2021-09-03 07:03:51 更新

概要

愛が重いにも程がある。





【鎮守府内 執務室前廊下】








提督「失礼しました…後はよろしくお願い致します…」





本来自分が居るはずの執務室に対し頭を下げた後、提督が出てきた。





白露「提督…」


提督「白露…」



廊下に出るとすぐに白露が駆け寄って来る。



提督「すまないな、そういう事だ」


白露「提督ぅ…ぐすっ…」



提督の少し諦めたような謝罪に白露が目に涙を浮かべる。



白露「白露が一番だって言ってくれたの…嘘だったの…?」


提督「…」



俯いた白露の目から涙が零れた。


提督は何も言えず黙って口を噤んでいる。



村雨「白露姉さんに近寄らないでよ!このロリコンっ!!」


 

そこへ2人の白露の姉妹艦がやって来る。


 

時雨「君には心底失望したよ…!これまで白露がどんな気持ちで支えてきたと思っているんだ!」


村雨「そんな気持ちを踏みにじるようなことして!恥ずかしくないの!?」


白露「ふ、二人ともやめて…」


提督「はは…弁解するつもりはないよ」


 

白露を庇うように前に立って責め始める二人に提督は苦笑いで返すことしかできなかった。

 


提督「みんな、元気でな」 


村雨「さっさと白露姉さんの視界から消えて!この強姦魔!」


時雨「二度と僕達の前に現れないで…!」


提督「わかったよ…」



提督は寂しそうにしながらもどこかさっぱりとした笑みを見せ、鎮守府を去っていった。










『海防艦強姦未遂の現行犯・着替えや入渠施設の盗撮』

















これが原因で彼は鎮守府を追放され








 


地方の辺境の地へと飛ばされることになった

















白露「提督…」










白露は去り行く彼の背を寂しく見つめていた。









____________________










 


事の発端は1週間前



提督は同じく海軍提督である弟の鎮守府に行っていた。



弟は海防艦を中心とした艦隊で、主に鎮守府周辺海域の敵潜水艦への対処を行う任務を任されていた。



そんな弟の鎮守府に何をしに行ったのかというと…




【弟の鎮守府 廊下】




大本営の役員達が用事のために訪れていて弟の執務室へと向かう途中…








『キャアアアアアァァァァァッッ!!!』







耳をつんざくような悲鳴が聞こえてきた。



役員A「な、何事だ!?」



役員達が悲鳴の聞こえた方へ足を走らせた。

悲鳴が聞こえたであろう部屋のドアを開ける。



そこには…






提督「げっ…」








鎮守府にある客間で






役員A「お、お前、何を…!?」






提督がベッドの上で海防艦・石垣を左手で押さえ付け






役員B「へ、変態野郎!」


役員C「捕まえろっ!!」






右手で自分のズボンを降ろそうとしているところを現行犯で捕まった。




話はそれだけではない。




提督は海防艦の着替えやパンチラ等の写真を弟に取らせたり、下着を集めさせたりしていた正真正銘の変態だったのだ。



海軍提督をクビにされてもおかしくないような所業ではあったのだが、慢性的に人手不足である海軍であったため、遠い辺境の地へと飛ばされることとなった。




その知らせを聞いた秘書艦・白露は悲しそうに涙を零し、静かに泣き続けたという。









【辺境の鎮守府】








提督「さて…」






遠い北の果てに辿り着いた提督は深く深呼吸をする。




以前居た都会とは違いとても空気が澄んでいて何度も深呼吸を繰り返した。








提督「行くか…!」








深呼吸を終えた提督はまっすぐ前を見て歩き始める。






その表情はとても鎮守府を追い出された人間だとは思えないほどにスッキリとしていた。











【鎮守府内 執務室】










あちこち痛みのありそうな鎮守府内


その中を修理する目論見をしながら提督は執務室に辿り着いた。



青葉「どうもー!青葉ですー!着任の一言をお願いします司令官!」


提督「…」



いきなりの青葉の出迎えに提督は思わず口を噤む。



青葉「そんな警戒しないで下さいよ!海防艦に手を出そうとした司令官だからと言って無理な取材はしませんから!」


提督「…」


青葉「な、何とか言って下さいよぉ!」



青葉の不審な行動に提督は注意深く観察しながら口を開かなかった。



伊14「そんなこと言ってさ、またゴシップネタで一儲けしようと企んでるんじゃないの?」


提督「儲ける?」


青葉「イヨさん!しーーー!しーーー!」



後ろからひょっこり現れた潜水艦伊14の言葉に提督が眉を顰める。




伊14「こんちわー提督、伊14だよ。よろしくぅ!」


提督「う…」




元気よく提督の近くに来て挨拶をする伊14に対し提督は思わず後ずさる。




彼女がとても酒臭かったせいだ。



手には一升瓶を持っており足取りもおぼつかない。


昼間っから飲んでいることが嫌でも理解できてしまう。


 


伊14「どうしたのー提督?もしかして私に見惚れてたー?ひっく…」


提督「…」

 


あまりの酒臭さに眩暈がしたのか提督は息を止めながら立ち上がり窓を開けた。


 

提督「うおおぉ!?」

 


窓を開けるといきなり何かが飛び込んでくる。


 

提督「艦載機…?」

 


飛び込んできた艦載機は執務室の机に着地する。


 

伊14「あー、瑞雲だー。ひっ…うぷ…」


青葉「相変わらずですねえ、日向さん」


提督「…?」



着地した瑞雲を見ると何か手紙のような物が取り付けられていた。


 


 


 


『着任おめでとう、記念に特別な瑞雲をやろう。 瑞雲教教祖・日向』


 


 


 


伊14「日向さんってば、また信者増やそうとしてるー」


青葉「あまりにも布教活動がうっとおしいから前の鎮守府を追い出されたんですよねえ」 


提督「…」




この鎮守府にまともな奴はいないのか…






提督はそう思い頭を抱えた。






___________________






青葉、伊14を一旦退室させて提督はこの鎮守府に置いてある資料を確認する。


その中にこの鎮守府の艦娘達の資料を見つけた。


現在この鎮守府に居る艦娘は4人。問題児ばかりで鎮守府を追い出されたらしい。


青葉はゴシップネタで提督を脅し金品を巻き上げたり雑誌社に売り渡したりしたため。 


伊14は重度のアルコール依存症で酒を飲むだけでなく周りの艦娘達にも飲ませようとする迷惑行為が度を過ぎたため。


日向は瑞雲を世に広めようと任務をっちのけで行っていたため。



提督「…」



見ると彼女達の戦歴は華々しく実力も申し分ない。


 


それなのに問題行動が足を引っ張り過ぎているため各鎮守府からの評価は最低だった。


勿体無いなと思いながら次の資料を見る。

  


この鎮守府に居る4人目の艦娘


 


 


 


 


長門「失礼する」


 


 


 


いきなりノックもせずにドアが開けられた。



長門「海防艦に手を出して鎮守府を追い出されたというのはお前か?」


提督「ああ。君は長門?」


長門「うむ…」

 


返事をしながら長門はそのまま机の前に近づき、机に身を乗り出し提督に急接近する。

 


何事かと提督は身を怯ませた。


 

 


長門「同士よ…!」


 


 


提督「は?」


 

長門は身を乗り出しながら提督の手をギュッと握る。


 

長門「わかる、わかるぞ!海防艦は可愛いよな!駆逐艦と良い勝負…いや、それ以上だ!あの儚げな彼女達につい手を出してしまうのは仕方ないよな!」


提督「何言って…」


長門「聞けばお前は駆逐艦達だけの鎮守府に居たらしいな!それだけでは我慢できなかったのだな?そうだな!?」


提督「おい…」


長門「安心しろ!私が秘書艦をしてやろう!お前が戻れるよう全力でサポートする!だからその時は…」



長門は頬を紅く染め、うるんだ瞳を見せる。


一見告白前の乙女の表情だが…


 


長門「その時は私も一緒に連れて行ってくれ…!」


提督「…」


 


 


 


ビッグセブンにも名を連ねる大戦艦長門


 


 


 


 


彼女は前の鎮守府で海防艦達の風呂場に侵入しスキンシップと称してセクハラ行為をしたため追放となったらしい


 


 


 


 


 


 


提督「長門」


長門「なんだ!?」


提督「一緒にしないでくれないか?」


長門「はははは、照れるな照れるな!そうだ、私の駆逐艦これくしょんを持ってきたぞ!一緒に見よう!」


提督「…」


 

この後、提督は長門の持ってきた小さな駆逐艦達の写った写真集を見るのに3時間も付き合わされた。


 


 


 


 


 



その後…


 


 


 


青葉に大本営のゴシップネタを餌に働かせたり


 

伊14の酒を隠して出撃させたり



日向に瑞雲教に入りそうな艦娘を紹介したり


 

長門のロリコン談議に付き合わされたりと忙しい毎日を送っていた。


 

キャラの濃すぎる艦娘達との付き合いに提督は毎日振り回されたりしていたが


 

どこか心の安らぐ毎日を過ごすことができていた。


 

前の鎮守府での出来事を忘れようとしている頃


 

彼女はやって来た…

 






【鎮守府内 執務室】


 


 


 


 


 


提督「し、白露…」


白露「提督…」


 


提督の前に現れたのは前の鎮守府で秘書艦をしていた白露だった。


 


提督「どうしてここが…」


白露「探すの大変だったよ?大本営も中々行き先教えてくれなくってさ…本当、苦労したよ」


長門「提督、彼女は?」


提督「前の鎮守府で俺の秘書艦をしていた駆逐艦だ…」


長門「駆逐艦…」

 


長門がジロジロと白露を見る。


どうやら本当に駆逐艦なのか疑っている様だった。


無理もない、白露は既に改二改装を終えていてそこらの軽巡、重巡よりも身体の発育具合がとても良いためだ。


 


提督「一体何の用だ、こんなところまで来て」


白露「提督…」


 

白露は提督に対し深々と頭を下げる。


 

白露「どうか…白露達の鎮守府に帰ってきて下さい…!」


 

そして提督に鎮守府に帰ってくるようお願いした。


 

提督「今更何を言って…」


白露「提督…あの強姦未遂は嘘だよね?」


提督「…」


長門「なん…だと…」

 


提督よりも長門の方が驚いていた。



提督「いいや、事実だ」


白露「そんなはずないよ…!だって私、提督の弟さんに聞いたもん!」


提督「…!!」


 

弟の名を出されて提督が身体をビクつかせる。

 


白露「提督…弟さんのために…」


提督「黙れ…」


長門「提督?」


提督「その事は一切口にするな…!」


白露「…」



提督の咎めるような声に白露は黙るしかなかった。

 


白露「提督…お願い、誤解はもう解けるんだよ?帰って来てよ…」


提督「ダメだ。俺はここを離れるわけにはいかない」


白露「提督…!っ…ぅ…」



頑なに戻ろうとしない提督に対し白露が涙を零す。

 


白露「お願い…だよ…。提督がいなくなって…新しい提督が来たんだけどね…」



顔を俯かせながら白露がポツポツと話し出す。


 

白露「新しい提督は酷い人だよ…みんなに無理強いをして…休みなんてくれなくって…傷だらけになっても修理してくれなくって…挙句に…!」


 

白露が泣きながら唇を噛み締める。



白露「挙句に…私の妹達に…手を…夜の御供だって言って…!」


長門「な、なんだとぉ!?」

 


白露の言葉に大きく反応を示したのは長門だった。

 


提督「…」

 


しかし提督は黙って何も言わない。

 


長門「こうしてはおれん!提督、行くぞ!」


白露「お願いだよ提督…!みんなを…妹達を助けて…!」


 


長門に促され、白露に再度お願いされる。

 


提督「何度も言うが俺は戻る気は無い」

 


それでも提督は動こうとしなかった。



提督「さっさと帰れ!いい加減にしないとお前の鎮守府に連絡を入れるぞっ!!」


白露「…!?」


長門「おい…!」


 


提督の言葉に白露は力無く項垂れて


 


白露「わかったよ…」


 


元気を無くしたまま執務室を出て行ってしまった。


 


 


 


 


 


 


 


 


 


 


 


 


 


長門「提督…!なんであんな…本当に放っておいていいのか!?」


 


怒りを露にする長門に対し提督は


 


提督「あんなものは全部嘘だ」


長門「なに…?」


 


 


 


冷静な顔つきのままそう答えた。


 


 


 


 

 



【鎮守府内 執務室】


 


 


 


伊14「あれ?お客さんは?」


提督「もう帰ったよ」


日向「残念だ…瑞雲を…いや、駆逐艦には積めないか」 


長門「本当に残念だ…私も一緒に行きたかった…」


伊14「歓迎会でもやればお酒飲めたのにー、ちぇっ」


提督「…」


 

これから出撃のための話をしようというのに愚痴にも近い彼女達の言葉に提督は呆れた溜息を吐いた。


しかしそんな中…

 


青葉「…」 


提督「青葉…?」

 


青葉だけが顔を下に向けて無言だった。


  


提督「青葉…お前まさか…」


青葉「…!!」


  


ギクリと青葉が肩を震わせた時…


 


 


 


 


 


 


『てい…とく…』


 


 


 


 


提督「え…?」


長門「通信か?」


 


執務室にある通信機から声が聞こえてきた。


 

提督「だ…誰だ…?」


 

提督が恐る恐る返事を待つと…


 

白露『ごめんね…私…』


提督「し、白露…?」

 


通信機から白露の声が聞こえてきた。


 


白露『帰ろうと思ったけど…道中で会敵しちゃった…』


長門「な、なんだと…」


白露『損傷酷くって…動けなくなっちゃった…』


伊14「た、大変じゃない!」



提督が急いで執務室にある電子パネルを開く。



そこには白露らしき反応と深海棲艦の反応が映し出された。


白露一人に対し深海棲艦は5体。


誰から見ても絶体絶命だった。


 

提督「…」


 

提督は電子パネルを操作しながら何も言わない。

 


