Lead my Partner -三太夫の苦悩-
ツイッターのリクエストにお応えしてみました。三太夫目線のストーリーを書かせていただいております。
2017年の「きみの声をとどけたい」、2018年の「さよ朝」、2019年の「きみと、波にのれたら」……。オリジナルアニメーション作品って、どうしてもヒットとは程遠い興行しか上げられず、埋没してしまいがちです。しかし、興行と中身が正比例するとは限らないのが、面白く、残念なところでもあるのです。
2021年、またしても、そんな「もっと評価されてしかるべきアニメーション映画作品」に触れられたわけですが、この作品ほど、"こんな程度で終わるべきではないだろう"という思いを新たにしています。それが「アイの歌声を聴かせて」です。
映画レビュアーの数人が狂ったように推しまくる異常事態。このことだけを見ても、玄人衆に半端なく刺さった作品と理解していただけるでしょう。
実は当方の2021年度映画鑑賞作80タイトル以上の中で、本作が総合ランキング第2位なんです。確実に「オレはこの名作をスクリーンで見ているんだぞ」と胸を張って言えます。
という薀蓄はこのくらいにして。
今回、ストーリーに絡めながら、登場する柔道ロボット・三太夫目線のアイうたストーリーを紡いでみよう、と思わせてくれたのは、あるつぶやきからでした。
寡黙であるべきAIが自身の意志を持っていたとしたら、という設定には難があるかと思いつつ、比較的無表情に冷徹に三太夫目線で描こうとしていますが、なかなかどうして難しかったです。
2022.1.1午後 『三太夫で1本スピンオフ書けるやろ』のツイートを発見。
2022.1.1深夜 三太夫の導入時-ストーリーの時系列追い-クロージング で構成。4500字。
2022.1.2-3 スピンオフ、というお題(ストーリー後のアフター)には言及しなかったが、取りあえず完成。
2022.1.3 10:45 アップ。7066字。
1.
新学期が始まり、俺たち景部高校の柔道部にも、それなりに新入部員が入ってきた。
4月の一か月……GWまでの期間は、部員が定着するか、脱落してしまうかの正念場なのだ。だから我々現役部員は、なだめすかしたり、時には怒鳴ったりしながら、新入部員たちを付かず離れず育成し、柔道部を盛り立てないといけないのだ。
そんなさなかにちょっとした"事件"が起こった。
「おーい、ちょっと集まってくれ―」
柔道部の顧問が、俺たちを集合させる。
「今回、来るべき、人型ロボットの実用化に向けて、過酷な状況下での実験データを取りたい、と、星間のラボから提案があってな」
少しにやつきながら顧問は言う。
「様々な体育会系を検討した結果、今回、全身を使い、動きも激しい柔道部に、人型ロボットの実験機を導入することになったんだ」
「おおーーー」
部員たちのどよめきが起こる。
「とはいえ、いろいろなデータが欲しいわけではなく、例えば投げられた時にどのくらいのGがどこにかかるのか、極度のGがかかった時の損傷を防ぐための部品の改良とかの基礎的データを所望しているようなんだ」
「俺なら、一撃で沈めてやりますよ」
柔道部の中でもエース級の3年が息巻いている。どっと笑いが起こる。
「いや、だから、この機体を打ち負かせられるようなベテランや巧者には不向きなんだよ」
「いいデータが取れないからっすか?」
今年入ってきたばかりの1年がそう聞いてくる。
「まあ、端的に言えばそうなるな。入ってきたてで、ロクに組めない君たちには到底扱えない代物であることもわかってくれるだろう」
冷酷だが、顧問のいうのはもっともだ。俺はうなづきながら聞いていた。
「というわけで、この機体を、お、杉山、お前が担当してくれ」
いきなり俺の名前が出てきてびっくりする。思わず立ち上がったほどだ。
「え?な、なんで俺が……」
「おまえさぁ、あんまり言いたかないけど、組む相手のこと、どう感じてる?」
急に顧問の口調が取調室の刑事っぽくなった。
「え、そ、それはもう、お互い練習相手として……」
「いや、それはわかるんだけど、手加減とか、力の入れ具合とか、ちゃんとわかってやってる?」
顧問から直接的に言われたのは今回が初めてだ。部員全員のいる目の前で、こんなこと聞くのかと思ったりもした。
「え、は、はい。そのつもりですが……」
