「執務室での事件6」
どこからか提督が高級な肉を調達してきて・・・
ある日の事、
司令がある食材を調達してきました、それは・・・
黄金肉(以降Gミートと書く)・・・話に聞いたことがありましたが、現物を見るのは初めてです。
もちろん、私は食べたことはありませんし、他の艦娘達も食べた経験が無いはずです。
超高級品のため、一部の階級の高い司令クラスしか味わえない代物です。
確か100gで・・・100万円。(1g1万円)
私たちには到底手を出せない食材です。
それが食堂に、一皿置いてあったのです・・・
・・・・・・
食堂に来た艦娘たち全員がGミートを眺めていました。
中には食べようとする艦娘の姿も・・・
当然ながら、皆に止められ「提督の物」と割り切って皆我慢していました。
それはそうです・・・量的に100gほど・・・つまりあれだけで100万円・・・私には手を出せません。
「皆嗅ぎつけるのが早いなぁ。」
司令がやってきました。
「提督、今日の食事は豪華ですね。」
艦娘の一人がぼそっと口を出す、見せびらかされた不満でしょうか?
「ん? オレは食べないぞ。」
「え、じゃあ誰が?」 の問いに・・・
「今日のお前らの夕食用だが?」
その言葉に全員が言葉を失った。
「日頃頑張っているお前たちのために調達してきたのだが・・・何だ、オレ用だと勘違いしていたのか?」
司令は苦笑した。
「・・・・・・」
それを聞いた艦娘たちは目を輝かせましたが・・・皆さん、現実を見てください。
どうやったら100gのGミートを皆で食べられるんですか?
仮にこの鎮守府にいる艦娘の合計が50人いたとしましょう、それで、食べられる量は2g・・・
それは「食べた」と言える量ですか?
それとも・・・司令の事ですから、多めのご飯に細切れにしたGミートを混ぜて肉ご飯にするつもりかも・・・
でも、そうすると今度は味が薄くなってしまい肉本来の風味を損なうのでは?
それらを考慮して導き出される結論は・・・誰か一人だけ特別に与えられるご褒美・・・かと。
「・・・・・・」
皆さん・・・喧嘩しなければいいのですが・・・
霧島は心配する・・・しかし、その心配は杞憂であると思い知らされる。
・・・・・・
夕方、司令は食事作りをしていました。
先ほどのGミートはどこに行ったのかしら・・・
「・・・何だ霧島か・・・夕食はまだだぞ。」
「いえ・・・司令・・・本当に皆に食べさせるおつもりですか?」
「ああ・・・皆に均等にな。 多少量は前後するかもしれないが。」
「・・・・・・」
では、先ほど思った前者の100gの分割かもしくは細切れの肉ご飯等ですね・・・
「・・・・・・」
まぁ、その方が争いにならなくていいかもしれませんね。
夕食まで時間があったので、私は執務室へと戻りました。
・・・・・・
Gミートの話は鎮守府の皆に伝わり、特に過剰に反応したのは秋月さんだった。
「え~っと・・・そんな高級な物をいただいてもよろしいのでしょうか?」
秋月さんはたじたじ。
「司令が「皆に均等に」と言っているので食べられると思いますよ。」
「でも・・・1g1万円なんですよね・・・秋月にそんな高価なものは・・・」
「・・・・・・」
正直私もそんな高価な物なんて食べる気がしませんよ・・・
「でも、均等なんですから量自体は微々たるものですよ。」
大鳳さん・・・よくわかっていますね。
「おつまみのピーナッツの半分をいただくみたいな感じですよ、ですからよく噛んで味わったらいいですよ。」
「ふむふむ・・・」
秋月さんが熱心に聞いていました。
空母だけあって説明が詳しく、秋月さんを安心させました。
「あら、そろそろ夕食の時間ですね・・・食堂に行きましょうか。」
そう言って、皆が食堂に向かいました。
・・・・・・
今日の夕食が豪華な事もあって、私たちが着くころには全員が着席していました。
「おお、みんな早いな。」
司令が大きな器を持って皆の前に置きました。
「とりあえず一人につきこれで・・・余らないはずだが、残ったらオレが貰おう。」
そう言って皆にGミートが乗った皿を配り始めました・・・
「・・・・・・」
え~っと・・・私の見間違いかしら? 目の前に見える光景・・・細切れかと思ったら・・・大きくスライスした
Gミートが数切れ並んでいるんですが・・・
「? 何をじっと眺めているんだ?」
「あの~司令・・・この量は・・・」
「ああ・・・さっき見せたのはサンプル。 本当は冷蔵庫に保管しておいたんだ。」
「・・・そうなんですか・・・それで、どのくらいの量を?」
「10kgだが?」
「・・・・・・」
10kg・・・それは凄いです! それなら確かに皆が満足していただける量です、はい。
・・・でも、10kgってことは・・・1g1万円ですから・・・つまり・・・1億・・・1億円!!
「司令! いくら皆のためだからってこんな出費は!?」
「細かいことは気にするな。」
「・・・・・・」
細かくありません! 鎮守府を維持できるかどうかの問題ですよ! 司令は生活を破綻させる気ですか!?
「いらないのか? じゃあオレが貰おうかな?」
「・・・・・・」
いやいや、これは私の物です! でも・・・ああ・・・今後の生活が・・・
「・・・・・・」
もうっ!! こうなったらやけよ! いただきます!!
「・・・・・・(食)」
「・・・どうだ?」
「お・・・おいしい~っですぅ~(感動)」
「そうか、良かったな。」
おいしい・・・おいしいです! でも、明日からの生活が・・・明日からの・・・
「おいしい! ほっぺたが落ちるほど濃厚!」
「Gミート・・・僕は一生食べられないだろうと思っていたけど・・・(感動)」
「でも、これだけで100万円なんですよね? ・・・贅沢すぎ・・・でも、食べます!」
「・・・・・・」
霧島を含む皆が終始感動しながらで食べていた・・・
・・・・・・
「昨日はごちそうさまでした、司令。」
「ああ・・・喜んでくれてよかった。」
「でも、皆のためとはいえ過度な出費は控えてください!」
「・・・わかった、気を付ける。」
提督は頭を掻きながら執務室から出た。
「・・・・・・」
霧島は提督の机から資料を取り出す。
それは、明細書・・・この鎮守府で消費した資材や食材に関する詳細が書かれた明細書。
「・・・・・・」
霧島が昨日のGミートの値段をもう一度確認した。
「・・・・・・」
何度も何度も見続けた。
「・・・・・・」
しばらくして、霧島は明細書を元の位置に戻した。
「・・・やはり。」
霧島はため息をつく。
「Gミートの明細書が無い。」
実は今回の事に限らず、霧島は頭を悩ませていた。
皆のためと言う度に提督は豪華な食事を出す。
丑の日と言って皆にうな丼(その年はウナギの漁獲量が悪く高騰していた)。
ビスマルクさんが着任した時は歓迎でステーキ丼・・・
そして今回は1g1万円のGミート・・・
その明細書が全て無いのである(そのほかの野菜や米等の明細書はきちんと挟んである)。
「・・・・・・」
さすがの霧島もこの疑問を解決することができず、
かと言って提督に問い正すこともまたできない・・・
不思議な事に、昨日のGミート、実は調査したところ、昨日販売していたどの肉屋にも売っていなかったという。
ましてや、10kgも・・・
「・・・・・・」
この不思議な出来事は鎮守府七不思議の一つとして挙げられている。
「執務室での事件6」 終
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