大海を征く 第一話
突如現れた深海棲艦。通常の兵器では抗うことが出来ず、人類は衰退の道を進んでいた。そんな中、人類は艦娘との邂逅に成功する。艦娘という対抗手段を手に入れた人類は深海棲艦へ反抗を始める。しかし…人間とは決して相容れぬ存在である艦娘達。この物語は、そんな艦娘と人間の橋渡しになったある男の話である。
久々に書きたくなったので書いてみましたー
今回は男性主人公のお話です。
誤字脱字等あれば指摘してくださると幸いです。
軍艦は俺の憧れだった。
無機質で無骨なその艦は、人々を守るために生まれた物だった。
歯には歯を。軍艦には軍艦を。
軍艦とは抑止力であった。
軍艦は強く、その力は絶大だった。
絶大過ぎたのだ。
軍艦という強大な力を前に人間は脆く、人類は軍艦を戦争する道具へと使い方を誤った。
世界は一瞬にして災禍に包まれ、炎が上がった。
艦は沈み造られ、また沈んでいった。
収集のつかなくなった戦争は案の定長引いた。
しかし、弱肉強食なこの世界では、より強い力を持ったものが勝ち持たざるものは負ける。戦争も同じだった。
戦争が終わり、平和がもたらされた。しかし、残ったものは「憎しみ」や「悲しみ」そして「怒り」だけだった。
その矛先は兵器へと向けられた。
本来人を守るために生まれた軍艦。
しかし、戦う相手を失った今、その力は戦争の権現であり憎しむべき物だった。
鬼神の如く活躍した軍艦でさえ、片っ端から轟沈処分を受けた。
俺の愛した艦は、冷たく深い海の底へと消えていった。
動乱の時代は終わり海には平和が訪れた。
人々は過去の日々なんて忘れ、平和を謳歌していた。海には色とりどりの船が浮かび、鮮やかだ。どの船にも意匠があり、美しかった。
長い長い平和が訪れた。
この先起こることなんて露知らず、人々は生きた。
ある日、漁船が襲われたという。
命からがら逃げ出してきた船員たちは口々にしてこう言った。
「バケモノが襲ってきた!」
最初は誰も信じなかった。しかし、それが現実だと知らされる時がきた。
バケモノが現れ次々と人を襲った。
私が住んでいた街は砲撃を受け、さながら炎の街と化した。
街を襲った砲撃は、まるで……戦艦の砲撃のようだった。戦艦なんて無いはずなのに。
バケモノは深海棲艦と呼ばれた。
彼女等は次々と支配地を広げていき、瞬く間にすべての海は深海棲艦に支配された。
平和だったあの頃とは違い、海を見ることすら叶わぬ窮屈な世界へといつの間にか変わってしまっていた。
ところで、深海棲艦という名前には理由がある。そう、彼女らは深海から蘇った軍艦だというのだ。
時々、船には精神が宿るという。いわゆるクラバウターマンというやつだ。本来特定の船に宿るものでは無いのだが、人々の強い想いを背負った軍艦はクラバウターマンを吸収し、一つの精神となる。守るべき物に殺された軍艦の強い無念や怨念は魂となり、深海棲艦へと形を変えたというのだ。
怨念そのものとも言える彼女達は人類へと砲口を向け、世界は災禍に包まれた。
しかし、神は人類を見放した訳では無かった。
戦闘用に改造されたクルーザーが海に浮かぶ女性を見つけた。彼女は、自らを艦娘と名乗った。
深海棲艦は軍艦の負の側面を持ってして生まれたが、艦娘はその逆である正の側面を持って生まれてきた。当初から存在が疑われてきただけに、すぐに人々に受け入れられた。
彼女たちの持つ武器は、唯一深海棲艦に対抗することが出来た。
殺戮の為に生まれた人間の兵器ではなく、
艦娘の持つ豆鉄砲のような小さな武器の方が深海棲艦には効果的だった。
人類は艦娘という切り札を得たことで、徐々に深海棲艦へと対抗していった。
私が軍人になったのはそんな最中だった。
???「クソっ……血が止まらねぇ…」ドクドク
???「一体どこから撃たれたんだ…」
???「救援は……まだかよ…!?」
???「おぉい!!ぅっ…だれかいないか!!」
シーン…
???「全滅かよ………クソっ!クソっ!」
???「あん…?」
カチャカチャ
???「足音…?救援か!?」
カチャッ
???「おいおい、マジかよ…」
???「深海棲艦自ら現れるとはな…」
眼の前に現れたソレは俺に砲口を突きつけていた。
???「さっきの銃撃はてめぇの仕業か…!」
???「この……クソ野郎がぁぁ!!!」
俺は咄嗟に持っていた軍刀でヤツに向かって斬り掛かった。
グサッ!!!