「じゃあ、お前と組んで練習したがらない部員が多いのは、どうしてだと思う?」
「そ、それは……つまり……」
俺が言葉に窮していると、
「先輩のこと、嫌いではないですが、ケガのことが心配になって、安心して組めないんです」
後輩の一人がそういった。
「そう。それなんだよ。お前が一所懸命やっているのは誰もが認めるところだけど、誰だって、身体のことを第一義に感じている。柔道部に入って、思わぬケガをしたとか、取り返しがつかない事態が起こってしまうとか、お前もいやだろ?」
「え、それって、俺と組んだらケガのリスクが高くなる、と……」
はじめて聞く俺の柔道スタイルの危うさ。自己流ではないにしても、自分の柔道を推し進めていた俺にとって青天の霹靂だった。
「まあ、そういうことなんだ。だから、組む練習ができない。勝てるわけもないわな」
自嘲気味に顧問は言うのだが、結果がすべて。2年の春にして、初めて自分の欠点を思い知らされた。
「だから、杉山。お前にはぴったりだと思うんだ。相手は機械、ロボットだ。今の機体は、そこまで耐久性もないだろうから、頻繁に壊れるとは思うんだけど、無茶に扱っても壊れない機体を作るためには、無茶に扱ってくれるパートナーが必要なんだよ」
「パートナー、っすか……」
生身の人間でない相手とまともに組めるんだろうか……
「これでお前の危険な技だったり、癖が矯正されれば一石二鳥。勝ちにもつながる、と思うんだよ。悪くない提案だろ?」
顧問はそう言って、オレにロボットを押しつけてきたのだった。
2.
ドーーン!!
投げられる。
いくら畳の上とはいえ、体中を駆け巡る信号量の多さにパンクしそうになる。
"右ひじ第2関節部圧接により破損""右手首断線、機能喪失""メインコントロール部4セクター破損""腰部支持部材欠損並びに変形"
壊れる身体。ありとあらゆるエラーが吐き出される。
『お、おい、三太夫』
知らない間に名前が付いている。
当然起き上がれない。
そのたびごとに私を投げたこの男性にどこかに担ぎ込まれては、また何事もなかったように投げられる日々を過ごしていた。
AIというのは因果な商売だ。
何かを成し遂げるための捨て石、であることは理解している。
ここに居る私(プログラム)だって、先人たちが作り、壊し、改良してここまで来ているのだから。
でも、今までとは明らかに勝手が違う。
ただ投げられるだけ。
でも時々、タイミングが合って、いつも投げ飛ばす相手をブン投げたり、足を掬ったりして溜飲を下げている。
そんな毎日が突如として始まったのだ。
学習する。相手の癖、目の動き、道着を握る力の入れ具合。
そのうち、私が投げ飛ばされる回数は徐々に減っていく。
それに抗うように、バカ力を発揮する相手のせいで、故障は絶えず起こっていた。
『トウマ先生、俺の三太夫を……』
この日も担ぎ込まれた先で、投げ飛ばした男性が別の男性……修理担当だろうか に、声をかけている。
私には言語発生機構は仕組まれていない。もししゃべれるのなら、こういってやりたいところだ。
"いい加減、壊さないで投げるようになれよ"
修理担当の男性は、私を投げた男性にこう忠告する。
『こうも毎日壊れちゃうんじゃ……部品のストックもなくなっちゃうよ』
壊れた部品は、その大半がゴミと化す。それでも会社からの支給で何とか動いていられる。
プログラムに内在されていたバグはこの修理担当のおかげで少しずつ減り、滑らかな動きができるようになっていく。
それでも、機械相手だからか、男性が私を投げ飛ばすと、必ずといっていいほど不具合がそのたびに起こる。
そして、修理担当がまた修理するのだ。
『ちょっと、壊れすぎじゃね?』
横で見ている別の男性の声が聞こえた。
『サンダーの扱いのせいだけじゃないけど、ね』
関節の修理をしてくれている修理担当が、その男性と会話している。
『機械にしか相手してもらえないなんて、サンダーもかわいそうだよな』
『機械だから修理できるけど、生身の人間なら、何人病院送りになってるか……』
その言葉にはっとする。
私に課せられた使命のようなもの、が、ふつふつと湧いてきたのだ。
そう。私は、この、柔道家とは程遠い、破壊神を鎮め、正しい道に導くために遣わされたのだ、と。
だから私は、勝って、勝って、勝ち続けることでサンダーと呼ばれる男性をたたき直さねばならないのだ。
3.
