狐の提督
鎮守府に新しい艦が建造された。艦種は駆逐艦。ありふれた艦だった。潮はゆっくり瞼を開き提督へと目を向けると驚いた。
潮「え?」
提督は何千人の内から数人しかなれない職業だと言うのにここの提督は狐のお面をつけていた。
提督「やぁ。君が綾波型10番艦潮だね。よろしく頼むよ」
提督は潮へ手を差し伸べる。
潮「あっ!はい!よろしくお願いいたします!」
提督は潮の手を握ると優しく握手を交わした。
提督「さっ曙に会いに行こう。」
潮「曙さんが居るんですか!?」
私のことを恨んでるんじゃ・・・
提督「あぁ。まぁあいつは潮の事を恨んではいない。むしろ妹の活躍を誇りに思っていたぞ。」
潮「そうなんですか?」
提督「あぁ。嘘はつかない。」
そう言い二人は歩きだした。工廠を歩きだした。工廠を歩いてる途中で色んな艦娘とすれ違った。中には潮に話しかける艦娘もいた。最初は誰だか分からなかったが実艦だったときの独特の雰囲気で気付いた。
潮「・・・曙さんを瞬時に気付けるかな。」
提督「大丈夫さ。同じ血が入ってるんだ。すぐ気づける。と着いたな。曙がここでよく鍛練を行っている。」
とても綺麗な所だった。かなり昔から有るらしいが新築だと言われても気づかないほどだった。潮は鍛練所の扉を開けようとするが手が震えて力が入らなかった。
提督「大丈夫。落ち着いて開けよう。」
提督の手が潮の手と重なる。
潮は落ち着いて鍛練所の扉を開ける。鍛練所の中では海面に浮いた的を少女が海面を移動しながら的を撃っている。自分と同じぐらいの背丈の少女が放つ砲撃は綺麗に的を撃ち抜いている。
提督「あーけーぼーのー!」
どうやら彼女が綾波型8番艦曙らしい。潮は胸の高まりがピークに達した。曙はこちらに気付いた。そして曙は提督に砲撃をした。
提督「痛て。」
模擬弾とは言え普通痛てではすまない。
潮「提督!?」
いきなりのことで困惑する潮。曙はこちらにゆっくり歩いてくる。提督は何事もなかったかのように起き上がり
提督「いや~お面が無かったら即死だった。」
そう言い笑っている。
曙「クソ提督。鍛練中にいきなり話しかけないでくれる?」
言い方がかなりキツイ・・・
提督「てへ☆」
曙「・・・」ガチャ!
提督「あぁ待って!止まれ!」
曙「」ドォン!
提督「ギャァァァ!」
曙「・・・たく。」
潮「ちょ!?曙さん!?提督死んじゃうから!」
曙「大丈夫よ潮。この程度じゃ死なない・・・て潮!?」ギュッ!
曙はかなり驚いて潮に抱きついた。
提督「感動の再開のところ悪いけど早速だけど潮。仕事だ。」
潮「仕事ですか?」
提督「さて・・・悪いが潮には秘書艦をやってもらいたい・・・強制はしないが「ちょっと待ったァァァァァ!」
提督「どうした?曙。」
曙「あんたの秘書艦なんてろくなこと無いわよ!狐のお面を進めてくるし」ガチャ!
提督「強制じゃないから・・・それと危ないから室内で砲撃しようとするな。」
潮「・・・」
えぇ・・・連装砲向けられてるのに平然としてる提督・・・日常なのかな・・・
潮「私秘書艦やります!」
提督「良いのか?」
潮「はい!それと提督さん。」
提督「ん?」
潮「その狐のお面嫌いじゃないです!」
提督「ありがとう。」
・・・後ろの包帯は少し気になるけど
~それからしばらく~
潮(書類仕事にも慣れてきました。提督もとても優しいし)ジー
提督「・・・どうした?お面になんか着いてるか?」
潮「あ、いえ!」
・・・今さらですが狐のぬいぐるみ等々狐グッズが置いてありますが・・・狐が好きなんですかね。
提督「そろそろ夕飯の時間だ。行こうか潮」
潮「はい!」
提督「あっさり~しっじみ~はっまぐーりさーん♪」
潮「何の歌ですか?それ。」
提督「平和だった頃知り合いと潮干狩りに言ったとき知り合いが歌ってた歌だ。懐かしいな。」
潮「・・・その頃からお面は着けてたんですか?」
提督「ん?その頃は着けなかったかな?・・・どうだったか・・・忘れてしまったよ」
そんな雑談をしていたときだった。
提督「ァァァァァ!」カルロ風に
潮「提督!?」
上から黒板消しが落ちてきた。
卯月「ぷっぷく~♪忍者卯月!今宵も悪戯大成功だピョン!んじゃここらで失礼するピョン!」ダッ!
