2020-08-13 01:22:44 更新

概要

曙の件でブラック鎮守府の摘発に貢献してから数日後、提督の元に1通の手紙が届く。
そこに書かれていた内容は、その件に関して特別な報酬が送られるというものだった……やったぜ。


前書き

どうも。自分がイベント戦というものに参加できるようになる頃には磯風、グラーフ、アークロイヤル、ガングートを建造で呼べるようになっていて欲しいと
本気で切に願っている柔時雨です。

久々の更新になりますねぇ。御無沙汰してました。

相も変わらず例のメンバーで、時間をかけた割にはグダグダな内容ですが、またクスっと笑っていただけるようでしたら之幸いと思っております。

「柔時雨の作品を読むのは、この作品が初です!」という方は、『 提督 『 建造だけで艦隊を揃える 』 』……は、まぁいいか。
ですが、 『提督 『 急募!求む駆逐艦娘 』』 を先に読んでいただくことをオススメします。
( 宣伝でも強制でもないよ!本当だよ! )


鎮守府 ・ 執務室



高雄 「提督。海軍本部の元帥様からお手紙が届いてましたよ。」


提督 「ん?あぁ、ありがとう。」



俺は高雄から手紙を受け取り、一通り目を通す。



提督 「……………………マジか。意味解んないんですけど……」


高雄 「どうされたんですか?」


提督 「高雄。この間、ウチに別の鎮守府からの艦隊が来たのを覚えているか?」


高雄 「はい。あれは確か………………」



~ 数日前 ~



千歳 「提督さん!ごめんなさい、今すぐ港に来てもらえますか?」


提督 「ん?どうした、千歳。」


千歳 「どこの鎮守府からの部隊かは解らないのですが、負傷した艦娘達が港に漂着したんです。」


提督 「何だって!? わかった!那智と高雄は?」


千歳 「那智さんが 『 司令官ならこうするだろう 』 とのことで、既に艦娘達の救助に当たっています。申し訳ありません、提督さんの指示を待たず……」


提督 「いや、よくやってくれた!よし、すぐに港に向かう!」


鎮守府 ・ 港


提督 「皆、状況はどうなっている⁉ 」


那智 「司令官!来てくれたか!見ての通り、部隊が2編成の計12人全員が負傷していてな……私達だけでは手が足りん。」


提督 「わかった。今、千歳に入渠ドックの準備をしてもらっている!もう少しかかるだろうが、とりあえず大破している子から優先的に入渠ドックへ運ぶぞ!俺もちょっと足を踏み入れるが今回は大目に見てくれ!」


那智 「もちろんだ!この非常時にそのようなこと気にしないさ。頼りにしているぞ、司令官!」


提督 「よっしゃ!任せろ!」



俺はそう言いながら、パッと見戦艦級の艦娘に肩を貸してやった。



武蔵 「お前が此処の提督か……?すまない、迷惑をかける…………」


提督 「何言ってんだ!困ったときはお互い様だろ。168、涼風、曙!お前達は小破の艦娘達を医務室へ連れて行き、怪我の手当てをしてやるんだ!」


168 「えぇ!解った。任せて、司令官!」


涼風 「がってんだ!ほら、しっかりしな!医務室へ行くよ。」


曙 「小破の子は少ないみたいね……こっちが済んだら、そっちを手伝ってあげるわ!」


提督 「助かる。他の皆にも伝えておく!資源、資材は出し惜しみするな!この子達の怪我の治療や補給のことを最優先に考えて行動せよ!」


艦娘's 「「「「「「「「「了解!!」」」」」」」」」



~ 回想終了 ~



高雄 「あの時は本当に大変でしたね。それで……その件と今回の書状に何の関係が?」


提督 「手紙によると、実はあれ……最前線で戦ってる鎮守府の主力艦隊だったらしくてな。激戦で更に苦戦を強いられ、やむなく撤退を余儀なくされた道中に偶然この鎮守府が見えて、補給と怪我の治療を求めてきたらしいんだ。」


高雄 「まぁ……そうだったんですか。」


提督 「それで、偶然とはいえ最前線で戦う貴重な戦力を助けてくれたお礼と、曙の件でブラック鎮守府の摘発に協力してくれたお礼とかで……艦娘が2名、ウチに新しく配属されることになった。」


