提督「轟沈した艦娘が・・」艦娘「・・・・・」
短編です。いつもの書き方とは全く違うので新鮮に感じると思います。
いつも通りの日だった、気温は一定で風は穏やか。草木は悠々と揺れている。
戦時中とは思えないほど幸せを感じられる暖かい場所、そこで今日も変わらず『当たり前』な幸せを享受するはずだった。
だが、その幸せに雲がかかるとき・・・俺の『当たり前』は雨に打たれ・・・絶望に流されてしまった。
俺の最愛の艦娘が沈んだ。
くだらない判断ミスだった、戦況を見る限り撤退するのが最善の策だとわかっていたはずなのに。
あと一歩で海域を奪還できる・・・そんな欲望に負けてしまった俺は進軍する指事を言い渡してしまった。
海域を占領していた深海棲艦のもとへ向かおうとした艦隊を、どこで待ち伏せしたかもわからない無数の艦載機が強襲を仕掛けてきた。
突然のことに反応できず艦隊の連携が崩れ、敵の前に出てしまい標的になってしまった艦娘を庇うようにして最愛の子は敵からの攻撃をその華奢な体で一心に受け止め・・・別れを告げる前に・・・暗く冷たい海の底へと沈んで逝った。
そこからはよく、覚えていない。
うすぼんやりと浮かんだのは帰投するなり励ましの言葉や謝罪の言葉叱責など多岐にわたることばかりだった。
心の整理も、頭の考えにもまとまりがつかなくなった俺は提督をやめ海軍を去った。
現役時代に貯めた貯金で酒を買いあさっては忘れようと飲んだくれた、そうするたびに彼女の言葉が脳裏を反芻して胸のあたりが苦しくなる。
まるで都合よく忘れようとする俺に彼女が忘れるなと迫ってきているように・・・
そんな廃れた日常を送る中である日変化が起こった。
視界の端に、彼女の姿が一瞬映った気がした。
最初はヤケ酒からくる幻覚の類だと思っていたソレは日に日に濃くなりついには完全にとらえることができるようになっていた。
嗚呼、間違いない。俺が彼女を見間違えるものか・・・!
『・・・・・・・・』
俺が最も愛し、自ら壊してしまった彼女は・・・静かにそこに佇んでいた。
ただ何をするでもなく、ジッとただこちらを見続けているだけで動いたりする様子はない。
「なぁ・・・君は生きているのかい・・・?」
咄嗟に口を開き彼女に話しかける。もしかしたら、俺の望んだ答えが出てくるかもしれないと少しの希望を胸に秘めて。
『・・・・・・・・』
しかし、彼女は依然として口を閉ざし愁いを帯びた眼差しをただ俺に向けているだけだった。
次の日も、その次の日も俺はただひたすらに彼女に話しかけ続けた。
今までの事、これからの事、謝罪、お礼、例を挙げればきりがないほど話して話して話し続けた。
すると、自然と酒を飲む量が減り彼女に、もっとたくさんの話を聞かせるため積極的に外へ出かけたりするようになった。
そんなことが『当たり前』になってきたある日、いつものように彼女に話しかけていると遂に彼女が口を開いた。
『・・・みんなに・・・・あいたい・・・』ポロッ
今まで無表情だった顔を歪ませ、涙を流しながら静かに・・・静かに・・・そう呟いた。
「・・・会えるさ!君が望むなら!絶対に!絶対に!!!」
気づけば、勝手に声が出ていた。今まで生きてきた中でここまで心が締め付けられたことがないくらいの声が・・・
『・・・・・・・・・・・』
それが何かの引き金だったのだろうか、彼女の体は急激に透き通り、まるで最初から何も存在しなかったかのように消えていった。
「・・・・」
彼女の名前を頭の中で今一度、思い浮かべる。
いままでの彼女は俺が都合よく思い浮かべただけのただの幻だったのかもしれないけれど、最後に彼女が見せたあの涙は・・・あの言葉だけは忘れられなかった。・・・・いや、忘れてはいけないと思った。
静かに戸締りをして、俺は家を出た。行先は・・・・
・
・
・
俺が鎮守府に復帰してからもう2カ月が経とうとしていた。
最初の頃は艦娘達との折り合いがつかなかったが、それでも今では皆と1から頑張っている。
彼女の願いはかなえられたのだろうか・・・?もしかして俺がこうしてここに戻ってくることが彼女の願いだったのではないかと。
今となってはもう遅い疑問に答えを求め続ける。そんな時、妖精さんが1枚の紙を抱えてトコトコと俺の手元へやってきた。
「ああ・・・そういえば建造任務をお願いしていたんだっけ。ありがとうございました。」
「~~~~♪」
建造結果の報告書と思われる紙を受け取り、妖精さんにお礼を言う。その時の妖精さんはどこか上機嫌に見えた。まるで褒めてくれと言わんばかりに。
だが、頭の中でそんなことあるはずないかと区切りをつけて報告書に目を通す。
そこには・・・・懐かしい名前が記されていた。
「・・・・っ!!!」
自然と体が動いていた、1秒でも早く会いたくて俺は工廠に向かって走り出す。
道中、様々な艦娘達に声を掛けられるが今はそんなことを気にしている余裕はない。
ただただ、走った。彼女の事だけを考えて・・・どんな言葉を掛けようか考えて。
そうこうしているうちにもう工廠の前についていた。
膝に手をつきながら、呼吸を整える。
しかし、そうすると・・・思考が冷静になる。
通常、轟沈した艦娘は戻ってこられない。それが例え同じ容姿をした同名の艦娘ともう一度出会えたとしても、もうその娘は今まで知っていた娘ではないということを。
「・・・そうだよ、わかりきってたことじゃないか。」
今一度、期待をしないように自分に言い聞かせ工廠の中に入る。
『・・・・』
工廠の中には俺が知っている『彼女』と寸分たがわないほど同じ姿の・・・彼女がいた。
喉が震える、今すぐにでも抱きしめたい思いをぐっとこらえる。いまここで抱きしめてしまえば彼女にも『彼女』にも失礼だから。
「やぁ、君が新しく着任した艦娘だね?僕はこの鎮守府の提督だよ、よろしくね。」
務めて明るく、されど落ち着いて普段通りに話しかける。すると、『彼女』は僕のほうを向いて・・・
『・・・ただいま、提督。』ニコッ
儚くも、美しい。いつも通りの笑顔でそういった。
「・・・・・・・・・・・・・・・・」
頬に暖かい何かが流れた。きっと俺はその正体を知っていた、だがきっと今の俺はソレの正体を認めないであろう。
胸に秘めた思いをすべて落ちつけて、今一番伝えたい言葉を君に送ろう―――
「おかえりなさい。」ニコッ
再 開
涙を流す必要なんてなかったんだ、これが俺たちにとっての『当たり前』なのだから。
泣いたよ。
久し振りに
(`・ω・´)b
1≫そうですか・・・ありがとうございます!
2≫(`・ω・´)
こういうの読むと更に沈めちゃいけないと思った。
5≫そう思っていただければ幸いです、自分も書いていて決意を改めました。
つい最近私も初轟沈させてしまったから、泣いたわ
轟沈させないように頑張ろっと
泣かせるじゃねぇか。轟沈した艦娘は二度と戻っては来ない。戻って来たとしてもそれは「別の誰か」だ。だが、見てみろ!この提督の元には戻ってきたぞ!
提督よ!轟沈はさせるな!無理な進撃はするな!
轟沈した……ヤバい悲しみが止まらない
昔…轟沈させたことがある……
しかも嫁艦だったよ……泣いた……