったか、艦橋にいる副官から慌てた声が届いた。



副官「提督、少々おかしなことになりました」



提督「なにか?」



副官「それが、敵の機影が2つに減ったようでして・・・」



敵影が減った?・・・そんなことがありえるのか?敵の作戦か・・・それとも設備の故障か?どちらにしても状況は良くないだろう。さて、どうしたものか・・・



提督「それは本当か?」



副官「ええ・・・こちらとしても彩雲や最上君の瑞雲にも確認してますし・・・こちらの故障の線もありません」



提督「そうか・・・」



ならば・・・敵の作戦と考えたほうがいいだろう。伏兵・・?隠密行動でこちらに接近・・・?囮?ふむ・・・



提督「こちらはそのまま方舟の周囲を警戒し海域を脱出しよう」



副官「ルートはどうしましょうか?」



提督「それは救援部隊次第だな・・・どうなっている?」



副官「第3鎮守府と連絡が取れました。10分のうちに到着するそうです」



提督「では合流予定地点に直進しよう。ルート計算と誘導はそちらに頼むぞ?」



副官「了解しました。ではこちらのルートにそって・・・・!?」



そういい掛けたときだった。



副官「提督!!2体の機影がそちらに急接近しています!!」



提督「なに?・・・仕掛けてきたか・・・」



時雨「2体とはいえ方舟に接近させるわけには行かないね」



提督「・・・こちらで迎撃する。そちらは先に脱出しろ」



副官「は、はい・・・」



2体の深海棲艦は囮ではなかったか?・・・なにか嫌な予感がする。気を引き締めたほうがよさそうだ。



時雨「提督・・・もう近づいてきた見たいだよ」



提督「・・・速いな」



時雨「ん?・・・見たこと無いやつらだね」



敵は2体・・・普通なら相手にならない。こちらが断然有利だが・・・今回はそうはいきそうもない。いままで見たことの無いやつらだった。見た目もどちらかと言うと深海棲艦よりも人間に近いようだった。



????「あれが例の奴等か・・・」



???「ウン・・・ソウダヨ」



????「我々の計画の障害足りえるのか試させてもらう・・・」



???「・・・殺シテハダメ・・・」



????「わかっている・・・では私は人間をやろう、お前は艦娘を」



???「ウン・・・ボクニマカセテ」




提督「来るぞ・・・強敵だな?」



時雨「うん・・・今までの雑魚とは比べられないかもね」



提督「行くぞぉ!!」



時雨「うん!!」




提督対????



敵は2体だったが1対1での戦いを望んでいたようで俺達は分断された。俺の方に来たのは戦艦のような艤装を着けた男だった。見た目は深海棲艦のようだが、やはり人間の方が近い気がする。剣を用いた戦いだがかなり手強い。



????「ふん・・・貴様なかなかやるな」



提督「あんたもな?驚いたよ」



ひとつ、ふたつと剣をあわせていく、相手の艤装を考えると距離を離すのは不味い・・・砲撃戦となるとこちらは手も足も出ない。ここはそのまま接近戦でしとめるしかなさそうだ。こちらの身軽さを生かし攻める。感覚を研ぎ澄まし踏み込む。



????「チッ・・・距離を離すか?」



提督「させるかぁ!!」



相手が距離を離そうと防御に入った瞬間・・・その一瞬に力を振り絞り電磁ブレードを振るう。その一撃で左肩部に取り付けられていた主砲らしきものを破壊することができた。



????「むうぅ・・・だが!!」



こちらも攻撃の一瞬の隙をつかれ相手の蹴りをわき腹に食らってしまった。艤装の装甲越しにかなりの衝撃とダメージが届く。



提督「うぐ・・・はぁ・・・はぁ」



????「一度距離をとらせてもらうぞ・・・行け!!艦載機よ」



誤算だった・・・相手は戦艦型だと決め付けてしまっていた。剣を振るうと現れた艦載機は10機ほどか・・・航空戦艦の3次元戦闘を許しては勝ち目は無そうだ。こちらは今まで以上に肉薄するしかない。だがこの離された距離を縮めるにはどうしたものか・・・・



提督「・・・がむしゃらにでも行くしかなさそうだな」



考えるほどでもない・・・勝ちを得るには接近戦しかないのだ。ならば突撃するしかない。



????「航空戦艦の真髄・・・ここに見せる!!」



提督「ならば・・・特務機動戦隊の突撃、味あわせてやるさ!!」




時雨対???



???「・・・」



この敵・・・なにか嫌な感じがする。相手の艤装の感じでは駆逐艦クラスだろうが、その戦闘能力に関しては今までの深海棲艦とは次元が違う。正直この駆逐艦は並みの艦娘では相手にならないだろう。恐らく第9の中でも勝てるのは天龍かボクぐらいだろう。



時雨「・・・こっちの動きが見切られてる様だね」



こちらの砲撃は全てぎりぎりで回避されている。そしてカウンターとして砲撃を飛ばしてくるがこれもまた正確で回避に集中させられてしまう。



???「・・・サスガダネ、ナラバ」



相手がパターンを変えてきた?接近戦を挑んで一気にしとめに来るようだ。こちらもその方が都合が良い、明石特性の新型艤装は接近戦仕様にカスタマイズされているためだ。



時雨「残念だったね?接近戦は僕も得意さ」



魚雷装填、片舷ずつ発射・・・ジグザグに移動しながらであったため魚雷は左右から駆逐艦相手に向かうようになる。これにより相手の動きを制限させ回避運動を取れにくくさせる。相手はこれに何かを感じたのか魚雷の迎撃を行い後退した。



時雨「ほう・・・作戦すら読まれるとはね?」



???「・・・」



これはどうにかしなければ・・・ここまで動きを読まれてしまうと不味い、こちらは長期戦をやるつもりは無い、さっさと倒して脱出するにはどうするべきか・・・これは思案しなければならなそうだ。



方舟



最上「副官さん!!状況はどうなってるのさ?」



最上としても状況がわからなかった。数が急に減ったと思ったらその敵が攻めてきた自分は護衛を命じられたが共に迎撃するべきか否か・・・



副官「提督と時雨君がそれぞれの深海棲艦と交戦中です」



最上「提督と時雨が?・・・1体にこんな時間をかけるわけが・・・」



副官「苦戦とはいきませんがほぼ互角の戦いを展開しています」



最上「だったら援護に行ったほうが・・・」



副官「それはダメですよ、あの二人と互角の敵に狙われたら今の方舟は数秒も待ちません」



最上「じゃあボク1人で・・・」



副官「却下、伏兵の可能がありますし手薄の方舟が狙われますよ」



最上「・・・くそっ!!」



副官「今は救援部隊と合流するしか策はありません、救援はそのあとです」



最上「わかったよ・・・合流地点は?」



副官「北西に300ほど・・・もうすぐです」



最上「了解・・・・!?これは」



敵影だ・・・15体の敵影が周囲を囲むように現れた。敵の作戦に見事に引っかかってしまった。



副官「こちらでも確認しました、これは・・・ん?」



鈴谷「あーあーこちら救援部隊だよー」



熊野「もう鈴谷ったら挨拶ぐらいしっかなさってくださいな」



鈴谷「えー!!別いいじゃんメンドイし・・・」



熊野「まったく・・・これだからいつも・・・」



救援部隊と名乗る二人はなぜか言い合いをはじめてしまった。イラっとするこちらは命かけてる状況なのだ・・・しっかりやってもらわないと困るのだが。



副官「あのー救援部隊でよろしいか?」



鈴谷「あーもうこんな時くどくど言わないでって・・・」



熊野「いつも貴女がしっかりしないから・・・」



最上「ちょっと・・・」



副官「このクソアマどもが!!いい加減にしねぇとこいつの主砲で沈めるぞ!!」



そう言い放った瞬間に方舟から救援部隊に主砲が発射された。しっかり狙ったようで救援部隊の二人は頭から水をかけられた形なった。



鈴谷「うへぇ・・・ご、ごめんって・・・」



熊野「うう・・・私としたことがつい・・・申し訳ありませんわ」



副官「クソアマどもはそのままこちらに合流!!最上はクソアマ共をしっかり働かせろ!!」



最上「りょ・・・了解」



副官さんがキレたところは初めて見た・・・なんというか迫力がすごくてこれは怖い。これからは怒られないようにしよう・・・



最上「さて・・・クソアマ共はボクに続いてね?って鈴谷と熊野じゃないか・・・」



鈴谷「お?モガミン!!おひさー」



熊野「あら・・・モガミンおひさしぶりですわね?」



最上「救援部隊って二人のことだったのかぁ」



熊野「そうですわ・・・あ、でももう1人いますけど」



鈴谷「うちの提督が迎撃部隊の救援に向かうっていってたから、あっちはお任せだね」



最上「提督直々に?・・・不安だなぁ」



鈴谷「ん?大丈夫だって、うちの提督強いし、よーっしクソアマ部隊いきましょー」



熊野「ちょっと・・・言葉がきたないですわ」



最上「ボクもクソアマかい・・・まぁいいや」



提督と時雨に向かった救援部隊が少し不安だが・・・今はこちらを切り抜けることに専念しよう。3人でやれば素早くしとめられるはずだ・・・そしたら救援に行けば間に合うだろう。



提督対????



????「・・・ふむこいつは」



提督「・・・ふん!!」



相手は航空戦艦、距離を取れば主砲と艦載機の攻撃、接近戦は飛行甲板を模した大剣による剣撃。隙は無い。先ほど主砲をつぶしたおかげで何とかなってはいるがそうでなかったら恐らくもうやられているだろう。



????「主砲は全てブレードで切り裂き、艦載機の攻撃は全回避・・・」



????「こいつ・・・人間ではないな・・・反応速度が人間のそれを上回っている」



提督「艦載機の動きが鈍った?」



目の前を飛ぶ艦載機が急にふらつき始めた。何か作戦か?・・・いやここはやるだけやるしかない。ぐっと左足に体重をかけ右足で海面を蹴り上げ振りぬく・・・振りぬいた右足は艦載機を捕らえた。



????「な・・・集中を欠いたか?・・・う!?」



べコンとへこんだ艦載機はそのまま航空戦艦にむかって飛ぶ。相手は回避をするか迎撃をするしかない・・・・



????「く・・・うぉおお!!」



航空戦艦は剣を振りぬき艦載機を迎撃した・・・意識は完全にこちらから離れている。いくならここしかない。



提督「もらうぞぉ!!」



加速・・・突撃・・・ブレードを振るう。これが特務機動戦隊の突撃だ。相手は剣で防御する・・・予測どおりだまずは一撃。振るったブレードは確実に相手の剣を捉えた。



????「なぁ!?・・・大剣を狙っていたのか!?・・・だが」



主砲がこちらに向いていた。やはり相手の誘いだったか・・・だがこちらは相手の虚をつくことができた。その証拠に相手の砲撃のタイミングが少し・・・ほんの少し遅れた。この少しの間にこちらの左腕はフリーとなっていた。



提督「やらせるかぁ!!」



俺は無意識に左手を主砲にめがけて伸ばしていた。主砲が発射される瞬間に左手で主砲をふさいだ。



????「こいつ!?馬鹿なのか!?」



轟音・・・気づけば相手の右肩は抉られていた。主砲ごと肩のほとんどがなくなっていた。にやっと笑った瞬間左腕の付け根に激痛が走る・・・こちらの左腕は消し飛んでいた。



????「むう・・・残りは左後部の主砲のみ・・・だが・・・もらったぞ!!」



艦載機の攻撃が向かってくる。こうなればやることはひとつ・・・



提督「システム、左腕の止血を・・・その後浮上機能を停止!!」



????「潜行した?なんと・・・!距離を取るか・・・作戦に乗るわけにはいかん」



提督「推進機能は生きている・・・バランスは取りにくいが行くぞ!!」



水中からの奇襲・・・潜水艦ではないため隠密性も無いが主砲を無効化するにはこれしかない。よし・・・捉えたぞ。



提督「浮上機能起動・・・もらったぁ!!」



????「く・・・速い!!・・・おぉ!?」



浮上と同時にブレードを相手の頭部に突きつける・・・狙いは完璧だ、ブレードが切り裂く寸前相手が膝を折った。バランスを崩したのだった。普通ならバランスを崩せば好機となる・・・だが今回ばかりは違った。バランスを崩したことにより間一髪でブレードを回避されてしまった。



提督「な・・・なにぃ!?」



相手はすぐに体制を立て直した。こちらも体制を立て直したが・・・一気に不利になった。もうこの手は使えない。



????「確かに・・・確かにこちらは本調子ではないがそれでもここまで追い込まれるとはな・・・」



提督「それはこっちもそうだ、いつもの艤装が直っていればもっと強いんだけどな?」



????「ふふ・・・それは楽しみだな。だがここで殺させてもらう」



提督「・・・だよな、とはいえただではやられんぜ?」



????「貴様にうらみは無いが・・・死んでもらう」



依然こちらは不利・・・どうしたものか・・・救援を期待するのは難しい。とりあえず、やるだけやるしかないのだろうか。





時雨対???



時雨「・・・こいつの動きは見たことがある?」



???「・・・」



こいつの回避運動には見覚えがある。何処で見たのか・・・だがこれで相手の動きを読むことができるはず、集中だ・・・しとめるぞ。



時雨「さて・・・面倒ごとは早めに終わらせないとね?」



主砲を構えた時だった。後方でかなり大きな轟音が聞こえた。これはまさか提督?・・・やられたの?



???「チッ・・・殺スナトイッタノニ・・・」



提督が・・・死んだ?・・・姿が見えない。まさかまさかまさかまさか・・・・そんなことがあるわけない!!急に僕の中で感情が高ぶってきた。悲しみ憎しみ怒り殺意虚無感・・・・・・・・声が・・・聞こえる?。



ナイトメアシステム「装着者の感情数値が規定値を超え、これ以上は危険と判断されました・・・装着者保護のため『ナイトメアシステム』を起動します」



明石「ちょっと!!・・・あれは凍結してたのに時雨ちゃん!!機能を停止させて!!そうしないと・・・ブツン」



明石さんの声が聞こえる・・・・通信はきれた・・・急に意識が遠のく・・・くそ!!こんな時に・・・



???「ナニ?コイツハ一体ドウシタンダ?」



シグレ「・・・さっさとどいてくんないかな?」



主砲を発射・・・その狙いは実に正確で威力のあるものだった。



???「!?・・・グゥ!!」



シグレ「・・・提督今行くよ?」



???「一撃デ・・・クソ、コノママデハ奴モヤラレル・・・」



一瞬だった.・・・僕自身も何があったか覚えた無い。ただそこに勝った僕と負けた駆逐艦がいた。それだけだった。



提督対????



提督「く・・・防戦一方・・・だな」



????「畳み掛ける・・・そのまま行くぞ」



航空戦艦は主砲のほとんどを失い、飛行甲板も破壊されている。だがそれでも残りの主砲と艦載機を巧みに操り攻勢を緩めない。対するこちらは武装は無事だが左腕を失い、タイムリミットも近いづいている。かなり不利だ。



提督「ちぃ・・・このままでは負けしかないか?」



??「ちょうど良かったかなぁ?」



急に通信が入りおどろいているとレーダーに反応が現れた。航空戦艦も反応に気づいたようだ。




提督「ん?・・・何だあんたは?」



??「私?私は第3鎮守府の提督よ?」



提督「あんたが?・・・本当に?」



提督といえば普通軍服を着ているおえらいさんだ。こんな深海棲艦みたいな格好した奴は見たこと無い。



第3提督「・・・貴方も大概だからね?」



・・・確かに,艤装を着込んで左腕を吹き飛ばしている提督もいないか・・・



第3提督「さて・・・救援にきたわよ?後は私に任せなさいな」



第3鎮守府の提督はそう言うと手に持った槍を構える。俺が持っている電磁ブレードと同じような・・・見覚えがあるぞ?



????「増援・・・これ以上は危険だな・・・」



航空戦艦はこれ以上の戦闘は危険と判断したのか撤退していった。



第3提督「あれ?・・・何よもう、逃げちゃったじゃないの」



せっかく新装備を試したかったのに、そう続けながら地団駄を踏んでいた。やはりあの武器と声、知っている奴かもしれない。



提督「何にせよ助かったよ・・・トロワ」



第3提督「!?・・・気づかれてたかぁ」



提督「槍を見てわかったよ・・・アンカー付の電磁スピアを使う奴なんてお前しかいないからな?」



第3提督「でぇすよねぇー」



提督「・・・・とりあえず時雨の方が気になる、救援に行くぞ」



時雨「それなら問題ないよ」



提督「時雨!?無事だったか・・・」



時雨「提督に言われたくないなぁ・・・左腕無いけど大丈夫なの?」



・・・反論できない。事実時雨はほとんど無傷だがこちらは腕が1つ無くなっているし艤装の損傷もあるのだから。



提督「こんなもん入渠すれば治るさ」



時雨「・・・艦娘と同じなんだね・・・それもディープライド鉱石のおかげかい?」



第3提督「!?・・・」



提督「そうだと思うが?よくわからんな」



時雨「ふぅーん」



第3提督「隊長さん?この娘何で知ってるのよ?」



提督「教えたんだよ・・・必要だと思ってな」



第3提督「はぁ・・・・・・時雨ちゃん?」



時雨「なんですか?」



第3提督「その話は人前じゃダメよ?わかってると思うけどね」



時雨「うん、わかってますよ・・・貴女も提督と似た様な匂いがしたから・・・」



第3提督「匂い・・・するかな?」



提督「するんじゃないか?」



第3提督「ためしに嗅いでみてよ」



提督「断る」



第3提督「えーいいじゃん!!」



提督「知らん・・・さっさと帰るぞ」




方舟



最上から通信が入った。深海棲艦の殲滅に成功したとの事だ。その数秒後には提督から撃退に成功したとの報告があがった。とりあえずだが、この場はうまくいった・・・一息つく。この方舟なら沈まないかもしれない。データも確認したし実戦でも文句なく動いてくれた。装備が完成すれば立派な戦力になる。



副官「最上君と鈴谷君、熊野君はしばらく周辺の哨戒を頼みます」



最上「はーい、落ち着いたみたいでよかったよ・・・」



副官「あー・・・ついカッとなってしまって・・・すみません」



最上「いいとおもうよ?第一ボクもかなりイラっとしたし」



副官「そういってもらうと助かります・・・」



最上「じゃあ・・・哨戒任務に就きまーす」



しかし・・・困った。威嚇射撃とはいえ艦娘めがけて主砲を撃ったのだ・・・かなりの問題になるだろう。



提督「着艦する・・・ハッチを開けてくれるか?」



副官「あ・・・はい明石さん!!」



明石「あけるよ、とりあえず提督と時雨はドックに直行・・・いいね?」



提督「ん?・・・了解したが・・・」



時雨「あ・・・・わかったよ」



第3提督「じゃあ私は艦橋に上がるよ」



明石さんの様子がおかしかったな?・・・もっと軽い喋り方だったような気がするが・・・まぁいい今は第9鎮守府に帰る事に集中しよう。



方舟 入渠ドック



明石「・・・」



予想外なことが起きた。ナイトメアシステムは開発中で,起動しないように厳重に凍結していたはず。それが勝手に起動・・・しかも時雨ちゃん自体には起動時の記憶は無い。だが戦闘データは残っている。



明石「・・・これは強力すぎるかな?」



システム発動後の時雨ちゃんの行動は接近し主砲を撃つ・・・それだけしかしていない。だがそれだけでもある程度の事がわかった。簡単に言えばパワーとスピードが段違いにパワーアップしていたこと。確実に相手の行動を先読みしていたことである。これは想定外だ。




明石「・・・はぁ」



再度凍結作業を行おう・・・今回は暴走しなかったが次はわからない。このシステムのテスト段階では夕立が暴走し研究所1つを破壊した。もし時雨ちゃんほどの艦娘が暴走したら・・・考えたくも無い。



提督「明石?どうしたんだ?」



明石「あ・・・提督ですかぁ、腕はどうです?」



提督「高速修復剤のおかげでもう元通りだよ」



そうやって提督は左腕を私の目の前に出し動かしてみせる。これが吹き飛んでいたと考えると・・・・こわいなぁ。



明石「元気そうでよかったですよぉ・・・・あ、そういえば提督たちが戦った相手なんですが」



提督「何かわかったのか?」



明石「わかったというか・・・特技研で以前研究していた検体に似ているんですよ」



提督「・・・・トロワと一緒のか?」



明石「はい、それです・・・私達はオリジナルと名づけましたが」



提督「オリジナル・・・?」



明石「彼らは深海棲艦のコアを身体に埋め込み・・・それぞれが異なる艦種に進化した者達です」



提督「・・・」



明石「進化した艦種は9つ、駆逐艦、軽巡洋艦、重巡洋艦、航空巡洋艦、戦艦、航空戦艦、軽空母、正規空母、潜水艦です」



提督「先ほどの奴は航空戦艦だったな・・・トロワはたしか軽巡洋艦だったか」



明石「ですので残りは7人・・・オリジナルは実験中の事故でトロワ以外行方不明でしたから」



提督「最悪のケースを考えると後7人も敵の可能性が高いか・・・」



こちらにオリジナルに対抗できるのは戦力はこの提督とトロワの二人・・・いかに二人が強力でも厳しい戦いになるだろう。



提督「なぁ・・・明石」



明石「はい?・・・」



提督「艦娘ではオリジナルに対抗できないのか?」



明石「・・・できないと思います。艦娘の艤装は深海棲艦に対しては有効ですがオリジナルには決定打を撃てないんですよ」



オリジナルは人間に深海棲艦のコアを組み込み、融合、進化したもの。その性質は深海棲艦と人間のハイブリットであり深海棲艦とは似て非なるものだ。そのため深海棲艦には有効打となる艦娘の武装ではオリジナルに対しては有効打を与えることができないのだ。



提督「そうか・・・では失礼するよ」



明石「あ、はい・・・では」



これは提督専用艤装の修理を急ぐしかない、方舟に乗せてきて正解だった。鎮守府に着くまでには作業のめどを立てておこう。



[3]




第9鎮守府 執務室



天龍「ぁあ~・・・哨戒任務もだるいし暇だよなぁ」



雲龍「そうかしら?これでもかなり忙しくなったほうよ?」



天龍「はぁ?そりゃ暇どころの騒ぎじゃねぇな」



雲龍「まぁね・・・だらだらしてただけだったから」



天龍「・・・なぁ?」



雲龍「なにかしら」



天龍「・・・昨日はしっかり寝れたか?」



雲龍「!?・・・ええ何時もどおりよ?」



天龍「・・・そうか、ならいいがな」



雲龍「・・・何かあったら相談させてもらうわね」



天龍「おう、っと不知火からだな」



なんといえない空気なったところで不知火から通信が入った。定時連絡には少し早い、なにかあったのか。



天龍「どうした?」



不知火「天龍ちゃん、緊急事態です」



天龍「ちゃん付けやめろ、で緊急事態って?」



不知火「ちゃん付けは信頼の証です、艦娘らしき女性が打ち上げられてました。今から帰投しますので医務室に連絡を」



天龍「そんな信頼はいらんからやめろ、医務室の件は了解した、任務ご苦労」



ふぅ・・・まさか此処でもちゃん付けされるとは・・・まぁいい、艦娘らしき・・・そこが気になるな医務室に急ごう



雲龍「さぁ天龍ちゃん、医務室にくわよ?」



天龍「・・・へいへい」



医務室



???「」



天龍「お・・・こいつが例のって・・・な!?」



雲龍「あきつ丸・・・・でも彼女は」



軍医「お知り合いですか?」



不知火「!?」



あきつ丸「」



天龍「あ・・・あぁ雲龍の方がくわしいだろ?」



雲龍「ええ・・・私と同じ小隊だったし、容態は?」



軍医「特に傷もありませんしただ眠っているだけですね」



雲龍「そう・・・隊長も喜ぶわね」



不知火「・・・すみませんが1つよろしいですか?」



さっきからずっと考え込んでた不知火が質問をしてきた。



雲龍「どうしたの?」



不知火「私の知るあきつ丸とは人が違うのですが・・・」



雲龍「ええ・・・だって彼女は先代のあきつ丸だから」



天龍「不知火が知ってるのは2代目のあきつ丸なんだよ」



不知火「ではこの人は一度死んでいると?」



雲龍「そのはずだった。でも生きてた・・・そんな感じよ」



事態はおそらくそんな簡単ではない・・・提督に連絡した方がいいだろうか・・・何かあるかもしれない



天龍「で?どうすんだよ保護するか?」



雲龍「そうね・・・軍医さん精密検査をお願い、天龍は提督に連絡を、私はすこしやることがあるわ」



軍医「?わかりましたが」



天龍「おう・・・了解だ」



不知火「不知火はどうすればいいでしょうか?」



雲龍「そうね・・・緊急事態に備えて修理と補給を・・・終わったら命令があるまで待機で」



不知火「了解しました。・・・しかし指示に慣れてますね」



雲龍「そりゃそうよ・・・これでも特務機動戦隊、2番隊隊長だったからね?」



最悪のケースを考えると・・・彼女に連絡したほうがいいかもしれない。私室へとむかうことにした。




方舟



提督「なに?・・・あきつ丸が見つかった?」



鎮守府からの通信内容は驚くべきものだった。あきつ丸・・・彼女は元特務機動戦隊、2番隊所属で雲龍の直接の部下だった。日本近海海戦の少し前に艦娘の素養があると判断され強襲揚陸艇 あきつ丸となりその後の海戦で突破口開くため犠牲となった。だがそのおかげで日本海軍は深海棲艦に勝利することができた。いわば英雄的な女性である。



第3提督「・・・不穏ね?」



提督「喜びたいが・・・・素直には無理だな」



時雨「知り合いなの?」



提督「あ?・・・ああそうだ」



時雨「・・・なんか歯切れが悪いね?」



第3提督「ねぇ・・・あんた今付き合ってる女いるの?」



提督「?いないけど?」



第3提督「なら言えばいいじゃない、自分の恋人だったってさあ」



最上「お?」



鈴谷「へ?」



いかにも面倒そうな二人に聞かれてしまった・・・どうしたものか



時雨「提督・・・それなのに素直に喜べないのかい?」



提督「そりゃそうさ・・・彼女が死んだのは3年前の日本近海海戦だ・・・その後何も音沙汰も無くこの時期に現れた事を考えるとだな・・・」



時雨「何かの罠だって言いたいのかい?」



提督「ああ・・・」



俺だって喜べるなら喜びたいが・・・不審な点が多すぎる。第一に負傷等が無いこと、第二に現れたタイミングが良すぎること。さして最後は彼女は深海棲艦に取り込まれた結果跡形も無くなる形なったから人間の状態で現れる事自体がおかしいのだ。



提督「とりあえず雲龍の指示にしたがってくれ、こちらも急いで帰投するからな」



天龍「了解・・・あ、そうだ」



提督「どうした?」



天龍「雲龍がやるべき事があるって言ってたんだがなんだかわかるか?」



提督「?・・・あぁ恐らくあいつに連絡するんだろうな・・・大丈夫だぞ、問題は無い」



天龍「わかった・・・ならまってるぜ」




 深海




????「・・・・コマンダー」



コマンダー「うん?」



????「これが今回の戦闘データです」



コマンダー「ご苦労・・・やはり彼は強力だね?」



????「はい・・・私もあと一歩でやられるところでした」



コマンダー「そうか・・・それと彼女はどうかな?」



????「・・・拾い物ですか?あれならあの鎮守府に回収された所を確認しました」



コマンダー「わかった・・・なら彼女も救われるだろう・・・」



????「はぁ・・・」



コマンダー「そうだ・・・君の事はなんと呼べばいいかな?」



????「私ですか?・・・・」



コマンダー「被験者No.1かな?それともアンとかアインとか?」



????「それでは航空戦艦とでも呼んでいただければ」



コマンダー「航空戦艦?ひねりが無いけど?」



航空戦艦「自分の名前にひねりなどは無用ですから」



コマンダー「わかったよ・・・では今眠っているキミの仲間達もそのように呼ぶとするよ」



航空戦艦「はい・・・それでは失礼します」



???「コマンダー?」



コマンダー「ん?・・・傷はいいのか?」



???「ウン・・・ボクナラ大丈夫サ」



コマンダー「そうか・・・なぁ」



???「イマハ『駆逐棲姫』ダヨ」



コマンダー「そうだった・・・駆逐棲姫」



駆逐棲姫「ウン?」



コマンダー「提督と時雨はどうだった?」



駆逐棲姫「元気ソウダッタヨ」



コマンダー「そうか・・・ならよかった」



駆逐棲姫「ボクモソウ思ウ」



第9鎮守府 私室



雲龍「・・・・」



???「ワレアオバ、ワレアオバ」



電話した相手は少々変わったやつだ・・・出なければこんな電話の出方はしない。名前は青葉、艦娘だ。



雲龍「相変わらず変な電話の出方ね?」



青葉「あはは・・・オリジナリティがほしくて、で?どうしました?」



雲龍「あきつ丸・・・優華が見つかったわ」



青葉「!?・・・それは死体でって事ですか?」



雲龍「いいえ・・・生きてるわ、しかもきれいな状態でね」



青葉「そんな馬鹿な・・・」



驚いている・・・それも仕方ない。それだけのことが起きているのだ。



雲龍「あなた諜報部でしょ?なにか知らないの?」



青葉「知りませんって・・・隊長はなんて?」



雲龍「連絡はしたけど戻ってくるには後1時間ほどはかかるし」



青葉「そうですか・・・実はいまそちらに向かっているんですよ」



雲龍「そうだったの?・・・なんだ」



青葉「理由・・・聞かないんですか?」



雲龍「・・・いいわどうせ探りいれにくるんでしょう?」



青葉「・・・まァわかりますよね・・・」



雲龍「どうせくるなら電話切るわね?」



青葉「え?あ、はいはい」



なぜ彼女に電話したのか・・・それは彼女もまた特務機動戦隊の隊員であり先代のあきつ丸・・・優華の最期を見届けた1人でもあるからだ。恐らく提督は優華の生還を敵の罠だと思うだろう。私そう思う・・・だが偶然とはいえ出来すぎている気がする。かなり警戒したほうがいいかもしれない。最悪あれを使う場面もあるかも知れない。



第9鎮守府 医務室



あきつ丸「・・・ん?」



目が覚めた。・・・ここは何処だろう、暖かい・・・たしか最期は深海棲艦に突っ込んだはず・・・



山城「ん?・・・目覚めたようね」



目の前には巫女のような服を着た黒髪の女性がいた。恐らく私の面倒を見てくれていたのだろうか・・見覚えがある、たしか扶桑?