青葉 「司令官!今の話、本当ですか?」



盗み聞きでもしていたのだろうか?執務室の扉が盛大に開き、なかなかベストなタイミングで青葉が入って来た。



提督 「あぁ……しかも、何か普通の海域では見つからない艦娘達らしい。大した事したつもりなんてねえのに、こんな優遇されてしまっていいのかねぇ?」


高雄 「提督にとっては軽い人助けのつもりだったのかはしれませんが、そのおかげで多くの艦娘や見知らぬ人の命が救われたのは確かですよ。

ですから、ここは素直にお礼を受けましょう。」


青葉 「そうですよ!あの時の司令官さんと元帥との会話内容を全員に伝え終えた後、執務室に戻ってみたら……曙さん、嬉し涙を零して喜んでいたんですから。」


提督 「マジで⁉ うわ……そのレアな瞬間、見たかったな……」


青葉 「そんなこともあろうかと!バッチリ写真に収めてますよ!」つ激レア写真


提督 「でかした、青葉!」


青葉 「恐縮です!」


高雄 「それで、提督。その方達はいつ来られるのですか?」


提督 「ん?えっと……あっ、日付が別々だな。1人は明日、もう1人は明後日来るらしい。」


青葉 「わっかりました~!では、青葉は皆さんにこのことを伝えてきますね。」



そう言った青葉が、執務室の扉を開けっぱなしのまま駆け出して行った。



天龍 「何だ?執務室の扉開けっ放しで……何か遭ったのか?」


提督 「おっ、天龍。出撃お疲れ様。確か、バシー島沖 に行ってたんだっけ?それで戦果はどうだった?」


天龍 「山城が中破、千歳が小破、168が大破っつう被害は出たものの、敵艦全滅で勝利を収めて来たぜ!那智と曙も居たしな。」


提督 「そっか。よく頑張ってくれた!それじゃあ、皆に補給と休養をしっかり取るように伝えてくれ。間宮券に関しての希望は随時受け付けるとも。」


天龍 「了解……っと、そうだ。忘れるところだった……」


提督 「ん?どうしたんだ?」


天龍 「いや、出撃中に迷子になってる艦娘と接触したから連れて来たんだよ。今、執務室の外で待ってもらってる。」


提督 「迷子って……ドロップ艦ってやつだろ?ウチでは初めてだな。構わないから中へ入れてあげてくれ。」


天龍 「おう!待たせたな。提督が中に入って良いってよ。」


「駆逐艦、浜風です。これより貴艦隊所属となります。」


提督 「よく来てくれた。君の着任を歓迎する。こらからよろしくな、浜風。」


浜風 「はっ……はい!よろしくお願いしますね、提督。」


提督 「それじゃあ、高雄。浜風に鎮守府内を案内してやってくれ。」


高雄 「承知しました。それじゃあ、行きましょうか。」


浜風 「よっ……よろしくお願いします!」


天龍 「そんなに固くならなくていいぜ。ウチの規則とか上下関係みたいなのって、たぶん他の鎮守府より緩いからよぉ。なぁ、提督。」


提督 「おう!あって無いようなもんだからな。安心して気楽にしてくれ、浜風。」


浜風 「は……はい。ありがとうございます。」ニコッ


高雄 「(かわいい……)」


天龍 「(かわいいな……)」


提督 「(いっぱい、おっぱい、ボク元気……)」



◇◇◇◇◇



翌朝


鎮守府 ・ 執務室


提督 「………………えぇ……」


浜風 「どうしたんですか?提督。」


提督 「新しく届いた報告書の中に……他所の鎮守府の提督が意識不明の重体に陥っているって内容があってな……」


浜風 「まさか、深海棲艦の襲撃ですか⁉ 」


提督 「いや……何でも、戦艦と駆逐艦が作った料理を食べて、昏睡状態に……と書かれている。」


浜風 「!? 」


提督 「虚偽の報告とも思えないが……マジでそんなこと……ん?どうした、浜風!? 何か、額からすっげえ汗流れてるけど!?」


浜風 「い……いえ、その……戦艦の艦娘さんは知りませんが、駆逐艦の方は心当たりが…………おそらく……いえ、十中八九……」汗ダラダラ


山城 「失礼します……って、ちょっと!?浜風、大丈夫?」


浜風 「はい……浜風は大丈夫です。」汗ビッショリ


提督 「それ、どこかの戦艦の……まぁ、本人が大丈夫って言ってるんなら信じようか。それで、山城……何か遭ったのか?」


山城 「え?あっ……提督。昨日青葉から聞いていた新しく着任するっていう子、来てるわよ。」


提督 「ん?そうか。それで?また執務室の外で待ってくれているのか?」


