2020-03-14 17:46:07 更新

概要

オリジナルss 山越えの途中、とある種族に襲われた。


南東へ目指し馬車で移動中


バルロッサから旅立ち早1日、危険区域がある南東の山へとたどり着いた。ここら辺は街から離れるにつれて道も険しくなっており、開拓が進んでいないことが垣間見える。


騎士「申し訳ありません、私が送れるのはここまでです…ですが、本当に帰りはいいのですか?」


グレン「うんすごく助かったよ、ありがとう」


騎士「勿体なきお言葉です…では、お気をつけて」


グレン「そっちも気をつけてな」


約束通り山の前まで送ってもらい騎士にはそのまま帰ってもらうことにした。いつ帰れるかわからないし、なによりずっと待ってもらうのは気が引ける。


帰りは付加術でも掛けて走って帰るとするさ。


ナル「山登り…ごく」


ナルが眼前にある山を前にして固唾を呑む。これ以上だらしない神様にしないためだ、ここは限界まで我慢してもらおう。


グレン「じゃあ行くぞ」


ナル「う、うむ…大丈夫なのだ…帰ったらお肉…帰ったらお肉…」


変な自己暗示をかけ始めたな、それでほんとにいいのか?


まぁいいや、どんどん登っていこう。


山は木が覆い茂っていてまだ日が高いというのに妙に薄暗く感じた。標高自体はあまり高くないはずだから日が落ちる前には山を越えておきたいな。


いざとなったら付加術を掛けてさっさと越えてしまうか、でもなるべく魔力の消費を抑えなきゃな。なにがあるかわからないし。


ーーーーー


しばらく山道を歩き続け、峠を越えただろうか…だいぶ登った気がする。


ナル「はぁ…はぁ…し、死ぬのだ…」


ナルが今にも死にそうな顔でそう呟いた。汗がぽたぽた垂れておよそしてはいけない顔をしてしまっている。これは人前には見せられないな。


グレン「よく頑張ったな、よしよし」


ナル「うへぇ…」


頭を優しく撫でてやった。正直数分で根を上げるかと思ったのだが峠を越えるまで保たせるとは…意外とやれば出来る子なのかもしれない。


ナル「早くお肉…食べたいのだ…」


原動力が食欲なのがあれだが。


グレン「はいはいそれは帰ってからな。おんぶいるか?」


ナル「いるぅ、いるのだぁ!」


なんだか本当に子どもみたいだ。妙にうざったいのに放っておけない…これが親心みたいなものなのか?


ナル「マスター、おんぶー」


グレン「……」


ナル「あいただだだ!なんでほっぺ引っ張るのだぁ!?」


グレン「いや、ちょっとムカついて」


ナル「なぜなのだ!?」


人化したのは最近だがずっと共にしてきた相棒だしな、放っておけないのもそのせいだろ。


ナル「うぅ…いじわるなのだ…」


グレン「ごめんごめん」


そんなやりとりをしているとふと微かに気配を感じた。


ナル「む?どうしたのだ?」


グレン「……いや」


…視線を感じる、もちろん動物とかなどではない。

明確な意思を持った、生き物だ。


グレン「そこの木の陰、隠れてないで出てこいよ」


視線の感じた方の木へそう呼びかける。一応警戒心を高め剣に手を掛ける。


「……気配を消してたですが、なんでバレたですか」


グレン「あんたは…?」


身を潜めてた木の陰から大槌を持った少女が出てきた。その少女は素直にこちらのいうことに従い、目の前まで歩を進める。


栗色の髪をしていて体格はナルくらいだがそれに不釣り合いなほどの大槌を持っていた。そしてなにより目につくのは、頭に生えたうさぎ耳である。


グレン「あんた、獣人だな?」


獣人…魔族の中に含まれる姿は人で、頭に獣耳が生えている種族だ。この種の特徴は人間には到底身につけることのできない怪力を持つ。この小ささで大槌を持てるのもこの種が故だろう。


