運命から逃れた、私の定め
建造されてすぐ、艦の被りから解体を言い渡される一人の艦娘、不知火。そんな彼女が運命の枷から逃げるべく、出会った一人の少年。
不思議な資質を持つ彼と彼女は、共に離島へ逃げることとなる。彼らが自らの希望を叶えるため、苦難から乗り越えるため、出来ることには……。
こんばんは、まめ〆です。最近改名して実は茸〆になったんですけど。
そんなことはどうでもよくて、この小説、実はがちがちにプロット書いて仕上げようとしてる小説です。
そろそろこう人気出るような小説が書けるようになりたいなーって思ってその勉強のために書いてます。
つまりだ。<<<マジで些細なことでもいいから批評だったりコメントお願いします!!!どんなことでも私の為になります。後評価も!!>>>
私は砕けないぞ。Twitter→ https://twitter.com/Tfmm_Hulk
「ごめんね、私は行かないといけない」
女性は悲壮な顔を浮かべている。その表情は悲しさより、心残りがあるような顔であった。
その女性の前には、一人の少年が座っている。年端もいかない風貌をしているが、一方で彼は一切の無表情だった。
「弁えてるから。ありがとう」
少年が抑揚のない声でそう答えると、女性は何も言わないまま出て行った。一瞬その姿は、戦場に赴く兵士の様に果敢で、高貴で、虚無を包んでいた。
ーーー
「すまないが君はもういるんだ。解体されてくれないか」
私が造られ初めて聞いた言葉は、非常に無機質な冷たい言葉だった。私はそれを拒もうとは思わないし、何よりこういうものなのか、と一人自分を納得させようとした。
「こちらに解体施設はないんだ。玄関までは案内させるが、そこから先は自分で行ってくれ」
「了解しました。ご配慮ありがとうございます」
配慮も何もあるか。いきなり死ねと言ってるのに、思うわけないだろう。去っていく男性をしきりに睨みながら、隣で申し訳なさそうな顔をしている艦娘に声を掛けた。
その艦娘曰く、この鎮守府は規模が大きく既にいる艦と建造した艦が頻繁に被るらしい。それがどこも引っ張りだこな強い戦艦等ならまだしも、私の様な駆逐艦の中でも下の辺りにいる艦娘は、解体されるだけが運命の様だ。非情な運命だとしきりに怒りが込み上げるが、それは私にはどうすることもできないことだった。
ぽつぽつと雫が空から零れる。傘なんて勿論持っていない私は、されるがままだ。何のために私は建造されたのか、どうしてこんな希望もなく、無力に消えなければならないのだろうか。怒りはそのうち悲しみへと変化し、悲観的な思考は私を衝動へ駆り立てた。
まるで私はこんな事を永遠と繰り返しているのではないか。そう思った。何故なら私は建造されやすい艦であるし、今の私の行き場がないという事は、前もそうであった可能性は十分にある。そして、次もそうである可能性は、それ以上に大きいのだ。
本当にこのままでいいのだろうか。実際に運命を繰り返している可能性はとても大きいのに、また歯車になっていていいのだろうか。どうにも感傷的になってしまっていた私は、そんな夢物語染みた空想にいてもたってもいられなくなった。
「いつも澄ました顔しやがって!つまんねぇんだよ!」
思考に飲まれていた私を、怒号が覚ました。冴えない顔をする少年をいかにも悪ガキそうな雰囲気を漂わす三人の少年が罵っているが、依然として少年は表情を変えない。それを見て更に気を悪くしたのか、一人の少年が拳を構え少年へ駆け出す。
「クソ、調子に乗りやがって!」
調子に乗っているのは一体どちらの方だ、と呑気に考えてしまったが、流石に見逃すことは出来ない。事情なんて一ミリも知らないが、なんにせよ目の前で暴力に訴える馬鹿を放っておくほど私は非情で無かった。
「ちょっと何を――」
私が声を張ろうとした刹那、走っていた少年は地面へ転げ落ちた。しかし、それがどうにも不自然に見えて仕方がなかった。
「ちっ、覚えとけ!」
雨のせいもあって泥だらけになった少年は怒りが失せた様で、如何にも納得いかないという顔で走り去って行く。それが彼らのグループの頭角であったのかして、残りも追随する形で去っていった。カッコつけて散る様は非常に愉快で、最悪だった気分は幾分かマシになったが、疑問は消えなかった。
先ほどと打って変わり、少年の顔には温かみある表情が浮かんでいる。それほどに彼らが嫌いだったのだろうか、等と考えながら、場を去ろうとする少年に急いで声を掛けた。
「あの、すみません」
「……はい」
