ジャーナリスト 「春の屋」に泊まる
「黒田」シリーズを刊行すべく、これまで当方が題材にした映画作品とのコラボを企画しました。
これまで、当方の脳内で活躍してもらったジャーナリストの黒田氏。
彼の足跡を一冊の文庫本にしようか、と計画したときに、新海三作品+アイうた程度ではちょっと物足りない、と感じたのです。
大幅加筆は旧作に施す予定にはしていますが、書き下ろしとして勿体付けるほどの作家さんwでもないので、今回、普通に「春の屋」に泊まっていただくことにしたわけです。
ただ、当然そこには、さまざまに劇場版で作品を彩ってくれたサブキャラの存在は無視できません。あの人も、あの人にも。
さあ、今回の作品がどう言う結末になるか、少しだけ楽しみです。
2023.1.18 「黒田本」作成のための一本として、「若おかみは小学生!」とのコラボを企図
2023.2.2 他仕掛り作との兼ね合いもあり、4000字まで。
2023.2.6 6000字まで。神田幸水とのインタビュー。
2023.5.23 9500字まで。あの言葉の意味を探る方向に。
2023.5.31 11000字まで。
2023.10.16 クロージングに向けて動き出す。
2023.10.21 第一版完成。14,814字。
2024.5.24 誤字発見につき訂正など。14,818字。
1.
隕石災害のルポで一躍その名を響かせたジャーナリストの黒田。それまで鳴かず飛ばずだった彼の快進撃が始まる端緒となったあの災害から約1年が経過していた。
ジャーナリストの黒田にとって、休みは敵だった。いくら自分で休みのスケジュールを取ったとしても、日曜日や祝日を取材対象の都合に合わせると、出かけないといけなくなる。休もうと思った時に休めない因果な商売だな、と思い続けてはや十数年が経った。
「だったら、骨休みも兼ねて、そう言う取材もやってみたらいいんじゃないか」
仕事に休暇を忍ばせる手法に気が付いたとき、黒田は、少しだけ小躍りした。
黒田は、懇意にしていて、今仕事をもらっている雑誌『サプライズ』の編集長・河井に企画書を提出する。
「へぇ。黒田さん自ら売り込みとは。珍しいじゃない」
河井は、会議用のテーブルで黒田の出した企画書に目を通していた。
タイトルは、「隠れ家的お宿で濃密な大人時間」。白骨・野沢・花の湯・城崎の4つの温泉地の、評価はそれほどでもないが一点に秀でているお宿の紹介をしようというものだった。
「なあるほど。私らの雑誌を読む人がこんなお宿に泊まろうとは思わない。けど、"泊まってみたいな"と思わせるコラム的な記事にしよう、というわけですね」
河井は、すぐに黒田の真意に迫ろうとした。だが、黒田は、その問いかけには、満足な表情を見せなかった。
「半分くらいは間違ってますね」
その発言に、河井は少し気色ばむ。
「ほほぅ。どこが間違ってますかな?」
にやり、とした黒田は、説明を始めた。
「私がこれらの宿を選択したのは、気まぐれでも、当てずっぽうでもありません。その宿にストーリーや歴史を感じたからです。その裏側を取材を通して調べてみたいんです」
「ジャーナリストの血が騒いだ、と」
河井は、黒田の、こうした野性的な直感を信じている節はあった。なんといっても、着眼点なのだ。
特にしっかりとした連載や追いかけているネタを持たないフリーのジャーナリストは、基本雑誌社の発注した内容の記事を取材し、形にするのが一般的だ。今回、黒田がなぜ旅館にスポットライトを当てようとしたのか、河井はよくわかっていない。
「それもありますが、もっと違う観点で見てほしいですよ、編集長」
少しイラつかせた表情で黒田は、出されて少しぬるくなっている日本茶で口を湿らせた。
「これからこういう、一芸に秀でた宿がクローズアップされる時代がやってきますよ。ホテルでは味わえないホスピタリティ、風景を独り占めできる特殊な環境、一組限定宿の超絶サービス、外国人しか泊まらなくなった温泉宿。どれもこれも、一般人には近寄りがたいものであるけれど、こんな宿がクールジャパンを支えているんだ、と知ってもらいたいんです」
「ふぅーん。確かに最近、海外からの旅行者も増えてきているし、チェーン系とか巨大系に飽きた人にとってはいいバイブルかもな」
企画書をトントンとまとめながら、少し得心の言った表情を河井は見せる。
「この間の渾身の取材のこともあるし、前の編集長の大貫さんからも仕事ぶりは伺ってますからね。この企画、いくらで買いましょうか?」
それは、掲載OKの合図だった。
「え、ええっと……」
金額の交渉までとんとん拍子で話が進むと思っていなかった黒田は、口ごもってしまう。
「あっはっは。本当に黒田さんは、面白い方ですなぁ」
ドギマギする黒田を河井の温かい笑いが包む。
「いいですよ。宿代は編集部もち、かかった経費は原稿料で充当していただくっというので、どうですかな?」
「え、あ、ハイ……」
黒田は、場に飲まれてしまったかのように河井の提案を受ける。
「これで最低4カ月は食いつなげますね、先生」
見開きのコラムレベルと想定していた河井は、黒田にそう言う。
「え、ええ、まぁ……」
一本の記事でまとめるつもりにしていた黒田だったが、毎月いくばくかでも収入が見込める河井方式の方が黒田にとっては好都合だ。
「次の号から、黒田さんの書くスペース、開けときますから。よろしくお頼みしますよ」
河井は、黒田を送り出す前に、黒田に握手を求めた。
黒田が右手を差し出し、握手すると、その上に、河井の左手が重ねられた。
「この瞬間が、快感なんだよなあ」
紙面をどう埋めるかに腐心する編集長の偽らざる心境を黒田も感じ取っていた。
2.