青葉「は…早く助けに行かないと!」


日向「瑞雲を飛ばそうか?」


提督「…」


伊14「提督!」


長門「急がなければ…!」


提督「…」


 

急かす艦娘達に対し提督は顔を俯かせたまま何も言わず頭を抱えた。


 

白露『提督…ごめんね…いつもいつも迷惑ばっかり掛けて…』


提督「白露…」


白露『でもね…これで終わりだから…ぐすっ…っ…』


 

通信機を通して白露の泣き声が聞こえてきた。


 


白露『さようなら…大好きだよ提督…』


提督「っぐ…!!」


 

提督は勢いよく立ち上がり顔を上げる。


 

 


提督「白露を助けに行ってくれ!」


 

 


そして4人の艦娘達に頭を下げた。


 


青葉「青葉、ネタの提供を希望します」


提督「大本営のヤバイネタをくれてやる!」


伊14「イヨ…珍しいお酒欲しいなあ」 


提督「とっておきの酒を取り寄せてやる!」


日向「瑞雲…」


提督「搭載できそうな航空戦艦を紹介するぞ!」


長門「私は…」


提督「海防艦の写真集を取り寄せてやる!」


 


長門「よし!行くぞ!艦隊、この長門に続けぇ!!」


 


 


 


 


 


 


やる気に満ち溢れた4人は執務室を飛び出していった。


 


 


 


 


 


提督「…」


 

 


 


後に残された提督は深いため息を吐いた。








その後、白露を囲んでいた深海棲艦は長門達の姿を見ると蜘蛛の子散らすように逃げ出してしまい


 


 


 


 


中破状態にあった白露を無事に救出することができた。


 


 


 


 


 


 


 


 


【鎮守府近郊 港】


 


 


 


 


白露「ていとくーーーーーー!!!」


 


 


 


港へ帰還した艦娘達を迎えに行くと白露が勢いよく提督に向かって走ってきた。


 


 


 


 


あちこち傷だらけで衣服もかなり乱れている。

 

白露の魅力的で大きな胸が揺れ、生肌が露わになっていた。


 


 


白露「やっぱり白露を助けてくれたね!ありがとう!ありがとう!」


提督「うおっと…」


 


白露は提督に飛びつくようにして抱き着いた。


提督はその勢いによろけそうになったが何とか堪え白露を抱きとめる。


白露はギュッと力強く抱きしめ、自分の胸を躊躇うことなく押し付ける。


 


 


 


そして…


 


 


 


白露「んちゅっ…」


提督「んぅっ!?」


伊14「わわっ!」


青葉「スクープのチャンスですね!」


 


 


白露はそのまま提督の唇を奪った。


 


唇を触れさせるだけじゃなく貪るようなディープキスだった。


 


白露「じゅる…みゅ…んゆ…んーーーっちゅ!ふふ、これでもう責任取るしかないね!」


提督「お、お前なあ…!」


白露「提督!白露はこれからもずーーーっと傍に居るから、いっちばん大事にしてね!」


 

 


 


満面の笑みで提督に擦り寄る白露に


 


 


提督「あはは…」


 


 


 


提督は力無く笑うしかなかった。


 


 


 


 


 


 


 


 


 


 


 


 


 


 


 


 


 


 


 


 


 


本編はここで終了です


 


 


 


 


 


 


 


 


 


しかしこの本編は登場人物の表の顔を映したものです


 


 


 


 


 


 


 


 


 


ここで時を大きく戻し、もう一度この物語を見てみましょう


 


 


 


 


 


 


 


 


今度は彼らや彼女達の裏の顔を映し出します


 


 


 


 


 


 


 


 


この物語が


 


 


 


 


 


 


 


 


本当はふざけた喜劇だということが露わになります…


 


 


 


 

 


 


 


 


 




本編







 


思えば…


 


 


 


 


 


あんな不純な動機で艦娘を選んだのが間違いだったのだろう…


 


 


 


 


 


 


 


 


【数年前 大本営】


 


 


 


提督「いよいよだな」


 


弟「う、うん…!」


 


 


新しく海軍提督となった俺と弟は気持ちが逸るのを抑えるのに必死だった。


 


 


弟「父さんの遺志をしっかり継いで…立派な海軍提督になろう!」


 


提督「ああ!」


 


 


 


俺達と同じく海軍提督だった父は数年前に病死した。


 


そんな父の背を追って俺と弟は艦娘達を率いて海の平和を護る仕事に就こうとしていた。


 


 


 


 


…表向きはこんな理由だ。


 


面接でも好印象を与えるには最高の材料だからな。


 


 


 


 


 


【大本営 小会議室】


 


 


 


さっそく俺と弟は大本営の小会議室に通される。


 


 


これから着任する鎮守府を選ぶための資料が机にたくさん積まれていた。


 


 


役員「各鎮守府と所属する艦娘の載っているものです。確認して下さい。あなた達はまだ新人ですので所属する鎮守府は駆逐艦か海防艦の居る鎮守府となります」


 


 


 


一通り説明を受けた後、資料を見ると鎮守府名と所属する艦娘の顔写真が載せられている。


 


しかしこれだけでは分かり辛いな…


 


 


提督「あの…艦娘の写真は全身が写っているものが欲しいのですがありますか?」


 


役員「あ、はい。こちらに、少々お待ち下さい」


 


 


役員は俺の願いを聞き入れ棚にある資料から艦娘の資料を取り出してくれた。


 


 


弟「さすが兄さん、(戦闘)スタイルを確認するなんて熱心だね」


 


提督「当然、スタイルは大事だろう」


 


 


 


 


そう…大事だ。


 


 


スタイル(胸)は最重要事項だ。


 


 


目の保養にもならんガキどもの鎮守府に行ったらストレスで気が狂うだろうからな。


 


 


 


 


 


 


 


 


 


 


 


 


俺が海軍提督を目指した理由


 


 


それは可愛い艦娘達とヤるためだった。


 


 


 


 


 


 


 


俺がこんな歪んだ思考を持つようになったのは親父のせいだ。


 


 


 


 


 


 


____________________


 


 


 


 


俺が早い思春期を迎えるかどうかの小さい頃


 


親父が艦娘を家に連れてきた。


 


 


 


大本営に行く途中に一泊するために寄っただけなのだが、その時は艦娘を連れていた。


 


 


 


飛龍「飛龍です、よろしくね!」


 


蒼龍「蒼龍よ、初めまして!」


 


 


 


女に強い興味と性欲が芽生え始めた俺にとって刺激的過ぎる出会いだった。


 


当時艦娘というものがよくわかっていなかったが、二人が美人だというのは一目でわかった。


 


 


それだけでなく飛龍、特に蒼龍の胸はとても大きく俺はチラチラと何度も覗き見してしまった。


 


 


弟はまだまだ小さかったため無邪気に飛龍に抱き着いていた。


 


俺はそんな弟が羨ましいと思いながらも必死に下半身から湧き上がりそうな何かを抑えていた。


 


 


 


 


 


その日の夜…


 


 


 


 


いつものように弟と一緒に風呂に入っている時だった。


 


 


 


蒼龍「おじゃましまーす」


 


飛龍「わぁ!本当にひろーい!」


 


 


 


いきなり風呂場に飛龍と蒼龍が入ってきた。


 


 


 


もちろん裸で…


 


 


 


風呂が広いことを親父から聞かされて俺と弟が居るにも拘わらず入ってきたらしい。


 


 


当時は俺も弟も小さかったから気にしなかったのだろう。


 


 


 


 


気が動転した俺は湯船で固まってしまい二人の美しい裸体を目に焼き付けてしまった。


 


 


 


 


水を弾く美しい肌


 


 


 


なめらかな曲線を描くヒップ


 


 


 


艶めかしい形の秘部


 


 


 


そしてたゆんたゆん弾む大きな胸


 


 


 


 


俺の視線など気にも留めない二人だったので、普段ならば3分で上がる湯船に俺は1時間以上居続け、気を失うまで二人の裸体を脳裏に焼き付けた。


 


 


 


 


 


 


 


 


 


 


 


 


 


 


 


 


その夜から俺は二人の裸をオカズにして抜き続けた。


 


 


 


 


 


そんな夜が十数年続いた時


 


 


 


 


父が病気で亡くなった。


 


 


 


 


 


 


 


生前の父は俺に『海軍提督には絶対になるな、弟にもそう言ってくれ』と言っていた。


 


 


自分がやっている仕事がとても辛いことを自覚し、息子である俺達にさせたくなかったのだろう。


 


 


 


しかし俺にとってそんなのは知ったことでは無い。


 


 


艦娘に対して今でも強い性欲を覚える俺は父の遺言を思いっきり無視して海軍提督の道を進むことを決めた。


 


弟には『生前父が海軍提督を継いで欲しいと言っていた』とデタラメを吹き込んだ。


 


純粋な弟は俺の言葉を疑うことなく信じ、俺と共に海軍提督になるための道を進んでくれた。


 


 


 


 


 


 


 


 


 


 


 


 


憧れの艦娘とヤれる(もちろん巨乳の)


 


 


 


ついにそんな夢が叶うところまできて逸る気持ちを抑えるので精一杯だった。


 


 


 


 


 


  


 


 


さて、視線を手元の資料に移そう。


 


 


 


これから所属する艦娘達の全身図が載っている。


 


 


 


ひとつの鎮守府に所属できる艦娘は4人から8人。


 


慎重に選ばねば…


 


 


 


 


 


提督(吹雪型、睦月型、初春型、暁型…こいつらはダメだな、問題外だ)


 


 


彼女達が載っている資料を机に置くとそれだけで残りが7割くらいになる。


 


くそ…こんな調子で大丈夫か?


 


 


 


提督(神風型…小さくは無いが…うーむ…)


 


 


その後…


 


 


提督(朝潮型に綾波型…巨乳一人だけとかバランス悪い…!)


 


 


徐々に資料が減っていき


 


 


提督(陽炎型…おお!夕雲型も…だが…艦娘の数が多すぎる…!8人全員貧乳しか来なかったら絶望するぞ…!)


 


 


次第に焦りが強くなった頃…


 


 


 


提督「こ、これだ!」


 


 


 


行きたい鎮守府、というより会いたい艦娘達の鎮守府を見つけ出した。


 


 


 


提督「ここにします!この秋月型の鎮守府へ!」


 


 


 


秋月姉妹はこの時4人が揃っていた。


 


 


照月、涼月は巨乳と言って良い程に大きく、秋月と初月も二人に比べやや小ぶりだが十分胸があるように見えた。


 


 


 


 


しかし…


 


 


 


 


役員「あ、すみません。秋月型は新人の提督には着任することができなくてですね」


 


提督「あ?」


 


役員「き、規則なんです!そう決まっていますから!」


 


弟「に、兄さん…落ち着いてよ…」


 


提督「…」


 


 


 


希望と絶望を行き来してしまい、つい脅すような声が出てしまった。


 


 


残った資料はひとつだけ…


 


ガッカリしながらも艦娘の資料を見る。


 


 


提督(ん…?これは…)


 


 


艦娘の合計人数が10人。


その内約半数が貧乳ではない。


 


…もうここしか残されていなかった。


 


 


 


提督「ではここにします」


 


 


 


役員に資料を渡し、行き先を決める。


 


俺が決めたのは白露型駆逐艦の居る鎮守府だった。


 


 


 


資料の中には改二の駆逐艦、時雨、村雨、夕立。


 


彼女達は他の駆逐艦に比べ発育がとても良かった。


まだ改二改装の無い白露や春雨、海風や山風も服からの盛り上がりが見て取れていた。


 


 


『最大8人までの着任なら10人しかいない白露型ならば彼女達が来る可能性は非常に高い!』


 


 


白露型を選んだ理由はそんな不純な動機だった。


 


 


役員「わかりました、では手続き…」


 


提督(よしっ!)


 


 


今度はすんなりと受け入れられたようで俺の行き先は決定した。


 


 


 


 


弟「僕はここに…」


 


 


 


そして弟は占守型海防艦の居る鎮守府へと行き先を決めた。


 


 


大人し目な弟らしい選択だと納得をした。


 


 


 


 


 


 


 


 


 


 


弟「また会おうね、兄さん」


 


提督「ああ、元気でな」


 


 


 


 


こうして行き先を決めた俺と弟はそれぞれの鎮守府へと向かい歩き出した。


 


 


 


 


『憧れの艦娘とヤれる』


 


 


 


そんな不純な気持ちを抑えながら…


 


 


 

 


【鎮守府内 執務室】


 


 


 


 


 


鎮守府に来て早速自己紹介のために艦娘に集まってもらった。


 


 


集まった艦娘は4人。


 


 


白露「白露です!白露型の一番艦だよ!」


 


時雨「僕は時雨…」


 


村雨「はーい、村雨さんよ」


 


夕立「駆逐艦夕立、提督さんよろしくねっ!」


 


 


 


俺は心の中でガッツポーズをした。


 


 


一番来て欲しかった3人が一気に着任したのだ。


胸の中が嬉しさで溢れそうだった。


 


 


提督「今回初めて海軍提督となり君達の指導を任されることになった。よろしく頼む」


 


 


こうして着任の挨拶は無事終了した。


 


 


 


時雨「ねえ提督、秘書艦は誰にするの?」


 


提督「秘書艦?ああ…」


 


 


提督の身の回りの世話や艦娘への伝達係をする者だ。


そういえばそんなものもあったなと頭の中で思う。


 


 


 


提督「そうだな…」


 


 


俺は並んだ四人の艦娘に視線を移す。


顔ではなく気づかれないよう主に胸を見た。


 


 


 


夕立…良い感じに胸が盛り上がってる。しかし天然の元気娘は扱うのが難しそうだ。


 


 


村雨…この中で文句無しスタイルナンバーワン。だが大人な雰囲気の女性といった感じで簡単に靡いてくれそうにない。


 


 


時雨…4人の中で一番小ぶり、と言っても小さくはない。物静かで少し絡み辛いかもしれない。


 


 


 


 


残るは…


 


 


 


提督(な…!)