山城 「いえ……それが……窓の外を見て。」


提督 「窓の外?」



山城に言われたとおり、窓から外の景色を眺めると…………



『駄目!長10cm砲ちゃん、あんまり暴れないでぇ!』


千歳 『きゃあぁぁぁ!私の艦載機の皆さんが狙われてる!』


涼風 『千歳さん、逃げて!早く!』


提督「…………何だ?あの状況……以前、演習で見た島風が持っていた艤装?ユニット?みたいなのが暴走してんのか?」


浜風 「千歳さんが食堂に逃げ込んだことで、とりあえず収まったみたいですね。」


提督 「そうみたいだな………浜風。ちょっと、あの子を迎えに行ってやってくれないか?山城を迎えに出したら、たぶんあの小さいのがまた暴走する。」


浜風 「了解しました。」



~ 数分後 ~



浜風 「提督、お連れしました。」


「秋月型防空駆逐艦、一番艦、秋月。ここに推参致しました。お任せください!」


提督 「うん。今日からよろしく!防空駆逐艦……なるほど、だから艦載機に…………」


秋月 「申し訳ありません!着任早々、騒動を起こしてしまって……うぅ……あとで千歳さんにも謝らないと……」


山城 「大丈夫よ。千歳もきっと、あなたに悪気があるだなんて思ってないから。」


秋月 「山城さん……ありが————」


長10cm砲ちゃん 「」ジャキッ!


山城 「…………!?」フコォォォォォ……


秋月 「あぁぁぁぁぁ!ごめんなさい!ごめんなさい!」


提督 「あぁ……改になって航空戦艦になったばっかりに……」


浜風 「山城さんも、まさかこんな日が来るとは思ってなかったでしょうね……」


提督 「千歳と山城は、戦闘以外で秋月と話すときは艤装展開と艦載機を所持しないように。」


山城 「私、今……艦載機を所持してないのに……普通に立っていただけなのに、航空戦艦っていうだけで狙われて……不幸だわ。」フコォォォォォ……


浜風 「えっと、その……山城さん、気を落とさないでください。」


山城 「えぇ……ありがとう、浜風。」


提督 「(それにしても………秋月が謝るために頭を下げた時、偶然スカートの中が見えたんだけど……赤……だったよな。情熱的なんだな……)」



*****



その日の夜


鎮守府 ・ 食堂



提督 「さてと、飯にするか……今日は蕎麦でも食うかな。」


曙 「あっ……ちょっと、クソ提督!」


提督 「曙……そう呼ぶことは別に構わないけど、できることなら食堂でその発言は控えような。特に、カレーの日は厳禁だ。」


曙 「え?あっ……!そうね、ごめんなさい。」


提督 「それで?何か遭ったのか?」


曙 「そうだった!ちょっと、あの子……今日来た秋月だっけ?何とかしてあげなさいよ!」


提督 「何とかって……?」



ふっと曙が指差す、秋月が居る方を見ると……秋月の前には食事( あの内容は、今日の日替わり定食か )が置かれている状況なのだが、何やら秋月が戸惑っているように見えた。



秋月 「あっ……あの!こんな贅沢して大丈夫なのでしょうか!? 」


浜風 「贅沢って……それ、普通の定食ですよね?秋月さん、普段どんな食事をされているんですか?」


秋月 「え?握り飯と沢庵ですが……」


涼風 「少なっ!? もっとちゃんと食べなきゃダメだよ!ほら、一口食べてみなって!」


秋月 「では……いただきます。」



秋月が茶碗を持ち、ごはんを一口……そして、おかずを一口食べたところで、その目から涙が零れ落ちる。



涼風 ・ 浜風 「「どうしたの!? 」」


秋月 「美味しいです……とっても……美味しいですぅ~!(泣)」



秋月のその発言を聞いた瞬間、心配で駆け付けようとしていたウチの艦娘達全員が盛大に転倒した。



提督 「おぉ!何かのコメディを見てるみたいだ。」


曙 「そんなのん気な事、言ってる場合じゃないでしょ……」



とりあえず……誰も怪我をしていないようで、しばらくの間、食堂では 『 キラキラ状態の秋月を愛でる会 』 が行われていた。



◇◇◇◇◇



翌日


鎮守府 ・ 執務室


那智 「そういえば、今日も新しい艦娘が来るのだったな。」


提督 「あぁ。歓迎会の主役である浜風と秋月は、天龍に頼んで長時間の遠征に連れて行ってもらっている。この間に準備できてたら良いんだけど……青葉、食堂の方はどうなってる?」