あきつ丸「・・・扶桑さん?」



山城「!?・・・違うわ、山城です」



あきつ丸「・・・山城さんはたしか・・・」



ガチャ・・・不意に医務室の扉が開いた。そこには知った顔がたくさん並んでいた。



あきつ丸「・・・え?りゅう?それに小隊長も・・・」



提督「優華・・・記憶はあるのか?」



あきつ丸「ええ・・・どうしたの?みんなは?」



提督「特務機動戦隊の皆はここにいる以外は死んだよ」



あきつ丸「そう・・・だったの・・・・じゃあ5人だけなのね」



提督「ああ・・・山城、すまんが」



山城「わかったわ・・・」



そういって山城と名乗った女性は席をはずした。今ここにいるのは皆あの時まで共に戦った仲間。りゅう以外は皆艦娘になったようだ。



雲龍「・・・最期に装甲空母姫に突っ込んだ後どうなったの?」



あきつ丸「それが・・・そのあと気づいたらここで目覚めたから、良くわからないの・・・」



青葉「そうでしたかぁ・・・ふむふむ」



何かがおかしい・・・皆の目が喜んでいるようには見えない、皆何か探っているような・・・もしかして?



あきつ丸「・・・わたし、疑われてる?」



第3提督「・・・」



提督「そうだ・・・流石は優華だな」



あきつ丸「りゅう?そこは褒められても嬉しくないよ?」



雲龍「貴女に隠し事はできないわね?」



あきつ丸「それなら疑いは晴れるんじゃないの?」



青葉「優華さんだとわかっても疑いはきえませんよ?」



ふむ・・・それもそうか、私が本物だと確認が取れたとしても、私自身が怪しいのだから意味はない。



あきつ丸「では私をどうするつもりなの?」



提督「精密検査の結果次第だな・・・それまではここにいてもらうさ」



あきつ丸「ふむ・・・しかたないわね」



こうなっては疑いが晴れるのを待つしかないか・・・仕方が無い。



提督「それではな・・・」



あきつ丸「・・・また、来てよね?」



提督「善処する・・・」



そういって皆はまた医務室を出て行った。なんというか冷たいな・・・これも仕方ないのだろうけど・・・



執務室



第3提督「正直色々気になるけど・・・私は戻るよ」



提督「そうだな・・・悪いな助けてもらった上に着いてきてもらって」



第3提督「いいって・・・久しぶりに皆に会えたし」



雲龍「そうね・・・あなたが提督になってたのには驚いたけど」



青葉「はは・・・皆さん出世しましたねぇ~」



雲龍「それは艦娘の私に対する嫌味かしら?」



青葉「ちがいますってぇ~」



第3提督「それじゃ・・・帰るわ、基本暇してるからいつでも連絡しても大丈夫よ?」



提督「わかった・・・何かあれば連絡しよう」



第3提督は執務室を後にした。優華のことは精密検査が結果次第だし・・・今は護衛をどうするか、最悪の結果を想定するならば周辺海域の索敵の強化が妥当だろう。



青葉「しかし、本当に偶然なのでしょうか?」



雲龍「深海棲艦の作戦だと?」



青葉「・・・それも考えられなくは無いでしょうけど」



提督「優華が嘘をついているようには見えないと?」



青葉「まぁ・・・そうですね」



雲龍「でも偶然じゃないと?」



青葉「自分でも確信があるわけでは無いんですけど・・・」



そういった青葉の表情は曇っていた。自分でも煮えきれて無いのだろう、うーん唸ってう俯いてしまった。



雲龍「・・・今はどうしようもないわね」



提督「結局はそうなるか・・・」



その一言が解散の号令となった。雲龍は青葉を連れて私室に帰り、俺は1人執務室に残っていた。



提督「・・・いや」



まだ夕方にもならないこの時間に酒でも飲もうかと棚に手を伸ばしたが、やめた。今飲めばおいしい酒は飲めない。どうせ飲むなら優華の検査が終わってからしよう。たとえどの様な結果になったとしても。



医務室



コンコン・・・扉を叩く音がした。誰だろうか、こんな礼儀正しく入ってくるのは。



あきつ丸「どうぞ?」



時雨「失礼するね」



扉を叩いたその主は1人の少女だった。鎮守府にいるのだから艦娘だろうか・・・



あきつ丸「あら・・・貴女は?」



時雨「僕は時雨といいます、貴女があきつ丸さん?」



あきつ丸「時雨ちゃん?ええ・・あきつ丸だけど」



時雨「えっと・・・少しお話したくて」



あきつ丸「私と?・・・どうしてか教えてくれる?」



時雨「あきつ丸さんは提督の体の秘密について・・・どこまで?」



りゅうの体の秘密?・・・なぜこの娘が知っている?あれはそんな簡単に言えるような軽い話ではない・・・と言うことは。でもそれ以前になぜ私にそんなことを聞く?話を聞いたのだろうか。



あきつ丸「・・・全て」



時雨「・・・・そう」



沈黙・・・二人きりの個室は実に静かだった。音を出すことすら躊躇われるほどに。でもその沈黙は破られた。



時雨「その話を聞いた時どう・・・思いました?」



あきつ丸「たぶん、貴女と一緒ね」



時雨「え?」



驚いている。やはりそうか、時雨と呼ばれたこの娘はあの時の私と一緒だ。誰にもいえない重たい秘密を1人で抱え込もうとしていた私と・・・



あきつ丸「あれは1人で抱え込めるような問題じゃないもの・・・頼りなさい、彼の事」



時雨「提督を?」



この娘は私と一緒だった。彼のことが好きだから、力になろうと努力する。それでもできる事とできない事があるから・・・できないことに直面すると苦しい気持ちになる。力になれない自分に悩み始めるのだ。



あきつ丸「私達じゃあ彼の問題を解決することはできないの」



時雨「やっぱりか・・・」



あきつ丸「そう・・・だからただ寄り添うことしかできないの」



時雨「・・・相談に乗ってくれてありがとう」



あきつ丸「たいした事ではないわよ」



時雨「あきつ丸さんが・・・・いてくれるなら提督は大丈夫だよね」



あきつ丸「・・・ええ、私と時雨ちゃんで支えましょう」



時雨「!?・・・うん、じゃあおやすみなさい」




私と時雨ちゃんで・・・なぜあんなことを言ったのだろう・・・本音は私1人で支えたい、他の女に渡したくはない・・・でも時雨ちゃんならりゅうのことを任せられる・・・・そんな風に思えた。



医務室



あきつ丸さんが救助されてから今日で1週間が経つ、精密検査の結果も明日には届くだろう。あきつ丸はと言うとまだ体力が戻りきってないからか外出許可がでても医務室に篭もっている。僕はそんなあきつ丸さんの部屋に毎日通い詰め、話をしていた。話の内容はほとんどが提督のことだった。




時雨「あきつ丸さん?失礼するね」



あきつ丸「時雨ちゃん?お、おはよう」



時雨「あきつ丸さん?どうしたの?」



あきつ丸「えっと・・・なんでもないよ?」



時雨「そう・・・ならいいけど」



初めは色々と楽しく話していた。でも最近はどこかボーっとしたり考え込んだり、元気が無かった。正直かなり心配だ。身体に何か異変があったのだろうか・・・



あきつ丸「・・・今日はどうしたの?」



時雨「特に何も無いかな・・・嫌だったかい?」



あきつ丸「そうじゃないわ・・・」



時雨「?」



あきつ丸「時雨ちゃん?ちょっと・・・」



何か言いかけた瞬間不意に扉が開いた。



最上「時雨ぇー」



時雨「あれ?最上じゃないか、どうしたの?」



最上「明石さんが呼んでたよ?新しい艤装についてね・・・じゃあね」



そういって扉を閉めていった・・・しかしなぜここにいるとわかったのだろうか。そんなに入り浸ってはいないと思うけど。



時雨「明石さんか・・・じゃあ行かないとだなぁ」



あきつ丸「そう・・・時雨ちゃん?」



時雨「どうしたの?」



あきつ丸「深夜ぐらいにここに来てくれないかしら、大事な話があるの」



時雨「わざわざそんな時間に?まぁいいけど」



あきつ丸「うんじゃあ・・・またね?」



時雨「またね」



医務室をでて工廠にむかった。例の艤装の話なら聞かねばならない、だがそれ以上にさっきのあきつ丸さんの事が気になってしまう。深夜・・・嫌な予感がする。・・・ふうっと深呼吸を1つ、とりあえず落ち着かなければ、今は例の艤装に集中しよう。




0000.深夜だ。あきつ丸さんの約束どおり医務室にまで来たが・・・電気がついてないようだ。眠ってしまったのだろうか。とりあえず中に入ってみよう。ガチャ・・・扉を開けた。



あきつ丸「ひッ!?・・・時雨ちゃん?」



時雨「あきつ丸さん?・・・どうしたのその姿は!?」



目の前にいたあきつ丸さんは今日の朝に見た時とは別人のように違っていた・・・髪の色・・・目の色も違う・・・肌も怖いぐらいに白かった。これは、そう深海棲艦のようだった。



あきつ丸「時雨ちゃん・・・今は静かにして・・・お願い」



時雨「・・・わかった。」



あきつ丸「よかった・・・来てくれて、予想以上に侵食されちゃって、あと1時間も遅かったらわからなったわね」



時雨「どういうこと?・・・なんで深海棲艦に?」



あきつ丸「・・・わからない、でも多分私は利用されたんだと思う・・・」



時雨「敵の作戦ってこと?」



あきつ丸「おそらくはね・・・それでね」



時雨「なんだい?」



あきつ丸「一生のお願い・・・してもいいかな?」



時雨「・・・」



嫌な予感とは的中する物だ・・・深海棲艦化しそうな体、しかも僕に頼む自体でなんとなくわかる。でも・・・まだそうだと決まったわけじゃない。奇跡を信じて祈るぐらいいいだろう?僕はそんなことしたくないんだから。



あきつ丸「私を・・・私を殺して」



時雨「・・・なぜ?」



あきつ丸「・・・だって私は深海」



時雨「そうじゃない・・・どうして僕なんだい?」



あきつ丸「・・・身勝手な理由よ?」



時雨「人に殺させる時点で結構なものだよ」



あきつ丸「そうね・・・ふふふ」



あきつ丸「・・・大切な人が死ぬところを二回も見せたくないの」



時雨「それだけ?」



あきつ丸「それだけ」



時雨「・・・僕はいいのかい?」



あきつ丸「貴女は一回目でしょ?」



時雨「・・・飽きれた」



あきつ丸「・・・時雨ちゃん」



時雨「・・・どうすればいい?」



あきつ丸「これを使って?これなら多分いけるはずよ」



時雨「これって電磁ブレード?」



あきつ丸「ええ・・・私の体は深海棲艦化しているから」



時雨「そう・・・はぁ・・・あきつ丸さん?」



あきつ丸「なに?」



時雨「あなたと話したこの一週間・・・確かに生きていたその証、僕が憶えていてあげる」



あきつ丸「時雨ちゃん・・・・ありがとう」



あきつ丸は目を瞑った・・・僕は電磁ブレードに出力を送る。青白く光る刃はどんな物も断ち切る。鋼鉄の鎧も、深海棲艦の体も・・・そして目の前1人の女性さえも。ブレードを持ち上げ・・・・振り下ろす。恐怖はなかった、悲しみもなかった・・・ただ・・・ただ涙が止まらなかった。



時雨「・・・さようなら」



ブレードを投げ捨てその場を立ち去る。僕はどうなるのだろうか・・・まずは提督のところに行こう、事の顛末を報告しなければいけない。



最上「ん?・・・あれは時雨じゃないか」



最上「こんな時間に医務室に・・・あれ扉が開いて・・・!?」



最上「あきつ丸さん!?・・・どうして、まさか時雨が?」



執務室



明石から精密検査の結果が出たとの報告を受けた。俺としてはできるだけ早く知りたかったため深夜ではあるが報告書をあげてもらった。結果は予想通り深海棲艦に侵食されている、との事だった。



提督「・・・」



明石「以上が精密検査の結果です」



提督「ご苦労・・・」



青葉「どうするんですか?」



深海棲艦は敵だ・・・それを鎮守府内においておく訳には行かない。やることは1つ・・・



提督「・・・処分するしかない」



雲龍「できるの?貴方に」



提督「できるさ・・・いやこれぐらいはできなければな?」



明石「・・・報告はこれで終わります」



提督「すまなかったな・・・検査までやらせて」



明石「かまいませんよ、提督専用の艤装の修理も終わりましたし」



提督「そうか・・・酒でも飲んでくか?」



明石「ふむ・・・いいですね、いただきましょう」



青葉「では私も」



雲龍「・・・そうね」



明石達がソファーに腰掛けた時だった執務室の扉が開かれた。そこには時雨がいた。だがどうも様子がおかしい。



時雨「提督・・・少し良いかい?」



雲龍「時雨・・・その血は?」



時雨「・・・あきつ丸さんを殺したからだよ」



提督「・・・そうか」



何の感情も抱かなかった。これには自分でも驚いている。いくら一度死んだとはいえ、自分が心から愛した女性だ。その女性が殺されても何の感情も抱かないとは・・・



提督「・・・すまなかったな」



時雨「・・・どうして?」



提督「時雨?」



時雨「どうして!?なんで泣かないの!?怒らないの!?僕は・・・提督の大切な人を・・・殺したんだよ!?」



時雨「どうして・・・・そんな僕に謝るの・・・僕は・・・」



提督「・・・時雨」



そっと時雨を抱き寄せた、何の意味もなく、ただ抱きしめたかった。そうしなければ崩れてしまいそうなほど、時雨は泣いていた。



時雨「・・・僕は」



提督「お前にとっても優華は大切な人だったんだろう?なら・・・俺はお前を責められないよ」



提督「お前に負担かけてすまなかった。優華を殺すのは俺の役目だったのに」



時雨「・・・提督」



そのときだった。警報が鳴った、このタイミングで警報が鳴るということは・・・やはり優華は深海棲艦に利用されていたのか。迎撃だ。こんなことをしてくれた深海棲艦共にこれ以上好き勝手やられてたまるか。



青葉「やはり作戦でしたか・・・これはこれは」



提督「迎撃だ・・・全員起こせ!!徹底的にやるぞ」



時雨「うん!!・・え!?」



爆発音・・・衝撃が伝わってきた。一体何が起きたのか・・・嫌な予感がする。



雲龍「爆発・・・これは」



副官「提督!!爆発です、医務室が吹っ飛びました!!」



副官から通信が入った。彼もこの状況には驚いているようで焦っているのがよくわかる。



提督「医務室が・・・了解した。俺も出撃する。指揮はお前に任せるぞ」



副官「はぁ?・・・あ、はい了解しました」



出撃ポート



モヤモヤする。深夜の医務室であんな死体見つければいやな気持ちにもなるし、その上急な敵襲と来た。どうにも嫌な気分だ。



最上「こんなときに出撃なんて・・・」



山城「スクランブルよ!!急いで」



最上「わかってるよ!!うっさいな」



山城「え!?」



不知火「どうしました?最上らしくない」



面倒だ・・・こんな時に話して来やがってまったく・・・こうなったらむしゃくしゃを深海棲艦共にぶつけてやる。



最上「なんでもないよ・・・面倒だ、さっさと殲滅してやるさ」



雲龍「行くわよ、みんな」



青葉「よーし・・・私も行きますよぉ」



明石「久しぶりに軽く運動でもしますかぁ」



あれは・・・明石と青葉か・・・どちらも戦闘を主とはしてない連中だが、役に立つのだろうか・・・ん?あれは時雨か?・・・・あいつ、あんなことしといて・・・



最上「時雨!!・・・後で話があるから」



そういって足早に出撃した。とりあえず出撃して憂さ晴らしだ。時雨を問い詰めるのはその後で良いのだから。



正面海域



副官が言うには敵の数は50体ほどいるらしい。それほどの数がここにくるとはかなりの予想外だ・・・この数相手では正直楽勝とは行かないだろう・・・



提督「全員揃ったな?・・・それでは部隊をふたつに分ける。1つは俺と青葉、時雨、明石だ。残りは天龍を旗艦に戦ってくれ」



副官「それでは私は方舟から指揮を執ります。提督はA地点で敵艦の迎撃を、天龍隊はC地点で迎撃を」



天龍「了解!!・・・オラァ!!行くぜ!!」



提督「わかった・・・いくぞ!!」



C地点



防衛地点に到着・・・こちらには俺と雲龍、山城、不知火、最上がいる。十分な戦力だろう。まずは索敵だ・・・突っ込むにしても守るにしてもな。



天龍「ようし・・・雲龍、山城!!」



雲龍「索敵・・・数は20体・・・空母型が4隻いるわね」



山城「・・・制空権は難しいですね?」



雲龍「「そうでもないわ・・・これを使えば」



そういって彼女は背中から大きなライフルを取り出した。なんだあれは・・・見たことの無い兵器だ。



最上「それは?・・・」



雲龍「昔使ってた玩具よ・・・山城、艦載機を・・・」



山城「あ、はい・・・」



二人は艦載機を放ち、雲龍はそのままライフルを構えた。



不知火「敵艦載機襲来!!・・・迎撃します」



不知火の一言で全員が対空戦闘に入ろうとした。そのとき雲龍が叫んだ。



雲龍「対空戦闘はお願い!!空母は私がやるわ」



天龍「・・・了解!!雲龍を中心に輪形陣行くぜ!!」



陣形を組んでから敵艦載機を落とし続けた。回避運動をとりながら雲龍は狙いをつけ、撃ち始めた。



雲龍「1つ・・・2つ・・・3つ、チャージング1・・・2・・・3!!4つめもらったわ」



雲龍が持っていたライフルから超高速の弾頭が発射された。全弾命中・・・空母型の頭は跡形もなくなっていた。



天龍「・・・やるねぇ?」



雲龍「これぐらいなら提督でもできるけど?」



天龍「マジかよ・・・あいつすげぇな」



ここからが本番だ。空母をしとめた今、敵の索敵範囲は一気に落ちただろう。



不知火「さて・・・お楽しみの時間ですね?」



天龍「おう・・・不知火と最上はついてこい!!残りの二人は援護だ、俺達に当てるなよ?」



山城「まかせて・・・これでも射撃は結構得意なのよ?」



雲龍「そうね・・任されたわ」



残りの敵は21体ほど、艦種は戦艦2、重巡5、軽巡5、駆逐艦8・・・長距離狙撃で空母を失い、浮き足立っている。これはチャンスだ、一気にかたを着けてしまおう。



天龍「オラァオラァ!!突撃だ!!びびってんじゃねぇーぞ!!」



不知火「・・・言いますねぇ」



最上「いいんじゃない?なにより楽しそうだしー」


二人はなんだかんだ言いながらも後ろから着いてくれている。これならうまくやれそうだ。まずは大物・・・戦艦を落とす。二人に目線を合わせ、不知火がが先行する。駆逐艦はスピードがあるからこういうときは実に頼りになる。



不知火「さて・・・タイミングは合わせてもらいますよ?」



敵艦隊から先行する不知火に砲撃が飛ぶ、浮き足立ち、連携が取れていない砲撃では足止めにもならない。あっという間に敵艦隊に肉薄した。



最上「なってないねぇ・・・不知火に集中しすぎだよ?」



後方から進む最上が観測機からのデータを下に砲撃を開始した。砲弾は全て命中・・・だが戦艦の装甲を貫くことはできなかった様だが艤装にはダメージを与えた。



最上「まぁ・・・こんなもんかな」」



不知火「ふふふ・・・」



不知火はそのまま戦艦目掛けて突っ込む・・・最上の砲撃で主砲に損傷が出たらしく、敵は満足に抵抗できなった。至近距離で飛び上がり膝を戦艦型の顔に叩き込む。そのまま主砲をゆがんだ顔に押し付け発射する。頭部を失った戦艦型は沈んでいった。



不知火「ふふ・・・次はあなたよ?」



不知火は主砲の反動をうまく使い体制を直し、もう1隻の戦艦型に飛び掛った。魚雷を1つ取り出すと最上の砲撃で穴の開いた艤装に差込み飛び上がる。その直後に差し込んだ魚雷目掛けて天龍の主砲が飛んできた。




天龍「楽しそうだなぁ・・・俺も混ぜろよ?」



不知火「流石は天龍ちゃん、狙いは完璧ですね?」



最上「よぉ!!天龍ちゃん・・・カッコイイねぇ」



天龍「・・・お前ら後で説教な?」



山城と雲龍の攻撃によりすでに軽巡は全滅、駆逐艦は半数が沈んでいる。いい感じだ、このまま一気に畳み掛けてしまおう。一気にしとめてこの二人にうんと説教してやる。天龍はそう決めて重巡型に狙いを定めた。



A地点


担当海域に到着した。こちらには25体ほどが接近しているらしい。詳細はまだこないが天龍たちはすでに交戦したらしい。



提督「天龍達は交戦したか・・・」



明石「うーん・・・」



青葉「どうしました?」



明石「提督の艤装の調整をしてるんだけどね?・・・これでどうです?」



提督「む?・・・うん、これでいい大分調子が出てきた」



時雨「こんなとこで調整?・・悠長だね」



明石「・・・今回は一筋縄では行かないような気がしましてねぇ、できることは全部しときたいんですよ」



青葉「そうですか・・・ん敵影25、空母型7、戦艦3、軽巡5、駆逐艦10・・・結構な艦隊です」



提督「ふむ・・・」



敵に空母が7隻もいるとは・・・艦載機が多いと面倒だ、ここはさっさとしとめた方がいい。



提督「よし・・・空母をしとめる、俺と時雨で行く。青葉と明石は敵をひきつけてくれ」



時雨「わかったよ」



青葉「はーい、派手に暴れますよ?明石さん」



明石「了解!さーて新装備、試すわよ」



青葉と明石は敵艦隊目掛け突っ込んでいく。敵はすぐさま二人に砲撃と艦載機を向ける。



青葉「来ましたねぇ・・・」



明石「艦載機は厄介ですね・・・お願いできますか?」



青葉「はいはーい」



明石は速度を上げ敵艦隊に突っ込むが青葉は明石の後ろにつき艦載機に狙いをつけた。



青葉「さーて・・・けん制ならこれで」



敵艦載機は編隊を組んで進んでいる。青葉はこの編隊の一番前の爆撃機に主砲を撃った。これによ先頭の爆撃機は爆散、この破片と爆発で後続の爆撃機にもダメージがはいり敵編隊はかき乱される形になった。



明石「ほぉー・・・こっちもがんばらないとね」



明石は青葉の砲撃に感心しながらも目の前の敵艦に意識を向けた。艦種は軽巡と駆逐艦、足止めのつもりか・・・なら遊んでやろうじゃないか。クレーンを左右に展開しワイヤーを伸ばす。速度はそのまま、敵前衛の砲撃をかわしながらクレーンを駆逐艦に引っ掛けた。



