2018-01-18 22:46:50 更新

概要

もし、瀧三が「キミコエ」の世界に入り込んだら・・・こんな視点で書ける作者は当方だけ?!そしてまさかの・・・


前書き

2016年の大ヒット作「君の名は。」。微に入り細に渡る検証と解析で、ほぼ丸裸にできたと自負しており、独自の世界観を自分で構築もできています(詳しくは当方のほかの作品をご覧あれ)。
明けて2017年。いろいろなジャンルのアニメーション映画+実写映画に触れることもやってきていますが、その中で突出していたのが「きみの声をとどけたい」の名作ぶり。すでに3タイトル、この映画に関わるストーリーを練り上げられたのも、私がこの作品にのめり込んでいる一種のあかしといえなくもありません。
この2つの作品をコラボできないか…2017年の夏の湘南。奇跡はそこにあった…てな感じで作っていったのが本作です。
瀧達は高3。なぎさは高2。三葉は21歳。三者三様の2017年を描くのは、意外と骨が折れました。
高木のオキニに雫を設定、とか、いろいろ設定は無理やり作っていきましたが、瀧三がすれ違う時の「あの」音だけはこだわりました。

2017.11.  作成開始
2017.12.22  第一版 公開(16,296字)
2017.12.24  第一版2刷 公開(17,464字)
2018.1.3 誤字修正版 公開(17,510字)
2018.1.18 再修正+推敲版 公開(17,614字)


高木 「でさ、なんで俺たち、湘南に行きたいって思ったんだろ?」

司 「それはそこのイケメンに聞いてくれよ。俺だって、男3人でここにくるなんて思ったことないから」

瀧 「まあまあ。せっかくなんだから、楽しもうよ、お二人さん」


あやめ 「久しぶりの取材ね」

乙葉 「私が忙しかったから…やっぱり気心の知れたコンピでやる方がいいわね」

あやめ 「ホンにその通りっっ」

乙葉 「さてさて、今日のICレコーダーちゃんのご機嫌はどうでしょうかね…」

あやめ 「前に二人でやった時、うまく録音できなくって、変な汗かいたわよね」

乙葉 「そんな失敗も素人ならでは。楽しんでまいりましょう」

あやめ 「もう、乙葉チンの言葉についつい納得しちゃうぅぅ」


あやめ 「(ICレコーダーを持ちつつ)今日の"お出かけ日ノ坂"のコーナーも、夏真っ盛りの日ノ坂海岸のビーチからお送りしたいと思います」

乙葉 「(レコーダーを向けられ)それにしても今日も、芋の子を洗うかのような見事な盛況ぶりですねぇ」

あやめ 「私たちのラジオの影響だったらそれはそれで凄いことですが、そこまで有名にはなってませんけどね…」

乙葉 「確かに・・」

あやめ 「8月ももうすぐ終わり、ということで、ゆく夏を惜しむかのような日ノ坂海岸ですが、今日も、来ていただいた方にいろいろとインタビューもしてまいりたいと思います。


あやめ 「リードはこんなもんでいいか…」

乙葉 「悪くはないですね」

あやめ 「じゃあ、インタビューパートの録音だね」

乙葉 「あ、あの3人連れ、脇が甘そう…」

あやめ 「フムフム。目的が感じられませんねぇ。ビーチにいるには不似合いなことこの上ないし。いっちょ突撃してみますかぁ」


あやめ 「(レコーダーを持ちつつ)それではインタビューしていきたいと思います。あの、すみません」

瀧 「はい」

あやめ 「ラジオの取材でインタビューしています。きょうはどちらから?」

司 「東京からです」

乙葉 「男3人連れで湘南ですか…どんな目的で来られましたか?」

高木 「あ、そう言われて見れば…」

司 「こいつの提案で来てみたのはいいけれど…何がしたいってのはあんまり考えてなかったなぁ」

あやめ 「で、そちらの方が提案者?」

瀧 「あ、は、ハイ…海が見たかったのといろいろな映画やドラマの舞台になっているので、それを見に来たのもあったりして…」

あやめ 「確かにいろいろなドラマの舞台にもなってますしねぇ」

司 「それはそうと、インタビュアーさんって、もしかして、高校生?」

あやめ 「え、あ、ハイ。地元のコミュニティFMでDJやってます、あやめと申します」

乙葉 「同じく乙葉です。音楽も担当させてもらってます」

高木 「高校生がDJねぇ。そう言えば、連れのTwitterで、ここの地域FMが面白いって書いてあったの思い出したよ」

司 「へー、それは意外だなあ。高校生が作るラジオ番組、かぁ…」

瀧 「で、なんていうラジオ局なんですか?」

あやめ (メガネを光らせて)「ラジオアクアマリン、と申します(キリッ)」

高木 「そんな風な名前だったなぁ。で、そいつ、シズクっていう子のファンらしいんだけど、きょうって来てるのかな?」

あやめ 「確か、今日はスタジオに居るはずですよ。なんか張り切ってお菓子作るんだぁって言ってましたし…」

高木 「なあ、せっかく高校生DJにインタビューされたんだし、ここは一つ、そのラジオ局とやらにお邪魔してみない?」

あやめ 「私たちはオールウェルカムでございましてよ!」

乙葉 「ゲストはたくさんいた方が張り合いも出るし…みんな歓迎してくれますよ」

司 「この後は鎌倉に行って大仏見るだけだし、時間的にも余裕あるし…実際の放送の現場って見たことないからなあ。で、瀧はどうする?」

瀧 「そうだな。俺はちょっとほかのところも歩いてみるわ。なんかいい眺望のところとかもありそうだし」

高木 「まあ、場所がわかったらLINEでも送るわ。で、どこにあるんですか、そのスタジオって…」(瀧以外の4人、連れ立って歩き去る)


