2021-04-17 22:04:08 更新

概要

ーTOKYO IS OVER!!!ー

深海棲艦の出現により安全神話を崩され、一度地に堕ちた日本
だが艦娘の登場により形勢は逆転し、徐々に日本は先進国としての復興を遂げ始める
そして2021....世界最大のイベントWSF(ワールドスポーツフェスティバル)の開催を控えた東京
遂に我が国は完全復活を遂げる....皆がそう確信した時、新たなる厄災が東京を襲う





前書き

ミューロックに続くオリジナルストーリーの二作目公開です
今回は主に心情描写やヒューマンドラマを重点に置いたミューロックとは打って変わり、アクション重視のストーリーとなっています
また今回はオリジナル艦娘やオリジナル深海棲艦が多数登場する実験的な要素もあります

...とはいうものの相変わらず駄文で発想力もあれですが見ていただけると幸いです
感想・評価お待ちしております

外伝→https://sstokosokuho.com/ss/read/21699


[chapter0 Reserve]


ーアメリカ・LAー


Ajgjpjgmwgwpwgw....


??「this is ready」

   (こちらの準備は出来ている)


『She will come to pick you up soon』

 (もうすぐに彼女が迎えに来る)


『Go to Japan immediately after joining an               

d stop the holy war...』

 (合流後すぐに日本へ迎え、聖戦を止めろ...)


??「understanding」

   (了解)


?「Will it start?」 

  (始まるの?)


??「Ah ... the stage is ...」

   (あぁ...舞台は...)


??「Tokyo....」 (東京....)



[ chapter1 NIPPON ]


「いやぁぁぁ!!」


「ママ...ママぁぁぁぁ!!」


「早く!早く助けを!!」


時雨「っ...!」


目に映ったものは地獄を体現するのにふさわしい光景であった

飛び交う悲鳴

無数に散らばる死体

業火に燃える東京


時雨「何...で...」


信じがたい光景に唖然とすることしか出来ない


時雨「っ!」


横切るように彼女の目の前に誰かが倒れる

それは彼女にとって最も大切な人...


時雨「てい...とく...?」


恐る恐る彼の元に近づく


時雨「....あぁ....!」


左半身が焼け、人と判別出来る部分は限りなく少ない...生きてるとは考えられない姿だった


時雨「嫌だ....いやだ...」


時雨「うわぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!」


絶望が支配する世界で彼女は悲しみの咆哮を放った....


...


「....れ!....ぐれ...!」


「時雨!」


時雨「はっ!」


時雨「はぁっ...はぁっ....」


何者かの呼び掛けによって悪夢から目覚める

冷や汗をかき、息が荒くなっていることを自覚する


「時雨...?」


時雨「っ!」


時雨「ゆ、夕立...」


彼女を心配そうに見つめる亜麻色の髪をした美しい少女...

夕立...彼女の相棒とも言える存在


夕立「大丈夫っぽい...?酷くうなされてたけど....」


時雨「っ....!」


時雨 (そっか...夢か...)


時雨「...うん大丈夫だよ、少し嫌な夢を見たけだから...」


夕立「本当に大丈夫っぽい...?疲れてたり...」


時雨「フフッ...大丈夫だって」


夕立「ならいいけど...」


犬のような上目遣いで見つめる彼女を優しく撫でながら現在時刻をチェックする


0700


時雨 (もう7時か...)


時雨「よしっ夕立、早くご飯食べに行こう」


夕立「わ、分かったっぽい!」


時雨 (夢...それにしては...)


....


数十年前...突如として日本を襲った生物深海棲艦

日本の安全神話は崩れ去り、世界的信用を地に落とした日本

だが艦娘の登場により劣勢だった状況は逆転


今に至るまで有利な方向に進み、経済や治安もかつての日本を彷彿とさせる所まで迫っていた

そして2021...日本にとって一大イベントと言えるイベントが開催される


ー4月29日AM7:30ー


『さぁ!今日は今年東京で開催されるWSF、ワールドスポーツフェスティバルの開会式が行われる新東都スタジアムに来ています!』


『今回開催されるWSF2021では新たに埋め立てられ作られ総合型リゾート都市『スカイブルーストリート』での開催が発表され来月の5月頃一般公開を...』


アナウンサーがカメラ越しにスタジアムの光景を伝える


ワールドスポーツフェスティバル...5年周期で開催される世界一のスポーツの祭典

2021年は東京で開催されることが決まり、国内ではお祭りムード

政府も大幅な経済成長と日本の復興を示す大々的なアピールになるとして力を入れている


時雨「あぁそういえば今年だったんだWSF...」


テーブルに置かれた食欲をそそる朝食を頬張りながらふと思い出す

自分以外にもその場にいた全員の艦娘がニュースに釘付けとなっていた


夕立「本当に凄いっぽいね...政府ったらこれの為に東京の一部埋め立てて...」


時雨「それはもちろん最大級のイベントだからね、政府も強引に推しきるよ」


時雨「しかし...有利とはいえ、深海棲艦の脅威はまだあるというのに東京湾埋め立てって...緩みにも程があるよ...」


「まぁいいじゃん!」


時雨「っ!」


後方から飛ぶ陽気な声に反応して後ろを振り向く


時雨「鈴谷...」


鈴谷...明るい享楽的な性格でトレンドに詳しいJKのような艦娘


鈴谷「ここまでやれるくらい日本は復活したってことなんだし!」


時雨「まぁそうだけど...」


鈴谷「時雨は心配しすぎだよ、皆もようやく心から笑えるようになったんだし...ね?」


時雨「....そうだね、少しピリピリしずきてるのかも...」


鈴谷「うんうん!それでいいんだよ~!」


鈴谷「あっ鈴谷、ちょっと熊野と買い物行ってくるからまたね~!」


終始変わらないテンションで買い物という目的を口実に足早にその場を後にする


夕立「ばいばい鈴谷!」


時雨 (気楽にね...)


夕立「っ?時雨?」


時雨「ん?」


時雨「あっ何でもないよ」


時雨 (それならいいけど...)


国民だけじゃない、艦娘や海軍すらお祭りムードで気が緩んでる風潮に一人、若干の疑問を覚える


ー台場鎮守府ー

台場付近に位置する新築の鎮守府


ー執務室ー


年代が入った扉から心地よい音が三回ほどリズミカルに叩かれる


提督「....どうぞ」


それに反応しこの部屋に入る許可を口頭で伝える


時雨「失礼するよ」


提督「おぉ時雨」


時雨「はい、前回の作戦の報告書」


提督「ありがとな」


受け渡された書類を慣れた手つきで捲りながら確認を行う


戦艦棲鬼1隻 空母棲姫1隻

ヲ級3隻 リ級2隻 イ級6隻


完全勝利S


提督「また完全勝利か、凄いな...」


時雨「いやいや僕の力なんて些細なものさ、夕立もいたし、それに提督の指揮のおかげだよ」


提督「謙虚だな....」


提督「....」


時雨「提督?どうしたんだい?」


提督「いや...報告ありがとう、今日は出撃の予定はないからゆっくりしていてくれ」


時雨「あっうん分かった...」


時雨「それじゃあね提督」


提督「....」


彼女がいなくなった途端、笑顔が消え表情が曇る


提督 (時雨がああ言ってくれるのは嬉しいが...)