黒田の連載企画は、「宿で味わうクール・ジャパン」に改題されて連載がスタートした。
当初の企画で提示した温泉宿ではなく、編集部が見つけた一風変わった宿に、黒田が取材に行く、というスタイルとなり、アンテナを広げている編集部のチョイスが功を奏し、連載はいい滑り出しを見せた。
3カ月目になると、編集部にも、宿に関する問い合わせが来るようになる。何しろ、ホームページとかも開設されておらず、宿泊サイトにつながっていない宿が多く、宿泊予約をどうすればいいのかを編集部に聞いてくる人たちが一定数居たのだった。
「いやぁ、それでも好評だからここまで話題になるんですよ。黒田さんの企画、大当たりですよ」
河井は、満面の笑みをたたえて、先月分の原稿料を手渡しする。
「しかし、黒田さんも変わってますよね。振り込みの方がお互い手間暇省けるのに」
黒田のこだわり。それは、原稿料は手渡しでいただきたいというものだ。キャッシュレスが叫ばれつつあるこの時代でも、現金・現ナマ主義の黒田は、そこに達成感を見出していた。
「数字で示される金額ってのに、不安を抱くからですよ」
黒田はそう言って、差し出された封筒を受け取る。中身を一瞥して、スーツの胸ポケットに収めた。
「うちの高名な作家さんにも、そんな人いますよ。大ヒット作が出て、印税がウン千万単位になった時に、さすがに現金は勘弁してくれって言って、ようやくご理解していただいたこともありましたっけ」
「大丈夫。僕はそこまでには至りませんよ」
黒田は、皮肉も込めて河井に言う。
「まあまあ、そうなったら、本当に黒田さんは超一流のジャーナリストですよ、アッハッハ」
河井は大笑する。黒田はその笑い声を黙って聞く。
「さぁて、次に行っていただきたいのはですね……」
河井は、ひとしきり笑った後、仕事の話に入った。
「ここなんか、どうです?」
河井が取り出したのは、編集部がチョイスした、宿のリストだった。
黒田は、自分の出した企画の段階でリストアップしていた花の湯温泉の「春の屋」の名前を、リストの中に見つけた。
河井が指で指示していたのは、別の宿だったが、
「いや、僕はここに行ってみたいですね」
と、黒田は「春の屋」行きを提案する。
「ほうほう。ここも結構評判は悪くないみたいですよ」
河井は、あえて黒田の提案に乗ったようなそぶりを見せる。
「前の企画の時にもこの宿出してましたよね。なんか思い入れでも?」
河井は、黒田の「春の屋」推しの真意を知りたかった。
「単に、ストーリー性がある宿だと思ったからですよ」
「ストーリー性……」
そんな日本語が宿を決める際に出てくるとは思わなかった河井は、首をひねる。
「部屋数は5、板長と仲居、そして大女将と若おかみ。たったこれだけで宿が回せるのだとしたら、そこに得も言われぬ物語があると感じたんです」
黒田の熱弁を河井は黙って聞いている。
「それを知りたいって言うのが本心なんです。宿の評価がかなりばらついているのも理由があるはずなんです」
「なんとなく、黒田さんが推したい理由はわかった。ただ、どうだろう、記事にした時に映えるかい?」
編集長が気にしたのは、一気に地味に映る典型的な日本旅館が掲載されることだ。今までは、それなりに描くべき内容がある旅館やホテルばかりだった。
「そんなこと、行ってみてのお楽しみ、ですよ。次はここに決めましたから」
黒田は、半ば強引に、「春の屋」行きを河井に承諾させた。
若干乗り気ではなかった河井だが、いざ予約を入れようとすると、向こう数カ月先までほぼ予約でいっぱいという現実を知ることになる。
キャンセル待ちをしていた編集部に、1週間後の1泊分が空いたとの連絡を受けて、河井は、黒田に一報を入れる。
電話を受けた黒田は、
「ね?言ったとおりでしょ?」
と、ようやく向かえるとわかった安ど感もあって、河井にそう言う。
「いやぁ、舐めてたわ。ここは黒田さんの勝ち、ですわ」
頭をかきながら、河井は黒田に謝罪する。
「このタイミングなら、穴があかずに済みそうだし、行ってもらえますよね」
河井は、黒田に言う。
「行くなって言われたって行きますよ。そのストーリー性とやらを確認するために!」
力強く黒田は答えると、笑顔で電話を切った。
3.
