元陸軍提督
艦これSS。陸軍提督が鎮守府へ着任する話。
時は2015年新たなる戦いが始まろうとしていた。
深海凄艦の脅威が低下し、本土は活気を取り戻していた。主戦場となった本土を守った陸軍だったが、守りきれなかった人々も多くいた。市民の多くは陸軍を潰せ!役立たず!と罵った。
守った人々から罵倒され、大義は下水でクソまみれ。もはや戦う理由を無くした水川だったが、ある転機が訪れる。
今年の春は少し肌寒く、ツンと身を切り裂く冷気が冬をまだ身近に感じさせた。
しかし、一陽来復と言うべきか気づけば吹く風は暖かな物になっていた。
桜の小枝に咲く蕾が閉じ始め、その実は水玉を吊り下げている。
小雨が降り注ぐ中、私は傘も刺さず歩いていた。季節はもう梅雨の始まり。
紫陽花が丁度咲き始め、大粒の雨に打たれながらも健気に咲いていた。
「梅雨…か」
ただボーッと過ごしていても、季節というのは無情にも移ろいでいく。
しかし、それを身で感じるのは久々だ。
あれから早四ヶ月、気づけばもう梅雨。
私は未だにあの日の事を忘れられずに居た。
あれは冬の終わり頃だったろうか。
2013年2月12日
私達第605小隊は東北に居た。
任務は深海凄艦に上陸された沿岸部の制圧だった。陸上型の深海凄艦相手には人間の使う通常兵器でも充分に通用する。その為、我々は味方と協力しつつ、敵深海凄艦に対する攻撃を企てていた。
我々は前線に投入された。
「なぁ!いつになったら着くんだ?」
小隊長「さぁな。この様子だと今日中には着くんじゃないか?」
「本土だってのに、道がボコボコだ」
「運転しにくいったらありゃしねぇ」
同期「沿岸部の道路は軒並み全滅だろうな」
同期「もう近海にまで深海凄艦が襲来してる」
「深海の連中がよ…」
同期「いよいよ本土決戦も目前って所だな」
小隊長「海軍は何してるんだろうな」
同期「聞くとどこも戦力不足だとか」
同期「毎日のように艦が沈んでる」
「そのケツを拭いてんのが俺らって訳だ」
小隊長「そう言ってやるな。俺らが唯一活躍できる仕事だろう?」
同期「まぁ、そうだな」
「待て、何か見えないか?」
小隊長「あれは…敵機だ!」
小隊長「総員戦闘配置!!」
同期「了解!!」
「クソッたれ、このオンボロには対空機銃なんて乗ってねぇぞ!」
小隊長「いいか、全力で振り切れ!!」
「やるしかねぇのか!?」
「くそっ、着いてきやがる」
同期「小銃なら何艇かあるぞ、俺らで片をつけるか?」
小隊長「最終手段だ」
「来るぞ!!!!!!!」
「衝撃に備えろ!」
バババババババ
「うぁ!!!!!」
ゴロゴロゴロ
「クソ…」
「おい!生きてるか!」
同期「なんとかな…」
小隊長「クソ喰らえ…こっちも生きてる」
「ありゃ廃車だな…」
同期「呑気な事言ってる場合か!?目の前のビルに隠れるぞ!」
小隊長「早くしろ!」
バババババババ‼︎
小隊長「あ…」
同期「構うな!走れ!」
「嘘だろ…!!?」
小隊長「俺に構うな、、、行け!!」
「くそっ、くそっ!!」
数分後(ビル内)
同期「…」
「隊長は…」
同期「言わなくていい」
「…あぁ」
同期「今はどう生き残るかだけ考えればいい」
「はは、絶望だな」
「完全に囲まれてる」
同期「希望も無いのかよ」
「いま無線を聞いた」
「初動部隊は軒並み壊滅」
「第二波の動員まで数週間だってよ」
同期「救援は来ないってわけか」
「あぁ、そうだ」
同期「なぁ」
「なんだ?」
同期「…………小銃が二艇ある」
同期「マガジンは八つある」
同期「どうする?自分で頭にぶち込んで終わらせるか最後に無駄死にするか?」
同期「どっちか選んでみろ」
「この道に進んだ時点で覚悟はしてたさ」
「選ぶなら後者だ」
同期「ロクな死に方はしないぞ」
「自殺よりマシさ」
同期「どうだか」
「で?お前はどうするんだ」
同期「聞くなよそんな事」
同期「…」カチャ
「手向けは何がいい?」
同期「深海凄艦だ」
「いいじゃ無いか」
「やってやろうぜ」
同期「自分ながら安直で愚かだな」
「こんな時期に軍人志望した時点で安直で愚かさ」
同期「それも、そうだな」
「さぁ、行こうか」
同期「左は任せたぞ」
「あぁ」
「始めようか!!!!!!!」
激しい銃撃戦が繰り広げられた。
次に目が覚めたのは病院だった。
2015年2月18日
「…?」
「!?」ガバッ!!
