2018-06-28 02:12:35 更新

概要

お久しぶり・・・諸事情により長い間更新できませんでした。今回よりちょくちょく更新していきます。


第1鎮守府対新生特務機動戦の演習編です


金剛と暁好きな方・・・ごめんなさいです。



プロトタイプとオリジナルと艦娘との続きとなります・・・

今回は各鎮守府の提督が登場します・・・提督は全員オリジナルキャラとなりますので苦手な方はご注意を、そして今回もかなりのキャラ崩壊があります


前書き

登場人物  


隊長 

第9鎮守府提督であり実線部隊を率いて出撃する事もある。実質海軍で最強であるがその代償として体の一部が機械化されており強化されている。一度死んでから改造された為記憶はなく名前も覚えていない。


田中 孝則  (たなか たかのり) 今作から副官→田中の表記になりました。 

第9鎮守府の副官であったが今回の再編で第9鎮守府の提督となる。艦娘運用艦「方舟」の艦長.また執務の大半を行っている。以前は護衛艦の艦長をしており、深海棲艦との戦いの中で何度も艦を沈めたがそのたびに生き残り一時期は英雄視されていた。葛葉とは昔からの知り合いである。事務処理が苦手な隊長の代わりに鎮守府の運営をしていたため提督としての能力は十分に高い。


榛名 大本営所属 

大本営の秘書艦であり葛葉の恋人でもある。艦娘になる前は東京にいた。瑞鶴や金剛とは違い出撃することは無いため実力は未知数だが時雨との戦いによりその片鱗を見せる。東京にいたときはその立ち振る舞いから聖女として崇められ人々を守るために戦っていた。二つ名は「血染めの聖女」


北上 第7鎮守府所属

いつもぼーっとして気だるく戦う艦娘、精鋭ぞろいの第7鎮守府の中で目立つ事は無いが桐生曰く全く底が見えないとの事。榛名とは東京の頃からの知り合いらしい。東京にいたときは一切の感情を感じさせずただ虚ろな目をしたまま深海棲艦を倒し続けたことにより死神と呼ばれる。二つ名は「機械仕掛けの死神」


千歳 大本営所属

まだ新人の艦娘。演習の結果は全敗らしいが本気の青葉の気配を感じ取る、瑞鶴と加賀を殺気だけで圧倒するなど本当の実力は未知数・・・だったが記憶を取り戻した時雨と互角の戦いをするなど圧倒的な実力を誇ることがわかった。東京にいた時はからくり人形をつかったオールレンジ攻撃を得意とし多くの深海棲艦を倒してきた事で奇術師と呼ばれる。また戦いにおける愉しみはあくまで過程であり相手を殺すことは興味なく、自分が強いと認めた相手は勝っても殺さず手当をし何度も戦おうとする。二つ名は「狂乱の奇術師」


時雨 第9鎮守府所属

前回の最後に晴れて隊長とケッコンした。実力はかなりの物である。またかなり寝起きが悪く起こしに行く隊長がため息をつくほど。榛名、北上曰く今までは一部の記憶を失っており実力の半分ほどしか出せていなかった。記憶を戻したため本来の力を発揮できるようになった。東京にいた頃は戦闘中のある行動により捕食者(イーター)と呼ばれているらしい。二つ名は「絶対的な捕食者」


雲龍 第9鎮守府所属 

第9鎮守府旗艦を務め、隊長とは特務機動戦隊結成前からの付き合いであり信頼も厚い。元殺し屋と言う噂があるがホラー・スプラッター系は苦手で真偽は不明。 低スペックの艤装ながら姫クラスと互角以上に戦う、東京出身者の夕立を一撃で仕留めたり等隊長と同じく人間離れした実力の持ち主。

以下新キャラ

鳴海燕 (なるみ つばめ)

第6鎮守府の提督、名城、桐生と同期で以前は第6鎮守府の艦娘担当の一士官だったが艦娘に対して暴行をはたらく上官とそれを助長させる当時に提督に嫌気がさして反乱を起こした。この反乱が監視していた葛葉を出し抜いて行われた事、鎮守府全体から支持されている事を評価され正式に提督として着任した。セクハラが多いらしいが艦娘や女性士官はまんざらではないとの事。女性が好き

御堂輝夜 (みどう かぐや)

第4鎮守府の提督。年齢不明の男の娘だが話し方や態度からすると名城、桐生、鳴海よりは年上らしい。その魅力にやられた士官も多くファンクラブまである程の人気。また戦術の考え方から天龍とはそりが合わない。戦闘指揮は優秀であり防衛戦では海軍1。また隊長の実力を誰よりも認めており会うたび部下に引き込もうと口説き落とそうとするその光景が一部の士官から人気があるらしい。美しいものが好き 秘書官は朝潮


来栖希未 (くるす のぞみ)

第8鎮守府の提督、以前は脳波装置を応用した要塞の様な専用艤装を駆り多大な戦果を挙げた。隊長とも手合わせをしたことがありその時は決着がつかなかったほどの実力者。やや間延びした口調、見た目はほんわか系の美人でいつもにこやかに笑顔を絶やさない。だが怒った時も笑顔でありその笑顔は提督全員に恐れられている。かわいいものが好き。秘書艦は皐月


霧雨 錬司 (きりさめ れんじ)

元航空戦艦でオリジナル。オリジナル内では最強とされており阿賀野も研究機関の時は互角に戦うのが精いっぱいだった。プロトタイプの開発が中止になり隊長が実戦に投入されてから目覚めたため隊長との面識はない。天鳥船奪回作戦時にコマンダーとともに隊長と共闘した。時雨の実の兄であり雪風の恋人。


矢矧 

阿賀野型軽巡洋艦 3番艦 新人の中ではもっとも高い成績をあげておりその実力も決して低くはない。


暁 

特Ⅲ型駆逐艦1番艦 所属は第1鎮守府。第1鎮守府は日本の勢力圏の中心にあるため前線からは遠く所属する艦娘は皆練度が高く各鎮守府に支援に派遣されることが多い。暁自身も長門と村雨と一緒に日本海側にある第6鎮守府の支援に派遣されていた。実力は響や皐月には及ばないもの高くまた古参でもあるため以前の特務機動戦隊と面識がある。レディ。 

長門 

長門型戦艦1番艦 第1鎮守府所属の艦娘で金剛や瑞鶴、雪風に並び称される実力者である。以前に艦娘になる前の青葉と演習したことがあり元特務機動戦隊のメンバーとは面識がある。



二つ名  

時雨、千歳、北上、榛名に付けられている別名の様なもので東京にいた際の呼び名。実際は時雨たち以外にもいるらしく二つ名持ちは皆ある能力を持っているらしいが詳しいことは不明。


隊長「・・・会議ぃ?」



副官「はい、葛葉元帥の名前で召集命令が届きました」



そう言うと副官は命令が書かれた書類を提出した。中身を見ると副官の言うとおり葛葉による正式な命令である事がわかった。



隊長「招集・・・ね、やっと先の戦いの事後処理が終わったばかりだってのにな」



方舟の修復作業いまだ続き、不知火が復帰したとはいえ覚醒した山城の艤装の改修も済んでない・・・まぁここは僻地ではあるし出撃自体少ないから問題ないのだが。



副官「それと・・・」



隊長「うん?」



副官が指を刺した部分に目を向ける。



隊長「・・・俺と副官、時雨と雲龍の4名?多くないか?」



副官「そうなんですよ、正直戦力の半数以上を空けるのは問題ですし・・・まぁ代わりの人材が来るそうですが」



代わりの人材ね・・・しかしこの書類によると全鎮守府の提督が集まるらしい、その場合どうなるのだろうか?第1鎮守府から艦娘が増援としてくるのだろうか・・・



隊長「それで、招集はいつになるんだ?」



副官「明日の1100までには大本営に着くようにと・・・」



明日?・・・急すぎないか?第9はよくても他の鎮守府は準備ができないだろうし・・・まさか?



隊長「この書類・・・何時来た?」



副官「・・・受け取りは1週間前ですね、ゴタゴタで事務方も混乱していたようです」



隊長「やはりか・・・」



それでも急だが・・・まぁ1週間前に命令が届いていたなら予定がとか言い訳は出来無い。早速雲龍と時雨を呼ばなければいけないか・・・時雨まだ寝てるだろうか?だとしたら憂鬱だな、アイツ寝起き悪いし。



隊長「はぁ・・・・」



こんなため息久しぶりだな・・・さてお姫様を起こしに行くか。






大本営 執務室



葛葉 「榛名君、この書類を」



榛名「・・・」



どうしたと言うのだろうか…ぼーっとするなんて普段の榛名君らしくないな。



葛葉「榛名君?」



榛名「あ、はい・・・なんでしょうか」



葛葉「どうかしたのかい?疲れているのであれば休んでも構わないが」



事実明日の準備は終わっているし出撃もなかった為仕事自体は少ないから私一人でも充分なのだが。



榛名「いえ、そういう訳では」



葛葉「ならどうしたんだい?」



榛名君はえっと・・・と言いよどんだ。やはり何かが違う・・・少し考えたと思うと重い口を開いた.