青葉 『大丈夫です!滞りなく、着々と準備できてますよ。』


提督 「そっか。もうすぐ3人が帰ってくるだろうから—————」


168 「司令官!あっ……通話中だった?」


提督 「ん?どうしたんだ、168。そんなに慌てて……」


168 「そうだった!あのね、ついさっき新しい艦娘が着任してきたんだけど……」


那智 「何か遭ったのか?」


168 「えっと……千歳さんと涼風ちゃんが対応してくれているんだけど、その……日本語と外国の言葉を交えて話すから、意思疎通……っていうのかな?コミュニケーションが上手く取れないの……」


提督 「何だ?ルー語を話す艦娘でも着任したのか?……とりあえず行ってみるか。2人は今、どこに?」


168 「鎮守府の正面玄関よ。」



†††††



鎮守府 ・ 正面玄関



涼風 「くあぁ!困ったねぇ……」


千歳 「日本語の部分は聞き取れるのですが……この方の母国の言葉が……」


提督 「涼風、千歳!」


千歳 「提督さん……来てくださったんですね。」


提督 「168から大体の話は聞いている。こちらがその艦娘さんか……」


「Guten Morgen!私が航空母艦、Graf Zeppelinだ。貴方がこの艦隊を預かる提督なのだな。そうか……了解だ。」


提督 「グーテンモルゲン……あぁ、なるほど。ようこそ、グラーフ。君の着任を歓迎するよ。」


千歳 「提督、この……グラーフさん?の言葉が解るんですか?」


提督 「あぁ。簡単な挨拶くらいだけどな……彼女はドイツ出身の艦娘だ。」


涼風 「どいつ?なぁ、提督……どいつってどんな国だい?」


提督 「ん?そうだな……ノイシュバンシュタイン城みたいな観光名所も有名だけど………」


千歳 「今のはお城の名前ですか?よく噛まずに言えましたね……」


提督 「ものすごっく簡単に言えば、ソーセージとビールが美味い国だ。」


涼風 「ソーセージって、あのたまに朝食に出てくる細長いお肉かい?」


提督 「細長いお肉って……まぁ、言わんとしていることは解るけど……」


千歳 「ビールというのは?」


提督 「確か、麦から作ったお酒……だったか?自分では飲まないから、詳しくは……………あ。」


千歳 「麦から作ったお酒……ですか!」パアァァ……!


那智 「む?その様子だと、無事に解決できたみたいだな。」


提督 「おう、那智。まぁ……何とかな。」


グラーフ 「ナチ!? なんと!此処には既に同郷の艦娘が着任していたのか!」


那智 「同郷?お前も呉海軍工廠で生まれたのか?」


グラーフ 「クレカイグンコーショー?いや、私はドイッチェ・ヴェルケ社で起工されたのだが…………」


那智 ・ グラーフ 「「?」」


提督 「あー……グラーフさん。彼女は確かに声に出して発音すれば 『 ナチ 』 だが、文字にして書くと 『 Nachi 』 であって、 『 Nazi 』 とはまったく無関係の存在だ。」