「ここは!?」
看護師「!?ドクター!目が覚めました!」
医師「なんだって?」
「ここはどこなんだ!?」
医師「ここは病院です、とりあえず落ち着いてください」
「落ち着いていられるか!そうだ、東北に居た深海凄艦はどうなった!?それから同期は!?」
医師「今の本土は安全そのものです、落ち着いて」
「本土が安全だって?」
医師「えぇ、艦娘のお陰です」
「艦娘??」
医師「あぁ、まだ君は艦娘を知らないのか」
医師「君が二年間意識を失っている間に艦娘と呼ばれる存在が発見されてね。彼女達だけは深海凄艦に対して有効的に戦う事ができる」
「そんな存在が…….」
「てっ、違う!?同期はどうなったんだ!?」
医師「…彼は殉職しました」
「……そうか」
「くそっ!!!!!!!」
ズキッ!!
「うっ!?」
医師「落ち着きなさい、傷が塞がってるとは言え全身縫う程の大怪我を負ったんですよ?」
「なんだこれ……!!」
「俺の身体が………」
医師「君がここに搬送された時には一部の皮膚が壊死していてね、彼の皮膚を移植したんだ」
「あいつの…?」
医師「えぇ、2日に及ぶ大手術でしたよ」
「…」
「死に損なったばかりか、あいつの体にメスまで入れて…….」
「俺はとんだクソ野郎だ……」
医師「………」
「なんて顔してあいつに会えばいい?」
医師「…彼の墓は軍が管理する戦没者慰霊施設にある」
医師「退院したら会いに行きなさい」
「……」
「教えてくれよ…」
2015年6月16日
「よう、久々だな」
「二年と四ヶ月ぶりか?」
「久々の再会だってのに生憎の雨だ」
「軍なんて辞めたのに未だに傘が刺せない」
「職業病ってやつかな」
「そらより……ほら、お前が好きだった奴だよ」
「今日は一緒に吸おうか」
「…」カチッカチッ
「湿ってて中々つかねぇや」
「…」ボッ
「…」スゥー
ゴホッゴホッ!!
「やっぱり煙草は苦手だわ」
「肺で吸うもんじゃねぇな笑」
「…」
「なぁ」
「そっちはどんな感じだ?」
「こっちはな、寂しくて仕方がない」
「軍を辞めてから何かが抜け落ちた感じだった」
「あんなに恐ろしかった深海凄艦相手に人類は善戦してる」
「相変わらず外洋の方は危険だが近海で深海凄艦を見かける事がない」
「それもこれも全部艦娘のお陰だ」
「今じゃ陸軍の肩身が狭いってよ」
「海軍の戦果が轟くばかり。平和になってる証拠だがなんか不服だよな笑」
「俺たちってなんだったんだろうな」
「守るべき人も守れず、死んでいった」
「挙句には見下してた連中に追い越されて、俺たちの無能ぶりが証明されてしまった」
「俺らの負けだよ」
「…」
「悪い、ただの愚痴だ」
「………また来るよ」
「失礼します」
「入れ」
ガチャ
「やぁ大淀。用件は何かな?」
大淀「桂島鎮守府の事でご報告をと」
「桂島か。確か前任の提督が不祥事をやらかしていたね」
大淀「えぇ、軍資金の着服があったそうです」
「あらま。極刑は避けれないだろうね」
大淀「それは軍法会議次第でしょう…それより」
大淀「それの後任が問題でして…」
「後任?」
大淀「丁度いい役職の妖精の見える人材がいないらしくて」
「なるほど。確かに妖精が見えなければ提督は務まらないな」
大淀「で、それの人材を探してこいと元帥から命令が入りました」
「また面倒ごと押し付けられたのか」
大淀「はい」