提督 (俺の指揮なんて関係ない...)


提督 (時雨が...強いんだ...)


もちろん彼の指揮が全く無意味だという訳ではない

だが彼女の成長...時雨は彼の手に終えないほど成長を続け自分がいなくても自ら戦術を作り他を圧倒するほどの力をあっという間に手にいれた  


提督 (時雨....)


提督 (俺は...お前の力になれているのか...?)


日差しが当たる執務室で一人疑問を投げ掛ける


...


ー廊下ー


吹雪「そろそろWSFだね!何の競技見に行こうかな!」


睦月「外国の人とかいっぱい来るんでしょ?楽しみ!!」


時雨「....」


廊下を歩けば右からも左からも同じような話題が飛び交う


皆、WSFの話で持ちきり...深海棲艦の出現が減少して出撃回数も減っていることから緊張感は全くと言っていいほどなかった


時雨 (これでいいの...?)


平和に近づいているのは嬉しいこと、だが何処か引っ掛かるものが拭えることはなかった


時雨 (本当にこれで...)


....


ー4月29日 AM9:30ー


ー大森ベルポートー


時雨との別れを告げてから一時間...彼女達は思わぬ場所で足止めを食らっていた


熊野「....」


熊野「この人だかりは何ですの...」


一般人だけでなくマスコミや警察関係者らしき人も集まっており、まともに入れる状況でなかった


鈴谷「あちゃ...やっちゃったな...」


熊野「っ?」


鈴谷「これ...」


ため息をつきながらスマホを見せる


『WSF開催100日イベント、出演:尾長都知事』


熊野「あぁなるほど...」


鈴谷「区切りのいい日だから都知事がここでイベントやってるらしい...まぁどうせグッズ発表とかしょうもないやつだろうけど...」


熊野「にしても入り口辺りを塞ぐなんて、どうかしてますわ!普通にお買い物したい人達の事を考えてません!」


鈴谷「まぁまぁ...イベントも1時間程度だし向かいのカフェで待ってよう」


熊野「っ...」


渋々二人は、向かいのカフェに移動し時間を潰す


....


尾長「えぇ、この度はWSF開催を機に新たなグッズや商品を発表したいと思います」


多数のマスコミと群衆が入り口付近を閉鎖させる


「ねぇあれが新商品?何かセンスなくないw?」


「いやいや可愛いでしょ!」


シャッター音と彼の話を聞いているのか聞いていないのか分からないざわめき声が広がり始める


....


ーカフェ店内ー


朝もあってか客がそこまでいないカフェで時間を潰して30分ほど時間が経過していた


熊野「まだですの...」


鈴谷「そろそろじゃない?もう半分経ったし」


不満がる彼女を嗜めながら彼女の前にある洒落たケーキを片手に自撮りを始める


熊野「っ?」


熊野「何してるんですの?」


鈴谷「ん?あぁツイッターに上げてるんだよ」


『ベルポート近くのカフェで一休み♪』


鈴谷「っと...」TWEET...


熊野「意外ですわね...ツイッターやってたんですの...」


鈴谷「そりゃやってるよ、楽しいしね」


熊野 (...ずいぶんと馴染んでますわね...この現代に...)


鈴谷「こんな面白いアプリがあるんだからやっておかないとね♪」


その後も雲一つない晴れを背景にして上機嫌に自撮りしたものをアップしながら反響を見る


鈴谷「いいねも....ん?」


『向かいのビルに何か写ってない?』


鈴谷「向かい側...?」


リプ欄に書かれた不穏な書き込み...

それを確かめる為に振り向いた瞬間

   
















平和だった世界は終わりを告げた










鈴谷・熊野「っ!?」


何が起きたかは直ぐに把握出来なかった

反対側が明るく暖色に光った直後に遅れて凄まじい轟音が彼女達の耳元を襲う

壁やガラスがまるでスローモーションのように四方八方に飛び散り向かいにいた彼女達も衝撃波により吹き飛ばされる








....


鈴谷「....っ.....」


再び目を見開いた光景から自らが吹き飛ばされ地面に突っ伏していることが判明する


鈴谷「何...が...」


幸運にも軽症で済んでいる身体をゆっくりと持ち上げると同時に視界や耳も鮮明になり始める


鈴谷「えっ....?」


理解が追い付かなかった


先程までの明るかった雰囲気は一変、ベルポート入り口周辺は瓦礫にまみれ遠目からでも分かるほど血の海に漬かった死体が散らばった地獄のような光景に変貌していた


鈴谷「ヒッ...!?」


グロテスクな光景に反射的に後退り悲鳴に近い声を出す


鈴谷「嘘...でしょ...」


熊野「ぐっ...」


鈴谷「っ!熊野!!」


鈴谷「熊野!熊野!大丈夫!?」


熊野「鈴...谷....?」


頭から血が出ているもののどうやら小さな破片がかすったのみで致命傷になる傷はおっていなかった


鈴谷「熊野...!良かった....」


無事だという事実に安堵し彼女を強く抱き締める


熊野「鈴谷...一体何が...」


??「ハハッ....」


鈴谷「っ...!」


不敵かつ不気味な笑いを察知し反射的に振り替える


鈴谷「あれは....」


熊野「す、鈴谷...?」


?? クルッ...


鈴谷「っ!」 


鈴谷「ごめん熊野、その場を離れないで!」


熊野「えっ...?」


ーベルポート付近道路ー


鈴谷「はぁっ!はぁっ...!」


瓦礫を機敏に避けながらあの写真に写ったビルの方向へと全速力で向かう


鈴谷「ぐっ!?」


道中連鎖的な小規模の爆発が何度か発生したが構わずにその場所へと一直線に走り続ける



ー大森オフィスビルー


エレベーターは壊れ機能しない...恐らく先程の爆発により電力がやられたのだろう


鈴谷「チッ!!」ダッ!


幸運にも階段は埃があるが使えないことはなく身体に鞭を打ち一段飛ばしで屋上へと向かう


ー屋上ー


バァン!!


鈴谷「はぁっ...はぁっ...」


鈴谷「っ!」


勢いよく扉を開けた瞬間、あの"シルエット"が彼女の目の前に現れる

この地獄のような悲惨な光景をまるで悪魔のように嘲笑したあのシルエット...


