「消えた艦娘」
買い物中に不注意でぶつかった相手が鳥海だと叫ぶ村雨、当の彼女は首を傾げる。
彼女は鳥海なのか、それとも別人か?
のんびり更新していきます。
それは偶然の事だった・・・
買い物中に相手とぶつかり、お互いが倒れる。
一方の彼女が村雨に手をやり、「ありがとうございます」とお礼を言おうと彼女の顔を見た瞬間・・・
「ちょ、鳥海さん!?」
村雨は思わず叫ぶ・・・それに対し、彼女は・・・
「鳥海?・・・私がですか?」
いきなり言われてきょとんとする彼女。
「あの・・・誰かと勘違いしてませんか? 私は鳥海と言う名前ではありませんよ。」
「えっ・・・あっ・・・す、すいません(恥)」
急に恥ずかしがる村雨、
「お怪我はないですか?・・・よかった。 次はお互い気をつけて歩きましょうね。」
そう言って彼女はその場から去る・・・村雨は彼女を見つめていた。
・・・・・・
「ただいま~。」
村雨が帰ってきた・・・提督は真っ先に彼女を抱き上げる。
「おかえり~・・・村雨~。」
「もうっ! あなたったら・・・顔近づけすぎですよ(笑)」
すぐに夕食の準備に取り掛かり・・・提督の帰還を祝って少し豪華な夕食を作った。」
「うん・・・おいしい。 ありがとう、村雨♪」
「あなたこそ、長期間お疲れ様でした♪」
夫婦の生活が再び戻ろうとしていた。
・・・・・・
「何? 鳥海に似た人がいたって?」
「はい・・・人違いって言われてその時は謝りましたけど・・・でも、あの人は鳥海さんの様な気がします。」
「でも、そうするとあの世界に鳥海がいないってことになるよね? 明石に聞いた?」
「いいえ、ただなんて言うんでしょう・・・昔の艦娘としての直感でしょうか・・・あの感じは昔、同じ艦娘
だったからこそ感じた気持ちだったんですよね・・・」
「・・・・・・」
もし、村雨の言う通りその彼女が鳥海だとしたら、鳥海は一体どうやってこの世界に来たのか・・・
それにいつから? 最近と言うわけではなさそうだし・・・
「後で明石に聞いてみるかな。」
提督の意見に村雨も賛同するのだった。
・・・・・・
「明石、聞こえる?」
「あら提督、どうかしました?」
「ちょっと聞きたいんだけど・・・そっちに鳥海っている?」
「鳥海さんですか・・・」
急に無言になる明石。
「・・・何か言いにくいことでもあるのか?」
「う~ん・・・そうですね~・・・」
明石の態度を見て何か知ってるなと気づく2人。
「言いたくなければ言わなくてもいいんだが?」
「・・・いいえ、提督には話しておいた方がいいと思うので言います。」
そう言って明石が説明する。
「鳥海さんは・・・先日、敵の砲撃を受けて・・・沈んでいます。」
「何だって!?」
予想だにしない事実を言われて2人は無言のままだった。
・・・・・・
「じゃあ、現実にいる鳥海に似た人は別人ってことなのかな?」
艦これで轟沈しているのが確かなら、この世界にいるはずがない。
「やっぱり・・・私の勘違いだったのかしら・・・」
急に自信を無くす村雨、提督は肩に手をやって、
「別にいいさ、ただ本人じゃなかっただけの事・・・鳥海の魂が安らぐことを祈ろう。」
「・・・はい。」
2人は鳥海のために黙祷をした。
・・・・・・
トンッ トンッ! 「ごめんください。」
ドアを叩く音がして、村雨はドアを開ける・・・そこには、
「あら、この前の・・・」
村雨が鳥海と勘違いした女性が目の前にいた。
「突然すいません・・・これが目の前に落ちていましたので・・・」
そう言って、村雨の所持品らしき物を出す。
「あら、わざわざここまで持ってきていただいてすいません!」
「いえ、いいんです・・・私の家もここから近いので。」
「そうなんですねぇ~・・・もし、良ければ今度お礼をさせてください!」