「参ったな。妖精の見える奴なんて中々居ないぞ」
大淀「海軍の方にはいないそうで、探すなら他を当たらないといけませんね」
「じゃあもう詰んでるじゃないか!?」
大淀「実は元帥からめぼしい人をリストアップした書類を貰いまして」
大淀「こちらになります」
「ほう」
大淀「とりあえずはこの方達をあたるべきでしょう」
「全く……面倒な事を押し付けられた物だ」
大淀「頑張りましょう」
「…そうだな」
一一都内某所一一一一一一一一一一一一一一一一一
陽炎「ねぇー、これ本当に私達がする仕事なの?」
不知火「分かりません。ですが提督の頼みですから」
陽炎「あいつ本当に適当ね…」苦笑い
不知火「こう言うのは若い子がやるべきだよー、とか言ってましたね」
陽炎「はぁ、思い出しただけで腹立つわ」
不知火「でも、次の方でラストですよ」
不知火「頑張りましょう」
陽炎「まさか海軍の勧誘を私達がやるとはね」
陽炎「広報は何をしてるのかしら」
不知火「さぁ?この話が提督に来る時点で広報は仕事してませんよ」
陽炎「なんて話してたらもう着いたわね」
陽炎「押すわよ?」
不知火「どうぞ」
陽炎「…」ピンポーン
『………はい』
陽炎「こんばんは。私ら呉鎮守府所属の陽炎と申します」
不知火『同じく呉鎮守府所属の不知火です」
『海軍?』
陽炎「はい、突然の事で驚かれた事と思いますが話だけでもさせていただけないでしょうか?」
『お前達みたいなのが海軍だって?冗談にしちゃトンチが効いてるな笑』
陽炎「これを」チラッ
『ドッグタグ?』
陽炎「ほら、名前が同じですよね?」
『にわかには信じられないが……』
『…もしかして艦娘ってやつか?』
陽炎「えぇ、よくご存知で」
『なるほど』
『分かった、立ってるのもなんだし上がっててくれ』
陽炎「ありがとうございます」
ドア「」ガチャ
???「どうぞ」
陽炎「失礼します」
不知火「失礼します」
ドア「」バタン
???「まぁ楽にしてください」
陽炎「では遠慮なく」スワリ
不知火「失礼」スワリ
???「お茶でも淹れますよ」
陽炎「どうもありがとうございます」
不知火「…」
???「で、海軍の方がなんの用で?」
陽炎「実は水川陸さん、貴方に折行って頼みがあります」
???→水川「折行って頼み…ね」
水川「随分唐突ですね」
陽炎「えぇ、急な話で申し訳ないです」
陽炎「ただ、我々は…」
陽炎「貴方に海軍の提督になっていただきたい」
水川「……は?」
陽炎「海軍の提督に必要な条件はご存じですか?」
水川「いや、知りませんけど…」
陽炎「それは妖精が見える事です」
水川「確かに妖精は見える」
陽炎「実は妖精の見える人は極少数の限られた人だけなんです」
陽炎「そんな人々も戦禍で何人も亡くなってしまいました」
陽炎「もう今頼れる人は貴方しかいないんです」
水川「ただ唐突にそんなこと言われても、俺にも生活があって」
陽炎「衣食住付きで年収は今よりも遥かに高いです。やらない選択肢は無いのでは?」
水川「しかし…」
水川「俺には荷が重い」
陽炎「大丈夫です。我々がしっかりとサポート致します」
水川「だかな…」
陽炎「まぁ、実の所を言うと、貴方に拒否権はありません」
陽炎「否が応でも来てもらいます」
水川「え?」
陽炎「で、どうしますか?」
陽炎「断った場合、丁重におもてなししますが」ニコニコ
水川「…」
水川「軍なんて懲り懲りだ」
