2018-02-13 19:04:17 更新

概要

バレンタインデーの瀧三。超ショートな仕上がりになっちゃいました。


前書き

バレンタインデーが近いということで、急遽中途半端な出来の作品をほっぽりだして作ってみました。
2018/2/11 作成開始
2018/2/13 第一版 上梓(4662字)


三葉 「ねえさやチン、今年のバレンタイン、瀧くんに何贈ったらいいと思う?」

早耶香 「うーん?スイーツ大好き少女の私にそれ聞いてどうするの(イチゴショートぱくつきながら)」

三葉 「だって、世の中、チョコレートばっかりだし、瀧くん、意外と甘いもの嫌いじゃないし…」

早耶香 「だったら、ケーキにしとけばいいんじゃないの?お店で買ってきたのだって、悪い気はしないだろうし」

三葉 「そうかなぁ・・・やっぱり手作りの方が思いがこもってるって言うか…」

早耶香 「いや、あのね。食べるのが嵩じて、プロ級になった私ならいざ知らず、ほとんどお菓子なんて作らないあなたがそう簡単にケーキ焼けるとでも思って?」

三葉 「ええ?そんなに難しいの?」

早耶香 「みんな勘違いしているけど、レシピって一つのひな型なのよ。その通り作れば失敗しないけど、アレンジも何もされてないから凡庸なものしかできない。だからちょっと何か手順を間違えたら取り返しのつかないことになるのよ」

