2020-03-09 18:08:22 更新

概要

前に書いた没作品。続きはないです。


魔法大陸アインシュカ


ここは魔法と呼ばれる魔力を駆使した不思議な現象を起こすことができる魔法使が多く存在する世界。


その力は凄まじく魔法無しとありでは戦闘力の差が明らかとなり、すべての優劣は魔法の才によって決まる。


この魔法が絶対の世界で、1人…少女の物語が始まる。


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魔法大陸アインシュカ

王国ゼノギア 城下町


クレハ「う…うぅ…」


私の名はクレハ。やっとの思いで辿り着いたこの国で私は…人混みに酔っていた。


クレハ「もうダメ…おうち帰りたい…」


別に人が苦手なわけじゃない、けど私の住んでたところは超も超がつくど田舎…すみません盛りました。ほぼ山奥の限界集落です。


そんなところに住んでたものだから人との付き合いが絶望的に足りていない。人との付き合いなんてお母さんくらいしかないもん!


でも友達ならいっぱいいました。もういっぱいもいっぱいです。もふもふで尻尾をふりふりしてて後ろからついてくるんですよ、かわいいでしょ。


どんな人かって?はは、友達は人とは限らないんですよ…?


通りすがりのおじさん「大丈夫かいお嬢ちゃん?」


クレハ「はひっ!?」


声をかけられ慣れてないせいかうわずってしまいました!恥ずかしい…!


クレハ「大丈夫です!お気になさらずに!」


通りすがりのおじさん「あ、そう…気をつけるんだよ?」


クレハ「はひ…」


ああ、どうして私は人と喋るのが苦手なんでしょうか…いや、原因はわかりきってはいるんですが。


人と話そうとするとすごく緊張してそれどころじゃなくなっちゃうんです…もういっそみんな犬みたいだったらいいのに。


目つきの悪い人に睨まれた日にはその日はベッドの布団から出れません、枕が大濡れになってしまいます!大洪水です!


…はっ!こんなこと考えてる場合じゃない!


私は遊びにここに来たんじゃないんです!ここに来た理由は…


「おい、あの有名なアマリリス魔法使団が団員募集してるってよ」

「へへ、俺面接にいってみよっかなー?」

「お前弱っちぃから無理だろ」

「んだとこら!」


いい情報を聞きました。そうこの会話を聞くに私は…アインシュカ大陸各地にある魔法使団に入るために!上京してきたのです!はっはっは!


クレハ「……こほん」


まぁ早速その有名と言われるアマリリス魔法使団と呼ばれるところにいきましょう。有名というのならば大手のはずです、きっと私が活躍していけば有名人になれるかもです、ふふ。


路上に貼られている貼り紙を見て場所を確認です。ふむふむわりと近そうですね、ここまで来た人混みの道を戻って……


クレハ「……」


無事着けるか不安になりました。


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クレハ「うぷっ…死にそうです…」


無事着けました。人混みの中は恐ろしいです、生きた心地がしませんでした。


それにしてもここが使団施設…


大きな建物です。まるでお城みたい。

入り口の門は開いておりその両側に1人ずつ門番がいます。あの人たちも魔法使なのでしょうか。


クレハ「あの、すみません」


門番の男「ん?ああなんだお前もか。入っていいぞ」


クレハ「へ?」


門番の男「どうせ団員募集の貼り紙みてきたんだろ?」


クレハ「そう、ですね。よくわかりましたね」


門番の男「ま、もう何人も来てるからな。そろそろ締め切り時間だから早くしたほうがいいぞ」


クレハ「はい、ありがとうございます!」


そのまま門を通してもらって中に入ります、中は…なんというのか、大きい酒場とでもいうのでしょうか。とても賑やかでした。


団員「はーい、団員希望の方はこちらねー」


団員のお兄さんが誘導してくれています。ついていけばいいのでしょうか。


何人かいる希望者と一緒についていき待合室みたいなところに案内されました。


団員「それじゃ1人ずつ審査していくから、呼ばれるまでここで待っててねー、んじゃ君から」


男「うっす!」


団員と男は部屋を出ていきました。審査ってなにするんでしょうか、好きな食べ物とか聞かれるんでしょうか。


ちなみに私の好きな食べ物はお母さんが作る山菜スープです!


待つこと数十分程度でしょうか、団員の人がドアを開け私の目をみて手招きをしています。どうやら私が最後のようです。


団員「次君ね」


クレハ「はひ…」


また間抜けな返事をしてしまいました…お母さんなら大丈夫なんですけど…人間怖いです。


団員さんに案内され先ほどとは違う部屋に通されます。審査場といったところでしょう、部屋には待合室と同じようにイスがあります。が、すでに1人が座っていました。


団員「マルス団長、これが最後の1人です」


マルス「ご苦労さま」


金色の髪が特徴的な比較的若く見えるお兄さんでした。てか団長って…確か使団で1番偉いんじゃなかったっけ?