声を掛けるとは考えたものの、イマイチなんて声を掛ければ良いのかなんて分からなかった。そのせいあってか不器用な声掛けになってしまい少年に不審者がられている気がしたが、この際気にしないこととする。何より、それよりも大事なことがあるからだ。
「先ほど何をしましたか?」
単刀に私が問いかけた瞬間、少年は分りやすく顔を強張らせた。なるほど、やはり先ほどの不自然さは私の見間違えでないことが確かになった。そして、私の説が濃厚になってきた。
「何もしていませんよ」
少年は素っ気なく言葉を返すが、先ほどの表情から疑いが晴れることはない。彼の喋り方から、長く続けても言い逃れられてしまいそうな気がし、仕方なく詰めることにした。
「いいえ、貴方は間違いなく何かしました。先ほどの少年、足が空中で不自然に固まりましたから」
私が不自然に思った理由。それは足元には何もないにも関わらず転んだこと。そして、空中で足が不自然に硬直していたこと。
もしこれを見たのが一般人なら、おかしいなぐらいにしか心に留めなかっただろう。しかし私は違う。私は"艦娘"だ。
「……見間違えでは」
それでも尚惚け続ける少年に、私は痺れを切らした。
「貴方は妖精を使いましたね」
少年は顔を歪めた。恐らく明確に言い当てられるとは思っていなかったのだろう。
艦娘|私でしか分からないというのは、それが妖精の仕業であると考えたからだ。しかし私自身その妖精の姿を見たわけではなく、言ってしまえば鎌を掛けただけだ。だがそれは、彼の顔を見るにきっと正解だったのだろう。
「……貴方は誰ですか」
震えた声調で言い逃れの諦めを示す。彼は妖精が見え、剰え明確な指示を出すことが出来る。そこから、彼が提督の素質の持ち主であること、またそれだけでなく、非情に高度な意思疎通が出来る優秀な部類であると容易く想像出来た。そしてこんな出会いは、私を救うに等しかった。
「貴方は提督というのを知っていますか?」
「……えぇ、生前母が仰っていました」
何故彼の母が知っている? 提督というものは本来素質を持つものが表面下で選抜されるものであり、当事者しか知りえない。また提督や艦娘の存在というのは本来秘匿されており、一般人が知り得ることはあり得ない。そうであるにも拘わらず、彼の母という女性が知っている事実や、その子供である少年が素質の持ち主であるという異例の出来事。私を混乱させるには十分な要素だったが、それ以上に私は余裕がなかった。
「貴方は提督になる気はありませんか?」
少年が妖精を従えているかもしれないという事実に気付いたとき、何より頭を過ったのは、私の提督になれるかもしれないという想いだった。それは非常に希薄な希望だったが、私がこの永遠の運命から抜け出すとするなら、そんなあり得ないイレギュラーに頼る他無かった。
「あります。なれるなら今すぐにでも」
私は今悲壮な顔をしている気がする。そして彼は今悲壮な顔をしている。その事実は、互いに利害の一致を示している。
彼は先ほど、生前と言った事、そして悲壮な顔をしていること。これらは間違いなく繋がっている。それが何であるか測る事は出来ないが、彼の人生に深く根付いているのは簡単に想像できる。だからこそ、私はこのチャンスを逃さない。
「でしたら、私の提督になってください」
彼は困惑顔を浮かべた後、何かに気づいた顔をする。私は切り札として、自分が艦娘であることを明かした。もし彼が本当になりたいと思っているなら、彼もこの機会を逃そうとはしないはずだ。
「……分かりました。僕で大丈夫なのでしたら」
自分の策略が成功したというより、救われたという思いが強かったのだろうか。私は自然と顔が綻んでいることに気が付いた。それを見た彼も、初めて小さな笑みを見せた。
「とは言うものの、どうやって?」
「私とどこかの島にでも付いてきてください。私にはあまり時間がありませんので」
もし私が長時間施設に行かなかったとすれば、そう時間が経たない内に連絡が行くのは必然だ。もしそうなってしまえば私はすぐさま捕まってしまうため、避けなければならない。
また私が助かるためには、彼が今すぐ提督となり鎮守府に着任する必要があるがそんなことはできない。彼はまだ高校生にもなっていなさそうである上、彼の高度な妖精との意思疎通を鑑みればそう簡単に着任させるとは思わない。きっと大本営はどこかで特別教育を受けさせ、ある程度年齢が満ちたら着任させるなんて回りくどいやり方をするだろう。
彼にも事情があるかもしれないが、今はとにかく急がなければならない。ここは鎮守府の近く、即ち海はすぐそこだ。艤装の感覚なんて使ったこともないため、まともに扱える自信はないが知識はある。もう条件は揃っている。