俺は実際に手帳にペンで文字を書いて、グラーフに違いを説明する。



グラーフ 「そうだったのか。失礼した!どうやら勘違いをしていたようだ。」


那智 「いや、お前の国に関する言葉と同じだったのなら仕方ないさ。では改めて……私は妙高型 2番艦 重巡洋艦の那智だ。今後もよろしく頼む。」


グラーフ 「Graf Zeppelin級航空母艦一番艦、Graf Zeppelinだ。こちらこそ、よろしくお願いする。」


千歳 「それより、那智さん。グラーフさんの国……麦で作ったお酒が美味しいらしいですよ?」


那智 「何だと⁉ それは本当か?グラーフ!」


グラーフ 「え?あ……あぁ、ドイツのビールは美味いぞ!店先で朝から2リットルジョッキを片手にソーセージやカイザーロールをつまみに飲む光景は、日常風景だ。」


千歳 「那智さん。提督さんに酒保でビールを取り寄せてもらえるよう、お願いしてもらえないかしら?」


那智 「わかった!これも外国の文化を知るためだ……私から提督に意見具申してみよう!」


提督 「そういう話は俺の聞こえない所でしろ。丸聞こえだぞ、酒飲み2人組。でもまぁ、確かに……グラーフのためにも検討してみようか。」


グラーフ 「えっと……つまり、日本でもビールが飲めるようになるかもしれないのか?Dank、Admiral!感謝する!」



◇◇◇◇◇



~ 数分後 ~


鎮守府・執務室



グラーフ 「失礼する。Admiralは居るか?」


提督 「おっ、グラーフ。迷わず此処に来れたんだな。」


グラーフ 「うむ。チトセが丁寧に教えてくれたからな。途中、アキツキのチョー10センチホー?ちゃんに襲われかけたが……」


那智 「また被害者が………」


提督 「あれは空母や航空戦艦の通過儀礼として扱うことになりそうだな……とりあえず、グラーフ。艦載機を持った状態で秋月に近寄らないように。」


グラーフ 「承知した。それと……先程、アケボノという駆逐艦が 『 クソテートク! 』 と叫んでいたのだが……これはどういう意味なのだ?」


那智 「何だ?貴様、また何かやらかしたのか?」


提督 「え?身に覚えが無いんだけど……まぁ、とりあえず……グラーフ。クソ提督というのは、ドイツ語で 『 Scheiße ( シャイセ ) Admiral 』 ということだ。」


グラーフ 「なっ!?最大級の暴言ではないか!厳罰対象に値するぞ!」


提督 「まぁ、曙の場合はなぁ……仕方ないと思ってる。那智、グラーフに曙の資料を見せてやってくれ。」


那智 「承知した。えっと、確か………あぁ、あった。これだ。」



那智は棚から1冊の資料を取り出し、グラーフに手渡した。



グラーフ 「……………所々、日本語の難しい表現は解らなかったが……少なくとも 『 艦 』だった頃のアケボノが、不遇な扱いを受けていたことは解った。」


提督 「過去の経歴故に捻くれてるというか素直になれないというか、自分に自信を持ちきれない……っていう感じかな。」


那智 「それにウチの曙は元々、劣悪な環境の鎮守府に居て過酷な労働を強いられていた。曙の異動してきた経緯などは省略するが………少なくとも、私達と出会っていなかったら、曙の人間不信は最悪のところまで陥っていただろう。」


提督 「最近は笑うようになった……と思っていたんだけどな。まぁ、そういうワケだからさ。いつになるかは解らんが、曙の気が済むその日まで『 クソ提督 』 と呼ばせてやろうと思ってる。口が悪いだけで、本当は良い子なんだ。グラーフ、曙とも仲良くしてやってくれ。」


グラーフ 「そうだったのか……わかった。そういうことなら、私ももう何も言うまい。それに……私も上官の理不尽な判断とかそれ以外の理由が重なり、進水こそしたものの最終的に完成されなかった未完の 『 艦 』だからな。アケボノの気持ちも少しだけだが、解るような気がする……」


提督 「そっか……まぁ、過去では確かに不遇だったかもしれないけど、今はこうして艦娘としてちゃんと存在してるんだ。主戦力として他の皆と同じように頼りにしてるからな。頑張ってくれ、グラーフ。」


グラーフ 「Admiral……あぁ、もちろんだ。任せてくれ!」


青葉 「司令官。準備は無事、終わりましたよ~!」



閉まっていた扉を元気良く開けた青葉が、手を振りながら入って来た。



提督 「おっ……そうか。わざわざ呼びに来てもらってすまんな。それじゃあ……那智、グラーフ、食堂に行くぞ。」


グラーフ 「食堂?」



*****



鎮守府 ・ 食堂


提督 「え~……毎回新しく着任してくれた艦娘が2~3人揃ってから行う、もう何回目かも解らなくなってきた歓迎会でございます。それでは……浜風、秋月、グラーフの着任を祝して……乾杯!」


艦娘's 「「「「「「「「「「「「 乾杯! 」」」」」」」」」」」」


提督 「これで12人か……賑やかになったなぁ……」


天龍 「おっ!提督!ちょっとこの肉料理、食ってみろよ!」


提督 「ん?………美味いな。誰が作ったんだ?高雄か?山城か?」


天龍 「そうかい……お~い!浜風!提督がお前の料理、美味いって言ってるぜ。」


浜風 「ふぇっ⁉ あ……ありがとうございます。」/////


提督 「浜風が?でも、今日お前と一緒に遠征に行ってただろ?料理なんてする時間……それに、浜風と秋月には内緒だったはずじゃ……」


天龍 「それが……駆逐艦の仲間が増えて嬉しかったんだろうな。秋月が来る前だから一昨日か?涼風がうっかり口を滑らしちまったみてえなんだ。『提督が歓迎会を企画してる!明日と明後日に来る艦娘が揃ってからだって!』……ってな。」


