「提督とビスマルク」2
間食の取り過ぎで太ったビスマルク、痩せることを決意するが・・・
困った・・・
この鎮守府に来てから私には悩みがある・・・それは、
体重が増えた
大したことない? 大したことあるわよ!!
女性にとって1kgでも増えれば大事よ!
原因は明確で、この鎮守府で食べている食事・・・いいえ、違うわね。
間食・・・言い換えればお菓子。
だって・・・おいしいんだもの。
執務室でも提督の目を盗んでは、机にある和菓子を失敬したり、
最近駆逐艦たちにもよく交流があって、差し入れにと私に色々とお菓子をくれるのよ・・・
それが続いて・・・ああ~~!!
どうしよう・・・体にお肉がついちゃった・・・ああ・・・どうしよう・・・
この優雅で華麗な金髪美人に・・・脂肪が・・・いや~~!!
・・・・・・
ある日の事、
霧島の代わりに私が秘書艦をしていた時の事、
提督がやたら私を見てくる・・・
「・・・・・・」
「何? そんなに私が気になるの?」
今さら私の美貌な姿に気付くなんて提督も鈍感なこと・・・
「ビスマルク・・・」
その後の提督の言葉に私はショックを受けた。
「お前・・・太ったな」
「・・・・・・」
え~っと・・・何て言ったのかしら? もう一度言ってくれる? ・・・ああ、太った・・・
ふ~ん・・・そう。 太ったね~・・・って・・・ええっ~~!!
「手足に余分な肉がついているしな」
「・・・・・・」
私が一番気にしていることをこの提督はぁ~~!!
「最近机の和菓子が無いと思ったらお前が食っていたしな。」
「・・・・・・」
「もはや金髪美人でなく金髪人だな。」
「・・・・・・」
くぅ~! ここまで言われるなんて・・・このドS提督!! 少しは女性の気持ちを考えなさいよ!
「・・・・・・」
結局言い返すこともできずに、私は部屋に戻った。
・・・・・・
さてと・・・本当にどうしようかしら?
食べる量を減らせばいいのだけど・・・ああ、でも、あの濃厚で美味なお団子・・・
あんこがたっぷり入った大福・・・間宮さん特製のバニラアイス・・・ああ~食べたい!!
・・・・・・
落ち着いて、落ち着いて・・・そうよ、全部食べなければいいのよ・・・二つ・・・せめて一つ我慢すれば
いいの・・・うん・・・一つ・・・
・・・・・・
結論が出ずに私はそのまま寝てしまった。
翌日、
私は秘書艦の仕事を・・・
「・・・・・・」
提督の机には、おまんじゅうと煎餅が・・・
「・・・・・・」
我慢、我慢・・・でも、せめて私の視界から消えて!!
「・・・・・・」
提督が資料を取りに行くため執務室から出て行った、今執務室にいるのは私と和菓子だけ・・・
「・・・・・・」
一つくらいならいいわよね? そう一つだけ・・・
「・・・・・・」
考えてみれば我慢するのも結構なストレスがかかるじゃない? 一つ食べて満足すれば
ストレス解消と食べた達成感が味わえて・・・一石二鳥じゃない!
「・・・・・・」
そう思ったら無意識におまんじゅうを手に取っていた。
ぱくっ (食べる音)
お・・・おいしい~(泣) おいしいよ~・・・
「・・・・・・」
こんなにおいしいなら・・・もう一つだけ! ほんとに! 後もう一つだけ!
「・・・・・・」
ああ~~・・・おいしい~~。
・・・・・・
提督が戻ってきたときには、机にあった和菓子は全てなくなっていた・・・
「・・・・・・」
ああ~、やっぱりお菓子の誘惑には逆らえないわ~
でも、事件が起きる。
あれ・・・あれ~?
いつもなら問題なく入る艤装が装着できない? ・・・何で?
「もしかして、ビスマルクさん・・・」
霧島が一言・・・
「太ったのでは?」
「がーん・・・」
その通りだった・・・
秘書艦をやるようになってから、机の和菓子についつい手を伸ばしてしまって・・・
その結果・・・ウエストが少し横に広がって・・・うう・・・(泣)
艤装が装着できない、はつまり出撃できないということ・・・かなりショック。
「とりあえず司令には休日として申請しておきますので・・・」
「・・・・・・」
仕方ない・・・でも、休日理由が「太ったから」なんて・・・最悪!!
「・・・・・・」
決めた!! 私は食べない!! 絶対に食べない!!
運動もする!! 今日から・・・いいえ、明日から!! 鎮守府10周!!