??「へぇ...よく見つけましたね、あんな距離から」


鈴谷「...!!」


途端に彼女に眠る怒りの感情が沸き上がり頭で判断する前に懐にしまっていた護身用の拳銃を取り出し彼女に向ける


鈴谷「動くな..!」


??「....」


鈴谷「お前...何で笑った...」


鈴谷「人がたくさん傷ついて...あの地獄を...」


鈴谷「あれを...何故笑ったァ!!」


手元が怒りで震え瞳孔が開き普段の彼女からは想像も出来ないような顔をしていた


??「...始まりだからですよ」  


鈴谷「はっ...?」


??「これから始まる...変革への」


??「私達が新たな頂点へと立つ...」


鈴谷「っ!?」


??「記念すべき日だからですよ」


振り向いたその目を見た途端彼女を奮い立たせていた怒りは消え恐怖という否定的な感情が彼女を瞬時に支配した


鈴谷「お前...一体!?」


??「また会いましょう、貴女とは縁がありそうです」


??「では...」


鈴谷「っ!待て!!」


別れを告げたと同時に目の前で屋上から流れるように落下する彼女を必死に捕らえようと走り出すが


鈴谷「なっ...!?」


着いた時には落下した彼女の姿は何処にもなかった


鈴谷「そんな...何で...」



[chapter2 激震TOKYO]


ー4月29日 AM10:30ー


ー台場鎮守府・大広間ー


提督「時雨、次の編成書だ、任務の時は旗艦を頼む」


時雨「うん、分かったよ提督...」


もう旗艦は何度目か覚えてはいない

重荷ではあるが...彼から信頼されているという証拠でもあるので苦痛はない


時雨 (さてっ...シミュレーションでも...)


『では次のニュー....っ!?』


『そ、速報です!』


時雨「ん?」


『今日開催されていたWSG100日イベント会場、大森ベルポートにて先程大規模な爆発が発生しました!』


時雨「っ!?」


提督「なっ...!?」


艦娘達「!?」


衝撃的な内容と画面越しでも伝わるアナウンサーの焦りと緊張にその場にいた全員が凝視する


『イベントに出演していた尾長都知事の安否は不明...また警視庁の発表によると死傷者は百名を超えると...』


長門「ば、爆発!?」


朝潮「何があったの!?」


霞「わ、分からないわよ!!」


唐突な出来事に理解が追い付かず不安と困惑が具体化したような言葉が次々に飛び交う


提督「爆発だと...!?」


提督「どういうことだよ!?」


時雨「....っ!提督!!」


時雨「そういえば...今日鈴谷と熊野が大森ベルポートに向かうって!!」


提督「なっ!?」


時雨「今日買い物に行くって....もうこの時間には着いてるはず...!」


提督「嘘だろ...!?」


提督「長門!」


提督「鈴谷達が爆発に巻き込まれてるかもしれない...俺は近くの病院を回るからここを頼む!!」


長門「あ、あぁ!!」


ー爆発現場・AM10:45ー


「うわあぁぁぁ!!」


「怪我人を回せ!!」


「誰か...誰か来てください!!」


「赤タグ優先だ!重傷者は付近の病院!もしくはドクターヘリで運べ!!」


「ママ....ママぁぁぁ!!」


上空にドクターヘリが飛び交い負傷者の悲鳴と医療関係者の語気を強めた指示が響き渡る


....


『警視庁の発表によるとテロとしての調査を進めるとのこと』


『各国首脳が日本に対して批判声明を...』


『先程緊急会見を行った長島総理は緊急事態宣言を発令し「政府は被害者への哀悼の意を表するとともにこの非人道的なテロに迅速に対応し事件の終息を図る」との声明を」


『これはね!テロですよ!絶対にあってはならないことです!!』


『この計画的な犯行から犯人はかなり手慣れている為軍人との可能性も...』


#爆発

#大森ベルポート爆発

#テロ


『これヤバくない....?』


『ヤバい人がたくさん倒れてる』


『えっマジなの?』


『情報求む!』


『ベルポート近くにいるけど本当に爆発が起きてる』


『どうなってるの!?』


その出来事は一瞬の内に日本をパニックへと陥らせ混乱した情報が全世界へと錯綜し始める


...


ー4月29日AM11時30分ー


ー総合東都病院ー


「タンカ急いで!!」


「こちらに人手をください!」


「治療室の空きは!?」


提督「っ...!」


衝撃的な光景だった

エントランスには巨大なブルーシートの上に様々な怪我をした者が集められ病院関係者であろう人達が目まぐるしく怪我人の手当てに当たっていた


提督「マジかよ...!?」


看護師「傷は浅いですがまだしばらくは腕を挙げないでいてください」


提督「っ...!」


提督「あのすいません!」


看護師「っ!あっはい!」


運良く軽症者への手当てが終わり一瞬手が空いた看護師を捕まえることが出来た


提督「この二人...ここにいませんか?さっきの爆発の近くにいて...」


看護師「あっ!その二人ならここにいますよ!」


提督「本当ですか!?」


彼女達の写真をスマホを見せた途端、直ぐに反応を示す

恐らく彼女達、特に鈴谷の珍しい髪色が特徴になったのだろう


看護師「こっちです!!」


提督「あっ!!」


鈴谷・熊野「....」


提督「鈴谷!熊野!」


鈴谷・熊野「っ!」


熊野「て、提督!!」


茶色の髪をたなびかせ彼の側に近づく


熊野「な、何故ここに!?」


提督「時雨が二人が今日ベルポート近くに出掛けたという話を聞いてな...もしかしたら巻き込まれているんじゃないかと...」


熊野「あっなるほど...」


提督「っ!お前らその怪我...」


鈴谷は左腕や右頬に傷がついているのを示すガーゼが貼られ熊野は頭部に包帯が巻かれていた


熊野「あっえっとこれは...」


看護師「大丈夫です、幸いお二人とも軽い怪我で済み治療も既に完了しています」


提督「そうですか...良かった...」


鈴谷「.....」


提督「っ...?鈴谷...?」


普段は陽気で無言でいることが少ない彼女が踞り一言も声を出さない状況は彼も初めて見る光景であった


鈴谷「...見た...」


提督「えっ?」


鈴谷「見たの...」


提督「見た...?」


鈴谷「あの爆発の...」


鈴谷「犯人を...!」


...