水川「俺は誰かの為に戦えない」
陽炎「はい?」ニコニコ
水川「…あぁもう!分かった分かった。分かりましたよ!」
陽炎「賢明な判断です」
水川「たく、とんだ災難だ…」
陽炎「心中お察しします」
水川「余計なお世話だ!」
水川「たく…」
水川「で?いつから働くんです?雇用契約書とか色々あるでしょう?」
水川「まさか今からとか言わないですよね?」
陽炎「今からです」ニコニコ
水川「はぁー!!??」
水川「たく…とんだ災難だ」
陽炎「同情するわよ」
不知火「私もです」
水川「で?どうするんだ」
陽炎「着任先の鎮守府は決まっています。桂島です」
水川「どこだよ…」
不知火「山口県。瀬戸内海です」
水川「嘘だろ?ここ東京だぞ」
陽炎「嘘じゃ無いわよ。さ行こうか?」
水川「で何で行くんだ?ヘリか?」
不知火「まさか。車ですよ」
水川「車だぁ?何時間かかるんだよ…」
陽炎「さ乗って。運転できる?」
水川「俺が運転するのかよ!?」
不知火「私達こんな見た目な物ですから職質が多くてですね」
陽炎「あんたが運転する方が都合がいいのよ」
水川「分かったよ…」
陽炎「出発しんこー!」
不知火「…おー」
水川「…はぁ」
一一数時間後一一
水川「こっからは船か?」
陽炎「こっちで手配してあります」
不知火「海軍の輸送艇です。ある程度の戦闘はこなせますよ」
水川「へぇ。いいじゃないか」
水川「陸軍軍人が海で死んだら笑い物だからな。船なんて頑丈な程いい」
陽炎「あー。そう言えば元陸軍所属なんだっけ?」
不知火「データベースにはそう記載されてましたね」
水川「まぁな。昔の話だ」
陽炎「おっと…来たわね」
水川「一体いつになったら着くことやら」
不知火「もうすぐですよ」
一一1時間後一一
水川「やっと着いたな」
陽炎「さ行くわよ。もうみんな待ってるから」
水川「みんな?」
艦娘「敬礼!!」ビシッ!
水川「ん」敬礼
陽炎「さ。自己紹介とやる気表明どうぞ」
水川「楽にしてくれ」
艦娘「はっ!」
水川「今日からここに着任する水川陸だ」
水川「ここには半ば強制的に連れてこられたが…まぁこれも運命として受け入れよう」
水川「それなりの仕事はしてやるさ」
水川「そうだな…唐突だが俺は戦争する気がない」
艦娘「?」ザワザワ
水川「ましては誰かの為に死ぬなんてな」
水川「いいか?お前らは国の為なら、どこまでを差し出す事ができる」
水川「命までもか?」
艦娘「はい!この身を捧げる覚悟です!」
水川「その気概は尊敬に値する。だがな、俺は国の為に捧げるものなんてない」
陽炎「ちょっと…あんた何言ってんのよ…」小声
水川「俺は若かった。訳もわからず国の為にこの身を捧げた!」
水川「いいか!それで得たものは嘲笑とこの古傷だけだ」
水川「抱いた理想は打ち破れ、守った者から罵倒される。この気持ちが分かるか!?」
水川「分からないだろうな」
水川「お前らも…いつかは辿る道だ」
水川「以上。スピーチ終わり」
不知火「あちゃー…」
一一執務室一一
水川「へぇここが執務室か」
陽炎「えぇ」
水川「上等だな」
陽炎「えぇっと。とりあえず着任おめでとう。今日から貴方は提督よ」
水川→提督「どうも。あまり嬉しくないがな」
不知火「それと…さっきのスピーチで艦娘から抗議がありまして……」
不知火「…はぁ。嵐の予感です」
ドア「」ドンドンドン!!