 


 


 


白露の胸に視線が行って俺は驚いた。


 


彼女は写真で見たときに比べかなり大きかった。


おかしい…俺が大本営で見た写真とは随分と違う…。


 


 


提督「白露、ちょっと良いか?」


 


白露「なぁに提督?」


 


 


 


俺は持っていた資料から白露の全体写真を見せる。


 


 


提督「お前…なんかこの写真と違わないか?」


 


白露「ああ、この写真は着任したての時に撮ったやつだね」


 


時雨「本当だ…僕達のは改二後の写真だけど…」


 


村雨「白露姉さんのは改装前の写真ね」


 


夕立「今は改になってるっぽい!この写真は着任当時の写真っぽいよ!」


 


提督「なるほどな…」


 


 


 


そういうことか。


 


この白露も改装されて…


 


チラリと白露の胸を拝む。


大きくて柔らかそうなのが服の上からでもよくわかった。


 


 


この後に改二改装があるかもしれないことを考えると将来有望だな…!


 


 


それにこの中では一番扱い易そうな艦娘だと思えた。


 


 


 


提督「秘書艦は誰って決めてなかったからな、とりあえず白露、やってみるか?」


 


白露「もっちろん!白露が一番だね!」


 


 


俺に選ばれた白露は嬉しそうに秘書艦を受け入れた。


『とりあえず』とは言ったが選択基準はもちろん胸のサイズだ。


 


 


提督「これからよろしくな、白露」


 


白露「うん!一番の秘書艦を目指して頑張るよ!」


 


 


 


 


今思えば


 


 


 


 


この時の選択も


 


 


 


 


大きな間違いだった…


 


 


 


 


 


 


 


 


 


 


 


 


 


扱い易そう


 


すぐヤれそう


 


 


そんな不純な選択基準が後に大きな災いを招くことなど


 


 


浮かれ気分でいた俺には想像できるはずも無かった…


 


 



  




 

【鎮守府内 執務室】


 


 


白露「提督、次の書類は?」


 


提督「ああ、こっちだ。そいつを確認するから見せてくれ」


 


白露「はーい」


 


 


早速白露を秘書艦として傍に置いて仕事をする。


白露がグラマーな艦娘ということもあってとても気分が良く執務に励むことができた。


 


 


白露「ちょっと失礼するね」


 


提督「あ、ああ」


 


 


おまけにかなり無警戒に俺に近づくため、スカートの中の純白の下着が見えたり制服の隙間からブラジャーが覗けたりと目の保養になってくれた。


 


その気になれば写真撮影くらいできそうな無警戒さだったが、うっかりボロが出て何もかも台なしになるリスクを取るわけにもいかず、大人しく目に焼き付けるだけで我慢していた。


 


肝心の仕事の方だが…


 


 


提督「白露、ここ間違ってる」


 


白露「う、嘘!?ホントだ・・・ごめんなさい提督・・・」


 


 


張り切りが空回りしてミスすることもしばしばだった。


 


 


提督「気にするな、次からは気をつけような」


 


白露「うんっ」


 


 


多少ミスしようとも俺は一切咎めるようなことはしなかった。


彼女が秘書艦をすることでチェックが増え、その結果仕事が増えてしまっても気にしなかった。


 


それには理由がある。


 


 


 


【鎮守府内 演習場】


 


 


 


時雨「砲撃戦、行くよ!」


 


村雨「ガンガンやっちゃうからね!」


 


夕立「出撃するっぽい!」


 


 


演習場で白露姉妹が海に並べられた的を次々と撃沈していく。


俺はその様子を、主にスカートを双眼鏡から見ていた。


 


 


激しい動きの演習は彼女達の衣服を簡単に乱す。


俺はその瞬間を見逃さないよう彼女達の姿を追っていた。


 


 


うむ、眼福だ。


海軍提督になって本当に良かった。


 


 


 


 


白露「はぁ…!はぁ…!」


 


時雨「白露、大丈夫?」


 


白露「大丈夫!提督にいっちばん良いところ見せるよー!!」


 


 


 


 


そんな中、白露は3人の妹に比べ出遅れていた。


 


無理もない、改二改装を終えていた時雨、村雨、夕立に比べ性能的には大きく劣っている。


同じ土俵で戦うことなどできず、いつも演習では一歩以上出遅れていた。


 


 


双眼鏡から白露の表情を覗いていて早速彼女の弱点を見つけることができた。


 


 


提督(辛いよな、自分の妹達の方が優秀なんて)


 


 


白露の表情に焦りと不安が入り混じっているのを見逃さなかった。


 


あの表情は妹達に対する劣等感を必死に隠そうとするものだ。


 


 


俺が弟に対して勉学で負けていて嫉妬したように、弟が俺の運動能力に対して劣等感を抱いたように。


 


白露も改二改装を終えて飛躍的に能力向上した妹達に強い劣等感と焦燥感を抱いているはずだ。


 


 


提督「わかるぞその気持ち、ふふふ」


 


 


 


俺は白露のその感情を利用しようと色々と考え始めた。


 


 


 


 



 


 


【鎮守府内 執務室】


 


 


 


 


数日後の夜、いつものように演習を終えた白露が秘書艦として手伝ってくれている。


 


手伝うと言ってもいつもよりミスが多く秘書艦の仕事に集中できていないように見えた。


 


 


提督「白露…ここ…また間違ってる」


 


白露「ご、ごめんなさい提督…」


 


 


集中できていない理由は今日の演習のことを引きずっているからだろう。


 


 


 


昼間の演習は白露型四人の総当たりを行った。


 


 


結果は村雨と夕立が2勝1敗、時雨が1勝2敗、白露は3敗だった。


 


『決して手を抜かないように。それは相手への侮辱だからな』と念押ししたため妹達は白露に対しても全力で演習に臨んでくれた。


村雨、夕立、時雨は僅差の戦いだったが、白露は3人に比べ実力の差がハッキリと出る結果になってしまった。


 


白露は表面上は『次は負けないぞ!』と取り繕ってはいたが、内心泣きそうなほどに辛いのはお見通しだった。


 


 


ここで俺は白露を少し刺激することにする。


 


 


提督「なあ白露、今日はもういいぞ」


 


白露「え…」


 


 


一生懸命仕事を手伝おうとしている白露の表情が一気に青ざめる。


 


 


提督「調子が悪いみたいだし…今日はもう休んだらどうだ?」


 


白露「だ、大丈夫、大丈夫だから!」


 


提督「しかしいつも以上にミスが目立つ、これ以上やっても…」


 


白露「ま…待って…!」


 


提督「明日から妹達と交代制に…」


 


白露「や…いやぁっ!!」


 


 


俺の少し突き放そうとする態度に白露が叫びながら拒否をする。


 


 


白露「お、お願い提督!白露もっと頑張るから、もっともっとお手伝いできるようになるからぁ!ひっく…えぐ…お願い、見捨てないで…白露から秘書艦を取り上げないでぇ…!」


 


 


そして涙を零しながら秘書艦を続けさせて欲しいと懇願してきた。


 


 


やはり…白露は秘書艦であることを心の拠り所にしていた。


 


 


妹達に実力差をまざまざと見せつけられ心が折れかけている。


そんな白露にとって秘書艦というポジションは姉の威厳を守れる最後の砦となっているようだ。


 


もしそれを取り上げてしまったら白露はもう立ち直れなくなってしまうだろう。


 


 


白露「お願い…お願いだよぉ…うっぐ…ぐす…」


 


 


泣きながら俺に縋る白露に全てが順調だととても気分が良かった。


 


 


 


今、白露が折れるかどうかは全て俺の手に掛かっている。


 


 


 


 


焦る気持ちを抑え順番に、ひとつずつ攻略を開始する。


 


 


 


提督「白露、どうしてそんなにも秘書艦にこだわるんだ?」


 


白露「え…あ、そ、それ…は…」


 


 


『妹達に少しでも誇れるものが欲しいから』なんて本音は言い辛いだろうから俺はゆっくりと白露を執務室のソファへ誘導する。


 


 


提督「まあ…白露が考えていること、何となくわかるよ」


 


白露「え…」


 


 


本当は全部お見通しだけど。


 


 


 


提督「俺にも弟がいてな」


 


白露「そう…なの…?」


 


提督「ああ。そいつは俺と違って優秀でな、俺よりも勉強ができて良く親に褒められて…正直何度も嫉妬したよ」


 


 


 


その後、しばらく俺の身の上話をする。


 


似たような境遇ということもあって白露は俺の話を真剣に聞き入っているようだ。


 


 


…話は結構脚色して色んな所を盛ったけど。


 


 


 


白露「あたしも…ね…妹達に改二改装…先を越されて…」


 


 


 


俺の話を聞いた後、白露がポツポツと自分のことを話し出した。


 


妹達の前では言えないであろう愚痴にも近い嫉妬を引き出すことができてこれはまた攻略に一歩近づいたと内心ほくそ笑んだ。


 


 


 


提督「そっか…白露も大変だったな」


 


白露「…」


 


 


白露が妹達への嫉妬、姉の威厳を守るためのこだわり等の話を終えて俺は白露に対し笑みを見せる。


 


今の白露にとって俺は同じ感情を共有することができる、自分を曝け出すことができる唯一の存在に見えるはずだ。


 


 


この機を逃すわけにはいかないな。


 


 


 


提督「わかったよ白露、お前を秘書艦から外すようなことはしない」


 


白露「ホント…?」


 


提督「ああ、その代わり条件がある」


 


白露「な…なに…?」


 


 


白露はホッとしたかと思えばまた不安そうな表情に変わる。


 


一体どんな条件を出されると思っているのやら…


 


 


 


提督「決して無理はしないこと。約束できるな?」


 


白露「そ…そんなのでいいの?」


 


提督「ああ。そして辛いときは今日みたいに俺にちゃんと打ち明けてくれ、いいな?」


 


白露「て…提督…ぅ…ぐす…」


 


 


泣き止んでいた白露がまた涙を零す。


 


 


そしてゆっくりと俺に近づいてきて胸に飛び込んできた。


 


 


白露「あたし…頑張るから…!絶対無茶しないって約束するから…っ…ぅ…」


 


 


白露は俺に身体を預け胸の中で泣き始めた。


 


 


提督「ああ…白露、俺はいつでもお前の味方だからな」


 


 


 


俺はそんな調子の良いことを言いながら白露を抱きしめ、彼女の柔らかな身体を堪能していた。


 


 


 


 


 


 


 


 


 


 


 


 


 


 


 


 


 


 


 


 


 


この日の出来事が


 


 


 


 


白露の俺に対する強烈な依存を生み出すきっかけとなってしまったなんて


 


 


 


 


調子に乗っていた俺が気づくはずも無かった…


 


 


 


  


 


 


 


 


それからしばらくの間、白露に無茶をさせないよう気を遣いながら鎮守府生活を続けた。


 


 


高性能な駆逐艦の時雨達に頼りきりにならないよう可能な限り慎重な作戦を取ったり疲労を溜めないよう気を遣った。


 


誰かを轟沈させたら何もかもが水と泡と化してしまうためそれだけはしないよう奮闘した。


 


 


その俺の姿は白露に輝かしいものと映ったようで彼女も俺をサポートするよう力になってくれた。


 


 


 


もうすぐ…もうすぐだ…


 


 


 


白露の俺に対する好感度はかなりのものとなっている。


 


その気になれば告白して一気にベッドインまで持って行けそうな感じだ。


 


 


しかし失敗する確率を少しでも抑えたい俺は必死にその衝動を堪えながら毎日を過ごしていた。


 


 


 


 


 


そんな日々が続いて


 


 


 


 


ついに白露の待ちに待った日が訪れた


 


 



【鎮守府内 工廠】


 


 


 


 


提督「どうだ?改二になった気分は」


 


白露「…」


 


時雨「おめでとう白露…!」


 


村雨「ついに…ついにこの日が来たね!」


 


夕立「すごーい!めちゃくちゃカッコいいっぽい!」


 


白露「…」


 


 


白露はきょとんとしながら視線が自分の姿と妹達との間を行ったり来たりしてる。


 


 


白露「ねえ…提督…」


 


提督「なんだ?」


 


白露「あたし…提督の一番になれたかな…?」


 


 


上目遣いで白露が俺に聞いてくる。


きっと褒めてもらいたいのだろう。


 


 


提督「一番になれたかはまだこれからだが…」


 


白露「…」


 


 


少し残念そうにする白露の頭を撫でる。


ボリュームアップした髪の感触が気持ち良い。


 


 


提督「白露はこれまでに一番辛いことを我慢して、一番頑張ってきた。それは俺が良く知ってる」


 


白露「提督…」


 


提督「改二改装おめでとう」


 


白露「うっぐ…ぐす…」


 


 


 


白露は感極まって泣き始め、そのまま俺に抱き着いてきた。


 


 


 


時雨「ふふっ」


 


村雨「大胆ねぇ」


 


夕立「お熱いっぽい!」


 


 


妹の冷やかしにも動じず白露は俺に抱き着き続けた。


 


 


 


 


提督(う…)


 


 


 


白露…元々でかいとは思っていたが…改二改装されてより大きくなってやがる…


 


 


 


俺は昂る下半身を必死に落ち着けと言い聞かせ鎮めるようにした。


 


 


 


 


 


 


 


そろそろだな…


 


 


 


 


改二改装されて白露も精神的に安定し気持ちが昂っていることだろう。


 


俺はそれを利用して白露とのベッドインを今日の夜にしようと決めた。


 


 


 


 


 


 


【鎮守府内 執務室】


 


 


 


 


 


時雨「提督、少し良いかい?」


 


提督「ん?」


 


 


夜、白露が席を外している時、時雨が執務室に入ってきた。


 


 


提督「どうかしたのか?」


 


時雨「あのね…」


 


 


少し話し辛そうに時雨が顔を俯かせている。


 


 


時雨「白露の様子…どう?」


 


提督「どうって?」


 


時雨「改二改装されて変わったことは無かったかな?」


 


提督「変わったって…」


 


 


今日の白露の様子を思い起こしてみる。


 