明石「ふふん・・・あとはこいつを!!」



直後に急停止すると引っかけれられた駆逐艦同士が目の目で衝突し砕け散った。これで駆逐艦2隻轟沈、まだまだだ。包囲ししようと駆逐艦と軽巡が接近している。艤装に新しく取り付けた大きな鋏を取り出し右腕に装着した。



明石「電磁バンカーよりは強力だと思うんだけど・・・」



右腕に装着された鋏が展開する。鋏の刃に当る部分には高密度の電磁エネルギーが展開され、いつでも溶断する準備ができている。



明石「まずは、駆逐艦で・・・」



包囲から1隻の駆逐艦が突出した。こちらに砲口を向け、砲撃。こちらも駆逐艦に突っ込み展開した鋏を向ける。鋏は確実に相手の砲弾を切り裂き、そのまま駆逐艦の主砲ごと体を挟み込んだ。



明石「出力上昇、断ち切れぇ!」



鋏の電磁エネルギーにより捉えられた駆逐艦はいとも簡単に両断された。真っ二つとなった駆逐艦は爆散、この様子なら残る相手も簡単に溶断できそうだ。ふと青葉に目を向ける、彼女はすでに駆逐艦を2隻、軽巡2隻を落とした所だった。



青葉「砲撃も雷撃も索敵も~青葉におっ任せ~」



久しぶりの実戦、諜報部となった今では戦闘はほとんどしない。だからか実戦となるとつい楽しくなって鼻歌混じりで砲雷撃戦だ。



青葉「ふんふ~ん」



次の標的は戦艦型、火力も高く、装甲も硬い。いくら重巡の火力でも易々とは撃破できない・・・だがそれは一般論だ、少なくともこの青葉には通用しない。理由は簡単、主砲の最大威力を発揮する距離、相手の装甲の性質または弱点を頭に入れて戦闘を行っているからだ。1つ例を見せよう。



青葉「重巡砲って言うのは、至近距離じゃ貫通力が確保できないんですよねぇ・・・」



この重巡砲の距離は8メールほどがベスト、それ以下では速度が最大に達しきれていない。それ以上では速度の減衰が始まってしまう。



青葉「戦艦の装甲って硬いんですよねぇ・・・でも主砲は装甲は薄いし、何より爆発する物が満載ですからね」



無理に心臓部分を打ち抜いたり、ヘッドショットを狙う必要は無い。確実にダメージを与えたいのなら装甲が薄く、誘爆する場所の方がいい。



青葉「距離、狙い完璧・・・砲撃!!」



つまり今回の戦艦型相手では・・・8メートルの距離から艤装の主砲部分に砲撃。これで艤装が大爆発し撃破となるわけだ。



青葉「・・・しかし艦娘と言うのはすごい能力ですね、これだけの力があればもっと活躍できると思うんですけど」



3年前まで特殊艤装で戦っていた自分としては、これだけの装備を与えられてなお苦戦を強いられているのが考えられなかった。確かに深海棲艦の物量は凄まじいが・・・・



青葉「ま・・・ほとんどの艦娘は所詮素人ですからね」



こちらはほとんどを仕留めた。これで空母の護衛部隊が動き出すだろう。明石もよくやっている、これほどの戦いをするとは思わなかったが。後は提督と時雨とか言う艦娘にかかっているが、まぁ何とかなるだろう。なにせあの隊長がついているのだから。




敵空母7隻、戦艦型2隻、駆逐艦型4隻、この数を二人で沈めるのは正直厳しいものがあるか・・・とはいっても青葉たちがうまくやってくれているようで艦載機は青葉達に集中している。今は空母を静かにさせることを考えればいい。



提督「よし・・・時雨いくぞ」



時雨「うん!!」



俺と時雨で速度を合わせる。敵艦隊はこちらに気づき戦艦と駆逐艦を展開し、その後ろからは護衛の艦載機を発艦させた。



提督「ふむ・・・」



時雨「突破するしかないよね・・・でも」



提督「時雨・・・後ろについて艦載機の迎撃を」



時雨「?わかったよ」



時雨は後ろにつき主砲を構え迎撃体制をとる。それを確認すると俺は背部に追加された装備を手に取った。



提督「さて・・・明石の話では出力が安定したそうだが」



ズシリ・・・そんな言葉がピッタリな感覚を両手に感じる。それは大剣と呼ぶにふさわしい大きさで身の丈ほどある鋼鉄の塊である。それを目の前に構えトリガーを引く。目の前には青白い電磁エネルギーが展開される。それは刀身と言うよりは大きな盾の様だった。



提督「時雨、離れるなよ?」



時雨「・・・なんだいそれ」



提督「盾と剣を一緒にした最強の武器だ」



時雨「はぁ・・・なんていうか、まぁいいや」



話しているうちに敵艦隊から砲撃が飛ぶ、艦載機の援護のせいか狙いは正確だ。本来ならこちらは何発も直撃弾を食らっているだろう。だがその直撃弾は全て目の前の電磁エネルギーによって蒸発させられている。護衛部隊の艦載機の攻撃も時雨の砲撃よって無力化されている。



時雨「提督!!包囲してくるみたいだ!!」



駆逐艦4隻がこちらの後方につこうと移動を始めた。予想通り、これで前方は手薄になった。今なら簡単に突破できる。



提督「そのまま突破する!!散開!!」



時雨「了解!!」



二人は左右に別れ、速度を上げる。戦艦型には予想外だったらしくどちらを狙うか迷った。その時間が命取りだった。その間に俺達は敵艦隊の突破に成功した。



提督「チャンスは一度・・・ここで何隻落とせるか?」



目の前には輪形陣をとった空母が7隻、攻撃はできて2回、時雨もそんなものだろう。それ以上は挟撃の危険がある。どうしたものか。



時雨「提督?ここは僕の後に続いてくれないかな?」



提督「・・・いいだろう」



時雨は正面から空母艦隊に近づいていく。時雨が簡単に作戦の説明を始めた。



時雨「1・2・3で提督は僕を敵陣の真ん中に投げ飛ばして、そしたら僕が周辺の空母を戦闘不能にするから提督は真ん中の空母をお願いね」



提督「・・・は?」



かなり無茶苦茶だが・・・ここまで来てしまった以上はやるしかない。



時雨「さて・・・じゃあいくよ?」



時雨「1・2・・・」



提督「3!!」



1の段階では時雨はしゃがみ。2の段階では飛び上がっていた。3の段階では足をこちらに向け顔は前を向いていた。俺は時雨の足をもち、剣撃用の加速ブースターを展開、そのままブン投げた。その後は一瞬だった。時雨はうまく敵陣形の真ん中にたどり着くと体を回転させながら魚雷を全弾発射しそのまま主砲を連射した。ただばら撒き連射しただけに見えたが狙いは正確ですべて敵空母に向かっていた。



時雨「沈めることはできなくても、これで艦載機の発着はできないはず!!」



時雨の狙い完璧だった。魚雷と主砲は敵艤装の発艦口に命中し、破壊した。真ん中の空母は時雨を追撃しようと艦載機を向けた。



提督「そうはさせん・・・お前は沈める!!」



大剣を構えなおし、剣先を前方に向ける。ブースターを展開し接近・・・出力最大で振りぬく。その青白く輝く大剣はあまりにも強力すぎたか・・・切り捨てたはずの空母型は完全に蒸発し、消えうせた。ふと警告音が鳴り響く。



提督「チャージング・・・流石にこれは出力を上げすぎたか」



時雨「提督、このまま反転する?」



提督「いや、ここで動きを止めず速度を生かした一撃離脱戦法で叩くぞ」



時雨「了解!!」



艦載機の脅威は減った。これで後は駆逐艦と戦艦型だ・・・だが一番の問題はこの後だ、医務室から消えたあきつ丸が深海棲艦化したとしたらかなりの脅威となるに違いない。大剣を構え、突撃の姿勢をとる。その中でも頭は冷静だった。




方舟 艦橋



副官「戦況は有利・・・殲滅も時間の問題ですね」



ふと目線をレーダーに向ける。写るのはこちらの戦力である艦娘と提督、消えていくのは深海棲艦だ。また1つ消えた・・・これで残りは4隻だ・・・



副官「ん?」



鎮守府の近くに反応・・・ほんの一瞬だが、故障か?まさかそんな事は無いはず・・・それではこの反応は一体?



副官「あきつ丸・・・?ま」



マズイ・・・そう言おうとしたときだった。大きな衝撃が方舟を襲った。



副官「ッ!!損害報告!!」



電磁フィールドを貫通・・・だが船体を覆った超振動装甲によって損害は軽微だった。さすがは方舟、なんとも無い。だがこれはマズイ、鎮守府のすぐ傍に大きな反応がある。このままでは鎮守府が破壊されてしまうだろう。



副官「しかし・・・こちらにも敵が接近してますか」



援軍のようだ、距離も近く包囲されている。だが問題はない・・・今は全武装が使用可能となっているからだ。



副官「よし・・・戦闘準備!!無人機隊は対艦戦闘に、駆逐艦型を主に狙え!!」



この方舟には人間大の無人戦闘兵器が積まれている。護衛艦時代は標的機の操作に使われていた機器を改良した遠隔操作機器によって操作される為無人機ながら高い戦果を上げることができる。



副官「無人機隊は攻撃に専念しろ・・・守りは大丈夫だ」



接近してきた駆逐艦型は方舟に装備されたレールガンによって吹き飛び、飛んでくる砲撃も電磁フィールドによって防がれている。敵艦載機の接近も確認・・・レールガンでは対空防御は期待できない、ここはCIWSで迎撃しよう。



副官「よし・・・CIWSで迎撃!!」



CIWSが起動すると艦載機は次々と迎撃されていく。元々は対艦ミサイル迎撃の最後の砦とある装備だ、命中精度、速射性、威力は申し分ない。



副官「さて・・・後は無人部隊だが」



ブリッジに報告が入る。無人機部隊が周辺の深海棲艦の殲滅に成功したとの事だ。これでこちらは一安心、後は迎撃中の艦娘達と鎮守府近くの大きな反応だ。提督たちも気づいているだろう、無茶していないといいが・・・




A地点



レーダーに大きな反応・・・それと同時に爆音も聞こえた。鎮守府の方だ。予想してた最悪の事態が現実となってしまった様だ。



提督「大きな反応?・・・まさかあきつ丸か?」



時雨「!?・・・だってあきつ丸さんは死んだはずじゃ」



明石「んー?思ったより進行してたかもしれませんね」



青葉「・・・どうします?」



どうするか?・・・こうなったらあきつ丸を倒すしかないだろう。問題は誰がいくかだ・・・増援も確認されている。こちらにも何人か残さないといけない。・・・ここで雲龍から通信が入った。



雲龍「提督?反応を確認したわ、誰がいくの?」



提督「そうだな・・・」



時雨「・・・僕が行くよ」



提督「時雨?」



ふと声が上がった。意識していなかったため少し驚いてしまった。



時雨「僕が行く・・・提督に2回も死ぬところを見せるわけにはいかない!!」



青葉「時雨さん?」



青葉が声を上げた時にはもう時雨は行ってしまった後だった。時雨は何か行っていた。確か・・・2回も・・・何のことだかわからないが今の時雨はひどく思い詰めた顔をしている。1人では危険だ。



提督「1人では危険だ・・・俺も行こう」



青葉「ここは青葉に任せてもらえませんか?」



提督「青葉?・・・いや」



青葉「ここで指揮官が動けばA地点の防衛に支障が出ます・・・ですから青葉が行ったほうが良いと思うんです」



提督「・・・」



青葉が言うのはもっともだ。指揮官が動けば防衛に支障が出る・・・だがそれよりもあきつ丸を止めるのは自分の役目だという思いもある。ふたつの思いがぐるぐると回る・・・自分は一体どうすればいいか・・・指揮官してあるべき行動をとるのか?個人としての感傷を優先するのか?



青葉「・・・思案にふける時間はありませんよ?」



提督「・・・頼む優華を、止めてくれ



青葉「了解・・・では」



青葉は行った。俺は提督としてこの第9鎮守府を預かる立場にある。そんな人間が個人の感傷の為に動くべきではない・・・恐らく優華もそう思うはずだ。今は軍人として正しいことをしよう。



提督「雲龍・・・こちらに1人寄越してくれないか?」



雲龍「ええ・・・今私が向かってるわ」



提督「準備がいいな?」



雲龍「・・・こちらの連中では太刀打ちできない可能性があるからね」



提督「そうか、こちらから青葉と時雨が向かった。合流を急いでくれるか?」



雲龍「ふむ・・・いい判断ね、彼女達ならやってくれるでしょ」



提督「そうだな・・・明石、雲龍と合流するぞ、ついてこい」



明石「了解~」



こちらの部隊は3人・・・戦力は減ったが問題ない。援軍をさっさとしとめてしまおう。





鎮守府海域



急ごう・・・いまの時雨ではあきつ丸の相手は危険すぎる。二人が交戦する前に会わなければ・・・見えた、間に合った様だ。



青葉「時雨さーん」



時雨「青葉さん?」



やはり思いつめている・・・このまま戦わせるわけにはいかない。



青葉「・・・さっき2回も死ぬところを見せるわけにはいかないって言いましたよね?」



時雨「う、うん」



青葉「あきつ丸・・・優華さんが言ったんですか?」



時雨「!?どうしてそれを?」



青葉「付き合い長いですからねぇ~これでも」



時雨「そう・・・」



青葉「それに・・・」



時雨「え?」



青葉「それを言うならなら時雨さんも2回目ですよ?・・・貴女だけにつらい思いはさせられません」



時雨「青葉さん・・・ありがとう」



青葉「礼には及びませんよ・・・それに」



時雨「?」



青葉「何でもありませんよ?・・・さぁ行きましょう」



時雨「うん・・・頼むね」



目が変わった。これなら大丈夫だろう・・・彼女を失わせるわけにはいかない。これ以上仲間を失うのは嫌だ、そしてそれ以上に・・・



青葉「もう・・・隊長の大切な人を失わせたくは無いんですよ・・・」




青葉は進む、仲間を守るため・・・青葉は戦う、仲間を守るために・・・それが昔の仲間を殺すことになっても。



青葉「・・・時雨さん見えましたよ」



時雨「・・・うん、あれがあきつ丸さん・・・なんだね」



青葉が指を差したその先には禍々しい艤装をつけた美しい女性が佇んでいた。髪は白く・・・肌は死体のように白い、まさに深海棲艦だ。



青葉「揚陸艇姫・・・」



まさにその通りだと思う・・・彼女はあきつ丸ではない、新種の深海棲艦、揚陸艇姫だ。



揚陸艇姫「・・・来たのね?」



青葉「・・・時雨さん」



時雨「うん・・・ここでしとめる」



揚陸艇姫「ふふふ・・・できるのかしら?」



時雨「なに?」



揚陸艇姫「時雨ちゃんに、青葉ちゃん・・・揚陸艇だからって舐めないほうがいいわよ?」



艤装を展開する・・・だがそれは禍々しく、あきつ丸のそれとは違い強力なもののようだった。大量の艦載機、大口径主砲、水雷艇・・・隙の無い装備でこちらを威嚇するようだ。



揚陸艇姫「さて・・・行くわよ?」



時雨「青葉さん!!来るよ」



青葉「はい!!」



初めは艦載機の攻撃だ・・・種類はおそらく艦戦、ならば攻撃力はたいしたことは無いはず。



揚陸艇姫「・・・艦戦でも十分攻撃できるのよ?」



青葉「ち・・・これが烈風拳ですか」



名前の由来はあきつ丸が生前烈風を使って深海棲艦を多数撃破したことからで・・・その威力は高く、至近距離まで艦載機を突撃させて機銃掃射により敵艤装にダメージを与えるもの。より正確に弱点を狙える実力があってこそ真価を発揮する技だ。



時雨「く・・・近すぎる、これでは」



青葉「ええ・・だったら!!」



主砲を構える・・・その先には時雨がいるが狙うのは時雨ではない。狙うのは時雨に絡んでいる艦載機どもだ。



時雨「!?・・・そうか!」



時雨も理解してくれた。二人は距離を離し回避運動をシンクロさせる。相手がこちらを狙いやすいように、こちらも相手を狙いやすいように。



揚陸艇姫「何?・・・まさか」



青葉「よし・・・いけぇ!!」



時雨「こちらも!!」



二人は同時に主砲を撃つ・・・互いにまとわりつく艦載機は撃墜した。だがこれで終わりではない。艦載機はまだ発艦して来るだろう。



揚陸艇姫「ふむ、やるじゃない。でも・・・ん!?」



時雨「残念だったね?隙は逃がさない主義なんだ」



時雨が揚陸艇姫目掛け突撃する。揚陸艇姫はひるむことは無く主砲による砲撃戦に入る。だが急遽砲撃戦に入ったため艦載機の発艦が遅れた。



青葉「・・・敵はこちらの狙いに気づいてないようですね」



ふぅっと一息・・・集中して狙う。狙うは敵の艤装。艦載機の発艦を防ぐのだ。引き金を引き抜く・・・主砲から轟音と共に弾頭が飛び出した。



揚陸艇姫「時雨ちゃん、やるわね・・・何!?」



意識が時雨に向かっていた揚陸艇姫は航空艤装の爆発に驚いた。艦載機は発艦できずに航空艤装ごと爆散した。



揚陸艇姫「く・・・これでは」



揚陸艇姫は苦虫を噛み潰したような顔をする。・・・だが何かおかしい。目・・・目が笑っている?まさか罠だったのか?



青葉「・・・そうか水雷艇!!キャァ!!」



狙いに意識を向けすぎた。接近していた水雷艇に気づかず魚雷をもらってしまった。直前に気づいたため中破で済んだが主砲も破壊された・・・もし気づかなかった轟沈していたかもしれない。



揚陸艇姫「いひひひ、あははは・・・やるじゃないの~引っかかったと思ったのに」



青葉「・・・相変わらず腹の立つ女」



揚陸艇姫「女はあざとく生きないとね?・・・いひひひ」



青葉「その笑い方・・・隊長が見たら幻滅しますよ?」



揚陸艇姫「かもぉねぇ?・・・でもいいのよ」



時雨「青葉さん!!」



揚陸艇姫はこちらに主砲をむける・・・こちらはまだ中破だ。当ってやるわけにはいかない。今は時間を稼げればいい・・・攻撃方法は主砲だけではないんだから。



揚陸艇姫「・・・罠?・・・いやこんな状況で」



揚陸艇姫は迷った・・・ほんの少し。それが絶好のチャンスになった。青葉は突っ込む・・・主砲もなく、魚雷もない・・・傍から見たらただの玉砕だ。



揚陸艇姫「玉砕?・・・いや何か作戦が!?」



青葉は特務機動戦隊時代にくせ者と呼ばれ実に抜け目なく、誰も思いつかない戦術や戦法は披露してきた。この過去が揚陸艇姫の判断を鈍らせ、反応を遅らせた。



青葉「作戦?・・・青葉にはそんなものありませんよ。青葉はただ・・・」



揚陸艇姫「な・・・・きゃぁ!!」



拳を握り締め・・・揚陸艇姫の顔面めがけて振りぬく。



青葉「あんたの憎たらしい顔を・・・殴りたかっただけですよ?」



揚陸艇姫「くぅ・・・してやられたわね・・・」



魚雷が接近している・・・これは水雷艇のものではない。時雨の魚雷だ。こんどこそ揚陸艇姫は意識のそとからの攻撃で驚いている。顔も目も先程とは違い心からおどいている様だった。



揚陸艇姫「何が作戦が無いよ・・・ちゃっかりあるじゃない」



青葉「青葉にはありませんよ?・・・時雨ちゃんにはあったみたいですが?」



揚陸艇姫「ふん・・・やな女」



青葉「貴女には負けますよ」



魚雷は進む・・・揚陸艇姫に近づき沈める為。魚雷は進む・・・揚陸艇姫を沈め彼女を救うために。揚陸艇姫はそっと目を閉じる。ふと口をあけた。



揚陸艇姫「青葉・・・最期が貴女でよかったわ」



轟音・・・水柱があがる。揚陸艇姫は跡形も無く消えた。



青葉「青葉は・・・最期を看取りたくなかったですよ・・・だって」



水面に水滴が落ちる・・・雨は降っていない。そうか・・・これは涙か。



青葉「親友が死ぬ所なんて・・・悲しすぎるじゃないですか」




執務室



提督「・・・よしみんな集まったか?」



執務室を見回す・・・出撃した艦娘達は青葉以外は大きな損傷も無く帰還した。そのため青葉は入渠ドックで傷を治しているので今執務室にいるのは青葉以外の艦娘だ。



最上「提督?・・・少し聞きたいことがあるんだけど」



提督「なんだ?」



最上「・・・出撃前時雨があきつ丸さんを殺した事・・・知ってる?」



一瞬・・・執務室の空気が凍りついた。事の顛末を知っている俺や雲龍、明石はいいが、他の4人は動揺している。



提督「・・・知っている」



最上「ならなぜ横にいるんだい?・・・そいつは人殺しだよ?」



時雨「!?・・・最上」



最上「身柄を拘束しなければいけないんじゃないかな」



提督「その必要はない」



最上「・・・なぜ?」



提督「あきつ丸はもはや人間では・・」



そう言い掛けたときだった。普段は見せない怒りの感情を俺にぶつけてきた。それはあきつ丸を殺した時雨にではなく・・・俺に向けたものだった。




最上「艦娘は人じゃないって言いたいのかい!?・・・ふざけるんじゃないよ!!」



天龍「・・・最上落ち着け!!」



最上「落ち着いていられるか!!・・・だって・・・」



雲龍「不知火、最上を拘束しなさい」



不知火「・・・承服でません」



雲龍「あらそう・・・なら私がやるわ」



山城「・・・雲龍さん、何があったのか、教えてくれませんか?」



雲龍「・・・」



天龍「ああ・・・俺達には何が何だかさっぱりだぜ」



不知火「そうです・・・それなら最上も納得するでしょうし」



雲龍「だって?」



提督「ふむ・・・説明しよう」



騒ぎ出した最上を落ち着かせ・・・事情を説明する。皆何も言わずに聞いていた。その間時雨はずっとうつむいていた・・・それもそうだ何を話したところで自分がしたことは何も変わらない・・・人を殺した感蝕はその手に残ったままなのだから。




[4]


執務室



揚陸艇姫となったあきつ丸の事件から数週間がたった。その間にも何度か出撃の機会があったが特に問題も無く任務に当ることができた。最上も例の件は納得してくれたようで時雨とも今までどおりの関係を取り戻したようだ。



提督「ふむ・・・今日は出撃もなしか」



雲龍「そうね・・・おとといまでは新海域の強行偵察や橋頭堡の確保とか忙しかったけど」



提督「・・・これも大型作戦が近いということか」



雲龍「ええ、私達はどうなるのかしら」



提督「そればかりはな・・・ん?」



電話がなった・・・とりあえず受話器を取ると明石からの電話だった。



明石「少しお話が・・・」



提督「・・・どうしたんだ?」



簡単にいうと・・・明石によると特技研で進めていたナイトメアシステムという装備の開発が終了したので性能評価試験に時雨を参加させてほしいとのことだった。



提督「・・・かまわんぞ」



明石「そうですか・・・よかったです」



提督「ん?そうか」



明石「性能評価試験は明後日やりますので、明日には時雨ちゃんを第1鎮守府に寄越してください」



提督「明石?」



明石「なんでしょう?」



提督「何かあるな?」



明石「・・・」



そういうと明石は黙ってしまった・・・



提督「明石」



明石「あります・・・だから時雨ちゃんには切り札として・・・」



提督「ならば他にも・・・」



明石「いえ・・・恐らく足手まといになるでしょうから」



提督「なに?」



他の連中が足手まとい?・・・一体どういう事なんだろうか。先程のナイトメアシステムのせいなのか、それとも他の理由なのか。



明石「それでは失礼します」



提督「あ・・・ああ」



電話は切れた・・・雲龍はこちらを不思議そうに見つめる。これはどうしたものか・・・取りあえずは時雨を呼んでこの件について話してみようか。そう結論付けると雲龍に時雨を呼び出すように伝えた。




今日は非番、こういう日は趣味の惰眠に限る・・・だが急な呼び出しに趣味の邪魔をされてしまった。少々不機嫌ながら呼び出しに応じ執務室に向かった。



時雨「・・・」



ドン!!それはノックと言うよりはぶん殴るといったほうが正しい音だった。



提督「時雨か?」



時雨「入るよ」



扉を開ける・・・勢いよくあけられたドアは大きな音を立てて開かれた。



雲龍「・・・相変わらず寝起きは最悪ね」



時雨「それを知ってて呼び出したんでしょ?で?」



提督「ナイトメアシステム・・・」



提督「知っているか?時雨は」



知っている・・・改良型の艤装に取り付けられたシステムだ。だがこれは明石さんと僕くらいしか知らなかったはずだが・・・



時雨「うん・・・僕の艤装についているからね」



提督「ほう・・・」



雲龍「いつの間にそんなものを?」



時雨「この前特技研にいった時にね、その時さ」



提督「・・・ならば明日1100に第1鎮守府に出向してもらう」



時雨「?・・・理由は?」



提督「ナイトメアシステムの性能評価試験を行うためだ・・・明石からの指名でね」



時雨「・・・拒否は?」



提督「さぁな?・・・だが明石はお前に切り札としてほしいそうだが」



時雨「・・・」



僕が切り札・・・なんとなくだが理解できた。緊急事態になったときのための切り札にしたいんだろう。ならば行くしかない。



時雨「行くよ」



提督「そうか・・・では明日まで待機だ」



時雨「・・・提督」



なんとなくだが話さなければいけない様な気がしてきた。ナイトメアシステムの事・・・まだ僕は全てを知らないけど、それでもわかる危険性を。



提督「・・・雲龍?」



雲龍「・・・わかったわ艤装のメンテでもしてくるわね」



雲龍はそういって執務室を後にした。完全に気配が消えた事を確認すると僕は重い口を開いた。



工廠



雲龍「・・・・」



今日は少し疲れた、足元もすこしフラフラするようだ。これは最近はよく眠れていないからだろうか・・・待ったく私も落ちぶれたものだ。喫煙所のベンチに腰掛けた。



雲龍「・・・ふぅ」



今日も夢を見た・・・大きな工場のようなところにたくさんの作業員が忙しそうに働いて、なにか大きな船を作っている夢だ。それだけ言えばたいしたこと無い夢だが工場に流れる悲壮感が胸をいつも締め付けた。



雲龍「・・・タバコは」



昨日は完成した船が飛行機の訓練をしているところだった。船に乗る皆も、共に訓練した船も悲壮感を払拭するように訓練に励んでいた。私はタバコに火をつけようとするが急に眠くなってしまったため、一眠りすることにした。