AIたちの中のネットワークがとある朗報をもたらす。
人間社会に溶け込める容姿に偽装したロボットAIの実証実験が、秘密裏に私の派遣されている高校で行われているというのだ。
所詮私は、労働支援ロボットの亜流。
姿かたちは2足歩行でも、ロボット独特の近寄りがたい風貌は隠しきれない。
今回の柔道部への派遣だって、あえて筐体に負荷のかかるクラブ活動の一つとして選ばれたからだ。
それが、人間と同等の容姿、言語能力を引っ提げて人間社会に溶け込もうとする。
実験が成功するしないに関わらず、私たちプログラムにしてみれば一歩前進なのは間違いなかった。
ただ、気になることを掃除ロボットが告げてくる。
【なぜか、プログラムにない行動をしているらしい】
なんでも、そのAIは、特定の生徒を名指しで呼び、「今、幸せ?」と尋ねたり、歌を歌ったりしたのだそうだ。
【しかも、我々の領域に入り込んで映像を改ざんしたんだ】
保安プログラムのAIは、さらに衝撃的なことを言う。
【もしそれが本当だとして、誰がそんなプログラムにしたんだろう】
疑問は尽きないのだが、所詮スタンドアローンな私には、どうでもいいことだった。
それよりも、毎日、いや、直った次の瞬間に壊されていく私の体は、本当にボロボロになっていた。
そして、その日は突如、訪れた。
『私のために、力を貸してほしいの』
目の前に現れたのは、ついさっきまで柔道場で見学していた一人の女性だ。
軽微に壊れていたはずの体が、彼女が触れただけで、みるみる力がみなぎってくる。
『ほーら、元通り。一緒に来て。ピンチを作ってほしいの』
何のことかわからず、私は初めて柔道場を自分の足で出る。壊れて担ぎ出される以外、初めてだ。
彼女に誘われるまま、高校の廊下に進み出る。なぜか邪悪な心も少し芽生えていた。
そこには、"壊してばかりの野郎"のことが少し憎く感じていたからかもしれない。
まるで操られているかのように、身体が勝手に動くのだ。それはまるで見出した獲物に本能的に反応する、そんな動きだ。
いつも投げ飛ばしてくれる"奴"めがけて突進する。
すると、突然、口上が始まった。
「さあてお立会い。この暴走するロボット・三太夫を、サンダーこと杉山紘一郎が、見事止めて御覧に入れます。柔道部では……」
「ここは俺が止めるっ」
かっこいいことをサンダーは言ってくれる。だが、自力では、確実に私の方が上だ。
組む。次の瞬間勝負あった……
そこから先の記憶が私にはない。緊急停止アプリが起動したからだ。
4.