マルス「君も、座りなよ」


クレハ「は、はい!」


団長さんと対面の椅子に座りました。すごく緊張します。


マルス「君さぁ」


団長さんが私をみてため息混じりの声を出しながら尋ねます。なんでしょうか、私なにか失礼なことでもしちゃったんでしょうか…


マルス「ずいぶんと弱そうだね、どこから来たの?」


クレハ「はい!?」


いきなり弱そうと聞かれました。失礼な人ですね、怒っちゃいますよ?


クレハ「えっと、東の森の…」


マルス「ここの東…?スぺシオの街か」


クレハ「いえ、その先の平原の…」


マルス「あーラーズバルトね、結構田舎だね」


クレハ「更にその先の山奥から来ました!」


マルス「……」


クレハ「……」


なんでしょう、団長さんが黙ってしまいました。気まずい沈黙です。


マルス「…はぁ、まぁ君がどんなやつだろうと別にいいけど」


クレハ「どういう意味ですか…」


なんか私の住んでたところをバカにされたような気がしました。なんでかわからないですけど。


マルス「で?なんでここの募集にきたの?」


クレハ「はい、私魔法使になりたくてここまできました!有名な使団に入れば私も有名人になれるかと思って!」


マルス「ふーん…」


なんか興味なさげに聞いてます、そっちが聞いてきたのに酷くないですか?


マルス「それで、活動歴は?」


クレハ「かつどうれき?」


マルス「募集内容ちゃんと読んだ?うちの募集条件は最低でも野良でCランク以下の魔物を討伐した実績があること」


oh...そんなの見てませんでした。というかCランクってなんですか?魔物はわかりますけど…というか


クレハ「魔物は…狩ったことありません。それに勝ったこともないです、あはは」


マルス「…は?」


クレハ「うっ」


団長さんの目が鋭くなりました、怖いです。募集条件見ずにきたのは確かに私が悪いですけどそんなに睨まなくてもいいじゃないですか!泣いちゃいますよ!お布団で!


マルス「これだから田舎者は…あぁそれ以下だったか」


クレハ「む…」


今のは聞き捨てなりません。田舎者だからなんだというんですか、都会暮らしがそんなに偉いんですか?そういう人私嫌いです!


マルス「はぁ…で、魔法は?何使えるの?」


クレハ「はい、これです!」


手から蒼い炎を出してみせました。手で燃えているそれは通常の赤い炎とはまったく違う…と、お母さんが言ってました。


マルス「珍しい色の炎だね」


団長さんは一瞬目を大きくし驚いたようでした。珍しかったんでしょうか。


マルス「ん?その炎…」


クレハ「??」


マルス「全然熱さ感じないけど、何?」


クレハ「えっと、そうなんですよねー。私の炎全然燃やすことできなくて、あはは」


マルス「……」


なんでしょうか、更に団長さんの目が鋭く…というか哀れんだ目になってる気がします。


マルス「困るなぁ…魔物討伐の経験もない、戦闘に役立たない魔法。君魔法使舐めてるの?」


クレハ「そ、そんなこと…」


マルス「とにかく論外だから、もう帰っていいよ」


クレハ「……」


つ、冷たい…都会の人間はこんなに冷たいんですか?人の心を持っていないんですか?犬の方が何倍も暖かいですよ??


そんなことを言われ私は怒る気にもなれずとぼとぼアマリリス魔法使団を後にしました。


もうヤケです、この王国ゼノギアにある残り

の魔法使団に片っ端から申し込みにいきます!


待ってるがいいです、必ず私は有名な魔法使になってやります!あのアマリリスの団長さんも私を引き入れなかったことを後悔させてやりますよ!はっはっは!


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3日後…

王国ゼノギア 首都バルロッサ


クレハ「はぁー……」


あの日から3日が経ちました。現在私は大広場のベンチに溶けたスライムのようにだらしなく腰掛けています。


そう、あれから私は各地にある名のある魔法使団に入ろうとしたのですが…


「なにその魔法、やる気ある?」

「うちは子守専門の使団じゃねーんだよ、帰れ」

「ここ男限定の使団だから、無理」


などと…どこも入れてくれる気配がありません!なんなんですか!そんなに経験がなきゃダメなんですか!?魔法が弱っちぃとダメなんですか!?いや魔法は弱いとダメですね!すみません!