提督 「涼風ぇ……」


天龍 「それで今日に合わせて仕込みをしておいて、遠征から戻ってから仕上げをしたそうだ。」


提督 「そうか……浜風、ちょっと。」手招き


浜風 「はい。何ですか?提督。」トテトテ


提督 「ごちそうさま。本当に美味かったぞ。」ナデナデ


浜風 「提督!?そんな……喜んでもらえて、私も嬉しいです。」/////


高雄 「天龍さん。私にも浜風ちゃんの料理、頂けるかしら?」


青葉 「青葉にもいただけますかー?」


天龍 「おう!ちょっと待ってくれ。すぐ持って行く!それじゃあな、提督。」


提督 「あぁ。オレも他の子の様子見てくるわ。それじゃあ、浜風も存分に楽しめよ。」


浜風 「はい。ありがとうございます、提督。」ニコッ!



天龍と別れ、バイキング形式の宴会を眺めていると……



秋月 「あっ……提督!」


提督 「おう、秋月。いっぱい食ってるか?」


秋月 「はい!皆さんの料理、とっても美味しいです!同時に、こんな恵まれた食事に慣れてしまいつつある自分が怖いです……」


提督 「そ……そうか……でもまぁ、今くらいはハメを外してもいいんじゃないか?これは浜風やグラーフ……そしてお前の着任を祝うパーティなんだからさ。」


秋月 「提督……ありがとうございます!私、この艦隊に着任できて、本当に良かったです。」


提督 「こっちこそ。ウチに来てくれてありがとうな、秋月。ほら……みんなと楽しんでくるといい。」


秋月 「はい!では、失礼します。」


168 「秋月!こっちに来て一緒に食べましょ!」


山城 「168が捕って来てくれたお魚、新鮮で美味しいわよ。」


秋月 「168さんが捕って来たお魚!?はい!いただきます。」


提督 「あとは………」


涼風 「おーい!提督ー!」



声がする方を見ると涼風と那智、千歳にグラーフが盛り上がっていた。



提督 「やっているな、お前等。」


グラーフ 「Admiralか。たった今、ナッチーから色々とこの鎮守府や艦隊のことを教わっていた。」


提督 「ん?グラーフも那智のこと、そう呼ぶようにしたのか。」


涼風 「あたいが教えたんだ!」


那智 「やや不本意ではあるが、もう慣れた……それに、グラーフの言いやすいように覚えてもらえればと思ってな。」


提督 「文字数的には増えてるんだけどな。」


千歳 「それより提督さん。せっかくこちらにいらしたんですから、御一緒しませんか?」


提督 「いいのか?じゃあ、お言葉に甘えて……」


涼風 「……あっ!ぼのたーん!こっちで一緒に楽しもうよ!」


グラーフ 「ボノタン?」


曙 「ぼのたん、言うな!……って、あっ……く……あんたも此処に居たのね。」


提督 「おう、曙。お前も楽しんでるか?」


曙 「えぇ。それなりにね。本当に……前に居た鎮守府では考えられない光景だわ。」


グラーフ 「なるほど。アケボノのことだったか。ふむ……ボノタン……可愛いではないか。私もそう呼ばせてもらおう。」


曙 「ほら見なさい!涼風、あんたのせいでグラーフさんが余計な事覚えちゃったじゃない!」


涼風 「別にいいじゃん!外国から来たグラーフとより打ち解けるためなんだからさぁ!」


提督 「それで……どうだ?グラーフ。この鎮守府に馴染めそうか?」


グラーフ 「うむ。私はドイツの艦娘だから、皆と親しくなるにはそれなりの時間が必要だと思っていたのだが……そんなことはなかった。此処は居心地の良い場所だな。」


