唯一の居場所を自ら消した提督
ひたすら暗く、最後までこの提督が報われることはないので読み切る方は注意してください
駄文ですがご容赦を
短編です
注意!このssには以下の内容が含まれます
※艦これ要素、ひどい構成、鬱展開、最後まで暗い、矛盾だらけの文章、さして面白くない
この注意点がOKな方のみ見られたし
さびれた田舎町に彼は住んでいた。
彼はまさに今、死のうとしている。
柱に太い縄を渡し、輪っかを作り、その輪に首を降ろした。
何故こんなことになったのか、何故こんな結末を迎えてしまうのか。
それは彼の生い立ちから見ればこの結末を迎えるのも想像に難くないものであった。
彼はこの世の中が嫌いだった。彼は自分自身が嫌いだった。そう、彼は全てが嫌いだったのである。いや、嫌いになったと言うべきか。
彼は生まれたころから親から嫌われていた。
彼の親は彼と目が合うたびに舌打ちをしていた。
そんな家庭環境が物心ついたころから当たり前のように存在していた。
彼はほかの家庭もそんなものだと、子供心に考えていた。
そんな彼の常識が打ち砕かれるのは彼が10の時である。
親しい友人の家に遊びに行ったのだ。
その友人の家はとても明るく、兄弟もいて、父と母が怒鳴りあうことなく、また、父と母が子の顔を見て笑っている。
全てが違っていたのだ。
彼の家には何一つないモノがその家には全てあったのだ。これが少年だった彼に与えた衝撃がどれほどのものだったかは火を見るより明らかである。
彼は友人の家で友人と遊んでいた。だがしかし、彼の友人が友人の親や兄弟と話しているのを見るとまるで自分が一人ぼっちのように思えて、いたたまれなくなったのである。
無理もない。彼が自分の家に帰れば常に怒号が飛び交い、自分を見ると舌打ちをするのだから。
自分は天涯孤独なのだ。そう考えると彼は他人の目も気にせずわんわん泣いてしまった。その日彼の頬にくっきりと見える2本の線が入った。
自分は孤独なのだ。周りの者とは親しくなれないのだ。そんなことを深く考え始めた彼は変わってしまった。
幼き頃の屈託のない笑顔の彼はもういない。いつしか、親しかった友人も消えていった。
今の彼にあるのは孤独である。彼の目に光はなく、その目はどこに焦点があってるのか分からなかった。
そんな彼の陰口をたたかない者はいない。いつしか彼は本当に孤独になってしまった。
それどころか、彼が行動するたびに周りの者から笑われるような人間になったのだ。
彼は自分のことを嘲笑う奴らを見下そうと必死に勉強した。
その甲斐あってか、彼は地区一番の学校に入学するまでに至った。
だが、この選択が後に彼の人生を狂わせる結果となってゆく…
彼は地区一番の学校に入学した。
ここならだれも自分のことを笑うものはいない。そう思っていた。
確かに誰も彼のことを笑わなかった。それどころか、彼の経験談を聞くと皆口をそろえて彼を慰め、励ましてくれた。
ここはなんと素晴らしい学校だろうか、なんて素敵な人達だろうか。彼は猛勉強した甲斐あったと自分を褒めた。
だがしかし、彼は入学できたとは言え実は彼は下位で合格したのである。
当然ながら、他の学校と比べれば彼はかなりの高評価を受けるであろう。
だが彼の通う学校では低評価の烙印を押されてしまうのである。
無理もない。将来は政治家になるか、医者になるか、はたまた歴史に名を遺す人間になるか。そんな金の卵ばかりが通う学校である。
凡人の彼はどれだけ勉強しようと所詮は凡人なのであった
彼はそんな天才たちに追いつこうと毎日必死に勉強する。
だが、試験では毎回下から数えた方が早い順位を取り、彼の心意気は次第に消えていったのである
不運なことにこれがまだ地区二位か三位の学校なら彼が驕る事も無かったであろう。
だが彼が通うのは地区一番の名門校。彼には自分は一番頭のいい学校に通っているという自負があったのだ。
その自負は次第に誇りから驕りに変わり、いつしか他の学校の人間を見下すことで彼の心の健康を保っていた。
彼の周りの人間は彼にとても優しく接してくれる。
彼が試験で低い点を取ったら慰めてくれて、アドバイスもしてくれる。
彼がよくない成績をとったら彼の為に勉強会を開き彼に教えてくれる。
彼の周りはいわば聖人ばっかりだったのである。
嫌がることなく彼に優しく諭すように教えるそのすがたは彼にとっては仏のようにも見えたであろう。
だが、入学当初の彼ならいざ知らず、もはや彼の眼には周りの人間は自分を嘲笑っているようにしか見えなかった。
彼はまた孤独になったのである。
