2021-07-07 18:55:52 更新

概要

ある戦車兵のお話


前書き

今回は短いお話です。さらさらっと読めるとかと思います。


私はドイツの郊外の平凡な軍人の家庭で生まれた。

父は厳格でとても真っ直ぐした軍人であり、母は優しく穏やかで、けれどもしっかりしていて、兄と私は、そんな両親を見て、とても真面目な子供に育った。



父「自分の人生を恥じない、立派な生き方をしろ」


ヨセフ「はい、お父さん」



父はとても怖い人だった、でも理不尽な怒りなどは決して向けることはなかったし、家にいた時は私たちとよく遊んでもくれた。

そんな父の姿を見て私は、いつしか私も、父のような軍人になりたいと夢を見た。

しかし、ある日、全てが変わった。

その日はとても天気が悪く、雨が絶え間なく降っていた。

仕方なく家の居間の椅子で本を読んでいることにした。

読んでいる時、時々不吉な予感を覚えた。

そして、私の予感は的中した。



ドンドン

とても重いノック音が家中に響き渡る。



母「あら、こんな雨の日に誰かしら....」



母がキッチンで洗い物をしているので、代わりに私が出ることにした



ヨセフ「僕が出てくるよ。もしかしたら昨日遊んだアメリアかもしれない」


母「あらそう?じゃあお願いね」



ドアを開けると、軍服の男性が暗い表情で佇んでいた。

私はあまりに暗い顔に動揺しながらも、恐る恐る訪ねた。



ヨセフ「あの.....どちら様ですか」


仕事仲間?「君が彼の言っていたヨセフ君か....私は君のお父さんの仕事仲間みたいなものだよ」


ヨセフ「そ、そうですか」


仕事仲間?「あ、お母さん呼んできてくれるかな?」


ヨセフ「分かりました...お母さーん!お父さんの仕事仲間の人が来たよ!l


母「え?あぁわかったわ!」



キッチンから二つ返事が帰ってきて直ぐに母が来た。



母「あ、あなたは上官様の....」



母が何かソワソワしてしまっていると



父の上官「ちょっとヨセフ君は部屋にでも戻っておいてくれるかな?」


ヨセフ「は、はい」



私は、父の身に何か起こったことが瞬時に理解できた。

居間に戻るフリをして、扉の陰から2人の様子を見る。



父の上官「お母様、非常に申し上げ難いことですが......二日前にモーゼルさんが名誉の戦死しました」


母「...っ」



それは父の訃報だった。

父の訃報を聞いた母は力なく床に足をつき、声を押し殺して泣いた。

私は母が泣く後ろ姿をただ見守ることしかできなかった。

それから父の上司が母に何かを話しているが、何も耳に入ってこなかった。

その様子を見守っていると、上司が私に気付いたようで、私にこう告げた。



父の上官「...聞いてんだね...」


ヨセフ「...」コクリ


父の上官「...君のお父さんは.......少しの間、皆んなとは会えなくなった」



上司は優しく、けれども何処か哀しげに、子供である私を傷付けないように話す。



父の上官「だから...お父さんが帰ってくるまで、君と、君のお兄ちゃんと一緒にお母さんを守っててほしい、できるかい?」


ヨセフ「...はい」


父の上官「良い子だ...ではお母様、また後日伺います」



上官はそう言い残し、モーゼル家を後にした。

ーーーーーーーーーー

父が戦死したことは、私たち子供にとって辛いことだが、母が一番辛かっただろう。

しかし、母は悲しんだ様子は見せず、私たちを女一手で育ててくれた。

そんな母を見て、私は時々とても悩んだ。

このまま、母の為に地元で仕事を見つけて働くか、軍学校に入学するか。

悩みに悩んでも、決まらなく、遂には兄に相談すると、



兄「自分の生き方は自分が決めろ、母のことを気遣って、自分の夢を諦めるのが間違ってる」


ヨセフ「...」


兄「大丈夫だって、お母さんはそんな弱い人じゃない、何かあれば俺とか近所の人が助けるさ」


ヨセフ「...わかった」



兄の言っていることが正しかった、後日、母にそのことを相談すると



母「.......では行きなさい。私はヨセフの夢を潰すような真似はしたくない」


ヨセフ「お母さん...」


母「お父さんが戦死したことを気にしてるの?」


ヨセフ「...うん、だから僕が軍人になったら、お母さんが悲しむかなって、」


母「...確かに辛いわ、もしヨセフまでも死んでしまったと考えると......でもヨセフを引き留めることなんてしない。ヨセフが軍人になっても、責めることなんてしない」