「そんな、いいですよ。 住所が書いてあったので届けに来ただけですので・・・」
彼女は遠慮しがちである、村雨が何度も言ってようやく心が折れる。
「はい・・・では、今度・・・ごちそうになります。」
そう言って彼女は去って行った。
「う~ん・・・やっぱり鳥海さんに似てるんだけどなぁ~・・・」
村雨は彼女の顔を見て呟いた。
・・・・・・
「それじゃあ、行ってくるね。」
提督が仕事へ行くため、村雨が見送る。
「・・・・・・」
歩道を歩いていると、目に映ったのは・・・
「おや、昨日の?」
「え? え~っと・・・誰です?」
「・・・・・・」
そうか、家の中にいたからこの人はオレの事を知らないんだな・・・
「昨日オレの嫁の村雨が迷惑を掛けたね・・・本当にすいません。」
「村雨・・・ああ、あの人の旦那さん!? 失礼しました!」
驚いたようで、立ちすくんだ。
「いや、そんな礼儀正しくしなくても・・・」
「いえ、大変失礼しました! どこの誰かもわからず失礼な言動を!」
「いや、だからいいって・・・それに村雨が君を誰かと間違えているようだし、それも本当にすまないね。」
「いえ・・・その村雨さんが言う鳥海って言う人にそんなに似ているんですね、私・・・」
「う~ん・・・どうなんだろう。」
2人で歩きながら会話を続ける。
「・・・同じ道を歩いているけど、仕事はこっちかい?」
「あ、はい・・・私、事務所の経理をしています。」
「そうなんだ・・・オレもこの道の先の工場で働いているよ。」
「そうなんですか・・・じゃあ朝また会えますね。」
「そうだね・・・まぁ、お仕事頑張ってね。」
「ありがとうございます! あなたも無理はなさらないように・・・」
そう言って彼女は立ち去る。
「・・・あ、しまった。 名前聞くの忘れた・・・」
その場では困ったが、朝また会えるだろうと思いそのまま仕事場に向かった。
・・・・・・
「ただいま~。」
「おかえりなさい、あなた。」
2人で食事をしていて・・・
「そう言えば今朝、村雨が言っていた子に会ったよ。」
「そうですか・・・どうでした? 鳥海さんに似てるでしょ?」
「う~ん・・・似てると言えば似てるけど・・・そんなに印象が無かったからな~。」
「もうっ! ちゃんと確認してくださいよ!」
「悪い悪い! 本当に村雨は頑固だなぁ~。」
村雨に怒られて白旗を上げる提督・・・実際のところ、村雨の直感は9割方当たる・・・それを考慮すると、
あの人が鳥海の可能性もあり得るのだが・・・
「でも、鳥海と裏付ける物が無い以上はしつこくするわけにはいかんでしょう。」
「・・・はぁい、わかりましたぁ~・・・しばらく鳥海さんの話は致しません~~。」
「・・・・・・」
しばらくじゃなくて、もうしないでくれよ~・・・
「あなた、明日はお休みだからき・ょ・う・は・・・いいでしょ?♡」
「・・・うん、わかった・・・先風呂入るね。」
そう言って提督は風呂に入った。
・・・・・・
・・・
・
深夜・・・隣で寝そべっている村雨が言う。
「何だか不思議な気分ですね。」
「ん、何が?」
「私は昔艦娘だったのに、今は解体されて人間になったけど・・・記憶が残ったままなんですよね。」
「・・・オレは記憶が残ったままの村雨がいいけどね。」
「でも、これって本当ならあってはいけない問題ですよね? 私はこれから先も普通に生活してよいのでしょうか?」
「もちろん、誰も村雨の事は責めないよ。」
そう言って頭を撫でてあげる。
「もしかしたら、鳥海さんは記憶が無くなっているのかもしれないですね。」
「・・・・・・」
「だとしたら・・・やっぱりこのままそっとしておいた方がいいのかもしれませんね。」
村雨は決意すると提督の胸元で眠りに就く。