「春の屋」に予約をした際には、河井は、個人名でせずに出版社名義で行っていた。
黒田は、予約確認の電話をした際に、「え?黒田さまではご予約いただいてませんが」といわれて、慌てて会社の名前を出した。
「あ、それでしたら承っております」
"まったく、そそっかしいなぁ"
河井の顔が浮かんだが、ここはぐっとこらえた。
「ということは、取材か、何かで来られるのですか?」
恐らく電話口で応対しているのは、仲居だろう。出版社が取材に行くことがNGだったら、この時点で終わりだ。
「ええ。いま『サプライズ』で連載している、『宿で味わうクール・ジャパン』という企画の一環にそちらが選ばれたわけでして」
嘘を言ってまで取材したくはなかった。黒田は、ありのままを告げる。
「し、少々お待ちください」
取り乱したような口調で仲居は席を外す。おそらく大女将に相談しに行ったのだろう。
「お電話代わりました」
年配の女性の声が耳元で囁いた。大女将が話していると即座に黒田は理解した。
「『宿で味わうクール・ジャパン』、私も楽しく読ませていただいてますよ」
大女将の反応は意外なものだった。
「え?そ、それじゃぁ……」
黒田がその言葉にときめいた。
「私、サプライズのファンなんですのよ」
大女将は、そう言って、関峰子と自己紹介する。
「まあまあ。うちのお宿をご紹介いただけるなんて……女将冥利に尽きますわ」
大女将は、そう言う。
「必ずお伺いいたしますっ」
黒田は、力強く宣言する。
春の屋訪問当日までに、黒田は、とある人物を取材する。それは、雑誌「WAVE」に春の屋のことを寄稿していた神田幸水だ。
「いやぁ、私も作品作りに躓いていたことがありましてね」
神田はそう言いながら、春の屋との出会いを語り始めた。
「そもそもの発端は、妻の死でした。彼女を失ってまったく筆が進まなくなったんです」
神田はそう言うと、目の前のコーヒーに口をつけた。
「息子も母親の死からふさぎ込んでしまいましてね。二人して母と妻の死を受け入れる旅行にしようとあちこち巡ったんです」
「その途上で、花の湯温泉に……」
黒田は確認した。
「ええ。たまたま通りがかった織子さんの勧めで春の屋に泊まったんです」
予約も何もしない、飛び込み同然で「春の屋」に泊まったことに、黒田は驚いた。
「その時は、今ほどの人気宿ではなかったんですか?」
黒田は少し気になって神田に問う。
「ええ、まあ。私も普通にそれなりのお部屋に通されましたからね」
たまたまだったにせよ、偶然がここまで重なることも珍しい。黒田は神田にさらに畳みかけた。
「WAVEに投稿されたきっかけってなんだったんですか?」
神田は少し思い出すようなそぶりを見せつつゆっくりと語り始めた。
「その時、実は息子のあかねが熱を出してしまったんです。大したことはなかったんですが、宿の人たちのかいがいしさ、なんといっても、息子と同年代の若おかみの奮闘ぶりが印象に残ったんで寄稿したんです」
「なるほど」
黒田は取材ノートに「若おかみ」と書き留める。
「どんなところに惹かれました?」
黒田は質問した。
「上げだしたらキリありませんよ。息子が、「オムライスが食べたい」と、まるでお子様アピールをして宿の人を困らせようとしたのにも応えてくれたし、夜遅いのに「ケーキが食べたい」という無茶ぶりにプリンで対応したり……」
特別待遇や過度な要求があったにもかかわらず、宿代に付加された様子が見当たらず、それどころか、素泊まり同然の料金しか請求されなかったことまでを一気にまくしたてた。
黒田も、宿の取材をするようになって、ただ体を休める場所としての宿だけでは、人の心を動かせないということに気がついていた。
神田ほどの作家をここまで饒舌にさせる宿。人の心にツメ跡を残せる宿ってそう多くはないはずだ。
「あなたも取材されるんですよね?」
神田は、インタビューの最後にこう切り出した。
「ええ」
黒田は軽く返答する。
「下手したら、今までの人生の中で一番の宿になるかもしれませんよ」
ニンマリとした笑顔を浮かべた神田を見て、黒田の心の中のハードルがさらに一段階上がった。
神田だって数百件の宿を知っているはず。その彼をして、生涯一二を争う宿に「春の屋」がなっている。この事実を黒田は改めてかみしめていた。
4.