榛名「・・・夢を見るんです」



夢・・・一体何の話をしているんだろうか?悪夢?軍艦の時の記憶だろうか・・・しかし彼女ほどの艦娘がその程度でここまでになるだろうか?



榛名「・・・東京で過ごしたときの記憶、群がる化け物を食い散らかした日々」



葛葉「榛名君・・・?」



榛名「悲しいとか・・・辛いとかじゃないんです、何故このタイミングで夢に見たのか」



すっと立ち上がりこちらに振り向いた。表情は普段どおりの柔らかい笑顔・・・



榛名「もしかしたら・・・またこの力を使わなければならない日が来るかもしれないと思うと」



葛葉「・・・」



榛名「・・・嬉しいんです」



ニタァっと嗤う・・・先程までの聖女のような笑顔ではなく、快楽に取り付かれた悪魔に様に美しい。そのあまりの美しさに背筋がゾクッとする・・・まるで命を狙われているかの様な感覚だ。



榛名「・・・葛葉元帥?」



葛葉「・・・見とれていたよ榛名君の美しさにね?」






第7鎮守府 港



北上「ぬぁー・・・」



先の天鳥船奪還作戦が終えてからなんかやりにくい、桐生提督が以前の感じに戻ってしまったから規律にも厳しくなったし・・・まぁ以前の無理した気だるさも見てられなかったけど。まぁ今日は出撃も無いしゆっくり寝てるとしますか・・・



桐生「・・・北上」



北上「はぁ・・・何ぃ?」



桐生「手紙だ、大本営の榛名秘書艦からだと」



そう言うと私の横に腰を下ろし手紙を差し出してきた。



北上「んー?」



榛名?・・・あぁアイツか、その名前で聞くのは初めてだから始めはわからなかったな。しかし懐かしい奴だなぁ・・・ほかの2人も元気なのだろうか。



北上「・・・」



桐生「どうした?」



北上「・・・いやぁ?」



あの時の夢・・・そして明日の大本営の会議にアタシも出席してほしいとの事だ。



北上「明日の会議・・・アタシも行かなきゃ行けないみたいだ」



桐生「・・・詳しくは聞かないほうが良さそうだな」



北上「別に・・・まぁでもそのほうが良いかな」



アタシはあの時の事を悪夢だとも黒歴史だとも思っていない。むしろ毎日が刺激的で快楽にあふれていて夢の日々だったと思うぐらいだ。でもそう思わない奴も中にはいるだろうし?まぁアタシと榛名と残りの2人はそうは思っていないだろうけど。




大本営 食堂



瑞鶴「・・・あれは」



何だろう・・・食堂に隅に明らかに孤立している人がいるな・・・あれは確か最近着任してきた艦娘だったな?名前は確か・・・



加賀「千歳・・・だったかしら瑞鶴」



瑞鶴「そうそう・・・ってなんで名前を思い出そうとしているのわかったのよ」



加賀「なんとなく・・・かしら」



そういって首をかしげる仕草を見せる・・・艦娘になるまでの見た目であれば問題なかっただろうが正規空母加賀となり仏頂面に磨きがかかった今の姿ではいささか不気味だ。



加賀「今失礼な事考えていなかった?・・・」



瑞鶴「・・・気のせいよ気のせい」



千歳「・・・はむはむ」



しかし美味しそうに食べるなぁ・・・周りに人もいなし仲良くなる為にも話し掛けてみようかしら?



加賀「ちょっと・・・聞いてるの?」



瑞鶴「この席・・・いいかしら」



千歳「・・・?」



加賀「・・・瑞鶴?まったく」



瑞鶴「私は瑞鶴って言うの、貴女は千歳だったわよね?」



千歳「・・・はむ?」



コクリと頷く彼女は大人の女性の余裕を持ちながらも可愛らしさもあって、なんともいえない魅力的だとも思った。



加賀「ちょっと・・・瑞鶴、迷惑じゃあ」



千歳「まぁ・・・構いませんよ」



そっと千歳が箸を置いた。その瞬間、背筋に冷たく鋭い感覚が襲った。



加賀「・・・瑞鶴」



瑞鶴「とんでもない殺気・・・それで周りに人が集まらなかったわけね」



しかもこの殺気は只者ではない、普通の人間が発せられるモノとは違う本能に訴えかける純粋な殺気だ。正直そこらへんの奴じゃ感じとることもできないだろう。



千歳「流石は新生1航戦の瑞鶴さんと加賀さん、楽しめそうです」



そう言うと席を立ち上がり食器を持ち席を後にした・・・しかし数歩歩くとこちらへと振り向き微笑んだ。その微笑にすら恐怖を感じる。



加賀「・・・ふぅ」



瑞鶴「・・・」



あれほどの艦娘が居たなんて・・・正直驚きだ。間違いなく修羅場をくぐり慣れている・・・艦娘での戦いではわからないがルール無用の戦いでは間違いなくトップクラスだろう。




















千歳「艦娘とやらもなかなかやるもんですよ・・・ねぇ?」



そこで隠れている誰かさんに向かって話してみる。わたしとしては瑞鶴よりも隠れているコイツの方が楽しめそうだが・・・



青葉「ばれてましたか・・・いやはや」



千歳「ふふふ・・・やはり貴女の方が楽しめそうですね」



先ほどの二人とは違いこいつは明らかに私と同類だ・・・おそらく実力もかなりの物だろう。楽しみだ・・・できるなら今から楽しみたいぐらいだ。



青葉「殺し合いを楽しむ手合いですか・・・面倒ですねぇ」



千歳「あらぁ・・・貴女も同類かと」



相手はすでに臨戦態勢・・・こちらもすぐにでも仕留められるようにいつでも獲物にてはかかっている。あとはどちらかが動けば・・・



青葉「すみませんが仲間同士で殺しあうのは趣味じゃありませんので・・・」



千歳「仲間?何を・・・」



青葉「明日・・・会議室に来てください時間は1130です」



明日?・・・それに仲間と言ったな。しかしこの私の楽しみを邪魔してくれたのだから余程の事なのだろう・・・まぁいい、つまらない事なら問答無用で戦わさせてもらうだけだ。



千歳「・・・明日を楽しみにさせていただきますよ?ふふ」














後日 大本営 



時雨「・・・」



大本営に着いてからどうも視線を感じる。敵意や殺気とかじゃない為かどこから見られているとかはわからないのだが・・・



隊長「・・・どうした?」



時雨「・・・視線を感じる」



隊長「特に不穏な気配とかは感じないが・・・雲龍は?」



雲龍「・・・いつもと違う変な感じはするけど視線はわからないわね」



・・・僕だけしか視線を感じていないようだ。気のせいか?それとも見られているのは僕だけなのか?何にしても良い気分ではない。ただでさえ寝足りない上にこの嫌な感じなのだから。



時雨「・・・しかし急に集合時間が変わるなんてね」



隊長「あぁ・・・0900に集合なんて幾らなんでも早すぎる」



雲龍「そうでもないと思うのだけれど・・・普段の貴方達が遅過ぎるのよ」



雲龍の言うとおり普通の軍隊ならばそうなのかもしれない、だが第9鎮守府の僕達は規則正しくと言うか規律と言うものは無いだから仕方ないのだ。



隊長「着いたな・・・しかし集合までそんなに時間はないはずだよな?」



雲龍「ええ・・・なのに誰もいない」



時雨「・・・この感じは」



隊長「・・・おい」



雲龍「罠?それとも悪戯かしら・・・」



雲龍が次の言葉を音にしようとしたその瞬間かなり凶悪な殺気を感じた・・・



時雨「くっ・・・」



殺気に気を取られたその一瞬で吹き飛ばされたようで気がついた時には全身に痛みが走り出していた。



時雨「・・・やるじゃない」



目の前に僕を吹き飛ばしダメージを与えた張本人が立っている。正直予想外だ、あの人がここまで強いなんて。だが先程のスピードと殺気を考えるととんでもない強さだのはずだ。これは本気でやらなければこっちが危ない。



榛名「・・・立ちなさい、貴方はこんなものではないでしょう?」



時雨「言ってくれるね・・・後悔するんじゃないよ?」







雲龍対??



馬鹿馬鹿しい・・・大本営の会議室で艦娘同士で戦うなんてどのような意図があったとしてもおかしい。さっさと止めてしまわなければ・・・大本営に来てまで面倒事を巻き込まれるのは避けたい。



雲龍「やめなっ!?」



先程から声を出そうとすると襲われるのは何故だろうか?あぁ・・・もうすでに面倒になってきた。そうも思いながらついさっきまで立っていた場所に目を向ける。



??「ふーん・・・避けられたかぁ」



少しピンクがかった髪が揺れる・・・その先には紅くぎらつく瞳が見えた。



雲龍「・・・悪くない一撃だったわね、夕立」



夕立「流石は元特務機動戦隊、2番隊隊長は伊達ではないみたい」



人選に疑問が残る・・・なぜ榛名と夕立が私達を?理由がわからない。それに夕立は強いとは言っても正直私達に及ぶものではない筈。



雲龍「悪いけどさっさと倒させてもらうわ・・・」



夕立「・・・それはこっちの台詞よ?」



後ろ?何時の間に回りこまれて・・・このスピードは・・・



雲龍「・・・どういうこと?」



夕立「本気を出しただけよ・・・役者は揃った事だし?素敵なパーティでもしましょうか」





隊長対???