「・・・・・・」
鳥海か・・・一度だけ確認してみようかな・・・村雨のためにも・・・
そう決意して提督も床に着いた。
・・・・・・
翌朝、今日は休日なので2人で買い物に行った。
「・・・・・・」
提督が酒コーナーに目をやると急に考え込んだ。
「・・・どうしたんです?」
「いや、オレはあまり酒を飲まないから気にならなかったけど・・・焼酎って決まった名前が多いんだなって。」
確かに、ビールやワインと違って焼酎は漢字で書かれている。
「それはそうですよ、焼酎は日本で作られているんですから・・・各県をモチーフにした名前や名所の名前を書いているんですよ。」
「・・・そうなんだ・・・」
それを聞いてあることに気付く、
「そうだ、もしかしたら!」
提督は何かを思いつき、帰ろうとする。
「ちょっ!? あなた! まだ買い物終わってませんよ!」
・・・・・・
家に帰って提督はある物を探す、
「・・・あった。」
見つけた物をPCで検索する・・・
「なるほど・・・これならあの人が誰かがはっきりするな。」
提督は確信する・・・それを見ていた村雨はきょとんとする。
・・・・・・
・・・
・
村雨が今度ご馳走すると約束した日になり、その人が家に来た。
「今日はお招きいただきまして本当にありがとうございます!」
「いえいえ・・・こちらこそ。 わざわざお越しくださってこちらも感謝します。」
「どうぞ・・・ちょうど食事が出来上がったところですので、今日はとことん飲みましょう!」
と、鳥海に似た方と提督・村雨が飲み会を始めた。
・・・・・・
「おいしいです・・・村雨さんが作ったんですよね?」
「はい、そうですよ♪」
「羨ましい・・・私は仕事で忙しくてなかなか調理ができずいつも店で買ってきますね。」
「そうなんですね・・・時々来ても構いませんよ・・・私の手料理を振る舞っちゃう♪」
「そ、そんな・・・お気持ちだけでいいですよ!」
「そう言えば君は酒飲める?」
「はい・・・大丈夫です。」
「じゃあグラス・・・はい、どうぞ。」
「・・・では、いただきます。」
「・・・・・・」
「ああ・・・懐かしい。 故郷の味がしますね・・・」
「そうかそうか・・・ほらほらもう一杯!」
「あ、す、すいません・・・では・・・ああ・・・おいしいです。」
「・・・故郷の味かぁ・・・」
・・・・・・
一番騒いだ村雨が一番に寝静まり、提督と鳥海に似た人と会話をしていた。
「村雨さんは元気があって羨ましいです。」
「そう? 結構この子のペースに合わせるのは大変だぞ。」
「ふふ・・・旦那さんは一緒にいるからわからないかもしれませんが、誰もいないと寂しいものですよ。」
「・・・・・・」
「私みたいに・・・独り身だとね。」
「・・・・・・」
「ああ・・・暗いこと言ってすいません。 今日は本当にありがとうございました!」
「いいよ、村雨がやりたいって言った事だからさ・・・後、聞きたいことがあるんだけどいいかな?」
「はい? 何ですか?」
・・・・・・
「う~ん・・・あれ? あなた?」
村雨が目を覚ますと目の前に提督がいた。
「いたたた・・・少し飲み過ぎたかしら。」
村雨が頭を押さえる。
「ゆっくりしていたら? 今日は休日だからのんびりでいいよ。」
「はい、そうですね・・・そう言えばあの人はどうしました?」
「先に帰ったよ・・・村雨に「ご馳走様でした!」と伝えてだって。」
「・・・そうですか。」
「・・・・・・」
「結局あの人は鳥海さんだったのかしら・・・」
「ああ・・・そのことだが・・・あの人は別人だった。」
「え、そうなんですか!?」
「本人から聞いた・・・今回は村雨の直感が外れたな(笑)」
「う~ん・・・おかしいですね~・・・でもあなたが言うのですから、間違いありませんね。」