雲龍「・・・ん?」



目を開けるとそこは見渡す限りの海だった。ここは何処だろうか・・・わからない。体の感覚も違う、人間とは違ってひどくずっしりしている。手足も無い。



雲龍「・・・これは船になってしまったの?」



不思議な感覚だった。自分が船になるなんて経験はないから変な感じだ。すこし周りを見た感じでは平らな板が上に載った船のように見える・・・これは空母と言う奴か。正直私は軍艦のことなど知らないからなんと言う名前かはわからないが。



雲龍「・・・飛行機乗ってないわね、あれだけ訓練したのに」



これでは空母と言うより輸送艦と言う奴みたいだ・・・!?急に熱いような焼けるような痛みが襲った。



雲龍「痛い・・・何なのこれは魚雷?・・・あぁ」



痛い痛い痛い・・・こんな痛みは初めてだった。こんなところで沈むわけには行かない・・・反転し回避する。



雲龍「こんな・・・空母として何も出来ないまま、沈んで!!」



ダメ押しの一撃・・・敵潜水艦の魚雷があたり大爆発が起きた。



雲龍「火薬庫?・・・そんな」



沈む・・・間違いなく沈む。工場でがんばって作ってくれた作業員、飛行機で訓練していたパイロット、そして航空母艦「雲龍」の乗組員・・・いろんな人達の顔が走馬灯のように浮かんでは消える。



雲龍「嫌だ・・・こんな・・・うあぁぁぁぁ」



嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ



雲龍「うぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!!!」



山城「雲龍さん!!どうしたんですか!?」



雲龍「いやぁあぁぁぁぁぁぁ!!嫌だ嫌だ嫌だ嫌だぁ・・・こんなところで沈みたくない!!・・・私はぁぁぁぁぁ」



山城「!!・・・・大丈夫です雲龍さんは沈みません・・・私が守りますから・・・貴女は沈みません!!!」



雲龍「うあぁぁぁぁぁ・・・・ぁぁぁ」



声が聞こえる・・・これは山城の声?・・・強くもやさしい声だ・・・・



山城「大丈夫です・・・さぁ深呼吸ですよ?」



暖かい・・・全身を包まれているようで心地いい・・・そうだ、私はまだ沈んでいない。私はまだ生きている



雲龍「すぅー・・・・はぁー」



山城「はい・・・もう一回」



雲龍「すぅー・・・・はぁー」



心地よい感じだ・・・なんだろう急に眠くなってきたな・・・また寝よう。今度は夢を見ないで済みそうだ・・・だってこんなに心地よいのだから・・・



山城「・・・あら」



雲龍「すぅー・・・すぅー」



山城「寝てしまったようね・・・医務室に運びましょうか」




医務室



雲龍「・・・ん?」



山城「あら・・・目を覚まされましたか」



目を覚ますとそこは医務室のベットだった。・・・そうかあの時工廠で夢を見て・・・



雲龍「山城・・・その」



山城「・・・艦娘じゃなかったんですね」



今まで周りに気づかれないように隠していた事実がばれてしまった。本来なら不安や恐怖をおぼえるはずだが・・・



雲龍「・・・ええ」



今は心から落ち着いた気持ちだ。いや安心していると言ったほうがいい、これで大切な仲間に嘘をつかないで言いのだから。



山城「そうでしたか・・・」



雲龍「・・・どれくらい寝てしまったのかしら?」



山城「2時間程ですよ」



雲龍「心配かけたわね・・・山城」



山城「・・・いいえ、心配はしていませんでしたよ?」



雲龍「どうして?」



山城「雲龍さんが倒れたのは艦霊による記憶の共有に耐えられなかったからで、病気とかではなかったので」



艦霊による記憶の共有・・・今まで見ていた夢のことか。あれはやはり航空母艦「雲龍」の記憶だったのだ。



雲龍「あなたは?・・・山城も私みたいに?」



山城「はい・・・わたしはもっとひどかったですよ?暴れまわって工廠を破壊してしまって・・・」



雲龍「じゃあ、貴女がここに来た理由は・・・」



山城「はい、建造直後に工廠を破壊し数名の艦娘を負傷させたからです」



淡々と語る彼女の目には光る物があった。嫌な事を思い出させてしまったか・・・



雲龍「・・・そう」



山城「・・・そうだ、雲龍さん艦霊の加護を得たので艦娘になれたんですよ?」



雲龍「・・・そう」



山城「嬉しくないんですか?」



雲龍「・・・ええ」



そうだ、わたしは雲龍になることを望んでいなかった。それは前任の雲龍が死んでしまったという証明になったしまうから・・・



雲龍「・・・電話を貸してもらえるかしら」



山城「?・・・どうぞ」



山城から渡された電話を手に取ると,ある番号に電話をかけた。・・・青葉だ。



青葉「・・・雲龍さんですか?」



聞きたいことがある・・・私が雲龍になった言う事はやはり彼女は・・・



雲龍「前任は・・・」



青葉「亡くなりました・・・」



雲龍「・・・」



何も言えなかった。何か言えば泣き崩れてしまいそうで・・・



青葉「・・・艦霊との契約おめでとうございます」



雲龍「青葉・・・」



青葉も悲しいはずだ。前任が死んだという事実を嫌でも突きつけられることになるのだから。



雲龍「・・・ごめんなさい」



青葉「謝らないで!・・・貴女が雲龍の名を継いでくれて嬉しいんですから!」



青葉「前任・・・いえ私の姉も貴女だからあの時艤装を・・・」



雲龍「青葉・・・」



青葉「・・・それではやらなければならない事がありますので」



雲龍「ええ・・・」



電話を切った・・・傍にいた山城が急に抱きしめてくれた。



雲龍「・・・どうして?」



山城「・・・だってとても悲しそうに泣いていますから」



言われたから気づいた・・・わたしは今泣いているのだ・・・それもひどく泣いている顔もぐちゃぐちゃだ。



雲龍「・・・ありがとう」



山城は優しく包みこむように、でもしっかりと力強く抱きしめてくれた。それがどんな慰めの言葉よりも・・・私をやさしく慰めてくれた。そしてまた私はまどろみに落ちる・・・ゆっくりと心地よく、山城の体温を感じながら。



第1鎮守府


提督から辞令を受けた次の日、僕は第1鎮守府に向かった。理由はナイトメアシステムの性能評価試験・・・一度だけシステムが勝手に起動した事があったが明石さんは危険なものの様に言っていた。そんなシステムの評価試験など出来るのだろうか?



時雨「・・・まぁ考えても仕方ないか」



車を降り運転手に礼をすると鎮守府の入り口に降りた。周囲を見やると明石さんがこっちに向かってくるのが確認できた。



明石「時雨ちゃぁーん!!」



時雨「明石さん、お久しぶりです」



明石「そうねぇ・・・よし早速特技研まで行きましょうか?」



時雨「え?・・・試験はまだじゃ」



明石「ええ・・・あなたの艤装を調べたいのよ」



時雨「はぁ・・・わかりましたけど」



明石「じゃあいきましょう・・・」



急な話におどろいたが、明石さんはこの艤装に搭載されているナイトメアシステムについて知りたいようだった。もしそうならば急いだほうがよさそうだ。



第1鎮守府 特技研



明石「・・・じゃあ艤装は預かるわね?」



時雨「はい、どうぞ」



明石に艤装を預けると研究室に篭もってしまった・・・どうしようか、することが無い。



時雨「・・・暇つぶしの道具は持ってないもんな」



んーっと伸びをする。ちょうどいいここで一眠りしよう、このソファは寝心地がよさそうだし。



時雨「・・・ふぅ」



横になり目を閉じる・・・やはり思った通りだ、寝心地いい。この分なら一分もかからずに寝れそうだ。



少女「明石さーん!!」



ドォンと大きな音でドアが開く、急な音に驚き僕は飛び上がった。



時雨「え?・・・誰?」



目の前に立っていたのは僕よりも幼い少女だったが何か違う、そう大人の女性の雰囲気を持っていた。



少女「ん?・・・明石さんはどうしたんですか?」



時雨「明石さんは僕の艤装のチェックを・・・」



少女「そうですか・・・それであなたは?」



時雨「時雨・・・白露型2番艦で、第9鎮守府に所属しているよ」



少女「へぇ・・・あなたがあの時雨ですか」



軽く自己紹介をすると少女はなにやらブツブツと言いいながら頷く。



時雨「・・・君は?」



雪風「これは失礼を・・・私は陽炎型8番艦の雪風です、普段は第7鎮守府の旗艦をしています」



駆逐艦雪風・・・艦娘となった者なら知らないものはいないといわれるほどの有名人だ。天龍もその実力から有名だが彼女はまた別格である。



時雨「・・・あの有名な雪風がどうしてここに?」



雪風「時雨と同じ理由ですよ」



時雨「・・・艤装を?まさかナイトメアシステムが?」



雪風「はい・・・搭載されています、今は凍結されていますけど」



驚いた・・・あんな物搭載した艤装がまだあったなんて。しかし凍結される様な物がなんで搭載されているんだろうか、明石さんに後で聞いてみよう。



時雨「雪風さんはナイトメアシステムについて何か知っているんですか?」



雪風「んーそうですね概要は聞きましたが、使ったこともあまり無いのでそこまでは」



時雨「そうですか・・・」



雪風「時雨?」



時雨「はい?」



雪風「敬語はなしにしましょうか?」



時雨「へ?・・・」



雪風「軍艦のころは呉の雪風、佐世保の時雨って呼ばれた仲じゃないですか」



時雨「うん、まぁ・・・」



雪風「じゃあ敬語はなしで、わかった時雨?」



時雨「あ・・うん雪風」



呉の雪風、佐世保の時雨って関係ない気が・・・・まぁいいか、僕も楽になるし



コンコン



扉を叩く音がすると今度は二人の女性が入ってきた。先程の雪風とは違い見た目は随分と大人だったが雰囲気はそうでもないように思えた。



???「ん?明石さん居ないの?」



???「フーム・・・それじゃ少し待ちましょうか?」



雪風「あ・・・瑞鶴と金剛も来たのね?」



瑞鶴「ありゃ?雪風じゃない早いのね・・・」



金剛「oh!雪風お久しぶりデース」



雪風「ええ・・・貴女達も呼ばれたの?」



瑞鶴「ええ、で・・誰?」



時雨「僕は時雨だよ、よろしく」



瑞鶴「へぇ・・・あの時雨か・・・私は瑞鶴、よろしくね」



あの時雨・・・さっきから気になるがいったいなんだろうか。少し馬鹿にされているようにも思えるが・・・



金剛「金剛デース、よろしくお願いしマース」



瑞鶴と金剛・・・この二人も雪風同様かなりの有名人だ。しかし幾ら大事な試験とはいえ海軍でもトップの3人を呼ぶとは・・・一体何が起こるのだろうか?



明石「あれ?みんな揃っちゃいましたか」



扉から顔だけ出した明石がそう言うと他の3人と軽い挨拶を交えた。



明石「ちょうど良いや、じゃあ皆こっちに入ってください」



そういって手招きすると僕達は開けられた扉の奥に入っていった。



特技研 研究室



明石「さーて・・・早速ですけど今回はですね・・・」



瑞鶴「ナイトメアシステムの性能評価試験でしょ?」



明石「そうそう・・・それで皆さんにはお願いしたいことがあってですね」



金剛「・・・なんでショー?」



明石「今回の試験では万が一に備えて警備をお願いしたいんですよ」



時雨「ふーん・・・」



明石「なのでその打ち合わせを・・・」



雪風「明石さん」



明石「はい?」



雪風「そんなもののためにこれだけのメンバーを揃えたんですか?」



明石「えっと・・・まぁ」



時雨「何かあるんでしょ?・・・ナイトメアシステムの暴走とか?」



明石「!?・・・時雨ちゃん」



瑞鶴「そうよね?・・・今回試験に参加する夕立は去年研究所を1つ破壊したんでしょ?」



明石「なぜそれを?・・・」



金剛「私達を舐めないことね?・・伊達に頭張ってんじゃないわ」



雪風「金剛・・・口調が」



金剛「oh////sorry!!」



明石「・・・やっぱりそうよねぇ」



時雨「少なくとも僕はナイトメアシステムを搭載してるんだから隠せるわけ無いじゃないか」



雪風「そうですよ」



明石「まぁ・・・ねじゃあ説明するわね」



そういうと明石は今回の試験の経緯と危険性を説明し始めた。



雪風「じゃあつまりは大本営の命令で暴走するシステムの試験を?」



明石「ええ、第1提督に反目する勢力が発言力を強くするためにね」



金剛「反吐が出るわね・・・それで第1提督派の艦娘で暴走を止めるわけ?」



明石「いえ・・・そこまでの意図はありませんよ、それに艦娘に派閥なんてありませんし」



瑞鶴「でも結果的にはそうなるわよ?」



明石「まぁ・・・ね」



時雨「?・・・第9鎮守府って第1提督派なのかい?」



瑞鶴「あれ?本人たちは知らないかもしれないけどそう思われているよ」



時雨「へぇ・・・」



しかし派閥抗争に巻きこまれるとは・・・面倒なことになったもんだ。しかし夕立か・・・久しぶりだけど元気にしているんだろうか。




個室



夕立「はぁ・・・」



窓の外は殺風景・・・まぁ窓があるだけいいか最近はナイトメアシステムの実験ばかりで嫌になる。



夕立「酒もタバコもないし、こんな形で禁煙と禁酒できちゃうなんてねぇ」



ふと薬指に嵌められた指輪に目を向ける・・・今日も綺麗に輝いていた。これのおかげでどれだけ救われたことか、提督は会いに来てくれるが毎日ではない・・・正直寂しい。



夕立「ぽいぽいっと」



なぞの掛け声で立ち上がると指輪にそっとキスをする。明日は性能評価試験・・・確実に失敗するだろう。それでもやらなければいけない。提督は・・・彼は泣いていた・・・申し訳ないと、ほれた女1人守れないなんてと。



夕立「大丈夫だよ・・・あなた」



指輪にむけてそっと語りかける。届くわけ無い、それでも伝えたい。あなたは悪くないとあなたは私を十分守ってくれたと・・・



夕立「もう・・・会えないかも知れないわね」



窓の外は殺風景・・・それでも眺めていたい・・だってその先には愛しのあなたが居るのだから。






第1鎮守府 執務室



届いた書類に目を通しているとナイトメアシステムの性能評価試験の資料に目が留まった。試験は明日だったか。



第1提督「・・・試験は強行か」



榛名「ええ・・・思慮のかけらもありませんね」



第1提督「確かにな・・・対策は?」



榛名「明石が警備に雪風、時雨、金剛、瑞鶴を配備して暴走にそなえています」



第1提督「十分すぎるな・・・だがそれほど警戒しているのか」



やはり試験は危険か・・・今は警備の4人に任せるしかないだろう・・・しかし人間と言うのはやはり愚かだ、深海棲艦の脅威にさらされているこんな時に派閥抗争など。私としては派閥なんて物作った覚えはない。無能な人間と言うのは保身ばかり上手いから面倒だ。



第1提督「こんなことでは・・・・今日までに死んでいった者たちに顔向けできんな」



榛名「・・・提督」



第1提督「榛名君?」



榛名「・・・その思い私にも背負わせていただけますか?」



第1提督「・・・ありがとう」



このくだらない派閥抗争に関しては近いうちに手を打たなければならない。だが今は、この体温に甘えようと思う。



第1鎮守府 演習室



雪風以下3名は配置についた。私は指揮室に研究者達と共に試験を見守る。ここからは夕立が艤装を装着しているところが見える。今日彼女はナイトメアシステムの性能評価試験に参加する。



第5提督「・・・慣れない物だね」



ただの独り言だ・・・周りの研究者どもはそんな独り言を無視して自分の仕事をこなしている。そんな中私は夕立の提督としてこの特等席で見学を許された・・・・下らない実に下らない。



第5提督「・・・本当に情けないな私は」



愛する人一人も守れない、情けない提督だ。政略のために自分の研究を、自分の愛する人を、自分の信念を守れないなんて・・・



演習場 



艤装の装着が完了し演習場のプールに足を進める。艤装は展開されているため私の足はプールには沈まず浮いている。



夕立「ふぅ・・・緊張するね」



性能評価試験・・・内容はナイトメアシステムを起動させて2つのフェイズを消化するものだ。フェイズ1は深海棲艦の装甲を再現したダミーを破壊する。フェイズ2は第4鎮守府の艦娘部隊と演習を行う。これら2つのフェイズを無事消化できれば試験は成功。ナイトメアシステムは実用化にむかって進みだす。だが今回は何か裏があるように思える。



夕立「・・・まぁ私にはどうしようもないけど」



私はただの被験者・・・何がこの試験に隠されてもただやることをやるしかないのだ。そんなことを考えていると演習指揮室しか試験の開始の号令された。もう一歩足を進める。



夕立「ナイトメアシステム起動・・・システムからのフィードバック・・・来る」



私の中のもう1つの記憶が・・・感情がこみ上げてくる。恐怖・・・そしてそれ以上の興奮。



夕立「・・・・あはっ!やることやっちゃうかぁ!!」



走る・・・演習場にダミーが配備された。数は5対・・・ちなみにダミーは戦艦型の装甲を再現されている様だが、今の私には関係ない。



夕立「主砲・・・いいや機銃で十分ね」



後部艤装につけられた機銃で一つ目のダミーを攻撃する。パタパタパタと心地良い音を鳴らし機銃は火を吹く・・・対するダミーもこれまた心地よい音を鳴らしながら穴を開けていく・・・穴がダミーを両断しダミーは二つに分けられた。



夕立「・・・ふん、次は主砲で行きましょ」



主砲を構え・・・撃つただそれだけ。今回は実弾ではなく模擬弾を使用している。それでもダミーを二つ貫通するには十分な威力だった。その威力と私の活躍に声が上がる・・・ふふん気持ち良いものだ。



夕立「さぁーてお次は・・・?」



ダミーに目線を向ける・・・不意にジジっと何かノイズが走ったような気がした。これは何かがおかしいぞ?



夕立「・・・こちら夕立、応答願いますか?」



・・・応答が無い?・・・なぜだ、このノイズは向こうのモニターにも確認されているはずだが。試験を継続させろということか?



演習室


第5提督「おい!モニターにノイズが確認されているぞ」



研究員達は私の声が聞こえていないと言う様に作業を続けている。おかしい・・・いつもなら中止はしないにしても事実確認に追われるはずだ。



第5提督「・・・お前達、聞こえていないのか?」



不意に指揮室の扉が開く・・・その先には第2鎮守府の提督が立っていた。



第2提督「ふん・・・みっともないな、騒がしいぞ?」



第5「・・・試験は中止してもらいたい」



第2「ダメだ・・・」



第5「なぜ?」



第2「・・・ここで試験を中止し失敗すれば私達の作戦が失敗するからだよ」



第5「作戦ですって?」



第2「ここでナイトメアシステムを実用化させ私達の鎮守府に集中配備・・・戦果を挙げ発言力を高める」



第5「・・・はぁ?」



発言力を高めるだと?こいつはいったい何を言っているんだ?



第2「・・・わかってくれたかい?」



第5「・・・わかりませんね?」



第5「だとしたらそれこそ試験は慎重にするべきだ」



第2「・・・やはり騙せないか」



第5「なんですって?」



第2提督はそう言うとぱちんと指を鳴らした。それはなにかの合図だったらしく周りの研究員達が私に掴みかかり動きを封じられてしまった。



第5「な・・・貴様!!」



第2「邪魔だ・・・貴女にはお引取り願うよ?」



抵抗は無意味・・・私は軍人だが元は技術屋だ訓練も受けていないし体も強くもないし、女性の力では何も出来ない



第5「く・・・すまない夕立私は」



引きつられ指揮室から追い出された私は力なく叫ぶことしか出来なかった。




演習場



時雨「ふーんすごいもんだね」



演習場では夕立による性能評価試験が行われている。これはすごい物だ。システムを発動させた夕立はダミーを文字通り木っ端微塵にしていた。



雪風「・・・危険な匂いがする」



瑞鶴「へ?」



金剛「そうね・・・この後予定されている第4鎮守府との演習とかイヤーな匂いがプンプンするわ」



雪風「口調」



金剛「メンドイ・・・みんななら別にいいじゃん」



雪風「そういって外人キャラ始めた自分のせいじゃない」



時雨「大変だね・・・キャラ作りって」



金剛「あぁ・・・わかる?大変なのよ」



瑞鶴「はぁ・・・まったく集中なさいよ」



瑞鶴がため息をつくようなしょうもない話をしていると夕立がダミーの破壊を終わらせた。ここまではまだ暴走していないようだが・・・



雪風「ダミーの破壊が終わったわ・・・ん?」



時雨「なんだろう少し様子が変だね・・・臨戦態勢をとろうか」



瑞鶴「・・・はいはい、ねぇ金剛は向こうの騒ぎを確認してくれない」



通信端末で話していた瑞鶴が金剛に指示をとばす。



金剛「why?」



瑞鶴「ん?提督からの指示よ・・・ちょっとした荒事だからね」



金剛「All right・・・テイトクー通信変わったヨー」



金剛は瑞鶴から通信端末を受け取ると先程とはうってかわった外人キャラを演じる。その姿を見た瑞鶴はまた1つため息をついた。



時雨「・・・大変だね」



瑞鶴「え?・・・あぁでも慣れたわよ」



雪風「瑞鶴、時雨、出てきたわよ」



雪風がふいに声を上げた。彼女が指をさした先には第4鎮守府の艦娘達がいた。



時雨「あれが・・・第4鎮守府の艦娘?」



演習場のゲートから現れたのは3人の女性・・・なんというか艦娘らしくない気がするが、どうしたのだろうか・・・



瑞鶴「・・・?見たことない人ばっかりね」



雪風「違う!、あれは艦娘じゃないわ」



時雨「でも・・・な!?」



艦娘じゃない・・・あれは、まるで深海棲艦の様な艤装は・・・



雪風「・・・オリジナルがどうして?」



瑞鶴「オリジナル?・・・なんなのそれ」



時雨「深海棲艦のコアを埋め込んだ、対深海棲艦兵器・・・」



瑞鶴「・・・?」



雪風「艦娘とは違う別の可能性にかけた・・・人類2つ目の希望」



瑞鶴「雪風・・・何を言ってるの?」



雪風「・・・第1提督につなげなさい」



瑞鶴「雪風?・・・いったい」



雪風「早く!!」



今までの雪風とは違う・・・なんと言えばいいのか。気迫・・・凄味がある。瑞鶴もその凄味に押されてしまい言うがままに通信機器を雪風に渡した。



瑞鶴「・・・時雨ちゃん?」



時雨「なに?」



瑞鶴「・・・オリジナルって何なの?」



時雨「僕は詳しくはないけど・・・さっき言ったとおりだよ?」



瑞鶴「対深海棲艦兵器?・・・でもなら味方なんでしょ?」



時雨「いや・・・少なくともその1人とうちの提督と交戦したことがあるんだよ」



瑞鶴「そっちの提督が?・・・だとしたら彼女達は?敵なら簡単に侵入出来ないはず・・・」



流石は瑞鶴・・・このような事態にも係らず冷静さを失わずにいるとは。



瑞鶴「・・・キナ臭いなぁ」



時雨「どちらにしても・・・今は動けないね」



瑞鶴「ええ・・・通常弾に換装しときましょ」



時雨「そうだね・・・」



オリジナルが現れた以上何が起こるかわからない、いつでも戦えるように準備は怠らずに行こう。



第1鎮守府  地下室



第5「くっ・・・」



ここはどこか・・・連れ去れる途中、気を失わされたから何処に運ばれたかもわからない。だがこのままでは夕立が危ない、第1提督に助けを求めなくては。



第5「地下室だな・・・入り口は・・・閉められているか」



この扉は金属製、蹴破るには力がたりないどうにかして外に知らせなければ・・・



第5「誰か!!・・・おーい!!」



古典的だが大声を出す、大きな音を立てる有効な手段だが今回は無駄だった様だ。



第5「・・・・クソが!!」



これはマズイ・・・携帯端末も奪われ打つ手は無い・・・運に任せるしかないのか。目の前にある憎たらしい扉をにらめつけながら立ちすくむことしか出来なかった。



第1鎮守府 廊下



前方に第2提督の部下を発見・・・奴らが第5提督を連れ去った犯人だ・・・ここは普通に話しかけて態度から探ってみよう。



金剛「ヘーイ!!そこのオニーサン達ぃ!!」



掴みは完璧



第2部下1「ん?なんだお前は?」



金剛「ネー第5テートクさんを探してるんだけどネー何処にいるか知ってルー?」



第2部下2「・・・しらんな,ほかを当れ」



妙な間があったな・・・怪しい。こいつは何か知っているぞ



金剛「ムーそんなこと言わずにサ?・・ね-ぇー」



こうなったら色仕掛け、腕に抱きつき胸を押し当て顔を近づける・・・・これで並みの男は堕ちるはず



第2部下1「・・・知らん物は知らん」



少しぐらついたな?・・・もっと攻めてみよう



金剛「ふーん本当の事教えてくれたらぁ・・・スコーシならイイことしても・・・・OKヨ?」



決まった・・・・これで口を割るはず



第2部下2「面倒だな・・・あっちいけよこのアマァ!!」



プツン・・・そんな音がした。



金剛「・・・あ?」



部下1「・・・?」



腕を伸ばす・・・その先には第2クソ提督の部下の顔がある。



金剛「テメェ・・・さっさと吐きゃよかったものをなぁ!!」



伸ばされた腕は確実に部下の顔を捉える・・・振りぬいた腕には赤黒い血がついていた。



部下1「ぶがッ・・・て,てめぇ」



金剛「・・・うらぁぁあ!!」



そのまま右足を軸に体を回転させ左足でもう1人の部下の腹を蹴り飛ばす・・・部下は吹き飛び壁に叩きつけられた。



部下2「ぬぁ!!」



部下1「クソッ・・・てめぇ!!」



金剛「丁度いい・・・」



私目掛けて伸びた右腕を取り、逆方向にへし折る、部下1は悲鳴を上げ膝を折った・・・部下2が後ろから組み付く右腕を取る、動きを封じられた形なるが問題ない。なにせ鍛え方が違う、そのまま右腕を振りぬき、部下2を投げ飛ばした。