取材当日。
黒田は、まるで、遠足に向かう小学生よろしく、ウキウキ気分で東京駅に向かった。
9番線ホームに上がると、緑のストライプが目にまぶしい、いつもの車両がすでに入線していた。
黒田は、それなりにパチパチと写真に撮って、特急券にかかれている号車の中の人になる。
定刻に発車した列車は、ほどほどの旅客を乗せて一路、伊豆方面に向かって走りだした。
今は車内販売というものがないと聞いていたので、黒田は、ちょっとしたおつまみと缶ビールで、車中を楽しむことにした。
伊東まで特急に乗った黒田は、伊豆急線内は、旅情を楽しむ意味合いもあって、各停で目的地の「花の湯温泉」駅まで向かった。
「うはー、やっと着いたぁ―」
花の湯温泉駅でひとつ大きな伸びをした黒田は、駅のたたずまいに圧倒される。
もともと空襲の被害のない場所ということもあるのだろうが、昔ながらの建物がほぼそのまま残っている。駅も木造で、近く県の有形文化財に指定されるとも噂されていた。
宿までは、かなり歩く、とガイドにも書かれていたのだが、あえて黒田は自分の足で宿に向かおうとした。
駅前のこじんまりとした商店街を抜けると、家族経営でやっているような、民家然とした宿が街道沿いに並んでいる。
しばらく歩くと、そう言った宿の集団も見掛けなくなり、それと同時に若干の坂道が黒田の歩き慣れていない足に襲い掛かってくる。
健脚で鳴らしている黒田も、さすがに20分近く、緩慢だけど上りだけの道には少しだけてこずった。
それでも、また民家がぽつぽつと見えてくるころになって、ようやく、「春の屋」の行き先を示す看板が見え始めている。
駅から歩き始めて30分程度。黒田は目指す「春の屋」の玄関先に到着した。
「いらっしゃいませぇ」
真っ先に声をかけたのは、仲居のエツ子だった。
「今晩お世話になります、黒田です」
手短に自己紹介すると、奥から大女将の峰子がやってくる。
「これはこれは黒田さま。ようこそいらっしゃいました」
にこやかに峰子は応対する。
「今でしたら、まだ他のお客様もお見えではありませんから、部屋のお写真なども撮っていただいていいですよ」
その言葉は非常にありがたかった。
「そうですか。なら、さっそく……」
と、勢い込んだところに、
「あ、黒田さまですね。ようこそいらっしゃいました」
という幼い声がかけられる。若おかみの関織子だった。
「ああ、あなたが、お噂の……」
黒田は、見た目中学生になろうとしている彼女に少しだけ目を細める。
「そうだ、おっこ。せっかくだから、黒田さまをご案内してあげて」
峰子はそういって若おかみに指図する。
「それはいいですね。こじんまりしたお宿ですが、良さを知っていただきたいですからね」
にこやかな顔で織子は答える。まさに家族経営という面持ちの宿のほんわかした温かさに、黒田は早速射抜かれてしまう。
宿帳に記入を終えた黒田は、夫婦が泊まるのにちょうどいい一室に通される。
「このサイズのお部屋が3つ、家族連れで来ていただけるお部屋が一つ、グループでお泊りいただけるお部屋が一つございます」
黒田は、織子の案内をメモに取ったり、時々でシャッターを押したり、と忙しく立ち回る。
ひときわ大きい「やまぶきの間」は、前室まである立派な作りで、外の風景はまるで切り取られた山水画を思わせる絶景だった。
「うわー」
その威容に黒田は嘆息とも驚愕とも受け取れる独り言を言ってしまう。
このやまぶきの間は、旅行雑誌とかでも取り上げられている名物客室でもあるのだが、実際に訪れてみると、奥行きの深さもさることながら、自然と一体化してしまえるような、くつろぎが得られると瞬時にわかるたたずまいに圧倒されるのだ。
「こちらが露天風呂になります」
織子は続いて、春の屋自慢の露天風呂に黒田を案内する。
「男女別々なんですね。混浴は設置なしっと……」
新たな情報が黒田のメモに記載される。
「せっかくなんで、厨房にもご案内します」
次に向かったのは厨房だ。板長である康さんが、仕込みに余念なく動き回っていた。
「ああ、これはこれは。ジャーナリストの……」
康さんが言いよどむのを認めて、
「黒田です」
と黒田は自己紹介する。
「ああ、そうでした。今日も満室を頂戴しておりまして、今夕食のご用意をさせていただいております」
手早いスピードで、焼きあがっている魚の切り身がそれぞれの器に納まっていく。そうかと思うと、煮物がグツグツ言っているコンロに素早く駆け寄り、スプーンで味見をしてうなづいたりしていた。
「そんなわけですので、今の取材は、ちょっと……」
笑みはたたえていたが、今は近寄らないでくれ、という料理人独特のオーラを黒田は感じ取っていた。
「ああ、お邪魔してしまって申し訳ありませんでした」
黒田は、手さばきのすばらしさと真摯に料理に向き合う康さんの真剣な面持ちをカメラに収めるだけにとどめた。
5.