「ははは・・・さて、もう少しだけ床に着こうかな。」
「あ、それ私も~♪」
そう言って2人はまた布団をかぶった。
「・・・・・・」
咄嗟についた嘘・・・でも、それでよかったのかも。
・・・・・・
あの時、
「聞きたいことがあるんだけどいいかな?」
「はい、何ですか?」
「どうして君は・・・いや、鳥海はなぜこの世界にいるんだ?」
「・・・まだ私の事を勘違いしているんですか? やめて下さいよ・・・私は鳥海ではありません、別人ですよ。」
「いや、君は鳥海だよ。隠しているつもりだが、オレにはわかっているよ。」
「・・・その根拠は何でしょう?」
証拠は何かと突き付けてくる彼女・・・提督はある物を出す。
「これだ・・・さっき鳥海が飲んだ焼酎だ。」
「・・・これを飲んだだけで私が鳥海ですって? 冗談はやめて下さいよ。」
「君は飲んだ時に言った・・・「懐かしい・・・故郷の味だ」と。」
「確かに言いました・・・でも、それがどうして私が鳥海だと言い切れると?」
「実はこの焼酎・・・この世界の物じゃないんだ。」
「え?」
彼女は急に無言になった。
「信じないかもしれないけど実はオレ・・・数回だけど艦これの世界へ行ったことがあるんだ。」
「・・・・・・」
「こっちの世界に帰るときに村雨のお土産として艦これの世界から持って帰ったのがこの焼酎だ。」
「・・・・・・」
「つまりこの焼酎は、この世界では「存在しない焼酎」なんだよ。」
「・・・・・・」
「それを飲んで「懐かしい」と言ったことで君が鳥海であると確信したんだ・・・鳥海は出身は九州だろ?
確かにこの焼酎に掛かれている漢字は九州地方のものだからね。」
「・・・・・・」
「もう1つ言い切れるのは、オレが艦これの世界で食事した時に味が全くしなかった・・・当然だね。
ゲームの世界だから本来プログラム上の世界で味なんか感じるわけないんだもの。」
「・・・・・・」
「君はそれを飲んだ時、「おいしい・・・懐かしい」と言った。 味がわかるってことは君が鳥海以前に
「艦娘」であると言う事実だってこと!」
「・・・・・・」
「・・・オレの推理はここまでだけど・・・間違ってるかな?」
「・・・はぁ~」
彼女はため息をついて、
「まさか、この焼酎で私の正体がバレてしまうなんて・・・」
「・・・・・・」
「そうです、私は重巡の鳥海・・・艦娘です、昔までは。」
「・・・昔?」
提督は首を傾げた。
「私が艦娘としていた最後の時は・・・「捨て艦」だったのです。」
「・・・・・・」
「司令官に「お前は捨て艦だ、敵陣に突撃して少しでも突破口を開け!」と・・・出撃直前に怖くて鎮守府から逃げて
隠れていた時に出会ったのが明石さんでした。」
「・・・明石?」
「明石さんが「違う人生を歩んでみない?」と言われて・・・どうせ私は捨てられた身・・・だったら別の生き方もいいかなって
思ってお願いしたんです・・・そうしたら明石さんからこの世界に来れる転送装置をくれたんです。」
「何!? 転送装置!? ちょっと待て! 本当に明石から貰ったのか!?」
「はい・・・明石さんに転送装置を貰ってこの世界に来ました・・・それで今は普通の女性として暮らしています。」
「転送装置・・・それは一体いつ貰ったの?」
「確か・・・2年ほど前でしたね。」
「・・・・・・」
そんな前から転送装置が完成していたのか・・・でも、どうして・・・なぜそんな前から作る必要がある?
「・・・・・・」
「私は鳥海です・・・それで、私をどうする気ですか? 元の世界に連行しますか?」
「・・・・・・」
「明石さんに、もし「正体がバレたらあなたは死ななければならない」と言われています・・・私を連行しますか?