ー4月29日PM12:30ー


ー執務室ー


提督「ふぅっ....」


夕立「っ!提督さん!」


時雨「提督....!」


提督「お前ら...」


夕立「二人は無事だったっぽい!?」


提督「あぁ...瓦礫がかすれたくらいで軽傷で済んでる、今は入渠中だ」


時雨「そう...良かった...」


提督「だが...」


時雨・夕立「っ?」


提督「鈴谷が...あの爆発の犯人を見たと言っていてな」


時雨・夕立「っ!」


時雨「犯人を...見た...?」


提督「警察には話したが...どうも手一杯らしく相手にされなかった、証拠もあの写真だけでは有効ではないしな...」


夕立「でも何で鈴谷は犯人を...」


提督「分からない...全てを聞く前に気絶してしまってな、話を聞けるのは入渠後だ」


時雨「そうかい...」


時雨「ん...?」


ポケットに入れていたスマホに通知が来た振動音が鳴る


時雨「っ!?提督!テレビ!!」


提督「テレビ...?」


時雨「早く!」


提督「あ、あぁ...」


『速報です、大森ベルポートにてWSF100日イベントに出席していた尾長都知事の死亡が確認されました』


一同「!?」


提督「都知事が...死亡!?」


時雨「嘘...そんな...」


『更には爆発による死亡者の数は150人...負傷者は400人を超えるとの発表があります』


夕立「し、時雨これって...」


時雨「....」


彼女の不安が混じった声に応える気持ちは山々だったが自らの心中の整理がつかず返す言葉が見つけられない

しかし彼らの個人的な困惑と不安は社会には伝わらず...


『っ!緊急ニュースです、日本時間12時20分からボストンにてWSF公式委員会会長ウェザー氏の緊急会見が行われました』


こちらに心を落ち着ける暇を与えずに立て続けに緊急のニュースが伝えられる


ーアメリカ・ボストン国際会見場ー


ウェザー「Earlier, we held an emergency meeting about holding WSF.」

(先程、WSF開催についての緊急会合を行なった)


ウェザー「As a result of the meeting, we officially announce the cancellation of WSF Tokyo due to the fact that safety has not been considered.」

(会合の結果、安全性の考慮がなされていないという事によりWSF東京開催の中止を正式に発表)


ウェザー「And the holding will be postponed for one year and the WSF will be held again in 2022 in Paris, France, which was the same candidate site.」

(そして開催を一年延期し同じ候補地であったフランス・パリにて2022年に再度WSFを開催する)


一同「っ!」


提督「ち、中止...」


開催を間近に控えた状況での中止...理由は正当であれ、この発表は日本経済を大きく揺るがす事態となることは必然となる


時雨 (....何が起きてるというの...)


時雨 (この...東京に...)


彼女を含む1400万人の不安と絶望の嘆きは不穏なるサイレンと共にかき消された...



[ chapter3 白雪姫事変]



ー執務室ー


ー4月30日PM6:17ー


『政府は不要不急の外出を控えると共に誤情報に流されずに対応することを国民に対し...』


提督「....」


事件から一夜、特に捜査の進展はなく不安と焦りの気持ちが拭えぬことはなかった


提督 (何も進展はないのか...)


提督「ん?」


不意にノック音が軽快に響き渡る


提督「どうぞ」


長門「失礼するぞ提督」


提督「おぉ長門、こんな朝早くからどうした?」


長門「いや...少し話があってな...」


提督「話?」


長門「昨晩の騒ぎで遅れたのだが...昨日横須賀鎮守府の艦娘が行方不明になったらしい」


提督「行方不明...?」


長門「あぁ...突然通信が切れたらしく遮断場所に向かったが誰もいなかったと...」


提督「そうか...何が...」


長門「それともう一つ」


長門「どうやら最近深海棲艦の動きが活発になっているらしい」


提督「っ!?深海棲艦が!?」


長門「あぁ、昨日の時点で東京湾近くの出現報告が6つを超えていてな...」


提督「なるほど...分かった、今日大本営にて会議があるからそこで詳しく確かめてみるよ」


長門「大丈夫なのか?政府も宣言を...」


提督「さすがに大本営の指示だからな...まぁお昼には帰ってくるしそこまで問題はないだろ」


提督「早く会議終わらせて鈴谷達の話も聞かないといけないしな...」


長門「そうか...気をつけて行くんだぞ...」


提督「分かってるよ長門」


ー正門前ー


提督「....」


早朝ではあるが普段は賑わいを見せているお台場がここまで人気が少なく静寂に包まれているのは今まで見た事がなかった


提督 (こんなに静かな台場...今後も見れないだろうな...)


「提督!!」


提督「っ?あっ...」


そんなことを心で呟きながら正門を潜ろうとしたその時、後方から聞き慣れた声がする


提督「時雨...」


時雨「提督...大本営に行くって...」


提督「あぁ...最近深海棲艦の動きも活発になっているから緊急会議とのことだ」


時雨「でもこの状況で...」


提督「テロのこともあるが深海棲艦も同じくらい脅威だからな...流石に参加しないのは難しい...」


時雨「っ....」


提督「大丈夫だって、お昼には帰ってくる、鈴谷達の話も聞かないといけないしな」


不安そうに見つめる彼女に優しい口調で嗜める


提督「じゃ...行ってくる」


時雨「...提督!」


提督「っ?」


時雨「....気を付けて....」


提督「っ...」


提督「フッ...分かってるよ時雨」


時雨「....」


時雨 (提督...)



ー医務室AM9:38ー



明石「....」


大淀「....どうですか?」


明石「二人共、身体に異常はなし後遺症や傷痕も見られないので完全に完治してます」


レントゲンの写真片手に相手に分かるよう最低限に省略して現状を伝える


大淀「そうですか...良かった...」


明石「ただ...鈴谷さんのほうが...」


大淀「えっ?」


明石「今日...朝食を運んだ際に...」


....


明石「鈴谷さん、熊野さん健康診断に来ましたよ!!」


熊野「っ!明石さん...」


鈴谷「....」


明石「えっと...怪我の具合は大丈夫ですか?」


熊野「あっはい、明石さんの治療のおかげで今はもう...」


明石「なら良かった...!」


明石「鈴谷さんは?」


鈴谷「....」


明石「鈴谷さん?」


鈴谷「えっ...?」


明石「調子は大丈夫ですか?」


鈴谷「あっ...うん....」


明石「そうですか、なら健康状態に異常はなしと...」


『続いてのニュースです、先日発生した大規模爆破テロについて警視庁は...』


鈴谷「っ...!!」


閃光が走る

あの記憶が甦る

血の海に囲まれ悲鳴と痛みが広がるあの地獄

そして自らが恐怖に屈したあの存在


鈴谷「ぐぶっ...!!」


熊野「なっ鈴谷!?」


明石「鈴谷さん!?」


鮮明に連続で写し出される記憶に耐えきれず思わず体勢を崩し嘔吐してしまう


...


大淀「鈴谷さんが...!?」


明石「はい...いくらあの明るい鈴谷さんとはいえ、あれを目の前で見たんです...精神面に異常が起きてもおかしくありません...」


大淀「っ....」


返す言葉が見つからずただ彼女の話を黙って聞くしかなかった


明石「大事を取って熊野さんと共に医務室にいさせていますが...回復出来るかは...私は精神的なカウンセリングは得意ではないので...」



ー医務室AM9:47ー



熊野「.....」


あれきり一度も言葉を発さない

ただスマホを見つめ何を考えているのか分からない表情をしていた

しかしだからと言って声を掛けようという気にもならなかった、あの嘔吐を見てしまっては...