三葉 「ああ、それ、なんとなくわかる。勝手にアレンジしちゃったりとかね」

早耶香 「水とぬるま湯、熱湯と小麦粉を溶く水分にしたって温度帯がいくつもあるわけで、なんでそれなのか、ということがわからないといけないと思うのよ」

三葉 「うーん。やっぱりケーキ作りって奥が深いんだなぁ」

早耶香 「そうよ。私も来るべき独立に向けて自己修行中だけど、オーブンの温度ひとつとっても奥が深いって言うか…」

三葉 「失敗作だった時の後悔とか、使った時間とか考えたら、ホールケーキはちょっとハードル高そうだなぁ…」

早耶香 「まあ、失敗したって、心優しい瀧くんなら文句言わずに食べてくれるだろうけどね」

三葉 「そ、そこまで心広くないわよ。でも、失敗しなさそうなケーキって言えば、パンケーキがあるじゃない?」

早耶香 「あ、それって案外いいかもね。さすがにホットケーキで失敗したって話聞かないし」

三葉 「でしょう?これだったら、二人で食べさせっこもできるし…」

早耶香 「ウゲッッ、そう来ましたか…まあ、ここから先はあなたたちのバレンタインだから、後はご随意に。いい夢見ろよな」


三葉 「さて、そうと決まったら、早速作り始めますかねぇ♪」

三葉、市販のホットケーキミックスを大量に練り始める。

三葉 「あ、これ、一袋まるまる使っちゃったけど、これだと20枚くらいできちゃうのか…まあ、私も食べるし、最悪冷凍しとけばいいし…」

三葉、順調に一枚一枚焼成していく。

三葉 「( ´Д`)=3 フゥ、これで6枚目…案外、生地って減らないものなのね…あと12,3枚ってところかしら…」

2時間弱かけて、ようやく焼きあがる。パンケーキタワーが3本ほど出来上がっているキッチン。

三葉 「焼きも焼いたりってところね?それにしてもちょっとやりすぎたかしら…」

タワー一本分は一枚一枚ラップにくるんで冷凍室に納まっていく。

三葉 「ちょっと味見ぃ」

焼きたてに近い一枚を取り出し、皿にもって、バター/メープルシロップをかけて食べる三葉。

三葉 「あ、うんうん。この味だわ。やっぱり○永のホットケーキミックス、最高ね」


瀧 「ただいまぁ」

三葉 「あ、瀧くん、おかえりぃ」

瀧 「うん?なんだ、この甘ったるい香りは…」

三葉 「ねえねえ瀧くん、今日ってなんの日か、知ってる?」

瀧 「え?今日?2月14日だけど…それが何か?」

三葉 「もぅ、鈍感だなあ、今日と言ったら、ほら、チョコが一番売れる…」

瀧 「あぁ、バレンタインデーか」

三葉 「そう!それでね、チョコじゃあ面白くないだろうってことで、今年はこんな風にしてみましたぁ」

テーブルの上には、高校生時代の瀧が食べたのと見間違うような、タワーパンケーキが鎮座していた。

瀧 「へぇ、これゃ凄いね。頑張ったな、三葉」

三葉 「褒めてくれるの?ありがと」

瀧 「それはわかったから、早く飯にしようぜ」

三葉 「そ、それなんだけど(モジモジ)」

瀧 「えぇ?!あ、あんまり聞きたくないんだけど、パンケーキ焼くの夢中で、なんも用意してないとか…」

三葉 「う、うん…」

瀧 「まさかとは思うけど、ご飯も炊いてないとか…」

三葉 「そのまさかなの…」

瀧 「まーじでーすかー(棒)」

三葉 「ほんっとに御免。でも、パンケーキならいっぱいあるから」

瀧 「いっぱいって、どんだけ焼いたんだよ、いったい?!」

三葉 「ええっと…(指折り数えて)20枚ちょっと」

瀧 「ということは?このタワーで5枚使ってるから、残り15枚はあるってことか…」

三葉 「あ、私が一枚つまみ食いしたけどね」

瀧 「はあぁぁ(ため息)。それにしても焼きも焼いたりだな。2時間くらいかかったんじゃない?」

三葉 「あ、そんなくらいだったかな、でもなんでわかったの?」

瀧 「20枚くらいだろ?1枚5分は余裕でかかるからな。どうせ粉大量に溶きすぎたんだろ」

三葉 「そうみたい。いっぱい食べてもらいたいかな、って思って一キロ入りをぜんぷ溶いたから」

瀧 「はぁぁぁ(ため息二回目)。ちょっとは頃加減を考えましょうね、三葉さん」

三葉 「う、うん。次からはそうする」

瀧 「今から飯の用意ったって時間かかるし…まあ一日ぐらい我慢するか」

三葉 「許してくれるの?」

瀧 「ああ。許すも何も、俺、そんなに怒ってないけどな」

三葉 「よかったぁ。出来上がってふっと時間見たらそんな時間だったし、怒られたらどうしようってびくびくしてたの」

瀧 「俺のためにしてくれたんだし、いっつもうまい料理で迎えてくれてるんだ。文句言ったって腹が減るばっかりだしな」

三葉 「じゃあ、早速このタワーを…」

瀧 「おいおいおい、これはもうちょっと愛でておこうよ。せっかくの作品なんだし」

三葉 「じゃあどうするの?」

瀧 「決まってんだろ。残りのプレーンを食べるのさ」

三葉 「大半は冷めちゃってるけど…」

瀧 「そういうときは、フライパンで温めるのがいいんだよ」

三葉 「電子レンジじゃなくて?」

瀧 (キッチンに向かい立つ)「確かに手早く温まるけど、芯から温まってないから、冷めるのも早い。それにぱさぱさになるのが弱点」

三葉 「そうね、いつもそれで困ることってあるのよね」

瀧 「いろいろあるけど、やっぱり水蒸気の力には敵わないよ。フライパンが熱したら、入れる。ほぼ焼き立てだから、スプーン2杯くらいの水を入れる…」

(ジュワーーーーー)