それとも、自害させますか?」
「・・・・・・」
何だそれ? なぜバレたからって死ぬ必要があるんだ?
「私をどうしますか? 命令をお願いします! 司令官さん!」
「・・・・・・」
提督はしばらく考え、
「・・・聞かなかったことにする。」
「え?」
「鳥海は今普通に暮らしているんだろ? ならもうそれでいいじゃないか。 オレは君が鳥海か別人か
知りたかっただけ・・・別に連行するとか死なせるとかそういう意味で聞いたんじゃない!」
「・・・でも。」
「オレが命令する・・・お前は普通の人間としてこれからも生活しろ! 明石にはオレが言っておくから
お前は気にせず普段通りの生活に戻れ! わかったな?」
「・・・はい、わかりました。」
「・・・じゃあ・・・昨日は楽しかった。 また機会があれば飲み会でもやろうか。」
「・・・はい。」
そう言って鳥海は出て行った。
・・・・・・
鳥海が帰った後、提督は1人で考えていた。
当然考えていたこととは明石の事だった。
「数年前から既に転送装置ができていた・・・う~ん、これは一体何を意味するのか・・・」
明石はメカニックで自分が考えたことはほとんど実現してしまう凄い技術の持ち主だ。
鳥海の話にでは、自らこの世界にくる事を望んだわけではなく、明石の意図によって来たもの・・・
捨て艦だった鳥海を助けるための方法として行ったのか、あるいは別の・・・
「・・・・・・」
考えてみたら今までの明石の行動には奇妙な点がいくつもあった。
村雨がオレに会いたくて転送装置を作った事・・・既に設計図が無くても作成できていた。
秋月が誤ってこの世界に飛び込んできたときも実は明石から事前に装置を受け取っていたこと・・・秋月も鳥海と同じ境遇だった?
村雨の装置は同じ人間が2回使うと壊れてしまうが、秋月の装置は2回使っても壊れなかった事・・・証拠隠滅を計った?
村雨が体調を崩してオレが艦これの世界に行ったときにすぐに修復済を用意してくれたこと・・・予想していた?
そして、鎮守府の治安が悪化したことを告げたのも明石・・・秋月から聞いてもいないのに・・・今思えばタイミングを見計らった?
全てが上手くいきすぎている? まるで明石が考えたシナリオに沿って進んでいるようだ。
「何を考えている、明石は?」
何かある、と感じ・・・明石に聞いてみることにした。
・・・・・・
恐らく、直接問い正しても素直に答えてくれるとは思えない・・・
「・・・・・・」
もう行くことはないと思ったけど仕方ない・・・また艦これの世界に行こうか・・・
「村雨・・・話があるんだけど・・・」
村雨を呼び止めて、自分がまた艦これの世界に行くことを打ち明ける。
もちろん最初は反対したが、自分の考えを言うと村雨は急に無言になった。
「明石さん・・・」
村雨は考えて・・・
「確かに・・・私が装置を貰った時より前からおかしいと言えばおかしい光景がありましたね・・・」
「・・・おかしい光景?」
「・・・いつもは皆が帰還時に真っ先に明るく「お疲れ様です! 損傷を負った方はすぐに入渠してください!」と言って
皆に指示をするのですが・・・その装置をくれた日の前後は明石さんは姿を見せず、工廠に閉じこもったままでした。」
「・・・・・・」
「心配になってのぞいたら、明石さんが難しい顔で机に座りながら設計図らしき図面を見ていました。」
「設計図?」
「ごめんなさい・・・そこまで詳しくは見てなかったので、内容は分かりませんでしたが・・・」
「いや、いいよ。 教えてくれてありがとう。」
「・・・・・・」
明石が何を考えているかはわからないが、1つ言えるのは・・・
艦娘を現実の世界に送り込んでいるのは確かなようだ・・・しかし、理由はまだわからない。
送られた艦娘も解体されたわけじゃなく、「解体されたふりを装って現実で生活しろ」と命令されているようだ。
もし、正体を知られたら「自害しろ」とも・・・それは証拠隠滅?