瀧 (少し伸びをして)「ふぁーーー。やっっっとむさくるしい連中と別行動ができるよ。受験勉強の合間に小旅行でもって言うから、鎌倉・江の島って確かに俺が言いだしたことだけど、ここまで連中がアツくない奴らとは思わなかったよ…」(ブツブツ)

瀧 「それにしても、湘南の海って意外ときれいなんだなあ。思っているのと実際見るのとでは大違いって感じだわ」

時々、日ノ電が傍らを通過していく。

瀧 「湘南って言ったら江の・・・日ノ電だもんな。国道の傍らを電車が走る、なんて、なかなかない光景だし…ちょっとスナップでも撮ってみるか」

電車と自動車の対比が撮れる商店街を進む瀧。すれ違いざまに日ノ電を収める。パシャッ

瀧 「うーん、レトロな感じのする車両で味わい深いなぁ。それだけで歴史を感じちゃうよ…」

自然と足は蛙口寺に向かっていく。

瀧 「ああ、ここが蛙口寺か。うわー。それにしても急な階段だわ…」

門をくぐったところで後ろから急に誰かが瀧にぶつかってくる。

・・・ 「ああああっっ」

瀧 「あ、いてぇぇ」

速足で駆け上がろうとして踏み外したなぎさが瀧とぶつかる。

なぎさ 「うわっっ、ご、ごめんなさいっっ」

瀧 「ったく、ちょっとは気を付けて・・・」

(うん、タイプじゃないけど、なかなかかわいいなぁ。湘南にもこんな娘、いるんだなぁ)

なぎさ 「お怪我はありませんか?」

瀧 「あ、ああ。つんのめっただけですりむいてもしてなさそうだな」

なぎさ 「よかったぁ。でも、本当にすみませんでした」

瀧 「それはそうと、なんで急いでたんだい?」

なぎさ 「ああ、そうだった。早く鐘衝いて、ストレス発散してからでないと、本番に間に合わなくなっちゃう…」

瀧 「え?本番…」

なぎさ 「ああ、私、ラジオでDJやっているんです。3時スタートなんですけど、まずはここで嫌なことを吐き出してから放送に臨むんです」

瀧 「ラジオでDJ?もしかして、そこって、アクアマリン?」

なぎさ 「よくご存知ですね。それにしても何で…そんなに私たち、有名になったのかな(テレ)」

瀧 「いや、たまたま取材していた高校生DJさんとオレたち3人が出会って、二人は今スタジオ見学だって言ってその…アクアマリン?に行ってるんじゃないかな」

なぎさ 「で、あなたは別行動っと…」

瀧 「放送の仕組みとかには興味ないからね。まあ、高木がシズクって子に興味を持っているってのはよくわかったけど」

なぎさ 「ええ?もうそんなことになっているんですか?雫ちゃん、すごぉい」

瀧 「まあ高木はあったことはないし、声も聞いたことないはず。連れが絶賛しているから合ってみたいってことらしいけど…」

なぎさ 「でも、今私たちDJ仲間でも人気急上昇中ですよ」

瀧 「そうなんだ…んー、せっかくだから、君がしゃべっているところも見てみたいなぁ、なんて…」

なぎさ 「ええ、遊びに来てくれるんですか、うれしいなぁ。」

瀧 「さっきは興味ないって言ってたけど、DJの女の子と知り合いになるなんてなかなかないからね」

瀧の携帯、ブルブルっっ

瀧 「あ、司からだ。なになに?

     ゛アクアマリンなう。放送は3時かららしい。パティシエ目指している雫という高校生の入れた紅茶が絶品。高木は、かなり

      入れ込んじまってる。場所はここ゛」

なぎさ 「私、一叫びしてからスタジオに行きますので、先に行っておいてくれませんか」

瀧 「ああ、ここまで来たんだし、せっかくだから一応お参りだけはすませておきたいなぁ、と…」

なぎさ 「あ、そうでしたか。足を止めさせてしまってごめんなさい。あーーー、私も急がないと遅れちゃう―――」(一気に駆け上がる)

瀧 「なんか、スポーツもしていなさそうなのに、あんなに石段駆けあがれるなんて…さすが地元民だ、スゲーな―」

ゆっくり石段を上がる瀧。そのうち鐘がなる。ごぉぉぉ―――ん…

瀧 「さっきの女の子、鐘をついたな。それにしても、ストレス発散って…」

駆け足で下りてくるなぎさとすれ違う瀧。

瀧 「ねえ、さっきの鐘って…」

なぎさ 「そう、あたし。先を急ぐから、ごめんなさいね」

挨拶もそこそこに駆け下りるなぎさ。

瀧、ようやく境内に。鐘楼に近づく。

瀧 「ああ、なるほど。このお寺って鐘は自由についていいんだな。それはそれで面白いなぁ。ちょっとやってみるか」

瀧も鐘を鳴らしてみる。さっきよりは音量が出ているよう。

瀧 「鐘をならすだけじゃなくて、その音に紛れて叫んでみてもおもしろいなぁ、って、それがあの子の言ってたストレス発散なんかなぁ…」

階段を下りていく瀧。また携帯が震える。

      ゛放送始まるなう。なんかゲストとして俺たちもしゃべるらしい。お前も早く来た方がいいぜ゛

瀧 「ラジオ生出演かぁ…面白そうだな。ちょっと急ぐか…」


瀧 「ええっと…あ、ここか。「アクアマリン」って書いてあるし。屋上のあれはアンテナか。ここに間違いなさそう」

瀧、扉を開ける。

瀧 「お邪魔しまーす…」

雫 「あ、いらっしゃーい」(小声)