榛名と時雨、雲龍と夕立・・・俺に対してはどんな奴が来るのだろうか?そう考えていると不意に気配を感じた。



隊長「お前は・・・確か」



北上「ほいほーい・・・北上さまだよー」



第7鎮守府に所属していた艦娘か・・・何度か共に戦った事がありあの底の見えない感じが特徴的で良く憶えている。



隊長「何のつもりだ、これでも俺は提督なんだぜ?」



北上「いやー・・・悪いけど今回は隊長には用事は無いんだよねぇ」



俺ではない?・・・ならば雲龍か時雨に?だが一体何故?



北上「まぁ・・・殺したりはしないよ、ただ榛名と時雨の邪魔をさせたくないだけだからね」



隊長「時雨のことを舐めすぎていないか?いくら榛名でも1対1で倒すのは簡単じゃない」



北上「まぁね・・・時雨があたしの知ってる時雨ならその通りだけど」



隊長「・・・・何!?」



北上「今の時雨じゃ相手にならないんだよね・・・これがさ」



時雨と榛名の戦い目線を向ける・・・それはもう戦いではなく一方的にいたぶっているだけのように見えた。



隊長「・・・・どけ」



ふつふつと怒りがこみ上げてくる・・・さすがに愛した女を目の前でいたぶられているのに何もしないでいるのは我慢なら無い。軍刀を引き抜き構える。



北上「言ったでしょ?・・・邪魔させるわけにはいかないの」



隊長「なら仕方ない・・・手加減はしてやれん、死んでも恨むなよ」





時雨対榛名



榛名「・・・もう終わりですか?」



時雨「ぅ・・・ぅぁ!」



なんて事だ・・・力が違いすぎる。手も足も出ない。



榛名「はぁ・・・これからの戦いには貴女の本当の力が必要だったんですが」



首を絞める榛名の手により力が込められる。その力は呼吸を止めるというよりは首が千切る事を目的としているようだ。



榛名「これでは役に立ちません、ならばここで隊長と雲龍共々死んでもらいましょうか」



時雨「・・・・っ!?」



クソ・・・このままじゃ皆が!でも・・・・意識が途切れそうだ。・・・だめだ・・・まだ・・・ま・・・だ・・・・



時雨「・・・」



榛名「残念ですよ・・・時雨さん」



時雨「・・・」



榛名「っ!・・・ま・・さ・・か・・・」



時雨「・・・久しぶりだね、聖女様」



隊長対北上



北上「言うねぇ・・・久しぶりに熱くなりそうだよ」



北上の胴を狙い軍刀を振るうが見事に空を切った・・・まるで太刀筋が見えているみたいだ。北上は最小限の動きで回避しこちらの首元めがけて手刀を繰り出した。



隊長「!・・・うぉ!!」



手刀を掴み取り力任せにぶん投げる・・・だが投げられた北上は空中で姿勢を整え壁を足場にして飛び込んできた。



北上「やるねぇ!・・・最っ高じゃないかぁ!!」



左の拳を握り締め北上の顔面に目掛けて突き出し迎撃する、対する北上も拳で突き出しておりまるでクロスカウンターのような形で互いの拳が命中する。



隊長「ぬぅ!?・・・だが」



北上「読んでるよぉ?それぐらいは!」



残った右腕で軍刀を北上の体に向けて突きたてる。だが軍刀は北上を貫くことはなかった。



北上「・・・そんななまくらはアタシには無意味だよ?」



軍刀の刃先は空いていた北上の左手により握りつぶされていた。幾ら艦娘とはいえ対深海棲艦用の軍刀を握り潰すとは・・・まさに化け物といったところか?



隊長「艤装なしじゃ分が悪いか・・・」



北上「いやいや・・・正直ここまでやれるだけで凄いよ?アタシ本気出しちゃったもん」



隊長「・・・ふん」



北上「まぁ・・・だけどアタシには勝てないよ?」



隊長「・・・」



正直戦った感触では北上の言うとおりだ。プロトタイプの艤装込みで戦えれば互角だろうが生身では歯が立たない。



北上「さて・・・時雨はどうなった・・・あぁ!?」



隊長「・・・おいあれは!」



時雨対北上



視界がいつもよりクリアに見える。頭もすっきりしているしモヤモヤしたものが一切無い実に良い気持ちだ。そのうえ散々いたぶってくれた榛名の胴を僕の右手が貫いているというのも爽快感があって実にすがすがしい。



榛名「・・はぁ・・・・ぅあ」



時雨「・・・殺しはしないよ?今はあんたよりもっと殺したい奴がいるからね」



腕を引き抜き邪魔な榛名を蹴り飛ばす。そしてこちらの様子を伺う北上に視線を移す。



北上「・・・思い出したみたいだね」



時雨「このクソ聖女のおかげだよ、さてと」



一歩踏み込んで憎たらしい顔にとび蹴りを打ち込む。しかし北上とっさに右腕で防がれる。



北上「危ないなー・・・私じゃなかったら即死だよー?」



力の抜けた右腕をさすりながら北上は飄々と答える。蹴りの手応えはあった・・・恐らくは北上の右腕は骨が砕けてしまっているはずだ。



時雨「・・・腕一本しか持ってけなかったか」



北上「腕一本もだよ・・・人間には腕は2本しかないんだからさー」



北上はあきれたように答える・・・まぁだからどうでもいいか、隊長を痛めつけてくれたお礼はまだ終わってはいないのだから.今度は拳でもぶち込んでやろうかと思ったところで後ろから強烈な気配を感じた。



時雨「・・・しぶといねぇ榛名さんも」



榛名「体は貫かれはしましたが大した事ではありません、むしろ目が覚めたぐらいです」



腹に穴が開いた状態ではあるが慈愛に満ちた笑顔は崩さない・・・この様子では本当に大したダメージになっていないようだ。



榛名「・・・安心してください、これ以上は危害を加えるつもりはありませんから」



時雨「・・・はぁ?」



榛名「天鳥船奪回作戦をレポートを見ましてね・・・これからの戦いでは時雨さんのその力が必要になると思いましたので」



北上「それで時雨の記憶を取り戻す為にショックを与えたって事」



時雨「へぇ・・・」



雲龍「そのために私達を巻き込む必要はあったのかしら・・・返答次第では」



夕立「」



雲龍は意識を失った夕立を僕達の前に投げ捨てる。・・・しかし見たところあざや傷などはなくボコボコにされたような感じではない、恐らくは急所を狙われて一撃でやられたのだろうか・・・



北上「こうなるって?・・・こりゃ予想外だね」



榛名「ええ、まさか夕立さんがやられるとは」



雲龍「まぁ身体能力は凄かった・・・スピードやパワーとかね。でも戦い方が素人過ぎるのよ」



隊長「まぁ・・・人間同士の殺し合いってやつをやった事が無いんじゃ仕方ないだろうな」



葛葉「・・・さすがは雲龍君だ、艦娘となっても直接戦闘の凄まじさは衰えていないようで安心したよ」



ふいに芝居かかった声が後ろから聞こえた・・・隊長や雲龍も底が知れないと思ったがこの男には負ける。だってこれだけの実力者達に気配を察知させずに後ろに回れるのだから。



雲龍「・・・貴方もよ、元帥になんて偉くなってもその神出鬼没さは衰えていない様で安心したわ」



榛名「・・・雲龍さん」



葛葉「榛名君・・・構わないよ彼女とも以前からの知り合いだからね」



雲龍の態度が気に食わなかったのか戦闘態勢に入ろうした榛名を元帥が止めた。



榛名「・・・はい」



葛葉「とりあえずは皆入渠を済ませて来るといい、隊長は残ってくれ・・・榛名君」



榛名「わかりました・・・では案内しますね」



時雨「ん・・・」



北上「うーい」



雲龍「夕立は・・・置いてけないわね」



夕立「・・・」



扉を開けて入渠ドックに向かう。しかし元帥と隊長・・・何の話だろう?手荒く僕の記憶を戻させるし、それに青葉さんに僕たちの戦いを観察させていたし、何の目的でこんなことを・・・?



時雨「まぁ・・・考えてもわからないよね青葉さん?」



青葉「・・・私って隠れる才能ないですか?」



北上「いやいや・・・そんなことないよ?大したものだって」



榛名「気配は感じましたがどこにいるかまでは感じ取れませんでしたし」



青葉「はぁ・・・急に目の前に現れてもだれも驚かないし」



急に目の前に現れた青葉に対し誰も驚くことなく平然していた。



雲龍「・・・今度は何を探っていたのかしら」



青葉「探るぅ?・・・いやいやぁそんな訳・・・」



榛名「・・・」



北上「・・・」



時雨「・・・」



その場にいた全員が青葉に対して疑念のまなざしを向ける・・・さすがの青葉もたじろいでしまったようだ.