提督「入れ」
長門「失礼する。第一艦隊旗艦、長門だ」
提督「おぉ。よろしく」
長門「うむ。これからよろしくな」
長門「ではない!」
提督「うん?」
長門「なんだ!あのスピーチは!?」
提督「俺のお気持ち表明だ」
長門「軍人を前にしてあのスピーチだと!?我々の誇りを侮辱するようなものじゃ無いか!?」
長門「というより馬鹿にしかしてないだろ!!」
提督「俺もお前らと同じ軍人だったさ」
提督「お前も軍人なら知ってるだろ?勝てば官軍負ければ賊軍」
提督「今のは賊軍の言葉さ」
提督「俺なりの君達への警鐘のつもりだ」
長門「うーん…」
提督「要は勝てって事だよ。君達を奮起させる言葉だと説いてくれ」
長門「…あまり納得はいかないが…」
長門「まぁそう言う事にしておく」
長門「他の者は私から説得しておこう」
提督「あぁ。助かるよ」
長門「では失礼する」
ドア「」ガチャン
提督「ふー。一件落着」
陽炎「じゃ無いわよ。あんた何考えてんのよホント…」
提督「悪いな。思った事が口に出るタイプなんだ」
不知火「私達思ったより面倒くさいのを提督にしたみたいですね」
提督「お不知火。傷つくからやめろ?」
不知火「間違ってないでしょ」
陽炎「ほんとよ全く」
提督「ぐっ…」
不知火「大体、軍人の前で何ですか?あのスピーチは?」
不知火「喧嘩なら他所で売ってください」
提督「悪かったって…」
不知火「別にもういいですけどね」
陽炎「まぁいいわ。まだやる事が沢山あるからそっちを片付けましょ」
提督「そうしようか。そうしようるい」
提督「て、それは植物やないかーい」
風の音
陽炎「は?」
不知火「はぁ………」クソデカ溜め息
提督「…で?次は何だ」
陽炎「あー。なんかイライラしてきた」
不知火「同感です」
不知火「一発ブン殴りましょう。気が済むと思います」
陽炎「賛成」
提督「分かった。ごめん。マジで」
提督「場を暖めたかった。それだけ」
陽炎「次やったら瀬戸内海に沈ませるから」
不知火「それで済むといいですね」
提督「ひえっ」
陽炎「で。次に決める事なんだけど…」
不知火「秘書艦決めですね」
提督「誰でもいいよ」
陽炎「リクエストある?可愛い子とか…静かなタイプとか場を和ませてくれるタイプとか」
提督「お前ら二人でいいか?」
提督「見ず知らずよりは、まだ知ってるやつの方がいいだろう」
提督「まぁ。まだ出会って1日も経ってないけど」
不知火「…いいでしょう」
陽炎「ま。いいわよやってあげる」
提督「…」
陽炎「どうしたの?急に黙って」
提督「実はさ…」
提督「本音を言うとオッパイが大きい子がいいんだよね。お前らオッパイ小さi……あっ!!!!!!
提督「いってぇぇ!!!!」
提督「ちょ…」
提督「まじで…」
提督「ごめんなさい!!」胸倉掴まれつつ
不知火「ババ引きましたね。最悪ですよコイツ」
陽炎「ホントね。オラ!!!!!」
提督「ガハッ!?」
提督「ギブ…もうギブ」
不知火「オラっ!!!」
提督「グハァッ!?」
提督「……」
陽炎「ちょっと、ぬいぬい…気失ってるじゃない!」
不知火「やべ…」
陽炎「起きなさーい!」ビンタ
陽炎「起きろって」往復ビンタ
陽炎「起きろ!!」強めのビンタ
提督「はっ!?」
提督「一体なにg…
不知火「ふんっ!!」
提督「ガバァッ!!」吐血
提督「…」失神
陽炎「おいおい!何しちゃってんのよ!?ぬいぬい!」
不知火「すみません。私胸の事馬鹿にされると許せないんです」
陽炎「ちょっとこれメディック必要かも…」
一一医療室一一
明石「一体何があったんですか…」
陽炎「聞いてるわよ。ぬいぬい」
不知火「陽炎もやってたじゃないですか!」
陽炎「べっつにー。私一発しか殴ってないもん」
不知火「う…」
明石「まぁ…何があったかは聞かないでおきます」
明石「大方想像つくので。今朝のスピーチの件ですよね?」
陽炎「まぁそんな所よ」
明石「お。そろそろ目覚めますよ」
提督「…!!」
提督「ここは…」
陽炎「医務室よ」
提督「…」冷や汗
陽炎「…あんたどうしたの?冷や汗凄いわよ?」
提督「いや…なんでもない」