瀧 「ここってラジオやってる…」

雫 「はいっ、アクアマリンですよ。ようこそおいでくださいました」

高木 「よう、待ってたぜ」

司 「遅かったじゃん」

瀧 「ああ、ごめん。ちょっといい風景でも撮れないかなって、物色してたから…あ、さっきの?」

なぎさ 「さっきはすみませんでした。わたし、DJやってるなぎさっていいます」

瀧 「オレも名乗ってなかったか…立花瀧っていいます。どうぞよろしく」

司 「お、珍しく瀧がキョドってるぞ」

高木 「うん。たしかにいつもの瀧とは違うな」

瀧 「そ、そんなこと、ないって」

司 「その割には顔が少し赤いんだけど」

高木 「ちょっとなぎさちゃんにほの字、かな?」

瀧 「や、やめろって・・・」

司 「まあ、いかなる絶世の美女であっても瀧の鉄の意思は曲げられないからなぁ」

なぎさ 「そんなに思いを寄せている人がいるんですか?」

瀧 「あ、いや、まあ…いるにはいるんだけどどこにいるのかわからなくて…」

なぎさ 「そうなんですか…早く見つかるといいですね。その人」

雫 「あ、曲がかかったら、スタジオの中に入っていただいていいですか?わたしとなぎさちゃんは後から入る段取りになってますので」

高木 「ハイッッ、わかりました♪」

司 「なあ瀧、雫って子にあってから、高木の態度ってこんな感じなんだよ」

瀧 「今まで浮いた噂ひとつもなかった高木だけど、こういう子がタイプなのかぁ…」


~~~ジングル~~~

あやめ 「日ノ坂町日ノ坂商店街 ラジオアクアマリン。続いては、「お出かけ日ノ坂」のコーナーですが、今日はちょっと予定を変更して、こんなコーナーを作ってみました。題して"高校生談義 日ノ高vs神宮高"」

BGMに、深夜の討論番組のオープニングが使われる。

あやめ 「というわけで、緊急企画、という形で組ませてもらいました。突発的にコーナーを作っていく、というのも、こうしたコミュニティFMならでは。まあ私が今日メインMCなんでできた企画といえなくもないんですが、今日は、ゲストをお迎えしての放送が実現したということもあり、急遽コーナーを変更したというわけです」

乙葉 「取材の途上でお知り合いになりました、このお三方がゲストです。それでは自己紹介をお一人ずつ、お願いします。」

高木 「えー私、高木真太と申します。東京都立神宮高校の3年生です。今日は、受験勉強の息抜きに湘南を回っているところです。よろしくお願いします」

司 「同じく神宮高校3年の藤井司です。どうぞよろしく」

瀧 「立花瀧っていいます。さっきの二人とおんなじ神宮高校の3年生です。3人で湘南行こうって言い出したのは実は俺なんです。でも、ラジオに出演できるなんて思ってもいませんでした。よろしくお願いします」

あやめ 「という、東京からお越しのイケメン3人組を前にして私も放送するわけですが…ちょっとばっかし緊張しちゃってます」

乙葉 「まあ珍しいこともあるものですよね」

あやめ 「オホン。私とて花も恥じらう乙女ですから、致し方ないことだということで・・・では気を取り直して。今日は、日ノ坂をはじめいろいろと回ってこられたと思うんですが、いかがでしたか?」

高木 「よくお天気カメラとかで、映っているところは見ていたけど、やっぱり現地っていいですね」

司 「最近江の島舞台の映画とかアニメとか多いから「ああ、この場所使ってる」とかわかって、というか知ることができて面白かったです」

瀧 「僕は何より、高校生DJの皆さんとお知り合いになれて、よかったです」

高木 「あ、なにお前だけおいしいとこ持っていくんだよぉ」

司 「こういう女ったらしっぽいこと言わせたら右に出るものはいないよな」

瀧 「へへ。してやったりってところだな」

あやめ 「皆さん、一様にお気に召しておられるようで、何よりです」

司 「で、さっきのタイトルコールなんだけど…」

あやめ 「即興で考えたわけですが、それではここで、当アクアマリンの誇るトップDJお二方に入っていただいて、ほかの高校生とはどれほど考え方とかはやりとかが違うのかといったあたりを真剣に討議したいと思ってます」

乙葉 「それでは、DJなぎささんとDJ雫さん入場です」

なぎさ 「こんにちわーー」

雫 「おじゃましまぁーす」(スタジオの5人、拍手)

あやめ 「今は私がメインですので、ここはしっかりと司会に徹したいと思っています。DJ乙葉チンだけは、どちらの高校にも所属していないので、5人での談義とまいりたいところですが、きっかけは必要かと思いますので、私がちょっと投げかけたいと思います。2017年の日ノ高と神宮高のはやりもの・一番人気を上げてみてください」

乙葉 「では先攻後攻はじゃんけんで。あ、リスナーの方にわからないので、出される方は手を言ってくださいね」

一同 「最初はグー、じゃんけん…」

なぎさ 「パ―」  瀧 「チョキ」

なぎさ 「うへー負けちゃったよ」

司 「さすがじゃんけん負け知らずの瀧。これで・・・ええっと・・・65連勝、だっけか?」

瀧 「まあそんなことより、どっちにする?先攻/後攻」

高木 「俺、先に日ノ高の聞きたいから後攻で」

司 「異議なし」

瀧 「では後攻でお願いします」

あやめ 「とすんなり決まったところで、では日ノ坂高校、略称日ノ高の今年のはやりものをお二人に発表していただきたいと思います。今年の日ノ高のはやりものは、せ―のっっ! 」

なぎさ雫 「ラジオアクアマリン」

あやめ 「(汗)まあ、部外者がここにいたら当然違う答えになっただろうと思いますが、DJの二人が答えるとなると、どうしてもこうなってしまいますねぇ」

なぎさ 「そう?でも、この町のちょっとした名物にもなりかかっているから、この選択って悪くはないと思うんだけど」

雫 「確かに今年のっていうことになると、インターハイとか修学旅行とかも話題になってもおかしくないけどね…」

あやめ 「特に私は3年生ですから、もう少しほかの事柄が出てくると思いましたが…まあ、ここはまず素直に受け止めておきましょう。では神宮高校の皆さんの今年一番のはやりものは、せ―のっっ」

瀧司高木 「インスタ映え」

あやめ 「おおっとぉ、今年の流行語大賞も狙えるところがやってきましたよ。で、なんでこれなんですか?」