「これで、全部、かな?」
客室と風呂、厨房と、回るべき場所はすべて回ったと黒田は考えて、織子に聞く。
「はい。これが春の屋の、すべてです!」
力強く織子はそう答える。
「うん、確かに5部屋しかないと取材もあっという間だよね」
黒田は時計を見る。1時間以上は費やしていたと思っていたのに、30分もかかっていないことにびっくりする。
「うーん。このお宿だけだとボリューム出ないなぁ。なんか近くの名所とか、ない?」
構成を考えていた黒田は、この素材だけでは物足りないと考え、織子に助言を求めた。
「そうですねぇ……」
織子も少し悩むそぶりを見せる。
「せいぜい神社とか、温泉駅近くの商店街くらいしかないですよね……私のお友達のお宿は対象がダブるから無理だし……」
「そ、そうなんだね……」
話の流れとはいえ、織子に負担をかけたことを黒田は少し恥じた。足りないなら自分の足で稼げばいいではないか!
「わかったよ。ありがとう、織子さん」
黒田はそういって織子をねぎらった。
「いえいえ、黒田さま。そうそう。私のことは「おっこ」と呼んでいただいて結構です」
織子は急にかしこまらずに、フランクに黒田に接してきた。
「ええ?若おかみ、でもなく、おっこ、でいいんだ!」
そこまで砕けた旅館の若おかみを黒田は知らない。だが、彼女にとって、両親が親しみを込めて名付けたであろう、あだ名であるおっこと呼ばれていたいのだろう、と考えることにした。
「これから外に出かけて取材してくるよ。夕食の始まるころまでには帰ってくるから」
黒田はそういって、カメラバッグを担いで、玄関に向かった。
靴を履こうとしていると、大女将の峰子が黒田に声をかける。
「おやおや、黒田さま。どちらにお出かけで?」
それに黒田は、
「ちょっと、そこら辺を散策に」
と答えつつ、カメラを取り出し首からぶら下げる。
「ああ、そういうことでしたか。でしたら、花の湯温泉の源泉あたりもいい絵になるかもしれませんよ」
峰子はそうアドバイスする。"ほうほう。源泉、か。これはいいこと聞いた"
黒田は少しにんまりとしながら、源泉があるとされる山の手を目指した。
「花の湯温泉源泉」と書かれた立て看板は、「春の屋」から徒歩15分余りのところにあった。
近くに立っている立て看板によると、花の湯温泉の源泉の温度は53度、やや硫黄分強めの成分表記がなされていて、効能も何種類か列記されていた。
「ええっと……リウマチ、神経痛、筋肉痛、慢性疲労……なんにでも効くんだな」
温泉取材を続けて黒田が気付いたことがある。それは、温泉が標榜する効能の大半が、「温泉地に来ただけで改善する」類のものだからだ。
疲労感なんて、温泉地で働く人ならいざ知らず、湯治的にやってきている人はそれを癒しに来ているのだから、改善しなくては具合が悪い。
リラックスした体からデトックスされることによって血行不良なんかも解消するし、昂った神経を鎮める効果も無視できない。
立て看板を読み進めていくうちに、
「花の湯温泉は誰も拒まない」
という、スローガンっぽいものが立て看板に小さく記載されていたのを黒田は見逃さなかった。
「誰も、拒まない……」
黒田は、あえて一番気になった部分を音読する。
なんでこんなことを強調しているんだろう……客商売である温泉地が、こうした接客のイロハをあえて掲示していることに黒田は少しだけ訝っていた。
6.