真っ先に思い出されるのは胸のサイズだがそれを頭の中で振り払う。


時雨が真剣な表情だったからだ。


 


 


 


提督「特に…いや、改二改装を終えて以降は落ち着いているように見えるな」


 


 


以前のような明るさを全面に出した白露では無く少し落ち着いているように見えた。


改二改装を終えて無理して明るさを振舞う必要が無くなったのだと自分の中で結論付けたが…


 


 


時雨「そう…」


 


提督「どうかしたのか?」


 


時雨「あのね…以前、夕立や村雨が改二改装された時なんだけど…」


 


 


 


 


時雨の話では夕立が改二改装された時は海上で深海棲艦に敵意剥き出しになってしまい暴走することが多かったらしい。


 


村雨はサディスティックな面が出て深海棲艦をじわじわと傷つけ苦しめ壊すようなことをしていた。


 


 


 


提督「なんで…」


 


時雨「詳しくはわからないけど…改二改装された後は生前の記憶が影響するとか何とか…まだ解明されていないって…」


 


提督「時雨は?」


 


時雨「僕はそういうことは無かったよ」


 


 


時雨は最後まで生き残った艦らしいからそういうことは…


 


 


時雨「ただ…改二改装されたすぐは独り取り残される悪夢を見ることが多かったかな…」


 


提督「…」


 


時雨「夕立も村雨もしばらくしたら落ち着いたし僕も悪夢を見ることは無くなったし…一過性のものだとは思う」


 


提督「そっか…白露のことは気を付けて見ておくよ」


 


時雨「よろしくね」


 


 


心配そうな表情を残して時雨は執務室を出て行った。


 


 


 


白露「ただいまー」


 


 


 


入れ替わるように白露が執務室に戻ってきた。


 


 


提督「おかえり」


 


白露「…」


 


提督「どうかしたか?」


 


 


入って来るなり白露の動きが止まる。


 


 


白露「時雨と何してたの?」


 


提督「え?」


 


 


思わずドキリとした。


 


 


白露「時雨の匂いがする、時雨はここで何をしてたの?」


 


提督「…!」


 


 


思わず言葉を失った。


 


白露が俺を見る目が普通でないように見えたからだ。


 


 


提督「時雨は…白露が改二改装されてからどうなのか、変わった様子は無いかって心配して…」


 


白露「ふーん、そっか。ならいいや」


 


 


俺がそう答えると白露は納得したのかはわからないが引き下がってくれた。


 


 


 


白露「早く今日の仕事片付けちゃお」


 


提督「ああ…」


 


 


 


 


 


 


結局、白露とベッドインすることなどすっかり忘れていた。


 


 




【鎮守府内 演習場】


 


翌日から白露改二となってから初めて4人での演習を行った。


以前と同じように姉妹同士の総当たり。

目的は白露がどこまで性能が上がったかを見るためだ。




今、海上では夕立と白露が対峙している。 


 


夕立「本気でいくっぽい!素敵なパーティにしましょう!」


白露「…」 



やる気剥き出しの夕立に対し白露は静かに見ている。


やはり改二改装して落ち着いたのか、以前のような張り切りようは見せなかった。










演習が始まるとお互いの実力は拮抗しているのか、中々被弾せず時間が過ぎて行った。


しかし徐々に差が出てきたのか、夕立が白露を捉え始める。


改二改装して間もないためか、まだ白露の動きは硬いようにも見られた。




そして…




白露「うわぁぁ!?」




夕立の砲撃が白露にまともにヒットした。


演習用の砲撃とはいえ、ある程度の威力はあり白露の衣服が乱れる。



俺はそれを見逃さないよう双眼鏡から目に焼き付けようとした。




提督「え…」




視界に入った白露の表情を見てゾッとする。


立ち上がった白露の表情が憎き仇を見るような目になっていたからだ。




夕立「えへへ、夕立の勝ちっぽ…」


白露「ぐあああああああああぁぁぁぁ!!!」


夕立「え…!?」



突如叫びながら突進を始めた白露に夕立が驚き砲を向ける。



夕立「な、なに!?ちょっと待っ…」


白露「アアアアアっ!!」 


夕立「きゃああぁ!?」



白露は回避行動を一切取らず夕立の服を掴み海上に叩きつけるとそのまま主砲を向けて撃ち始めた。



提督「な、なんだあれは…!時雨!村雨!」


時雨「う、うん…!村雨、止めるよ!」


村雨「白露姉さん!落ち着いて、やめて!!」



 

すぐに時雨と村雨を止めに行かせ、二人掛かりで白露を止めに掛かった。




時雨と村雨に羽交い締めにされようやく止まったが、狂犬にでもなったかのように白露は夕立を攻撃しようともがいていた。







提督「一体何なんだ…」

 






その狂気めいた白露に俺は血の気が引いたまま立ち尽くすしかなかった。







【鎮守府内 執務室】





提督「どうしてあそこまでしたんだ…」



演習を終えて俺は白露を執務室に呼び出した。


夕立には時雨と村雨がついていてくれている。

時雨は夕立に『一時的なものだから』と説明してくれると言っていた。



提督「演習であそこまでする必要は無いだろ、いくら改二になれたからって…」


白露「どうだった?」


提督「は…?」



俺の話を聞かず白露は笑顔でこちらを見ていた。



白露「白露、一番だったでしょ?今までずっと戦いでは提督の一番になれなかったけど…これで一番だって証明できたでしょ?」


提督「白露…」




今までは…か。


これまで白露は姉妹同士の演習で一度も勝てていなかった。


その鬱憤を改二改装を終えて初めて晴らすことができたってのか…?



俺はその白露の闇に片足を突っ込んだ気がしてまた血の気が引いた。


時雨が何かしらの反動があるとは言っていたが…こんな形で出るなんて…。





白露「ねえ、どうだった?一番だったでしょう?」


提督「…」


白露「まだ足りないの?じゃあもっともっと頑張るから、そうしたら一番だって認めてよね?ね?提督の一番は白露だって認めてね?」


提督「う…」




好意を持って俺に迫っているのかもしれなかったが、俺にとっては恐怖の対象にしかならなかった。




少し前までは扱い易い愛犬だったのに…いきなり狂犬病に罹ったようで…





俺はこの日以降、白露に対して邪な感情を抱くことは無くなった。





【鎮守府内 執務室】





提督「ふぅ…」



白露が執務室を離れたため一息つく。


以前と違って執務室はピリピリとしたひり付くような空気になっていた。



白露の秘書艦業務は前のようなミスをすることは無くなり俺の手伝いを完ぺきにこなしていた。


それだけならば良いのだが、何かにつけて褒めてもらおうとこちらに縋るような目を見せる。



その目が恐ろしくて俺はまともに対応することができなかった。



常時白露から見えないプレッシャーを掛けられているような気がしてならないからだ。





提督「さて…」




俺は気晴らしとばかりに机の中から雑誌を取り出す。



雑誌には『艦娘水着特集』というタイトルがでかでかと書かれていた。




提督「おぉ…」




思わず声が出てしまうほどに素晴らしい特集だった。



特にこの軽空母千代田や正規空母サラトガのものは…




俺は頭の中で彼女達との妄想を侍らせる。


そうして現実逃避に浸りながら『早いところここから離れていつの日か彼女達の鎮守府へ…』なんて考えていると

























































「何見てんの…?」

















突然隣から声がして俺は身体をビクつかせる。



提督「し、白露…」


白露「…」



いつの間にか白露が俺の隣に居て雑誌の中を覗き込んでいた。



提督「あ…!」



白露は俺の雑誌を奪い取るとビリビリに破ってゴミ箱に投げ捨てる。



白露「…っ!っ…!!」



それだけに留まらずゴミ箱を蹴飛ばし踏みつけ、使い物にならなくさせた。


そのせいで部屋にはゴミが散乱してしまっている。




提督「し…白露…」


白露「…」




白露は何も言わず執務室を出て行った。







こ、殺される…







俺はそんな恐怖を感じてしまい、カバンから財布を取り出して逃げ出そうかと考えた。





白露「提督ー?」


提督「!?」




しかしその前に執務室のドアの向こうから白露の声がした。



提督「な、なんだ…」


白露「入っていいー?」


提督「あ…ああ…」




何だいきなり改まって…



そんな白露の意味不明な行動に俺は動くことができなかった。





白露「えへへー、水着に着替えてきたよ。どう?」


提督「どうって…」



白露は水着に着替え俺に見せてきた。


そんな暑い時期でも無いというのに…そんな白露の行動に俺はまた恐怖した。



白露「提督に一番に見せようと思って…似合う?」


提督「あ、そ、そうなのか…」


白露「うん!うふふ、白露も大きいでしょ?ね、もっと見てもいいよ?」



そう言って大きな胸を強調しアピールする白露だったが、俺はまともに直視することができない。


白露の目がまともでは無く、まるで獲物を狙う獣の様だったからだ。




白露「白露が一番だよね?時雨よりも村雨よりも夕立よりも、そんな雑誌に載っている艦娘よりも、ね?そうでしょ?」








その後しばらく白露は水着で秘書艦業務を行うようになってしまった。




俺は妹達からの目が痛くなるからやめてくれと何度も言ったが白露はそれを聞き入れようとしなかった。




それがなぜなのか、すぐに理解することになる…。






____________________






【鎮守府内 談話室】




夕食を終えて白露が珍しく『妹達と一緒にお喋りしよう』と誘ってきた。


いつもだったらしつこいくらい俺にくっつこうとしたり執務室に監禁まがいのことをしたりするくせに…


いきなり何事かと懐疑的な気持ちになっていたが、久しぶりに時雨達と話す機会を得られて俺は好機と捉えていた。



察しに良い時雨に助けを求めるにはここしかないと思っていたからだ。








時雨「それにしても…二人はいつの間に付き合っていたんだい?」


提督「は…?」



しかし時雨から発せられた言葉は耳を疑う信じられないものだった。



村雨「またまたとぼけちゃって、白露姉さんに『ずっと俺の一番でいてくれ』って口説いたのでしょう?」



なんだ…それ…



夕立「提督なら安心して任せられるっぽい!」


提督「ちょ、ちょっと待…」


白露「あはは、改めて言われると恥ずかしいね提督」


提督「おま…!」



白露はそんな状況でも平然と笑っていた。



時雨「白露は…これまで一番大変だったからね…提督がそう言ってくれたのは本当に嬉しかったんだよ?」


村雨「白露姉さんも水着になって執務室で悩殺するほど好きなのよね」


白露「ふふふ、少し恥ずかしかったけどね」


夕立「ここまでされて提督は幸せ者っぽい!」


提督「…」




まずい…この姉妹艦の中では完全にシナリオが完成されている。


俺はこの時、白露に逃げ道を塞がれたのだと気づいた。




もしもこの場で俺が全力で否定しようものなら時雨達は一斉に白露の味方に回り俺を非難することだろう。


恐らくそれだけに留まらず、この先どんな罰が待っているか想像もつかない。




白露「うふふふ、そういうことだからこれからも白露と提督のことを応援してね」




そう竦んでしまった俺は白露の発言を取り消そうとすることもできなかった。








【鎮守府内 執務室】





白露「ねえ、提督…」




白露が俺との嘘の恋人関係を伝えた翌日のことだった。



白露「私って…キレイかな?」


提督「は…?」



俺に背を向けたままの白露に何のことかわからず聞き返してしまう。



白露「私、キレイに見える?」



いつもの恐ろしい瞳でこちらを見ながら言う白露に俺は首を縦に振りながら



提督「も、もちろんだ。白露はとても魅力的な女性だと思うぞ?」



そう答えることしかできなかった。



彼女が何を求め、何を欲しているのかわからない俺はとにかく白露の言葉を肯定することしかできなかった。




俺の言葉に喜ぶことは無く白露は振り向き、いつもの光の無い瞳で俺を覗き込む。

その目は俺に嘘は許さないと言っているかのようだった。




白露「あたしね、色んな男達に汚されてきたの」


提督「え…」



白露の衝撃的な言葉に俺の思考が停止する。



白露「前の鎮守府でね、あたしは『妹達に比べ使い物にならないから』って解体されそうになったんだ」



正直この場を逃げ出したくなるような重圧が襲うが俺は立ち上がることもできず聞くしかなかった。



白露「あたしは必死に命乞いをしたよ。『お願いですから解体しないで』『これから絶対に一番になるから』って…」


提督「…」



…嫌な予感しかしない。



白露「そしたらね、前の提督は『だったら一番なところを見せてもらおうじゃないか』ってあたしの服をビリビリに破って…ベッドで無理やり…」



話の内容重すぎだろ!

白露が色々と拗らせてしまった原因はこれかよ!



白露「それだけじゃなくって…整備員やその人の取引先の人とか…毎日代わる代わる…前も後ろもお口も全部…」


提督「白露…」


白露「ねえ提督、これでも私がキレイだって言えるの?」



何と答えようか迷った。



適当に取り繕うべきか、励ますべきか、愛を語るべきか。


しかし中途半端に嘘を言ってしまうとうっかりボロが出て今の白露には見抜かれる可能性が高い。




提督「俺には関係の無いことだ」


白露「て、提督…?」




突き放すような言い方に白露の顔に絶望感が表れそうになる。


しかし俺はすぐに次のフォローに走る。



提督「過去に何があったのか、俺にはどうしようもできない。白露自身で乗り越え解決してもらわないといけないと思う」


白露「…」


提督「それに…今の俺の目に映る白露はとてもキレイだ。その事実に変わりは無い」


白露「…」




元々処女だとか非処女だとかどうでも良い俺にとって最大限に考え絞り出した答えがそれだった。






白露「…」


提督「…」




俺と白露の間に静かなる時が流れ、俺は内心緊張で参りそうだった。




白露「そう…」




白露はそれだけ言って執務室を出て行った。







助…かった…?