提督 「そっか……ありがとう。この鎮守府の代表として、そう言ってもらえると嬉しいよ。」



†††††



鎮守府港


提督 「いやぁ……今回もはっちゃけたなぁ……」


那智 「やはり此処に居たのか。ふふ……また場の空気に酔ったのか?」


提督 「まぁな。皆寝たのか?」


那智 「あぁ、つい先程な。全員にリネン室から取ってきた毛布を掛け終えたところだ。」


提督 「お疲れ………で?飲み相手がダウンしたから、俺を探していたと?」


那智 「少しくらい付き合ってくれても構わないだろう?ほら……ウーロン茶を持って来た。私は秘蔵の達磨で楽しくやらせてもらうさ。」


提督 「まぁ……それなら、少しだけな。それじゃあ、改めて……乾杯。」


那智 「乾杯。」



俺と那智は互いに飲み物の入ったグラスを軽くぶつけ合わせた。



那智 「なぁ……司令官。以前から訊きたいことがあったのだが……」


提督 「ん?何だ?」


那智 「司令官は何故、海軍に……司令官になろうと思ったのだ?」


提督 「ん~……これはまだ、俺がガキだった頃の話なんだけど……俺の実家の近所に昔、海軍で戦っていたっていう爺さんが居たんだ。戦役を終えてからは漁師として活動してたんだけどな。それで、その爺さんが『 昔は異国の艦隊と戦闘をしたが、最近はまた訳のわからん生物が儂等の海を穢しておるみたいじゃ。儂もあともう少し若ければ、再び戦陣に加わって御国のために戦えたんじゃがのぅ 』って言ってさ。」


那智 「ふむ……それで、その御隠居の代わりに提督になったと?」


提督 「いや?この時はまだ何とも思ってなかったんだけど、俺が少しだけ物事の善悪の判断を理解できるような歳になった頃……その親しい爺さんが、漁に出た後、深海棲艦に襲われてな。海軍仕込みの強靭な肉体と精神力で何とか生還はしたんだ……けどな、搬送された先の病院で様態が一気に急変したんだ。」


那智 「…………」


提督 「見舞いに行ったとき、その爺さんがベッドの上で俺に言ったんだ。『 あんな訳のわからん生物に海を支配されているとは……悔しいのぅ……最期に……せめて生きているうちに、静かで平和な海が見たかった 』……って。俺と爺さんしかいない病室で、戦時中に身内を亡くした爺さんが、涙ながらに心から絞り出した切実な言葉……それが爺さんの最期の言葉だった。」


那智 「そうか………」


提督 「別に『 爺さんを襲ったから深海棲艦が憎い!根絶やしにしてやる! 』とか……そういうことは不思議と、まったく思ってなかったな。ただ、爺さんが最期に語った『 静かで平和な海が見たかった 』って思いを実現させてやろう……って、爺さんが死んだ後に墓の前で決意したのが、俺が提督になろうと思った動機だよ。」


青葉 「(はわわわ……トイレから戻ってきたら司令官と那智さんの姿が無かったので探してみれば……これは貴重な話を聞かせていただきました!)」


那智 「司令官……話してくれてありがとう。そういうことなら、私も一層奮戦するとしよう。いつか……皆で平和な海を拝むためにもな。」


提督 「あぁ……そうだな。俺ももう少し、しっかりしねえとな……」


青葉 「(私からもありがとうございます!ばっちりメモもしましたし、うっかりボイスレコーダーの電源も切り忘れていましたし……これは、今日の新聞の一面記事にするとしましょう。最後に、写真を1枚……)」パシャッ!