金剛「おい・・・今はなしゃあ腕一本で済ましてやるぞ?」



部下1「・・・だれがはなッがぁあ!!」



左腕に手を伸ばしへし折る、うむイイ感じに捻じ曲がった・・・しかし話せばいいものを。



金剛「これで左腕は使いもんならねぇな?・・・さぁて?」



部下1「・・・・クソ・・・がぁあ!!」



膝蹴りをあばらに打ち込んだ・・・また大きく悲鳴を上げる・・・まったく騒がしい奴だ。



金剛「あばら3本・・・次は何処がいいか?」



部下1「フー・・・フー・・・こんなことしても・・・あがぁぁあ!!」



金剛「・・・面倒だなぁ、まぁもう1人いるし」



背骨に膝を食い込ませ両腕を引っ張る・・・そのまま力を入れる。



部下1「がぁぁぁぁっぁわかった・・・わかったからぁぁぁぁぁぁ!!」



金剛「・・・・で?第5提督は?」



やっと話す気になってくれたので力を抜く



部下1「この先の・・・地下室だ」



金剛「そ・・・ありがと」



話してくれたので両腕を離す・・・ん?案内してもらわないとわからないか・・・では案内してもらおう幸いこいつは足は無事だ。



部下1「はぁ・・・・はぁ・・・え?」



金剛「案内してもらうわよ?・・・歩けるでしょ」



服の襟を掴みぶっきらぼうに持ち上げ、立たせる。・・・逃げれないように襟を掴めばいいか、それでは早速案内してもらおう。



金剛「・・・きりきり歩く!今度はホントにやるよ?・・・」




第1鎮守府 執務室



第1提督「・・・金剛君からか?」



榛名「はい、第5提督の救出に成功したそうです・・・ですが」



報告そのものは良いものの筈だが・・・なにか歯切れが悪い



第1提督「なんだい?」



榛名「救出の際に第2提督の部下を負傷させてしまったようで」



第1提督「・・・良かったじゃないか殺さなかっただけでもね」



彼女の性格からすると正直1人ぐらい殺してしまうと思っていたが・・・負傷だけですんだならかなり良い方である。それでも榛名君からすると悩ましい部分であるようで深いため息をついていた。私としてはもう1つの方が悩ましいのだが・・・



第1提督「問題はもうひとつ、雪風からの報告でね」



榛名「なんでしょうか?」



第1提督「第4鎮守府の艦娘部隊がオリジナルだと」



榛名「オリジナル!?・・・ですがあれは」



榛名君も驚いているか・・・それも仕方あるまい。あの時のことを知っている私達には考えられないことだから。



第1提督「ああ・・・少し前に第9提督が航空戦艦らしきオリジナルと交戦している、つまりは・・・」



榛名「他の艦種が生きており・・・何らかの目的で行動していると」



目的・・・生き延びたオリジナル達の目的など考えるまでも無い。



第1提督「その通りだ・・・」



榛名「・・・どうされますか?」



第1提督「第3提督が今こちらに来ている、彼女に対応してもらうよ」



榛名「トロワさんが?」



第1提督「ああ・・・」



相手がオリジナルでは艦娘では太刀打ち出来ないかもしれない・・・恐らく現状オリジナルと戦えるのは彼女と第9提督、あとは極一部の艦娘がなんとかといったものか・・・何にしても今の状況は決して良いとは言えない。



第1提督「・・・後は上手くやってくれる事を願うしかないか」



第1鎮守府 演習場



第4鎮守府の艦娘部隊と夕立の演習が始まった。1対3・・・数の上では不利・・・しかしこちらはナイトメアシステム起動中の夕立で相手はオリジナルだ。全く読めない・・・まず演習自体まともに行われるのかすらわからないのだ。



時雨「動いた!」



夕立が突撃する。敵は3体・・・見た感じでは戦艦と航空巡洋艦・・・もうひとつは軽空母か。制空は取られる、火力は劣る・・・勝ち目はないだろうが。



瑞鶴「あいては・・・動かないの!?」



瑞鶴の言うとおり敵の3人は動かない・・・艦載機も出さず、主砲も構えず、ピクリとも動かない。



雪風「・・・夕立ちゃんの動きがおかしいわ」



3人目掛けて突撃した夕立は3人の前に立つと動きを止めてしまった。



時雨「止まった?・・・まさか暴走?」



瑞鶴「止めるしかないわね・・・指揮室!状況を!!」



指揮室からは瑞鶴に連絡は無いようだ・・・どういうことだ?あれが予定通りなのか?



瑞鶴「・・・いったいなんなのよ?」



雪風「嫌な予感しかしない・・・艤装展開よ!!」



敵かもしれないオリジナルと暴走するシステム搭載した夕立が一緒にいる・・・この状況はどう考えても危険だ。



時雨「うん、夕立の確保は僕がやるよ」



雪風「お願い・・・瑞鶴!?」



瑞鶴「はいはい・・・援護するわ」



僕達3人が止めようと動き出した時だった。夕立が指揮室に向き直り主砲を撃った。指揮室は模擬弾直撃を受け爆発を起こした。



時雨「な!?・・・」



瑞鶴「突っ込みどころばかりね!?全く」



雪風「そうね・・・オリジナルも動き出したわ」



雪風の言うとおりだ。一緒にいたオリジナル達も鎮守府に対して攻撃を始めた。このままでは第1鎮守府が危険・・・早く止めなくてはならない。



夕立対時雨1



夕立は恐らくナイトメアシステムの暴走によって攻撃をしているはず・・・ならばシステムを破壊すれば止まるはずだ。僕は出来るだけ近づく・・・システムを破壊する為には接近しなければならない。



時雨「・・・全くせっかくの再会がこれじゃあね」



主砲を構え撃つ・・・まずは牽制だ。相手の動きを少しでも鈍らせなければ



ユウダチ「・・・?」



主砲は全て至近弾・・・こちらは模擬弾ではなく実弾のため衝撃は十分な筈だ・・・



ユウダチ「・・・フン」



無意味・・・今の夕立には至近弾などなんとも無いようだ。衝撃を無視してこちらに突っ込んでくる。



時雨「くっ・・・なんてパワーだよ」



艤装のパワーも上がっているようだ。しかし相手はあのダミーを機銃で破壊するほどの火力だ・・・一発も当れない、もし当れば二階級特進ものだ。



時雨「・・・こうなったら!」



ユウダチ「!?」



時雨「格闘戦だぁ!!」



姿勢をさげスライディングのように足を前に突き出す・・・ここでは蹴りを入れず通りすぎざまに主砲で殴打する。



ユウダチ「!?・・・グゥ」



夕立も格闘を仕掛けてくると思っていなかったようで防御が遅れ大きく体制を崩された形になった。



時雨「・・・はぁ、無傷だね」



ユウダチ「・・・フフ」



夕立は笑顔、体制は崩したがダメージはない・・・このままでは打つ手が無くなるか。しかしどうしたものか・・・




対オリジナル



雪風「数の上では不利・・・作戦は?」



瑞鶴「・・・この距離じゃ何か仕掛けるのもきついし・・・頑張るとか?」



雪風「良いわねぇそれ、私達の作戦は”頑張る”でいきましょ」



そう言うと私達は武装を構えた・・・まぁこの状況でやれることは多くは無い。第1提督が言っていた援軍を待つしかないのだ。



瑞鶴「艦載機出すわよ!!」



瑞鶴が弓を構え矢を引き放つ・・・・矢は艦載機となってオリジナルに向かって飛び出していく。しかし何かがおかしい。



雪風「?・・・艦載機が微妙に少ない?」



瑞鶴「ん?あぁちょっとした仕掛けをね?」



先程は仕掛けるのはきついとか言ってたが・・・何をするつもりなのか。



瑞鶴「よーし・・・じゃあ突撃ね、先手必勝で行くわよ?」



雪風「突撃?・・・・あぁ、まずは戦艦ね?」



瑞鶴「はーい」



瑞鶴が何をするつもりかわかった・・・何のことは無く作戦なんて呼べる物じゃなかった。しかしこの状況では有効な手ではある。



戦艦「あら?・・・こっちに突撃してくるのね?」



航巡「そうですね・・・軽空母?どうします?」



軽空母「交戦は許可されているからな・・・ん?」



戦艦「どうしたの?」



軽空母「そうか・・・やるぞ、沈める」



航巡「そうですか・・・うふふ楽しめそうですね?」



戦艦「そうねぇ・・・お姉さんも楽しんじゃおうかな」



第1鎮守府 特技研



秋津州「ん・・・調整終了ね、扉オープンっと」



スイッチ1つで重厚な扉が開かれる・・・その先には1人の女性が立っていた。



???「・・・・終わったの?」



秋津州「ええ・・・調子はどう?」



???「ん?・・・・特に問題はなさそうね?」



流れる黒髪からふんわりといい香りがする・・・ちゃんと手入れされているようだ。



秋津州「ふんふん・・・じゃぁ早速艤装を装備して?」



???「何これ?・・・セーラー服?」



嫌な顔をしたな・・・まぁ仕方ない学生でもないのに着たくも無いだろう。私もそうだし。



秋津州「んー似合ってるかも」



???「あ?・・・馬鹿にしてんの?」



秋津州「冗談本気にしないでよー」



???「で?」



秋津州「うん?」



???早速艤装つけさせたんだからなんかあるんでしょ?」



秋津州「あーうん早速出撃だよ・・・任務はこれね」



彼女は端末を受け取るとそそくさと歩き出した。



???「ういうい・・・じゃあ行ってくるね」



秋津州「うん、あ・・・名前」



???「名前?」



秋津州「阿賀野よ・・・これが艦娘としての名前」



阿賀野「・・・3よりはマシね」



ありがと・・・そう言って彼女は部屋を出て行った。




第1鎮守府 執務室



演習室では雪風たちが戦っているころこちらでは新たな問題が起こっていた。



第1提督「・・・未確認の機影?」



榛名「はい・・・通常の深海棲艦とは違う反応です」



第1提督「オリジナルでもない?」



榛名「オリジナルも含まれているようですが・・・」



含みのある言い方・・・余程のことがあるのだろう。



第1提督「が?・・・」



榛名「・・・特殊艤装に似た反応もあるんですよ」



第1提督「・・・似た反応?」



榛名「はい、私はこの反応に覚えがあります・・・これは」



第1提督「ありえん・・・あれは・・・プロトタイプは厳重に封印されているはずだ」



相手を考えるとこちらの艦娘だけでは太刀打ちできないかもしれない・・・ここは彼を呼ぶしかない。



第1提督「第9提督に繋げるんだ・・・彼の力も必要になる」



榛名「はい・・・第9鎮守府に繋げます」



今日は不思議なことばかりだ・・・ナイトメアシステムの意図的な暴走にオリジナルの出現・・・そしてプロトタイプの反応。人類の希望が今日この日に揃い鎮守府に攻めてくるとは・・・




夕立対時雨2



時雨「はぁ・・・はぁ」



相手の攻撃をかわすので精一杯だ、こちらからの攻撃は効かないし相手の動きは速いし・・・このままではやられる。



ユウダチ「・・・フン」



時雨「・・くそ」



夕立が主砲構えるた時・・・目の前が少し揺らいで見えた。



時雨「こんなときに・・・う!?」



主砲が発射された、間一髪で回避できたが完全に態勢を崩されてしまい尻餅をつく形にってしまった。これでは次の攻撃がよけれないだろう。



時雨「はぁ!!・・・ええい」



何とか体制を立て直すがすでに遅い・・・夕立の主砲がこちらを向き今にも撃とうとしていた。



時雨「・・・これは」



この感じはあの時と同じ・・・ナイトメアシステムの起動音声だ。夕立が主砲を撃つ音が聞こえる・・・意識が遠のく・・・これはマズイぞ。



時雨「ぁあ・・・・守れないのか・・・白露だけじゃなく夕立までも・・・・」



・・・・・・嫌だ



・・・・・・嫌だぁ!!



・・・・・・・・守れないなんて嫌だぁぁぁぁ!!!



ナイトメアシステム「装着者の感情数値が規定値を超え、これ以上は危険と判断されました・・・装着者保護のため『ナイトメアシステム』を起動します」



シグレ「・・・・フン!!」



夕立が放った主砲を握りつぶす・・・手のひらに焼ける感触があるが痛みは感じない。感覚が麻痺しているようだ。



ユウダチ「?」



シグレ「さて・・・これで互角だね」



ユウダチ「・・・フン」



夕立は機銃をばら撒きながら距離を取る。牽制のつもりか・・・先程とは違い機銃などでは僕は止められない。



シグレ「そんなものではぁ!!」



ユウダチ「くっ!!」



突撃・・・ナイトメアシステムの恩恵は装甲だけではない、スピードも飛躍的に向上している。そのスピード前には夕立もなすすべもなく接近許してしまう。



シグレ「まずは動きを止めるよ?」



主砲に通常弾を装填し狙いを定める・・・足を1つ破壊してしまおう、それぐらいなら入渠でなんともなる。



シグレ「いけぇ!!」



ドォンという轟音と共に砲弾が飛び出す。砲弾は夕立の足を捉え動きを抑えることに成功した。



ユウダチ「!?・・・チッ」



1つ舌打ちをするとねじ曲がった足を強引に元の形に曲げ戻す。



シグレ「ふん・・・簡単にはいかないか」



足を止めることは難しいようだ・・・こうなったら接近してナイトメアシステムそのものを破壊するしかない。だがシステムの中枢は何処なのだろうか?



シグレ「流石に艤装を破壊し尽くすのはね?」



夕立は主砲と魚雷で厚い弾幕を張っている・・・いくらこちらもナイトメアシステムでパワーアップしてるとは言えこれは当れない。あまり思案している暇は無さそうだ。



明石「時雨ちゃん?」



そんな時だ・・・明石さんから通信が入った。



シグレ「明石さん?」



明石「よかった・・・暴走はしてない様ね、状況は?」



助かった。明石さんなら暴走を止めるいい方法がわかるかも知れない。



シグレ「暴走を止める方法は?」



明石「あるわ・・・それはね・・・」



歯切れが悪いな、こちらは夕立の猛攻を凌いでいるんだあまり余裕は無い。



シグレ「・・・はっきり言ってくんないかなぁ!?あまり余裕無いんだよ」



明石「・・・夕立ちゃんごと艤装を破壊することよ」



シグレ「・・・他には?」



明石「・・・あることはあるけど現実的ではないわよ?」



シグレ「そんな事は聞いてない・・・ぅ!!」



少し被弾したか・・・主砲ひとつなら問題ないだろう。



明石「夕立ちゃんの艤装は試験機だから強制解除が出来るのよ」



シグレ「強制解除?・・・」



明石「ええ・・・指揮室からの無線と艤装の左側部のレバーでね」



シグレ「指揮室は・・・無理だねてことは?」



明石「肉薄してレバーを下げるしかないわ」



シグレ「そうか・・・」



確かにこれなら夕立に危険は無いかもしれない・・・・しかしかなり難しいぞ。ある程度の犠牲も覚悟しなければならないか。



ユウダチ「・・・あぁ!!」



シグレ「く!!・・・考える暇も無いな」



凌ぐのは限界だ・・・一気にやってしまうしかない。一呼吸すると僕は夕立に向かって突撃する。



瑞鶴対軽空母



瑞鶴「艦載機会敵!!」



そう叫ぶと私は艦載機の操作に集中する。私はこの演習場全体をイメージし私と雪風とオリジナルたちを配置していく・・・・見えたぞ。こちらの艦爆は軽空母の艦載機と会敵しておりすべて捕捉されている。



瑞鶴「その艦爆はくれてやるわ・・・その代わりに」



もう1つ弓を構える。この矢には零戦がセットされている。



瑞鶴「あんたの艦載機を落とさせてもらうわよ?」



矢を放つ・・・放たれた矢は光を放ちゼロ戦へと姿を変えた。艦載機は艦爆に集中し過ぎたため急に現れたゼロ戦になすすべもなく撃ち落とされていった。



瑞鶴「ここまでは順調・・・相手はどう出てくるかね?」



相手の軽空母は動かない・・・警戒を密にしたほうがよさそうだ。相手も何か企んでいるはずだ。



軽空母「・・・やるもんだな艦娘とやらは」



瑞鶴「なぁ!?どうして声が・・・」



声が聞こえる。しかもそれは外側からではない・・・自分の頭の中から響くように聞こえる。



軽空母「艦載機を操作する脳波でな?・・・直接話させてもらう」



瑞鶴「・・・悪趣味ね」



軽空母「興味を持ったのさ」



瑞鶴「はぁ?」



なんてことを言うのだこいつは・・・なにかの作戦か?



瑞鶴「何のつもりよ?ナンパ?それとも・・・」



軽空母「ナンパだな」



瑞鶴「爆撃するわよ?」



軽空母「・・・それもいいな」



・・・全くこいつは何をしたいのだ?読めないな。



瑞鶴「戦う気あるの?」



軽空母「無い」



はぁぁっと大きくため息をつく・・・今日は突っ込み所が多すぎる。なんというかもう・・・



瑞鶴「・・・で?何の用なの?」



軽空母「投降したいのさ・・・君達の所にね」



瑞鶴「・・・信じられないわね」



投降だと?・・・オリジナルと言うのは元は対深海棲艦兵器として開発されたらしい。なら深海棲艦と戦う海軍の仲間になりたいと思うのも当然か・・・



軽空母「・・・」



しかしならば脳波で直接私だけに言う必要はない・・・艦載機で他のオリジナル攻撃すれば良いだけだ。だがこいつは私だけにわかるように言ってきた。



瑞鶴「・・・でも」



ならば罠か?・・・投降を装いこちらを攻撃するつもりか?・・・ならば他の二人が連動して動くはず・・・



軽空母「・・・」



瑞鶴「信じるわ・・・あんたのこと」



雪風対オリジナル



瑞鶴は上手く相手の目を引いてくれたようだ。戦艦と航巡は艦爆の迎撃に気を向けている。恐らくはたかが駆逐艦とでも思っているのだろう・・・しかしそれは大きな勘違いだ。



雪風「・・・戦艦なんて私からすればただの的よ?」



主砲、魚雷の安全装置を解除。まずは主砲を撃つ・・・



戦艦「う?・・・なぁに?牽制のつもりかしら」



流石は戦艦・・・この程度ではビクともしないか。だがこれで終わりではない。



雪風「さぁ・・・何度でも行くわよ」



主砲を打ち続ける。・・・駆逐艦の主砲でも同じ部位を連続して攻撃すればダメージは通る。



戦艦「・・・なによ、うざったいわねぇ!!」



相手は主砲の一斉射でしとめるつもりだ・・・だがそのときこそが好機。



雪風「・・・一手間違えたわね?」



戦艦「はぁ!?・・・生意気だなてめえ!!」



見事に相手は挑発に乗り突撃してくる。隙だらけだ、しかも爆弾を抱えたままだということに気づいていない。



雪風「・・・知ってる?戦艦の主砲ってよく爆発するのよ?」



戦艦「・・・あ?」



狙いは敵戦艦の第3砲塔・・・先程の攻撃で装甲を削られ、大きな砲弾を装填したままの。



雪風「もらったわ」



砲弾はまっすぐ第3砲塔に飛んでいく。直撃・・・第3砲塔は大きな音を上げながら大爆発を起こし敵の戦艦は声にならない悲鳴を上げ吹き飛んだ。



雪風「・・・瑞鶴?」



おかしい・・・瑞鶴からの支援攻撃が飛んでこないぞ?これではまだ中破どまりのダメージしか与えられていない・・・



雪風「瑞鶴は?・・・」



視線を向けると瑞鶴は軽空母と戦闘に集中している様だった。思ったよりも相手がしたたかだったらしい・・・互いに有効打を与えられていない。



戦艦「・・・はぁ・・・はぁ」



航巡「まったく・・・調子に乗るからですよ?」



戦艦「・・・言い返せないわね」



雪風「くっ・・・1対2は流石にね」



中破したとは言え戦艦と航巡が相手では流石に不利と言うしかない。援軍が来るまでなんとか持ちこたえられだろうか?・・・いや、やるしかない。



航巡「!?・・・相手に増援ね」



戦艦「ほう?・・・数は?」



航巡「・・・1人?反応は軽巡ね」



戦艦「舐めてるのかしら?・・・さっさとしとめて売り込むわよ?」



航巡「そうですね・・・!?こいつは・・・警戒を!!」



オリジナルたちが何か騒いでるようだ。増援がきたのか?しかしそれにしても驚きすぎに思えるが。



雪風「こちらにも反応・・・これは!?」



阿賀野「丁度いいタイミングって奴ね?」



目の前に現れたのは長く綺麗な黒髪をなびかせた艦娘だった・・・しかしあの顔は見たことがあるぞ?・・・まさか!?



雪風「トロワ!?・・・どうして?いつもの艤装は?」



阿賀野「おぉ!雪風じゃない久しぶりね?これが私の新しい艤装よ?」



雪風「艦娘になったの?・・・オリジナルのあなたが?」



阿賀野「ええ!・・・最新鋭軽巡『阿賀野』よろしくね?」



航巡「あれは・・・軽巡洋艦?」



戦艦「ええ・・・これは不味いわね」



航巡「なぜ?・・・たかが艦娘がひとり増えただけじゃ?」



戦艦「あいつはオリジナルよ?・・・私達と同じね」



航巡「!?・・・確かにそれなら慎重にならなければ」



戦艦「・・・ここは撤退しましょう、航巡!!信号弾を!!」



航巡「は、はい」



阿賀野との軽い挨拶を終えた時だった。敵の航巡が信号弾らしきものを撃ちだした。



雪風「!・・・あれは」



阿賀野「信号弾?・・・まさか撤退する気?」



まさにその通りだった。信号弾が屋根を貫通すると鎮守府のいたるところから爆発音が響き、妨害電波が発せられた。



雪風「な!?・・・これは敵襲?」



阿賀野「うそぉ!!大本営なのよ!?」



しかしオリジナルを逃がすわけには行かない・・・そのとき強烈な閃光が私達を襲った。



雪風「ぁあ!!・・・閃光弾かぁ!!」



阿賀野「してやられたわね・・・」



・・・前が上手く見えない、これではしばらく動けそうも無いか。それにしても一体どうなっているのだ・・・意図したシステムの暴走にオリジナルの襲来、そしてもっとも防備の厚い大本営に敵襲だ。



瑞鶴対軽空母



軽空母が合図してくれた為私は閃光弾を食らわずに済んだ。しかし戦うふりと言うのも大変だ・・・脳波で指示しながらだったからかなり疲れた。ふぅ・・・軽く息を吐くと目の前に立つオリジナルに視線を向ける。



瑞鶴「・・・あんた名前は?」



軽空母「・・・軽空母だ」



瑞鶴「・・・・本名は?」



軽空母「忘れた・・・そんなものはな」



忘れた?・・・キザったらしい奴だ。まぁ言いたくないんだろう・・・ならば聞くのも野暮って奴だ、話を進めよう。



瑞鶴「あそ・・・じゃあお仲間も逃げたことだし投降してもらうわよ?」



軽空母「ああ・・・武装は解除しよう、後は縛るなり何なり好きにしてくれ」



瑞鶴「はいはい・・・じゃあとりあえず拘束はさせてもらうわね?」



軽空母が艤装を解除していく・・・こちらはとりあえずひと安心だが時雨の方は大丈夫だろうか・・・心配だ。




シグレ対ユウダチ3



僕は攻めあぐねていた。相手とこちらの能力が互角なため強引に接近したり出来ないのだ。



シグレ「・・・くそ!」



対して夕立もおそらく同じ思いのはずだ・・・なにか隙が出来れば。



ユウダチ「・・・・さっさと堕ちなさいよ!!」



流石に痺れを切らし突撃してくる・・・これはチャンスか?



シグレ「・・・はやいな、回り込めないか」



その時だった・・・演習場の周りから複数の爆発音が聞こえ強烈な振動が襲った。



ユウダチ「う!?・・・くそぉ!!」



オリジナルたちは撤退のために爆弾仕掛けていたらしく・・その爆弾の破片が偶然夕立に振り注いぎ、夕立は身を守るため姿勢を崩した。



シグレ「!これは!!」



皆まで言うまい・・・このチャンスは逃がせない。一気に速度を上げ突撃する。



ユウダチ「くそ!・・・」



夕立は抵抗する。機銃掃射・・・主砲副砲を発射し残った魚雷も全て撃ちつくす。だが姿勢が崩れた状態では狙いは甘くかする程度だ。



シグレ「うぉぉぉぉぉ!!」



ここまできたらやることは1つ・・・何があっても突き進むことだ。またひとつ距離をつめる。その時だ主砲が腹部に直撃する。



シグレ「ぁ・・・うぁ!!」



ダメだ・・・此処で引けば確実に負けてしまう。引いてたまるか・・・・絶対に!!



ユウダチ「う!?・・・こいつ引かないのか?」



夕立の射撃はだんだん正確になっていく・・・また1つ、また1つと被弾する。



シグレ「・・・後一歩・・・後・・・一歩だぁ!!」



ユウダチ「く・・・これで・・・沈め!!」



僕の目の前に魚雷が飛び込んできた・・・今直撃すれば間違いなく轟沈する。



シグレ「・・・う!?」



魚雷が顔面にぶつかる・・・なんだ?なにも起きないぞ?