瀧 「すかさずふたして、蒸し焼き。水分飛んだら出来上がり」

三葉 「ふーん、勉強になるなぁ」

瀧 「俺だって、だてにレストランでバイトしてたわけじゃないんだぜ」

三葉 「ホールだったけど?」

瀧 「調理のコツなんかは、仕事終わりとかにシェフに聞くんだ。まかないなんかもアイディア料理だったりするし」

三葉 「こんなの作ってほしいっとかのリクエストって、ある?」

瀧 「うーん。ちょっとワンパターン化してきてるから、アイディア鍋とか、食べてみたいな」

三葉 「ちょっと頑張ってみるね」

瀧 「さあてと・・・まあ慌ててたくさん温めても仕方ないし、三葉のと2枚でいいか」

三葉 「ありがと」

瀧 「もう焼けてるから、ひと手間だけだしな…ほら、君の分」

三葉 「じゃあ、後はバターとメープルかぁ」

瀧 「ああ、よろしく」

二人、テーブルにつく。

瀧 「さあて、瀧流温めの術、どんな感じに仕上がっていますことやら…」

三葉、先にナイフを入れて口に運ぶ。

三葉 「ウワ、まるで焼き立てみたい!」

瀧 「でしょう?あのふわふわ感って結局空気感なんだよ。冷めるとしぼむけど、温めたことでふっくらが甦るんだな」

三葉 「何枚でも行けちゃいそう」

瀧 「お褒めに預かり、光栄です。今日の飯抜きの分と合わせて、三葉にはいろいろおごってもらわないとなぁ…」

三葉 「あ、そ、それは…」

瀧 「まあ、今すぐでなくてもいいよ。なににするかは三葉が決めてくれたらいいし」

三葉 「また、考えておくわね」

瀧 「しかし、うまかったなあ。もう一枚、いっとくか」

三葉 「あ、私も」

瀧 「うんうん。うまい具合に消化できてますな。それ終わったら、タワーの方に取り掛かるか…」


タワーも二人で食べ終わる。

瀧 「いやア、驚いたよ」

三葉 「なに?」

瀧 「パンケーキがこんなに腹にたまるとは、思いもしなかったよ」

三葉 「私も。人生で一番パンケーキ食べたかもしれない」

瀧 「ただのおやつだと思ってたからな…枚数食べれば立派な食事になるって気がついたわ」

三葉 「でも、途中で飽きが来なかった?」

瀧 「うん。食感が単調だからだったのかもしれないけど、それでもタワーパンケーキの装飾と飾りつけの果物で何とか耐えたって感じかな?」

三葉 「さっきネットで見てたら、パンケーキにお豆腐とか入れてカロリーを控える効果があるってあったわ」

瀧 「なるほどね。大豆たんぱくを摂取するってことか。それはそれでおもしろそうだな」

三葉 「また作ってあげようか?」

瀧 「ごめん、今パンケーキの話題はやめてほしかったりするなぁ…」

三葉 「あ、又要らん事言っちゃった…」

瀧 「でもさあ、バレンタインデーって、なんでチョコレートなんだろうな?」

三葉 「やっぱり、チョコレート業界の陰謀なのかな?節分の恵方巻が海苔業者の声掛けとおんなじで」

瀧 「そうなんだよな。だいたい、制定されたころにチョコレートなんてお菓子、存在してないしな」

三葉 「(wikiを見ながら)チョコは、告白の時の添え物みたいな立ち位置だったみたいね」

瀧 「あ、なんで今日のことすぐ答えられなかったか、わかったわ」

三葉 「私に聞かれてすぐ返答できなかったものね」

瀧 「一切義理チョコなるものをもらわなかったからだよ」

三葉 「え、瀧くんの会社って、女の人がいないわけじゃないでしょ?」

瀧 「そう。いるにはいるけど、以前、勘違いしちゃった社員が居てね。それ以来、本命以外は配ることまかりならん、になったんだよ」

三葉 「瀧くんに渡す、度胸のある女性はいないだろうしね(ふふっと不敵に笑う)」

瀧 「まあ、三葉に会うまでは結構もらってたりもするんだけど…」

三葉 「エエ、ここでモテてました自慢??」

瀧 「悪い?」

三葉 「その後のことまでは聞きたくないけど、どうなったの?」

瀧 「そりゃ決まってるじゃん。丁寧にお断りし続けましたよ。三葉に会えるって確信あったから」

三葉 「そうなんだ、うれしい♥」

瀧 「実際、大学時代も含めて100個はもらってるだろうけど」

三葉 「義理本命入り乱れて、ね」

瀧 「なんか、その人とつながる、なんて一切思わなかったよなぁ」

三葉 「その想いが今につながっているのかぁ…」

瀧 「ムスビって、本当にあるんだなって感じたよ」

三葉 「で、今日のところは、ムスンでおかないんですか、瀧くん?」

瀧 「(今日は積極的だなあ)あ、ああ…なんか、パンケーキばっかで力でないから、また今度ってことで…」

三葉 「(逃げられた(´・ω・`))じゃあ、明日は必ず、ねっ」


ワイワイと喧騒が続く立花家。バレンタインデーの意味を知った瀧が三葉と一つになり、濃厚な一夜を過ごしたのは、この後の出来事である。




後書き

瀧三小説、結構皆さんにお楽しみいただいたいるようで、作者冥利に尽きます。
今回はバレンタインデー絡み、ということで作らせてもらいましたが…ただのチョコの贈り合いでは芸がない、ということでケーキを焼く/それもホットケーキ、というところになりました。
私の中では、三葉はあんまり料理上手でない(きっちり作るけど、アレンジとかは苦手)という風に設定してますので、食べること命/ケーキ大好きな早耶香とは対比させてます。
毎年のように「恵方巻の恵方」と「バレンタインデーのいわれ」はググる当方ですが、日本がいかに世の中の行事を特殊なものに格上げするのか、ということが際立つ一例になってます(ホワイトデーも日本独自)。
そのホワイトデー絡みで作るかどうか…ちょっと思案中。ともかく、簡単に読める作品になってますので、重めの作品に飽きたらこちらをどうぞ。


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