提督「待てやァァァァァ!」ダッ!
潮「提督~!?」
~数分後~
提督「・・・・くそ逃げ足だけは一流だな。あいつは卯月。悪戯好きなやつでな。悪いやつじゃないんだが・・・」
潮「・・・」
提督「まぁ良いか。待たせて悪かったな。夕飯を食べに行こう。」
~食堂~
潮「・・・広い。」
提督「まぁな。今じゃ半分しか使われてないが・・・」
少食の子から大量に乗せられている子も居た。
提督「券売機で選んで買ってあそこの間宮さんに渡せば作ってくれる。」
潮「へぇー」
すると提督は空いている席へと向かった。
潮「提督は食べないんですか?」
提督「空いてないからね。」
そう言っている提督の後ろに誰かがいる。
??「・・・ふざけてないで食べなさい。」
潮「あの~提督さんは空腹じゃないそうですが・・・」
??「あら?新入り?私は叢雲。こいつがお腹すいてないて言うのは、大体嘘だから覚えておきなさい。」
潮「そ・・・そうなんですか?」
叢雲「昔はこいつは寝なかったことも有るくらいだからね。無理矢理縛り付けてたけど・・・その時は次の日見に行ったらばっちり目を開けてた何て事もあったわ」
提督「日常茶飯事だったな。」
叢雲「んで、食べないと点滴生活になるわよ?」
提督「おぉ~怖。針は嫌いだよ。」
叢雲「なら食べなさい。」
提督「だが断フゴォ!?」
叢雲「食べなさい(威圧)」
提督「・・・善処します・・・」
それから数ヵ月、執務にもなれて来た。潮は提督といてつまらないと感じることがなくなった。むしろ楽しかった。
提督「んじゃ行ってくる。」
潮「はい。」
提督は月一で出かける。二週間ほどで帰ってくるのだが皆、提督が何処へいくかは知らない。提督いわく買い出しだそうだ。
潮「・・・」
潮が執務をしてから二時間が経過した。
潮「これは判子がいりますね。この辺に・・・」
提督の机の棚をまさぐり判子を探す。提督が出かけるときのみ提督の机の棚を勝手に開けることが許されている。流石に署名が必要な書類は許可が降りないが
潮「これは?」
動物園で狐を見て喜んでいる少女と手を繋ぐ好青年が写った写真があった。
潮「妹がいるとは聞いていませんが・・・」
そう言い写真の裏を見るとそこには
2010年8月10日・・・俺と天龍の動物園散策と書かれていた。
潮「・・・提督が意外とイケメンだ・・・にしてもてんりゅう?・・・」
とても疑問だった。昔提督は一般兵として入隊し艦娘と関わる機会は無かったはずだ。そう思いつつ潮は写真の光景を目に焼き付けつつ写真を元の場所に戻した。
提督「ただいま~」
潮「お帰りなさい!」
そして二人は何事もなかったかのように職務時間が過ぎていく。職務時間が終わってから潮は食堂にいかず書庫に入り浸った。深夜になっても兵士予備科についての資料を探した。そしてついに提督についての資料を見つけた。何処にでもいるごく普通の名前だった。次に訓練科の艦娘を探した。提督が入隊した頃、天龍も入隊したらしい。
潮「・・・本人に聞いた方が早いですね。」
~執務室~
潮「失礼します。」コンコン
ノックし入室すると部屋には誰もいなかった。机の上の紙に
「ご用の方は仮眠室へ」
と書かれていた。潮は仮眠室へと向かう。
潮「提督?いらっしゃいますか?」
扉を開けるとベットに後ろ向きで座った男の姿があった。ベットの上には救急箱や包帯があった。包帯には汚れた包帯と真新しい、包帯の束があった。