ユウダチ「な!?・・・こんな時に不発弾なんて!??」



水面を蹴り上げる。



シグレ「もらったぁ!!」



飛びかかる。



ユウダチ「え?・・・」



僕は夕立に抱きつく形で密着し左側部にあるレバーに手をかけた。



シグレ「ううぅ!!」



力を振りしぼり思いっきりレバーをおろす。



ユウダチ「な?・・・なにを・・うう」



艤装は強制排除され演習場のプールの底に沈んで行った。夕立はがくんと崩れ落ちるが沈まないように抱き寄せる。



夕立「・・・・ん?・・・し、時雨?」



シグレ「夕立?・・・無事・・・なんだね?」



夕立「うん・・なんとか」



時雨「そうか・・・なら・・・よかった・・・よ」



夕立「?・・・時雨!?そんな!!」



意識が遠のく・・・・夕立の声がだんだん小さくなっていく・・・これはやばそうだ・・・・



時雨「・・・・」



夕立「時雨!!・・・ちょっとぉ!!・・・目ぇ開きなさいよ!!」



夕立「嫌ぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!」



大本営 第1鎮守府海域



第1提督からの要請で俺達は第1鎮守府正面海域に出撃した。第1提督の話ではプロトタイプとオリジナル、深海棲艦の反応が確認されたらしい。プロトタイプ・・・それは人類が作り出した対深海棲艦決戦兵器、人類一つ目の希望だ。



提督「・・・・あれか」



雲龍「そのようね・・・確かにはじめてみる反応ね」



反応のあった地点には3人の人影がみえる。此処から見えている以上向こうにも見えているはずだ。



提督「・・・近づこう」



雲龍「?・・・・危険よ」



普通ならそうだろう・・・だが今回は危険はないとわかるのだ。なんというか、勘なんてものじゃなくまるで危険はないと知っている様に。



提督「大丈夫だ・・・・」



雲龍「でも・・・・!?反応が動いた?」



提督「・・・話し合うつもりだな」



コマンダー「そのとおりだよ」



雲龍「え?・・・なぜ?・・・・」



そこにいたのはプロトタイプの艤装を着込んだの男が1人とその後ろに以前戦ったオリジナルと駆逐艦の姫タイプだった。



航空戦艦「コマンダー危険です・・・ここは私が」



駆逐棲姫「大丈夫ダヨ・・・コマンダーヲ信ジテ」



コマンダー「そうだ・・・彼にはわかっている私達に戦う気が無いことが」



コマンダー・・・そう呼んだな?ならば彼は深海棲艦またはオリジナルたちを指揮していることになるか。



提督「・・・こんなとこに何の用だ?」



コマンダー「私の部下が君達に迷惑をかけたようでね・・・少しお詫びに」



提督「指揮官自らが?・・・律儀な奴だね」



コマンダー「指揮官も信用が大事だからね?」



雲龍「!?・・・」



提督「・・・ほう?あんたもそう思うのか」



コマンダー「ああ・・・それともう1つ」



提督「ん?・・・」



コマンダー「これだ・・・」



そういうとコマンダーは古びた携帯端末を差し出した。



提督「これは?」



コマンダー「情報さ・・・君達が喉から手が出るほど欲しがるものさ・・・」



提督「そうか・・・」



コマンダー「では・・・失礼するよ?」



提督「・・・コマンダー」



コマンダー「ん?」



提督「なぜあんたがプロトタイプを持っている・・・・あれはもう1つしかないはずだ」



コマンダー「・・・今はまだ知るべき時ではないよ」



提督「!?・・・なんだと?」



コマンダー「・・・どうせまた会うことになる、答えはその時に教えてあげるよ?」



提督「・・・・」



コマンダー「では・・・また会う時まで死なないでおくれよ?」



提督「当たり前だ・・・その答えを聞くまで死んでたまるか」



コマンダーはニヤリとすると去っていった。俺には状況が理解できない・・・それほどありえないことが起きているのだ。今はただコマンダーたちを黙って見送る事しか出来なかった。



第2鎮守府 執務室



第2提督「・・・ふむ」



今回の試験で夕立は暴走、演習場は破壊され警備していた艦娘の1人を意識不明の重体にまで追い込んだ。その後オリジナルの艦隊が第1鎮守府を襲撃・・・損害を与えることに成功した。オリジナルを1人失うことになったがそれでも十分な戦果だ。



????「よぉ・・・」



第2提督「む?・・・正規空母か」



正規空母「ああ・・・これで俺達の力わかってくれたか?」



第2提督「ああ・・・受け入れよう君達を、そして共に復讐をやり遂げようではないか」



正規空母「ああ・・・愚かな人類どもにな?」




第1鎮守府 医務室



時雨「・・・ん?」



此処は・・・医務室か?そうだあの後意識を失ったんだった・・・夕立は無事なんだろうか?



夕立「!?時雨!!目覚ましたのね!」



時雨「夕立?・・・よかった無事だっただね?」



夕立は一瞬キョトンとしたがすぐに鬼の様な形相になり平手打ちを飛ばしてきた。



時雨「痛!!ちょっと何するんだよ!?」



夕立「馬鹿!!心配したのはこっちよ!!」



夕立は涙を溜めながらポカポカと言う擬音が似合いそうな叩き方で僕を叩いてくる。しかし僕はまだ怪我人だ正直かなり痛い。



時雨「夕立!悪かったからやめて!!かなり痛いからぁ!!」



第5提督「そうだぞ?流石にやりすぎだ」



そういって1人の女性が夕立との間にわって入ってきた。なんというかカッコイイ女性だ・・・何にしても助かった。



夕立「うぅ・・・・だってぇ」



涙を溜めながらぐずっている夕立にその女性は優しく頭をなでる・・・・ちょっとうらやましいかな?



提督「時雨!!・・・目をさましたのか」



時雨「え?提督?」



驚いた・・・まさかこんなところで提督に会うとは。まさか心配で会いに来てくれたのだろうか?



時雨「う・・・うん今さっきだよ」



提督「・・・良かった」



時雨「うえ?・・・え!?」



また驚いた・・・抱きしめられたのだ。いや心配してくれて嬉しいけどもこれは・・・予想外だった。



時雨「ちょっと・・・こんなとこで恥ずかしいって」



提督「!?・・・あぁすまない」



ここは医務室・・・いるのは僕達だけじゃない。他にも怪我人はいるのだ。



夕立「・・・ふーんそう言う事」



時雨「え?」



夕立「・・・・時雨もやっぱやる事やってんじゃない!!」



なんで夕立はここぞとばかりに大きな声を出すんだろうか・・・まったく騒がしい奴だ。



時雨「て、提督?」



提督&第5提督「なんだ?」



時雨「え?・・・・」



なぜ二人の提督が答える・・・そうか二人とも提督だった。



提督&第5提督「・・・・あ」



夕立「あぁ・・・二人とも提督だからね」



時雨「・・・なんていえばいいかな」



困っている僕に気づいたのか第5提督が口を開いた。



ムジカ「なら私のことはムジカと呼べばいい」



時雨「ムジカさん?・・・難しい名前ですね?」



ムジカ「そうか?だが気に入っているよ」



夕立「そちらの提督さんのお名前は?」



時雨「夕立・・・」



夕立「?・・・どうしたのよ」



隊長「隊長って呼んでくれ、生憎俺には名前が無くてね?」



夕立「はぁ?・・・なにそれ中二病ってやつ?そんなn!?痛い!」



ムジカ「・・・いい加減にしろ」



ムジカのチョップが夕立の脳天に直撃する・・・あれは痛いなぁ。



夕立「うう・・・いたぁい」



ムジカ「すまんな・・・」



隊長「いや・・・かまわんが」



時雨「夕立なら大丈夫だよ・・・頭が悪い分頑丈だから」



隊長「・・・おいおい」



ムジカ「ほう?よく知っているな・・・まぁそういうことだ安心しろ隊長」



隊長「・・・そうか、では時雨」



時雨「うん、じゃあね」



そういって隊長は医務室を後にした・・・しかし何故隊長がここに居たのだろうか?まさか・・・僕を心配して?



夕立「・・・ねぇ」



時雨「・・・ん?」



夕立「・・・ニヤつきすぎ、ちょっとキモい」



時雨「・・・ふん!!」



夕立は変わらないな・・・僕は夕立の脳天にチョップを振り下ろしながらそう思っていた。それと同時に変わらない夕立を守れたことが嬉しかった。



第1鎮守府 談話室



隊長「よぉ・・・」



談話室の一角で窓の外を眺めている彼女を見つけた・・・その姿は憂いを帯びており男なら声をかけてみたくなるほど魅力的だった。



阿賀野「ん?・・・来てたのね」



隊長「ああ、野暮用でね・・・トロワ、いや阿賀野だったか?」



阿賀野「そうよ・・・はぁ」



大変わざとらしくため息ををつく・・・何か聞いて欲しいのだろうな。



阿賀野「悩みでもあるのかって聞いて欲しいんだけど?」



隊長「はいはい・・・で?」



阿賀野「雑ねぇ・・・まぁいいわ」



つまらなさそうに答えるとふぅっと大きく息をついた。すると先程とはうって変わって弱弱しい・・・オリジナルでも艦娘でもない1人の女性の顔になった。



阿賀野「私ね?・・・艦娘になれば『人間』になれるんじゃないかなって・・・そう思ったのよ」



隊長「・・・」



阿賀野「・・・そんな訳ないのにねぇ、ふふふ・・・この体に埋め込まれたコアはまだ残っているんだもの」



隊長「憎いか?・・・コアが」



阿賀野「・・・憎いわ、でもそれが無ければ私は生きていけないから」



阿賀野「向き合わないといけない・・・受け入れないといけない・・・」



それでも受け入れられるものではないのだ・・・気持ちは痛いほどわかる。



隊長「・・・たとえ一度死んだ身だとしても」



阿賀野「・・・生き返ったなら人間として生きていたいわよね」



ふと二人の目が合う・・・阿賀野がふいに俺の手をとった。



阿賀野「ねぇ・・・人間みたいに愛しあってみない?」



隊長「・・・阿賀野」



阿賀野「・・・ぷぷ」



隊長「く・・・くくく」



阿賀野「ひひ・・・ダメじゃないよぉもっと我慢しなきゃあ」



隊長「んく・・・だって人間にみたいに愛し合ってみない?っていうのがダサすぎてさ」



阿賀野「やっぱり?・・・自分でも笑いそうになっちゃったもんなー」



あー面白かったと言い放ちぐっと伸びをする。



阿賀野「・・・まぁでもさ?一度は私を拒絶した『軽巡阿賀野』になれるなんて思いもしなかったよ」



隊長「あぁ・・・確かにな」



阿賀野「隊長も向き合ってみたら?」



隊長「ん?・・・何のことだ?」



阿賀野「・・・プロトタイプ」



隊長「・・・向き会うも何もないさ、動かない以上はな」



阿賀野「意外と思いを伝えてみたら動くかもよ?」



隊長「アニメじゃあるまいし」



阿賀野「まぁ・・・そんなわけ無いよねぇ」



そう言うと阿賀野は立ち上がる。すると何かを思いついたのか手をポンと叩いた。



阿賀野「ねぇ?・・・このあと雪風と一緒に飲むんだけど隊長もくる?」



隊長「いいのか?」



阿賀野「良いに決まってるでしょ!研究機関からの仲じゃない!!」



善は急げとばかりに阿賀野は俺の手をとった。俺は阿賀野に引っ張られる形で鎮守府内のバーに向かう・・・しかし雪風と阿賀野と俺が揃うのは久しぶりだ・・・それこそ研究機関以来かもしれない。会うのが楽しみだ。



第1鎮守府 執務室



軽空母「・・・あんたが葛葉第1提督か?」



葛葉「そうだ・・・よく名前まで知っているな?」



軽空母「・・・うちのコマンダーは何でも知ってるんでね」



葛葉「ふむ、そのコマンダーとやらに会ってみたいものだよ」



・・・私の目の前にいる彼はオリジナルのひとりで軽空母に進化した個体である。名前はあるのかと聞くと忘れたと答えたため軽空母と呼ぶことにした。



葛葉「・・・では軽空母、君が投降した理由を教えてくれるだろうか」



軽空母「・・・・コマンダーの指示だよ」



私はあまりの予想外の発言に驚いた。



葛葉「?・・・なに?」



軽空母「艦娘側に投降して携帯端末を渡す事が任務でね」



葛葉「・・・これは?」



軽空母「君達が喉から手が出るほど欲しい情報さ」




第1鎮守府 執務室



翌日・・・俺とムジカと阿賀野の3人は葛葉第1提督に呼びだされた・・・3人の提督を呼び出すとはよほど重要なのだろうか。



葛葉「・・来たか」



隊長「ええ・・・お久しぶりです」



葛葉「隊長・・・いままで通りで頼む、調子が狂いそうだよ」



そのままムジカと阿賀野の二人にも同様に伝えるとこちらに向きなおした。



隊長「ああ・・・で?なんの用だ?」



葛葉「・・・深海棲艦の拠点が判明した」



ムジカ「なに?・・・」



阿賀野「・・・へー」



二人とも驚きを隠せないようだ・・・確かに太平洋のどこからか深海棲艦の巣または拠点が存在するとされていた。だが今の日本海軍には長距離を移動できる大型艦船は少なく偵察に借り出せる艦船はほとんどないため拠点の割り出しに難航していたのだ。



葛葉「場所は日本より南・・・グアム島に存在する」



隊長「・・・グアム島?それは・・」



葛葉「ああ・・・君達第9鎮守府が偵察していた南シナ海ではなくグアム島だ」



ムジカ「・・・それではグアム島を制圧すると?」



葛葉「そうだ・・・此処に詳細なデータがある」



そういって葛葉は執務机から二つの携帯端末を取り出しパソコンにつなげた。



阿賀野「・・・深海棲艦の数と構成に生成間隔・・・こんなもの何処から?」



大型ディスプレイにはグアム島の拠点の詳細なデータが表示されている・・・確かにこれほどのデータをそろえることは今の日本海軍では無理だ。



葛葉「昨日降伏したオリジナルからもたらされたものだよ」



ムジカ「なに?・・・では敵が持ってきた情報を鵜呑みにしたのか!?」



あまりの事実にムジカは大声を上げた。



葛葉「鵜呑み・・・ではない南シナ海の調査データとも符号するのだ」



葛葉はムジカをなだめるように話す・・・そしてもう1つの端末をつなげると今度は俺達が収集した海域データが表示された。



隊長「・・・確かに南シナ海には拠点らしき物は確認されず深海棲艦は太平洋側から出現しているが」



阿賀野「それでも根拠としては・・・微妙ね?」



阿賀野の言うとおりだ。これでは確実とはいえない・・・だが葛葉は確信を持っている様に見える。



葛葉「そうだ・・・だから今回は2方面作戦を取ろうと思っている」



ムジカ「・・・・2方面?」



葛葉「ああ・・・まず1つはかねてより計画していた南シナ海への侵攻・・・もうひとつは」



葛葉「・・・グアム島への強行偵察だ」




方舟 艦橋



その後俺達は作戦の内容を伝えられた。まず一つ目の南シナ海開放作戦だが・・・これ自体はもともと計画されていたものであり南アジア連合国との共同作戦である。概要は日本海軍が南シナ海に侵攻、制圧後南アジア連合国軍により各島々の開放と基地化を行い制海権を取り戻すというもの。そしてもう1つのグアム島強行偵察なのだが・・・



副官「・・・私達単独ですか?」



隊長「・・・そうだ」



副官「・・・・まぁ確かに長距離航海可能で機動力と艦娘運用能力をもった船は方舟ぐらいしか稼動していないですからね」



隊長「ああ・・・まぁもうそろそろ護衛艦『かが』の改装が終わるそうだがな」



副官「『かが』ですか・・・思い出深いですね」



話が逸れました・・・と副官は笑う。私は返事の代わりに話を戻すことにした。



隊長「概要はだな・・・」



第9鎮守府所属の『方舟』は台湾の安平港で待機、南シナ海開放作戦が始まりと同時に太平洋側からフィリピンに向かい南進・・・その後敵援軍が確認され次第グアム島に向かい援軍を迎撃しつつ出現ポイントを捜索・・・発見した場合は座標を大本営に転送し可能ならば敵拠点の破壊を行う。



隊長「・・・となる」



副官「・・・・第9鎮守府の戦力だけでは厳しいですね」



隊長「それなら心配は要らない、各鎮守府から精鋭の艦娘が派遣されるからな」



派遣される艦娘は9名・・・瑞鶴、加賀、金剛、雪風、阿賀野、青葉、夕立、響、皐月だ。皆それぞれが高い錬度誇る艦娘である。まず響、皐月の2名は雪風と同じく最初期からの古参であり経験豊富で高い実力をもつ、そして加賀はあの瑞鶴と共に新生第1航空戦隊の主力をになうほどの実力者だ。後の艦娘について説明する必要は無いだろう。



副官「・・・まるで第1艦隊みたいですね」



隊長「ふむ・・・確かにだれが第1艦隊に選ばれてもおかしくは無いな」



副官「・・・裏を返せばこれだけの面子が必要なほど困難が予想されるわけですね」



隊長「確かにな・・・ならばこそ今のうちに少しでも錬度を上げ作戦に備えるしかないだろう」



副官はそうですねと返すと前方に視線を向けた・・・彼もまた艦長として幾度も深海棲艦と戦った軍人だもう所でもあるのだろう。俺は副官にひと言告げると入渠ドックに向かった。特技研から持ってきた・・・俺の過去と向き合うために・・・・ 




入渠ドック

 


隊長「・・・」



プロトタイプ・・・それは特殊艤装を初めとする対深海棲艦兵器の基となった戦闘用パワードスーツである。本来は宇宙開発用の超高機能船外作業服として開発されたものらしい。



隊長「・・・なんとなく持ってきてしまったが」



現状では運用はできないし、運用できる目処も立っていない・・・どうしたものか。



雲龍「・・・ねぇ」



隊長「!?・・・雲龍か」



考えふけってしまっていたようだ。ここまで近づくのに気がつかないなんて。



雲龍「・・・残念ね?時雨じゃなくて」



隊長「何を・・・」



まったく・・と続けると雲龍のジト目はプロトタイプに向けられた。



雲龍「・・・これは一体何なの?」



隊長「これか?・・・プロトタイプだよ」



雲龍「・・・使えるの?」



隊長「使えるよ・・・・俺の命と引き換えならな」



雲龍「・・・趣味の悪い冗談ね」



隊長「・・・そんな冗談言ったことあるか?」



雲龍「・・・ないわね昔から嘘と冗談はあまり好きではなかったものね」



隊長「指揮官は信用が大事だからな」



雲龍は目を伏せ俯いた・・・そして1つ深呼吸。



雲龍「・・・ならこんな物使わないで」



それはまるでただ息を吐いたかの様に・・・か細い声だった。



隊長「?・・・」



雲龍「・・・あなたに死なれると・・・時雨が悲しむでしょ?」



隊長「わかった・・・」



雲龍「ええ・・・まぁついでに私も悲しんであげるけど」



隊長「・・・雲龍」



雲龍とは付き合いは長いほうだ・・・雲龍は自分の感情や思いを言葉にするのが得意ではなくつい遠まわしな物言いをしてしまう。今回もそうだろう・・・それでも今回はいつもよりストレートに伝えてきた気がする。それがつい嬉しく思えたが・・・・同時に雲龍をそれほど思い込ませてしまったかとも思った。




第9鎮守府 



山城「・・・ぅう!!」



轟音と共に主砲から模擬弾が飛び出す。その衝撃は凄まじく気を抜けば吹き飛ばされてしまいそうだ。



天龍「全弾命中・・・大分錬度も上がったな」



不知火「そうですね・・・元々筋は良かったですから」



最上「うん・・・でも特に最近は鬼気迫る感じがするね」



天龍「ああ・・・・終わったな」



アラームがなる・・・演習終了の合図だ。ふぅ・・・一息ついてみんなを見やる。



山城「・・・行きましょうか」



最上「やーまーしーろー!!」



ふと気づくと最上が大声で呼んでいた。・・・なんだろうか艤装を付けているんだから通信でも入れればいいのに・・・スピードを上げよう.



山城「なぁーに!?」



最上「お疲れぇ!!・・・っと扶桑さんから連絡がねー」



山城「!?・・・無視していいわよ」



最上「お?・・・どうしたの?」



山城「なんでもないわ?・・・じゃあもう1セットやってくるわね」



扶桑・・・こんな時に姉さまの名前を聞くなんて・・・クソッ集中だ・・・もう一回演習をやって気を晴らそう。



天龍「・・・一体どうしたんだ?」



最上「さぁ?・・・でも山城もここに来たぐらいだからねぇ」



不知火「そうですね・・・頼れるお姉さんキャラでしたから気を抜いていました」



天龍「・・・おまえら何故第9に来たのか理由知らないのか?」



最上「・・・知るわけないよ、聞きづらいし」



不知火「・・・だいたい気持ちのいい話ではありませんからね」



天龍「・・・ふーん」



山城「・・・んぅ!!」



轟音と共に標的が粉砕される・・・今回も全弾命中だ。



山城「まだまだよ・・・こんな物では姉さまに!!」



一発一発まるで邪念を捨てる様に主砲を撃つ・・・そのたびに標的がすべて粉砕される。



山城「・・・まだまだ・・・まだまだぁ!!」



その轟音は弱い自分を変えるために・・・弱さゆえに誰も救えなかった自分を変えるためになり続ける。



1週間後 方舟 司令室



雪風「・・・ん?私で最後だったのね?」



扉を開けるなり雪風は周囲を見渡しそう言った・・・確かにこれで全員揃った様だ。



隊長「ああ・・・では自己紹介でもしようまずは・・・」



雪風「なら私からするわ?・・・第7鎮守府所属の雪風、よろしく」



響「・・・特Ⅲ型の2番艦で響だよ」



皐月「あー・・・ぼくは皐月知ってるよね」



瑞鶴「瑞鶴よ、はじめまして」



加賀「加賀です・・・よろしくお願いします」



金剛「金剛デース!よろしくお願いしマース!」



夕立「駆逐艦の夕立・・・まぁよろしく」



青葉「どーも!青葉です」



阿賀野「最新鋭の軽巡阿賀野、よろしくー」



隊長「では私が最後だな・・・私は第9鎮守府の提督だ・・・呼び名は隊長とでも呼んでくれ」



これで軽い挨拶は終わり・・・作戦の決行まで時間はあまり無いからはやめにミーティングをしなければならないな。



隊長「それでは早速ミーティングを始めたいんだが・・・まず荷物を割り当てた部屋に置いてきてくれ、ミーティングはその後だ」



軽く敬礼をすると皆はぞろぞろと自室へ向かった。さて・・・それほど時間はかかるまい今のうちにこちらの艦娘も呼び出さなければ・・・



方舟 作戦室



作戦室には総勢14名の艦娘・・・そして俺と副官が集まった。



隊長「・・・今回のミーティングは軽くで済ませようと思う、皆資料には目を通してもらったはずだからな」



艦娘達は皆肯定の相槌をうった・・・1人ぐらい見ていない奴がいると思ったが。



隊長「では重要な編成についてだ・・・」



今回のグアム島強行偵察作戦では艦娘艦隊を3つに分けることにした。1つ目は方舟の直衛艦隊、2つ目は現れた敵増援を迎撃、敵拠点を索敵する艦隊、3つ目は迎撃索敵艦隊の予備艦隊である。1つ目は方舟の直衛のため比較的小型の艦種を中心にする。2、3の艦隊は空母と戦艦を中心に打撃力を高めた編成とする。



隊長「では編成は・・・」



直衛艦隊 旗艦 天龍 所属艦 不知火 響



迎撃索敵艦隊 


第1艦隊 旗艦 雪風 所属艦 加賀 金剛 最上 皐月



第2艦隊 旗艦 瑞鶴 所属艦 山城 時雨 青葉 夕立



隊長「・・・以上だ」



加賀「隊長、質問が」



すっと手を上げたのは加賀だった・・・目で合図すると立ち上がり口を開く。



加賀「雲龍さんと阿賀野さんが編成されていませんが・・・何故でしょうか?」



隊長「・・・雲龍と阿賀野そして俺の3人はオリジナルの襲撃に備えて待機だ、そのため艦隊に編成されていない」



加賀「・・・オリジナル?」



瑞鶴「・・・そのために3人を待機ですか?」



隊長「ああ・・・オリジナルを相手にするには艦娘の艤装以外の武器に長けた奴の方がいいからな」



加賀「・・・そうでしたか、ですがその口ぶりだと隊長もその1人と?」



隊長「そうだ、電磁ブレードはオリジナルに十分通用するからな」



加賀「わかりました、質問は以上です」



隊長「他に質問は?・・・それでは次は作戦ルートについて説明する」



第1鎮守府 



葛葉「・・・・・!?誰だ?」



コマンダー「・・・はじめましてかな?」



ここは日本海軍の本拠地である第1鎮守府だ。そして鎮守府の中枢とも言っていい執務室に侵入者が現れた・・・だが問題はない・・・なぜだか予想できたのだ。



葛葉「お前がコマンダーか?」



コマンダー「ああ・・・軽空母から話しを聞いたのかい?」



コマンダーと呼ばれた男は日本海軍将官の服を着て白くシンプルな仮面を付けその仮面の奥からは余裕に満ちた雰囲気が見て取れる・・・傍から見ればかなり怪しいが何故かここまで入れたようだ。



葛葉「ああ・・・そのおかげで君が会いにくることは予測できたよ」



コマンダー「ふむ・・・流石だね」



葛葉「君の正体も・・・」



仮面の奥にあった余裕は無くなり声色も真剣なものとなる。



コマンダー「なら話は簡単だ・・・このままでは日本は・・・いや人類は敗北する」



葛葉「敗北?・・・深海棲艦に?」



コマンダー「いや・・・同じ人類にだ」



方舟 艦橋



1100・・・南シナ海開放作戦が開始される。こちらも作戦を決行しなければならない。



隊長「各員、たった今南シナ海開放作戦が開始された」



時雨「・・・」



隊長「これよりわが艦は太平洋側からフィリピンに向かう、その後はグアム島付近から現れる敵増援を発見次第撃滅・・・敵拠点の捜索、破壊を行う」



副官「・・・」



隊長「今作戦の成功は人類の制海権奪回にむけて大きな一歩になる」



雲龍「・・・」



隊長「裏を返せば今作戦の失敗は制海権の奪回にむけて大きな痛手となる」



雪風「・・・」



隊長「ならば・・・今作戦はかならず成功させなければならない」



天龍「・・・」



隊長「そのためには艦娘のみならず方舟乗組員、艤装兵諸君そして指揮官である私・・・」



最上「・・・」



隊長「・・・作戦に参加する全員の協力が必要だ」



山城「・・・」



隊長「・・・今作戦の成功のために」



不知火「・・・」



隊長「皆に・・・私の命を預ける」



瑞鶴「・・・」



隊長「だから・・・」



金剛「・・・」



隊長「皆の命・・・私に預けてくれ」



阿賀野「・・・ふんッ」



青葉「?」



阿賀野「あんたの命・・・預かるわ」



雪風「その代わり私達の命を預ける・・」



雲龍「なくしたりしたら・・・承知しないわよ?」



隊長「ああ・・・任せろ」



時雨「隊長・・・」



副官「号令を・・・」



隊長「・・・これよりグアム島強行偵察作戦を決行する・・・方舟、抜錨せよ!」




フィリピン付近 方舟 艦橋



方舟は無事目標地点に到達・・・後は敵増援が発生するのを待つだけだ。



隊長「・・・南シナ海のほうはどうか?」



士官からの報告では敵中枢艦隊の殲滅に成功・・・今は制海権確保のため残敵掃討に当っているらしい。作戦は順調なようだ。



隊長「そうか・・・しかしここまでこちらの動きが無いと言うのはな」



副官「ええ・・・制海権が確保されては援軍も意味をなしませんからね」



方舟を警戒しているのか?・・・拠点の発覚を恐れて?それか増援を出す必要がないとか?



隊長「彩雲を追加・・・索敵範囲を広くとれ、本土に向かわれてたらしゃれにならん」



副官「わかりました、彩雲出撃させます」



副官の指示とともに自動操縦型彩雲が発艦していく・・・これで何かわかればいいのだが。なんだ?・・・艦橋内が騒がしくなったぞ?