頭にはてなマークを浮かべていた少年を抱きかかえると、すぐさま海へ走り出した。彼は落としかけた傘を寸前に拾い上げ、安堵の表情を浮かべていたが、私が走るなりその余裕は無くなった様だった。
少年は思ったよりも軽く、長距離航海しても体力は尽きなさそうだ。また鎮守府を出るにあたり、地図を渡されいる。それは本来施設までの案内のためとして作られたものかして、幾分か小さく遠くまでは見れない。しかしこれを使えば、そこまで遠くまでは見れないが適当な島にはたどり着けるだろう。これを作った奴に、ざまぁみろと思った。
少年は状況を理解出来ていない声を出しているが、今は許してもらうしかない。申し訳なさと共に後ろめたさを感じながら艤装を出現させ航行を始める。
きっと恐らく、こんな初航行をするのなんてこの世で私ぐらいだろうなぁ。なんて思いながら、荒波の海を太々しく蹴り進んだ。
鎮守府近海を離れた辺り、私は立ち往生していた。何気なく手に収まっている少年を見やると、どうやら流れに身を任すことにしたのか、頭を手でかかる形で目を閉じていた。そんな少年を見て、私は申し訳なく思うと同時に、愉快に感じた。先ほどまでは彼も気を利かす余裕があったのだが。
ともあれ、ある程度は気まずくなることもなく順調に航行していたのだが、私は今になって大きな問題へ考えが至った。それは、ここは海だという事。即ち、いつ深海棲艦が襲ってくるか分からないのだ。
ドンドンと不安が募ってきた。両手で少年を抱えているこんな状態では真面に戦えたモノではないし、逃げ切れるかと言えば自信が無い。またもし少年を抱えていなかったとしても、全くとして実践経験も無い、しかも今が初航行である私がどうにかできるとは思えなかった。
しかしそんな一方で、深海棲艦が出ないという推測もある。それは、ここが哨戒海域だとすることだ。鎮守府近海を出たとはいえ、それでもこの程度の距離なら哨戒海域内でも十分おかしくない。まぁもしそうだったとしても、哨戒中の艦と鉢合わせてお陀仏なんてリスクも備え合わせているのだが。
「あぁぁ、どうしよう」
おまけにもし島に辿り着いたとしても、そこが無人島だとは限らない。もし人がいなくて安心していても、出撃艦隊の休憩所だったりしたらそのうち終わりだ。と不安だらけで八方塞がりの私は、知らず知らずに声を漏らしていたようだった。しかしすぐさま、少年の声で考えが飛ぶことになった。
「……二時の方向に何か、感じます」
どうやら少年はいつの間にか目を開いていたようで、一点を注視していた。私はその声を機に、彼の視線の先に集中力を今まで以上、より一層に高める。雨脚は陸上の頃よりどんどん強くなり、霧も出始め視界が非常に悪い。
深海棲艦か、或いは艦娘か。何であるのか分からないが、あの彼がこうも言うという事は、それは必ず存在する。そんな気がした。
「近づいてもらっていいですか?」
「もし何か艦だったらどうするのですか。流石にそんな危険な真似は出来ません」
いくら少年の言う事とは言え、得体の知れないリスクへ向かう様な事は出来る気になれない。そう彼を咎めて宥めようとするが、彼の瞳は揺れることなく強い意志を感じさせた。
「いえ、絶対にその類ではないはずです。お願いします」
彼は強い。悪ガキ共を相手にしている時も、決して怯むことは無かった。私がいくら否定の言葉を彼に投げかけても、きっと彼は折れないのだろう。彼の身柄を最終的に左右させているのは私だ。つまり、いくら彼が折れなくとも私はそれを無視してこのまま遠ざかる事だって出来る。しかし、彼の眼を見て言葉を聞いて、そんなことが出来る程私は非道ではなかった。
「どうなっても知らないですからね!」
彼は"絶対にその類ではない"と言った。きっと生半可な自信などから来ている言葉ではないのだろうと、彼の今までの振る舞いから自然と分かる。そして私は彼の言葉を信じて、自らの命をも危険に晒す可能性がある選択を取った。生まれたての私なら到底出来ることじゃないだろうな、と自嘲した。
両舷第一戦速。決して警戒を怠ることなく、且つ非常時に備えある程度先に速度を上げておく。この行動を取るという事は、一見彼を信頼しきっていない事を意味する。しかし私にそんな冷徹な考えは一切無く、とにかく最善を尽くしておきたいという一心で取った反射的行動だった。勿論、彼には両方とも知る由のない葛藤なのだが。