提督「ご用の方は仮眠室へと書いたけど入っていいとはいって無いはずだけど?」
提督はやや怒っているように感じた。
潮「提督。机の中の写真はなんですか?」
潮はそんなのお構い無しで質問する。
提督「あの写真見たんだ。なら良いか。教えよう。」
提督は意外とすんなり教えてくれた。だが顔は見せないでいる。
提督「俺と彼女、天龍との慣れはじめはちょうどこのぐらいの夜遅くだった。」
八年前
提督(少尉時代)「やっぱり深夜の散歩は良いね。まぁ夜間の見回りの任務だからあまり変なことすると不味いけど」
俺は海沿いの見回りをしていた。教官の事を愚痴りながら
提督「あれは人か?暗色系の服装で分かりにくいけど・・・」
今の時刻は深夜で波は荒くないけど足元は暗くて見えない。
提督「・・・もしかして入水自殺とか?だとしたら止めなきゃ!」
彼女の元へ走る。彼女は足元まで水に浸っていた。
提督「おーいそこの人~!」
天龍「ん?」
提督「自殺は止めなさい。そして家帰って寝なさい。」
天龍「しねーよ!自殺なんて!」
提督「大体自殺未遂する奴はそう言うんだ!ドラマから学んだ!」
天龍「嫌ドラマのお約束みたいな事リアルじゃねえから!」
提督「これ小説です。」
天龍「メタイわ!」
提督「とにかく命は限り有るものなんだ!両親が悲しむぞ!」
天龍「両親何て居ねえよ!それに・・・」
提督「それに?」
俺は必死に彼女を止めてた。戦場ならまだしも平和な日常で人が死ぬなんて最悪だしね。その頃は彼女の正体を知るなんて思いもしなかった。
天龍「俺の代わりなんて居るに決まってる。」
提督「・・・つまり君は艦娘か」
天龍「察しが良いな。そうだ。俺は艦娘の天龍だ。」
このときは驚いた。何せ一般兵が艦娘と会う機会なんて式典か戦場でしか会わないからね。何でだろうね。俺はこれが運命に感じた。
提督「そうか・・・なら俺が親族になろう!」
天龍「はぁ!?」
正直昔も今もこの考えは正しいと思ってる。正直両親が居ない彼女にとって心の支えが少ないと思って考えた結果なんだけどね。
提督「みるからに未成年かな・・・と。」
天龍「」
天龍「悪かったな!未成年みたいで!20だわ!」
提督「え?」
天龍「え?じゃねえよ!」
そう言い証明書を見せてきた。
提督「まじか・・・俺と同い年か。」
天龍「・・・」
提督「まぁ落ち着いて。それより何で浜辺?散歩?」
天龍「・・・練習だよ」ボソ
提督「え?」
天龍「練習!海に浮けないんだよ!俺!」
提督「あぁ。そう言うことか。」
天龍「笑わないのか?」
提督「人には得手不得手がある。それを笑うのは失礼だと思ってね。」
天龍「変な奴」
提督「良く言われる。さぁ練習を始めよう。俺も手伝う。」
天龍「良いのか?」
提督「俺のせいで時間減っちゃったし。何より困ってる人は見過ごせない。」
天龍「けど・・・長くなるかも知れねえぞ?」
提督「構わないよ。むしろ親しみを持てる人が出来て良いじゃないか」
天龍「分かった。じゃぁ付き合ってくれ。」
提督「勿論。」
この日から付きっきりで練習をした。ようやく水上に浮いて歩行できたときは二人して大喜びしたことを覚えてる。ある夏の日にイベントが起きた。
提督「あぁ~冷蔵庫涼しいな~・・・」
天龍「何してんだ・・・?せっかくの夏だし海いこうぜ!」
艦娘と人間の寮は近いところにあって暇なときは大抵天龍が来る。
提督「えぇ~だるい~・・・」
天龍「海行くぞ~」ガシッ!