そう…全ては私の魔法が弱いせいなんです。


蒼く灯る炎。物珍しいようですがこの炎の実態は温度は外気と差がない、物を燃やすことができない、という炎にあるまじき利点がまるでないんです。自分でもびっくりです、なんなんですかこの魔法は!


…でも、この魔法を持って嫌だと思ったことは一度もありません。なぜならこの魔法は…お母さんからもらったものだから…


クレハ「……よし」


悔やんでる暇はありません。よーし、今日は南の方にでも行ってそこの名のある魔法使団に…


クレハ「うん?」


通りを歩いていると道端に倒れてる人を見つけました。これは大変です!


急いで駆け寄り安否の確認をします、死んでないですよねこれ…?


「ぅ…」


クレハ「は、よかった。あなた大丈夫ですか?」


倒れていたのは私と同じくらいの少年でした。短い黒髪でやんちゃそうな男の人です。


「……ら」


クレハ「え?」


「はら…へった…」


……どうやら空腹で死にかけのようでした。


クレハ「えっと、立てますか?」


「な…んとか」


クレハ「えっと、なにか食べます?」


「…いいのか?」


クレハ「えぇまぁお金ならありますし…」


「お前、いいやつだな」


私はこの少年を連れて飯処に行きました。席に着き適当に注文していきます。


やがてご飯がテーブルに並べられ少年は目を輝かせて次々と食べていきました。底無しの胃袋とでもいうのでしょうか、大皿を何枚も平らげています。


私自身あまりお腹が空いていなかったので暇つぶしに彼に話をかけます。あぁ、そういえば…


クレハ「名前なんて言うんですか?」


「んぐ?ごくん…そういや名乗ってなかったな」


ライガ「俺はライガって言うんだ、よろしくな。えーっと…」


クレハ「私はクレハって言います」


ライガ「そっか、助けてくれてサンキューなクレハ。危うく朽ち果てるところだったわ」


クレハ「それは危なかったですね。助けられてよかったです」


クレハ「…じゃなくて、何故あんなところに?」


ライガ「あー、それな。とある魔法使団を探してたんだが家に金を忘れちゃってな」


ライガ「途中で力尽きた」


うわー、すごくドジっ子なようですねこの人。私が通らなかったらどうなっていたんでしょうか。


クレハ「それで、どこの使団を探してたんですか?」


ライガ「んーとな、えーっと確か…ほ、ほ…」


ライガがほ、ほ、となんだか梟みたいな感じになってます。ちょっとおもしろいです。


ライガ「忘れた、まぁそのうち思い出すだろ」


クレハ「か、軽い…」


ライガ「それよりクレハはなんでこんなとこに?」


クレハ「私ですか?私は魔法使団に入るために上京してきました!それで有名になるために入団できるところを探してたんですが…」


ライガ「あー…」


ライガがなにかを察したような目をしています。うぐ、なんか心に来ますね。


クレハ「そんな目をしないでください!たまたま…そう、たまたま調子悪くて落ちてるだけで…うぅ」


ライガ「お、おう。まだなんも言ってないけどな?」


若干気まずそうにしながらも黙々と食べ進めていきます。この人の胃は無限なのですか?


っと、そろそろいい時間ですね。次の使団にいくとしましょうか。


クレハ「じゃあ注文した分のお金は置いておきますね。もしこれ以上注文しても後は知りませんからね」


ライガ「おうサンキューな。いつか借りは返す!」


クレハ「ふっ、今度会うときは私有名になってるかもしれませんよ?」


ライガ「そうか」


なんとこの男適当にスルーしやがりました。後で泣いてすがってもサインあげませんからね!


ライガ「あ、そういえば最近この辺で…」


なにかいいかけていたようですが私はそそくさと店を後にしてしまいました。


ライガ「行っちまったか…ま、大丈夫か」


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王国ゼノギア 南方

アールヴの街


首都バルロッサから南方に進んでいくとこれまた大きい街がありました。どこも首都周辺の街は大きいですね、うちの森山よりは狭いですけど。


けれど人の密集度が桁違いです、あっそもそも私の住んでたところはほぼ人いませんでした、えへへ。


さて、来たのはいいんですがここの使団はどこでしょうか…確かこの街の魔法使団の名前は…


「そこのお嬢さん、お困りかな?」


クレハ「ふぇ!?」


いきなり声をかけてきたのは男の人でした。ここにきてからよく男の人に話しかけられます。見た目は強面で少し怖そうです。


でもせっかくです、この人に聞いてみましょうか。


クレハ「そのぉ、ここの街の魔法使団を探しているのですが」


「あぁ、コスモス魔法使団ね」


クレハ「そうそこです!どこにあるかわかりますか?」


「えぇっとね…あーそうだ、よかったら案内しようか。俺そこの魔法使なんだよ」


クレハ「いいんですか!?」


「構わないよ、おっと自己紹介が遅れたね」


ズッカス「俺はズッカス、よろしくね」


クレハ「私はクレハです、よろしくお願いします」


よし!これで探し回らなくて済みそうです。親切な人がいてよかったぁ。それにそこの魔法使らしいですし愛想よくして少しでもポイントあげときましょう!