霧の中、彼の指す方向へ進むに連れ、徐々にその存在が少し鮮明になってくる。その大きさや色から、どうやらそれは島の様だった。
「一先ず上陸します。海も荒れてきていて、これ以上は安全に航海出来ません」
天候も波も状況も、全てにおいて良くない。自分一人であれば最低限航海出来るかも知れないが、今は少年がいる。彼はこの島を見えないながら、何かを感じ取って当てたのだ。きっと何かあるのかも知れない。
少年の方を見るが、特に反対の意は無さそうであった。そのまま朧気な島目指して足を進ませた。
どうやら潮位が上がっているようで、砂らしきものが見当たらない。そのまま土の地面へ足を乗り上げることにした。
やっとの思いで少年を降ろす。まだ完全に安心は出来ないが、一先ず辿り着くことが出来た。安堵の息を漏らしながら少年を見ると、気分の悪そうな顔をしている。流石にこんな荒波の中を進めば、常人では間違いなくこうなるだろう。背中を擦りながら辺りを見回すと、前方遠くに建物が見えた。かなり倒壊している様子で、人が居そうには思えない。そのため、一度そこを目指すことにした。
覚束ない足取りの少年を励ましながら、やっとの思いで辿り着いたそこはどこか既視感がある。既視感があるというものの、似ても似つかない風貌なのだが、それは鎮守府の様を保っていた。
鎮守府はかなり小規模で、なによりあちらこちらが崩れてしまっている。瓦礫の風化具合から、一昔前に建てられたものの様だ。適当な雨を避けれそうな場所へ、少年を座らせた。穴だらけで風まではダメそうだ。
彼が感じ取ったのは、鎮守府のことなのだろうか。提督というのがそんなことをできるのかなんて微塵も知りえないが、彼がここを指し、そこに鎮守府があった以上、なんらかの関係性があるだろう。本当であれば少し散策をしたいが、少年を置いていくわけにはいかないので留まることにする。
「大丈夫でしょうか?」
「なんとか……大丈夫です……」
そういう彼の顔は相変わらず優れない。何かしら別の事が絡んでいるのではないか。と思ったが、口元を抑えている辺りそれは杞憂の様だ。とはいえ少年の容態が優れないのは真実であるので、彼の隣へ添う様に座った。
焦りのあまり、私は色々な事情をとばして彼を連れて来てしまっている。例えば、彼には帰るべき家があるだろうし、学校もあれば生活がある。また、私は自分自身の説明を全くもってしていないし、明かしたといえば艦娘であることだけだ。彼の体調が良くなれば、その辺りの謝罪と説明を追ってすべきだろうと深く自省した。
何気なく彼の方を見やれば、どうやら既に睡眠に入っていたようだった。私は心の中で彼に大きく謝罪しながら、起こさないよう担ぎ上げた。こんな風の通る場所で寝るなんて衛生的でない。それもまた私のせいであるのだが。
一先ず奥へと進んでゆくが、真面そうな所が全くない。大抵壁が無かったり雨漏れしていたりで、真面に居座れそうにない。半分ほど壁ごと崩れている階段の上り、二階を漁ることにする。すると、真面な部屋はすぐに見つかった。
恐らくそこは、一般的に執務室だと言われる場所の様だった。ただ内装がカビや風化で一目では分からない。恐らくソファー”だった物”のホコリを払い、そこへ少年を寝かせた。
罅が入ったガラス越しに空を見るが、一向に雨はやみそうにない。自分も休憩しようと振り返った時、何かが視界の中を動いた。
それは少年のソファーの後ろへ隠れたようで、いくら待てど出てこない。そのため意を決して艤装を構え、近づく。少しずつソファーの死角がなくなって行き、ついにすべてが見える時。そこに正体は居た。
そこにいたのは、妖精だった。それがこの鎮守府のものであるのか、それとも彼のであるの分からないが、敵対する様子は無かった。ただ怯えている、そんな様子だった。
私は攻撃する意図がないことを示すため、艤装を消す。幾分か怯えは無くなった様だが、妖精は変わらず動かないままであった。それ以上私はどうにもできない。私はその妖精の事を極限まで気にしていない素振りをし、ソファーへ腰かけた。妖精との耐久戦が始まる。
結果は私の敗北であった。自身も心身を疲労していたのか、抑えきれない眠りが私を襲う。気力を振り絞り起きていようとするが、やはり耐えることはできなかった。
もっと伸びていいはずなんだけどなぁ?
有難いお言葉過ぎる…!
けど最近リアルが忙しかったりで優先順位が最下位辺りまで落ち込んでいるので、当分更新出来ません…ゴメンナイ。
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