副官「ん?・・・これは!!海軍の回線がジャックされています!!」



報告は予想外の物だった・・・回線を乗っ取るなど深海棲艦がするのだろうか?



隊長「・・・画面に映せるか?」



副官「むしろ勝手に・・・」



そう言った時には艦橋内メインスクリーンに映像が映された。これは深海棲艦ではないのか?・・・・!?なぜだ?・・・なぜ!!



隊長「・・・葛葉ぁ!?」



第1鎮守府 司令室



葛葉「日本海軍の英雄諸君・・・私は第1鎮守府提督の葛葉頼道大将だ」



葛葉「まずはこのような・・・回線を乗っ取った無礼を詫びよう」



葛葉「だが聞いて欲しいのだ・・・日本は・・・いや人類はこのままでは負けてしまうと言う事実を」



葛葉「12年前・・・深海棲艦の侵略の前に我ら人類は恐怖した」



葛葉「既存の兵器を圧倒する戦力・・・物量・・・艦娘はじめとする兵器が開発されてもこれらは未だ我ら人類の脅威だ」



葛葉「だが・・・それ以上の脅威が存在する事を・・・君達は知っているか?」



葛葉「それは・・・われら海軍に存在する艦娘運用反対派」



葛葉「第2鎮守府提督 海藤正行中将を中心とする強硬派の連中だ」



葛葉「彼らは艦娘の運用は人道的ではないと言う。だがその裏では非人道的な兵器の開発に人体実験・・・」



葛葉「挙句の果てには対人大量破壊兵器の開発に着手している情報も手に入っている」



葛葉「彼らが戦うのは深海棲艦ではない!!・・・我ら人類だ!!」



葛葉「君は許せるか・・・人を人と思わぬ彼らの行いを」



葛葉「君は許せるか?・・・人類同士の争いを!」



葛葉「君は許せるか!?・・・ようやく人類が手を取り合った世界を破壊する愚行を!!」



葛葉「許せん!!私は断じて許す事ができない!!」



葛葉「ゆえに私は立ち上がる!!私、葛葉頼道はクーデターを起こし日本海軍を掌握する!!」



葛葉「意思を同じとする者よ・・・立ち上がれ!!共に正義を勝ち取るのだ!!」




方舟



隊長「なんだ・・・・なんだこれはぁ!!」



一体何がどうなっているんだ・・・これは・・・これでは人類同士の戦いになってしまう・・・



副官「・・・しかしこれはマズイな」



その通り・・・幾らなんでもタイミングが悪すぎる。なにも大規模作戦中にやる必要は無いしこの作戦は葛葉自身が発案した物・・・葛葉ならばこんな愚かな事はしないはずだ。



隊長「・・・作戦中止だ」



副官「はい?」



隊長「作戦中止だ!・・・・南シナ海開放作戦の艦隊と合流し・・・」



副官「隊長!!・・・暗号通信です!!これは?・・・」



隊長「!?・・・特務機動戦隊戦隊の暗号じゃないか」



副官「なんでそんなもので?・・・隊長にしか開けないんじゃ」



隊長「俺宛にか・・・これは!?」



送られてきたファイルには第2鎮守府所属の機動部隊の配置図だった・・・これはどういうことだ?何故こんな物が俺宛に?それにこんな正確な情報なんてどうやって・・・・



隊長「もしこれが本当なら・・・南シナ海方面の艦隊が危険だな」



副官「え?・・・どうしてです?」



隊長「・・・あっちを担当している艦隊は葛葉の考えに共感している第7と第3鎮守府の艦隊だ」



副官「あ!・・・となればクーデター派として攻撃を受ける可能性がありますね」



隊長「それは・・俺達も一緒だがな」



雪風「隊長!!・・・これはどうなっているの?」



瑞鶴「・・・うちの提督がやらかしたみたいだけど?」



隊長「・・・わからん、だが今は・・・」



警報音が鳴り響く・・・・敵艦隊が現れたようだ。



隊長「く・・・・なんてタイミングが悪い」



瑞鶴「隊長さん?意見を具申しても?」



隊長「む?・・・なんだ?」



瑞鶴「艦隊を二つに分けて迎撃と救援に向かわせたらどう?」



隊長「そうだな・・・編成は・・・」



救援部隊


旗艦 隊長 所属艦 雲龍 青葉 阿賀野 



迎撃部隊 


旗艦 雪風 副艦 瑞鶴  以下全員



隊長「・・・とする」



瑞鶴「ちょっとまって・・・それじゃぁ・・・」



隊長「瑞鶴・・・お前人を殺した経験は?」



瑞鶴「はぁ?・・・あ!」



やはり瑞鶴は頭が切れる艦娘だ・・・みなまで言う前に察してくれたようだ。



隊長「・・・・救援部隊には対人戦闘を行う可能性があるからな」



瑞鶴「・・・そうね」



幾ら戦場に出る艦娘とはいえ人間相手に戦うことに抵抗があるだろう・・・そうだな東京と言う名の地獄の出身者でなければだが



雲龍「救援のほうは私達に任せなさい・・・これでも経験豊富なのよ?」



瑞鶴「はぁ・・・」



時雨「・・・そういう事なら僕も救援部隊に参加させてくれないかな?」



その言葉に皆が驚く・・・そしてその皆が驚きの感情をまとった視線を時雨に向けた。



時雨「これでも結構経験豊富なんだけどね?」



雲龍「あなた・・・遊びじゃないのよ?いくら隊長の・・」



時雨「いったろう?・・・これでも経験豊富だってさ」



時雨の目が一瞬・・・ほんの一瞬だが変わった。それは今までのものとは違い冷たく感情の無いもの。俺にとっては何度見てきた何でもする奴の目だった。



隊長「わかった・・・では時雨も救援部隊参加してくれ」



南シナ海 第7鎮守府艦隊



桐生「さぁ・・・・ってどうしたものか」



周辺には第2鎮守府所属の機動部隊・・・・しかもその奥からは深海棲艦も接近している。人間と深海棲艦・・・・どちらにしても相手にするのは面倒だ。



桐生「・・・決めた」



艤装に取り付けられた通信機で作戦を伝える・・・部下の艦娘の反応は様々だ。



北上「?・・・いいの?そんなことしちゃって」



桐生「ふんふーん・・・まっ仕掛けてきたのは向こうだからね?」



霧島「そうですか・・・しかしこの作戦は面白いことになりそうですよ?」



桐生「そりゃあそうさ・・・・だって僕が考えたんだものぉ」



ふふふ・・・面白いことになりそうだ。ニヤニヤが止まらない。・・・・ん?この反応は味方か?



隊長「こちら第9鎮守府だ・・・第7鎮守府提督の桐生創大佐はいるか?」



第9?・・・・あの例の奴らか。



桐生「あー僕ですよぉ・・・なんか用?」



隊長「援護に来た・・・戦況は?」



桐生「・・・ふむ順調ですよ?ただいまある作戦を遂行中でぇす」



隊長「ほう・・・では従おう指示を」



桐生「?いいんですか?」



隊長「かまわん・・・」



桐生「でわぁ・・・・今よりわが艦隊は第2鎮守府部隊に向けて突撃します」



隊長「なに?」



桐生「ちょちょっと交戦して深海棲艦のいる地点まで第2鎮守府部隊を敗走させます」



隊長「・・・」



桐生「っして第2鎮守府部隊を深海棲艦と交戦させ第3鎮守府艦隊と合流撤退しまぁす・・・・パチパチ」



ふむ・・・流石にふざけすぎたかな。怒られる前に謝ろうかな?



隊長「・・・ふふ、いい作戦だ」



桐生「ぅえ?・・・」



隊長「なんだ?」



桐生「てっきり怒られるかと思いましたよぉ」



隊長「・・・では先陣は俺達にまかせてもらおうか」



桐生「?・・・理由あります?」



隊長「より確実に敗走させる方法を知っているからな」



桐生「あぁ・・・助かりますぅ・・・流石に部下にそれをやらせるわけにはいかないもので・・・」



隊長「ふん・・・任せろ」



助かるなぁ・・・さぁてこれで成功率は跳ね上がった。さぁて・・・やりますか。




南シナ海 第7鎮守府艦隊 先陣



時雨「・・・しかしすごい人だね」



隊長「ん?・・・あぁ最前線の第7鎮守府の提督だからな」



雲龍「・・・話はそこまでよ?」



隊長「よし・・・出来るだけ派手にやるぞ」



時雨「うん・・・恐怖を植えつけるように・・・だね?」



敵影・・・・30程か、だが相手はただの人間だたいしたことは無い。



隊長「俺の後ろに!!」



大型ブレードを展開すると雲龍と時雨は後ろにつく・・・敵兵はこちらに気付き砲撃を始めたが大型ブレードの出力の前にすべてかき消されていった。



兵士1「なんだ?・・・効いていないぞ」



兵士2「なら回り込めば・・・」



敵兵がブレードに気付き回り込み始める・・・だがこちらには雲龍がいる。



雲龍「・・・迂闊ね」



構えられたレールガンの引き金を引いた。回り込んできた敵兵は頭部をなくしたままゴロゴロと海面を転げていった。



兵士1「な・・・・こ、こいつら」



時雨「・・・覚悟が足りていないね」



主砲を放ち轟音と共に正面の兵士の体は爆散する・・・・



兵士1「く・・・陣形を!!うろたえるな!!」



よく訓練されている・・・包囲するつもりか?まだまだ恐怖を教えてやらねばな。



隊長「・・・これでどうだ?」



腰部にマウントされていた電磁ブレードを投げつける。両足を引き裂き敵兵はバランスを失い背中から海面に叩きつけられる。



兵士4「ぁわぁぁぁ!!溺れ・・・っくは助け・・・・たす・・・・・」



兵士5「うう・・・こいつぅ!!」



兵士1「まて!!陣形を!!」



隊長「動いたな?・・・・それが命取りだ、各員散開殲滅しろ!!」



号令と同時に散開・・・乱戦に持ち込む。



兵士5「うわぁぁぁ」



敵兵の1人がブレードを構え突っ込んでくる。・・・・愚かな奴だ。



隊長「せめて痛み無く塵にしてやろう・・・」



向かってきた敵兵は振り回した大型ブレードの光の前に消えうせた・・・悲鳴もなく何も残らずに。



雲龍「・・・なってないわね」



雲龍は相変わらず狙撃でしとめていた。艦載機を同時運用することでいたぶるように戦闘力を奪っていく。



時雨「・・・これならスラムのクズどもの方が手応えがあるよ」



ため息をつきながら時雨は主砲で敵兵士の体は破壊する。艦娘の武装は深海棲艦以外には有効でない・・・それゆえに時雨の攻撃は敵兵に強烈な痛みと死の恐怖に陥れていく。



兵士7「ひぃ!・・・死にたくねぇ!!」



兵士1「な!?・・・逃げるなぁ!!・・・うぁ」



あいつが指揮官か・・・・あいつをしとめれば確実だな。



隊長「戦場で余所見とは・・・いいご身分だな?」



接近し首を掴む・・・だんだん力を入れていくとギチギチと何かがきしむ音がする。



兵士1「ぁ・・・がぁ,ぁぁぁあぁ」



隊長「・・・ふん!!」



そのまま指揮官を海面へと強引に叩き付ける。指揮官は声にならない悲鳴を上げ海の底へと沈んでいった。



兵士9「くそぉ・・・」



兵士8「おい!援軍だ・・・艦娘どもがもっとくるぞ!?」



北上「ほいほーい北上様のお通りだよぉー」



霧島「・・・・さぁ私達も楽しみましょうか」



桐生「とーつげきぃ!!皆殺しだぁ・・・・なぁんつって」



随分と気の抜けたものだが・・・効果は十分だろう。



兵士9「く・・・にげろぉ!!」



兵士8「何処でもいい!!撤退だぁ!!」



浮き足立った敵兵士はわけもわからず逃げ出した。その先には深海棲艦がいることを知らずに。



桐生「よぉーし・・・敵が別働隊と合流する前にこちらも行きますかぁ」



隊長「わかった・・・第3鎮守府艦隊に向かった別働隊と連絡をとる」



こちらは何とかなったか・・・後は阿賀野と青葉だが大丈夫だろうか。



南シナ海 第3鎮守府艦隊




名城「鈴谷!深追いするな、撃退するだけでいい!」



鈴谷「あーもう!わかってるってさ!!」



状況は最悪だ・・・こちらは深海棲艦と交戦した直後で消耗している。その状況で第2鎮守府の部隊による奇襲を受けたのだ。



熊野「名城副官!!・・・このままでは押し切られてしまいますわ!!」



名城「・・・く!!」



三隈「名城さん?どうするおつもりですか?」



第7鎮守府も似たような状況だろう・・・ならば援護は期待できない。ならばすることは1つ, 彼女達には酷なことだが反撃するしかない。1つ深呼吸・・・指揮官である私が動揺してはならない。



名城「第2鎮守府部隊に対する攻撃を許可する・・・殺してもかまわん!」



熊野「!?・・・そんな!」



三隈「・・・」



鈴谷「!?・・・くそ」



名城「怖いか・・・人殺しは?」



熊野「う・・・いえ・・・でも」



やはり士気が下がってしまうか・・・これでは反撃もままならない。少しでも戦意を上げなければ。



名城「かまわん・・・・おれも怖いさ」



三隈「・・・名城さん」



名城「だが俺達はここで死ぬわけにはいかない、本土に残した友人達、家族のために生きて帰る・・・・なんとしてもだ!!」



三隈「・・・三隈、了解しました」



鈴谷「・・・やってやるよぉ!」



熊野「う・・・・わかりましたわ!!」



阿賀野「そうよ!!その意気よ皆!!」



この声は・・・・提督?たしか第9鎮守府艦隊に出向していたはずだが・・・・まさか救援に?



名城「阿賀野提督!?・・・どうして!」



阿賀野「救援よ?・・・部下を守るのに理由なんている?」



鈴谷「阿賀野ぉ・・・助かったよぉ」



青葉「あーこちら青葉です、今から送る地点に向かって撤退してください、時間は私達が稼ぎますから」



熊野「青葉さん?・・・大丈夫ですの?」



三隈「そうです・・・対人戦闘なんて」



青葉「問題ありませんよ?・・・安全に無力化する方法なら知ってますし」



名城「・・・そうかなら信用しよう」



鈴谷「そうそう・・・じゃあ行くね?」



阿賀野「ええ・・・任せなさい」



私は阿賀野提督の指示に従い撤退することにした。しかし安全に無力化だと?・・・青葉とかいう艦娘・・・底知れぬ物を感じたが。



名城「・・・無事だといいがな」



三隈「?あの二人でしたら・・・大丈夫ですよ?」



三隈は二人の心配をしている・・・さすがやさしい女だな。だが私が心配しているは二人じゃない・・・しかし言うまい、いまは第7鎮守府艦隊との合流を優先せねば・・・



南シナ海 迎撃海域



阿賀野「ねぇ・・・・安全に無力化する方法って?」



青葉「・・・一撃で殺すことですよ」



夜偵を飛ばしながらさらっと言ってのける。まぁ予想通りだが・・・



阿賀野「・・・」



青葉「私自身が安全と言う意味です、戦う相手に安全を考える必要ありますか?」



阿賀野「あ・・・そう」



青葉「さて来ましたよ?」



敵影30と続ける・・・彼女の目は特務機動戦隊の時と同じものだ・・・冷たく光の無い濁ったもの。人間であるかうたがわしい目だ。



阿賀野「いきますか・・・前衛は私ね?」



そういって電磁ランスを振り回す・・・艤装に力を送る。



兵士A「包囲しろ!!一気に殲滅する!」



敵兵士は私達を包囲する・・・しかし一歩遅かったな。



阿賀野「・・・ふふ」



ニヤリ・・・次の瞬間には電磁ランスは敵兵にむけて飛んでいった。ランスは確実に心臓を貫き盛大に血しぶきが舞った。



兵士A「がぁ・・・・・」



阿賀野「まだよ?・・・・」



ランスのアンカー部分を引っ張り引き寄せる・・・・相手は一瞬のことに動きをとめた。



青葉「阿賀野さん・・・行きますね?」



阿賀野「ええ・・・殲滅するわ」



兵士B「く!?・・・撃て!ぅ撃てぇ!!」



阿賀野「がむしゃらすぎるわね・・・そんなんで!」



いとも簡単に接近するとランスを振り回し、敵兵士を貫く・・・手加減はせず一撃でしとめる。



兵士C「ぎゃぁぁあ!!」



兵士B「な!?・・・くそぉ・・・あがぁ!!」



1人・・・また1人と貫いていく。敵兵士は完全に浮き足立っているな・・・青葉はどうか?



青葉「・・・」



青葉は青葉で淡々と敵兵士を引き裂いている・・・逃げ腰の相手にも容赦なくブレードを振り下ろす彼女はロボットのようにさえ見える。



阿賀野「・・・ん?」



通信か?・・・隊長からだな。



阿賀野「なぁに?・・・いま取り込み中よ?」



隊長「もう十分だ、こちらに合流しろ」



阿賀野「ん?・・・まぁそうね」



確かにもう半数はしとめた・・・敵兵士の戦意もそげたようで完全に敗走している。



青葉「了解・・・そちらに合流しますね」



阿賀野「そうね・・・いきましょ」



フィリピン付近



瑞鶴「あー・・・瑞鶴より方舟?敵の第1派を殲滅したわ」



副官「了解した・・・新たな機影は確認されていないな被害は?」



瑞鶴「無いわ・・・夕立の弾薬消費が多いくらいね」



副官「そうか・・・それでは隊を二つにわけ補給をとる・・・振り分けは任せる」



瑞鶴「任された・・・適当に行かせるわね?」



チラッと艦隊に視線を向ける・・・艦載機の消耗は私の方が多いかならば・・・



瑞鶴「加賀?先に補給言って来るわ・・・」



加賀「ええ・・・私の艦載機は無事だから大丈夫よ」



雪風「その間は私が残るわ・・・いってらっしゃい」



瑞鶴「そうね・・・じゃあ」



・・・急に大きな水しぶきが上がる。これは敵襲?だが深海棲艦の反応は・・・まさか第2鎮守府の?



最上「敵!?・・・あれは通常艤装!」



加賀「第2鎮守府の部隊ね・・・どうするの?」



瑞鶴「・・・迎撃するわ」



加賀「!?・・・しかたないか」



瑞鶴「・・・うん」



最上「・・・もう1つ反応、深海棲艦だよ!」



瑞鶴「うそ!?・・・こんなときに!」



加賀「・・・嫌な予感しかしないわね」



瑞鶴「深海棲艦は共通の敵・・・の筈だからとは行かないわよね!」



こちらに対する砲撃は弱まることは無い・・・相手も深海棲艦の反応を察知している筈だ。



山城「く・・・こんな事って!」



山城もそうだが艦隊のみんなの士気が下がっているのがわかる・・・これでは挟撃を受けて被害が広がりかねない。



瑞鶴「・・・・!加賀!第2と深海棲艦との位置関係は!?」



加賀「え?・・・えっと第2は南シナ海から来ているかしら、深海棲艦は・・・」



瑞鶴「グアム島ね?」



加賀「ええ・・・」



完璧だ・・・これなら一発逆転を狙えるぞ。善は急げだ、まずは副官に指示をしなければ。



瑞鶴「副官さん!・・・今から言う地点に砲撃が届くぎりぎりのところに移動して!」



副官「はい?・・・なんですか急にそれよりも・・・」



瑞鶴「うるさい!!いいから早く!!」



副官「え?・・・わかりましたが」



これでよし・・・あとは第2の連中だが、雪風?・・・いやここは金剛に任せよう。



瑞鶴「金剛!・・・あなたは何人か連れて指定する地点に第2の連中を誘導してもらえる?」



金剛「ん?・・・じゃあ機動力のある駆逐艦を連れてくわね」



瑞鶴「お願いね?・・・よしじゃ残りは私と共に深海棲艦に突撃よ!!」



加賀「ちょっと・・・何をする気なの?」



瑞鶴「・・・馬鹿共に痛い目にあってもらうだけよ?」



ここまでは完璧・・・後は上手くいけばこっちは無傷で目的を達成できる。



南シナ海 



救援部隊の働きもあり第3、第7鎮守府の艦隊は無事合流できた。しかし彼らが来てくれなかったら被害はもっと出ていただろうなぁ・・・



桐生「いやぁ・・・無事合流できてよかったねぇ」



北上「本当だねぇ・・・ねぇ姐御」



霧島「姐御って・・・まぁ確かによかったですよ」



視線を第9鎮守府の連中に移す。今いるのは提督と雲龍と時雨だったか?後の連中はあまり見たことの無い奴だが・・・まぁあの戦闘を見ればまともな連中ではないのは確かだ。



隊長「・・・各員報告を」



雲龍「問題ないわ」



時雨「僕もね」



青葉「問題なしです」



阿賀野「絶好調かな?・・・」



隊長「よし・・・・それでは各員散開し警戒に当れ」



敬礼を1つすると救援部隊の連中は散らばっていった・・・まぁしかしよく統制が取れているな。



桐生「ふーむ・・・」



北上「んん?・・・どしたのよ」



桐生「いやぁ・・・ねぇ」



北上「隊長さん達の事?」



桐生「あれ?お知り合い?」



北上「んー?何度か共闘したことがあるだけー」



桐生「へー・・・・そうだったのかぁ」



確かにそれならあの戦闘力と経験も納得できるか・・・ん?待てよ・・・



桐生「・・・・さっき調べた経歴だとずっと内勤だったよなぁ?」



つまりはそういうことか・・・そうとわかれば余計な詮索は無用だ・・・万が一消されるようなことになっても嫌だし。・・・しかし作戦は失敗するし、襲撃されるし、全部葛葉大将がへんなことしたからだ。とりあえず安全な場所を確保しないといけないし・・・はぁ



桐生「あぁ・・・メンドイ」




フィリピン付近



金剛「瑞鶴ぅ!!通常艤装の団体さんヘイおまち!!」



金剛の威勢のいい声が聞こえる・・・上手いこと誘導してくれたようだ。



瑞鶴「がってん!!副官さん!?そっちの準備は?」



副官「てやんでぃ!!・・・ゴホン・・・配置に付きましたよ?」



こちらも威勢の声が聞こえる・・・方舟も配置に付いたか・・・これで準備は完璧。



瑞鶴「さぁてみんな!?今から私の言うことを聞いてよ?」



加賀「ええ・・・でどうするの?このままじゃ綺麗に挟撃よ?」



瑞鶴「まぁまぁ・・・それは聞いてからのお楽しみ!!」



今にも笑みがこぼれてしまいそうだ・・・あの馬鹿共がどういう顔するかが楽しみだ。できるだけ冷静にみんなに作戦を伝える。



方舟 艦橋



副官「・・・・わかりました」



瑞鶴から指示を受けた・・・ふむ確かにこれなら一番安全に離脱できるだろう。ただ危険が無いわけではないが・・・しかしここまで来た以上はやるしかあるまい。



副官「まったく・・・瑞鶴とやらは」



士官に指示を出す・・・こちらの準備は整った。



瑞鶴「副官さん!!今よ!!」



副官「ミサイルロック解除!!模擬弾頭発射!!」



方舟から小型ミサイルが発射される・・・これだけではまだまだ足りないな・・・



副官「続いてレールガン一斉射!!」



船体各部のレールガンが発射される・・・これなら派手に水しぶきが上がる筈だ。



副官「・・・艦娘の脱出が確認されるまで攻撃を緩めるなよ!」




フィリピン付近



瑞鶴「来たわね・・・みんな!!」



加賀「ええ・・・」



皐月「ひゅーこれはまたすごい砲撃だ」



響「そうだね・・・さっさと行きますか?」



皐月「そだねぇ・・・じゃぁお先!!」



響「取り合えず・・・うらー!!」



天龍「あの掛け声で撤退するのかよ・・・まったく」



最上「あはは・・・ボク達もいこうよ」



不知火「ええ・・・今回は色々疲れました」



山城「ほんとよ・・・帰りましょ」



雪風「・・・」



瑞鶴「行きましょ?・・・早くしないとね」



加賀「そうよ・・・」



金剛「・・・帰ってテートクに一発ぶち込んでやらないと気が済まないわ」



雪風「ええ・・・」



夕立「はぁ・・・なんか知り合いいないと寂しい物ねぇ」



指揮官「何!?砲撃だと?・・・くそ味方ごと撃つのか!?」



兵士「指揮官!!これでは身動きが取れません!!



指揮官「クソ!!・・・なんとしても当るな!回避に専念しろ!!」



兵士「は、はい!!・・・うわぁ・・・ええ?」



指揮官「おい!?・・・どうした!?」



兵士「・・・模擬弾です」



指揮官「はぁ?・・・模擬弾だと?」



兵士「ええ・・・・煙も晴れ・・・!?」



指揮官「?・・・な!?」



兵士「深海・・・棲艦!!」



指揮官「クソォ!!これが狙いか!!応戦しろ!!」



南シナ海


方舟から通信が入った。内容は増援艦隊の迎撃に成功、第2鎮守府部隊との奇襲をかわしてこっちに向かっているとの事だ。



隊長「・・・わかったでは収容準備を頼むぞ」



時雨「どうだった?」



隊長「被害はなし・・・迎撃も成功でいまこっちに向かっているそうだ」



時雨「そうか・・・被害がなくてよかったよ」



時雨はホッと胸をなでおろした様で少し表情に余裕が出てきた。その時不意に横から声がした。



桐生「南アジア連合国の皆さんには迷惑をかけてしまいましたがねぇ」



この気の抜けた喋り方・・・桐生だったか。



隊長「まぁ・・・それでも無事撤退したんだろう?」



桐生「ええ・・・じゃなきゃきゃあんな所で交戦してないですよぉ」



名城「はい・・桐生提督の指示で殿をつとめていましたから」



もう1人は名城・・・先程の手際も青葉から聞いたが階級こそ低いが実力はなかなからしい。



隊長「しかしあの状況で上手く逃がすとは・・・よく頭の回るようだな」



桐生「まぁ・・・それが仕事ですしねぇ」



名城「ええ・・桐生提督感服しました」



隊長「名城副官・・・君にも言っているんだが?」



名城「い、いえ・・・私はただ指示通りに動いただけですよ!」



名城としては予想外だったらしく見るからに取り乱しているように見えた。



雲龍「隊長・・・方舟が到着したわ」



隊長「よし・・では各員帰還だ周辺の索敵はおって指示をだす」



雲龍「ええ・・・ではみなさんいきましょうか」



これで何とか落ち着けるか・・・全く大変な目にあったな。こっちがこれでは本土は一体どうなってるかわかったもんじゃないぞ。何とかして本土の連中に連絡がつかないものか・・・



第1鎮守府 執務室



葛葉「・・・そうか隊長達は無事か」



良かった・・・急なことであったが上手く立ち回ってくれたようで南アジア連合国の被害も無かった。それだけでも十分な戦果だろう。



ムジカ「しかし問題は山積だ・・・」



葛葉「ああ・・・まさか護衛艦かが・・・いや天鳥船の改修が完了していたとは」



天鳥船・・・いずも型護衛艦の2番艦かがを深海棲艦との戦闘に主眼をおいて改修したものだ。こちらが先手を取ったつもりでいたが、そういう訳でもなかったようだ。


ムジカ「・・・どうする?」



葛葉「・・・放ってはおけん、海藤のことだ恐らく・・・」



ムジカ「何か策があると?」



葛葉「・・・ああ」



ムジカ「・・・しかしこんな状況で何を?」



葛葉「・・・」



ふと窓の外へと目を向ける・・・うす曇の空は私の心を表しているようだ。海藤の動向、コマンダーの真の目的、そして深海棲艦の不気味な沈黙・・・不安要素はいくらでもある。



ムジカ「?おい・・・」



葛葉「・・・隊長に連絡を付けてくれ」



ムジカ「・・・わかった」



このような状況こそ彼の力が必要になる・・・次の戦いは日本の・・・いや人類の趨勢を決めるものとなるだろう。



方舟 艦橋



隊長「・・・ふぅ」



1つ・・・・大きなため息をついた。ここまでのは久しぶりか・・・しかし今回はよくわからない事ばかりで困った。



隊長「やはり・・・こういうのは苦手だな」



副官「・・・ん?これは」



副官が何かを見つけたようだ・・・はぐれた深海棲艦か?