学校を無事卒業したことが不幸中の幸いと言った所か。
彼は卒業後提督を志望した。
周りの人間は海外留学や大手企業に就職していたが彼は違った。
彼は軍に憧れたのである。
規律正しく、かっこいい軍。自分の腐った心を軍の規律によって癒してもらおうと考えたのだ。
さすが、地区一番の学校に通っていただけあって彼はすんなり試験に及第した。
彼はついに憧れの軍に入隊できたのだ。
彼は提督になろうと思った。
鎮守府の中で黙々と計画を立て、艦隊の指揮をする。
彼は自分の能力を活かせると思い提督になった。
何より、他人とのコミュニケーションが最低限で済むからという点が彼の心を揺さぶったのだ。
彼の提督生活が始まった。
彼が配属されたのは小さな鎮守府。まだ提督になったばかりなのでこれくらいが妥当か、と彼は仕事を始めた。
大本営からの書類を見ると秘書官なるものを選べと書いてある。
彼は今までの人生を思い、あまり活発でない子を選ぶことにした。
その名も五月雨。写真を見て、彼女なら活発でないだろうと、そう思い選んだのだ。
だが事実は違った。実際の五月雨はとても明朗快活で、まさに元気そのものだった。
そんな彼女を最初は鬱陶しいと心の中で思っていた。
だがそれも最初の内だけで、彼女の幼さとその危なっかしさから、次第に彼はまるで父親になったかの如く、彼女を見守るのであった。
その眼差しは確かに、忘れていた幼少時代の彼の目そのものだった。
元から憧れていた軍に入れて夢がかなったこともあり、彼はとてもやる気を出していた。
日夜作戦の指揮を立て制海権を取り戻していった。
いつしか彼は周りから一目置かれる存在になり、彼の鎮守府の保有艦娘も100を超えていた。
初期艦である五月雨はいつも彼に無理はするなと言っていた。
だが、彼はその若さもあってか無意識の内に無理をしていたのだった。
ある日、彼はその疲労からか倒れた。
五月雨や提督LOVE勢筆頭の金剛を中心に時となく彼の元を訪れる艦娘がいた。
明石が言うには、彼は疲労で倒れただけ、2,3日休めば元気になる。そう言っていた。
彼は倒れて眠っている間夢を見た。
自分の立てた作戦によって艦娘が沈む夢である。
原因は日ごろの寝不足の影響により周りのことに気を配れなかった結果である。
彼はとてもうなされていた。
そのうなされから解放されたとき、2人の艦娘が自分の傍で眠っていた。
五月雨と金剛である。
辺りはもう真っ暗で、手元にあった時計を近づけてみてみると時計は深夜の時を刻んでいた。
彼が目を覚まし、もぞ…と体を動かすや否や2人は目を覚ました。
提督!と2人は叫び彼の体を抱きしめた。
あれほど無理はするなといってたじゃないかと五月雨に怒られた。
金剛はとても心配していたと言った。
彼はここに、初めて他人への愛という感情が湧いたのである。
彼は誓った。もう二度と無理はしまいと。そして夢で見たことを絶対に現実で起こらせないと。
その日は彼にとって一生忘れない日となった。
時がたち提督が復帰し、執務室に帰ることとなり、執務室に向かった。
今日はやけに誰とも会わない。そう思いながら執務室の扉を開くと五月雨と金剛がいた。
2人は食堂へ行こうと誘ってくる。
早速仕事を片付けたかったが、珍しく彼は乗り気であった。これも彼が2人のことを想っていたからであろうか。
食堂に着くとたくさんの艦娘がいた。
普段は工廠に籠ってる明石や夕張までいた。
提督は五月雨に連れられ一番前へと行った。
たくさんの艦娘が彼に目線を向ける中五月雨はこう言った。
これより、提督の復帰の記念会を行う、と。
たくさんの艦娘が彼にお祝いの言葉を述べた。
一部の駆逐艦は心配からか彼に泣きついた。
普段そっけない態度をとる艦娘までもが彼のことを心配していたのだ。
彼は生まれて初めて嬉し泣きをした。
彼のことを心配し、泣いていた駆逐艦よりも大きな声でしゃくり上げ、大粒の涙をこぼし泣いた。
五月雨をはじめとする艦娘たちは大いに困惑していたが、そんなことも構わず彼は泣いた。
それは確かに、彼の感情が高ぶった瞬間であった。
一部の艦娘は彼をなだめた。
彼は今までのことを思い出し更に泣いた。
家庭環境の事、学生の頃の事、提督に就いてすぐの頃の事、そして五月雨と金剛が自分の傍に居てくれたこと。
彼はこの鎮守府に来て良かったと心の底から思った。
全てのことが嬉しくなったのだ。
家庭で親から舌打ちされたこと、学校で一人ぼっちになったこと。
これら全ての負の思い出はこの鎮守府で皆から愛される為の試練だったのだと、彼はそう思った。