翌日から私のダイエットに取り組むことにした。
翌日・・・いざ「頑張ろう!」って意気込んでも・・・
自分に甘いのか・・・うまくいかないものよね・・・
間食は減らすことはできたし、運動もするようにしたけど・・・今日は、鎮守府2周でやめてしまった・・・
疲れた気持ちを解消しようとまた甘いものに手を出したりして・・・結果また増えてしまった・・・
「・・・・・・」
その光景を見ていたのか、提督が聞いてきた。
「痩せる気あるのか?」
「・・・・・・」
ストレートに言うわね・・・でも、その通りだし・・・増えているのもまた事実・・・
「やる気はある!」
「でも、そんなやり方では一生痩せないな。」
「・・・・・・」
「何ならオレが指導してやろうか? もちろん、痩せる気があるならだが。」
「・・・・・・」
凄く嫌な予感・・・提督の指導・・・恐らく地獄かも。
「・・・・・・」
でも、自分でやってみて甘く考えているの所もあるし、ここは敢えて提督の指導を
受けてみるのもまた手かもしれないわね・・・
「よろしく頼むわ・・・」
「・・・いいだろう。」
こうして私は提督の元、指導を受けることとなった・・・
・・・・・・
地獄かと思っていた指導だけど、そうでもなかった。
提督の提案はこう・・・
一日の目安のカロリー内(一般女性基準)なら何を食べても構わない、と・・・
一日の目安を超えてしまった場合は、私ではなく鎮守府の皆に罰が与えられる。
???
言っていることが良くわからない・・・どういう事?
「・・・・・・」
よくわからないけど・・・一日の目安を守ればいいのね?
何よ・・・簡単じゃない!
そこでも私は甘く考えていた・・・後に皆に迷惑を掛けることになるなんて・・・
朝・・・
朝食はパンと牛乳。今日は出撃が無いから小食でいいわね。
・・・・・・
昼食は・・・一応戦艦だから、カレー大盛りを注文・・・おかわりも考えたけど、我慢するわ。
・・・・・・
間食・・・お団子3個で・・・おいしい。
・・・・・・
夕食・・・フランクとビールとおつまみ! いいじゃない! 言う事なしね・・・進められて遂、ワインも一杯・・・
・・・・・・
「余裕で一日の目安を超えたな。」
結果は最悪・・・一日の目安の1,5倍の結果だった・・・昼の大盛りカレーと夜の打ち上げが仇となった・・・
「じゃあ、目安から差し引いた分は、鎮守府の皆の食事から差し引いとくから。」
「・・・・・・」
そこで、初めてこの提督の指導の恐ろしさがわかった。
私の今日の結果は目安の1,5倍・・・つまり一日半。 差し引いた分は半分・・・
提督は半分の数値分を鎮守府の皆に償わせるという事・・・そんな・・・
「じゃあ、明日の皆の食事は半分になるってこと?」
「そういうこと。」
「・・・・・・」
私のせいで、皆が食べられなくなる・・・私のせいで・・・
「ちなみにもし、目安の2倍だったら、翌日の皆の食事はなしになる・・・3倍なら2日分・・・以降はわかるな?」
「・・・・・・」
「痩せる覚悟があるのなら真剣にやってみろ! お前がどれだけ甘いかが身に染みてわかるだろ。」
「・・・・・・」
翌日、
皆の食事が本当に少なくなっていた。
理由は教えてもらっていない・・・その方が良かった・・・私のせいだなんて、知られたくない。
・・・・・・
私は甘かった・・・私が誘惑に負けずにきちんとしていれば皆に迷惑が掛からなかったはず・・・
提督がこんな提案をしたのも、このくらいはしないと私が本気にならないと思ったに違いない・・・
・・・・・・
皆に迷惑なんて掛けたくない! ならやるしかない!! 甘さを捨てないと・・・
それ以降、私は真面目に頑張った。
少しでも、オーバーすれば皆が食べれなくなる、私の甘さで皆がひもじい思いをするのは絶対にだめ!
・・・・・・
今日もオーバーした・・・何をやってるのよ、私は!
・・・・・・
今日はぎりぎりセーフ・・・何だ・・・この位なら私は十分にできるわ。
・・・・・・
3日連続で目安未満! 少ない場合はボーナス出るの? え、出ないの!?
・・・・・・
1か月後、
体についていたお肉はなくなり、艤装も普通に装着、いつもの生活に戻れた。
正直、そんなに苦ではなかったわね。
そう、苦ではなかった・・・そんなことすら、自分でできなかったことが何より悔しい。
皆にも迷惑が掛かった・・・それだけ私は自分に甘かった・・・それが事実。
結局、最後まで皆は知らされていなかった(食料の一時的な不足と言われていた)けど、
これは私の中で教訓として残さなければいけない。
また何か自分にあったときは皆に負担がかかるかもしれないのだから・・・
・・・・・・
提督と会って、
「うまく行ったようだな。」
「ええ、おかげさまでね。」
「もし、また困ったらいつでも相談に乗るよ」
「・・・・・・」
出来れば、次は皆を巻き込まないやり方を考えてほしいわね。
「ええ、よろしく頼むわね。」
そう言って私はその場から立ち去った。
本当に変わった提督ね・・・でも、少しストレートに言い過ぎだけど・・・
不器用だけど、本当は私たちを側で見守ってくれている・・・
とってもいい提督じゃない!
「提督とビスマルク」2 終
このSSへのコメント