瀧 「きっかけは、うちの高校の2年生の女子の撮った写真がインスタグラムに投稿されて大人気になっちゃって、一躍時の人。それをまねて全校生徒が競って投稿するようになってしまったんです」

司 「とにかく何でも写真に収める癖がついちゃったよなぁ」

高木 「炎上するようなバカげた写真投稿する奴も多くって、自粛するように言われるくらいだったからな」

あやめ 「フォトジェニックな写真が見られるかと思っていますが、いかんせん、ラジオでは伝わらない…ちょっと難しい対戦になってしまいましたが、ここはひとまずドローということで・・・」

司 「まあ、これはしゃーないわな」

あやめ 「今気付きましたが、高校同士の対決コーナーってしちゃうと幅が狭くなりそうなのでガラッとテーマを変えていきますね。皆さんも趣味やエンタメの一環として映画は見られると思うんですが、今年2017年の皆さんが見られた映画の中で一番のお気に入りを上げていってください」

乙葉 「では、まずは…雫さん」

雫 「え、わ、私・・・ほとんど映画って見ないんだけど…ファンだったこともあるけど「ちょっと今から仕事辞めてくる」かな」

一同 「ああぁぁぁ」

なぎさ 「雫ちゃんって福士蒼汰のファンだもんね」

雫 「ちょっと違和感ある関西弁も面白かったし、何より種市先輩からかなりうまくなってる。来年あたりも注目してみたいですね」

あやめ 「あんなブラック企業なんかあるわけないですけど、ストーリーやクロージングにはちょっと不満が残りましたかね」

司 「次、俺、良いっすか?」

あやめ 「エエ、いいですよ、どうぞ」

司 「今年のトップっていってもいいんじゃないかな、ぼくは「銀魂」を上げたいですね」

一同 「おおおぉぉぉ」

高木 「あれは面白かったわ」

あやめ 「メインの三人のキャラも立ってたし、サブキャラもみんな立ち位置わかっているって感じがよかったですよね」

瀧 「連れていかれた口だったけど、堂本剛の演技はよかったわ」

乙葉 「では、次の方…なぎさちゃん、行く?」

なぎさ 「私はやっぱり「美女と野獣」だなぁ」

一同 「あるある」

司 「でも、円舞シーンは、意外と普通だったように思うけどな」

あやめ 「なんか間延びしていたようにも感じたし。でも、VFXで見せる日用品にさせられた侍従たちはコミカルでよかったですね」

高木 「じゃあ、次は俺の番か…」

乙葉 「それではどうぞ」

高木 「ちょっとマニアックで、「メッセージ」なんか考えさせられる映画だったけどな」

なぎさ 「その映画ってもしかして、宇宙船の形がお菓子に似ているってやつ?」

司 「そう、確か・・・」

雫 「ばかうけじゃなかったっけ?」

一同 「ああ、それそれっっ(大爆笑)」

高木 「メーカーさんがパロディーポスター作ったり、監督さんもネタインタビューに応じてくれるとかってなかなかないと思うんだよね」

あやめ 「(メガネクイッ)確かに。いくら日本で似ているからってそんなことまで言わなくてもいいわけで、作り手も楽しんで作っていたからこそ、そういった余裕にもつながるんでしょうね」

高木 「結局宇宙人とどうやってコミュニケーションとるかってのが主題だったわけだけど、奥は深かったって感じたね」

あやめ 「ここまで4作品出揃いましたが…では最後は瀧さん」

瀧 「べたべたかもだけど…「キミスイ」だね」

一同 「ああああっっっ」

司 「お前、マジでべたべただな」

高木 「ちょっとはひねれよ」

あやめ 「いや、でも、我々と同世代のお話ですから、感じ入らないわけはないと思うんですよね」

なぎさ 「もう私、ハンカチが絞れるくらい泣いちゃったもん」

雫 「私もなぎさちゃんと一緒に行ってたけど…あのお話はダメ。もうほんとに…」

あやめ 「今年もスイーツ映画っていろいろ出ていたと思うんですけど、この作品は群を抜いていましたね」

瀧 「俺ら世代だけじゃ無くて、高年齢層にもリピーターが増えて行ったって聞いたよ」

司 「んー。わからんでもない、かな?桜良の生き方が胸を打つんだろうなぁ…」

あやめ 「あんなこと、彼女に言われたらどうします?お三方」

高木 「俺は困っちまってなんにもできなくなるだろうな。寄り添うくらいしかできなさそう」

司 「俺は面倒くさくなってわかれちゃうかも。だって悲劇にしかならないんだもの」

瀧 「俺は…ちょっと悩むなぁ。ずっと一緒にいてあげられることを選んじゃう、かな?」

あやめ 「ちょっと長くなってしまいましたので、ここでいったん曲を入れてクールダウンしたいと思います。WHITEBERRYの「夏祭り」をお届けします」


~~~ジングル~~~

あやめ 「日ノ坂町日ノ坂商店街 ラジオアクアマリン。今日は予定を変更して、東京からお越しの高校生3人を交えて"高校生談義 日ノ高vs神宮高"でお送りしています」

乙葉 「それにしても、このラジオに男子がゲストで来たことなんてなかったですよね」

あやめ 「ハイッッ。ギャラリーで何人かは来てくれてましたけど、マイクの前に座ってしゃべってくれたのはこの三人が初めてですね」

司 「そうなんですか?それは光栄だなぁ…」

高木 「初めてって、やっぱり気持ちいいもんだよな」

瀧 「そ、そんなものかなぁ…」

あやめ 「さて、先ほどのコーナーで、「キミスイ」こと「君の膵臓をたべたい」という映画のことで少し盛り上がってましたけど、皆さんも当然…」

高木 「話の種に、一回だけね」

司 「僕も見ましたね。あまりに女子がうるさかったのと、やっぱり話題だったから。機会があれば2回目もあり、かな?」

瀧 「この間で3回目、です」

一同 「えええっっ??!!」

あやめ 「まあ、リピーターが出てくる映画だろうな、とは思っていますけど、瀧さんはこの映画のどこに惹かれたんでしょうかね?」

瀧 「だいたい恋愛モノって基本大団円で終わるのが当たり前っていうか、そうでないと観に行った感じが残らないもんでしょ?ところがこの作品は、ヒロインの女の子は余命いくばくもない風に描かれていながら、基本ピンピンしているわけですよ。死なんてどこにも存在しているように感じないのに実際彼女は別の要因で人生を終わらせてしまう。諸行無常、なんていうけど、ぼくらだって一寸先は闇だもんな、と思い知らされたわけですよ」