提督 「ん?何か今、光らなかったか?」


那智 「え?いや……私は気付かなかったが……」



◇◇◇◇◇



翌朝


鎮守府 ・ 食堂



提督 「たぶん、皆まだ寝てるだろうな……仕方ない。俺が総員起こしをかけるか……」


天龍 「おっ!提督。読んだぜ、今日の鎮守府内通信。」


提督 「天龍……いや、皆起きてたのか。それより鎮守府内通信って……あれか?青葉が自主的に作って発行してる新聞みたいなやつのことか?」


浜風 「提督、おはようございます!あの……私もお爺さんのために頑張りますから!」


提督 「( ・ω・)ん? 浜風にも爺さんの知り合いが居るのか?」


高雄 「おはようございます、提督。昨夜は那智さんと遅くまでお楽しみだったようで……」


提督 「何で高雄が昨晩のことを?っていうか、高雄が思っているようなことは何もしてないぞ。本当です、信じてください!」



そんな疑問を抱きながら、青葉が作ったという新聞を手に取り、全てを……浜風の言った言葉の意味を理解した。

ご丁寧にまぁ……那智と2人で飲んでた時の写真まで添えてくれちゃって。本当にもう……どうしてくれようか。



提督 「アオバワレェ……昨夜見えたような気がした光は、カメラのフラッシュだったか……それで?これを作った青葉はどこに居るんだ?食堂に居ないみたいだけど……」


千歳 「提督さん、おはようございます。青葉さんならさっき、那智さんに引き摺られながら何処かへ連れて行かれましたよ。」


提督 「あ……あぁ~………わかった、把握した。ナムアミダブだぜ、あいつ……」



それから間もなくして……まだ若干怒りの表情を残した那智が、漫画みたいに3個ほど連なったたんこぶを頭に作った青葉を引きずって戻って来た。


まぁ……今回那智に訊かれたことを、後々1人ずつ改めて質問されて1回1回返答することを考えれば、この新聞で一気に伝わったことは案外良かったのかもしれない。


後書き

実際に艦これをプレイして、山城が瑞雲を飛ばし……千歳が烈風・紫電改二・流星改・彩雲を飛ばし……戦闘終了後に補給する度、ボーキサイトがそれはそれは楽しいことになりつつある現状です。
うちには赤城さんも加賀さんも居ないから、大丈夫……まだ大丈夫……

ご都合主義は誉め言葉……というわけで新たに3人、『 この作品の 』艦隊に加わりました。
( グラーフ欲しい……が、まだイベントに参加できる状態では……うごご……)

これで何やかんやで12人の艦娘。丁度、第1艦隊と第2艦隊が全員埋まる人数になりました。
第3、第4のことを考えると、まだ12人の余地があると…………

青葉 「やりましたね、司令官!まだまだ仲間が増えますよ。」
提督 「おい、馬鹿、やめろ……」

まぁ、今後もこのメンバーでのほほんと……( 気が向いたらまた艦娘が増えるかも )……ゆっくりペースで綴っていこうと思います。

此度はまた、私の作品を覘きに来てくださり、ありがとうございました。


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1: SS好きの名無しさん 2017-09-16 04:45:43 ID: dJze03X_

提督よ。そのチラッと視たものはブルマという物である。
一部の変態が愛して病まない恐ろしい物なのだ。
その健康的なエロスから近代では封印された古代の遺物なのだよ。

2: ユーカリ 2017-09-16 20:23:15 ID: CVs059w5

一気に読ませていただきました。

面白いです。これからも執筆活動頑張ってください。応援しております。

3: 柔時雨 2017-09-17 06:19:20 ID: VoFqzFU3

おぉ……ブルマはオーパーツと化してしまったのか……ガッデム!

感想、ありがとうございます!嬉しいわぁ……めっちゃ嬉しいわぁ。
SS好きの名無しさんはもちろん、同じようにSSを投稿されている方からのコメントは
本当に励みになります!感謝、感謝です。

まだまだ新人なので 『やっと会えた ご指導ご鞭撻 よろしゅうな 』精神で、皆さんに少しでも楽しんでいただける物語を
綴っていきたいと思ってます。

4: SS好きの名無しさん 2017-09-18 10:03:20 ID: _hnhgovx

人が大地に対する祈りと母なる生命の海に対する感謝と敬愛を
思い出せたら、平和な海に戻るかもね。
人が今のままなら命は汚れるばかりよ

5: SS好きの名無しさん 2017-09-20 06:21:23 ID: M6g-Qqtx

赤城さんはクエストこなしてゲットしよう

加賀さんは気合いで建造だ!

鶴姉妹は建造で泥沼になるので目を瞑ろうね

限定海域ドロップ艦は・・・そのうち作れると良いね!

6: SS好きの名無しさん 2017-09-20 08:03:17 ID: 2j2cQHDS

この提督なら安心して命を預ける事が出来る。
しかし那智君が完全に相棒に成りましたなw

7: 柔時雨 2017-09-20 20:03:21 ID: t7hlLthF

はぅあ⁉ 感想が来てます!ありがとうございます、ありがとうございます!

なかなか深い意見に、赤城さんと加賀さんは……ボーキが溜まってから考慮します。
空母の建造を殆どしていないので、今千歳さんしか居ない現状なのです。(しかも建造じゃなくてドロップ)

那智さん、良いですよ、那智さん。物語を作る際中、新たに登場したグラーフさんと
話し方が似ているので、途中でごちゃ混ぜになることがあるのは内緒の話……

初めて艦これをプレイした時、とにかく那智さんが欲しくてサイトを見て、重巡レシピを回したら
本当に最初に来てくれた子なので、ゲームでも大切にしていきたいです。
(SSでは登場艦娘は皆平等……に扱っていきたいです。)

8: SS好きの名無しさん 2018-02-06 01:27:53 ID: n14h6fNp

次回、第3艦隊 設立ですねw 楽しみにしていますw


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