２月１４日は皆さん知っていますよね？

そう、バレンタインデーです・・・

女性が男性にチョコレートを渡す日です。

ここでは、艦娘の皆が司令に渡すということですが・・・

私、霧島も昨日から厨房で頑張って作りました。

本当はもっと早く作りたかったのですが、厨房が他艦娘さんたちで混み合っていて・・・

昨日の夕方にやっと厨房が空いたわけです。

そして、今日・・・甘さ、よし・・・ほろ苦さ、よし・・・包装、よし！　これで大丈夫！　後は司令に渡すだけ！

私は勢いよく執務室の扉をあけました。

「・・・・・・」

そこには、机が大量のチョコで埋め尽くされている光景が・・・

「ああ、おはよう・・・　霧島。」

途端に気持ちが覚めました。

ああ、せっかくのムードが・・・

私はしばし、しょぼんとして秘書艦椅子に座りました。

「・・・ところで、その手に持っているのは何だ？」

司令に言われ、はっと気づき目の前に・・・

「あ、あの。　司令！」

「・・・・・・」

「霧島特製チョコレート・・・どうぞ！」

と、チョコレートを出しました。

「うん、ありがとう。」

受け取ってもらえました。

・・・よかったぁ～。

最初のムードは冷めてしまいましたが、結果は良かったです。

さぁ・・・仕事、仕事っと・・・

それ以降は・・・

司令は毎日少しずつ・・・チョコを食べていました。

一度にたくさんというわけではなく、指でひとつまみに分けて食べていました。

「・・・霧島も食べる？」

どうも欲しそうな顔に見えたようなので・・・

「いえいえ、大丈夫です。」

私は顔をそらした。

ただ・・・司令の行動に少し気になることが・・・それは・・・

食べた後に必ず何かメモを取っていること・・・

他の皆も司令に「チョコに名前書いておいて」なんて言われたようで不思議に思いながら記入したようです。

もしかしてそのメモかな、と思っていましたが・・・

・・・・・・

食べた後にメモを取っているので、名前とは無関係な気がします・・・

「・・・何だ、やっぱり食べたいのか？」

無意識に司令を見つめていたようで、

「いえいえ、大丈夫です。」

私は再び顔をそらした。

司令ばかリ見てないで仕事、仕事っと・・・

その後も司令は少しずつ食べ・・・食べ終わった後にメモを取りの繰り返し・・・

結局食べ終わったのは３月の序盤でした・・・

「・・・よし、今日の書類整理はここまで・・・と」

今日は珍しく執務を早く切り上げ司令は執務室から出て行きました。

私はまだやることがあったのでそのまま残っていましたが・・・

翌日も早く執務を切り上げ、司令はまた執務室から出て行きました。

次の日も・・・

また、次の日も・・・

・・・・・・

ここ数日、司令が早く仕事を切り上げるので、不思議に思っていました。

・・・・・・

でも、あくまで個人の事情もあるわけだし、その日の仕事もきちんと終わらせているので文句はありません。

なので、私はそれ以上の詮索はしませんでした。

・・・・・・

深夜の事・・・

物音に気付いて鎮守府内を見回っていたら、厨房に明かりが・・・

あらあら・・・誰か消し忘れたのかしら・・・

そう思って厨房をのぞいたところ・・・

司令！？

厨房の真ん中で司令が何か調理しているのが見えました。

・・・・・・

大きなボールにたくさんの材料・・・何かたくさんのものを作っている様子・・・

・・・・・・

その時、気づいた・・・

司令が仕事を早く切り上げたのはたくさんの材料を買いに行くためだったのではないかと・・・

そして深夜になってから作るなんて余程皆に見られたくない新メニューでも考えているのかしら・・・

・・・・・・

私はそのまま部屋に戻りました、司令が秘密に作っているのですから私が顔を出すわけにはいかないですよね。

・・・・・・

司令が深夜に何か作っているのを見かけて数日経ち・・・

「霧島・・・これ。」

司令に何か渡されました、それは・・・

「司令・・・これって。」

今日は３月１４日。　そうです、ホワイトデーです。

男性が女性にチョコレートのお返しをする日です。

「・・・・・・」

司令が深夜に皆に隠れて作っていたのはこれだったんだと私は確信しました。

「あ、ありがとうございます！　うれしいです！」

「霧島の気持ちに合うように作っておいたよ。」

「・・・・・・」

司令は気づかなかったのか、袋の端に小さなメモが・・・そこには、

ああ・・・そうだったんですね。

司令が食べ終わった後に何を書いていたのかがわかりました。

それから司令は・・・

チョコをくれた艦娘たちにお返しを渡していました・・・と言っても全員ですが・・・

・・・・・・

書いていたメモが正しいならもしかすると・・・

私は気になって金剛お姉さまの部屋に行きました。

部屋に入ると金剛お姉さまは飛び上がっていました。

「提督からLOVEなお返しが渡されたヨ～！！」

金剛お姉さま・・・相変わらずテンション高すぎ・・・

「じゃなくてちょっと失礼・・・」

金剛お姉さまの持っていた袋を取り上げて袋を見ると・・・やっぱり。

金剛：紅茶味のチョコレート

お返しに紅茶味のクッキーの予定

司令は各艦娘たちから貰ったチョコの味と包装をメモに取っていたのです。

だから渡すときに「名前を書いて」と言ったのですね・・・

他の皆にも聞きました。

海風さんは少し甘めに作ったそうです、お返しされたクッキーは確かに少し甘めのクッキーだったそうです。

村雨さんは甘くて少し苦め・・・お返しされたクッキーも甘くて少し苦めに見事再現されてたようです。

秋月さんはおにぎりの形のチョコを・・・お返しはやはりおにぎり型の平べったいクッキーでした。

残念ながら江風さん・・・江風さんは酒保で買った普通のチョコ、渡されたのは・・・

普通の売店で売っているただのクッキーでした。

「なんだよこの姉貴とあたしの差はよぉ！！」　と愚痴をこぼしていましたが、仕方ありません。

メモには「売店で売っているチョコ、お返しは適当なクッキー」でした。

全く・・・司令ったら・・・

お返しなんて気にしなくてもよかったのに・・・

でも・・・嬉かったです・・・ありがとうございます。

「提督とバレンタインデー」　終