青葉「・・・新設する特殊部隊の為にスカウトです」



時雨「へぇ・・・第9以外にもう一つ作るんだね」



青葉「・・・ええ、今回の会議で部隊の再編を行うんですよ」



北上「そこで新設部隊のお披露目ってとこ?」



榛名「それもありますけど・・・一番は新任の提督たちが集まることですね」



時雨「新任の提督?・・・変わるのかい?」



青葉「ええ・・・まぁ変わるのは一部ですけど」



そんなことを話していると入渠ドックにたどり着いた。やはり大本営・・・入渠ドックの規模がまるで違うな。



榛名「さて、入りましょうか?皆さんお怪我されてますし」



そういう榛名は腹に穴が開いているはずだが・・・むしろ榛名が一番大怪我をしているはずなのだが・・・



北上「いやー助かるよ・・・骨が砕けちゃってさー」



雲龍「結局夕立は私が運んだけど・・・面倒だからそのまま投げ込んでいいかしら?」



青葉「・・・たくましいですね」



時雨「まぁ・・・ね」







会議室


隊長「で?・・・今回は何を企んでいる」



葛葉「ひどいね・・・まぁ否定はしないが」



こほんと咳ばらいを一つ・・・



葛葉「・・・特務機動戦隊を再結成する、隊長は君だ、佐伯隆二君」



隊長「佐伯・・・その名前をまた使えと?」



葛葉「そうだ・・・その名前が一番馴染みがあるだろう?」



隊長「まぁ・・・な」



葛葉「メンバーに関しては青葉君に一任してある、君にも納得してもらえるはずだ」



隊長「青葉が・・・ふむ」



それで青葉が気配を消していたのか・・・助けるでも逃げるでもしないから何のためにいるのかと不思議に思っていたが・・・となると大体メンバーは予想できるか。



隊長「・・・まぁ楽しみにしているさ、じゃあまた会議でな」



葛葉「あぁ、遅れないように頼むよ?」



隊長「わかってる・・・」



ぶっきらぼうに手を振りながら答える・・・以前不知火にも言われたがそんなに信用ないのだろうか?遅刻に関してはしたことが・・・そういえばあったな。まぁとりあえずのどが渇いたし飲み物でも貰いに行こうか・・・




時刻 1100 大本営 第1鎮守府  第1会議室



葛葉「さて・・・皆集まったかな」



海藤「元帥、そのことだが第6鎮守府の提督がまだ来ていないが・・・」



確かに、一つだけ席がぽっかりと空いる。そこに来るはずの人物は確か・・・



ムジカ「・・・鳴海燕と言ったな、素行に問題ありとされた人物だが」



鳴海燕・・・桐生君と名城君と同期でムジカの言う通り若干素行に問題ありとされ先の二人に比べて出世を遅れていたが能力では決して劣るものではない。むしろかなり頭の切れる男で敵に回せばこれほど脅威になる男はいない。



希未「セクハラ・・・でしたかぁ?ですが優秀で艦娘からも好かれているとぉ」



やや間延びするしゃべり方の女性・・・彼女は来栖希未、元々は第8鎮守府で通常艤装兵を率いて戦っていた。特殊な脳波を用いた専用の艤装で艦娘以上の戦果を挙げるなど隊長に匹敵する歴戦の勇士だ。



ムジカ「希未ぃ!セクハラなど女の敵だぞ!?」



名城「まぁまぁ・・・鳴海も本気で嫌がる娘にはしません、それに希未殿も・・・」



名城大介・・・目立たないが高い実力と真面目で誰からも信頼されるカリスマ性を持ち合わせている。何かしらいさかいがあるとこのように彼が仲裁に入る・・・だが今回は相手が悪い。



ムジカ「貴様に何がわかるか!・・・鳴海は貴様と違って不真面目で破廉恥な男なのだぞ!」



本谷ムジカ・・・第5鎮守府の提督であり元は艦娘研究者であり明石、秋津洲と同僚であったが指揮官として適性を買われ艦娘の運用方法が確立されていなかった時期に指揮官として活躍、艦娘指揮の在り方を確立させた影の功労者である。だが少々問題がある、それは戦場以外ではやや頑固すぎる事と声が大きすぎる所だ.



御堂「フン・・・もう少し落ち着いたらどうだ?戦場の時の貴殿はもっと凛々しかったはずだが」



御堂輝夜・・・凛々しく美しいその姿からはわからないが性別は男であり年齢も正体も不明の軍人だ。だが作戦指揮は見事なものであり特に防衛戦においては海軍1の実力。また彼の指揮下の朝潮駆逐隊は完全に統制された艦隊運動で有名である。



ムジカ「御堂・・・貴様」



桐生「・・・失礼」



海藤「桐生、どこに行く?」



桐生「お手洗いですよ、この言い争いは長くなりそうなので」



桐生創・・・第7鎮守府の提督、戦闘指揮に優れ機動力の高い艦隊による電撃戦に優れる。以前は轟沈者を出したことがきっかけで燻っていたが天鳥船奪回作戦の際に自分と向き合い本来の自分を取り戻した。



葛葉「確かに・・・構わんよ」



海藤「・・・葛葉、お前楽しんでないか?」



葛葉「ふふ・・・何のことかな?」



海藤正行・・・第2鎮守府の提督。 私の同期で常に私と互いに切磋琢磨しきた関係であり海軍で中でも特に親しい間柄である。先の戦いでは私に反感を持つ連中をまとめて命を懸けて始末させるために敢えて敵となった。だが真意に気づいた隊長たちに説得され海軍に復帰した。



葛葉「まぁ・・・いいじゃないか、なぁ?隊長・・・」



隊長「・・・・ぐぁ~・・・ぷすぅー」



さっきから静かだと思ったが・・・まさかここまでぐっすり寝てるとはな。隊長らしいといえば隊長らしいがな・・・



海藤「おいおい・・・」



副官「すみません・・・本当にすみません」



阿賀野「がー・・・ぐぉー・・・すぴー」



海藤「あいつもか・・・」



海藤はまた深くため息をついた・・・まぁ楽しくて結構じゃないか今日はただのお披露目会、重要な議題があるわけではないのだから。



鳴海「すみませーん!・・・ちょっと遅れちゃってー・・・・って」



ムジカ「御堂ー!!」



御堂「フン、何だ?」



名城「まぁまぁ・・・落ち着いて」



隊長「ぐー・・・ぐー・・・」



葛葉「ふふ」



海藤「はぁ・・・まったく」



鳴海「・・・え?どゆこと?」



桐生「お前の話をしていたらいつの間にか言い争いになっていてな・・・俺も不思議でならないが」



鳴海「ほへー・・・やっぱ桐生ちゃんはそのほうがいいねぇ」



桐生「ん?」



鳴海「俺の真似してたじゃん?・・・似合ってなかったし」



桐生「言うな・・・自分が一番分かっているんだから」



海藤「鳴海・・・すまんが席についてくれ」



葛葉「さて・・・」



これで全員・・・海軍主力艦隊を率いる9つの鎮守府とその提督。今はこのように些細な言い争いしているがそれは互いが互いの実力を認め合い気の許せる仲間であるからだ。ゆえに有事となれば心を一つに戦ってくれるこれ以上なく頼もしい友である。その証拠に私が席を立ち口を開こうとすればムジカは口をつぐみ、海藤と御堂は姿勢を正し、名城、桐生、鳴海は真剣な目つきに変わり、希未は微笑む、そして隊長と阿賀野は・・・寝たままか。



葛葉「・・・希未君」



希未「はぁーい」



希未は席を立ちトコトコと歩きながら隊長と阿賀野の席の間に位置取る・・・笑顔のまま両手をわきわきさせるとそのまま阿賀野と隊長の頭頂部を思いっきり掴むとめきめきと音を立てはじめた。