???「グァァァァァァ!!!!!」
俺の肩には鋭く尖った金属が突き刺さっていた。
その先を見ると、ニヤニヤと笑う深海棲艦がいた。
ヤツはグリグリと持っていた金属片を回し始めた。
???「あぁっ!!!クッ…!!ソ!!!」
???「クソっ…タレ…」
???「うぁっ…………」ドサッ
俺の意識はここで途絶えた。
一一病室一一一一一一一一一一一一一一一一一一一
ピーピーピー
???1「かなり辛そうですね…」
???2「一体いつまで寝込む気なのかしら」
???1「かなりの重症を負ってますからね…」
???2「ふーん。重症ねぇ」
???2「不知火が私が助けるのを止めなければもっと早く助けれたのに」
???1→不知火「しかし……あの状況で無理に深海棲艦を刺激すると救助者を殺しかねなかったでしょう。それに、私としては陽炎が心配でした」
???2→陽炎「ふん、心配には及ばないわよ」
不知火「まぁ、彼も助けられたことですし…最悪の事態は避けられましたね」
陽炎「全くね。墜落した輸送機の救援任務で人員も物資も救えませんでしたなんか言ったら私達の首が飛ぶわよ」
不知火「物資は灰になってしまいましたけどね」
陽炎「なによ。まさか人間が深海棲艦相手に斬り掛かるなんて思うわけ無いでしょ!」
陽炎「こいつが大人しくしてれば対応も遅れなかったってのに」
不知火「いえ、なにも責めてる訳ではないのですが…」
陽炎「言いたいことは分かるわよ。ただでさえ最近補給が滞り始めてるっていうのに、緊急の物資を積んだ輸送機が物資諸共消し炭になったんだから」
不知火「しばらくはカボチャ生活ですかね…」
陽炎「げっ…」
不知火「おや…なんて話してるうちに、寝るのは飽きてきたみたいですね」
陽炎「え?なんの話?」
???「うわぁっ!!!」ガバッ!
陽炎「きゃぁ!!!!」
???「こっ、ここは!?」ズキッ!!
???「うぅぅッ!!!」
不知火「落ち着いてください。傷が広がります」
陽炎「驚かせないでよ!」
???「ぁあ…すまない…」
不知火「思ったよりも早いお目覚めでしたね」
???「そうなのか…?というより俺は……どうしてここに…」
???「ここって病院だよな?」
陽炎「あなた覚えてないの?」
???「あっ…ぁぁ!!深海棲艦、あいつはどうなった!?」
陽炎「ボッコボコにしてやったわ。今頃はスクラップって所よ」
???「そうか…ってことは君たちが俺を助けてくれたのかい?」
不知火「えぇ、そうです」
陽炎「あんたが無茶なことしなければ、もっと早く助けれたんだけどね」ベー
???「ははは…いても経ってもいられなくてね…」
陽炎「で、そういえばあんた何者なの?」
不知火「そういえば、名前を伺っていませんでしたね」
???→大佐「俺の名前?そうだな…周りからは大佐と呼ばれていたな」
陽炎「なによそれ笑笑」
不知火「役職の名前じゃないですか」
大佐「んー、でもまぁ大佐って呼ばれる方が慣れてるしな」
陽炎「わかりました、大佐ね…」
大佐「で、君たちは…」
陽炎「陽炎型ネームシップの陽炎よ。よろしく!」
不知火「同二番艦の不知火です。御指導御鞭撻のほどよろしくです」
大佐「あぁ、よろしく」
大佐「で…話を戻すんだがここは…ラバウルか?」
陽炎「いや?ここはトラックよ」
陽炎「あぁ、そういえばあんたの乗ってた輸送機ラバウル行きだったわね」
大佐「あぁ、そうなんだ。ラバウルに着任する予定だったんだが…」
大佐「この調子だと時間がかかりそうだな」ズキズキ
不知火「ラバウル…ですか……」
陽炎「…」
大佐「ん?どうした」
陽炎「…ラバウルに着任する必要はないわよ」
大佐「どういうことだ?」
陽炎「病室の外見てごらんなさい」
提督「…」
艦娘「うぅ、痛い…」
艦娘「いやー、流石に痛いねー」
艦娘「……うぅ」
大佐「どうしてこんなに負傷者が…」
陽炎「ラバウル所属だった艦娘たちよ」