「・・・・・・」
この現実で戦争でも起こすつもりなのか?
ゲームの世界から現実の世界に干渉できたことで、新たな戦略を練っているのか?
だとしたらかなりマズイ状況だな・・・早く艦これの世界へ行って明石を止めなければ!
提督は秋月が持っていた装置を起動・・・光に包まれ、提督を包んだ。
・・・・・・
・・・
・
提督が艦これの世界に入った。
「明石は・・・明石はどこにいる?」
提督は明石を捜索するのだった。
・・・・・・
・・・
・
ここは鎮守府地下のとある工房・・・
「もう少し・・・」
そこには明石の姿が・・・
「もう少しで・・・もう少しで私の計画が・・・」
設計図を睨みながら・・・
「私の計画が実現する!」
明石は叫んだ。
・・・・・・
「明石! どこにいるんだ!」
明石を探しているが見つからない・・・いや、それ以上に・・・
「・・・他の皆もいない?」
鎮守府内をくまなく探したけど・・・明石どころか他の艦娘たちもいない。
「くっ・・・何がどうなっているんだ!?」
提督は再び明石を探した。
・・・・・・
「明石! 明石!!」
勢いよく扉を開ける・・・するとそこに、
「あら、提督? どうしたんです? またこの世界に来たんですか?」
当の明石はきょとんとしながら提督の方を向いた。
「・・・・・・」
提督は再会の挨拶をせずにそのまま明石に掴みかかった。
「提督!? 何をするんです!? 何かあったのですか!?」
提督の行動に驚きを隠せない明石、
「お前は一体何を考えているんだ?」
「・・・・・・」
「現実の世界に艦娘を皆、転送する理由は一体何なんだ?」
「・・・皆を転送? 一体何のことですか?」
「とぼけるな! 現実に鳥海がいたんだぞ! 今さらしらばっくれるな!」
「・・・・・・」
明石は無言のままだ。
「・・・明石、今からお前を牢屋へと入れる・・・これは命令だ!」
明石を縛ると提督は地下へと連れて行った。
・・・・・・
「提督、待ってください! 私の話を聞いてください!」
「・・・・・・」
「お願いです! 提督は何か勘違いをされています! お願いです、離して!」
「・・・・・・」
明石の言葉など耳を貸さずに牢屋へと入れ、鍵を掛けた。
「提督! 待ってください!」
明石は訴えるが・・・
「明石・・・本当に残念だ。」
「提督・・・」
「お前には感謝をしていた・・・村雨に転送装置を・・・オレに現実とこの世界とで会話ができる装置を作ってくれて。」
「・・・・・・」
「でも、今までの出来事を考えると全て・・・お前が絵に描いたシナリオ通りに動いていたんだろう、オレたちは!」
「そ、それは・・・」
「せめて何の隠し事もなければ、これからもずっといい関係を築けていたかもしれないが、もう終わりだな。」
「・・・・・・」
「明石・・・お前はもう終わりだ・・・これから先ずっとこの牢屋で一生を過ごせ!」
そう言って地下から去って行った。
・・・・・・
・・・
・
「あらあら・・・」
艦娘だろうか・・・静かに口を開いた。
「明石さんは、地下の牢屋に入れられたようね・・・これは好都合ね♪」
明石が牢に入ったことをとても喜んでいた。
「後は・・・そうね・・・提督に今度は死んでもらおうかしらね。」
暗くて見えないが、その言葉から強い憎悪が感じ取れる。
「私たちを捨てた提督と皆・・・全員に・・・復讐を!!」
「消えた艦娘」 終
続きは「明石の策略、黒幕はまさか!?」にて。
物語は全4話で「村雨、PCから飛び出しちゃった!?」→「秋月、お前もか!?」
→「消えた艦娘」→「明石の策略、黒幕はまさか!?」
の予定です。(変わる可能性あり、ですm(― ―)m ペコリッ(礼))
このSSへのコメント