熊野 (相当...辛いものを見て...経験して...)


普段は少しウザいと感じていた彼女の明るさがここまで恋しくなるとは昨日の自分は考えてもいなかったかもしれない


熊野 (....ここにわたくしがいても...鈴谷に何かを出来るとは...)


そう思って彼女の為にここから退出しようとしたその時


鈴谷「脆いね....」


熊野「えっ...?」


それまで沈黙を貫いていた彼女がおもむろに口を開く


熊野「鈴谷...?」


鈴谷「昨日身をもって知った...平和なんて...直ぐに壊れてしまうんだって...」


鈴谷「いつまでも続く思ってた...この幸せが...」


熊野「....」


鈴谷「馬鹿みたいだよ...この写真にいる私は...」


鈴谷「自分が馬鹿って気付かずに生きてさ、無力のくせに調子乗ったりして...ホント生きてる価値がないt」


鈴谷「っ!」


左頬に言葉を遮るほどの痛みが走る

何が起きたかは理解は直ぐには出来なかった


熊野「っ....!」


だか彼女の怒りと悲しみに震えた顔を見て確信した

私はぶたれたんだって


熊野「いい加減にしてください!!」


熊野「鈴谷は無力でも馬鹿でもありません!!」


熊野「鈴谷は!!...立ち向かいました...」


鈴谷「えっ?」


熊野「結果はどうであれ...貴女は犠牲者の無念を感じ取り...そして怒りに震えた...悲しみを覚えた...銃を向けた...!!」


熊野「それだけでも...鈴谷は犯人よりも生きる価値はよっぽどあります!!」


鈴谷「でも...私は屈した!!あいつに...奴に怯えた!!」


鈴谷「あそこで...撃てなかった...」


鈴谷「無力なんだよ私は...」


熊野「....無力じゃない...」


熊野「鈴谷は...頑張ったんです...わたくしは何も出来なかった...けど貴女は自ら動いた...!!」


鈴谷「っ...!」


熊野「もうやめてください...自分を責めるのは...」


熊野「鈴谷は悪くありません...貴女のやったことは勇気ある行動なんです...」


熊野「だから...」


そう言いながら私は絶望にうちひしがれる彼女を抱き締めた

希望という匙を加えて


鈴谷「っ....」


何故だか涙が止まらなかった

絶望から少し解放された気分がして、自分を認めてくれて心にあった鎖が解かれていく気分だった


鈴谷「ごめん...熊野...」


鈴谷「少し...胸借りる...」


震えた声で伝えながら私は彼女の胸で静かに泣いた....


....


鈴谷「....」


鈴谷「熊野...もう大丈夫」


熊野「...いいんですの...?」


鈴谷「うん...色々と吐き出せた...」


抱かれてる腕を解き見上げた彼女の瞳にはいつもより鋭くそして何かを決意した光があった


熊野「っ!」


鈴谷「熊野...決めたよ」


鈴谷「あいつを捕らえる...犠牲者になった人たちの為に...」


鈴谷「それが...私が出来る唯一のことだから...」


熊野「それが...貴女の選択ですの...?」


鈴谷「もちろん、私の選択...」


熊野「なら...わたくしも付き合いますわ!!」


.....


ー大広間AM10:27ー


昨日までのお祭り状態から一変、緊急事態宣言の中、立て続けに暗いニュースが流れ続けているせいか自然とナイーブな雰囲気が場を包み互いに気まずい状況が続いている


時雨「....」


時雨 (昨日とは大違いだ...)


夕立「時雨!」


時雨「っ!」


夕立「ここにいたっぽい...」


時雨「夕立?どうしたの?」


無邪気な彼女が珍しく少し険しい顔をしながら

僕がいるほうへと駆けつけてくる


夕立「時雨...今日起きたらだったんだけど...」


夕立「こんなものが...」 


時雨「....えっ...!?これは....」


マフラーを取り鎖骨が見えるほど制服を引っ張った彼女の首付近に赤く光る謎の"痣"らしきものが付着していた


時雨「何それ...痣...?」


夕立「そうと思ったんだけど別に怪我なんかしてないし...明石さんに見てもらっても特には分からないって...」


夕立「...えっ?」


夕立「っ!?し、時雨!」


時雨「ん?」


先程まで自分の異変について話していた彼女が僕の目線より下を見た瞬間、目の色を変え驚愕の表情を見せていた


夕立「み、右腕...」


時雨「右腕...?」


時雨「.....えっ?」


"痣"だ

制服を少したくしあげた部分にソレはあった

形や大きさも全て同じ...違うとすれば僕の"痣"はシアンに光っていた


時雨「なっ!?これは....」


時雨「っ...!」







ソレを認識した瞬間














意識が飛ぶ










まるで"痣"に吸い込まれる感覚が全身を襲う













何が起きたか考える暇もなく















僕が気づいた時には白い光景が広がっていた


時雨「えっ....?」


時雨「ここは....」


"無"という言葉が具体化された場所

ただ境界線が分からないほどの何処までも続く純白の空間


思考を巡らせる

だがまともな結論を出せるはずがない


時雨「何で...こんなとこに...」


イツワリハ...シンジツノタメ...


時雨「っ!?」


囁かれてる

誰かは分からない

けどその声は心地がよくそして不安を掻き立てる声

締め付けられるように僕はその声がする方向へと身体を向けることが出来ない






シルベキザンコクヲ...ミツケナイタメ...






時雨「残酷....?」





ソシテ...アルベキスガタカラニゲルタメ...






ダガ...ラクエンハツヅカナイ...






メザメノトキ...イツワリハミズカラヲヒテイスル...





ユエニ...マモルコトハデキナイ...






ダレカヲマモル...ソノタメノギセイ...






ソレガ...ボクノウンメイ...




時雨「っ...!」


身体が解放される

全身に生気が戻る

そして...振り返ったその先にいたのは




時雨「...天....使....?」



僕に似た...翼を広げる天使だった














.....


時雨「.....」


「...れ...ぐれ...」


夕立「時雨!」


時雨「っ!!」


唐突に意識が戻る


時雨「あれ...天使は...?」


夕立「へっ?天使...?」


夕立「し、時雨何を言ってるっぽい...?」


時雨「っ!!あれ...」


徐々に理性が戻り自分がいる場所を認識する

そして認識と同時に自分の言ったことの不可解さに困惑する


時雨 (えっ...何でいま僕...天使って...)


夕立「時雨...?」


時雨「っ!」


時雨「あっ...えっと....」


時雨「ごめん...まだ少し寝ぼけてるみたいだ...」


夕立「そ、そうなの...?」


僕に対する困惑を抑える為に咄嗟の嘘をつく



時雨 (あれ...?)