大佐「だった…?」
陽炎「…ラバウルは数日前に襲撃にあって壊滅したわ」
大佐「なんだと…?」
陽炎「前々からちょくちょく襲撃があったけど、今回は類を見ない規模だったわ」
大佐「上部からは壊滅したなんて聞いてないが…」
不知火「数週間も寝てたので状況は変わってます」
大佐「俺がか!?」
陽炎「そうよ、あんた二週間も寝てたのよ」
大佐「本当かよ…」
陽炎「ま、にしたってこっちも寝耳に水だったけどね。ラバウルが壊滅したなんてほんの数時間前に分かった事よ」
不知火「通信施設が壊滅的な被害を受けたようで、今の今まで我々も知りませんでした」
大佐「そうか…無事に着いたら着いたでヤバかったのか…」
陽炎「不幸中の幸いって所かしら?」
大佐「そうだな…」
大佐「で、ラバウルの被害は?」
不知火「幸い艦娘に殉職者はいませんが……勤務なさってた人間の方々は…」
不知火「…みんな殉職なされました」
大佐「そう…か」
陽炎「彼女達を責めないであげて」
陽炎「奇襲だったのよ」
大佐「なに…戦争とはそういうものだ。責める気なんてないさ」
大佐「それに、死なんて覚悟の内だろうよ」
不知火「…」時計を見る
不知火「陽炎、時間です」
陽炎「なに、もう時間?」
不知火「はい、急ぎましょう」
陽炎「分かった」
大佐「訓練か?」
陽炎「ううん。訓練てか哨戒ね」
大佐「そうか、頑張れ」
陽炎「じゃ、お邪魔しました」
不知火「失礼します、お大事にどうぞ」
大佐「あぁ、ありがとう」
バタバタ
大佐「…」
大佐「さっきまで騒がしかった分、一人になると心細いな」
大佐「……」
大佐「…」キョロキョロ
ここはおそらく人間専用の病室だろう。そんな場所に俺が一人だけってことは…
大佐「…みんな先に行っちまったな」
輸送機でのことを振り返る。
普段は優しいが操縦棒を持つと豹変する本打。
同郷だった武藤。
みんなみんないいやつだった。
大佐「いいやつだったよ……」
ドア「」ガラガラ
大佐「ん?」
???「お、いたいた」
???「探しましたよ、東雲大佐」
大佐「どうも、東雲です。あなたは?」
???「あぁ、すみません挨拶が遅れました」
???→夜凪「トラック基地の提督をしております、夜凪(よなぎ)っていいます」
大佐「わざわざ提督殿がなんの御用で?」
夜凪「ラバウル基地のことはご存知で?」
大佐「えぇ」
夜凪「なら話が早い。ラバウル亡き今、ラバウル基地所属の艦娘は各地に分散して管理しているのですが…」
夜凪「如何せん数が多く、私達では面倒を見れなくてですね」
夜凪「新たに基地を建てることが決まりました。提督はもちろんラバウルに着任する筈だった東雲大佐、あなたです」
大佐「いつの間に話が…」
夜凪「まぁ、2週間も昏睡してたんだ。死人に口なしではないけど、当事者がいないところで話を進めたのは申しわけないと思ってるよ」
大佐「死人に口なしって…本当に申し訳ないと思ってます??」
夜凪「ははは、すまないすまない」
夜凪「でだ、新たに建設される基地なんだが……これがなかなか厄介でな」
大佐「厄介といいますと?」
夜凪「場所自体はグアム島にできる予定なんだが……問題は艦娘が寄せ集めになるってところだ」
大佐「寄せ集め?」
夜凪「まぁ、つまり出来損ないが集まるってことだな」
大佐「出来損ない……」
夜凪「あぁ、新たに作られる基地は各鎮守府からキャパシティをオーバーした艦娘で構成される。各鎮守府も戦力を削減するのは控えたいだろうから最も戦闘力の低い艦娘を寄越すだろうな」
夜凪「厳しい道になる。どうだ?できそうか?」
大佐「……どうせ、拒否権なんてないんでしょう?」
夜凪「よくわかったね」
大佐「分かりました、やりましょう」
一一数カ月後一一一一一一一一一一一一一一一一一
大佐→提督「今日から提督か…」
提督「…緊張するな」
陽炎「なにしてんの?」