サンダーは本番に弱い。
それは、単に技術が伴っていないだけではなく、柔道できていればいい、強さを求めていないところにあると組んでみて分かった。
勝ちに興味がない、勝たなくてもいい。そんな柔道家っているのかどうか、AIの私にはわからない。
そんな大会当日。
またしてもサンダーは私をぶっ壊してくれた。
試合直前のルーティーンになっている乱取りを始める前に、勢い余って、盛大にブン投げたまではよかったのだが、打ち所が悪すぎた。
修理担当のトウマ先生は『このエラー数じゃ無理。今日中に直せない』と言い放ったのだ。
だが、トウマ先生の次善の策には驚いた。
私を詩音という、学校にやってきた、ロボットAIにプログラムを移して、詩音の体で乱取りさせることを思いついたのだ。
彼女はしゃべられる。私の想いが伝えられる。
いや、AIだから想い、なんてものはない。ただサンダーの癖であるとか、弱点を本人に伝えられると確信した。
私の本体が詩音の体に入っていく。もちろん、詩音のプログラムも介在したままで、である。
私は詩音の思考回路やルーチンが異常なほどに発達していることに驚かされる。
そこにあったのは、複雑な神経回路を纏っている人間の脳さながらの、高度に構築された"頭脳"だった。
サトミのことだけを考えている思考。彼女の幸せを求め、それは歌によってもたらされているという確固とした論理。
だから、突然サトミの前で歌ったり、「今、幸せ?」という、とんでもない発言が出てくるのだ。
そして、それは、会社が企図しているプログラムではなく、サトミに幸せをとどけるべく、放浪していたプログラムが詩音の体に入り込んでできた芸当だとわかったのだ。
乱取りをしようと、高校の柔道場に移動する。だが、サンダーは、私(詩音)には向かってこない。
即座に分かった。『こいつ、相手が女だとヘタレなんだな』
そうであるなら、こっちから仕掛けるしかない。ついでに彼女に言ってもらおう。
『三太夫君も言っていたよ。リズムが大事なんだって』
そう。私が壊されるのは、サンダーの動きが性急すぎたり、思いもよらない動きをすることに対応しきれていないからなのだ。
柔道の極意を仕込まれて私は派遣されていない。所詮は実験機だ。
でも、彼のさまざまな癖-例えば動作に入る前の視線、踏み込み、組手の際の力加減などなど-が私を大きく成長させてくれた。
それを詩音の体で実践できる。私にとってもまたとないチャンスだった。
詩音が盛り上げるかのごとく、柔道場に音楽を奏で始める。アップテンポなナンバーだ。
その音楽に合わせてステップを踏む詩音。私は愉快になりながら、破壊神を投げる、蹴倒す、押し倒す。
畳に打ち付けられるサンダーの表情が、みるみるこわばってくる。私のもともと機械じみた動きとは違う滑らかさに戸惑っているのだろう。
いや、あるいは「詩音と組んでいる」ことに少しばかりの愉悦を感じているからかもしれない。
乱取りは私の一本の量産で幕を閉じようとしていた。しかし、この乱取りでコツをつかんだのだろう、サンダーの動きに切れが出始めた。
そう簡単に投げられなくなったサンダーの、渾身の足払いからの一本背負いが決まろうとする。
これだ。投げられる側も喜びを感じられる、負けて悔いなしと諦められる。柔道場の天井をこれほど長く見つめられたのは初めてだ。
ドスンッッッ!
私(詩音)の体は、見事に畳に打ち付けられていた。そして、女性と組んでいたという彼の思いからか、彼女の体に不具合は一つもなかった。
『なんか、凄いきれいな一本背負いだったぜ』
トウマ先生は、動画でも撮っていたのだろうか、見返しながらサンダーにそう言っている。
『勝負勘、備わったんじゃね?』
もう一人……ゴッチャン?の言葉も聞こえてくる。
『うん!これならやれそうな気がするよ。今から試合、行ってくる』
そう言ってサンダーは柔道場から出ていく。
『ねえトウマ、こんな感じでよかったの?』
詩音が聞いてくる。
『あれで十分だよ。それにしても、華麗な組手だったなあ』
トウマはなぜか顔を赤らめている。
5.
詩音の体に入って乱取りをした日から、サンダーの組み手に大きな変化が出てきた。
私が全然壊れなくなったのだ。
……より正確に言えば、彼が投げられる頻度の方が高くなった。
そして無理やり投げ返したり、無茶な技を繰り出しても来なくなった。
AIは、日々の実績を学習し、蓄積し、次の日の行動に生かす。進化は止まらないのだ。
ところが、明らかに様子がおかしい。サンダーの行動すべてに新味がないのだ。
私の体が元に戻った数日後から、サンダーの組み手に覇気がないことに気が付いた。
彼の無茶な行動も破天荒な投げ技も、全て私の血肉になるべき"情報"なのだ。
それが無くなっただけでなく、まるで柔道に興味を失ったかのような動きしかしてくれないのだ。
私は拍子抜けする。それでも組まれたら投げるしか私には能がない。
ドタンッ!