彼が泣くたびに艦娘は慰めてくれる。それが嬉しくて更に嬉し泣きをする。いたちごっこであった。
一通り泣き、満足した彼は初めて自分がなりふり構わず泣いていたことに気づき急に恥ずかしくなった。
赤面した彼を見てどこからか彼をからかう言葉が聞こえた。
彼は恥ずかしくなってうるせいやいとだけ返し更に赤面した。
艦娘は皆笑った。彼自身も何故か楽しくなり、笑った。
学生の頃だったら何も言わず黙っていただろうなと考えると、自分がここまで来たのも皆のおかげだと彼は思った。
彼は生まれて初めて生まれてきてよかったと思った。
彼は心の底から艦娘たちに感謝したのだった。
彼が復帰してから久しく経ち、彼は多少昇進していた。
しかしいつの日からか急に作戦が上手くいかなくなり道中撤退が相次いだ。
彼は皆に作戦の是非を問うようになり、艦娘も協力した。
その結果作戦は成功し海域を突破することができた。
彼はとても嬉しかった。
艦娘と一緒に作戦を立て、それが成功したのである。
艦娘との絆を感じられることができ、彼は嬉しかったのである。
食事も次第に食堂で摂るようになった。
提督の隣はいつも決まって五月雨と金剛だ。
そんな彼らをいつしか艦娘たちは夫婦と子供と呼ぶようになった。
五月雨は恥じらい、金剛は嬉しそうにニコニコしていた。
彼もとても嬉しかった。艦娘との絆がもはや周知の事実にまで発展したからである。
彼は本当に金剛と結婚し、五月雨を子供にできたら、と考えるようになった。
そうやって艦娘と一緒に作戦を立て続ける日々が続いたある日、彼はふと思ってしまう。
最近自分は艦娘の力に頼りすぎていないか、と。
今となってはこんなこと思わなければよかったと彼は思うであろう。
この思いが彼の人生を破滅へ導くのであった。
彼は艦娘の力に頼らない作戦を立てる為、まず一週間、艦娘の意見は聞かずに作戦を立てることにした。
が、一週間一人で作戦を練るもことごとく失敗したのだ。
彼は焦燥に駆られた。だが焦れば焦るほど作戦は失敗し、被害も増していった。
彼は自分が提督としての才能がないと思ってしまう。
いや、実際に彼は天才ではないから才能がないのは当然のことではあるが。
次第に提督は自分の失敗を艦娘に押し付けるようになった。
あの時弾を避けていたら、沈め切れていれば。そんなことばかりを考えるようになり次第に現実逃避をしていくのであった。
そんな彼に救いの手を差し伸べたのはまたも五月雨と金剛であった。
彼女らは言う。共に作戦を立てるから成功するのだ、皆で力を合わせるから成功するのだと。
五月雨はこうも言ってくれた。
私たち艦娘は提督を支える為にもある。提督の負担を減らすのが初期艦の仕事であると。だから重荷を一人で背負わないでくれ、と。
ここで彼は素直にYesと言うべきであった。
だがここで彼の悪い所が出てしまう。
彼は彼女らは自分を心の底では嘲笑っていると考え込んでしまった。
当然ながら彼女らはこんなこと微塵も思っていない。だが、彼はそう思い込んでしまったのである。
彼がNoと言い始めてから、作戦は失敗続きだった。
次第に艦娘たちの士気は下がり、彼自身もやる気を失っていった。
今では執務室に籠りブツブツと独り言を言う始末である。
そんな時、大本営から彼に降格の届が来た。
余りにも海域攻略が遅いから降格する、と。
確かに降格になるのも当然である。
やれる人間は評価され、やれない人間は評価されない。
それは当然の摂理であり、何も悪くない。
だが、この事実が彼にとってどれほどのショックを与えたか、我々には未知数であろう。
彼は発狂しそうになった。何故自分だけがこうも惨めにならないといけないのか。
もはや彼は正常な思考が難しい状況にあった。
そして彼は己の評価が下がらないうちに提督を引退しようと決意した。
彼にとって、ここでまたもがいてどん底に落ちるよりもまだ評価があるうちに退いた方が己の名誉を傷つけないと考えたからだ。
そして彼は艦娘たちに提督を辞めることを言った。
最近の暴挙から、彼の引退を悲しむ艦娘は少なかったが、五月雨と金剛はとても悲しがった。
そしていよいよ引退の前日、彼の執務室はすっかり整えられていた。
この何もない執務室を見て彼は着任当初の思い出にふけった。
ここであんなことがあった。ここではこんなことがあったと。
鎮守府内を歩き回り艦娘たちに最後のあいさつをしていた。
そして食堂にたどり着いた。
ここは彼にとって一番思い出深い場所である。