ズッカス「くく…」


クレハ「??どうしましたズッカスさん」


ズッカス「いやいやなんでもないよ、行こうか」


妙な違和感を抱きつつもズッカスさんの後をついていきますが何故か街の外に出ようとしました。


クレハ「えっと、こっち外ですけど?」


ズッカス「あぁこの街の使団は外にあるんだよ」


クレハ「そうなんですか」


今まで行ってきたところは全部街の中にあったんですけど外にあるのもあるんですねー。


そのままついて行き数十分くらい歩いたところで断崖絶壁の上に建物が見えてきました。


使団施設でしょうか、今まで見てきたのが大きい建物ばかりだったので迫力がないですね。


ズッカス「うちの魔法使団は他と比べると小さいけど実力はあるから、さぁ中に入って」


クレハ「はい、失礼します」


言われるがままに中に入って行き用意された椅子に座ります。なんでしょう、この建物の中に入った途端に目がチカチカするようか気がするんですけど気のせいですかね?


辺りを見渡すと使団員でしょうか、数人なにやら作業をしていました。


「おっ、ズッカスさんまた連れてきたんですか」


ズッカス「この子がうちに用があるみたいでね」


「へへっ、そうですかい」


なにやら目つきの悪い男の人がズッカスさんに話しかけているそうです。あれ、お母さんから聞いたことがあります。えっとあれです、チンピラですチンピラ!


ズッカス「しばらくここで待っててくれるかな?」


クレハ「え?はい、いいですけど…」


そう言い残してズッカスさんは奥の部屋へと

行ってしまいました。


そういえば私がここに来た理由言ってませんね、まぁそれはまたズッカスさんが来てからでいいか…


数分、また数分と経ちましたが一向にズッカスさんが来る気配がありません。

正直暇です、だんだんうずうずしてきました。


なにがって?それは…


クレハ「……」


ううううもう我慢できません、遅いズッカスさんが悪いんですよ!私は探検させてもらいます!


使団施設内ならうろうろしてても大丈夫ですよね?大丈夫なはずです!そう思うことにします!


私は席を立ち上がり1番近くにあったドアに手をかけ進んでいきます。幸い誰にも見られてはいませんね、ふふ。私の山で鍛えあげてきた狩をする際の隠密(仮)が役に立ちました。


ふむふむ、やはりあまり広くないようですね。廊下が少し寂れてますしこっちはあまり使っていないんでしょうか?


廊下の突き当たりに差し掛かり横を見ると地下へ続く階段がありました。この下になにかあるんでしょうか。


訓練施設とかでしょうか、わくわくしますね。


階段を降りていった先にドアがありました。ドアを開けてさらに先に進みます。


広い空間に出ました。なるほど断崖絶壁に建ってた理由はこの地下室ですね。上の建物が小さい分この下はとても広く作られているようです。


ですが、その先にあるもので驚愕しました。


これは…牢屋?


