「提督と白露型2」
突然江風が除隊願いを言ってきて・・・
それは突然の事だった・・・
「・・・本気か?」
「うん、本気。」
江風が鎮守府を除隊したいと願い出た。
「いやぁ、なんて言うかねぇ・・・この鎮守府生活もなかなかいいんだけど・・・」
「・・・・・・」
「この前あたしに別の鎮守府から要望があってね・・・ならそこで働くのも悪くないかなぁ~って。」
「・・・・・・」
「提督には世話になってるし、皆と一緒になれたのは嬉しいんだけど・・・」
「・・・・・・」
「給料はあっちの方がダントツ多いし、待遇も結構良くてさ。」
「・・・そうか。」
「だから・・・後は提督から許可をもらうだけなんだけど?」
「・・・わかった。」
提督は納得すると、その場から去る。
・・・・・・
「見たか姉貴! あの提督の表情?」
「・・・・・・」
「今日は4月1日だろ? 思い切って派手に嘘をついてみたけど、中々の名演技だっただろ?」
「・・・はぁ~。」
海風は呆れる。
「何だよ姉貴? そんな思い詰めた顔して?」
「別に・・・あまり提督をからかうのはよくありませんよ。」
そう言って海風はその場から去る。
・・・・・・
「きひひっ! 提督どうしてっかなぁ~。」
江風は上機嫌だ。
「血相変えて「江風! お前は必要な人間だ! ここにいてくれ!」なんて言うかな~? きひひっ!」
江風は片手に何かを持っていた。
「そしたらこの看板を出して「びっくり大成功!」って言ってやろ~っと。」
・・・・・・
執務室に着き、
「提督ぅ~、入るぜぇ~。」
江風が入ると、提督が何やら書類をまとめていて側には村雨と海風がいた。
「おぅ、村雨と海風の姉貴もいたのか~。」
江風は声を掛けるが、2人の反応は悪かった。
「? 姉貴、どうした?」
江風が首を傾げると、提督から・・・
「江風、今までありがとう。」
そう言って江風に書類を渡す。
「・・・・・・」
その書類には・・・「除隊許可書」!?
「て、提督! これなんだよ!」
「何も・・・江風はこの鎮守府から除隊したいんだろ? その許可書を渡しただけだが?」
「いや、提督・・・あの・・・」
「正直、江風にはここにいてほしかったが、お前が決めたのなら仕方ない。 違う鎮守府でも頑張ってくれ!」
「ちょ、ちょっと待ってくれよ!」
「皆との別れの挨拶もあるだろうから、今日まではこの鎮守府にいることを許可する!」
「提督! ちょっと! あれは・・・!」
「オレは仕事で忙しいんだ、さっさと部屋へ行って荷物をまとめてこい。」
提督は村雨に指示をして、江風を執務室から追い出した。
「提督! 今日何の日か知ってっかぁ!!」
江風が叫ぶ。
「今日は4月1日だよ! 嘘をついていい日なんだよ! 知ってるだろぉ!!」
執務室からの応答はない・・・
「提督! 聞いてくれよぉ! 提督!!」
・・・・・・
「はぁ~・・・何度言っても返事をしてくれない。」
江風はしょんぼりしている。
「提督は真に受けちまったかぁ・・・はぁ~、どうしよう。」
江風は考えるが、
「いくら考えてもどうしていいかわかんない・・・提督に「実は嘘なんだ」って今さら言えないよぉ。」
解決策が見つからないまま、江風は部屋に戻った。
・・・・・・
「・・・・・・」
部屋には、誰もいない。
「姉貴、まだ仕事なんだ。」
江風は一人ベッドで横たわる。
「・・・・・・」
どうしよう・・・どうしよう・・・本当にどうしよう。
「・・・・・・」
本当に出て行かなければいけないのかなぁ・・・
「・・・・・・」
こんなことなら、変な嘘考えなきゃよかった・・・
「・・・・・・」
気づくと夕食の時間になっていて、江風は食堂に向かった。
・・・・・・
「もしかしたら、これが最後の夕食になるのかなぁ?」
目の前にある食事・・・それを見て寂しさを感じる。
「はむ・・・うむ・・・美味い、美味いよぉ。」
一口一口噛みしめながら夕食を終えた。
・・・・・・
「江風さん、司令が執務室に至急来るようにですって。」
「・・・・・・」
執務室に呼ばれ、江風は提督の前に立つ。
「では、江風! 世話になった。 明日から別鎮守府で頑張ってくれ!」
「・・・・・・」
「別の鎮守府に行っても海風の事・・・忘れないでね?」
海風は悲しそうな表情で江風を見つめる。
「・・・・・・」
「機会があったら遊びに行くからね。」
村雨が最後の別れの挨拶をした。
「後、これ・・・白露型の皆からの手紙よ!」
「・・・皆の手紙。」
江風は受け取り、中の手紙を読むが・・・
「・・・・・・」
そこには、大きな文字で < 大成功!! > と。
「あはっ♪ 見事に引っ掛かっちゃって・・・あははは!!」
村雨が爆笑する。
「? えっ? へっ?」
江風は困惑している。
「ぷっ・・・くくく・・・。」
側にいた海風も笑いを必死にこらえていた。
「・・・・・・」
2人の態度に江風は気づく。
「あ、あ、あたしを嵌めたのかよ!!」
江風は顔を赤くした。
「だって・・・江風が面白いぐらいに引っ掛かるから・・・ぷぷぷ。」
海風の口から笑いの声が溢れる。
「大体、大して戦果を取っていない江風が別の鎮守府からスカウトされるはずないでしょ?」
村雨もにやにやしていた。
「な、ななな・・・(大恥)」
江風は急に恥ずかしがる。
「まぁ、今回は提督と私が少し案を立てて・・・後は海風にも少し手伝ってもらって・・・ね?」
海風も笑いながら首を縦に振る。
「何だよ! 姉貴! ひでぇじゃねぇか!」
江風が海風に噛みつく。
「江風が悪戯好きなのが悪いんですよ?」
海風の言葉に江風は無言になる。
「まぁ、これに懲りて提督に冗談言うのはやめることね。」
「・・・・・・」
村雨の言葉に江風は素直にこくんと頷いた。
「え~っと・・・話してもいいかな?」
「あ、はい。」
「改めて江風、お前には世話になった。 明日から違う所でも頑張ってくれ!」
提督が真顔で言って、
「て、提督! もうやめてくれよぉ!!」
江風は叫ぶ。
「・・・な~んてな。 まぁ、今度からもっとマシな嘘でもつくんだな。」
「・・・・・・」
その後、江風は提督に悪戯を二度しなくなったらしい・・・
「提督と白露型2」 終
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