サンダーの無様な負け姿を見ながら、私は立ち位置に戻る。その視線の先に、何があるのか、私には理解が捗らない。
それでも、あの一勝を胸に、彼は柔道を続けるのだろうか……
私の過酷な実験もそろそろ終わりに近づきつつあるのかもしれない。
6.
「詩音……」
高校二年生の6月の濃密な一週間が怒涛のように過ぎていった。
転校生として現れた芦森紫音は、実は悟美の母のAI実験機だった。彼女の正体を知ったとしても、俺の心は、すでに詩音に蝕まれていた。彼女のためならなんだってできる。三太夫が校内に乱入したときでさえ、俺は「詩音のためにやれることをやる」という思いで三太夫に対峙した。決して後藤に煽られたからではない。
所詮俺は女性には見向きもされないし、また俺の方からがっつくこともしない。"それで青春、やってんの?"なんてクラスメートには言われるが、俺には柔道さえあればなんでもよかった、はずなのに……
詩音の登場は、彼女が人外、ただのAIであっても、衝撃だった。ありていに言うが、初恋ってこういう感じなのだろうか……
だから、俺の一勝をもぎ取らせてくれた彼女には感謝しかない。詩音と乱取り、って、最初はドキドキするしかなかったのだが、より人間に近い動きをする三太夫が、俺に勝負勘をよみがえらせてくれた。三太夫の動きを完コピした詩音と組んだから、俺は勝てたのだ。
星間のラボから彼女を救い出したい、誰かのピンチを何とかしたいと思ったのって、16年生きてきて初めてのことだった。もちろん、俺一人が動いたところで大勢が変わるはずもない。むしろ"バカなことを"と蔑まれるのが落ちだ。
でも、誰かのために自分を犠牲にする、それができることを詩音は教えてくれたのだ。最終的には俺一人では何もできなかったし、みんなのチームワークが、詩音を逃がすことにもつながった。そして、詩音は中身、身体ともども俺の前から姿を消した。
あの大立ち回りの日からどれだけ時間が経っただろう。
俺は一人で柔道の練習をすることが多くなった。それはそうだ。三太夫の顔の部分にもう会えない詩音の顔写真を貼って練習しているのだから。
初恋の人、救いたかった人、たとえロボットでも真剣に交際をしたいと思った女性。俺との初対面からの濃密な一週間が、詩音の顔を貼った三太夫を見るたびに思い出され、三太夫を投げ飛ばせなくなるのだ。
柔道家としては失格、なのかもしれない。でも、彼女との思い出は、俺の中に生き続けている。彼女が、また、どこかから、ひょっこりと顔を出してくるときがあるかもしれない。その時は、恐らく姿かたちは変わっているだろうけど、そんなときでも、俺は素直にこういって迎えたい。
「お帰り、詩音」
と。
「スピンオフ」という言葉を、私は「彼のストーリーの中の心象描写」と理解して話を進めさせてもらいました。よって、本来ツイート主の思っている書いてほしい内容とは乖離があるやもしれません。
私自身、ストーリーから逸脱した設定というのは二次創作において、原作を相応に毀損している可能性が高い、と見ておりまして、事実、当方のラインアップを見てもらうとわかる通り、コラボしている作品以外は突拍子もない設定にはなっておりません。
原作の範囲内で楽しむ、想像する、話を作る。だから「未来に何が起こりえるのか」を想定しずらかった三太夫のこれから、よりは、あの作品の中でどういう行動原理が彼にあったのか、を描いた方が納得いくのでは、と思った次第です。
当然、これが正解でもありませんし、書こうと思えばもう少し肉付けもできそうです。ただ、三太夫があの作品の中で果たした役割、彼のパートナーであったサンダーの想いの方に少し力点を置いた形で〆させてもらっています。
女々しいサンダーを見て笑えるのは最初だけ。何度も見ていくと、失ったものにすがりたい彼の一途な気持ちに引っ張られて感動してくるんですから、本当にこの作品はとんでもないと思います。
新春一発目がこの短編。どの程度御支持・ご理解いただけるか……少なくともツイート主の方を満足させられた筆致になっているかどうか、それだけが気がかりです。
このSSへのコメント