ヨセフ「...ありがとう」



母の本心は違ったかもしれない、もしかしたら今すぐにでも思い直させたかったと思う。でも母は私のことを考えてくれた、本当に良い両親を持った、そして同時に、母や兄にはとても悪いことをしてしまったと自責の念に駆られてしまった。


そして時は経って16歳の頃、私は軍学校に入学し、20歳の頃には無事に戦車兵になることができた。

首席までとは行かないが、私の戦車兵としての能力を讃えられ、車長として着くことになった。

私は嬉しくて堪らなかった。

そして戦場に送られる前日に家に帰ることにした。

久しぶりの巣帰りに緊張して、玄関前に立ち往生していると、不意に背後から声が聞こえた。

振り返ると、そこには母と兄がいた。



兄「...ヨセフ、」


ヨセフ「母さん...兄さん.....ただいま」


兄、母「「おかえり、ヨセフ」」



家族は私を暖かく迎えて入れてくれた。

それから私は家族と沢山思い出に浸ったったり、雑談をした。

楽しい時間も過ぎ、基地に戻る時間が近づいてきた。

二人は駅まで見送りにきてくれた。



ヨセフ「...じゃあ、そろそろ、」


母「えぇ、絶対に帰ってきて」



列車に乗り込み、窓側の席に座り、二人を見下ろす。



兄「ヨセフ!絶対に死ぬなよ!」


ヨセフ「あぁ、絶対に帰ってくるから!」



ーーーーーーーーーーーーーーー



戻ってからは、早速、前線に配備されることになった。

そして戦線に配属されてから数ヶ月、私は多くの敵戦車を撃破し、昇格していった。



同期「ヨセフ、またやったみたいだな!」


ヨセフ「あれはみんなが居たからできたんだよ」


同期「相変わらず謙虚だな...話は変わるが、例のアレ、もうそろそろみたいだな」


ヨセフ「...何の話だ?」


同期「聞いてなかったのか?近々、新型の戦車が配備されるんだよ。もしかしたらヨセフが乗ることになるかもしれない」


ヨセフ「貴重な情報ありがとう」


同期「残念ながら、俺は今まで通りだろうけどな...それと...」


上官「ヨセフ!少し良いか?」


ヨセフ「はい、今行きます。じゃあまた後で」


同期「おう!またな!...話そびれちまった...まあ良いか....」

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

上官「呼び出してしまったすまないね...実は君に転属してもらうことになった


ヨセフ「...場所は何処でしょう」


上官「パリの最前線だ、それに伴って、君の搭乗車両も変わる。」


ヨセフ「車両は...」


上官「V号戦車パンターだ、今まで君が乗っていたIV号戦車とは事情が変わってくるが...引き受けてもらえるか?」


ヨセフ「...了解です」


上官「よかった、あ、これは転属書類と、パンターについてのマニュアルだ...じゃあ二週間後、始発のパリ行きの列車に乗ってくれ、チケットはこちらで用意する」


ヨセフ「ありがとうございます」


上官「あぁ、それと...」


ヨセフ「なんでしょう?」


上官「パリは激戦区だ...気をつけろ、」


ヨセフ「...わかりました、教えていただきありがとうございます、では、失礼します」

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

まさか私が配備されたばかりの戦車に乗れるとは思わなかった。

写真を見ると、今まで乗っていたlV号戦車と違って、全てが一新されていた。

大きさに主砲、見た目に関してはIV号戦車の面影などない。



ヨセフ「パリが激戦区か...」



パリはフランスの首都のであり、第二次世界大戦が初まって数年後に我々の占領下に置かれている。

しかし今年の1944年の6月6日に連合軍がノルマンディーに上陸、そのまま元フランス領を奪還している。

まさかパリが激戦区になるとは、連合軍の侵攻速度に驚くばかりだった。



ヨセフ「明日に備えて寝るか...」



これは死令だろう。もしかしたら私は今度こそ死んでしまうのかもしれない。そんな不安を抱きながら、闇の中に意識が沈んでいった。


後書き

ご愛読ありがとうございました。こちらの作品は続編を出すか迷っているところです....伸びたら多分出します笑


このSSへの評価

このSSへの応援

このSSへのコメント


このSSへのオススメ


オススメ度を★で指定してください