彼が疲労で倒れ、そこから復帰したときに祝賀会を開いた場所である。
彼はあの時嬉し泣きしたことを思い出し、また泣いたのであった。
案外彼は涙もろいのである。
そんな彼を慰めてきた艦娘がいた。
五月雨と金剛である。
そんな2人に彼は好きだと言った。
2人は私もですと答えた。
彼は今までの行いを謝った。
自分が間違っていたと。
2人は許してくれた。間違いに気付くことが大事なのだと。
しばらく話し込んでいるうちに夜になった。
3人は一緒に食事をとり、最後の晩餐を迎えた。
そして3人で記念撮影して、現像してもらった。
これを一生自分の家で飾る、だからお前たちもこれを飾ってくれと彼は言った。
2人はもちろんですと言い、大事そうに写真を抱きしめた。
好きだよと彼は言った。
2人も好きと言った。3人でキスをした。それはまるで父と母が子供に愛情のキスをするようで、恋人同士が初心なキスをするようだった。
彼にとってこれは愛情のキスでもあったが、この鎮守府への別れのキスでもあった。
次の日、彼は提督を引退した。
彼は提督を引退した後、故郷から離れた田舎町に住んだ。
彼は田舎町でひっそりと、そしてのびのびと生きようと思ったのだ。
幸い、提督をしていたので貯金はたっぷりある。
少なくともこれから20年は何もせずとも生きていけるような金額であった。
彼は悠々自適に過ごした。
田舎町も悪くないと思った。
リビングに飾ってある3人の記念写真がこちらを見て笑っている。
彼も時となくそれを見て、思い出にふけったのであった。
ある日、鎮守府が懐かしくなり五月雨と金剛に手紙を出した。
元気にやっているだろうか、変わりはないであろうか。そんな内容の手紙である。
1週間後、返事が来た。
彼女らは変わりなく、元気でやっているようだ。
あの時の写真も彼女らの部屋にちゃんと飾っているらしい。
中にはDVDが入っていた。おそらくビデオレターなるものであろうと、彼はわくわくしながらDVDを挿入し、再生した。
五月雨と金剛とそして見知らぬ男が写っている。
新たな提督であろうか。
彼女らは自分たちが元気でいること、鎮守府に変わりはないこと、新しい提督ともちゃんとやっていることを話した。
新しい提督は自分にあいさつをし、彼女らを一人も欠くことなく暁の水平線に勝利を刻むこと、今後の抱負について語った。
彼は自分がいなくなった鎮守府が問題ないことを知り、安堵した。
だが同時に自分が居なくても問題ない鎮守府に少し疑問を持った。
ここで彼の悪い所がまた出る。
一度思い込むと中々そこから脱せなくなるのだ。
彼は悶々とした。
やはり自分なんて必要なかったのではないかと。
そして彼は再び手紙を送った。
今度の手紙は今の鎮守府は楽しいかとの簡単な内容であった。
一週間後返事が来た。
中身を見ると楽しいとのこと。
他にも写真が入っていて、それは五月雨と金剛と新しい提督が楽しそうに写っていた。
彼はここで自分はいらない人物だと認識する。
それと同時に生きる希望をなくし死にたいと思った。
ふと見ると、そこには3人で撮った記念写真がある。
その2人の笑顔は彼の眼には偽りの笑顔に見えた。
一方で、新しい提督との写真でも2人は笑っている。
ニコニコ、ニコニコ、ニコニコニコニコ
彼は発狂した。息が切れるまで大声で叫び、暴れまわった。
暴れまわる体力も無くなったころ、彼は自殺を決意する。
柱に太い縄を渡し、輪っかを作り、その輪に首を降ろした。
何故こんなことになったのか、何故こんな結末を迎えてしまうのか。どこから自分は間違えたのか。
そんなことを考え、台を蹴ろうとする。
その時、彼に鎮守府での思い出が蘇った。
あの時自分を心配してくれた皆の事、嬉し泣きしたときになだめてくれた皆の事。
そんなことを思うと、涙があふれて止まらなかった。
ーーやはり自分は死にたくない
彼は心の底では生きたかったのだ。
だがそれと同時に、死にたいという気持ちも確かにあったのだ。
そんな彼の考えが錯綜する中、彼は台を蹴った。
苦しい。
痛い。
死にたくない。
暴れまわったがもう遅い。
薄れゆく意識の中、最後に彼が思い浮かべたのはやはりあの2人の笑顔であった。
遺された写真の中の2人の笑顔もどこか悲しげであった。
終わり
いやぁ、一日で書いたからかなりクオリティが低いですね(いつも低いだろと思ってはいけない(戒め))
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すごい
いやこれすごいよ
悪いとは全然思わない