なんだか薄味悪いです、なんでこんなところに無数の牢屋が…


流石に人は入ってないと思いますが…


クレハ「……」


入っていなければ、よかったんですけどね。


牢屋に目を向けると中に人が入ってました。驚きです、なんで人が入っているんでしょうか。


それも見渡すとどれも若い女性ばかり。全員眠っているのでしょうか。罪人…にしてはこれは偏りすぎです。


そもそも魔法使団が罪人を牢にいれるなんてことはありません。なぜならそれは騎士団の仕事ですから。


ならばなぜこの人たちは牢屋に…


クレハ「あのー、もしもーし」


「……」


声をかけても返事がありません。ですが寝息は微かに聴こえているので死んでいるということはなさそうです。


ですがこれはなんなのでしょうか、なにか良くないことに巻き込まれているような…


「なんでこんなところにいるのかな?」


クレハ「ひぃっ…!?」


後ろから声がし咄嗟に振り返ります。そこにいたのは…ズッカスさんでした。


ズッカス「チッ…どうなってんだよまったく…なんで寝てないんだこいつ」


なにやら最初会った時とは雰囲気が違うようですね。こんな悪そうな声だったでしょうか


いえ…違いますね、これが素なのでしょう。


クレハ「これはあなたがやったのですか?」


ズッカス「…だとしたら?」


クレハ「許せませんね」


ズッカス「そうかよ」


そう言うとズッカスが腰にある鞘から剣を引き抜きました。目撃者は排除する、というところでしょうか。


ズッカス「じゃ、死んでくれや」


クレハ「……!」


私も徐ろに手から青い炎を出します。何度も言いますがこの炎には熱さは感じませんしなにも燃やせはしません。


ズッカス「ほう…そういえば魔法使志望だっけか?」


私が魔法を使ったことに多少驚いているのか警戒心が強まった気がします。はたしていつまでハッタリが続くか


クレハ「1つ質問です、ここは本当に魔法使団なのですか?」


ズッカス「くく…お前はそう見えるのか?」


クレハ「見えませんね」


ズッカス「だろうな…それが答えだ!」


クレハ「なっ…!」


そう言うとズッカスはこちらに素早く近づき剣を振り下ろしました。咄嗟の反応でなんとか躱しましたがとても危なかったです。


ズッカス「ただ炎をだしただけで俺が怯むと思ったのか?魔法使なんて吐いて捨てるほど殺してきたぞ?」


クレハ「くっ…」


もう間違いないですね、こいつは悪人です。とても赦してはおけない。それにこいつを倒さないと牢の子たちがどうなるか…


ズッカス「それに今のでわかったしな」


クレハ「…なにがですか」


ズッカス「お前の魔法が使い物にならないってことがよ」


クレハ「!!」


バレた…?これは少しまずいかもしれません。


ズッカス「もし使えるなら俺が近づいてきた時点で炎を放てばいいだけのこと。それをしなかったってことは炎を打てるほどの技量がないか幻影系の魔法で炎を見せているのかそれとも…人に魔法を使うのにビビっちまってるか」


クレハ「……」


ズッカス「…その目、どれでもないのか?おかしいな」


クレハ「……」


ズッカス「まぁいい、そんなカスみたいな魔法しか使えないんじゃどのみち、お前は勝ち目なんてねぇんだよ!」


ズッカスが再び剣を振るいました、剣はそのまま上から振り下ろされ私の顔を目掛けて狙ってきます。


…この人には、1つ訂正してもらいましょう。


私は目の前に小さな炎を壁を作りズッカスの振った剣を…受け止めました。


ズッカス「なにっ!?」


驚いたのも無理はないでしょう、なんの変哲もない炎が、剣の攻撃を止めたのですから。


ズッカス「なんだこの炎は…しかもこの炎、熱くない…?」


クレハ「そうですね…あなたの言う通り、この魔法であなたを倒すことは出来ません」


私は炎を拳に纏います。そう、私の魔法では倒すことはできません。ですがその弱点を弱点のままにしておくほど…私はバカじゃありません。


クレハ「私の魔法をカス呼ばわりは、訂正してもらいます。…覚悟してください」


ズッカス「なんだその構えは…武術の真似事かぁ?」


クレハ「私は…魔物に勝ったことがありません」


ズッカス「は?」


いきなりなにを言い出すんだこいつ、みたいな顔をしていますね。当然ですけど。


ズッカス「ははは!なんだそれ!いよいよ雑魚じゃねぇかよ!」


ゲラゲラとズッカスがお腹を抱えて笑ってきました。すごくムカつきます。


クレハ「けれど、負けたこともないんです」


ズッカス「はは…はぁ?」


またまた何をいっているのか理解できないのか困惑しているようです。


クレハ「私に攻撃力はありませんが…私を傷つけることも、あなたには出来ませんよ」


ズッカス「ははは!寝言は寝て言えや!!」


クレハ「…っ!!」


ズッカスの振るう剣を悉く受け流しそれに対して段々とイラついて来たのかズッカスの表情が変わっていきます。


ズッカス「くそ!くそ!なんなんだその炎は!?」


クレハ「お母さん自慢の炎です!」


この炎は確かに熱くないし、何も燃やせないし炎としての機能がまるでありません。けれども…


何人たりとも通さない、砕かれることのない変幻自在の無敵の鎧。


全てを防ぐ蒼い炎…それが私の魔法です!