この時点では正解なのか、間違いだったのかはわからない。



しかしとりあえず白露が発狂することも俺を傷つけようとすることも無くやり過ごすことができて俺は深いため息を吐きながら椅子に深く腰を掛けた。














しかしその日の夕食後、談話室で…















白露「それでね、提督に『もし私が過去に誰かと付き合ってたら』って聞いたらね?『過去のことは関係無い。何があっても俺の白露が一番であることに変わりは無い』って言ってくれたんだー♪」


時雨「それは…お熱いことで…」


村雨「うふふ、また惚気られちゃった」


夕立「羨ましいっぽい!夕立もいつかそんなこと言う人に出会いたいっぽい!」







提督「…」






白露の中でとても都合の良い改変がされていて俺は頭を抱えるしかなかった。























その後、白露の俺に対する依存と監視は酷くなる一方だった。







白露「白露に内緒でどこ行くの!?どうして何も言わずに出掛けちゃうんだよ!!」







白露「誰と電話してたの!?大本営の職員!?嘘!だって女の声だったよ!?誰なの!?ねえ!!」







白露「今日の演習!ちゃんとあたしを見ててくれたの!?どうなの!?提督が村雨の方ばっか見てたの知ってるんだからね!!」













少しでも彼女と離れたり視線が他の艦娘に行ったり疑わしいことをしただけで物凄い剣幕で疑われる。

俺は毎日白露の対応でヘトヘトに疲れ切ってしまっていた。


時雨達に助けを求めたかったが、白露は計算しつくしたかのように彼女達の前では良い姉を演じており、変なことを言えば時雨達が敵に回ってしまう可能性の方が大だった。



今後増々行動がエスカレートすると思うと恐ろしくて夜も眠れなかった。




そんなある日の事…






【鎮守府内 執務室】




白露「ねえ提督」


提督「な、なんだ?」



最近は白露から声を掛けられるだけで身体がビクついてしまう。



白露「これ…」


提督「…?」



白露から可愛らしい絵柄の封筒を渡される。



白露「白露から提督への想いを綴ったの、後で読んでね!」



少し恥ずかしそうにしながら白露は執務室を出て行った。



可愛らしいところがあるじゃないか…

いつもこうならな…とため息を吐きながら封筒を開けて手紙を取り出す。












そこには…





































ねえ提督、白露が提督のことどれだけ好きなのか教えてあげようか?白露はね、世界中の誰よりも何よりも生けるもの全ての中で提督がいっちばん好きなんだよ?提督は白露のことどう思ってるかな?毎日毎日それを考えるだけで身体が熱くなって眠れなくなっちゃうんだよ?あたしは提督の一番になりたくてなりたくてしょうがないんだよ?邪魔する奴は許さない。手を出そうとする奴は消してやる。横恋慕しようとしたらそいつの目玉をくり抜いて舌を引っこ抜いて二度と提督の傍に近づけさせないようにしてあげる。それだけ大好きなんだから。絶対絶対誰にも提督は渡さない、妹にだって渡さない。前は何をしても勝ち目は無かったけど今の私なら絶対に負けはしないからね。提督だって知ってるでしょ?ちょっと前に夕立と演習した時についつい手加減を忘れてしまったけど今後は気を付けるね?夕立は今後白露と提督の邪魔をしないって約束してくれたし。時雨と村雨にも十分言い聞かせておいたから心配しないで。あ、大丈夫だよ、脅すようなことは絶対にしないから。そんなことしたら提督も嫌でしょ?それに近い将来結婚式を挙げる時は妹達からもちゃんと祝福して欲しいもんね。きゃっ、ちょっと気が早かったかな?でも別にいいよね?提督が白露のこと一番だって思ってくれてるなら白露はいつでもオッケーだよ?毎日提督の好きなことしてあげる。提督の好きな物作ってあげる。例えば提督は自室に戻ると最初にいつもやっているゲーム画面を開くよね?今後は白露がレベル上げしておいてあげようか?仕事に疲れた後にやってるからパソコンの前でよく寝落ちしちゃってるでしょ?白露知ってるんだから、心配で心配で仕方ないよ。でも結婚すれば寝落ちしちゃったら白露が起こしてあげるし、白露がベッドの用意をしてあげるし、白露がお風呂を用意してあげるからね。なんなら一緒にお風呂に入ろうか?白露は改二になって増々おっぱい大きくなったんだから、えへへ、自慢のおっぱいで提督を洗ってあげるよ。少し恥ずかしいけど白露は提督のためならなんでもしちゃうんだから。それからあまりインスタント食品ばかり食べちゃダメだよ?楽なのはわかるけどあんなもの絶対身体に悪いんだから。白露が提督のために毎日料理を作ってあげるから心配しないで?提督の大好きな鶏の唐揚げや甘口のカレーライス、ちょっとお焦げのついたチャーハンだって作れるようになったんだよ?提督に少しでも気に入られたいから白露は頑張って特訓したんだから!でもね、特訓中に何度も指を切ってケガしちゃった…。ごめんね提督、あなたと白露の大切な身体なのに。でも流した血は無駄にしないようにしたから安心してね!提督にいつも出していたコーヒーに味が変わらないレベルで染み込ませていたから。提督の中でも白露の血液が生きられるようにしたからこれで安心だね!なんなら今度は白露が提督のものを身体の中に入れたいなあ…。何でもいいよ?唾液でも血でも…その…せ…せい…もー!これ以上は恥ずかしくって書けないよう!提督のバカ!大好き!大好き!大好き!大好き!大好き!大好き!大好き!大好き!大好き!大好き!大好き!大好き!大好き!大好き!大好き!大好き!大好き!大好き!大好き!大好き!大好き!大好き!大好き!大好き!大好き!大好き!大好き!大好き!大好き!大好き!大好き!大好き!大好き!大好き!大好き!大好き!大好き!大好き!大好き!大好き!大好き!大好き!大好き!大好き!大好き!大好き!大好き!大好き!大好き!大好き!大好き!大好き!大好き!大好き!大好き!大好き!大好き!大好き!大好き!大好き!大好き!大好き!大好き!大好き!大好き!大好き!大好き!大好き!大好き!白露は提督が大好き!本当に大好きなんだよ!大好き!でもどうして白露から目を逸らすの?どうして白露を見てくれないの?白露改二になったんだよ?白露強くなったんだよ?どうしてなの?ねえ提督?昨日は時雨と村雨と夕立は見てたよね?時雨が40秒、村雨が70秒、夕立が38秒。それなのに提督が白露を見てくれた時間は5秒にも満たなかったよね?どうして?ねえ?どうして見てくれないの?どうして?そんなに村雨の方が良いの?確かに村雨は自慢の妹で提督好みの素晴らしいスタイルしてるよ?でも白露だって負けて無いよね?負けてないどころか勝ってるよね?白露の方がおっぱい大きいのにどうして見てくれないの?髪をツインテールにすればいいの?えっちなインナーを着ればいいの?自分のことを『白露さん』とか言えばいいの?ねえ?どうして?教えてよ提督。そうじゃないと白露は村雨が憎くなってきちゃうよ?自分じゃもう抑えきれないんだよ。提督のことが好き過ぎて白露は提督と白露の間を邪魔する奴がみんな敵に見えちゃうんだよ。それがたとえ妹だって許せなくなっちゃうんだよ?助けて、提督、ねえ助けて。白露を安心させて。白露を安心させて。助けて、白露は提督に捨てられたら、見放されたらもう生きていけないんだよ。提督が白露のことを認めてくれた時、すごくすごく嬉しかったんだよ?白露はずっとずっと改二になれず一生このままだって思って暗い暗い闇の中を歩くような気持ちで毎日過ごしてたんだよ?いつか捨てられる恐怖、解体される恐怖にさらされながら生きてきたんだよ?でもそれを救ってくれたのが提督だったんだよ?白露と同じように弟さんに嫉妬したり、両親から捨てられるんじゃないかって、見放されるんじゃないかって怖かったって言ってくれた時、白露はこの世で誰も味方がいない、誰もあたしのことなんてわからないと思っていた大きな迷路から救い出されたんだよ?提督は私の救世主様で私の王子様で私の唯一の人なんだよ?お願いだよ提督、私を捨てないで、私を置いて行かないで、私を見捨てないで、私を見放さないで、私を見限らないで、私を見て、私だけを見て、私を視界に入れて、私の中に提督を住まわせて、私を提督の一部にして、私を提督の一生にして、ね、お願い提督、お願いお願いお願い。怖いんだよ、いつの日か提督が私を置いてどこか遠い所へ行っちゃうんじゃないかって、そう思うだけでまた眠れなくなっちゃう。お前はいらない、お前は使えない、お前は用済みだって言われる嫌な夢を見ちゃうんだよ。悪夢から目が覚めたときって最悪だよ?涙が止まらなくって誰にも助けを求められなくて苦しくて悲しくて壊れそうになるんだよ?時雨達に助けを求めるようなことはできないんだよ。だって私は一番だから、一番のお姉ちゃんだからそんなところは見せらん無いんだよ。でもそれを見せることができるのって提督だけなんだよ、提督しかいないんだよ。私にはもう提督しかいないんだよ。提督だけにしか私の弱みを、全てを打ち明ける相手はいないんだよ。提督は私の一番、一番の私の一番、世界で宇宙で生まれた者すべての中で一番、これまで私が一番だと思っていたのに今は提督が私の一番。今までもこれからもこの先も一生提督は私の一番、一番好き、一番愛してる。だから提督、白露を捨てないで。白露の傍にいて。提督が望むこと、一番望むことを白露は何でもしてあげるから。なんだってあげちゃうから、して欲しいことなんだってやるから。お金が欲しいなら何をしてでも稼ぐし、地位が欲しいなら死ぬ気で演習に勝つし、邪魔者がいるなら排除してあげるし、ね、なんでもするよ?白露は提督が一番だし、提督の一番は白露であってほしいから。この前の合同演習で白露が一番だって証明できたでしょ?たとえ相手が一航戦二航戦だって大和型戦艦長門型戦艦だって白露の敵じゃないことは知ってるでしょ?あんな奴らひたすら回避に徹して夜戦になったら強襲すればただの的でしかないんだから。相手が姫クラスだって水鬼クラスだって白露は勝つよ?提督が戦果が欲しいって言うならいつでも戦いに行くよ?相手が6隻だって12隻だって関係無いよ、徹底的に追い詰めてほかのずいはんをむししてきかんさえつぶしちゃえばえられるせんかはいっしょだよね?ていとくはけんそんしていつもむりなさくせんをしないけどしらつゆはいつでもおっけーだよ?ていとくがいつもわたしがむりしないようにってへいさくせんをえらんでくれてうれしいけどしらつゆはもっともっとていとくのいちばんでいたいからいつでもしゅつげきめいれいをだしてね。でもひとりでいっちゃうとほかのおんながていとくのそばにそんなのいやいやいやいやいややめてよしらつゆからていとくをとらないでていとくはしらつゆのものていとくはしらつゆのいちばんいちばんはていとくていとくのいちばんはしらつゆじゃまするやつはぜんいんめだまをくりぬいてしたをひっこぬいてみみをひきちぎってくびをにぎりつぶしてにどとじゃまできないようにしてやるばらばらにしてやるわたしのていとくをわたしのいちばんをうばうやつはたとえいもうとだってゆるさないわたしからていとくをうばってみろしぬほどのこうかいをさせてやるしんでもゆるさないわたしからいちばんをうばったくせにわたしがいちばんくるしんできたのにたすけようともしなかったくせにおまえらがおまえらがわたしをくるしめたおまえらのそんざいがきにいらないなんどしねとねがったかわかるかあたしがどれだけくるしんだかわかるかくらべられてひかくされておまえはできそこないだとかれっせいだとかいわれるきもちがおまえらにわかるかおまえらのせいでおまえらのせいででもそんなわたしをていとくはひしょかんにしてくれたひしょかんにしてくれて、あたしを認めてくれた。あたしが一番苦しんでいたことを理解してくれて、優しく抱きしめてくれて、涙を胸で受け止めてくれた。提督は白露のすべてだ。誰にも渡さない。誰にも邪魔させない。提督は私の一番、一番は提督、一番になるのは白露、一番愛され一番理解できて一番求めに応じて一番大事にされるのは白露だ。一番一番一番一番一番一番一番一番一番一番一番一番一番一番一番一番一番一番…











『おわああアアアアアアアアアアアア!!!』と言ってその場で手紙をクシャクシャにして逃げ出そう。



そんな衝動をグッと堪える。


どこで白露が見ているかわからないからだ。



提督(監視されていた…!!)



いつの間にか自室に隠しカメラが設置されていたようで俺の行動は完全に見られていたようだ。

常にどこからか見られていると思うと寒気で身の毛がよだつ。


逃げようにも逃げられない。



これからどうするべきかと頭を抱え悩ませていると…





ピリリリリッ携帯電話が鳴った。



誰からかと恐る恐るディスプレイを見ると…



弟からだった。




提督「も…もしもし…?」


弟『に、兄さん…』



悪いことには悪いことが重なるようで…






提督「おい!?なんだよそれ!?」


弟『ごめん…』




更にとんでもないことに巻き込まれることになってしまった。






【弟の鎮守府 執務室】




翌日、急いで弟の鎮守府にやってきた。


弟からの電話の後、白露に直接電話の内容を聞かせ何とか納得させて一人で出てくることができた。




提督「まさかこんなことになってるとはな…」


弟「ごめんね…」


提督「ごめんじゃねえよ…兄ちゃん悲しいぞ…」


弟「…」





弟の執務室の机に置かれている物を見て俺は呆れを通り越した深いため息を吐く。




そこには小さいアルバムが置かれている。



内容は何と弟の鎮守府に所属する海防艦達の写真集。


それもただの写真集じゃない。

着替え中、入渠中、スカートの中を覗いたもの。


盗撮写真集だった。





弟がまさか重度のロリコンだったとは…



それも悪い方へといってしまっている。




弟が海防艦の鎮守府を選んだ時点で気づくべきだったかもしれない。


巨乳重視で鎮守府を選んだ俺が言えた立場じゃないが…




弟「ど、どうしよう…」


提督「どうしようったって…なあ」





最悪なのは隠しカメラの存在が所属する海防艦に見つかってしまったこと。


タイミング悪く弟が不在な時に見つけてしまったので海軍本部へ連絡がいってしまった。



提督「指紋は…?」


弟「付いてると思う…」



もうすぐ大本営の役員達がやって来て隠しカメラ等を押収するに違いない。

そんなことになったら指紋照合で弟のやったことが明るみになるだろう。



提督「…」


弟「兄さん…」



そうなると弟はロリコンの盗撮魔の変態ということで間違いなく遠い地方へと飛ばされるに違いない。

変態の後ろ指をさされながら自分の所属する艦娘達からは一斉に白い目で見られこのまま…




提督「ん…?」



白い目で見られる…


ロリコンという変態…本性…







これだ…!!