明石「顔色悪いですね。どうされました?」
提督「何でもないんだ。本当に」
提督「えぇっと…君は初めましてだな」
明石「明石です。泊地での修理ならお任せさい」
提督「あぁ…分かった。以後よろしく」
不知火「提督。先程は申し訳ありません」
提督「いや、いい。気にするな」
陽炎「あんたどうしたのよホント。顔色悪いって」
提督「病院は苦手でな。サッサと戻るぞ」
一一執務室一一
提督「たく。酷い目にあった」
陽炎「あんたのせいでしょ」
提督「面目ない」
不知火「で。秘書艦も決まった事ですし…」
不知火「次は施設案内ですか?」
陽炎「その前に…」
提督「お腹すいたな」
不知火「確かにもう昼ですね。昼食の時間です」
陽炎「そうね。施設案内ついでにご飯食べましょう」
提督「おっけー。案内頼めるか?」
不知火「えぇ。もちろんです」
陽炎「じゃあ。まずは食堂からかしら」
一一食堂一一
提督「おぉ。沢山いるな」
陽炎「まぁお昼時だからね」
不知火「さ、提督。並んでください」
提督「うーむ。色々あるな」
間宮「あら。提督さんですか?」
提督「うん?君は?」
間宮「間宮と申します。今は食堂で皆さんのお腹を支えています!以後お見知りおきを!」
提督「よろしく。間宮」
間宮「それで…提督さんは何にするか決まりましたか?」
提督「カツ丼A定食で」
間宮「分かりました!」
陽炎「間宮さーん!私日替わり定食で!」
不知火「私も同じのでお願いします」
間宮「承りましたー!!」
ーー数分後ーー
提督「いただきます」
陽炎「いただきまーす!」
不知火「いただきます」
提督「うん。美味いなカツ丼」
陽炎「よく昼間っから揚げ物食べれるわね?」
提督「食える時に食っておけ。揚げ物なんて豊かでもないと食えん」
不知火「確かに。戦争初期は私達も南瓜とさつまいもぐらいしか食べれませんでしたね」
陽炎「あー。懐かしいわ」
陽炎「あの時は涼月の南瓜定食にお世話になったわ」
不知火「美味しいですよね。涼月のご飯は」
提督「へぇ。そうなのか」
陽炎「えぇ。絶品よ!」
提督「まだ会ってない子だが…はやく全員の顔と名前を覚えなくてはな」
不知火「えぇ。早く覚えてあげてください。名を覚えられていないのは悲しい物ですから」
提督「そうだな…その通りだ」
提督「で。お前らは何頼んだんだ?」
陽炎「日替わり定食よ。今日は鯖の塩焼きみたいね」
不知火「やはり日本人の舌には魚ですね」
提督「へぇいいね」
提督「あ。そうだ!お前ら鯖は何で食う派だ?」
陽炎「私は塩焼きでもポン酢ね」
不知火「私は塩だけで十分です」
提督「そうか。普通だな」
陽炎「で?アンタは何で食べるのよ」
提督「俺はな…」
提督「何だと思う?」
陽炎「めんどくせぇー」
不知火「中濃ソース」
提督「舌死ぬわ」
不知火「なんだ違うのね…」
提督「本気で言ってる?」
陽炎「勿体ぶってないで早く」
提督「分かった分かった」
提督「俺はな…青紫蘇ドレッシング派だ」
陽炎「意外な組み合わせね」
不知火「珍しいタイプですね」
陽炎「合うのかしら?ちょっと邪道すぎる気がするわ」
提督「いやよく聞け。味が濃いからポン酢より美味いんだ」
提督「大根おろしと一緒に食べたら頬が落ちるぞ!」
陽炎「えぇー。なんかやだな」
提督「これが美味いの何の」
不知火「まぁ確かに…塩味だけだと飽きますよね」
提督「だろ?たまには違う味で食ってみると新鮮でいいぞ」
陽炎「えっ、じゃあさ」
陽炎「〆鯖は何で食べるのよ?」
提督「…普通に醤油とカラシとわさびだが」
不知火「王道ですね」
陽炎「ふつー…そこは玉ねぎドレッシングとか奇をてらった発言しなさいよ」
提督「パワハラだろこれもう」
不知火「ふふ」
陽炎「…て。あら?赤城さんと加賀さん。どうも、お疲れ様です」
不知火「訓練帰りですか?お疲れ様です!」
赤城「えぇ。丁度終わった所で…どうも提督さん、一航戦赤城です」
加賀「一航戦加賀です。凱旋一触よ」
提督「よろしく。赤城加賀」
赤城「お隣よろしいですか?」
提督「あぁ。隣がいなくて寂しかったんだ」
赤城「ふふ。では失礼します」