ズッカス「くそぅ…あの炎まじで厄介…ん?」


ズッカス「よくよく考えればバカまじめに相手する必要ねぇじゃねぇかよ!」


クレハ「へ?」


ズッカス「おい!牢の鍵開けろや!」


チンピラ「へい!」


チンピラの1人が牢屋の鍵を開けて、中にいた女の人を抱き抱えてきました。それをズッカスが乱暴に捕まえ人質を取るようにこちらを見てきました。


クレハ「なにをするんですか!?」


ズッカス「簡単なことだろうが、てめぇに攻撃できないんなら攻撃できるようにすればいい。その魔法を解け、さもないとこの女がどうなるかなぁ?」


クレハ「ぐぬぬ…悪人面してるからってそれは卑怯ですよ!」


ズッカス「悪人面は関係ねぇだろーが!喧嘩売ってんのか!?」


はわわ、怒らせてしまいました。これ以上刺激すると女の子が危なそうです。


仕方ありません、魔法を解くしかないようですね。


ズッカス「そうそう、物わかりがいいやつは好きだぜ?」


クレハ「私はあなたが嫌いですけどね」


ズッカス「へへ、いつまでその余裕が続くか…おい、そいつ好きにしていいぞ」


チンピラ「まじですかい?それじゃあ遠慮なく」


チンピラの1人が私に近づき欲望の眼差しをしてきます。これ、なんかまずい感じがします。


ズッカス「おっと、抵抗はすんなよ?この女の命が惜しかったらなぁ??」


クレハ「くっ…」


ズッカス「確かにお前は魔物には負けなかったかもしれないが、人間ってのは賢いんだよ。頭を使えばお前なんて相手にもならねぇっての!ははは!!」


クレハ「…随分と頭の悪い使い方ですけどね」


この一言がズッカスの琴線に触れたのか血管が浮き出て大層不機嫌な表情になりました。


ズッカス「…もういい、そいつをめちゃくちゃにしろ」


チンピラ「うっす!へへ、ちょっとガキくせぇけど我慢してやるよ」


クレハ「い、嫌…」


服を掴まれ脱がされそうになります。軽い抵抗はしますが人質の女の子のことを考えると、それも無念に終わります。


私は自惚れていたのでしょうか。決して自信が強いと思ってはいませんでしたが、たったこれだけのことでなにも出来なくなるなんて…


チンピラ「うへへ!いただきまーす!!」


欲望に塗れたチンピラが眼前に迫りもう逃げ場がありません。


嫌だ…誰か…


クレハ「だれか…たすけて…!」



チンピラ2「ん?なんだおま、え"ぇ"ん"!?」


ズッカス「あ?」


チンピラ「え!?なんすか!」


クレハ「…え?」


助けを懇願した途端に、出入り口を見張っていたであろうもう1人のチンピラが突拍子もなく吹っ飛んでいきました。


もちろんこの場にいるものは全員咄嗟のことで唖然としています。


すると出入り口からチンピラでない人影が近づいてきます。その姿を、私は見覚えがありました。


黒髪で、やんちゃそうな男の子…


ライガ「どうやらここで当たりか?」


あの時空腹で倒れてた人、ライガでした。


ズッカス「な、なんだてめぇは!?」


クレハ「ライガ!!」


ライガ「は?俺の名前なんで…って、あの時の恩人!?なんでこんなところに…というか!前!前はだけてるぞ!?」


クレハ「へ…あ!?」


その言葉を理解し、チンピラにめくられた服を即座に戻しました。


クレハ「すすすすみませんこんなもの見せてしまって」


ライガ「ああいや別に…むしろ…」


クレハ「む、むしろ?むしろなんですか!?別に好きで脱いでたわけじゃないんですからね!?このチンピラに無理やりされたんです!」


チンピラ「え、チンピラ…」


チンピラはチンピラといわれたことがなにやら府に落ちないみたいな顔をしています。チンピラ顔なのに。


ライガ「無理やり…やっぱそうか」


さっきまで赤かった顔が戻り真面目な顔つきになります。


ライガ「お前らが反魔法使団ホオズキだな?数々の若い女を拐い奴隷市場へと売り払う悪徳使団…情報を頼りにここら辺を漁っていたが、まさか町外にあったなんてな」


ズッカス「俺たちのことを知ってるってかよ」


反魔法使団!?それって違法な魔法使団じゃないですか!?私騙されてここに来ちゃったんですか!?バカですね私!


ズッカス「ふん、だけどなんだってんだ。ガキ1人になにができる?おい、やっちまえ!」


チンピラ「へい!さっさとお前を倒して俺はこの子と楽しむんだよ、邪魔しやがって!」


チンピラは剣を抜いてライガに飛びかかりにいきました。でもライガは一歩も動かずその場に立ち尽くしています。


チンピラ「あひゃひゃ!びびって動けねぇのか?じゃあそのまま大人しく死…」


チンピラがそう言いかけたところで大きな音が響きました。見てみるとライガがそのチンピラを顔から地面に叩きつけていました。


ズッカス「な、なんだ今のは…」


ズッカスも驚いています。かくいう私もです。チンピラが飛びかかっていったと思ったら瞬きする間に勝負がついていたんですから。


ただ一言いうならば…速すぎて見えませんでした。


ライガ「で?次はお前か」


ズッカス「ぐうう、くそ!上の奴らはなにしてんだ!」


ライガ「ああ、全員ぶっ飛ばしといた」


ズッカス「は!?」


私が見た限りでも20人以上はいた気がするんですけど…ライガって実はすごく強いんですか?