提督「弟よ」


弟「な、なに?」


提督「海防艦に察しの良い奴はいるか?」


弟「え?えっと…」


提督「急げ!もう時間が無い!」


弟「い、石垣ちゃんかな…」





ちゃんって…お前…







【弟の鎮守府 客間】




石垣「入ってよろしいですか?」


提督「ああ」



俺は客間で石垣が来るのを待っていた。



石垣「あの…提督のお兄さんですよね?ここに呼ばれてきたのですが…何か用ですか?」


提督「ああ、頼みがある。ここに座って」



俺はポンポンとベットを手で叩く。


石垣は訝し気な表情をしながらも言われた通りベッドに座った。



提督「詳しく説明する時間が無いから簡潔に言うぞ」


石垣「はい?」


提督「実は弟がハメられてありもしない盗撮疑惑が掛けられた」



これが本当は事実なのが悲しい。



石垣「それってこの前見つけた隠しカメラ…」


提督「ああそうだ、弟を引きずり降ろそうという輩の仕業だ。しかしそれを証明する時間も証拠も無い、絶体絶命の状況だ」


石垣「そんな…」



石垣がショックを受けたような顔になる。


どうやら弟は彼女達にロリコンだと気づかれていないようでこれは対処し易そうだとホッとした。



提督「そこで、俺が全ての罪を被り弟を庇うことにした」


石垣「え…」


提督「君の名誉も少し傷つけてしまうかもしれないが…この後この近くの廊下を大本営の役員達が通る、できるだけ大きな声で叫んでくれ!」


石垣「わかりました」


提督「お、おう…」



躊躇なく石垣は頷いた。


全く疑わない辺りはやっぱり子供なのか弟が好かれているからなのか…




提督「来たぞ…!今だ!」


石垣「キャアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアァァァ!!!」





耳をつんざくような石垣の悲鳴を聞きながら俺はズボンを降ろした。








役員A「お、お前、何を…!?」


 


 


バタバタと大本営の役員達がなだれ込んでくる。


 


 


役員B「へ、変態野郎!」


 


役員C「捕まえろっ!!」


 


提督「し、しまったぁ!!」





俺は大袈裟に驚いて抵抗しようとするが成す術も無く大本営の役員達に取り押さえられてしまった。










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【鎮守府内 執務室前廊下】


 


 


 


提督「失礼しました…後はよろしくお願い致します…」


 


 


 


俺は自分の鎮守府にやって来た大本営の役員と引継ぎに来た新しい提督に頭を下げ執務室を出た。


自分が居た執務室に頭を下げるのは変な気分だった。


 


白露「提督…」


 

提督「白露…」

 


 


廊下に出るとすぐに白露が駆け寄って来た。


白露の目が死んでる…怖すぎるぞ。


 

提督「すまないな、そういう事だ」


白露「提督ぅ…ぐすっ…」


 


俺が諦めたような謝罪をすると白露が目に涙を浮かべた。


そりゃそうか。

自分が依存していた相手がロリコン盗撮魔強姦魔じゃ誰だって泣きたくなるだろう。


 


白露「白露が一番だって言ってくれたの…嘘だったの…?」


 


提督「…」


 

言ったか…?そんなこと。


 


俯いた白露の目から涙が零れた。


俺は何も言わず黙って口を噤む。



しばらくそうしていると複数の足音がこちらに近づいてきた。





村雨「白露姉さんに近寄らないでよ!このロリコンっ!!」


時雨「君には心底失望したよ…!これまで白露がどんな気持ちで支えてきたと思っているんだ!」



怒りに顔を歪めた時雨と村雨だった。


ふっふっふ…こいつらも計画通り俺をロリコンだと思い込んでいるようだな。




村雨「そんな気持ちを踏みにじるようなことして!恥ずかしくないの!?」



だったらお前の姉の盗撮盗聴で踏みにじられた俺のプライベートはどうなんだ。

 


白露「ふ、二人ともやめて…」



白露はオロオロしながら二人を宥めようとする。

しかし時雨も村雨も俺に敵意剥き出しで白露を庇うようにしながらこちらを睨んでいた。



いいぞいいぞ、その調子で俺から白露を引き剥がしてくれ。


 


提督「はは…弁解するつもりはないよ」


 


当たり障りのない言い方をして俺はこの場を去ろうと歩き出す。



 


提督「みんな、元気でな」


 


村雨「さっさと白露姉さんの視界から消えて!この強姦魔!」


 


時雨「二度と僕達の前に現れないで…!」


 


提督「わかったよ…」




俺は寂しそうな顔を作って新たなる鎮守府への道を歩き出した。





『海防艦強姦未遂の現行犯』


 

さすがにこれだけのことをしたならば普通の処分では済まない。


おまけに弟が盗撮していた物は全て『俺が無理矢理弟にやらせた』と話を作った。



現行犯で捕まったこともあって俺への処分は滞りなく与えられることとなった。




『辺境の地への異動』


それが俺への処分だった。


異動をすることは快く了承したが、俺は役員にあるお願いをしておいた。


「俺の異動先を現所属の艦娘達に絶対に言わないで欲しい」


表向きは「彼女達に恨まれて異動先にあること無いことを吹聴されてしまうと鎮守府運営に影響が出るから」というものだが、実際は白露との関係を断ち切りたかっただけに過ぎない。




この事件を起こしたことによって弟の地位は護られる(と言っても後でこっぴどく叱ってやったが)


俺は異動することができて白露から逃げられる。


白露は俺を見限ることで依存関係を断ち切れる。





良いことずくめだと思い起こした行動は全て思惑通りに運び、俺は久しぶりに浮かれ気分で新しい鎮守府への道を歩き始めたのだった。











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白露「…」


時雨「元気を出して、白露」


村雨「あんな変態のことはさっさと忘れちゃいましょう?」




提督がいなくなり、妹達は白露を励まそうと声を掛けるが白露には一切届いていなかった。







白露(ありえない、ありえない、ありえない。提督は巨乳好きのはず、それだけは絶対間違いない、白露から逃げようとしてあんな事件を起こしたに決まってるそうに決まってる)












白露はその後





妹達の前から姿を消してしまった。








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【辺境の鎮守府】





異動先の艦娘達は個性的を通り越した変わり者の集まりだった。



青葉「青葉です!一言よりもゴシップネタをお願いします!」




ゴシップ記事で一儲けを企む重巡洋艦青葉。




伊14「イヨだよ、提督よろしくねー。ひっく」




アルコール依存症の潜水艦伊14。




日向「着任の挨拶だ。新しい瑞雲をやろう」




瑞雲教教祖の日向。




長門「海防艦は素晴らしい、そうは思わんか?」




弟と気の合いそうなロリコン戦艦長門。




俺と同じように辺境に飛ばされていた艦娘達との生活が始まった。


最初は扱いに困ったが、元々実力のある艦娘である彼女達のやる気を引き出し戦果を上げるのは難しいことでは無かった。



青葉には大本営の役員のゴシップネタを与え、伊14には酒を隠したり与えたりと揺さぶったり、日向には瑞雲の積めそうな艦娘を紹介したりした。

長門に関しては話を聞いてやるだけで充分だった。きっとロリコン仲間が欲しくて仕方なかったのだろう。俺にそんな趣味は無いが。




彼女達が安定して戦果を上げ続けるようになり、精神的に余裕が出てくるたび



俺は前の鎮守府のことで思いふけることが増えた。





伊14「提督ー、まーた何か悩んでるー?」


提督「ん…?ああ」




頭の中を過るのは白露のことだった。



今の鎮守府では以前のように秘書艦を置いて仕事はしていない。


前のような事があって欲しくないというのもあったが、白露以外が秘書艦をやるということに何かしらの抵抗があったのかもしれない。



白露…



本当…勿体無いよな…


美人だし巨乳だし、ミスは多かったけど一生懸命だったし、戦闘性能は改二になって抜群だったし…


俺によく見せてくれた笑顔も良かったよなぁ…


結局手も出せずに関係が終わってしまった…





思い出されるのは改二改装される前の白露の明るい笑顔。


辛いことを我慢しながらも必死に作り振舞っていた笑顔。



改二改装されてからの何かに怯え俺に縋ろうとする白露。




そんなことばかり考えてしまっていた。






どうしてそんな考えが頭を駆け巡るのか。







それはきっと…



俺は本当に白露から逃げ切れるのか、という不安…?








日向「提督、客だ」


提督「客?」


日向「ああ。残念ながら瑞雲は積めそうにないがな」


伊14「それって駆逐艦?」


提督「ま、まさか…」





俺の不安はすぐに現実のものとなる。








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【鎮守府内 執務室】



 


提督「し、白露…」


白露「提督…」




再び俺の前に現れたのは白露だった。

虚ろな目は治っておらず俺を覗き込むような瞳に久しぶりに背筋がゾッとした。

 



提督「どうしてここが…」


白露「探すの大変だったよ?大本営も中々行き先教えてくれなくってさ…本当、苦労したよ」



だろうな、絶対に言わないよう頼んでおいたからな。

しかしそれならばどうして…



長門「提督、彼女は?」


提督「前の鎮守府で俺の秘書艦をしていた駆逐艦だ…」


長門「駆逐艦…?」


 


 


長門がジロジロと白露を見る。


どうやら本当に駆逐艦なのか疑っているらしい。


無理もない、白露は既に改二改装を終えていてそこらの軽巡、重巡よりも身体の発育具合がとても良いだろうからな。


ほんと…可愛いんだけどな…。



提督「一体何の用だ、こんなところまで来て」


白露「提督…」



白露は俺に対し深々と頭を下げる。



白露「どうか…白露達の鎮守府に帰ってきて下さい…!」



『嫌だ』 



白露の言葉に即答する衝動に駆られるがグッと我慢した。



提督「今更何を言って…」


白露「提督…あの強姦未遂は嘘だよね?」


提督「…」



口から心臓が飛び出そうになった。

なんで嘘だって知ってるんだ…!!



長門「なん…だと…」



俺よりも長門の方が驚いていた。


せっかくできた仲間に裏切られたからか?知らん。


 


提督「いいや、事実だ」


長門「ほっ」



ホッとすんな長門。



白露「そんなはずないよ…!だって私、提督の弟さんに聞いたもん!」


提督「…!!」


 

なん…だって…?

弟の名を出されて身体がビクついてしまう。


あんの馬鹿たれ…!

白露に泣きつかれてか白状してしまったな!!



白露「提督…弟さんのために…」


提督「黙れ…」



ここは無理やり話を打ち切るしかない。

 


長門「提督?」


提督「その事は一切口にするな…!」


白露「…」



俺の咎めるような声に白露は黙るしかなかった。


 

が、しかし無表情でこっちを睨んでる。

滅茶苦茶怖い。

 


白露「提督…お願い、誤解はもう解けるんだよ?帰って来てよ…」


提督「ダメだ。俺はここを離れるわけにはいかない」


白露「提督…!っ…ぅ…」




頑なに戻ろうとしない俺に対し白露が涙を零す。



ああ…泣かせたくは無かったんだけどな…。

後が怖いし。 


 

白露「お願い…だよ…。提督がいなくなって…新しい提督が来たんだけどね…」


 


知ってる。

俺の後輩で気弱で操りやすい奴を無理矢理着任させたんだ。



白露は顔を俯かせ、深刻そうな顔をしながらポツポツと話し出す。


 


白露「新しい提督は酷い人だよ…みんなに無理強いをして…休みなんてくれなくって…傷だらけになっても修理してくれなくって…挙句に…!」




んなわけあるか! 

あいつにそんな無茶起用する度胸があるわけ無いだろ!




しかし白露が泣きながら唇を噛み締め話を続ける。


 


 


白露「挙句に…私の妹達に…手を…夜の御供だって言って…!」



あほかっ!!

そんな奴だったらお前こんな所に来れないだろうが!




長門「な、なんだとぉ!?」




だが白露の言葉に大きく反応を示したのは長門だった。



提督(こ、こいつまさか…!)



長門「こうしてはおれん!提督、行くぞ!」



白露「お願いだよ提督…!みんなを…妹達を助けて…!」




長門に助けに行くことを促され、白露に再度お願いされる。


白露め…長門を使う方針に切り替えやがったな!?


俺はグイグイと長門に引っ張られ立ち上がるよう促された。


しかしその手を強引に振り払う。



提督「何度も言うが俺は戻る気は無い」


白露「て、提督…」


提督「さっさと帰れ!いい加減にしないとお前の鎮守府に連絡を入れるぞっ!!」


白露「…!?」


長門「おい…!」



俺の言葉に白露は力無く項垂れて



白露「わかったよ…」



元気を無くしたまま執務室を出て行ってしまった。



…ありゃ絶対納得してないな。


何かしでかさないかこの先心配でならなかった。







長門「提督…!なんであんな…本当に放っておいていいのか!?」



怒りを露にする長門に対し俺は



提督「あんなものは全部嘘だ」



長門「なに…?」



そう確信して長門に言うしかなかった。




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【鎮守府内 廊下】




白露「逃がさない…ここまで来て絶対に逃がさないから…」



白露がブツブツ言いながら廊下を歩き、次の手を考えていると…



青葉「どうもー青葉です。司令官の前の秘書艦さんですね?一言お願いしますー!」


白露「…」



面白そうなネタにならないかと青葉が白露に近づいてきた。



白露「…ねえ青葉さん」


青葉「はい?」


白露「白露に教えて欲しいことがあるんだけど」


青葉「なんですか?でも無料ってわけには…」


白露「…」



青葉の返答を予想していたのか、白露はカバンから封筒を取り出す。



青葉「うぉわ!?」



中にはぎっしりと札束が入っていた。


白露はこれまでに貯め込んでいた撃破報酬を青葉に支払った。



彼女が得ようとしていた情報とは…










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【鎮守府内 執務室】




提督「はぁ…」



自然とため息が漏れてしまう。


まさか弟からの情報網を使ってここに辿り着くとは…




俺は弟にだけは行き先を教えていた。


そんな身内に対する少しの甘さを見せてしまっていた自分に後悔している。



提督「ん?」



そこへタイミングよく弟から電話が掛かってくる。



提督「もしもし、おい、どういうことだ!お前白露に俺の行き先教えやがったな!?」


弟「ごめん…」


提督「ごめんじゃねえよ!これじゃあ俺が一体何のために…」


弟「僕…自首することにした…」


提督「は…?」



自首…?