高木 「確かに。ああいう最期にしたのは、原作通りなんだろうけど、理不尽さの方が際立ってたからね」

司 「二人に感情移入できるかどうかがカギだけど、俺はできた方かな?」

瀧 「まあ感動のポイントって人それぞれだけど、ぼくはラストシーンで号泣しちゃいましたね」

なぎさ 「そうですよね。あそこでこういわれると、もう涙腺崩壊待ったなしって感じですよね」

雫 「友達になってくださいっも、今言うのかよってなったけど、感動したもんね」

あやめ 「うんうん。あんまり内容語っちゃうとネタバレになっちゃうんで…皆さんもその辺よくわかってらっしゃるようで助かります。まだ公開中ですしね」

瀧 「とりあえず、一度は観に行った方がいい映画だと思いますね」

なぎさ 「私DJなぎさもお勧めします!これは一度は観に行ってもらいたいところですね」

あやめ 「と、うまくまとまったところで、そろそろお時間となってしまいました。今日は特別コーナーを放送してしまったわけですが、次回の「お出かけ日ノ坂」は、明後日放送になります。担当はDJかえでとDJ雫の予定です」

乙葉 「それでは、神宮高校のお三方、どうもありがとうございました」

瀧司高木 「ありがとうございましたぁ」

あやめ 「以上、特別コーナー 「高校生談義 日ノ高VS神宮高」をお送りいたしました」

あやめ 「さて、この後はぁ」

なぎさ 「お待たせしました。なぎさの一人トークの時間ですよ。チャンネルはそのままでお願いしまぁす」

あやめ 「それではしばらく、音楽などをお聞きください」

カフ下がる。クラシックが流れ始める。


あやめ 「いやあ、おつかれさまでしたぁ」

瀧 「あ、どうも」

司 「こちらこそ」

高木 「それにしても本物っぽい感じで面白かったですよ」

なぎさ 「それもこれも、ここに居るあやめさんの指導あればこそ」

あやめ 「(メガネキラーン)はいっっ。大袈裟かもですけど私が形にしたっといってもいいですからね」

司 「何はともあれ、出演できたのって初めてだったけど、楽しかったなあ、みんな?」

高木 「ああ、雫さんを間近で見られて満足満足。あ、早速連れに送ったろ。一緒にどうですか?雫さん?」

雫 「え、い、いいんですか、私みたいなので(カオマッカ)」

高木 「本物の女子高生DJとのツーショットなんて、あいつ、発狂するだろうなぁ。あ、いいですか?はいっ」(パシャ)