ズッカス「くそが…おい!それ以上近づくなよ?この女がどうなってもいいのか!?」


ライガ「…!」


流石にライガが足を止めました。けれど焦っている様子は1つもありません。


ズッカス「これ以上近づくんならこいつを殺すぞ。それは嫌だろう?なら…」


ライガ「いいぞ、別に」


ズッカス「は?」


クレハ「へ?」


不本意ながら私もズッカスと同じ反応をしてしまいました。だって当たり前じゃないですか!さっきの発言、人質を見捨てるってことですよ!?


ズッカス「お前、正気か?人質がどうなってもいいってのか?」


ライガ「そうは言ってない、お前じゃ無理だって言ってんだ」


ズッカス「…随分と舐めてくれるじゃねぇか。俺に人を殺すのは無理だって?」


ライガ「そうだ」


ズッカス「ふふふ…ふふふざけんなぁぁぁぁ!?」


ズッカスが剣を人質に向けて振るおうとしてきます。咄嗟のことでした、このままじゃ女の子が殺され…!


ズッカス「ぶへぇ!!?」


と思いきや私の横へなにかが飛んでいってしまいました。それは壁にぶつかり倒れたようです。


前方をみるとさっきまでズッカスがいたところにライガがいて人質を抱えていました。


わ、私…なにが起きているのかいまいち理解出来ません。


でも状況から察するにさっき横を通ったのは…ズッカスで間違いないでしょう。


ライガ「クレハ、この子を頼む」


クレハ「ふへ!?は、はい!」


あの一瞬で間合いを詰めてズッカスを殴り飛ばしたとでもいうんですか?とてもじゃないけど速過ぎる…!


クレハ「ライガ…一体何者なんですか?」


ライガ「俺か?俺は…」


ズッカス「っざけやがって…ふざけやがってぇぇぇ!!!」


殴られたことで相当頭に血が昇っているようです。


ズッカス「調子こいてんじゃねぇぞ!クソガキがァァァ!!!」


するとズッカスの足元から魔法陣が現れみるみるうちに姿を変えていきます。全身が膨れ上がり、毛皮が増殖され見るからに獣の姿へとなってしまいました。


これは聞いたことがあります。

魔獣化…自らの身体を魔物へと変換する魔法です。利点は言わずもか戦力の強化。人間の身体能力を遥かに上回ります。


ズッカス「お前は絶対に叩き潰す!ゆるさねぇぞ!」


ライガ「身体はでかいのに言うことは小物だな」


クレハ「挑発しないでください!?あれは無理です!逃げましょう!」


ライガ「は?倒すけど」


なんでそんなに自信満々なんですか!?あーわかりました!さてはバカなんですね!?


クレハ「いいから早く逃げ」


ズッカス「おせぇ!!」


ライガ「……!」


クレハ「きゃ!?」


魔獣化したズッカスが私には目もくれずライガのいた場所目掛けて拳を振るいました。


その際の衝撃で地面が割れて、揺れたような気がしました。


なんて破壊力…これが魔法使の力なんですか?


ズッカス「はっは!呆気なく潰れたな!これで…」


ライガ「これで、なんだ?」.


ズッカス「ぎょえぇー!?」


私も一瞬やられたと思いましたが土煙が晴れた時すでにズッカスの後ろにライガの姿がありました。


速すぎです、もうびっくりしかしてません。


ズッカス「くそが!ほんとになんなんだよお前!!」


ライガ「俺か?俺はだな」


ライガが拳を握ると何やらバチバチと音がしてなにやら光出しました。あれって…雷?


ライガ「魔法使団アイリスのライガだ」


ズッカス「魔法使団アイリスだと!?」


アイリス…聞いたことないですけどこの驚きよう、まさか有名な魔法使団!?


ズッカス「聞いたことねぇぞそんな魔法使団!」


クレハ「えええええ!!?」


思わず声をあげてしまいました。いやだって全然聞いたことないって、どういうことですか!