海防艦の盗撮していたことをか?



提督「な、なんで…」


弟「やっぱり兄さんを犠牲にして平気でいられないよ…」


提督「待て!考え直せ!何もかも失うぞ!」



というか今更そんなことしてもただお前が職を失うだけだって!



弟「兄さん、ありがとうね。いつも味方でいてくれて」


提督「落ち着け…話を…」




俺の話を聞かず、結局弟は電話を切ってしまった。




提督「…」



俺は白露に居所を教えたことをこれ以上問い詰める気にもなれず、椅子に深くもたれ掛かり思考を停止してしまった。




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【鎮守府 周辺海域】




白露「逃がさないから…提督の一番は白露なんだから…」



帰る素振りを見せて白露は鎮守府の周辺海域に一人で出ていた。



そんな白露の近くに深海棲艦が6隻迫って来る。

空母はいなかったが旗艦が戦艦ル級の艦隊だった。



たった一人で出撃している白露に対し嘲笑するような雰囲気を漂わせている。



白露「ちょうどいいや…」



白露を取り囲もうとしている深海棲艦に対し…




白露はいきなり旗艦である戦艦ル級に急接近した。




ル級「…!?」



ル級はすぐさま主砲を向けて白露に砲撃を開始するが、白露は難なくそれを躱し急接近する。



そして魚雷をル級の口にねじ込んだ後そのまま力任せに海面に仰向けに倒し、顔面に主砲を撃ち込んだ。


顔面を吹き飛ばされ首から上の無くなった戦艦ル級はゆっくりと海に沈んでいった。




白露「ねえ」



白露の声に深海棲艦達が恐怖に身を竦ませる。



白露「あんた達もこうなりたい?」



深海棲艦達は首をブンブンと横に振る。




白露「それじゃあ白露の言う事、聞いてくれるよね?」



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【鎮守府内 執務室】





伊14「あれ?お客さんは?」


提督「もう帰ったよ」



白露が帰ってから暇そうな艦娘達が執務室に集まっていた。

これから気分を変えるために出撃してもらおうかと思ったがどうにもやる気が出ない。



日向「残念だ…瑞雲を…いや、駆逐艦には積めないか」



無茶言うんじゃないっての。



長門「本当に残念だ…私も一緒に行きたかった…」



残念ながら俺の居た鎮守府に子供体形の駆逐艦はいなかったぞ。



伊14「歓迎会でもやればお酒飲めたのにー、ちぇっ」



歓迎してたまるかってんだ。



提督「…」




これから出撃のための話をしようというのに愚痴にも近い彼女達の言葉に俺は呆れた溜息を吐いた。


しかしそんな中…



青葉「…」


提督「青葉…?」



青葉だけが顔を下に向けて無言だった。

いつもだったら俺に対し『先程の子について一言良いですか!?』とかうっとおしいくらい聞いてくるのに…


俺の顔を見ないよう顔を俯かせて汗がポタポタと落ちていた。




提督「青葉…お前まさか…」



何か変な情報を白露に与えたんじゃないのかと不安になる。



青葉「…!!」




俺の言葉にギクリと青葉が肩を震わせた…


こ、こいつ一体白露に何を教えたんだ…!?






『てい…とく…』





提督「え…?」


長門「通信か?」




執務室にある通信機から声が聞こえてきた。

いや、聞き覚えのある間違えようのない声だった。



提督「だ…誰だ…?」




恐る恐る返事を待つと…




白露『ごめんね…私…』


提督「し、白露…?」




通信機から白露の声が聞こえてきた。


おい!?なんでこの鎮守府の通信番号知ってるんだ!?


俺は青葉に疑いの視線を送る。

青葉はサッと横を向いて視線から逃れた。


やっぱりお前かー!!!



白露『帰ろうと思ったけど…道中で会敵しちゃった…』


長門「な、なんだと…」


白露『損傷酷くって…動けなくなっちゃった…』


伊14「た、大変じゃない!」



そんなバカな…


あれだけ強い白露がこの近海の深海棲艦程度に瀕死になるわけが無い。




俺は急いで執務室にある電子パネルを開く。

そこには白露らしき反応と深海棲艦の反応が映し出された。


確かに白露一人に対し深海棲艦は5体。


傍から見れば絶体絶命だった。




提督「…」



自作自演…?

深海棲艦相手に?


しかし白露ならやりかねんと思えるのが悲しい…



青葉「は…早く助けに行かないと!」



お前が言うな。



日向「瑞雲を飛ばそうか?」



瑞雲飛ばしたいだけだろ。




伊14「提督!」


長門「急がなければ…!」



急かす艦娘達に対し俺は何も言えず頭を抱えた。



なぜかというと通信機を見るとこの通信が大本営にも繋がっている状態になっている。

それを解除しようとしても受け付けない。

あいつ一体何しやがったんだ!?




白露『提督…ごめんね…いつもいつも迷惑ばっかり掛けて…』


提督「白露…」


白露『でもね…これで終わりだから…ぐすっ…っ…』




通信機を通して白露の泣き声が聞こえてきた。

その声は演技には思えず本当に死のうとしているように思えてしまう。


愛が重すぎるんだよ!




白露『さようなら…大好きだよ提督…』


提督「っぐ…!!」



俺は勢いよく立ち上がり顔を上げる。


いくら演技の可能性があるからといって本当に死なれたらシャレにならない。

夢見悪くなるし、罪悪感で死にたくなりそうだし、妹達から殺される可能性もある…


俺は腹を括って艦娘達に頭を下げた。



提督「白露を助けに行ってくれ!」


青葉「青葉、ネタの提供を希望します」


提督「大本営のヤバイネタをくれてやる!」


伊14「イヨ…珍しいお酒欲しいなあ」


提督「とっておきの酒を取り寄せてやる!」


日向「瑞雲…」


提督「搭載できそうな航空戦艦を紹介するぞ!」


長門「私は…」


提督「海防艦の写真集を取り寄せてやる!」






まったく…こいつらは…こんな時でも自分の欲望丸出しにしやがって…!



長門「よし!行くぞ!艦隊、この長門に続けぇ!!」



しかしやる気に満ち溢れた4人は執務室を飛び出していった。



提督「あーあ…」



後に残された俺は深いため息を吐いた。




まあ、あの4人なら近海の雑魚くらいあっという間に片付けるだろう。















____________________







白露「うふふ、やっぱり助けに来てくれた」



深海棲艦に囲まれている白露は瑞雲が接近するのに気づくとニヤリと笑みを深めた。



白露「いいよあんた達、今回は特別に見逃してあげる」



白露がそう言うと深海棲艦は蜘蛛の子散らすように逃げ出してしまった。



長門「無事か!?」


白露「うん、大丈夫だよ」




長門達は中破状態にあった白露を無事に救出することができた。




____________________



【鎮守府近郊 港】





白露「ていとくーーーーーー!!!」



港へ帰還した艦娘達を迎えに行くと白露が勢いよく俺に向かって走ってきた。

あちこち傷だらけで衣服もかなり乱れている。

白露の魅力的で大きな胸が揺れ、生肌が露わになっていた。



白露「やっぱり白露を助けてくれたね!ありがとう!ありがとう!」


提督「うおっと…」



白露が飛びつくようにして抱き着いてきた。

俺はその勢いによろけそうになったが何とか堪え白露を抱きとめる。



白露はギュッと力強く抱きしめ、自分の胸を躊躇うことなく押し付ける。


相変わらずこいつは柔らかいな…と白露の身体を久しぶりに感じて誘惑に負けそうになってしまった。



そして…



白露「んちゅっ…」


提督「んぅっ!?」


伊14「わわっ!」


青葉「スクープのチャンスですね!」



白露はそのまま俺の唇を奪った。



唇を触れさせるだけじゃなく貪るようなディープキスだった。




白露「じゅる…みゅ…んゆ…んーーーっちゅ!ふふ、これでもう責任取るしかないね!」


提督「お、お前なあ…!」



隣では青葉がパシャパシャと撮影している。

後で売るつもりなのか会報に載せるのか…


これはもう言い逃れもできないなと諦めの気持ちが出てくる。



白露「提督!白露はこれからもずーーーっと傍に居るから、いっちばん大事にしてね!」



満面の笑みで俺に擦り寄る白露に



提督「あはは…」



力無く笑うしかなかった。








俺は…白露からは逃げられない…







そんな確信めいた諦めに脱力感が湧き上がってきた。










【鎮守府内 食堂】




伊14が白露の歓迎会をやりたいと騒ぐので食堂にて行うことにした。



白露「さ、さ、提督も飲んで飲んでー」


提督「ああ…」



歓迎会の主賓だというのに白露はパーティの間も俺の隣を離れようとはせず、ずっとくっついていた。


獲物を捕らえた獣のように食らい付いたら離さないという感じなのだろうか。



しかし今後何をされるかわからないという恐怖感がやって来たというのに、俺の胸の中の罪悪感は少し解消されていた。


あの鎮守府を離れて以降、ずっと心のどこかには白露がどうしているか、泣いているのだろうかという気持ちがあったからなのかもしれない。




提督「なあ白露」


白露「なあに?」


提督「俺が…いな…く…」





あれ…?



何だか急に…





この後俺はいきなりやってきた強烈な眠気に抗うことはできず眠りに就いてしまった。





白露「…」







____________________






伊14「あれー?提督、もう寝ちゃったのー?」


日向「まだ始まったばかりだが?」


白露「ふふ、疲れてたみたいだね。提督のお部屋に連れて行きたいんだけど」


長門「私が運ぼうか」


白露「ううん、これも秘書艦の務めだから白露に任せて。青葉さん、提督のお部屋ってどっち?」


青葉「執務室の隣の隣です。準備できてますよ」


白露「うん、ありがとね」




白露は礼を言って眠ってしまった提督を食堂から連れ出して行った。





長門「準備?」


伊14「青葉ー、準備ってなーに?」


青葉「知らない方が身のためですよ…」


日向「?」




____________________








【鎮守府内 提督の私室】















ん…




眠ってしまったのか…?





いつ寝たんだっけ…




何だか…股間がムズムズする…






「ん…ちゅ…れろ…んう…」





ゆっくりと意識を覚醒させると




そこは俺のベッドだったのだが…





提督「なん…だ…これ…!?」




俺はベッドの鉄柱に両手を縄で拘束されていた。


ガッチリではなく多少動かせる余裕はあるものの身動きできないようになってしまっている。



下半身を動かそうとすると何かが邪魔をする。




白露「えへ、やっと起きたね」


提督「し、白露…!?」



自分の下半身に目をやると白露が両足を動かせないよう拘束しながらこちらを見ていた。


俺の服は脱がされていて股間がむき出しになっている。


俺だけじゃなく白露も全裸になっていて傍から見たらセックスしているようにしか見えない。



おまけに…




提督「お、おい!?なんでカメラが!?」




三脚の付いたビデオカメラが複数台俺達を捉えていた。


赤い光も確認できて録画になっているのだろうと嫌でも理解できてしまう。



白露「二人の初めての撮影だよ」


提督「や、やめてくれ!」



憧れだった艦娘とヤレるという夢が叶いそうだというのに、それがこんな状況ではさすがに混乱してしまう。



白露「えへへ、準備はしておいたからね」



そう言って白露は俺のモノをグイっと掴む。


どうやら俺が眠っている間に色々と刺激されてしまったらしくギンギンになってしまっていた。




白露「それじゃあ…」




もう白露を止める術はなく、俺は跨っている彼女の成すがまま艦娘との初体験を…





白露「い…痛っ…!」


提督「え…」




俺のモノを受け入れた白露が苦痛に顔を歪ませる。


俺は彼女の暖かさを感じながらも視線を結合部に向ける。


そこには血が流れているのが確認できた。




白露「よか…った…まだ残ってたみたい…」


提督「白露…お前確か前の鎮守府で…」



白露は前の鎮守府で肉体関係を強要されたと言っていた。


彼女はもう処女ではないと自分で言っていたが…



白露「ごめんね…あれ嘘…」


提督「嘘ぉ!?」


白露「提督のことを想って…過激にやり過ぎて…うっかり…」



激しい自慰でうっかり処女膜破ったってのか…?



提督「マジかよ…」



だったらどうしてあんな強烈な嘘を…




白露「でもね…嬉しかったよ?」


提督「え?」


白露「提督は…私のことを一番に考えて…過去のことは関係無いって、今の私を見てくれるって言って…本当に嬉しかった…」


提督「白露…」




あの時は当たり障りのないことを言って逃れようとしただけだというのに…




白露「提督に…増々惚れちゃった…好きな気持ちが止まんなくなって…」


提督「…」


白露「ごめんね、こんなことしちゃって…いつもいつも迷惑ばっかり…ぅ…えぐ…」



白露は俺の上で涙を零し始めた。



白露「でも…お願いだよ…お願い…」


提督「…?」


白露「もう…どこにもいかないでよ…ここに居させてよぉ…えっぐ…ひっく…」





あれ…



もしかして俺は大きな勘違いをしていたのか…?