不知火「早くいきましょう」
提督「あぁ、ちょっと待ってくれ…」
提督「すーーー、はーー」
提督「あ、緊張する」
陽炎「はぁ…、先が思いやられるわ」
提督「そんな事言いつつ、なんだかんだ着いてきてくるの好きだぞ」
陽炎「キモ。バカ言わないでよ」
不知火「まぁ実際つんつんしてますけど不安だったみたいですよこの子」
陽炎「ばか!」
提督「俺が異動するって聞いて真っ先に私もついていきます宣言してくれたもんな」ニヤニヤ
陽炎「しねっ」キック
提督「あっ、待って…」ギックリ
不知火「それにしても……随分簡素な基地ですね」
提督「それ…な」ズキズキ
陽炎「抗堪性があるならなんでもいいわよ」
不知火「さぁ、提督行きますよ」
提督「分かってる…でも痛いからちょっとまってね」
陽炎「早く行くわよ」ズルズル
提督「あーれーーー」
ーー基地ー集会所ーー
提督「…」
艦娘「ザワザワ」
提督「ア~(裏声)ゔゔん」咳払い
提督「本日よりグアム基地に着任する、東雲だ」
提督「皆ここに集められて日も浅いだろうが、我々グアム基地が目的とするのはタンカー護衛や対潜支援などの裏方に回るものが多い」
艦娘「ザワザワ」
提督「裏方の仕事が主な物になってしまうだろうが、補給は軍に命であり血液だ。我々はそれを守る守護神となってこの戦いを終わらせようではないか!」
提督「以上で着任の挨拶を終わりとする」
提督「早速今日から護衛任務があるため、今週分の出撃表を制作しておいた、各自確認して任務についてくれ」
提督「質問はないな?」
提督「もし、後から質問したいという場合は執務室まで来てくれ。これにて解散!!各自仕事に移れー」
ーー執務室ーー
提督「はぁ〜疲れた」
陽炎「様になってたじゃない」
提督「まぁな」
不知火「…」資料読み中
提督「なぁ不知火。その資料を見てどう思った?」
不知火「…戦力が随分と偏っていると感じます」
陽炎「なんの資料なの?それ」
提督「この鎮守府に異動した艦娘の一覧だ」
陽炎「へぇ」
不知火「航空戦力に関しては空母一隻しかいませんよ…戦艦は意外といますけど」
提督「そうなんだよ、空母が一隻しかいないんだ。空母なしで海上護衛が務まるとは思わん」
陽炎「そうねー、飛行機には飛行機で戦わなくちゃ効率悪いわ」
陽炎「自分の身を守ることは出来ても護衛対象までかばってらんないわ」
提督「だろ??それに正規空母だと燃費も悪いし…」
提督「当面の目標は軽空母戦力の獲得なんだが…」
提督「問題はまだあってな」
不知火「なるほど…」パラパラ
不知火「メンタル面での問題ですか」
提督「あぁ、大方みんな鬱ってところだ」
陽炎「みんな鬱??嘘でしょ」
提督「いや、残念だからマジだ」
提督「そして恐らく…」
提督「訳ありである可能性が高い」
陽炎「訳あり?どういうこと?」
提督「ブラック鎮守府だよ」
陽炎「…ブラック鎮守府」
陽炎「小耳には挟んだ事があるわ」
陽炎「パワハラやセクハラだったり…果ては汚職だったり悪い噂しか聞かないわね」
提督「あぁ、まぁ噂は大方事実だろうな…」
提督「ある程度予想はしていた事だが、かなりきな臭い」
提督「公には晒されていないだろうが、ブラック鎮守府は意外と多い」
提督「皆死んだ目をしていたし、痣が目立ってた」
提督「艦娘の取扱いに関しては提督によるからな。法律や軍規が存在しない分たちが悪い」
不知火「少なくとも、今のままじゃまともな戦力にはならないでしょうね」
提督「今回出撃するのは比較的まともな部類だから大丈夫だとは思うが……」
提督「何回も同じメンバーに頼るわけにはいかんしな。メンタルヘルスケアも行っていかねばな」
陽炎「大変そー」
えぇっ!?このSSここで終わり!????
次回更新をお待ち下さい。
いやー、やっぱり執筆はつかれますねー。
感想等頂けますと作者の励みになります!!
このSSへのコメント