加賀「失礼するわ」
提督「どうぞどうぞ」
赤城「陽炎と不知火は日替わり定食ですか?美味しそうですね!」
陽炎「はい!お二人は…いつものヤツですね!」
加賀「えぇ。訓練終わりにはコレです」
提督「…すごいな、、、これ食べ切れるのか?」
赤城「楽勝です」
加賀「凱旋一触よ」
提督「ふむ。艦種によって食べる量が違うのか」
不知火「えぇ、そうです。艦型が大きければ大きいほど、より補給を必要とします」
提督「なるほど。沢山食べて沢山働いてくれ」
赤城「もちろんそのつもりです!」
加賀「それにしても…提督。今朝のスピーチには驚いたわ」
赤城「えぇ。中々面白い人が提督に着いたと話題になったものです」
提督「はは…まぁ負け戦を経験したからかな。軍隊にはあまりいい思い出がなくてね」
提督「少し、心の声が出てしまった」
陽炎「少し?」
提督「…少し」
陽炎「へぇ?」
提督「悪かったよ。全部出てた」
陽炎「それでよし」
赤城「まぁ提督。色々思うところはあると思いますが…」
赤城「今や貴方は我々の提督。そして上官です」
赤城「我々を失望させないでくださいね?」
提督「あぁ。そこは安心しろ」
提督「深海凄艦を駆逐し切って…平和な海を見せてやる」
加賀「期待してるわ」
提督「おう」
赤城「それにしても…提督は陸軍所属だったとか」
提督「うん?あぁそうだよ。所属は第605小隊だ」
加賀「あの内地で戦ったというの?」
提督「あぁ。地獄だったさ」
赤城「今でも夢に見ます。あの惨状を」
加賀「思い出したくないわ」
提督「そうだな…」
赤城「艦娘化手術を受ける前でしたね…あの時は抵抗の手段もないただの一少女でした」
提督「へぇ?艦娘ってのは手術でなるのか?」
陽炎「んー。一般には手術って呼ばれるけど発掘って行った方が正しいわね」
提督「発掘?」
不知火「深海凄艦と戦闘を行った海域には、艤装がドロップするんです」
提督「艤装ね…資料で読んだ。それが無いと力を発揮できないんだろ?」
加賀「えぇ。艤装無しだと人並み程度の力しか出ないわ」
赤城「艤装無しでも耐久性は変わりません。あくまで力が出ないだけぐらいですね」
提督「なるほど」
不知火「で、その艤装と適合する人物を探すんです」
不知火「艤装は所有者を選びますから」
提督「ふむ。選ばれ者しか艤装を装着出来ないのか」
陽炎「そうね。で、適合した人だけが艦娘になれるのよ」
提督「なるほどな。そんな裏が」
不知火「艤装は建造でも手に入りますが、艦娘適正のある人は建造できない…」
提督「うむ。人材のロストは控えないとな」
陽炎「そうしてくれると助かるわ」
一一廊下一一
提督「あぁ食ったな」
提督「腹が…」
提督「なんか疲れてる」
陽炎「胃もたれじゃない?」
提督「かもな…俺ももう若いとは言えないかもしれない」
不知火「提督って幾つなんです?」
提督「22」
陽炎「いや若いじゃん。何が若いとは言えないよ」
不知火「22で従軍経験アリですか。かなり若い時に入軍したんですね」
提督「19の時に入隊した。一年訓練して、残りの二年は戦場で戦った」
陽炎「よく生きてたわね」
提督「運が良かっただけだ」
不知火「相当な運の持ち主ですね」
陽炎「そうね。二年戦場に出て生きてるなんてかなりの物よ」
提督「ま。それはお前らにも言えた事だろ」
陽炎「…あら?」
提督「うん?どうした?」
陽炎「…」
陽炎「そのドックタグは友達のかしら?」
提督「あぁ。これか」
提督「そうだな。同期の奴だ」
陽炎「そう…」
提督「ま、戦争にはつきものだろ」
陽炎「そうね。私達も慣れてる」
提督「さて。話が逸れたが…」
提督「次はどこだ?」
陽炎「工廠ね」
一一工廠一一
陽炎「明石ー!今いるー?」
明石「はい?いますよー」
陽炎「あぁ良かった。提督に鎮守府案内してる所なのよ」
明石「あぁ。それでここまで」
不知火「夕張は居ないのですか?」
明石「夕張なら哨戒任務中だったかしらね」
陽炎「戦闘に加えて工廠の手伝い…この鎮守府でもトップクラスに忙しい人よね。バリさん」
不知火「この間立ちながら寝てましたよ夕張」