白露「白露を置いて行かないで…見捨てないでよぉ…うっぐ…うぁ…うあぁぁあぁぁ…」







俺の上で泣きじゃくる白露を見ていると




不思議と冷静な思考が働き始める

















俺は白露が改二になったことで彼女の中の不安が無くなると思っていた。



改二改装で能力が上がることでこれまでの劣等感から解放されると思っていた。



改装後に落ち着いているのを見て精神的にも安定したのだと思い込んでいた。







しかしそれは大きな思い違いだった。




白露は改二改装された後も精神的に不安定なままだったんだ。



これまでずっと優秀な妹達に嫉妬し引け目を感じ虚勢を張ってきたことに逃げ場はなかった。



だが初めて俺という安らげる場所を見つけた。



改二改装を終えた後も不安でいっぱいだった俺はその後、白露に怯え距離を取り始めた。





それが白露の精神状態を大きく揺らがせてしまい、演習で暴走させたり過激な行動を起こさせたりしてしまった。




俺は増々怯え白露から距離を取る



白露は俺に捨てられたくないと全力で追い掛ける



そんな負の循環は白露を追い詰めこんなことをさせるまでにしてしまったんだ。







白露「うっ…え…えぐ…て、ていとく…えぐ…」






俺の上でたくさんの涙を零し泣きじゃくる白露。




それは俺が一度彼女から秘書艦を取り上げようとした時と変わっていなかった…。




その弱々しい姿は俺に何とかしてあげたい気持ちにさせてくれた。











提督「白露」


白露「…?」




俺は少しだけ自由になる手を動かして白露に近寄るよう手招きをする。



白露「なぁに…?うわぁ!?」



近寄ってきた白露の頬を掴み自分の顔に寄せる。



白露「んむぅ!?ん…!?みゅ…ちゅ…」



そして白露にキスをした。



白露「提督…?」


提督「すまなかったな白露、不安にさせ続けてしまって」


白露「え…」


提督「もう逃げるようなことはしないよ」


白露「提督…んちゅ…んぅぅ!?」



そう言ってもう一度白露とキスをする。



これでどれだけ彼女の不安を和らげることができたのかわからない。


しかし今はそうする事で白露が不安から解消されるのならと行動することしかできない。



白露「提督…ぅ…っ…」


提督「これからはずっと傍にいるからな」


白露「うぐ…ぅ…うわあぁぁぁぁぁ!」




白露は泣きながら俺の胸に涙をポタポタと零し続けた。










その後、白露は俺の腕の拘束を解いてくれて






翌日の朝陽が昇るまで白露と身体を交わし続けた。















俺はもう逃げることはせず





傷つけ続けてしまった白露のために生きようと誓った
















その後、白露が俺に対しての不安が解消されたかというと…





そんな簡単なわけにはいかなかった。






長門「本当にいいのか?」


提督「ああ。やってくれ」




白露の要望は鎮守府内の全ての窓に鉄格子を付ける事から始まった。


俺が逃げ出さないようにするためなのはわかっている。



伊14「うわ…まるで刑務所みたいになってきた…」



確かに傍から見たら刑務所にしか見えない。


しかしこれで白露が安心できるならと快く受け入れた。









日向「お熱いな」


提督「そうだろう?」


白露「…」



執務室での書類整理中、白露はずっと俺にくっついたままだった。


時期的に少し暑くも感じるが俺は何も言わず白露を隣に置き続け、時には頭を撫でたり俺からもくっついたりしてあげた。




不思議なことに俺からアプローチをすると白露は落ち着いた猫のように静まり返ってしまう。

以前のようにグイグイと俺にアピールすることが無くなってしまった。



執務室の電話が鳴る。



白露「はい、もしもし…」



電話には一番に白露に取らせるようにしている。


誰からの電話ということを明確にし、隠し事をしないようにするためだ。



白露「大本営の人から…」


提督「ああ」



そして俺は電話を代わる時は必ずスピーカー状態に変える。


何を話し、何を言ってきたのか、白露に全て共有させるためだった。
















白露「おやすみ、提督」


提督「ああ。おやすみ」


白露「青葉さん、これお願いね」


青葉「了解しました!」




寝る時は一緒のベッドで寝ることにしている。


もちろんそれだけじゃなくベッドの周りには複数台カメラが置かれている。


おまけに俺は白露に手錠をつけられている。


青葉はそのカギを翌日朝まで預かり、翌朝になったら外しに来てくれる。



最初はかなり渋った青葉だったが俺が土下座して頼むと渋々引き受けてくれた。






白露「ねえ…提督…?」


提督「どうした?」


白露「なんでも…ない…おやすみなさい…」




何か言いたげだった白露はまだ少し不安そうな顔をしながら目を閉じた。



提督「おやすみ白露、明日もよろしくな」



俺は空いている手で白露の髪を撫でながら眠りに就いた。





俺の胸の中で眠る白露



まだ不安に押しつぶされそうなか弱い少女にしか思えず




俺はこの先も白露が安心して眠れるよう願いながらも彼女のために頑張ろうと誓った


























その後も俺は何事にも白露と行動を共にした




食事の時



仕事中





白露が出撃中は小型船に乗ってその姿を追いかけ、彼女の視界に入れるようにした




他の艦娘達にはいらない手を焼かせてしまったが



不思議と嫌な顔を見せず力を貸し続けてくれた




どうしてなのかと聞いたら『見放されていた自分達を見捨てなかったから』だそうだ。



俺は自分のことしか考えてなかったというのに…



そんな過去の自分を恥じながら俺は仲間達に感謝した。












どうしても出張で大本営に行かなくてはならない日がやって来た。



いつもだったら俺一人で行くのだが、俺はここでも白露を同行させた。





出張に同行させるまでは良い。



しかし問題はその後、大本営での会議をどうするかだ。



通常ならば会議は各地の提督達のみで行われる。



秘書艦を同行させる提督など見たことは無かった。





白露「…」




白露は不安そうに俺を見上げる。


そんな表情を見てしまうと俺は彼女を置いて会議に行くことなどできなくなった。
























「おい、どうして艦娘を連れているんだ!」



「会議に同席させろとはどういうつもりだ!!」




当然のように怒号が飛んできた。


まだまだ下っ端の提督である俺はその声を黙って受け入れるしかなかった。




「やる気がないなら帰れ!」



「艦娘が傍にいないと何もできないのかお前は!恥を知れ!」



白露「…!!」



提督達からの罵声に白露が怒りに顔を歪ませて詰め寄ろうとする。


俺は慌ててその間に入り白露と共に会議室を出た。




「そうそう、そうやって艦娘と仲良くな」



「そんなことではいつまでも辺境の提督のままだぞ、あははは」




嘲笑を背に受けながら俺は白露と一緒に退室した。












白露「ごめん…ね…うっ…ぅ…ていとく…あたしの…せいで…」




廊下に出ると白露が悔しそうに涙を零した。



白露「このままじゃ…提督が…下から一番になっちゃう…ごめんね…ひっく…ごめんね…」



申し訳無さそうに白露が泣き続ける。


以前とは違い回りが見えるように変わってきたその様子に俺は少し嬉しくなった。



提督「いいよ。俺は白露の一番になれればそれで」


白露「え…」


提督「はは、我ながらクサい台詞だったな」




俺は恥ずかしさを隠すように白露の手を握る。




提督「遊びに行くか。近くにデカい水族館があるんだぞ」


白露「え…え…?でも会議は…」


提督「いいよ別に、どうせ俺みたいな下っ端はさっきみたいな嫌味言われるだけなんだから」


白露「あ…!」




躊躇する白露を強引に引っ張り俺達は大本営近郊の町へと繰り出した。



俺の誘いに最初は戸惑い不安だらけだった白露だったが、次第に気持ちを切り替えてくれたのか笑顔を見せてくれるようになった。



その後はたっぷりと水族館、映画館、レストランと堪能し、憂鬱な一日は楽しい一日と変えることができた。








俺はその後、会議を出なかったということもあって3ヶ月間の10%減給をくらった。


















それ以来、白露の俺に対する不安と疑いは徐々に薄れていった。



監視する時間は減り、逆に離れていても大丈夫な時間が増えた。


しかしその後も白露を傍に置いての鎮守府は続けた。



白露「えへへ、提督、今日も良い笑顔だね」


提督「白露もな、良い顔してるぞ」


白露「ありがとー!」



白露の笑顔が見れる日が増え、それを見て仕事をするのがとても楽しいからだ。



伊14「あのー…」


青葉「執務室でイチャイチャしないで下さいよ…」


白露「やだ」


提督「断る」


伊14「まったくもう…」



周りの目なども一切気にせずそんな生活を続けていた。





そんな日々がしばらく続いたある日のこと…








提督「異動ですか…?」


役員『ええ』


白露「…」




大本営の役員は俺に異動話を持ってきた。


相変わらず電話はスピーカー状態にしているため会話の内容は白露に丸聞こえだ。



提督「なんで今更…」


役員『あなたは辺境に飛ばされたにも拘らず目覚ましい戦果を上げ続けてくれた』


提督「…」



ああ…ハッキリ『問題児だらけの鎮守府でよくそんな戦果上げられたな』って言わないんだな。



役員『それにあなたは弟を庇うために異動になったらしいじゃないですか』


提督「…」




弟よ…


自首して以来連絡ないけど…どこで何してんだろうな…



役員『実は現在の横須賀の提督が病気によってしばらく出られなくなりましてね、その補充ということもあってぜひあなたにと』


提督「はあ…」



海軍は万年人手不足だもんな。


上層部としては即戦力になる提督が必要なんだろうが…




白露「…」



白露は黙って話を聞いている。

その口元は何かに怯え震えているように見える。




提督「すみません、条件を出してもよろしいですか?」


役員『何でしょう?』


提督「現秘書艦の白露を同行させて下さい」


白露「て、提督…」



俺の言葉に俯いていた白露が顔を上げた。



役員『それはできません。今後の艦隊運営に支障が無いよう既に秘書艦の方は決まっています。それだけでなく艦隊も現在の横須賀鎮守府の艦娘達を指揮して頂きます。そちらの艦娘達の異動は認められません』


提督「そうですか…」


役員『こんな美味しい異動話は二度とありませんよ。ぜひ引き受けて下さい』


提督「…」




俺はもう一度白露に視線を送る。




白露「て…提督…」



白露は俺に対し笑顔を見せる。




悲しさを隠す作られた笑顔



白露「わ、私は…だ、大丈夫だからね、えへ、だから…行っても…」



改二改装前の辛かった時期を思い起こさせる寂しい笑顔だった。











提督「身に余るお話、ありがとうございます」


役員『では…』


提督「せっかくですが私はここの鎮守府生活が気に入ってましてね」


役員『え…』


白露「提督…」



俺は意を決して



提督「その異動はお断りさせて頂きます。この先も白露との生活を続けたいと思いますので」



異動話を断った。




役員『何を…この先こんな話はありませんよ!?』


提督「でしょうね」


役員『一生そんな辺境で暮らすつもりですか!?この先の出世はもう見込めませんよ!?』


提督「構いませんよ。元々出世には大して執着ありませんし」




俺は動じることなくこの鎮守府に残ることを伝えた。


大本営役員は『失礼します』の言葉も無く電話をガチャ切りしてしまった。





提督「はは、出世を棒に振っちまったな」


白露「…」


提督「どうした?」


白露「なんで…」


提督「え?」



白露が心配しないよう明るい声で対応するが、彼女の顔は既に涙に濡れていた。




白露「なんで断っちゃったんだよ!提督、一生このままだよ!?白露のせいで、白露のせいでこんなことになったのに…それなのに…っ…なんっ…で…」



白露は泣きながら俺の心配をしてくれた。


それはこの数か月間の努力が実ったようでもあり俺を嬉しい気持ちにさせてくれる。



そして早く涙を拭ってやりたいという行動に移させてくれた。



提督「白露のせいじゃない」


白露「でもっ!!」


提督「白露のためだ、悪い方に考えないでくれ」


白露「え…」


提督「白露と一生を共にできるのならって思うと出世くらい気にもならない」



俺は正直に今の気持ちを伝える。



提督「気が付いたらさ…それだけお前に惚れてたんだよな。あははは」


白露「て、提督…」



恥ずかしくなって顔が熱くなる。

しかしこの勢いを止めることは無く押し切ることにする。



提督「俺はこの先も一生白露と一緒に暮らしたい」


白露「…」


提督「白露を大事にする。だから俺の傍にいてくれないか?」


白露「…」





白露は涙を零したまま黙ってしまう。






白露「うん…」





そして顔を上げてこちらを見る。





白露「一生…大事にしてね…!」




顔を上げた白露はこれまでで見た中で1番の笑顔を見せてくれた。













白露「あのね、提督」


提督「なんだ?」


白露「あたしね、ケッコンカッコカリの指輪が欲しい」




提督と艦娘に強い絆を結ぶとかいうアレか。




提督「仮で良いのか?」


白露「え?」


提督「俺はすぐにでも本物の結婚指輪を買おうと思っていたんだけど」


白露「ほ、本当!?いいの!?」


提督「ああ、さっそく買いに行くか?」


白露「うん!」






嬉しそうに白露は笑顔を見せながら俺に腕を絡ませてくる。












白露「提督!世界でいっちばん、幸せになろうね!」











最高の笑顔を見せる白露と共に









俺達は町へと指輪を買いに歩き出した。









もう逃げる必要なんてない









俺は世界で一番の花嫁と一緒に暮らしていくのだから










____________________


                  END






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1: 榛名 2021-06-11 22:11:41 ID: S:y1MF0M

え、あの…好きです

2: 頭が高いオジギ草 2021-07-02 12:21:39 ID: S:Z0eOPo

お手紙のカロリーがすごい…

3: SS好きの名無しさん 2021-07-08 01:07:27 ID: S:oCbMnt

お兄さん少しだけいい人で草

4: SS好きの名無しさん 2021-09-10 08:04:52 ID: S:mT0Zqq

ユユシキザンゲさんの作品は引き込まれる!!


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