雫 「私、男の子とのツーショットなんて、久しぶり…」

なぎさ 「そうなんだ。そう言えば私も…あ、瀧さんでしたっけ?」

瀧 「あ、は、ハイ」

なぎさ 「さっきの罪滅ぼしじゃないけど、一緒に撮りませんか?」

瀧 「あ、べ、別にかまわないけど…」

なぎさ 「ホント?うれしいなぁ。じゃあ撮りますよ。あ、もっと笑って笑って、にこやかに…はいっ」パシャ

瀧 「うまく撮れた?」

なぎさ 「うんうん。いい感じ。こんな出会いは大切にしとかないとね」

瀧 「まあ、それもそうかな」

なぎさ 「瀧さんは、撮らなくていいの?」

瀧 「おれ、自分の写真写り悪いから、あんまり撮らないんだ…」

なぎさ 「ふーん。まあ、いいっか」

あやめ 「みなさぁん、そろそろ本番ですよぅ。特になぎささん?準備準備!!」

なぎさ 「あ、そうだ、忘れてた。じゃあ皆さん、今日はご一緒できて楽しかったです。ありがとうございました」

司 「ああ、ぼくらも楽しかったよ」

高木 「まあちょいちょい来るってわけにもいかないけど、放送頑張ってください」

瀧 「これからも頑張って」

なぎさ 「はいっっ」

司 「じゃあ、俺たち、そろそろ帰るか」

高木 「そうだな」

瀧 「では・・・」

司高木瀧 「失礼しまぁぁす」


同じ頃…

早耶香 「もう、いつになったら江の島が見えてくるのよぉ」

克彦 「もうそろそろのはずなんやけど…」

早耶香 「だから車はやめて電車でいこうって、あれほど・・・」

克彦 「まあ、確かにお盆の真っ最中に車で出かけようとした俺も浅はかだったわ」

三葉 「ドライブはドライブだし、楽しいけどね」

早耶香 「こんなトロトロ、行っては停まり、がドライブ?ストレス溜まりまくりなんですけど…」


司 「予定外の出演になったよなぁ」

高木 「ああ、まったく。それにしても、雫ちゃん…なかなかキュートだったなぁ」

瀧 「まあ、オレが湘南行きを提案したのもまんざらではなかったってことで・・・」

司 「それって結果論っていうんだけどな」

高木 「ここが腰越駅か…あ、そろそろ電車入ってくるみたい」

司 「瀧の計画では、最後の〆は大仏らしいから、鎌倉行きに乗るんだっけな?」

瀧 「そう。あ、うまい具合に東行きが来たよ」

電車に乗り込む3人。

司 「あれ?一番先頭の車両って扉開かないんだ…」

高木 「こんなの、初めて見たよ」

瀧 「珍しいな…ホーム延長した方が手っ取り早いだろうに」

司 「お、さすが建築に造詣が深い専門家らしいご意見。それができない理由があるんだろうな」

一駅の「日ノ坂高校前」に停車。

司 「さっきのDJたちって、ここの高校に通ってるのか…」

高木 「「前」っていう割には学校らしきもの見つからないんだけど」

瀧 「高台になってるから、そっちの方にあるんだろ?海側には当然ないし…」

高木 「そうだろうな…って結構観光客下りたりしてるんだけど…」

瀧 「ほら、よくテレビとかで湘南の風景が採用されるときに出てくる有名な踏切があるんだよ」

司 「ふーん。見たらわかるだろうけど、あんまり興味ない」

高木 「オレも…」

瀧 「そんなことだろうと思ったよ」

電車、発車する。踏切に差し掛かる。


早耶香 「あ、ようやっと見えてきたぁぁ」

三葉 「あの、ぽつんと浮かんでいるのが…」

克彦 「はいっ、江の島です。ここからだと20分かかるかかからないか、くらいだよね、このスピードでも」

早耶香 「あれ?なんか人だかりしている」

克彦 「ああ、ここってかなり有名な踏切なんだよ。ツイッターで書いてた人曰く「アジア圏でもっとも有名」らしいよ」

早耶香 「あ、カラオケのBGVで見たことあるかも?」

克彦 「そう。そこですわ。ちょっと寄り道する?」

早耶香 「いーや。私はとにかく江の島行きたいのっっ」

克彦 「ああ、そうですか・・・」

三葉 「あ、電車が踏切を…」



             チ    リ    ー    ン



瀧、突然表情が変わる

司 「あれ?瀧、どうかしたか?」

高木 「なんかあったのか?」

瀧 「い、いや…別に…ただ…」

司 「ただ、なんだよ?」

瀧 「"あの人"が居たんじゃないかって…」

司 「まぁたその話かよ。いや、いるかもしれないけど、名前もわからない人の残像を追いかけるなんて…」

高木 「だいたいどこにいるかなんて見当もつかないのに…このあたりにいるってか?」

瀧 「い、いや、そんな感じがしたってだけで・・・」

司 「だろ?電車の中に居る人じゃないんだし、なんかの気のせいだよ、きっと」

瀧 「そう、なんだろう、けど…」


三葉 「ねえ、ねえ、早く元に戻って」

早耶香 「ちょっと落ち着いて、三葉。この状況じゃあUターンも難しいよ」

克彦 「電車とすれ違ってから急にこうなるなんて…なんかあの電車が原因なのか」

三葉 「あの人が…あの人がいたかもしれんのよ、だから…」

早耶香 「まあたそれですか…(ハァ)」

克彦 「ああ、これか?三葉が時々襲われる病気みたいなのって…」

早耶香 「そう。こんな感じ。たいていは、すぐに追いかけていって、別人でがっくり、みたいなのばっかりだけど…」