温泉街の点描なども撮り終えて、黒田が「春の屋」に帰ってきたのは18時を少し回ったころだ。
「おかえりなさいませ」
仲居のエツ子が黒田に声をかける。
「帰りましたよ。いやあ、それにしてもこのコンパクト感。日本のザ・温泉っていう感じ、気に入りました」
黒田は、足で稼いだ様々な風景や見どころとして紹介するべき個所を思い浮かべて、ひとりご満悦だった。
「でしたら、お膳の方、ご用意させていただきますね」
とエツ子が厨房に向かうのを制して、
「ひとっ風呂浴びてから、にしていただけると助かりますが……」
と黒田は言う。
「あ、これは失礼いたしました。では、頃合いを見計らいまして、ご用意させていただきます」
エツ子は少し慌てたことを反省しつつ、厨房に下がっていった。
「あの仲居さん、そそっかしいところもあるけど、憎めないよな」
黒田は一連の流れを振り返りながら、一人思い出し笑いをしていた。
黒田は、取材で蓄積した疲れを、露天風呂で一切合切流そうと、勇躍湯船に身体を踊り入れた。
少し勢いがよすぎて、大きな波紋が造型されるが、時間が経つにつれて水面は穏やかさを取り戻していく。
「ああ、いい湯だ」
源泉かけ流し。薄めず、追い炊きせず。日本の温泉街の大半が何かしらの加工を施しているのと対照的に、花の湯のお湯は、何も足さず、なにも引かない稀有な存在だった。
「誰も拒まないって、このお湯のせい、なのだろうか……」
ザパザバッと、湯船の湯で顔を一洗いした黒田は、出せていない答えをまだ探していた。
"どうあれ、誰かにこの言葉のいわれは聞かないとな"
ひとつ方向性の決まった黒田は、怪獣が海から登場したかのように勢いよく湯船から上がった。
浴衣に着替えて、部屋に戻ろうとしたころに、若おかみの織子がせっせと黒田のための膳を整えていた。
部屋に入った黒田は、その姿を認めて、
「おっこちゃん、精が出るねぇ」
と、その労をねぎらった。
「いえ。これも仕事ですから」
軽く織子は受け流す。
注文していた冷えた瓶ビールは、織子と入れ替わりにやってきた大女将の峰子が恭しく運んできていた。
「お疲れさまでした、黒田様」
峰子が、黒田が持っているグラスにビールを注いだ。
「いやいや。おもてなし、感謝いたします」
黒田は、少しだけ恐縮していた。
「こんな接待って、僕が記者だから、ですか?」
黒田は、のどの渇きも手伝って、グラスのビールを一飲みしてから、峰子に聞く。
「いえいえ。お客様が落ち着かれるまでは、こうしてお酌の相手もさせていただいておりますよ」
黒田は自分で聞いておきながら、少しバツの悪い表情を見せた。普通は一人で泊まりに来ず、家族連れや夫婦で来るはず。それなら宿の人たちがそのだんらんに立ち入ることはないに等しい。話し相手を所望しているかも、という宿の心遣いを邪推したことを黒田は恥じた。
「そういうことなら、少しお話を伺いたいですが……」
注がれた2杯目には口をつけず、黒田は、峰子の方をキッと見据えた。
「ハイ、なんでございましょう?」
黒田の真剣なまなざしに、峰子も少し襟を正した。
「いやね。僕がこのお宿を取材したいと思った理由、というのがありまして……」
黒田は、「春の屋」を指名したいきさつを話して聞かせた。祖母と孫、わずかな使用人。この陣容で、宿が切り盛りできるのか、織子のご両親はどこで何しているのか、などなど。
「お宿の行く末が気になって、のことでしょうし、正直今の体制でいつまでやっていけるのか、をご心配いただいたことには感謝します」
黒田の話を聞いて、峰子は開口一番、謝辞を述べる。
「ただ、わたしどもも、今の織子がまだ半人前であるということ、しかしその心意気、矜持は決まっていることもお伝えせねばなりません。私の話も、聞いていただけますか?」
「ええ、ぜひとも」
黒田は勢い込む。
「それでしたら、お食事をお済ませになってからがよろしいかと。あ、そろそろ陶板焼きに火をつけますね」
黒田は目の前の御馳走そっちのけで自分の主張だけを聴かせてしまったことを反省した。そう。俺はここに泊まりに来たんだった……
いやな顔一つ見せずに、峰子は陶板焼きと、ミニ鍋の固形燃料に火をつける。
「それではごゆっくり」
三つ指ついて部屋を去る峰子に深々と一礼する黒田だった。
7.
黒田はすべての料理を残らず平らげた。旨いのは当たり前だが、味だけではない、心意気、情念というものをひしひしと感じ取っていた。
"大女将の聞かせてくれる話って、どんなだろう……"
もうすでに、黒田の想いは、峰子の話す「春の屋」ストーリーに意識が向かっていた。
少し前に膳は下げられ、黒田は目の前にある、淹れてもらった緑茶の入った茶碗に視線を落とすばかりだった。
「失礼いたします」
そんな思考を邪魔した若々しい声。声の主は、若おかみの織子だった。
「あれ?」
大女将しか来ないと思っていた黒田にしてみれば、若おかみの来訪は想定外だった。
「実は、私が黒田さまに語って聞かせる、といったら、織子が……」
織子の後ろに、大女将が申し訳なさそうにたたずんでいる。
「そうでしたか。まあ、とりあえず、こちらに」
黒田は、二人を招き入れる。
「実は、お話の時のお茶うけに、と、こちらをお持ちしました」
そういって織子が差し出したのは、温泉プリンだった。
「おお、これがかの有名な!」
黒田とて、事前の取材は怠っていない。若い人向けに考案されたこのメニュー目当てで、引きも切らない人気宿になったことは知っていた。
「はい」
織子は短く返事する。
「ご用意いただいたんだから、食べながらお話を伺うことにしましょうか」
黒田はそういって、目の前のプリンをひとしきり撮影してから、スプーンを手にした。
「さて、どこからお話したらいいものでしょうか……」
峰子は少し思案している感じだ。
「では根本的なところから。どうして大女将と若おかみという体制になっているのですか?」