提督「分かったから冷蔵庫のコンセント抜こうとするな!」
てなわけで天龍と海にいく事になった。見慣れてる海でも新鮮に感じた。
提督「にしても天龍遅いなぁ。もうパラソルとシート引き終わったぞ・・・今のうちに酒でも飲もうかn「ちょっと待ったァァァ!」バシッ!
天龍「泳ぐ前に酒飲むと溺れるぞ!?」
天龍の水着姿に目が眩んだ。悔しいがこう言うのも良いかもしれないと揺らいでしまった。
・・・こんな彼女の姿も新鮮だと思った。
提督「お、おう。」
その後天龍が沖で泳ごうとしてたので阻止した。膨れっ面も可愛かった。
流石に疲れて二人でシートに横たわった。
提督「なぁ天龍。」
天龍「あ?」
提督「後で天龍の部屋行っても構わないか?」
天龍「え!?」
提督「駄目か?」
天龍「ダメじゃねえけど・・・」ブツブツ
提督「・・・?天龍?」
天龍「分かった。」
提督「楽しみにしてる。」
天龍「おう///」
提督「?顔赤いぞ?」
天龍「うっせえ!///」
海から戻った後約束通り俺は天龍の部屋へ行った。
提督「へぇー。広いね。しかもキッチンつきか。」
天龍「艦娘手当てがあるからな。」
提督「にしても・・・」
天龍「ん?」
提督「この部屋狐関連のものが多いな。狐が好きなのか?」
天龍「まぁな。狐可愛いしな。」
提督「分からなくもない。」
その後も色々なところへ行った。スケートや、動物園とかね。とても楽しかった。そしていつしか俺達は友人通しから恋人通しになった。全てが上手く行ってた。
提督「あの日までは」
潮「・・・あの日ですか?」
提督「三年前深海棲艦が沿岸部を攻撃した事件は知ってるかい?」
潮「はい。確か大勢の民間人や艦娘が亡くなった・・・」
提督「通称、軍沈改革。『軍神』とも呼ばれた英雄が亡くなり海軍が崩壊しかけたあの事件だ。」
潮「・・・まさか。」
提督「そのまさかだ。その時俺と天龍はそこに居た。話そう。俺が転落してった話を」
提督「暇だね~。」
天龍「だな。」
提督「チーカマとってくるわ。」
天龍「俺のも~」
提督「了解」
その時俺達は、部屋でダラダラしてた。その時だった。
『緊急事態!深海棲艦、及び爆撃機接近中!至急対処せよ!』
提督「天龍いくぞ!」
天龍「おう!」
俺らは各々の立場についた。俺は住民の避難。天龍は深海棲艦撃破。
提督「こっちの方へひなんしてください!」
避難民a「タカシどこ!?」
避難民b 「早く進めえ!」
避難民c「早く退け!」
避難民d「シニタクナーイ!」
一部地域で戦闘が始まっていて本部でも混乱が起きているが肉眼で航空機が交戦しているのが見えた。即ち敵機が間近に迫っていると言う事だった。
そしてついに
「足がァァァァァ!」
「熱いいいいいいい!」
まさに地獄だった。先人はこれを体験したんだな。と思ったよ。
提督「沿岸部の奴は何してんだ!?」
避難民「助けてください!息子が家の中にいるんです!」
提督「分かりました!先にひなんしてください!」バシャァ!
そう言い近くのバケツを頭から被りそのまま燃える家の中へと走っていった。その時後ろで爆発が起きた。母親と思わしき人と話したところだったよ。俺は助けられるであろう子供を探した。見つけたときには脈がなかった。出ようとしたとき突然燃えた天井が落ちてきた。
提督「うわぁぁぁぁ!熱い!熱いいいいいいい!」なんとか抜け出せたけど顔と上半身の一部に大火傷を負った。これが狐のお面をつける理由だよ。そして燃える家から出て沿岸部を見た。なんとも言えない光景だった。
提督「海が燃えてる・・・」
真っ先に天龍の事を考えた。気づけば足は沿岸部の方へと向かってた。救いを求める人を無視して。もはや天龍のことしか頭になかった。浜辺の高射隊は全滅。そして戦死した艦娘が打ち上げられてた。ここも地獄だった。
提督「ウラァァァァァァァ!」
怒りで我を忘れて高射砲を撃ちまくった。5発目でやっと敵機を落とせた。けど敵機もこちらに気づいて機銃掃射を始めたよ。
提督「ぐっ!」
足に弾が当り血が流れる。それでも立ち上がって攻撃をやめなかった。敵戦闘機が突っ込んできた。
提督「来い!」ガチャ!