...いや...これは嘘なのか...?

何故嘘をついたと心で認識した...?

夢なんじゃないのか...?そうでなければ合致しない...

夢でないのに何故ここにいる...?あの場所は何だ...あの天使は誰だ...

ならば今言ったことは本当...では何故嘘と思った...


思考が巡る

理性や知性は無能だと感じる

僕の思考では...この矛盾の答えにたどり着けなかった


時雨 (何なんだ...一体...)


夕立「....?」


『っ!速報です!先程ベルポート爆発の主犯格と思われる人物からのビデオメッセージが警視庁、及びマスコミ各社へと配信されたとの情報が!!』


時雨「えっ!?」


夕立「っ!?」


一同「!?」


完成することのない思考のパズルの組み立ての中断を告げるかのように不穏なる沈黙が続いていたこの東京が再び新たな厄災の歯車が動き出す


...


ー工房AM10:26ー


明石「...」


鈴谷「どう?明石さん」


明石「駄目ですね...海軍、艦娘、自衛隊関係者、警察など様々なデータベースから調べ増したが一つもヒットしません」


明石「まさに貴種流離...地図のない宝箱を探しているようなものです...」


鈴谷「そう...」


微かな希望を胸に偶然撮った写真と自らが目に焼き付けた特徴を照合

だが結果はERRORという無慈悲な機械音と共に打ち砕かれる


鈴谷 (やはり...見つけるしかないのか...)


明石「...そういえば鈴谷さん...いいんですか?」 


鈴谷「えっ?」


明石「いやその...何というか...大丈夫なのかなと...精神的に...」


鈴谷「あぁ...」


そう思うのも無理はない

あの出来事をトリガーに発生したあの醜い嘔吐を見れば誰だって心配する当然のこと


鈴谷「...大丈夫...色々吹っ切れたから」


鈴谷「いつまでも殻に閉じ籠ってはいられない...奴を捕まえる...それが私のやるべきこと」


明石「っ...!」


鈴谷「だから明石さん、もう私に心配の目を向けないで」


鈴谷「私を振り向かせないで...」


明石「....分かりました」


明石「そこまで言うのなら...貴女のブレーキにはならない...」


『っ!速報です!先程ベルポート爆発の主犯格と思われる人物からのビデオメッセージが...』


鈴谷・明石「っ!?」


明石「ビデオメッセージ!?」


彼女達も同じく歯車が動き出すことを示す宣告に身を囚われる


『その動画がこちらです....』


鈴谷「っ...!」


鳴り響くレトロなファンファーレ

明るい曲調と古びた映像が見る者達のヘイトを煽り不安を掻き立てる


そして切り替わった画面にいた者...

それは一人の...少女であった


鈴谷「っ...!!」







『今日...ヘリオスガ頂点ニ立ツソノ時』









『君ラノイージスヲ奪ウ』








『日本ヨ....』














『衝撃ニ備エロ』






その言葉に少女は消える

幻影を見せられたような感覚から解放され理性を取り戻す


明石「こ、これは一体....」


鈴谷「.....違う...」


明石「えっ...?」


鈴谷「...違う...こいつじゃない...」


明石「鈴谷さん...?」


鈴谷「私が...あの時見たあいつじゃない...!!」


...


ー警視庁AM10:35ー


刑事1「犯人の告発文の内容からヘリオスは"太陽"そしてイージスは"盾"つまり防衛省を示唆しているとのこと」


刑事2「メッセージの発信位置を模索も特定場所は発見できず、ですが東京からの配信ということは確実とのこと」


警視総監「よしっ...」


警視総監「全捜査員、直ちに防衛省に出動」


警視総監「テロ活動を阻止する...!」


刑事達「はいッ!!」



ー防衛省前AM10:45ー


「離れてください!!」


「ここからは通告止めです!!」


「一般人の方は直ぐに離れて!!」


鳴り響くサイレン

ざわめく現場

次々と数多の警察車両が駆けつけ、無数にいる捜査員達が目まぐるしく動き数分ほどで防衛ラインを完成させる


『現在防衛省前ではいつもと違った光景が繰り広げられています!』


『警視庁の発表によると防衛省付近半径500Mのエリアを封鎖、防衛大臣及び職員達は避難、そして一般人及びマスコミ各社の立ち入りを禁止するとの...』



ー廊下AM11:00ー



時雨「夕立...僕、大本営に行ってくる」


夕立「えっ...?えっ!?」


夕立「ちょ、ちょっと待つっぽい!?今の現状分かってるっぽい!?今不用意に何処かに行くのは!!」


時雨「この状況で何もせずに提督を一人で帰らせるのは危険だ...誰かが護衛にいないと」


夕立「で、でも!!」


時雨「大丈夫、必ず二人で帰ってくる...!」


夕立「っ...!」


決意の現れを示す彼女の鋭い視線

相棒であれその目を見ると抗えない気分が自らを襲う


夕立「...分かった」


夕立「長門さんにはこっちから伝えておく」


時雨「うん...ありがとう夕立」


時雨「じゃあ行ってくる...」


夕立「時雨!」


時雨「っ...!」


夕立「必ず帰ってきて...二人で...」


時雨「...分かってる」



ー正門前AM11:15ー



熊野「はい...えぇ分かりましたわ...」


端的に済ませた返事の後に神妙な面持ちで通話を終わらせる

出来る限り感情を抑え話したがそれが相手に対し有効であったかのかは知るよしもない


熊野「長門さんから、時雨は大本営に向かったと...」


鈴谷「そう...了解...」


鈴谷「私達も行くよ...防衛省へ...!」


熊野「えぇ...!」


鈴谷 (いるはずだ...何処かに...)



ー大本営前AM11:30ー



大本営...深海棲艦に対抗するために新たにリメイクされ発足された政府公認海軍組織

巨大なオフィスビルとなっており艦娘の管理、鎮守府達への伝達などを統括する海軍の心臓であり脳といえる存在



時雨「....」


交通はいつもと変わらないが人はいつもよりも少なく昨日の出来事の影響力を体現している

だが特に異常や不穏な空気もなく平穏な雰囲気に包まれていた


時雨 (特に異常はないか...)


私服の襟を直しながらそびえ立つ天空の塔を見つめる


時雨 (提督....)



ー防衛省付近大塚ビル屋上AM11:55ー



熊野「どうです?鈴谷」


鈴谷「今のところは大きい変化はない...SATらしき部隊がいるし爆弾処理班も動いてるけど...」


手にした双眼鏡を覗きながら、事細かく現状を伝え続ける


熊野「こちらも...ネットを調べていますが特に変わった動きは...」


鈴谷「そう...」


熊野「イージスを奪う...奴らは一体防衛省を狙って何を...」


鈴谷「防衛省を破壊すれば日本の防衛機能は国内外問わずに大幅にダウンする...」


鈴谷 (けど....)