黒田は、この宿の一番の謎に迫るべく質問する。これが理解できれば、この宿の持っている構造的な問題も解決する。
「黒田様。宿を営む、おもてなしをする。それに年齢や性別は関係ないと心得ますが……」
この応答をしたのが織子だったので、黒田は面食らってしまった。まだ年端もいかない織子の、大人顔負けの回答に黒田は変な汗をかく。
「い、いや、それはそうなんだけど、大女将の下の女将の姿がないのが、どうにも気になっていて……」
黒田は、さすがに関家の"悲劇"を知らない。知っていたら、こんな質問が飛びだすはずがないからだ。
「ああ。そのことでしたか」
またもさばさばした面持ちで織子が応える。心配そうに見つめる峰子など眼中にない。
「私の両親がここにいないことが気になっておられるのですね、黒田様は……」
笑顔で応じた織子の目は一切笑っていない。むしろ陰りを感じさせていた。
「い、いや、ちょっと待ってくれよ、も、もしかして……」
その目を見た黒田は、聞いてはいけない、立ち入ってはいけない"秘密"が暴露されようとしていることに戦慄して、おろおろとうろたえ始めた。
「ええ。黒田様の思われた通りです。私の両親は亡くなっているのです」
黒田の狼狽ぶりを見透かしたように織子は、決然とした面持ちで、そして少し語気を強めてそう答えた。
黒田は、メモを取るのも忘れて、その一言の重さに打ちひしがれる。もはやそれがどうして起こったのか、とか聴きたいとも思わなかった。
ただ、織子の発言から、悲しさや悔しさが感じられなかったことを、黒田は感じ取った。
「だから、おっこちゃん……若おかみはこの宿を継ごうと思ったのかい?」
黒田は、その想いを受け止めつつ、改めてインタビュアーとして織子に聞く。
「それが主な原因とは言い切れません。両親が生きていたらそんなことは思わなかったかもだし、大人になったらまた思いも変わるかもしれません」
やはり動揺は隠しきれないのか、久しぶりに話す身の上話だからか、詰まりつつ織子は答える。
「ただ言えることは、様々な思いの詰まった「春の屋」を祖母の代で終わらせたくなかったし、そうと決まったら、いくら私が中学生くらいの年齢であっても、出来ることは何かあるはずだ、と思ったから、若おかみを続けていられるんです」
昨今の子供の考え方とかは、取材したわけではないのでよく知らない。ただ黒田がその言葉を聞いて、"そこら辺の大人より、ずっと大人びた考え方で生きているのだな"と思った。
だいたい、宿を継ぐということは一大事だ。全ては宿にやってくるお客様に優先する。私事や不慮の体調不良でも、休んだり代役を立てるということが難しくなっていくはずだ。恋愛だってそう簡単にできる環境にない。青春時代を棒に振る覚悟が織子にはある、と言っているに等しかった。
「犠牲も払うけど、今は宿のことで頭がいっぱいなのかな?」
彼女の想いを受け止めて、黒田はフランクに聞く。
「さて、どうでしょうか?勉強は苦手だし、スポーツくらいしかとりえないし。今は、学校に行くことの方がおっくうですよ」
子供らしくアハハ、と笑う織子を見て、"仕事の鬼にまで身をやつしてなくてよかった"と安堵した。
黒田が出した、いくつかの質問に、全て織子は、笑いを交えたり、時には厳しい表情で答えていった。
「いいインタビューができました。大女将の出番を期待したのに何もお話しいただけなくて……」
聴きたいことを聞き終え、ICレコーダーを収納しながら、黒田は峰子に話しかける。
「いえいえ。みんな、織子が話してくれましたから。私の出る幕なんかなくて当然ですよ」
苦笑いを浮かべながら峰子は答える。
「大女将の教育のたまものですよ」
にっこりと返した黒田は、突然のように"あのこと"を聞かねば、と思い返した。
「そうそう、この温泉のスローガンみたいなのって、ありますよね?」
「え?……それって、『花の湯温泉は誰も拒まない』っていう、標語みたいなものですか?」
スローガンという言葉が腑に落ちなかったが、峰子は類推してそう答えた。
「それです、それです」
黒田はメモを取り出して聴く体制を又作り直した。
「この温泉の伝説にならっている言葉なんですよ。その昔、傷ついたオオカミがこの温泉地にやってきて体を癒していたのを、この地を治めていた神様に見つかって、人間のモノに安易に立ち入ったということで、ひどい罰を受ける裁定がなされたんです。それではあまりにかわいそうだということで、村の住人が神様に罪を減じてもらうようとりなして、思いがかなって、オオカミは町の守り神に、そして動物たちも入湯していい、という具合に変わったんです。人間だけではなくて動物が入っていても構わない……それが「花の湯温泉は誰も拒まない」という言葉に表されているんですよ」
「誰」を人種や性別と感じていた黒田は、もっともっとスケールの広い話だったことにびっくりした。動物でも鳥でも"どんないきもの"であっても拒まない温泉地だということを言いたかったのだと知った。事実、ペット同伴可を掲げる宿もほかの温泉地に比べて多かったように記憶している。
「これを聞きそびれていたら、また取材にやってこないといけなくなるところでした」
少し汗ばんだ黒田は、ジョークのつもりでそういって取材を止めようとした。
「それは残念でしたわ」
峰子は少し落胆した。
「ど、どうされました?」
黒田は、峰子の表情が気になって聞く。
「またお越しいただけるか、と思ってましたのに。今度はプライベートで」
峰子も負けていない。いや、むしろこの会話のキャッチボールは、さすがに若おかみではまだまだ無理だ。
「アハハハ。予約が取れたら、また来ますよ。取れれば、ですけどねw」
もう一段踏み込んで、黒田は取材を終えた。それでも時計の針はまだ10時に少し足りないくらいだった。
8.