克彦 「うーん、こっちは車で向うは電車だしなぁ。仮に乗っていたとしてもどこで下りるかなんてわからないし…」

三葉 「も、もしかしたら、あの踏切の人の中にいたのかも!!」

三葉、ドアを開けて車を降りてしまう。

早耶香 「あ、ちょっちょっと三葉ぁ…行っちゃったよ…」

克彦 「それにしても、そこまで思いを募らせるなんてなぁ…」

早耶香 「もう走りだしたら止まらないんだから…LINE入れとくわ。"心行くまで探しなさい。江の島で待ってます"送信っと」

克彦 「なあ?俺がいなくなったら、お前も俺のこと探してくれる?」

早耶香 「フン。時と場合によるわよ」


三葉 「やっぱりいない…電車に乗ってたのかなあ、それともまた単なる人違い、思いこみ?」

ウロウロきょろきょろする三葉を認めるかえでと紫音。

かえで 「あのぅ、どうかなさいましたか?」

三葉 「あ、イエ、その…何でもないんです」

かえで 「うーん、なんでもないっていう割には顔が泣き出しそうなんだけど…彼氏に置いてけぼりにされたとか?」

紫音 「かえでさんっっ!!」

かえで 「おッといけねぇ、口が滑っちまった…あ…」

紫音 「ほおら、言わんこっちゃない…」

泣き崩れる三葉。

かえで 「ごめんごめん。わ…悪かったよ、まさか図星だなんて…」

三葉 「(ぐずりながら)いえ、違うんです」

紫音 「違うって?」

三葉 「私、人を探していたんです。でも、その人とは会えなくて…ずぅっと追い求めている人なんです」

かえで 「で、その見つけたい人を見掛けたのでここに来たけど見つからなかった…ってことか…」

紫音 「その人って、元カレですか?」

三葉 「そう、なの、かもですが、本人はどう思っているかはわかりません。彼もそう思ってくれているならうれしいですけど…」

かえで 「うーん、なんかわかったような、わからないような…まあ見つからなかったってことだけはわかったけど」

紫音 「私の方がまだましか…言葉は通じなくても会うことはできるんだし…」

かえで 「ここでかかわったのもなんかの縁だ。ちょっと俺たちがやってるラジオ局で一服していかねえ?」

三葉 「え?あなたたちがラジオを?高校生にしか見えないんだけど…」

かえで 「はい。ミニFMでDJやってます、かえでです」

紫音 「私は紫音。紫の音と書きます。私もDJやらせてもらってます」

三葉 「あーびっくりした。プロのDJさんかと思ったから。ああ、コミュニティFMでやっているのね」

かえで 「そうなんです。仲間も何人かいるでしょうから紹介しますよ」

三葉 「でも、私にも連れが…」

かえで 「そんなに時間は取らせませんよ。うちの名パティシエの作る紅茶でも召し上がっていただければ…」

三葉 「FM局なのにパティシエもいるんだぁ…」

紫音 「彼女も高校生なんですけどね」

三葉 「そういうことかぁ…で、局はどっちに?」

かえで 「日ノ坂海岸駅の一つ手前の腰越駅が最寄りなんです。歩いてでも行けますけど、電車使いますか?」

三葉 「せっかくなんで電車で行くわ。あの人の残り香が感じられるかもだし…」

かえで 「(ウワ、すげーラブラブじゃん…なのにどうして付き合えてないんだろう?)」

紫音 「(この人のコトダマが彼に伝わったらいいんだけどなぁ)」


3人、アクアマリン到着。

かえで 「ちわーっす。今日はゲスト連れてきたぜぇ」

紫音 「ただいま」

雫 「ああ、かえでちゃん、紫音さん。お帰りなさい。で、そちらの方がゲスト?今日はゲスト続きだわね」

かえで 「高校下の踏切でちょっと関わりができて、ついてきてもらったってわけ。ってゲスト続きってなんのこと?」

雫 「あっ、ついさっきまで東京から来た高校生3人組が出てくれてたの。結構イケメンでかっこよかったわよ」

かえで 「ふーん。オレは興味ないけどなぁ、男なんて」

紫音 「私も、お母さんのことだけが心配だから…」

雫 「で、お名前は…?」

三葉 「あ、宮水三葉っていいます。はじめまして…」

雫 「今日は日ノ坂には、観光でいらしたんですか?」

三葉 「はい。高校時代の同級生二人と一緒に…」

雫 「その方たちは?」

かえで 「そこから先は説明するよ。どうも三葉さんは、あの人だかりしている踏切で探していた人らしいのを見つけたみたいなんだ」

紫音 「でも探しても見つからないってときに私たちに出会ったの」

かえで 「3人で車できたらしいし、お連れさんはもう江の島に入っているんじゃないかな?」

雫 「そうでしたか…まあ、ひとまず心を落ち着かせてくださいね。今日はダージリンを入れましたので…どうぞ」

三葉 「ウワ、凄い香りが来ますね…どの葉っぱですか?」

雫  「(ニヤリ)特別なお客様にしか出さない、FOP(フラワリーオレンジペコ)です」

三葉 「どうりで・・・」

かえで 「で、その、FOPって、なんなの?」

雫 「ああ、紅茶の茶葉の等級みたいなもの。オレンジペコって、先端から数えて2番目の葉っぱのことなんだけど…」

紫音 「えっっ、オレンジペコって品種だと思ってたけど…違うの?」

雫 「ええ。一番の若芽のことはティップって言って、一枝に1枚しかない新芽のこと。その次がオレンジペコで、その下がペコ。生育しきっている葉っぱにも名前が付いているのよ」