「…なんで知ってるですか」


なんだかさっきから警戒されてるような気がするんだが…おかしいな、俺の知ってる獣人はもっと穏やかなはず…


ロア「お前が…ロアの仲間たちを攫ったですか?」


グレン「攫った?なにを言って…」


ロア「ロアの仲間を返すです」


グレン「待て待て、言ってる意味がわからん」


ロア「とぼけても無駄です。ここに来た人間はお前しかいないです」


この子…ロアと名乗る少女はまるで仇を見るかのように鋭い視線を向ける。


仲間を攫った?よくわからないが身に覚えのないことで疑いをかけられるのは嫌な気分だな。


グレン「悪いけど俺はあんたの仲間は知らない」


ロア「ここまで言ってもシラを切るですか…しょうがないです」


ロアは持っていた大槌を構えた。

おいおいまじかよ…


ロア「白状するまで…痛めつけてやるです!」


大槌を持って真っ直ぐこちらに向かって走り出し目の前まで迫ってきた。


ロア「潰れろです!」


グレン「うわっ!?」


ナル「ぬわっ!?」


咄嗟にナルを抱き抱えロアの攻撃を避ける。大槌を地面に叩きつけた場所がいとも簡単に砕け散った。


獣人の怪力…久々に見たけどさすがだな。


ロア「ロアの攻撃を避けるなんて…」


グレン「まったく、なにすんだ危ないだろ」


ロア「うるさいです、早く仲間の居場所を教えるです!」


まったくこちらの話を聞く気がないようだ。大槌をまるで木の棒みたいに軽々と振り回して襲ってくる。


応戦するしかないようだ。


全身に付加術をかけて、ナルを抱えながらロアの攻撃を躱していく。中々当たらない様に苛立ちを覚えたのか更に詰めてきて大振りな一撃を放ってきた。


ロア「この!避けるなです!」


グレン「無茶言う…なっ!」


大振りの一撃に合わせて大槌の側面を蹴ってロアの体勢を崩した。


ロア「くっ…!このっ…!」


グレン「……!?」


だが体勢を崩したのは一瞬で、すぐに立て直し反撃を加えてきた。

俺は後方に下がりその一撃を難なく避ける。


ナル「うげぇ、くらくらするのだー…」


グレン「あっ、悪い。じゃあちょっとここで待っててくれ」


ナルを地面に下ろしてロアに向き直る。ナルを抱えながら攻撃を避けてたからな、無理な反撃が出来なかったがここまで距離を取れば大丈夫だろ。


ロア「…なかなかやるですね。ロアも本気でやるしかないです」


グレン「なぁ、何か誤解してないか?一度話合って…」


ロア「黙るです!」


もうなんだよこの子全然話聞く気がない。これはちょっと冷静にさせるためにこっちもやるしかないか。


しょうがないな…


グレン「…っ!!」


ロア「なっ!?」


身体強化した動きで素早くロアに詰め寄る。もちろん本気でやる気はないので剣は抜かないでいる。


ロア「早いですね…でも!」


目前に迫った俺を横の大振りでなぎ払う。が、それを上へ飛んで避けた。


ロア「甘いです!」


横に払った大槌の遠心力を利用しそのまま上へ振り上げる。だがその攻撃も空中で身を捻り躱した。


そして一つ、魔法を放つ。

エアーショット…風の弾丸を放つ初級魔法だがここでは威力をかなり落として撃った。


ロア「いたっ…!?」


高速で放たれた空弾はロアに目掛けて飛んでいき頰を平手で叩いたかのような乾いた音が鳴った。


ロア「ぐっ!こんなのでロアは…っ!?」


ロアが一瞬怯んだ隙に懐に入り込み顔面目掛けて手を伸ばした。


グレン「少し落ち着け」


ロア「ぴゃっ!!?」


俺は思い切りロアのおでこに…デコピンをかました。


デコピンを受けたロアは痛みでおでこを抑えて涙目になっていた。これで少しは落ち着いただろうか。


ロア「くぅぅ…バカにするなです!!」


グレン「おっと」


大槌を再び持ち上げようとしてきたが寸前で側面を踏みつけ押さえつけた。


ロア「なっ、持ち上がらない、です…!」


グレン「獣人がいくら怪力だろうと、身体強化された今の俺には勝てないよ」


ロア「……!!」


歯を食い縛りそれでも持ち上げようとするが大槌はピクリとも動かなかった。


グレン「なぁ、いい加減話を聞いてくれないか?俺はここに来たばかりでなにも…」


ロア「…るさいです」


グレン「え?」


ロア「うるさいです!!」


押さえつけていた大槌が徐々に震えていくのがわかった。


ロア「あああああ!!!!」


グレン「っ!?」


身体強化して押さえつけていたのにも関わらず、大声を上げながら大槌を持ち上げた。俺は少し後ろに下がり様子を見る。


…予想以上の怪力だ。まさか身体強化した力で負けるだなんて。


ロア「はぁー……はぁー…」


だけどさっきの馬鹿力のせいでだいぶ体力を消耗したみたいだ。息が乱れて肩を上下させていた。


勝負あったな。


グレン「その状態でまだやるのか?」


ロア「っ…」


何故だかわからんが相当恨まれてるみたいだ。本当に見に覚えがないんだけどな…


ロア「ロアがこんなやつに…認めないです」


グレン「いい加減にしろよ、一体なんなんだよ」


ロア「黙れです…覚えてやがれです、次はこうはいかないです」


グレン「おい!待てって…はぁ」


ロアという少女は大槌を抱えて木々に入り奥へと逃げていってしまった。追いかけるのは簡単だが今追ってもまたあらぬ誤解を招くだけだろうしな。やめとくか。


ナル「一体なんなのだ…?」


グレン「さぁな、けど…」


仲間を攫った…か。どうやらこの森ではなにかが起きているみたいだな。