隊長「ぐ・・い、いいぃ!!」



阿賀野「うぉ・・・あぁぁあああ!!」



希未「おはようございまぁす・・・居眠りは気持ちよかったですかぁ?」



そしてこ微笑み・・・メキメキと音を立てるほど力を入れておきながら表情一つ崩れないとは流石だな。



隊長「あぁぁ!・・・・すまん!ほんとすまん!!」



阿賀野「いいいたい!もうしないから・・・離してぇ!!」



希未「はぁーい・・・これから会議が始まるんですから、居眠りはいけませんよ?」



隊長「うぐぐ・・・」



阿賀野「あうぅ・・・」



葛葉「それでは会議を始めよう・・・とはいっても特に議題はないのだけどね」



御堂「ほう・・・それではなぜ提督全員を集めたんだい?」



葛葉「・・・特務機動戦隊を再結成、それに伴い日本海軍の再編成を行うためだよ」



桐生「特務機動戦隊・・・過去日本海軍の戦いのすべてに参戦し華々しい戦果を挙げた特殊部隊でしたか」



隊長「・・・ふん」



阿賀野「・・・」



ムジカ「しかし、わざわざその名前を使うということは隊長と阿賀野が中心となるわけか?」



海藤「その通り・・・形式上は第2鎮守府の所属となるが総司令は葛葉元帥が兼任しその下に総隊長として隊長、副隊長が阿賀野、参謀官として私がつく」



名城「では実働部隊はどうするおつもりですか?今の海軍に先の特務機動戦隊ほどの質と規模の部隊は厳しいと思うのですが」



葛葉「それについては問題ないよ、規模は縮小する。艦娘でいう一艦隊分のみだ」



鳴海「超高練度で高い機動力と柔軟性をもった少数精鋭による特殊部隊ってことですかねー」



葛葉「そうだ・・・メンバーは既に決まっている、あとは隊長が確認してくれたら手続きはすむ」



隊長「誰が来るか・・・」



阿賀野「少なくとも私は聞いてないよ?」



葛葉「そして提督である隊長と阿賀野が特務機動戦隊に異動となる関係で第9鎮守府と第3鎮守府の提督にはそれぞれ副官である田中孝則君と名城大介君になってもらう」



副官「元帥・・・本気ですか!」



葛葉「本気だよ?名城君と田中君は実質的に提督としての実務に当たってるそうじゃないか、ならば問題はない」



副官「ですが・・・私に戦闘指揮と艦の指揮をしろと?」



葛葉「・・・その事なら問題ないよ、代わりの人材を用意してある、隊長に匹敵する実力を持った人材がね」



隊長「俺に匹敵?・・・そんな奴いるか?」



阿賀野「匹敵とは言えないけど私と雲龍、青葉ぐらいかな?あとは・・・」



桐生「一人います・・・天鳥船奪回作戦の時にともに戦い雪風と共に消息を絶っていた男が・・・」



隊長「・・・まさか」



葛葉「あぁ・・・艤装の準備に手間取ってね、やっとともに戦ってくれる事になったよ」







大本営 別室 



時雨「・・・・・・暇だね」



出されたお茶を一飲みし座っていた椅子の背もたれに体重をかける・・・この部屋で待っているように青葉に言われたが誰もいないし、寝るにもこの椅子では固すぎる。



時雨「はぁ・・・だる」



ふいにコンコンと扉がたたく音がする・・・誰かが入ってくるのだろう。まぁ誰が入ってくるにしてもこの暇な状況が解消されるなら助かるが・・・



時雨「どうぞぉー・・・!?」



扉が開かれた瞬間・・・全身に寒気が走りだした・・・こいつは危険だと本能が伝えてくる。こんな気を放つ奴なんて一人しか知らない・・・まさかあいつまで海軍にいたなんて・・・



時雨「くそぉ!・・・」



放たれたナイフを躱し集中する・・・奴の戦い方は熟知している。奴はからくり人形を使ってのオールレンジ攻撃を得意としていた・・・次の攻撃はどこから来るか?



???「さすがは捕食者・・・その動き衰えていない様でうれしいですよ?」



時雨「・・・聖女と死神の次は奇術師かい?面倒くさいなぁ!」



ふいに後ろから攻撃の気配を感じ飛び上がる・・・その直後僕が立っていた場所に多数のナイフが突き刺さっていた。



???「まぁまぁ・・・せっかくの戦いですし楽しみましょう?此処にいる連中は皆退屈で・・・」



時雨「あんたの退屈なんて知ったことか!」



左右からナイフが飛んでくる・・・空中で体をひねりナイフを躱すとその内の一本のナイフをつかみ取り下に陣取っていたからくり人形に投げつける。するとナイフは人形を貫き人形は動きを止めた。



???「!?1体やられましたか・・・ですが」



青葉「そこまでですよ・・・千歳さん」



千歳と呼ばれた奇術師の後頭部にに電磁バンカーが突きつけられている・・・いくら奇術師といえどあそこまで完全に後ろを取られてはなにもできまい。しかし夕立を倒した雲龍もそうだが隊長の部下である連中は一体何者なのだろうか?まるで普通の人間とは思えない強さだ。



千歳「・・・後ろをとれましたか?奴に集中し過ぎましたかね」



時雨「助かったよ・・・青葉さん」



青葉「いえいえ・・・これ以上は互いに無事では済まない気がしましてね」



綺麗に濁っていた目に光が戻る・・・いつもの明るい青葉に戻った。



千歳「止めなくても殺しはしませんでしたよ・・・私は戦いが好きなだけで殺戮は趣味じゃありませんし」



時雨「それが面倒なんだよ・・・巻き込まれるこっちの身を考えてほしいね」



青葉「どちらにしてもこれ以上は必要ありません、千歳さんの力量は十分解かりましたから」



そういうと青葉は部屋の外へ出て歩き出した。



時雨「え?どこ行くんだい?」



青葉「ついてきてください・・・これでメンバーはそろいましたので」



千歳「・・・だそうですよ?えっと・・・」



時雨「時雨だよ・・・あと捕食者はやめてくれないかな、痛いやつみたいだし」



あの時は互いの名前なんて知らなかったから誰かが勝手につけた呼び名で呼んでいたけど・・・今考えてみるとかなり痛々しい気がする。



千歳「それなら私も千歳と呼んでくださいね、奇術師って言うの好きじゃないんです」



時雨「わかったよ千歳・・・しかしこれで二つ名持ちの4人が艦娘になっているなんてね」



千歳「ええ・・・何の因果か、まぁ今はとりあえず青葉さんについていきましょう」



時雨「そうだね・・・」



しかし千歳が仲間として戦ってくれるのであればこれほど頼もしい事は無い。東京で深海棲艦やスラムの屑どもと戦っていた時に何度もやりあったから痛いほど千歳の実力は知っている。あとはほかのメンバーだが・・・この調子であれば相当な実力を持った連中になりそうだ。







大本営 会議室 




葛葉「さて・・・では入ってきてくれ」



葛葉の合図の後に会議室の扉が開かれた・・・そこに立っていたのは真新しい軍服を身にまとった男が立っていた。あの顔は・・・一度は特殊艤装で死力を尽くして戦い2度目は天鳥船奪回作戦で黒幕であった潜水艦とともに戦ったあの男・・・



隊長「・・・ほう」



副官「航空戦艦・・・でしたか」



葛葉「その名前は正しくないね?田中君」



副官「え?・・・」



???「そうですね、いまの私たちはオリジナルではなく一人の人間としてここにいますから」



葛葉「あぁそうだね・・・霧雨錬司君?」



霧雨「ええ・・・よろしくお願いします田中孝則提督」



田中「はい、よろしくお願いします、霧雨錬司さんあなたの実力は身をもって知っていますから・・・頼りにさせていただきます」



二人が固く握手をする・・・これで第9鎮守府の戦力は問題ない。あとは特務機動戦隊のメンバーがどうなるかだが隊長である俺に知らせれていないのが少々気に食わない。



阿賀野「さて・・・あとは」



阿賀野が自慢の髪を弄りながら葛葉に目を向ける・・・対する葛葉も阿賀野の気持ちを察したのか一つ咳ばらいをし話を進めた。



葛葉「・・・特務機動戦隊だね、それについてはもうそろそろ青葉君が来るはずだが」



その時会議室の扉がノックされる・・・葛葉が合図すると扉は開かれた。



青葉「青葉型重巡洋艦1番艦、青葉です・・・葛葉元帥、演習の準備ができました」



葛葉「うむ・・・それでは演習場へ向かうとしよう」



隊長「・・・わざわざ演習場まで?メンバーを紹介して終わりじゃないのか」



青葉「いやはや、それでもいいんですけどねぇ・・・使えるってこと示しとかないといけませんし」



鳴海「特務機動戦隊の演習ですかぁ・・・楽しみですねぇ」



御堂「確かにな・・桐生、名城や鳴海は見れば良い勉強になるぞ」



名城「はい、勉強させていただきます」



隊長「・・・俺たちはいいのか?」



青葉「隊長は他の提督たちと一緒に見ていたください、阿賀野さんは出撃してもらいたいのですが・・・」



阿賀野「OKよ・・・じゃ早速行きましょ、準備しなきゃね」



隊長「ふん、まぁいいか・・・俺も楽しみさせてもらおうかね」








大本営 演習場 



瑞鶴「・・・各員用意はいい?」



加賀「ええ」



金剛「あーい」



長門「出来ている」



暁「問題ないわ」



村雨「OKよー」



大本営第1鎮守府が誇る精鋭が応答する。普段ならばこれだけの第一鎮守府の主力艦娘がたかだか演習に集められることは無い。それは第1鎮守府の艦娘は基本的に他の鎮守府に派遣されていたりなど常に最前線で戦い続けているからだ。だが今日の演習に私たちは集められた。



瑞鶴「大本営の演習場に集まるなんて久しぶりね」



加賀「そうね、長門と暁は第6鎮守府に出向していたし」



長門「お前たちは天鳥船奪回作戦に参加していたんだろう?栄誉ある作戦に参加できてうらやましいな」



金剛「ふふーん・・・まぁ要するに私のほうが優れていたって葛葉元帥が判断したってことよ?」



長門「ふっ・・・」



金剛「あん?」



暁「まったく・・・そんなんじゃレディには程遠いわよ金剛」



金剛「んだとチビ・・・」



村雨「あーやだやだ・・・会わない間に鍛えすぎて脳みそまで筋肉になっちゃったのねー」



金剛「おい尻軽」



瑞鶴「皆変わらずにいてくれて嬉しい・・・けど今回の演習は油断してられないのよね」



そう・・・今回の相手は再結成された特務機動戦隊が相手なのだ。とはいってもこちらには第一鎮守府の主力艦6隻と新人6隻の12隻と特務機動戦隊の5隻という戦力差はあるのだが。