ライガ「そりゃそうだろ、最近造ったばっかだし」


ズッカス「新設だと…?なのにここまで強いやつが…」


ライガ「安心しろ、すぐに有名になるからよ」


ズッカス「はっ、その前にお前はここで死ぬけどなぁ!!」


ズッカスが再び攻撃を始めました。次々とライガに拳が振るわれその度に地面が粉々に砕かれていっています。


ここにいると危険なので少し離れなければ…


ズッカス「くそっ、こいつ!なんであたらねぇんだ!!」


あんなに攻撃しているのにも関わらず、ズッカスの攻撃はひとかすりもしていないみたいです。


ズッカス「けど避けてばっかだといつまで経っても俺を倒せねぇぞ!!」


ライガ「…じゃあ、避けるのはやめるか」


ライガが動きを止めて拳に激しい雷を纏い始めました。それを好機と見たのかズッカスがこれまでにないストレートをライガ目掛けて振るいます。


ズッカス「潰れろォォォ!!」


ライガ「はあぁぁぁ!!」


お互いの拳同士がぶつかりあいその衝撃の余波でまたまた地面が割れていきました。もうめちゃくちゃですよこれ。


ズッカス「ぐおおぉぉ、バカな!?魔獣化した俺と互角の腕力だと!?」


ライガ「互角…?俺を甘く見るな…!」


ライガの雷が更に激しく音をたててズッカスの拳を押しています。


ズッカス「そんな!?この俺が、お、押され!?」


ズッカスの拳が弾かれ大きく体勢を崩してしまいました。その隙にライガが懐に入りました。


ズッカス「ま、待て…!?」


ライガ「雷王拳ッッ!!」


ズッカス「ぐべぇっ!!?」


ライガの拳が思い切り入りズッカスが吹き飛ばされ壁に大きな穴を開けて外に飛び出してしまいした。


…これは、少しやりすぎです!!


ライガ「……ふぅ」


でも、その姿はまるで…雷を纏った1匹の狼のようでした。


ーーーーー

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ーーーーー


クレハ「もう、やりすぎですよライガ」


ライガ「そうか?」


クレハ「そうですよ!地下牢ボロボロじゃないですか!壁に穴空いちゃって外見えてるし!」


ライガ「はぁ」


割と興味なさげに辺りを見渡しています。なんなんですか?私がおかしいんですか?


クレハ「もういいです…それよりこれからどうなるんでしょうか」


ライガ「俺の受けた依頼はこの反魔法使団の壊滅。それ以外のことは街の騎士団に任せる」


クレハ「そうですか…」


魔法使団を壊滅って…さらりとすごいこと言ってますよこの人。だってたった1人で壊滅させにきたんですよね?数十人もいる魔法使団相手に…


どれだけ強いんですかこの人は…


はぁーでもこれで振り出しに戻りましたね、また入れそうな魔法使団を探さなくちゃいけません…


クレハ「うぅ、憂鬱です…誰か私を魔法使団に拾ってほしいです…」


ライガ「…なら俺んところに来るか?」


私の言葉に反応してライガが声をかけてきました。


クレハ「おおお俺んところ!?なんですか!いいいきなりプロポーズですか!?嫁に来てほしいってことですか!?」


ライガ「ちちちげぇよ!?話の流れでわかれよ!」


クレハ「あっ、そういうことですか…」


び、びっくりしました…いきなり告白されたのかと。


クレハ「でもライガの魔法使団って無名なんですよね?」


ライガ「さっき言ったろ、造ったばっかなんだよ…だが、すぐに有名になってやるさ」


クレハ「なんなんですかその自信は…まぁライガが強いのはわかりますが」


ライガ「言っておくけどうちには俺より強いやつなんてまだ数人いるぞ?」


クレハ「えぇ!?」


そ、そんなことってあるんですか!?ライガより強いのが後何人も…確かにこの強さならすぐ有名になれるかもしれませんね。


ライガ「それに、無名から有名へと成り上がっていくほうが面白くないか?」


クレハ「無名から有名に…?」


ふむ…一理ありますね。


クレハ「そうですね…わかりました」


私は決意しました。0から積み上げていく…おもしろいじゃないですか。


クレハ「でも、私の魔法とても弱いんですけど…大丈夫ですかね?」


ライガ「強い弱いなんて関係ないさ、俺は…クレハに仲間になってほしいんだ」


クレハ「…!!」


…上京してきて、初めてそんなこと言われました。今まで散々断られてきたし、これからもそうなのかもしれない…そう思ってたから。


だから、私はここで選択します。


クレハ「わかりました。これからよろしくお願いしますね、ライガ」


ライガ「こちらこそ、よろしくな。クレハ」


ここから、この一歩から、私の夢が始まるんだ。









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