戦死した艦娘の機銃を持ち構える。
戦闘機が機銃掃射をしようとしたその瞬間
提督「うおぉぉぉぉぉぉぉ!」バババババババ!
戦闘機の燃料タンクに当り爆発した。俺はその場に倒れこんだ。意識が遠退いてその時はもう駄目だと思ったよ。けどね、聞き覚えのある声がそれを邪魔した。
「おい!起きろよ!おい!」
天龍だった。
提督「・・・天龍か。」
天龍「今は喋るな。手当てする。」
そう言い傷口にハンカチを当てる。彼女は中破していた。
提督「すまない。皆を守れなかった。」
天龍「今はお前がいればいい!」
提督「そうか・・・」
天龍「まってろ!すぐ救護室があるところへ連れていく!」
天龍は俺を引き摺りながら進む。燃える海を背に
提督「なあ天龍。」
天龍「どうした?」
提督「俺の顔火傷で酷くなってるだろ?気持ち悪くないか?」
天龍「むしろ男前になったぜ。」
提督「それは嬉しいな。艦隊はどうなった?」
天龍「俺以外みんな死んじまったさ。」
提督「俺ら悪運強いな。」
天龍「そうだな。」
あのとき俺が怪我をしてなきゃ・・・あのとき俺が機銃掃射で死んでたら
俺がもし
天龍に会わなければどうなっていただろう。
答えは簡単、彼女は死ななかった。
天龍「危ない!」ブン!
天龍は力を振り絞り俺を思いきり投げた。
投げられた所が爆撃されたのが見えた。
提督「てんりゅううううう!」
俺這って天龍の元へ行った。倒れ混んでる天龍が見えた。
提督「天龍!怪我は!?」
天龍「大丈夫だ。」
提督「けど血が!」
天龍「おい!一回しか言わない。いや、言えないだな。落ちいて良く聞いてくれ。どんな方法でもいい。和解でも敗戦でも。この戦争を終わらせろ・・・お前なら絶対にまた世界を平和にできる・・・はず」ガクッ
提督「天龍?天龍!?てんりゅううううううう!」
天龍の顔はサンタクロースを待つ無邪気な子供のようだった。
提督「・・・これ以上守るものをなくさないでくれよ・・・」
この場で自殺したかった。思わずポケットの拳銃に手が出た。その時だった。
兵士A「居たぞ!生存者だ!」
どうやら他の兵士が俺を見つけた。
俺を救護室に運ぶため担架に乗せようとする。
提督「・・・」
抵抗する気力もなかったよ。そのまま運ばれて気付けば
提督「ここは・・・?」
???「病院だよ。」
提督「・・・」
その時意識がぼんやりしてて分からなかったけど後でその人が『軍神』だったって分かった。
提督「・・・天龍は無事だ。きっとそのはず」
天龍が死んだ事実を押し殺して体に刺された器具を取り外し前に進む。その時だった。
???「待て。」
提督「・・・」
???「その天龍と言うのが何処の天龍かは知らない。けど、その溶けたペンダントは彼女の遺品じゃないのかい?」
俺はその男に掴みかかった。
提督「ふざけるな!天龍はまだ生きてる!」
???「事実から逃げたって何時かは現実を見せつけられる。それに、何時までも引き摺ったところで死んだ者は生き返らない。」
男は落ち着いて話す。
提督「お前なんかに何がわかる!」
???「・・・」
男は焼け焦げた写真を取り出し言った。
???「俺がまだ守るべきものがあった頃の俺だよ。ここにいる皆は全員死んだ。悲しい気持ちは痛いほど良くわかるさ。だがいくら悲しんだ所で死んだ者は戻りはしない。」
その時だった。
??「失礼する」
誰かが来た。男は入ってきたその人物に敬礼をした。
???「元帥殿。」
??「二人とも意識が戻ったようだな。まず少尉・・・いや少佐に連絡がある。少尉、君は少佐に昇進した。10月から提督になってもらう。」