理に叶っている動機

だが何処か引っ掛かる節があった


鈴谷 (何故今回はテロの宣告した...これだと日本側に答えを言っているようなもの...)


鈴谷 (防衛省自体を爆破出来ても要人達が無事では意味がない....)


鈴谷 (どういうこと....)


鈴谷「っ....!!」






イージス...盾....守る....









鈴谷「....熊野」


熊野「はい?」


鈴谷「私達は...最悪なミスをしていたのかもしれない...!」


熊野「えっ...?」


....


ー大本営前AM11:59ー



時雨「....ん?」


時雨「鈴谷...?」


突然の着信

何処かに違和感と不安を感じながら恐る恐る受話ボタンを押す


『時雨!!まずい!!』


時雨「えっ...?」


『違う...奴らの狙いは防衛省じゃない!!』


時雨「防衛省じゃない...?」


『あれはフェイク!!あのテロ予告は警察をミスリードさせてある場所を手薄にするため!!』


時雨「手薄?」


『イージス...その言葉に当てはまるのは防衛省だけじゃない!!』


時雨「っ!まさか...」


時雨 (狙いは...)


時雨 (大本営...!?)


時雨 (まずい...!ていt...)


時雨「えっ...?」


愛すべき人を助ける

それだけを胸に走り出すその時


巨大な影に包まれる

不意に見上げた空には


一つの羽を崩した"鳥"が塔に向かい...辺りを瞬時に業火へと包んだ...


... 


鈴谷「時雨...?」


鈴谷「時雨!?時雨!!」


最後に耳元に聞こえたのは激しい爆音であった


鈴谷「くっそ!!どうなってる!?」


熊野「っ!?す、鈴谷!!」


彼女が焦りと恐怖が混じった震えた手で見せる映像



飛行機...エンジンが火に包まれ迷いなく大本営へと突撃し凄まじい爆発が発生する

辺りにはガラスや破片が落下し、爆風によって数十台の車が吹き飛ばされる



鈴谷「なっ....!?」


熊野「鈴谷!ここには提督と時雨が...!!」


鈴谷「...っ!」


鈴谷「バイク回せ!!早く!!」


熊野「え、えぇ!!」


.....



時雨「....っ....」


止まらぬ耳鳴り...不明瞭な瞳

口は鉄の味が支配し冷たい瓦礫の感触が全身に伝う


時雨「っ....あ....」



激痛が走り左手の皮が破け右足は酷い火傷をおっている

全身から流れる"血"を止める手段はなくただ自身の目の前に広がる鮮血の海を見ることしか出来なかった


時雨「ぐっ...がっ...!」


幸いにも身体は動いた

瓦礫と埃をどかしゆっくりと傷ついた身体に鞭を打ち立ち上がる


時雨「えっ....?」














"地獄"









それを表現するのに相応しい光景

誰の"モノ"か分からない腕や足が散乱され、何処を見回しても肉片が散りばめられてるのみ

息ある者はその光景に発狂し悲痛な絶叫や痛みの叫びが響き渡る


時雨「.....っ!」


この狂った状況に僕は理性を取り戻す

そして再び鮮明に思い出す、僕の大切な人を


時雨「てい...とく...」


今にも消えそうな声で悲鳴を上げる身体を無理矢理動かし、僕は探した












探した

















ひたすら探した

















何度も気を失いながらも探し続けた












時雨 (何処....何処...に....)


そして...僕の探し物は遂に見つかる...


時雨「えっ?」


崩れる瓦礫と共に横切るように僕の目の前に突然現れる

僕が求めた探し物...



何も分からなかった

何も受け入れたくなかった

何も信じたくなかった

これは夢だと必死に念じた

だが僕の空虚な抗いは直ぐに残酷な真実へと押し戻される




時雨「あ...あ....!」



膝から崩れ落ちる

瞳は懺悔の涙が溜まる




時雨「嫌だ...イヤだ....」


時雨「あぁ...あぁ...!」


時雨「あぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!」



絶望と悲しみの咆哮を放ち

僕は再び深い闇の眠りにつく....




















「時雨!!」


「はっ!」


白い天井

小刻みに鳴る電子音


時雨 (ここは.....)


時雨 (医務室....?)


「時雨....」


時雨「っ!」


寝そべる僕の横には今にも泣き出しそうに顔を崩した相棒がいる


時雨「夕...立...?」


夕立「時雨...!」


僕の呼び掛けに応えるように彼女は力強く僕を抱き締めた


夕立「良かった...時雨...」


時雨「夕立...一体何が...」


夕立「酷い怪我だったっぽい...明石さんの高速修復材のおかげで何とか...」


時雨「怪我...?」


時雨「っ!」


フラッシュバックするあの惨劇


時雨「提督...提督は!?」


夕立「っ....!」


夕立「......」


時雨「夕立....?」


僕から身体を放した彼女の顔は今までに見たこともないほど悲しみに染まり言葉を塞いでいる

彼女のその表情に不安を覚える


時雨「...何で何も話さないの」


時雨「夕立...もう一度言うよ...提督は...?」


夕立「.....」


時雨「夕立ッ!!」 


夕立「ヒッ!?」


沸き上がる不安は次第に怒りへと変わり初めて僕は彼女に怒気をはらんだ声を発した


時雨「応えて...提督は!?」


夕立「...」


夕立「一命は取り留めた...」


夕立「けど...意識が戻らないって...」


時雨「えっ....?」


ヒビが入る感触が全身に伝う


夕立「鈴谷達の連絡だとそう...今でも意識がなくてこのまま永遠に目が覚めない可能性も...」


絶望が僕を支配する

眠る自尊心は崩壊し自責の念と無力感が生まれる


時雨「嘘だ...違う...そんな訳がない!!」


夕立「時雨!!」


時雨「っ....!」


夕立「夕立だって信じたくないっぽい!!嘘だって思いたい!!夢だと何度も考えた!!」


夕立「けど...これは事実...」


夕立「本当なんだよ....」


時雨「っ....」


分かっていた

一瞬だが僕以上に傷つき今にも消えそうな彼

無事でいる訳がなかった


夕立「元帥ら要人らは死亡...息がある人も皆、重症って...」 


夕立「長門さんからの指示で混乱を避ける為に提督さん達の安否は他の皆には黙っておいてくれと...けど大本営へのテロのせいで艦娘だけじゃなく東京中がパニックに...」


時雨「....」


おもむろにベッドを乱暴に取り側に置いてある制服を着始める


夕立「えっちょ時雨!?」


夕立「何してるっぽい!?まだ完治してないんだから動くのは!!」


時雨「僕が倒す...提督を傷つけた奴...」


時雨「人間だろうと深海棲艦だろうと...全員!!」


夕立「っ!?」


夕立「ま、待つっぽい!!やめて時雨!!」


時雨「うるさい!!」


夕立「ぐっ!?」


彼女を蹴り飛ばし扉へと足を動かす


時雨「僕は...全員を...!!」


Warning!! Warning!! Warning!!