部屋で食事を済ませたことや、取材に時間を取ったこともあって、黒田の寝床のセッティングが少々遅れていた。
「ああ、それでしたら、寝る前にひとっ風呂浴びますから」
そういって黒田は、ふたたび露天風呂に向かった。
二度目の入浴になる黒田は、ここまでの取材を振り返っていた。
「そもそも俺は、ここの宿に"ストーリー性がある"と主張して取材したいと言い始めたんだったよな……」
遠い昔のような編集長とのやり取りを思い出していた黒田。夜空は、都会では味わえない黒と星の瞬きで満たされていた。
「そんな凄いストーリーがあったとは思いもよらなかったなぁ……」
大女将と若おかみというアンバランスの影に、まさかの死別が隠されていたことは、彼の中では想定できなかったことだ。
「それに、ここのお湯の柔らかさ、温かさ……」
黒田は、湯船の中でお湯を掻きまわすように、腕を大きく振ったり足を動かしたりした。
「"花の湯温泉は、誰も拒まない"。こんないい決めゼリフがある温泉地なんて……」
気が付けば、心がリラックスしたからか、一筋の涙が黒田の頬を伝っていた。
「いやいや。神田先生が言ってた言葉、本当だったんだな……」
一度目とは違い、黒田はゆっくりと湯船から上がった。荒々しい動作が温泉に失礼と感じたからだ。
ふたたび浴衣を纏って、黒田は部屋に戻ってくる。
「黒田様、ご準備、整いました」
いつから待っていたのか知らないが、そこに居たのは若おかみだった。
「あ、ありがとう……」
少し驚いた表情で黒田は答えた。
「本日はお泊りいただきまして、ありがとうございました」
改めて若おかみは謝辞を述べる。
「今日は、おっこちゃんに辛いことを聞いてしまったね。申し訳ない」
取材とはいえ、織子の過去を掘り返すことになったいきさつを黒田はわびた。
「いえ。済んだことだし、私がこうして継ぐことができる「春の屋」はまだ健在です。くよくよしたってしょうがないですから」
実に前向き。未来にあるはずの希望しか見ていない。彼女のポジティブな姿勢に黒田は背筋が伸びる思いだった。
「それもそうだね」
黒田は少し、目を潤ませる。けなげだけれど、真っすぐ。「ネアカ、のびのび、へこたれず」という言葉を残した流通王がダブって見えた。
「私もそろそろお休みを頂戴します。黒田様も、お休みなさい」
また一礼する若おかみ。
「ああ、ゆっくり休ませてもらうよ。おっこちゃんも、お休み」
黒田はそう言ってバイバイをする。
ニコッとした笑顔を残して、若おかみは去っていく。
その後ろ姿に、黒田は、頼もしさと、決して折れない矜持というものを感じ取っていた。
当方が作り出したジャーナリストの黒田。彼の視点で物語を俯瞰させ、しっかりとした取材や考察を通じて、物語の不可解な点や謎を解明することに傾注させる"手段"として幾多の作品に絡ませて登場させてきました。
第一弾の「君の名は。」では、あのスケッチが描かれた理由を、「天気の子」では、神津島にまで出張って帆高を丸裸に、「アイの歌声を聴かせて」では、ラストの打ちあがった一筋の光から正体に迫り、「すずめの戸締まり」では、時間差で訪れる地震のメカニズムを解明する途上で登場人物たちと絡んでいくというスタイルでジャーナリストの視点から作品を見ていくことで2次小説としています。
実は、「ジャーナリスト・黒田の手帳」というタイトルで、一冊SS本を出版しようと画策した時期があり、その際の書き下ろしとして「若おかみは小学生!」にも黒田を登場させるというのが計画としてありました。具現化に時間がかかったことで本の出版はやや後退していますが、もう数タイトルモノが溜まれば、出版も視野に入れたいと思います。
本作については、「次の日の朝まで書くか」と思いつつ、話を聞いた夜の段階で一旦クロージングとさせていただきました。遅筆なのは今に始まったことではないですが、もう少しピッチを上げて書き込んでいきたいと思います。
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