提督「提督?そんなものは要らない。俺は天龍に会いに行く。」
???「・・・」
男の目はとても悲しげだった。
元帥「天龍は戦死した。」
提督「嘘だ!」
病院中に響き渡るほど大きな声だった。すると元帥の横にいた兵士が箱を渡して来た。
兵士「天龍の遺骨の入った骨壺だ。君に渡した方が彼女のためになる」
急いで箱の中の壺を見る。中には白い骨があった。頭が真っ白になった。
元帥「君は高射砲で爆撃機、戦闘機を撃墜した。その武勲を称え少佐に昇進したのだ。」
提督「そんなこと聞いてねえよ!」
そう言い元帥に殴りかかった。
???「・・・」
殴る前に男に押さえられた。
提督「お前らがもっと早く気付けばこんなことには!大本営だけ守備を固めやがって!」
元帥「すまなかった。」
元帥は見本のような謝罪をした。」
提督「謝ってもあいつは帰ってこない!なら死んだほうがましだ!」
元帥「少佐!」
元帥も声を荒げる。彼女の夢、戦争をおわらせることだろう!誰がそれを終わらせると言うのだ!それは君自信だ!この動乱を終わらせて見せろ!」
そうだった。天龍との約束。戦争を終わらせて平和な世界にするという約束・・・
提督「・・・わかりました。後で書類を書いておきます。」
・・・男と元帥が出てったあと遺骨を見て一人で泣いてたよ。そして『軍神』は数日後彼が守っていた町を奪い返すために戦って戦死したそうだ。
提督「これが俺の過去だよ。つまらない過去の話をしてすまなかった。」
潮「いえ。提督が謝ることでは・・・」
提督「もうすぐ敵本拠地襲撃作戦がある。それな終わればこの戦争は終わる。ともなれば俺の出番も終わりだ。」
潮「それって・・・」
潮の返答を聞くまでもなく提督は銃を取り出し自分の頭に突きつけた。
提督「彼女の夢が叶う。俺は天龍の後を追うことにした。出ていくといい。トラウマになるかもしれない。」
潮「提督!!」ガシッ!
提督の持つ銃を無理矢理奪い、遠くに投げた。
提督「・・・止めてくれないかな?」
潮「ふざけないでください!それは命に対する侮辱です!」
提督「・・・俺はあの戦いのせいで顔は大火傷を負って彼女も失った。医者からも顔はなおらないと言われた。」
そう言いこちらを向く
提督「・・・」
顔は大火傷の跡が残り片目が焼き爛れていた。
一般人からしてみれば化け物同然だった。
提督「心に大穴が空いた気分なんだ。こんな辛い思いをするなら死を選ぶ」
潮は彼を後ろから抱きしめた。背中に暖かさを感じる。潮の胸の鼓動も感じた。
潮「提督!私は貴方が好きです!今度は貴方が好意を持つ人の前から消えるつもりですか!」ポロポロ
潮「不安だった着任時、優しく手をとりあってくれた人は提督何です!」ポロポロ
提督「・・・」
潮「日々接して行くうちに提督と一緒に居るときが一番落ち着くようになったんです!」
提督「・・・」
潮「これが恋だと実感しました!貴方が自殺を止めるためなら何だってします!お願いですから死なないでください!」
提督「・・・敗けた。君には敗けたよ。」
潮「本当ですか?」グスッ
提督「あぁ。泣いてる人をほおっとくわけには行かないからね。」
何時この戦争が終わるかはわからない。けどもう守るべきものは絶対に失わない。
回想は大根ポン酢さんが鎮守府ごと爆撃された辺りです。
コマンドーネタが入ってるw
行と行の間にスペースを入れてくれたらもっと読み易いと思いました。
(^・ω・^)ゞコメントありがとうございます!次回から行と行の間にスペースを入れてみます!