はぁ…どうして俺はこうも巻き込まれ体質なんだ…


旅っていうのはこうもすんなりいかないものなんだと、再び実感させられた気がする。


ーーーーー


あのロアとかいう獣人、敵意剥き出しで襲ってきたからゆっくり考える時間がなかったが気になることを言っていた。


仲間を攫った、ここに来た人間は俺だけ…それになぜか人間を敵視しているように感じた。


俺の知っている獣人は人当たりがよく人間にも好意的なはず…だがあの子は違った。明確に人間を敵と認識していたんだ。


あの子だけがそうなのか今の獣人がそうなのかはわからないがあの状態でまた遭遇しても碌に話を聞いてはもらえないだろう。


グレン「困ったな…」


元々ここにいる種族…獣人族をアテにして来たのだが…今の状況だと厳しいな。ここら辺のことに詳しいのは獣人くらいしか思い浮かばないのだが、どう説得したもんか。


……やはり獣人を攫ったっていうやつを探すしかないか。犯人を捕まえれば自ずと俺の容疑は晴れるし話も聞いてくれるはずだ。


だが…まだ疑問な点がいくつかある。


獣人は人間では出せない怪力がある。普通の人間では獣人を捕まえることは不可能だ。


とすれば魔法使か?でもわざわざこの危険区域というところまできて獣人を攫う意図がわからない。


奴隷として使う線も否定できないが…俺からしてみれば非効率的すぎる。


推測の域をでないな、これ以上考えるのは無理そうだ。


ナル「むむむ…」


グレン「どうしたナル?」


ナルが先ほどから唸っていたので気になり声をかけてみた。


ナル「のーマスター。わたしは森については詳しくないが最初にマスターと会った森より、この森生き物が全然いないのだ」


グレン「生き物?言われてみればそうだな…」


ナルの言う通り先ほどから森の中を歩いているが目立つような生き物がいないし、空を見ても鳥1匹飛んでもいない。


せいぜい小さい虫を見かける程度だ。


グレン「これはおかしいな…これだけ自然豊かなら動物はともかく危獣種くらいならいそうなもんなんだが」


まるで嵐の前の静けさだ。偶然出会わしていない可能性も捨て切れないがこうも静かだと変に勘ぐってしまう。


そんなことを思っていたら、何かが草を掻き分け近づいてくる音がしてきた。


また獣人か…?いや違うな、人の気配じゃない。


「グルルルルル…」


グレン「ハンターウルフ…」


草むらからでてきたのはよく森の中に潜んでいる大狼だ。基本群れで行動していて狩人の如く集団で狩り尽くす危獣種。


ギルドの資料では単体で下級、群れで上級に分類されてたのを覚えている。


だが今目の前にいるのは…


「グルルルルル…」

「ガルルルルル…」


軽く数十匹はいる群の方だった。


ここが危険区域に指定されるのもわかる。こんなものに襲われてしまえばひとたまりもないだろう。


……相手が俺じゃなかったらの話だけど。


大狼たちはこちらを警戒しているのか動こうとしない。隙を伺っているのか?


まぁなんでもいい、襲ってくるのなら斬り捨てるまでだ。


睨み合いが続く中、ついに大狼たちが動き出した。


「クゥゥゥンン…!」


グレン「…は?」


大狼たちは動き出した…だがそれは襲ってくることはなく、怯えたような鳴き声を上げながら森の奥へと次々消えてしまった。


ナル「逃げたのだ…」


グレン「ああ…なんでだ?」


人間相手ならともかく、殺気も出していない相手に逃げ出したのはなぜだ?野生の勘…いや、あの集団なら普通は襲いかかってきてもおかしくはないはず。


なんなんだ、おかしなことだらけだな。


ナル「あっ、マスター上!」


グレン「上?」


ナルの指差す方を見てみると空に何かが羽ばたいて飛んでいた。


あれは…グリフォン?

獅子の身体を持ち鷲の頭を持つ危獣種。ここにいること自体は別に不思議ではないがこうも変なことが続くと不安が…


グレン「…!?」


ナル「ひょえっ!?」


空から何かから奇襲されそうになりナルを抱えて何者かの襲撃を躱した。


襲撃に失敗したからか、それはまた空へと羽ばたいていった。


グレン「グリフォン…!?」


間違いなくグリフォンだった。だがさっき飛んでたのとは違う、別個体だ。


「ガァァァァァァ!!!」


それに続いて次々と羽ばたく音が無数に聞こえる。さっきみた2体どころじゃない…!


グレン「どうなってんだ…」


後方から飛んできたそれもグリフォンであった。まるで仲間だというように、グリフォンたちは一緒に空を飛んでいってしまった。


合計で見たのは5体…グリフォンは一体一体が上級に分類される危獣種だ。それが5体同時に?


グリフォンは基本1匹行動だ。それが群を成して行動しているのなら考えられることは一つしかない。


あのグリフォンたちを統率できる更に上の存在がいる…それは


そう思いかけたところで先ほどグリフォンが来た後方から勢いよく風が吹いてきた。その風は木々を切り裂きながらこちらに迫ってくる。


グレン「しまっ…!?」


その風は一際草々を薙ぎ払った後に止んで、風が来た方からとある生物が姿を現す。


「フン、人間ハ弱イナ…」


地面に大きな爪痕を残してその生物は大きな翼を広げ、先に行ったグリフォンを追いかけて飛んでいった。


後書き

前に書いてたものをss風に直して書きました。ほぼ思いつきです、ご了承ください


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