金剛「・・・特務機動戦隊たってそれほどではないと思うけど?少なくともトップクラスの私たちは入っていないんだし」



長門「まぁ・・・他の鎮守府の名のある艦娘たちも呼ばれていないわけだからな」



村雨「・・・まぁね」



確かに彼女たちが言う通り、元々特務機動戦隊には艦娘はいなかったし今のところ異動したという艦娘の話も聞いていない。だがあの隊長がかつて率いた部隊の再結成・・・メンバーには心当たりがある。



加賀「・・・瑞鶴は相手に心当たりがあるのかしら?」



暁「?・・・そうなの?」



瑞鶴「ええ・・・」



もし私の予想通りのメンバーなら・・・まともにやっては負けは確実だ。ならば奇策をもって打ち破るしかない。



矢矧「瑞鶴さん、こちらの艦隊も準備できました・・・あとは出撃するだけです」



新人達も準備が終えた様だ・・・通信を入れてきたのは矢矧で新人たちの中でも好成績で期待の新人だ。やはり期待されているだけのことはある、過度な緊張はしていないし気合も入っているようだ。



瑞鶴「今回は演習、死にしないから思い切ってやりなさい?それに・・・」



矢矧「それに?」



瑞鶴「この演習・・・勝利のカギは貴女達よ」






演習場 指令室 



葛葉「さて・・・もうそろそろだね」



鳴海「・・・隊長さんちょっとよろしいですかねぇ」



ニヤついた顔のまま鳴海はそう言いながら俺の肩をちょんちょんと突いてきた。



隊長「ん・・・鳴海だったな?何だ」



鳴海「隊長は指揮しなくていいんですかい?・・・隊長不在じゃ不利なんじゃ」



まぁ・・・確かに普通に考えればその通りだが青葉が必要ないと判断したのだ俺が行く必要はないのだろう。



隊長「青葉がいるんだ問題ないさ」



鳴海「・・・青葉さんが?」



隊長「あぁ・・・なんだってアイツは戦場で育ったようなものだからな、俺の指示なんて必要ない」



俺の言葉に鳴海は一瞬驚いた顔をしたがすぐにニヤついた顔に戻し演習場に視線を向けた。 すると丁度新生特務機動戦隊の艦娘が展開し終わったところでありメンバーの顔を見ることができた。



隊長「見たことない白髪の奴が一人と、あとはあいつ等か・・・心強いな」



このメンバーなら十分な戦力となる。あとはあの知らない奴がどれ程のものかそれ次第だな・・・





演習 特務隊



時雨「なんだい、相手の方が数が多いじゃないか」



朝早くに呼ばれて襲われてまた襲われてそしてそのまま演習に引っ張り出されて、それだけでも正直うんざりだったがここにきて倍の数相手に戦わされるとは・・・



青葉「まぁ特務機動戦隊は対多数を主眼に置いていますからねぇ」



時雨「まぁいいけど、その代わり本気でぶちのめしていいかい?今ちょっとイライラしてるんだよね」



阿賀野「流石に大怪我とかさせなきゃいいと思うけどねぇ」



さぁてお許しが出た・・・ここは本気でやらせてもらおう、隊長にもいいとこ見せたいし・・・



千歳「それで・・・旗艦は青葉さんでしたか?どのように戦うんでしょうか」



青葉「んーとですねぇ、まず旗艦は雲龍さんにやってもらいます」



雲龍「あらいいのかしら?てっきり青葉さんが旗艦として指揮してくださるのかと・・・」



青葉「いやいや・・・」



雲龍は笑顔だったがなんと見えない圧力を醸し出していた。傍から見てもそう感じるのだから実際に圧力を向けられた青葉はたまったものではないだろう。実際に青葉は雲龍の圧力には負けてしまったのかただ苦笑いしかできていなかった。



青葉「・・・あーえっとあと作戦なんですけどね?」



阿賀野「・・・どうすんの?こっちはもう後手に回るしかないと思うけど」



阿賀野の言う通りで出撃するときから何も考えていなかったわけなのだから現状できることは少ない。その中で青葉はどんな作戦を言い渡すのだろうかと皆が青葉に注目する。しかしその青葉から発せられた言葉は意外なものだった。



青葉「作戦はありません、強いて言うなら瑞鶴さんの作戦に付き合ってあげるんです」





演習 第1鎮守府側 



瑞鶴「さて・・・矢矧たちはもうそろそろ接敵するぐらいね」



演習開始が告げられてから2分、作戦通りに動いてくれていればもうそろそろ矢矧たちは相手側の艦娘にと接触し交戦を始めるはずだ。相手には青葉や雲龍がいる以上矢矧たちが新人ばかりのただの囮であるのは気づいているはず、ならば相手は誰か一人を矢矧たちに向かわせ殲滅させるはずだ。



加賀「瑞鶴?もうそろそろ私たちも動きましょう」



瑞鶴「そうね・・・もうそろそろこっちに向かってくるはずだしね」



加賀「矢矧たちには申し訳ないことをしたわね」



瑞鶴「そうねぇ・・・航空支援は加賀に任せる、アレをやって私の艦載機がいるように見せかけて」



加賀「・・・えぇ」



今回の作戦は艦隊の皆には数を生かした包囲殲滅を行うと言ってある。内容は私と加賀で艦載機を発艦させ相手部隊を釘付けにして矢矧たちと金剛たちが包囲し攻撃を加えるというものだ。だがあの雲龍達にこんな作戦は通用しないしまず戦力的にこっちのほうが圧倒的不利、今回の演習で勝ちを狙うには一つしか方法はない。



瑞鶴「さぁて行くわよ、狙うは雲龍ただ一人、旗艦を倒して判定勝ちにもっていくしかないわ」




演習 矢矧対???




矢矧「よし、予定ポイントへ到着、艦載機の飛来を確認次第攻撃を仕掛けます」



瑞鳳「了解です、今のうちに艦載機を発艦させますね」



秋月「・・・それでは索敵範囲を広げます、各艦も警戒を」



摩耶「おう・・・」



照月「はい」



陸奥「ええ・・・ん?」



僚艦の一人が何かに気づいたようだ・・・まさか敵がこちらに来ているとでも?そんな馬鹿な、低速航行で電探に引っかからないようなルートを取ったのだ問題はない。だがとりあえずは確認を取らなければない、不測の事態というのもあり得るのだから。



矢矧「どう・・・え?」



言葉をかけた瞬間、横にいた瑞鳳が吹き飛ばされその後方にいた摩耶ごと水面に叩けつられた。



瑞鳳「う・・・ごほっ・・・摩耶さん」



摩耶「あぐ・・・やべぇ・・・骨が何本か・・・いっちまったかなぁ」



???「ふむ、軽く小突いただけなのですが・・・やりすぎてしまいましたかね」



矢矧「あなた千歳?何をしているの!この演習はあなたの様な成績の低い艦娘が来るところでは・・・!?」



千歳「・・・はぁ」



千歳の右手には陸奥の主砲・・・いや正確には主砲であったであろう鉄屑が握られていた。



陸奥「うぅ・・・こいつ・・・」



陸奥の艤装は半分程がえぐられておりもはや戦闘続行は不可能・・・いやそれだけじゃない、そこに浮いているのは秋月型の艤装の破片・・・しかもどう考えても2隻分はある。



矢矧「まさか!」



辺りを見回すと秋月が照月が重なって倒れているのが見えた・・・これではもうまともに戦える状態ではない。



矢矧「千歳・・・貴女がこの一瞬で?」



瑞鳳は発艦装置を破壊され、秋月、照月の両名は意識を失い、摩耶は骨がおられ艤装も損傷あ、陸奥は主砲をえぐり取られ逆側の主砲は何かに殴打されたのか完全にひしゃげてしまっている。千歳は一瞬で5人の艦娘を戦闘不能に追い込んだのか?