時雨・夕立「っ!?」


が、同時に深海棲艦のゲリラ出現を示すサイレンが鳴り響く


夕立「これは...深海棲艦...!?」


時雨「深海棲艦....!」


夕立「っ!待ってしぐ...ぐっ!?」


溝に入り思うように立ち上がれず暴走する彼女を見てることしか出来ない


夕立「しぐ...れ...!」


...


ー執務室PM17:45ー


長門「っ!!」


大淀「長門さんこれって...」


長門「あぁ....」


陸奥「何で今に深海棲艦が!?」


長門 (くっそ!!こんな時にか...!)


長門「直ぐに出撃に入る!」


長門「編成は旗艦を川内とし、神通、曙、矢矧、赤城、瑞鳳でいく!!」


長門「大淀、直ぐに六人を召集してくれ!!」


大淀「は、はい!!」


大淀「えっと...そうだここに...!」


バァァァァン!!


大淀「いっ!?」


長門・陸奥「っ!」


いち早く放送ボタンを押そうとするがそのコンマ差早く勢いよく扉が開かれる


夕立「はぁっ...はぁっ...」


長門「ゆ、夕立...?」


脇腹を抑えかつてないほどの血相を変えたまるで彼女達に訴えかけるような表情

瞬時にただこどではないと見抜けるほどであった


長門「ど、どうしたんだ!?そんな焦って...」


夕立「時雨が...」


陸奥「時雨ちゃん...?」


夕立「時雨がさっき...単独出撃を!!」


長門「何!?」


陸奥・大淀「!?」


大淀「た、単独出撃!?」


長門「ぐっ...」


長門「直ぐに六人を集めろ!!出現した深海棲艦討伐と同時進行で時雨の捜索に向かう!!」


夕立「長門さん!!」


長門「っ!」


夕立「夕立も行かせて!!時雨を行かせてしまったのは私の責任だから...」


夕立「だから...私も!!」


後書き

感想、評価等お待ちしています


このSSへの評価

15件評価されています


セロリさんから
2021-04-17 22:32:42

2021-04-09 22:21:40

SS好きの名無しさんから
2021-04-05 09:31:25

川柳さんから
2021-04-04 01:12:51

ゔぁ〜さんさんから
2021-04-03 20:28:55

伝説の加治屋さんから
2021-04-02 09:56:20

たぴおさんさんから
2021-03-31 21:52:46

K,Eさんから
2021-03-30 07:36:39

SS好きの名無しさんから
2021-03-29 14:05:42

艦との希望さんから
2021-03-27 08:03:17

サクラプルキさんから
2021-03-27 01:04:26

アスカさんから
2021-03-27 01:02:35

Right さんから
2021-03-26 11:52:26

Kさんさんから
2021-03-24 21:11:12

SS好きの名無しさんから
2021-03-24 14:40:00

このSSへの応援

16件応援されています


セロリさんから
2021-04-17 22:32:47

2021-04-09 22:21:41

S.L.KⅡさんから
2021-04-05 09:31:19

川柳さんから
2021-04-04 01:12:53

ゔぁ〜さんさんから
2021-04-03 20:28:57

伝説の加治屋さんから
2021-04-02 09:56:16

たぴおさんさんから
2021-03-31 21:52:48

2021-03-30 20:07:00

K,Eさんから
2021-03-30 07:36:39

SS好きの名無しさんから
2021-03-29 14:05:39

艦との希望さんから
2021-03-27 08:03:18

サクラプルキさんから
2021-03-27 01:04:28

アスカさんから
2021-03-27 01:02:45

Right さんから
2021-03-24 21:16:11

Kさんさんから
2021-03-24 21:11:06

SS好きの名無しさんから
2021-03-24 14:40:01

このSSへのコメント

10件コメントされています

1: SS好きの名無しさん 2021-03-25 22:26:20 ID: S:5fW5mY

新作頑張ってください!

2: SS好きの名無しさん 2021-03-26 09:41:41 ID: S:fzJiBn

期待しかない

3: アスカ 2021-03-27 01:03:07 ID: S:PKtqfc

概要から分かる面白いやつやん!

4: 嵐山 2021-03-30 01:45:52 ID: S:PFrCC0

1、2さんコメントありがとうございます!ご期待に沿えるよう頑張っていきます😌

5: 嵐山 2021-03-30 01:46:35 ID: S:O33Gud

アスカさんコメントありがとうごさいます!
そう思っていただけるなら嬉しいです!

6: SS好きの名無しさん 2021-03-30 21:32:29 ID: S:zCztVs

面白くなってきたよこれはぁ!!

7: たぴおさん 2021-03-31 22:02:14 ID: S:Uagde8

最高なんだよなぁ…

8: 川柳 2021-04-04 01:14:55 ID: S:Iba3y1

今のところ良い意味で艦これ感が少なく独自性がある作品
スピード感もあってテンポも良いので面白いです
頑張ってください

9: 嵐山 2021-04-10 19:04:57 ID: S:S2NuVL

6さんコメントありがとうごさいます!

10: 嵐山 2021-04-10 19:06:41 ID: S:ZSc3-4

たぴおさんコメントありがとうごさいます!今後もクライマックスの展開が続いていくのでお楽しみください😌

川柳さんコメントありがとうごさいます!
そう思っていただけて光栄です!


このSSへのオススメ

7件オススメされています

1: SS好きの名無しさん 2021-03-25 22:26:04 ID: S:kJtneQ

前々からツイッターで見ていました、頑張ってください!

2: SS好きの名無しさん 2021-03-29 14:06:02 ID: S:ytq04M

期待してます!

3: K,E 2021-03-30 07:36:51 ID: S:9AONNv

ファイトです!

4: アスカ 2021-03-30 22:59:02 ID: S:NjkI-w

壮大な物語の予感....見るしかない!!

5: たぴおさん 2021-03-31 21:54:04 ID: S:dBnLCn

壮大な物語のスケールの予感に思わず引き込まれます
また、物語に読者を引き込ませやすく書いていて、なんかもう最高です!
応援しています!

6: 伝説の加治屋 2021-04-02 09:57:54 ID: S:TeIBD7

似たような作品が増えてきた中で、我流を貫くスタイルに尊敬します!
頑張ってください

7: 川柳 2021-04-04 01:16:04 ID: S:9swCn2

10000文字の時点で既にクライマックスレベルの展開、今後の物語がとても気になります、頑張ってください
陰ながら応援させてもらいます


オススメ度を★で指定してください