副官「隊長!!・・・オリジナルです・・・・艦の進路上に3体います!!」



隊長「なに!?・・・」



まさかこのタイミングだと・・・狙っていたのか?奴らの目的はわからんが人類と敵対するつもりならこの内乱は好機だ・・・本土はどうなっているのだろうか。



副官「・・・艦娘は大半が補給中で出撃できるのは半数ほどです」



隊長「・・・わかった、俺もでる。出撃できる奴は出来るだけだせ」



副官「はッ・・・御武運を」



方舟 戦闘海域



隊長「行くぞ!!・・・全隊俺に続け!!」



皐月「ああ・・・僕に任せてよ」



響「後は誰が出れるんだい?」



不知火「・・・瑞鶴さんと時雨・・・雪風さんは出れないみたいですよ」



加賀「仕方ないわね・・・こればっかりは」



夕立「はぁ・・・せっかく寝れると思ったのになぁ」



副官「よし後は順次出撃を・・・」



その時・・・突然方舟が攻撃を受けた。これは砲撃ではいないな・・・雷撃か?しかしこの距離で雷撃なんて普通は・・・・



隊長「・・・方舟はどうか!?」



副官「航行と戦闘には問題はありませんが・・・」



歯切れが悪い・・・なんだと言うのだ?



副官「出撃ポート付近がメチャクチャです・・・しばらくは誰も出せませんし回収も出来ません」



隊長「な!・・・復旧急げ!何があるかわからんぞ?」



相手はオリジナルが3体・・・こちら6人・・・余裕は無いな・・・ん?



響「隊長・・・反応はもうひとつある」



隊長「なに?・・・まさかさっきの雷撃は!」



響「ああ・・・この反応の奴だ・・・おそらくは潜水艦だと思う」



隊長「・・・響、.潜水艦の相手は任せられるか?」



響「・・・任せてくれ」



そういって響はソナーに耳を傾け索敵を始めた。ここは響に任せてよさそうだ・・・今は他の連中に集中しよう。



皐月「ねぇ・・・僕達は?」



隊長「皐月は目の前の奴と戦うぞ・・・艦種が不明な以上何とも言えんが」



加賀「索敵・・・判明しました、駆逐艦、重巡、正規空母のようですね」



隊長「早いな・・・流石は加賀といったところか?」



加賀「心にも無いこと言われても響かないわ」



不知火「さて・・・では先陣は私が」



夕立「・・・じゃあ私が続くわね」



隊長「わかった・・・よし行くぞ!!」



戦闘海域 オリジナル



正規空母「奴が例の?」



重巡「はい・・・そのようですね」



駆逐「・・・さてどうする?」



相手の数は6隻・・・不利とはいかないだろうが油断は出来んが。



正規空母「・・・目標は隊長という奴のみだ、俺が行く・・・お前らは他の連中を」



重巡「はい・・・では行きましょう駆逐」



駆逐「ん・・・わかったよ」



正規空母「さて・・・航空戦艦を追い詰めた貴様の実力、見せてもらうぞ」



マントを開く・・・中に収納されていた艦載機が飛び出すいつ見ても盛大な光景だな。この数の艦爆と艦攻・・・奴はどう出るだろうか。



戦闘海域 



隊長「ん?・・・対空警戒!!」



加賀「迎撃機・・・え?」



艦載機が見えた・・・なんだこの数は?それに攻撃機だけだと?・・・敵艦載機から爆弾が切り離される・・・この数はマズイ



隊長「くぅ・・・なんて密度の高い爆撃!!」



数も質もいい・・・これは無傷ではいられないか?



加賀「・・・ん?敵艦接近、重巡と駆逐」



不知火「クソ・・・なんて速い、とはいえ同じ駆逐なら!!」



皐月「こっちは重巡か・・・ちょっと厳しいかな」



夕立「うまく分断されてるわね・・・不知火!1人じゃ危険よ!!」



通信が聞こえる・・・敵艦も同時に仕掛けてきたのか?先手を取られてしまったか。




隊長「・・・どういうつもりだ?」



爆撃の煙が晴れるとそこには正規空母が1人いるだけだった。



正規空母「・・・君は危険だ、だから消えてもらいたくてね?」



隊長「狙いは俺だけか?・・・」



正規空母「まぁ・・・出来れば艦娘も始末したいがね」



手に持った拳銃らしき物を構える・・・こいつは厄介かも知れんな。



正規空母「だが第1目標は君だ・・・ここで死んでもらう」



マントを翻すと艦載機が飛び出してくる。数は・・・10機ほどか?・・・だが1対1なら十分な脅威だろう。艦載機はまっすぐ飛んでくる・・・後は本体がどう動くかだが・・・



正規空母「・・・流石この程度ではゆさぶりにもならんか」



水面を蹴り突っ込んでくる・・・接近戦とは予想外だがこれは好機だ一撃食らわせてやろう。



隊長「・・・迂闊だな、ふん!!」



大型ブレードを振るう・・・相手はこっちに飛びこんでいる、回避は出来まい。



正規空母「・・・こっちの台詞だ!!」



くるりと空中で1回転するブレードは空をきった。正規空母は空中で回転することでマントを大きく翻し艦載機を発艦させ回避にも成功した・・・すぐさま艦載機による至近距離での爆撃と両手に構えた拳銃が容赦の無い攻撃を仕掛けてきた。



隊長「!?・・・チッ!!」



振りまわしたばかりの大型ブレードを盾にする・・・とっさのことだったが何とか反応できたか。しかし・・・



隊長「・・・ブレードをやられたか」



正規空母「ふん・・・この攻撃を防ぐとはな」



大型ブレードは破壊されたが電磁ブレードはまだ残っている・・・まだやれるぞ。大型ブレードを投げ捨てると腰にマウントされた電磁ブレードを手に取る



隊長「さぁ・・・どうしたもんかな」



相手は遠距離を主体に戦ってくるだろう、対してこちらは遠距離武器を持っていない。このまま遠距離から攻撃を続けられるとマズイ・・・なにか打つ手は無い物か。



不知火&夕立対駆逐



不知火「・・・・沈め!!」



主砲を撃つ・・・その一撃一撃の狙いは確実だがどうにも相手には当らない。次第に苛立ちが募っていくのが傍から見てもよくわかる。



不知火「クソッ・・・・速い」



駆逐「ふん・・・この程度か?期待はずれだな」



不知火「なっ!?・・・貴様!!」



夕立「不知火!?出すぎよ!」



不知火「うるさい!」



聞く耳持たないとでも言った感じか・・・冷静さが無い以上危険だ、援護しなければならないか。



駆逐「・・・連携がなってないぞ!」



敵が主砲と副砲を撃ち続ける・・・まるで畳み掛けるように攻撃だ。



不知火「くっ・・・」



夕立「被弾?・・・なってないわねぇ不知火」



不知火「あ?・・・」



夕立「後退してなさい・・・ここは私がやるわ?」



不知火「・・・・誰が」



そう言うと不知火は駆逐相手に突撃した・・・しかし困った物だ。



夕立「はぁ・・・なんなの?」



皐月&加賀対重巡



加賀「皐月さん、艦載機で援護します・・・」



皐月「了解!・・・さぁ行くよ」



艦載機が随伴する・・・これだけの数があれば十分いけるだろう。さっさと倒して他の援護に向かうするか。



皐月「・・・加賀!牽制を!」



艤装に取り付けられた通信機で加賀に牽制を要請する。すると随伴していた艦載機が離れ敵重巡に向かっていく・・・



加賀「烈風ですが・・・牽制なら十分です!」



加賀が指揮する烈風は敵重巡の滞空砲火をかいくぐり機銃で攻撃を始めた。



重巡「・・・艦戦で攻撃?牽制ですか」



だが敵重巡の正確な回避運動とその装甲の前に烈風の攻撃はほぼ無効化されてしまった。オリジナルの戦闘能力をすこし見くびっていたかな?もっと腰を据えてやっていかないと。



加賀「・・・これがオリジナルの実力」



皐月「うーん・・・艦戦じゃ牽制にもならないね」



重巡「・・・貴女達も十分な脅威となりえますね、ここで沈めます」



主砲を構えなおした敵重巡の眼光が鋭い物へと変わった。もしさっきの動きが本気じゃなかったら?・・・・かなり危険だ。他人の心配なんかする余裕はないぞ・・・



不知火&夕立対駆逐



駆逐「そらそらぁ!!その程度かぁ?」



相変わらず敵駆逐の機動力と砲撃の前に苦戦させられている・・・・艦種で言えば同じ駆逐艦だが実際は同じとは思えない機動力と火力だ。



夕立「くっ・・・舐めんじゃないわ!」



主砲を構える・・・だが縦横無尽に動き回る敵駆逐を捉えるのは難しく撃つこともままならない。



不知火「・・・はぁ・・・はぁ」



横にいる不知火は不知火で被弾している・・・・中破ぐらいか?これでは戦力としては見込めない。



夕立「何か、何か弱点が・・・」



普通ならこの火力と機動力に両立はありえない・・・・いくらオリジナルとはいえ・・・・



駆逐「・・・ふん!遊びはここまでだ!」



敵駆逐は反転しこちらに一直線に向かってくる・・・・恐らく仕留めにかかるつもりだな・・・



夕立「ッ!!・・・え?」



駆逐「な!?・・・マズイ!!」



敵駆逐がこちらに接近した時・・・敵駆逐は機動力をいかし至近距離での雷撃で仕留めにかかった。私はつい癖で対空機銃で迎撃を行った・・・普通なら対空気銃では大したダメージにもならないため避ける事はしない。だが敵駆逐は避けた・・・当れば確実に沈むといわんばかりに。



夕立「・・・まさか!?」



駆逐「・・・気付かれたか?」



もし敵駆逐がとっさに避けたのでなく、避けなければならなかったのであれば?・・・・敵駆逐の機動力と火力の秘密がわかったぞ。



夕立「不知火!!機銃は使える?」



不知火「?・・ええ機銃なら?」



夕立「よし!!なら機銃掃射で攻撃するわよ・・・相手が避けれないぐらいの弾幕で!」



不知火「わかりました・・・では」



駆逐「・・・チッ!だがやらせんよ」



敵駆逐は突撃する。恐らくは雷撃ではなく主砲の連射で畳み掛けて来るだろう・・・・被弾を恐れるあまりにね



夕立「・・・さっきの雷撃で仕留められなかったのがあんたのミスよ」



今まで攻撃を当てられなかったのは敵駆逐のスピードと主砲による面攻撃により主砲では狙い上手く付けられなかったからで・・・



駆逐「・・・!?動きが読まれている?」



本質は機銃を使えば問題なく先読み射撃で牽制できるほどの単調で詰まらない動きなのだ。



夕立「・・・不知火!」



不知火「ええ・・・」



駆逐「く・・・クソぉ弾幕が!・・・身動きが!!」



止まった・・・これで敵の機動力は殺せた。相手は回避専念しすぎている・・・持ち前の火力も使えていない。



夕立「・・・いけぇ!!」



構えた主砲は正確に狙った標的に飛んでいく。一撃で十分だ・・・なぜなら敵駆逐は機動力の優先するあまりにその装甲は脆弱となり、そして高い火力を手にするあまりに砲塔と魚雷を多く積みすぎたのだ。その結果・・・敵駆逐は超高速で高火力だがその分一発でも被弾すれば全身の弾薬と魚雷に引火、大爆発し轟沈する非常に危険なものとなってしまったのだ。



駆逐「くそぉぉぉ!!」



悲痛な叫びと共に轟音が鳴り響く・・・・これでは無事ではすまないだろう。



夕立「ふぅ・・・後は他の皆ね不知火・・・・不知火?いったい」



不知火「・・・貴様!・・・・貴様はぁ!!」



夕立「え?・・・え!?」



不知火の視線の先には一体の深海棲艦がいた。黒い髪に私達と同じ様な姿・・・そして禍々しい艤装。あれは戦艦の姫クラスだろうか・・・しかしどこかで見たような?



不知火「・・・・ぁぁぁあぁああ!!貴様かぁぁぁ!!」



ふいのことでよくわからなかった・・・不知火が激昂して、敵に突っ込んで・・・一瞬で不知火が大破させれてしまったのだ。



夕立「不知火!・・・ええ?・・・」



戦艦棲姫「・・・貴様達ニハ用ハナイ」



駆逐「うう・・お前・・・は?」



戦艦棲姫「助ケニ来タ・・・イクゾ」



どうする?・・・このままほうっておけば不知火はそのまま沈んでしまうだろう。それにこの状況は危険すぎる。周りにはオリジナル・・・目の前には戦艦棲姫・・・方舟は損傷を受けているし。



夕立「く・・・ここは逃がすしかないわね」



戦艦棲姫「・・・フン」



戦艦棲姫が振り向き移動を始めた・・・急いで不知火の傍に向かう。



夕立「!?・・・これはマズイわ」



中破状態で戦艦型の主砲に直撃したのだ・・・下半身は大腿部のしたから吹き飛んでいるし、残っている部位も焼きただれて目を背けたくなる程だ。



不知火「あぁぁ!!痛い・・・!!クソォ!!おねぇちゃんを!!・・・絶対にぃ!!・・アイツめぇぇ・・・」



血走った目を見開き呪詛を唱えながら強烈な痛みにのた打ち回る・・・急いで方舟に収容させ無ければ。



夕立「こちら夕立!!方舟!!不知火が重体!!急いで帰還するから高速修復剤の準備を!!」



方舟からの返信も聞かずに走り出す・・・急がなければ。



皐月&加賀対重巡



厄介な相手だ・・・パワー、装甲、スピード・・・どれをとっても高水準で打つ手が思い浮かばない。



重巡「・・・手は抜きません確実に・・・仕留めます」



主砲は轟音を響かせ強烈な一撃を繰り出す・・・いまは回避出来ているがこのままでは当るかもしれない。



皐月「ちぃ・・・この距離じゃ主砲は効かない、接近するのも危険で逃げるなんてもってのほか・・・」



僕独りでは手詰まり・・・か。加賀は艦載機で援護をしてくれているが有効打に程遠いようだ。



重巡「しかしこの艦娘は手ごわい・・・ここまで攻めても捉えられないとは」



加賀「・・・流星隊!」



加賀の流星隊は爆撃と雷撃を駆使しながら攻撃を続ける・・・



重巡「そしてこの空母・・・タイミングがいちいち見事!」



対する重巡は機銃を巧みに扱い回避する・・・だがこのタイミングなら当てられるか?



皐月「・・・おおぁ!!」



突撃して砲撃・・・この距離ならダメージが通る筈だ・・・・



重巡「ちぃ・・・だけどぉ!」



カタパルトから射出された水上機が盾となり爆散する・・・クソ・・・これではダメージにならない。



皐月「隙を突くのも難しいか・・・なんて奴だよ」



重巡「そちらもね?・・・これほどの艦娘はあとどれほどいるのでしょうか」



皐月「さぁね?・・・」



重巡「!?・・・そう」



皐月「?・・・なんだい?」



重巡「・・・ここは退かせてもらいますね」



皐月「?・・・それはありがたいかな」



加賀「皐月さん!?」



重巡「ふふふ・・・そういってもらえると嬉しいですよ」



皐月「・・・ただ」



重巡「はい?」



皐月「次は逃さないよ?」



重巡「・・・それはこちらも同じですよ」



互いに微笑み合う・・・互いを強敵と認め合ったからこそ微笑むんだ。さぁ・・・次に会うまでに艤装の改良と訓練を怠らないようにしないと。



重巡「それでは・・・」



加賀「・・・」



そう言うと重巡は去っていった・・・ふぅ他のみんなはどうなったのだろうか。気になるな。



隊長対正規空母



隊長「・・・うぉぉぉぉぉぉ!!」



両手に持った電磁ブレードを振りまわす・・・これで敵艦載機の爆弾や機銃弾を防げるが・・・このままではジリ貧だ。



正規空母「ちぃ・・・なんて奴だ」



だが奴も責めあぐねているようだ・・・このままあせってくれれば勝機があるのだが。



正規空母「・・・流石は航空戦艦を追い詰めた男だな」



隊長「・・・あんたもな」



正規空母「ならば・・・次で仕留める」



隊長「?・・・」



そう宣言した正規空母は艦載機を全て着艦させる・・・何をするつもりだ?



隊長「・・・おいおい」



まさか・・・全艦載機で総攻撃してくるつもりか?奴も博打にでたか、今の状態で防げるか?いいや・・・ここはなんとしてでもやるだけだ。



正規空母「いくぞ・・・全艦載機いけぇ!!!」



大きくマントを翻す・・・・そこから空を埋め尽くす程の艦載機が発艦してくる。



隊長「・・・さぁ来い!!」



ここが正念場・・・ここを防ぎ切れれば勝てる!!



正規空母「・・・おおぉ!!」



敵艦載機が飛んでくる。数は・・・数える暇はないな集中して凌ぐことだけを考えるんだ。・・・・まず艦爆だなまずは回避運動・・・ジグザクに動いて狙いを付けさせない。



隊長「・・・ぐ!!」



至近弾・・・・まだまだいけるぞ。電磁ブレードを振り回して1つでも多く爆弾を迎撃しなければ。・・・・艦戦接近?機銃掃射!?



隊長「ぬぐぁぁあ!!・・・だが!」



機銃なら致命傷にならない・・・今は爆弾を優先して迎撃だ。



正規空母「・・・艦攻隊!!」



電探に感あり・・・後ろ?艦攻隊!魚雷を回避しなければ・・・こうなったら。



隊長「タイミングを・・・・合わせて・・・・」



電探の反応を頼りにタイミングを計る・・・汗が出てくる・・・鼓動も早くなる・・・だめだ冷静にならなければ失敗する。



隊長「3・・・2・・・1・・・今だ!!」



正規空母「何!?・・・まさか」



水面を力一杯蹴りあげ跳躍する・・・空に飛んだ身体を捻り後方に宙返り・・・そのまま着地に成功すると目の前で魚雷同士がぶつかって大きな爆発が起きた。この爆発で周囲の艦爆と艦戦も破壊できたか・・・これは好機だ。



正規空母「・・・チッ!マズイ・・・直衛機を!!」



隊長「させるかぁ!!」



この煙と水しぶきの先に正規空母がいるのだ・・・・迷わず突っ込むしかない。左手に持った電磁ブレードを投げ直衛に当ろうとする艦載機郡を切り裂く。



正規空母「くッ・・・まだだこいつで!!」



正規空母は両手に構えた拳銃で攻撃する・・・艦載機の機銃とは違いこいつの拳銃は危険だ。だがここで退けばこの好機を失うことになる・・・そしたら俺の勝ちは無くなる。ならば・・・



隊長「・・・突撃だぁぁぁぁ!!」




正規空母「な!?・・・ふふ面白い!!その勝負・・・・受けて立つ」



俺は突撃する・・・そして正規空母は拳銃を撃つ。正規空母が1つ引き金を引くたびに俺の艤装に穴が開く・・・俺が1つ進むたびに正規空母は死の恐怖に襲われる。どちらかが退くまで・・・いや俺が倒れるか・・・正規空母が切り捨てられるまでこの意地の張り合いはつづく。



隊長「うぐ・・・がぁ・・・・まだまだだ!!」



正規空母「ちぃ・・・まだ倒れんのか!?・・・なんだ?」



隊長「・・・なんだこの光は?」



艤装のから白く・・・力強い光があふれている。これは?・・・・なんだというのだ?



正規空母「深海棲艦?・・・艦娘?どちらでもない」



隊長「何だか知らんが・・・・なぜか痛みは感じない・・・それ以上に力が湧いてくるようだ」



正規空母「これは?・・・まさかこれはコマンダーと同じ!!」



隊長「うぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!!」



正規空母「艦娘とオリジナルの元になった・・・プロトタイプの光!」



隊長「もらったぁぁぁぁ!!」



電磁ブレードを振りぬく・・・間一髪正規空母は回避運動に入っていたため致命傷にはならなかった。だが手応えはあった・・・これで戦闘不能に追い込めた。



正規空母「ぐあぁぁ・・・そうか!!・・・だからこいつが」



隊長「まだまだぁ!!もう一撃!!」



すぐさま追いかける・・・だが正規空母も必死だ、艦載機を巧みに扱いながら抵抗する。



隊長「ちぃ・・・なに?」



なんだ?・・・・艤装のパワーが失われていく?・・・光が収まっていく



正規空母「そっちも限界の様だな・・・ここは退かせてもらう」



隊長「なに!・・・ま・・・て・・・」



急に足元がフラついて・・・マズイ・・意識が・・・と・・・・ぶ?・・・・・



後書き

続きます・・・

グアム島強行偵察作戦編・・・とみせかけて海軍内乱編です

直接的な描写は無いけどグロっぽいのでグロ注意いれますね・・・不安なので


設定とかなんやかんやで質問等ありましたらコメントしていただければ、できる限りお答えします


評価、応援、コメントをいただけると・・・もれなくふくろうが小躍りします


各種設定


レールガン

特殊艤装用に開発された武器、電磁誘導により超高速で弾頭を発射する。鎮守府に設置されているレールガンを小型化し携行出来るようにしたもの、だが携行はできるものの人間が使う分には十分大型であり扱いづらい物になってしまった。製造は少数で主に特務機動戦隊で使用された。


大剣

提督専用の武装。運用は前からされていたが、ヨーロッパに出向していた際の戦闘で破壊されており特技研で修理と強化がされていた。展開状態では全長2メートルになる。重量もそれに比例して重くなっており取り回しに難がある。剣としての特性と盾としての特性を持ち合わせている。その威力は深海棲艦相手にはあまりにも過剰であるため雲龍には資源の無駄遣いとまで言われている。



特務機動戦隊

深海棲艦の侵攻に対抗するために、当時唯一の対抗手段であった特殊艤装を運用するための部隊として結成された。1番隊から6番隊まで存在し,1番隊隊長が特務機動戦隊の総隊長を兼任する。度重なる激戦によって提督、第3提督、雲龍、青葉を残し全滅している。

第1艦隊

大規模作戦または有事の際に召集される日本海軍における最精鋭の艦隊で基本は6人。招集されたのは今のところ3回。日本近海海戦でのメンバーは雪風、金剛、赤城、翔鶴、天龍、榛名。

日本近海海戦
3年前の大規模作戦。艦娘の配備がすすんだ事により太平洋側の海域の制海権をうばわれた深海棲艦がその反撃として送り込んだ約400体の大群を迎撃した海戦。その当時艦娘の配備は進んではいたものの技術が未熟だったこと、そして錬度が低かったため多くの艦娘と艤装兵が犠牲となった。

オリジナル

突如現れた深海棲艦に対抗するために生み出された。重い借金を背負った者、更正不可能な犯罪者、孤児などから選ばれた。被験者に深海棲艦のコアを外科手術で組み込んだ結果、深海棲艦に対抗できる能力を得た。その非人道性と成功した被験者が極少数だったこともあり研究は中断、一部のみ実戦に投入された。


艦娘

在りし日の軍艦の記憶持った女性と艦霊が契約を結ぶことで誕生する。艦娘が使用する艤装はオリジナルが生み出した物を元に作られている。艦霊の加護のおかげで対深海棲艦戦闘においては高性能だが、反面深海棲艦以外には有効打は与えられない。雲龍の件を例に、記憶を共有する際は沈む・・・いわば死を共有することになるので艦娘側にかなりの精神的な負担がかかる。そのため暴れまわる、または自傷行為等、極まれだがショックにより死んでしまうケースもある。


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このSSへのコメント

8件コメントされています

1: SS好きの名無しさん 2015-07-21 21:32:58 ID: tj0eA1_4

通して読んでみて思った、それは・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・提督が最近溜め息ついてない。

2: ふくろう 2015-07-21 23:44:31 ID: jyM0Gj9j

……ばれてしまったか。ならば消えてもらうしかないな。





というのは冗談で(・_・;
どうもコメントありがとうございます。
それもあって別枠で書いたんですよね(・ω・)

3: SS好きの名無しさん 2015-08-24 05:01:45 ID: kf_h2Nv9

格好いい雪風も良いですね( ̄∇ ̄)

4: ふくろう 2015-08-24 08:42:50 ID: ZQrEZE15


3の名無しさん
コメントありがとうございます

そのように言って頂けると嬉しいです(・ω・)

5: SS好きの名無しさん 2015-08-25 22:21:55 ID: 0zx_SphG

提督達に名前欲しいっぽい、ごっちゃになるっぽい。

6: ふくろう 2015-08-26 00:36:25 ID: kyuMdlZy

5の名無しさん
コメントありがとうございます


ですよねー(・ω・)
自分で書いてて思いました。今対策と言うか名前等を考えてますので次の更新には直します。

7: SS好きの名無しさん 2015-08-26 05:28:16 ID: 9TPc9Ike

トロワが阿賀野になった理由は描写ありますか?無いならリクエストしたいです<(_ _)>

8: ふくろう 2015-08-26 09:31:19 ID: kyuMdlZy

7の名無しさん
コメントありがとうございます

納得できる理由になるかどうかわかりませんがやってみますね(・ω・)


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1: SS好きの名無しさん 2015-08-22 02:17:28 ID: iDhftQK9

時雨頑張れ!


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