千歳「つまらない・・・実につまらないですよ貴女達は」



千歳の声が聞こえた・・・はっとして前方に意識を向けるとそこには千歳の腕が私に向かって伸びてくるのが見えた。



矢矧「・・・ぁ!?」



その直後とてつもない衝撃とともに私の視界は真っ黒になり意識が飛んで行った。






演習場 指令室 



ムジカ「おい・・・あの艦娘は一体何者だ」



御堂「どう考えても普通の兵士ではないな、言うなれば・・・」



鳴海「暗殺者?・・・というか軍人とは違って殺しを生業にしてきた様な感じがしますねぇ」



鳴海の言う通りだ・・・彼女の動きは戦場で育った雲龍や青葉、戦術情報を刷り込まれた俺や阿賀野とは違って一挙手一投足にこだわりの様なものを感じる。だが今は・・・



隊長「・・・なぜあれほどの艦娘が埋もれていた?」



葛葉「彼女は演習や訓練にやる気を示さなくてね、演習成績は新人の中でも最下位、教官たちからの評価も低い」



隊長「・・・だとしたらその教官たちはクビだな、恐らくその教官たちはアイツの目に止まらない程度の実力しかないんだろ」



しかし・・・あれでもまだほんの少ししか力を見せていないはず・・・俺の予想が正しければ雲龍たちとも互角に戦えるだろう。



名城「・・・これで戦力差ほぼなくなりましたね、後は第1鎮守府側がどう打ってくるか」



桐生「おそらくは瑞鶴の作戦通りに動いているはず・・・はじめから新人達を捨て駒にするつもりだったんだろう」



隊長「・・・なに?」



御堂「狙いは雲龍ただ一人・・・そのために少しでも戦力を引き離したかったんだろうな」



希未「そのために新人6人で一人引き付けて・・・だとしたら特務機動戦隊は作戦に乗せられてしまっていますけど」



隊長「・・・確かに」



いくら瑞鶴が戦闘指揮に優れるとはいえあいつらが瑞鶴の狙いに気づかないことはあるまい、少なくとも普段の青葉ならこんな作戦に乗らないはずだが・・・





演習  第1鎮守府側 




加賀「・・・千歳さん予想以上ね」



瑞鶴「ええ1分も持たないなんてね・・・それじゃ後はお願いするわね?」



加賀「任されたわ・・・」



呼吸を整え視線の先にいるであろう特務機動戦闘の面々を見やる・・・ふぅと息を吐き矢をつかみ、すぅと息を吸いながら矢を構えた。



加賀「・・・」



目を閉じ集中する・・・



加賀「ふっ!」



息を吐きながら矢を放った・・・矢は烈風に変化しまっすぐ進んでいく、そのまま続けて1つ2つと放なたれた矢は流星へと変化した。



加賀「さて・・・本気で行かせてもらうわね」



水面に胡坐をかき目を閉じる・・・



加賀「・・・エンゲージ」






演習 金剛対時雨



金剛「あたしの相手はアンタなの?・・・ハズレひいちゃたかなぁ」



時雨「ハズレ?」



金剛は腕を組んで高圧的にそう言い放つ・・・しかし僕のことをハズレとはなんとも失礼な奴だな。



金剛「ええ、ハズレもハズレ・・・隊長に股開いて取り入った駆逐艦だもの」



時雨「股・・・ねぇ?」



随分とはっきり言う・・・周りから見れば僕は色仕掛けで隊長に取り入ったと思われていた様だ。



金剛「あぁ別に貴女の実力が低いわけじゃないのよ?たださ、新人達を一掃した奴とかさ?阿賀野とか雲龍とかに比べると・・・ね?」



時雨「・・・へぇ」



金剛「隊長のお気に入りだから入れてもらったんだろうなぁって思っちゃうよね?」



時雨「まぁ・・・僕のそっちの腕はそれなりだし?この隠せない魅力のおかげでそう考えられてもしょうがないよねぇ」



実際に隊長にはご満足いただいているし、自分でも綺麗な顔と見た目の割には良いカラダしてると思っている以上はね・・・それにソッチで男を満足させられるっていうのは一つのステータスなのだから悪い気はしないし。



金剛「いうねぇ・・・ちんちくりんのガキのくせに、隊長ってやつはよっぽどのロリコン野郎なんだなぁ!!」



・・・しかしこいつの戯言に付き合うのもいい加減飽きてきたな。元々こっちは勝手にに呼び出されて戦わされてイライラしている・・・そのイライラをこいつで発散させてもらうとするかな。



時雨「・・・まぁ冗談はさておき、どうする?」



金剛「は?・・・」



時雨「今すぐ謝れば意識ぐらいは残してあげられるよ?謝る気がないって言うなら・・・ねぇ?」



金剛「おいおい・・・なめんじゃ!?」



時雨「謝る気がない・・・そういうことだね?」



一つ踏み込み右腕を思いっきり振りぬく・・・金剛はとっさに右腕で防ぐが勢いを殺すことはできず後方に吹き飛ばされてしまう。



金剛「う・・・右腕が?力が・・・入らない?」



驚愕の表情を浮かべながら金剛は自身の右腕に視線を向け、何とかして腕に力を入れようとするがまるで力が入らない。



金剛「くっ・・・どういうこと?あの時はこれほどの実力は見せていなかったはず」



時雨「あー言っとくけどね」



金剛「あぐっ!?」



後方に回り込み肘を背骨に打ち込む、金剛は防ぎきれず直撃したため背骨は砕け内臓が損傷した。



金剛「ゲホっ・・・か・・・あ」



時雨「これでもまだ本気じゃないからね」



僕の膝が金剛のみぞおちに沈み込む・・・金剛は体をくの字に曲げ吐血した。すると艦載機の飛行音が聞こえてきた。



時雨「ん?・・・航空支援か」



とっさにつかんでいた金剛を盾にして烈風の機銃を受け止め、流星の爆弾を薙ぎ払う。艤装に装備された機銃で迎撃するがどうにも効果が薄い様だ。



時雨「ちっ・・・なんだいこの艦載機の動きは」



まるで1機1機を直接操作しているかのようにこちらの迎撃に対応している。機銃の抜け穴を通り接近し、対応しにくい部分に攻撃を集中させ動きを封じ込めようとしている。いくら瑞鶴や加賀の艦載機の扱いがうまいとはいえこれほどの動きは見たことがない。



時雨「これが瑞鶴と加賀の実力ってやつかい?・・・困ったね」



時雨対金剛 金剛の艤装全壊と意識喪失による戦闘続行不可能なため時雨の勝利。



阿賀野対暁



暁「はぁぁぁ!!」



阿賀野「っしょぉ!!」



狙いも正確、回避運動も的確だ。流石第1鎮守府の主力として各地で戦い抜いているだけの事はある。だがそれ以上に驚きなのはとっさの判断力の優れている事だ。



暁「・・・貴女は一体?」



阿賀野「ん?」



暁「こっちは本気も本気の120%で戦ってるのに・・・涼しい顔して捌かれるんだもの」



阿賀野「私・・・そんな顔してた?」



暁「?・・・そうよ?」



以前雲龍や隊長に言われたことがある。普段は感情や気迫を表に出して戦うくせに本気になればなるほど表情は落ち着き冷静になっていくと・・・自分では余裕のつもりだったが思った以上に追い詰められていた様だ。



阿賀野「そう・・・ならご褒美あげないとね?」



艤装の一部を取り外し海面に投げ捨てる・・・自分の体に埋め込まれた深海棲艦コアの出力を上げる。



暁「・・・うそ」



全身を赤黒い光が這い回り邪悪な見た目の装甲が形成されていく・・・



暁「思い出した・・・その姿は」



全身から血の気が引いて肌から赤みが抜けていく・・・これで準備完了だ。



暁「特務機動戦隊の・・・まさか他のメンバーも?」



アガノ「正解♪・・・雲龍と青葉は貴女もご存知のあの二人よ?」



暁「・・・そう」



アガノ「あら、思ったよりショック受けてないのね」



暁「レディですもの・・・私は与えられた役目をこなすだけよ」



アガノ「役目?・・・」



暁「時間は・・稼いだ!」



アガノ「ん?」



この音は艦載機の?だが艦載機の支援があったとしても私に勝てるはずがないのに・・・暁は何が目的なのだろうか。



暁「もらった!!」



暁が主砲を構え突撃する・・・



アガノ「何を!」



放たれた砲撃を躱しこちらも近接戦闘に移る。しかし暁はこのタイミングで魚雷を発射した。



アガノ「・・・自爆でもする気?でも!」



前方に飛びあがり魚雷を回避する・・・そしてそのまま暁の顔面を殴ろうと右腕を伸ばした瞬間、暁が一瞬がくんとうなだれると猛スピードで後退した。



アガノ「は?・・・」



暁「うぐっ・・・まだまだ!」



後退しながら主砲と魚雷の一斉射と加賀や瑞鶴の物と思われる艦載機による支援攻撃による猛攻が始まった。



アガノ「うそでしょ!?・・・っと!」



旋回し砲撃を躱し勢いそのままバク宙し機銃掃射で魚雷を誘爆させる・・・襲い来る烈風の機銃は無理に躱さず受け止めることで本命である流星の攻撃に備える。



アガノ「うぐっ・・・!中破判定とは!!」



着水すると魚雷と爆弾による攻撃が始まった。普通に迎撃してはどちらかは回避してももう片方に当たってしまう・・・ならば!




アガノ「ぬぉぉぉぉぉぁ!!?」



残った主砲を後方に向け一斉射し反動で強引に体を前方に吹き飛ばし機銃や副砲の反動を利用しながら爆弾を回避しなんとか着水に成功する。



暁「かかったわね!」



暁の一言と同時に錨が投げ込まれる反射的に錨を躱すとそれが失敗であったことに気づく。



アガノ「・・・錨は攻撃じゃない!」



暁「あなたの動きを封じるため・・・このまま仕留める!」



主砲を構える・・・周囲には艦載機の気配。こうなってしまえば打つ手は一つしかない・・・この手はあまり使いたくなかったが。



アガノ「出力全開!ぅおんどりゃぁぁぁぁぁあああ!!!!」



暁「へ?・・・うそぉ!?」



機関に全パワーを集中させて急速旋回・・・このまま振り回す!