かえで 「オレも、オレンジの味のする紅茶のことだと思ってたよ。知らないことって結構あるんだなぁ」

三葉 「はあぁ。なんか心がほんのり満たされていく感じ・・・」

雫 「(ニコッ)私の紅茶がお役に立ったようで何よりです」

かえで 「今日はいろいろすみませんでした(頭を下げる)」

三葉 「いやいやいや、こちらこそ、皆さんにご心配おかけして。しかも紅茶まで…」

紫音 「私の友達が無礼なことをしました。私からも謝ります」

かえで 「と、ともだち・・・」

三葉 「まあまあまあ。なんか、私ばっかり謝られて、ちょっと気まずいなぁ…」

三葉の携帯、LINE着信。

三葉 「あ、サヤちんからだわ。なになに?『いつまでさがしとるんじゃーーー』ってか?フフッハイハイ、もうすぐ行きますよ」

かえで 「お連れの方からですか?」

三葉 「そう。そろそろ行かなくちゃ」

かえで 「せっかくなんでしゃべっていけばいいのに」

紫音 「その方にコトダマが届くかもしれませんよ」

三葉 「コトダマ…」

かえで 「ああ、そうだよ、ちょっとだけでいいからしゃべっていかねぇ?」

あやめ 「ちょっと、そこの3人!!声が大きすぎましてよっっ!!」

かえで 「そんなどなんなくてもいいのに…ていうか、今のあやめさんの声が一番でかかったみたいなんだけど」

紫音 「ンフフ、そうね。そろそろ私も準備しなくちゃ」

かえで 「ああ、今日って紫音とオレだったよな、紫音と二人きり」

紫音 「どんな話になるのか、私も興味津々ですわ」

かえで 「まあ、まずは三葉さん、だっけ? うまく出てもらえるきっかけがほしいところだよなぁ…」

あやめ 「今気付きましたが、どちら様ですか?」

かえで 「(気づくのおせー)ああ、帰り道で知り合った宮水さん。ちょっとしゃべりたいことがあるんだって」

あやめ 「ふむふむ。まあ何とか時間は作りましょうか。では宮水さん、入っていただけますか?」

三葉 「え、あ、ハイ…」


~~~ジングル~~~

あやめ 「日ノ坂町日ノ坂商店街 ラジオアクアマリン。そろそろ夕暮れ時が近づいてきています。サーファーの皆さんは、くれぐれも足元には気を付けてくださいね。さてここで、ちょっとだけ時間を戴いて、「愛しのあの人に伝言板」のコーナーを急きょ作らせていただきました」

かえで 「さっすがラジオオタク。すぐにコーナー立ち上げちゃう」

紫音雫 「しっっ。あやめさんに聞こえちゃうよ」

あやめ 「アクアマリンからお届けしている、コトダマラジオ。皆さんの元にも、いろいろなコトダマが届いていることと思います。今日は、多分すれ違いで、会えなかったあの人にメッセージをとどけたいと、このスタジオにお越しいただいた方に少しだけ時間を差し上げて、ラジオからその人に向けてお話ししていただきたいと思っています。では、自己紹介をどうぞ」

三葉 「あ、ハイ。私、宮水三葉と申します。友人と初めて江の島観光に来たんですけど…」

あやめ 「その途中で、会いたかった人を見掛けたんだけれども、会えなかったんですよね」


早耶香 「あれ?これって、三葉じゃないの?」

克彦 「地域FMならいい情報があるだろうと思ってチューニングしてたら…驚きだよ」

早耶香 「もう、ほんとになに道草食ってるのかしらね(怒)」

克彦 「まあ、そう目くじら立てなさんな。今日は夜の江の島がメインだから、時間はたっぷりあるよ」

早耶香 「夏休み中じゃなかったら、どうしようかってところだけど…三葉がどんなことしゃべるのか、聴いてやろうやないっ!」


あやめ 「では、宮水さん。お時間はたっぷり差し上げます。思いのたけをマイクにぶつけちゃってください。それではどうぞ!!」


三葉 「・・・いきなり、振られても、どこから話していいか、困っちゃうなぁ。でも、今日わたしを襲った感覚は何度目かのものでした。胸がときめく、というか、何か音が鳴る、というか。それは私と会うべき人が近くにいるときに感じる、テレパシーのようなものだと思うんです。でも、私は、残念なことに、その人の名前を知りません。正確には覚えていないのです。ただ、私には一つの確信があります。会えばぜったい、すぐにわかるって。だから、私もあったことはあるはずのあなたにもう一度逢いたい。逢って何がしたいとか、そんなことはどうでもいいのです。とにかく逢いたい。そして忘れていた名前をもう一度聞きたい。それだけを頼りにこの4年余り、生きてきました。もしこの放送を聞いていたら、そして私の声を覚えてくれていたら、ここに来てほしいんです。私がここにいたこと、そして私が誰であるかとかがわかると思うんです。そしたら、二人は必ず会えると思うんです。どこに住んでいるかもわからないあなたにこうして呼びかけているのも、滑稽といえば滑稽ですが、身に覚えのある方がいたら、お願いします」


あやめ 「…という宮水さんのお願いというか、想いでしたが…」

三葉 「ありがとうございました。今話して少しだけ胸のつかえがとれました。」

あやめ 「会いたい人は、姿はわかるけど名前も住んでいる場所もわからない…。これはかなりハードル高いですね」

三葉 「でも、ぜったいいつかは出会えるって信じてます」

あやめ 「うーん、宮水さんはお強いっ! いずれその人が見つかることを私からも祈念しておきます」

三葉 「ありがとうございました」

あやめ 「こんな風に私がDJやっているときは何かラジオでしゃべりたい、とか告白したいとかという要求には柔軟に対応させていただきますので、皆さんもラジオアクアマリンまで遊びに来てください。以上、特別企画 「愛しのあの人に伝言板」のコーナーでした」


あやめ 「では、またしばらく音楽でお楽しみください。次は今日最後のコーナー「紫音と二人きり」のコーナーです」 

カフ、下がる

三葉 「本当にありがとう。相手に伝わったかどうかわからないけど、初めて言葉にしたわ」

あやめ 「いいってことですよ。どうせみんなしゃべるネタには苦労してますから、いろいろコーナー作れるのも私の特権ですしね」

雫 (スタジオに入ってくる)「それはそうと、お連れさん…」

三葉 「ああっっ、忘れてたっっ」

三葉の携帯、LINE着信。

三葉 「あ、サヤちんからだ。『ラジオで告白乙。とにかくはよ来いやぁぁぁぁ…』。ええ?サヤちん、聴いてたのかな?」

あやめ 「その内容なら、聴いていたんではないかと」

三葉 「ウワー。めっちゃ恥ずかしい(カオマッカ)」

あやめ 「まあお連れさんに聞かれるのは想定外でしょうけどねw」

三葉 「どんな反応を示したのか、私も興味ある。まあともかく、二人と合流するわ」

かえで 「道中、お気を付けて」

三葉 「皆さんも放送、頑張ってください。私も私なりに頑張りますから」


早耶香 「もぉ。どこで油売っているのかと思ったら、ラジオで告白タイムとは、ねぇ…」

克彦 「まあ、オレが高周波数帯にチューニングしてなかったら、三葉のしゃべりは誰も聞いてなかったはずなのになぁ…」

三葉 「もぉ、二人の意地悪っっ」

早耶香 「そこまで責められるいわれはなくてよ。まあ、今からライトアップしていくから、今日はそれ見に来たみたいなものだし、それが終わったら、美味しいもんでも食べに行こう」

克彦 「ああ、それがいいわ。早耶香のおごりで」

三葉 「さんせーい」

早耶香 「ちょっとちょっと、なに勝手に決めてくれちゃってるのよ!割り勘に決まってんじゃないっっ」


江の島に続く桟橋を江の島に向かって歩き出す3人。夜の帳が江の島に降り始める。ライトアップされた江の島はまた別の雰囲気を醸し出す。

それは2017年の夏。のちの奇跡のために用意された前奏曲<プロローグ>だったのかもしれない。


後書き

瀧三となぎさをはじめとするDJたちが一緒の時間軸に居たら…。そこからストーリーも生まれるのでは、というのが今作のきっかけでした。ところが、いざ始めてみると、全然進まない。ラジオに出てもらうことをきっかけにして程よく進みましたが、今度は三葉テシサヤがうまく登場できない。ただ、二人がすれ違う時の効果音だけはどうしても出させたかったので、「鎌倉高校前1号」踏切ですれ違わせることに執着しました。
そして瀧も三葉も「アクアマリン」でしゃべる。ここまでできて、初めてこのコラボは一つの形を見出せるわけです。

小説書き始めた(このサイトを利用し始めた)のは、今年に入ってから。それでもこの作品でとりあえず年内最後を飾れたのは、よかったと思ってます。
思い出す2017年の夏。爽やかな青春群像劇に引き付けられた瀧達、三葉たち。年末年始にもう少しブラッシュアップさせたいとも感じてます。


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SS好きの名無しさんから
2019-07-09 19:33:52

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