アガノ「るぁぁぁぁぁぁぁ!!」



暁「きゃあぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!?」



まるでハンマーのように振り回される暁の装甲に当たり艦載機を砕かれその数を減らしていく・・・



アガノ「これで・・・仕上げぇ!」



旋回を止め、水面にたたきつけるように体をひねる。



暁「ひ!?・・・爆雷で反動を!」



暁は大きな水柱を立てながら海面に落ちていった。



暁「うぅ・・・」



アガノ「へぇ・・・爆雷で水柱をあげて勢いを殺したのねぇ、でもその爆風で大破判定いただきましたぁ」


 

阿賀野対暁 暁大破により阿賀野の勝利。





長門対青葉



瑞鶴から指定されたポイントに着くと一人の艦娘が近づいてくるのが見えた。ふむ・・・身のこなしは普通の艦娘ではなさそうだが・・・



長門「・・・私の相手はお前か」



青葉「ふむ・・・長門さんでしたか」



青とも紫ともいえる髪をした少女・・・たしか広報の青葉だったか?だがなぜか広報の青葉としてではなくそれ以外の何かで会ったことがあるような気がする。



長門「・・・どこかで会ったか?」



青葉「さぁ?・・・会ったかもしれないし会ってないかもしれないし」



長門「まぁいい・・・さっさと始めよう!?」



その瞬間に背面にとてつもない殺気を感じた。反射的に翻し拳を打ち込んだが動かなければ確実やられていただろう。だがそれ以上に驚いたのは・・・



青葉「さすがは歴戦の長門さん、すごいパワーですね」



打ち込んだ拳をまるでなんともないような顔して受けて止めそう呟く・・・青葉の姿だった。



長門「なんとぉぉぉ!」



姿勢をさげ足払いし主砲を前方に一斉射・・・砲撃の反動を利用し急速後退し体勢を整える。



長門「・・・ふん」



意識を集中させる・・・おそらくいや確実に奴は被弾していない。次はどこからくる?後ろか・・・いや!



長門「右!」



右舷側の主砲で砲撃するが手ごたえがない・・・躱されたか?



長門「!・・・左か!」



砲撃・・・やはり躱されている。



長門「感覚を・・・研ぎ澄ませ」



動いた!とんでもない速さで動いているぞ。しかもこの感覚では艤装は使っていない?何者なのだこの青葉という艦娘は・・・



長門「先を読んで・・・砲撃!!」



進行方向の先に砲撃を放つ・・・対する青葉はそのすべてを躱している。



長門「・・・・このまま追い詰める!」



だんだんと発射間隔を短くし動きを封じ込める・・・そうすれば最終的には逃げ場を失い奇襲のためにこっちに接近してくるはずだ。



長門「・・・」



もうそろそろ逃げ場がなくなるはず・・・動きが止まったな?



長門「・・・主砲一斉射だ!」



手ごたえはないがここまでは想定通りだ。だが主砲を連射したことで周囲の視界は悪化しているため視覚は頼りにできない・・・もう一度感覚を研ぎ澄まして気配を察知しなければ。



長門「・・・む!」



左舷側から感じた気配に向けて全力を込めた正拳突きを打ち込む。



長門「はっ!!」



打ち込んだ拳は気配の元に向かっていく・・・だがその時私の右腕が何者かに掴まれたと思うと本来曲がるはずがない方向に曲げられた。



長門「・・・!?」



一瞬遅れて曲げられた右腕に激痛が走る・・・



青葉「驚きました・・・以前手合わせしたときより随分と強くなっていますね」



長門「貴様・・・一体・・・!?」



見上げた先にいた青葉は今まで見ていた広報としての青葉ではなかった。その目に輝きはなく綺麗に濁っていた。艦娘になったばかりの時に手合わせしたあの少女とまるで同じ・・・感情なんてものは母親の中に置いてきたかような純粋な殺人機械のような目だった。



長門「・・・まさかあの時の!」



青葉「はい、お久しぶりです」



長門「・・・また負けたか」



青葉「今回はかなり追い詰められましたよ?」



長門「気休めはいい・・・自分でもわかるさ」



こちらは全力を尽くし戦い挑んだが負けた・・・あと一歩何てレベルではなかった。あの時よりもかなり強くなったつもりでいたがまだまだ足りていなかったようだ。だがこれで青葉を引き付けることはできた・・・村雨と瑞鶴次第では勝利も見えてくる。



長門「・・・村雨、瑞鶴あとは任せたぞ」



青葉対長門 長門の戦意消失により青葉の勝利






演習場 指令室 



時雨をはじめとする特務機動戦隊と第1鎮守府の演習はこちら側の圧倒的優位で進んでいる。1人1人の練度の圧倒的差を見せつけ、新生特務機動戦隊が方針の通りの超高練度の少数精鋭であることを示すことに成功しており演習の目的はしっかりと果せているようだ。



桐生「・・・」



名城「・・・なんと」



御堂「青葉と阿賀野は流石は元特務機動戦隊と言ったところだが・・・あの時雨という艦娘も凄まじい」



桐生や名城は特務機動戦隊の戦いを見たことがないためかあまりの実力に言葉を失っているようだ。まぁ無理もない、艦娘は素質があるとはいえやはり元一般人、雲龍達とはまるで環境が違うのだ。御堂も言っていたが東京出身である時雨とそれに匹敵する実力の千歳は一体何者なのか・・・



ムジカ「以前の時とはまるで別人だな・・・」



隊長「あぁ・・・暴走の時か」



ムジカ「あぁ、ここまでの覇気はなかったな」



御堂「して隊長?君はロリコンなのかい?」



ロリコン?・・・あぁ金剛が俺のことをロリコン野郎とかなんとか言ってたな。金剛は聞こえていないと思っていたのだろうがこっちにはばっちり聞こえてしまっており御堂が食いついてしまったわけか・・・



希未「そうですね・・・気になります」



隊長「いや・・・別にそういう趣味はないが」



御堂「む・・・」



眉間にしわを寄せたかと思うと俺の目の前に来て顔を近づけてきた。



隊長「御堂、近い」



鼻先は触れ合い息も顔を撫でているのがわかるほどの至近距離だ・・・男性とは思えない美しい顔立ちと女性を思わせる良い匂いが襲いかかる。すると御堂の手が肩に触れ体を密着させてきた。普通に考えればこの状況は男にとってうれしいものである・・・御堂が男である点を除けばの話だが。



御堂「しかし私がこうやって誘惑しても反応一つしてくれないからね・・・金剛の言うことも一理あると思ってしまうのだよ」



隊長「あの・・・」



御堂「ん?・・・ロリコンではないのだろう?ならば少し反応してくれてもいいではないか」



希未「・・・んふふ」



御堂は見た目は魅力的な女性風なためこんな風に密着されると色々と困ってしまうのだが・・・他の皆は何故かこうなると見て見ぬふりをし始めるし希未に関しては目を輝かせている始末だ。どうしよう・・・この雰囲気では離してもらえそうにないぞ。



名城「御堂提督は男性ですから反応しないのが当然なのでは?」



海藤「まぁ・・・うん?」



葛葉「我が日本海軍が誇る闇・・・と言ったところか」



霧雨「深い闇・・・ですね」



田中「・・・違うと思いますけど」




雲龍対瑞鶴



雲龍「包囲殲滅と見せかけて旗艦のみを大破させる・・・か」



実際の戦場であれば旗艦である私が大破しようが勝敗には関係ない。だがこれは実戦ではなく演習であるため私たちに勝つと言う点においては実に有効な手段だ。



雲龍「しかし見くびられたものね、私を大破判定まで持ち込めると思っているのでしょう?瑞鶴」



飛来する艦載機を見て呟く、恐らく全員に高密度の航空戦力を向けているのだろう。ここに来るのは村雨とかいう艦娘だと思ったのだが・・・



瑞鶴「・・・やっぱり乗ってくれてたのね」



雲龍「ええ・・・貴女が来るとは予想外だったけど」



瑞鶴が此処にいるということは今皆を襲っている航空戦力は加賀が扱っているいうこと。だが歴戦の兵士である阿賀野と青葉を、いまだ真の実力が未知数な時雨と千歳を抑えていると言う事実に驚きを隠せない。



雲龍「いったいどんなカラクリかしら」



瑞鶴「残念だけど秘密・・・さて行くわよ」



雲龍「ええ・・・かかってきなさい」



瑞鶴の顔から笑みが失せ真剣な表情に変わる。矢を構えたその姿は隙はなく瑞鶴が艦娘としてトップクラスの実力を持つことを端的に表している。しかしこちらも負けていはいられない・・・これでも特務機動戦隊では隊長に次ぐ実力なのだから。




後書き



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SS好きの名無しさんから
2019-08-27 02:15:20

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2019-08-27 02:15:21

2016-09-07 12:27:37

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1: SS好きの名無しさん 2019-08-27 02:16:16 ID: S:go8LJk

続きを待ってます!(* ̄∇ ̄)ノ


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