陽炎「え。面白いんだけど」ケラケラ
不知火「笑い事じゃありませんよ…」
明石「彼女の負担も減らせると良いんですけどねぇ…」
提督「人手が足りないのか」
明石「えぇ。万年人手不足です…」
明石「300隻近くの艦娘の修理と建造・改修を担当してるんです。かなり厳しいですね」
提督「なるほどな。人材を割けるよう調整しよう」
明石「助かります」
提督「で、装備とかはここで開発してるのか?」
明石「そうですね。開発・建造はここで行われています」
明石「注意して欲しいのが、上位装備は基本改修更新からの入手になります。開発できるのは基本装備までですね」
提督「分かった。艦隊運営の主軸になりそうだな、工廠関連の仕事は」
明石「そうですね。装備の開発・改修なら私にお任せください」
提督「頼りにしている」
ーー駆逐艦寮ーー
陽炎「着いたわね。ここが駆逐艦寮よ」
提督「別棟なんだな」
陽炎「そうね。他の艦娘寮は鎮守府と物理的に繋がってるけど、駆逐艦は数が多いから別棟で生活してるわ」
不知火「執務室から遠いので大変ですね」
提督「連絡橋を建設できるか聞いてみるか」
不知火「頼みます」
陽炎「て…あら。長波」
陽炎「元気してた?」
長波「元気してたって…この間会ったばっかだろうが」
長波「まぁ元気だよ?」
提督「長波か。よろしく」
長波「おう!提督。よろしくな」
不知火「任務帰りですか?少し疲れて見えます」
長波「あぁ。哨戒任務でなぁ…敵艦隊に出会して大変だったぜ」
陽炎「にしては無傷ね」
長波「敵に遅れを取るような夕雲型じゃないぜ?」
不知火「やりますね。駆逐艦最強の座もそろそろ譲る事になるかもしれません」
長波「冗談よせよ。お前演習で負け無しじゃんか」
陽炎「私ですら、たまにしか勝てないわよ」
不知火「鎮守府古参組ですから。まだまだ新入りには譲りません」
長波「ま。いつか抜いてやるけどな!覚悟してろよー」
長波「夕立なんて今回の演習大会はかなり気合い入れてるみたいだぜ?」
不知火「この間は死闘でしたね…そろそろ負ける日が来るかも」
提督「へぇ。不知火が一番強いのか?」
陽炎「そうよ。駆逐艦一の練度」
陽炎「まぁ基本負けなしね」
提督「頼もしい限りだな」
不知火「ふふ。嬉しいです」
長波「さて。私は間宮で甘味でも食べてくるからお暇するぜー」
陽炎「はーい。気をつけてね」
長波「おう!」
提督「で。ウチには何人の駆逐艦がいるんだ?」
陽炎「うーん。正確な人数は把握してないけど110隻ぐらいだった気がするわ」
提督「えぇ!そんな居るのか」
提督「名前覚えられるかなぁ」
不知火「暮らしてる内に自然と覚えてますよ」
陽炎「ね。意外と簡単よ」
提督「うーむ。そういうものか」
夕立「おっ、陽炎と不知火っぽい!」
陽炎「夕立。今日も元気そうね」
夕立「元気っぽい〜」
不知火「あら、夕立。今日は白露も一緒なのね」
夕立「うん!」
白露「不知火。お隣は…提督さん?」
不知火「えぇ。そうです」
提督「君は…」
白露「えーと。提督さん初めまして!白露型の一番艦!白露です。よろしくね!」
提督「白露か。よろしくな」
白露「こちらこそ!」
提督「で君は夕立か。よろしくな」
夕立「よろしくっぽい〜」
陽炎「にしても次から次へと来るわね」
白露「そうかな?今は遠征とか哨戒で結構な人数で払ってると思うけど」
夕立「そうっぽい。今残ってるのは主力組ぐらいっぽい」
陽炎「あぁそうか。お昼終わりで一番忙しい時間帯ね今」
不知火「そういえば、白露夕立は戦闘帰りですか?」
夕立「うん!今朝長波達と艦隊組んで帰ってきた所っぽい。疲れたっぽい」
白露「疲れたわねぇ」
提督「へぇ。結構出撃してるんだな」
白露「うん。なんせ深海凄艦は神出鬼没だからね」
陽炎「油断の隙も無いのよ。今日制海権握った海域が明日には失ってるんだから」
提督「…よく知っている」
どうもAC提督です。久々の新作ですね笑。
本当は別のプラットフォームで小説を書いていたり、他のジャンルのSSを書いていたのですが久々に艦これのSSが書きたくなり戻ってきました!楽しんでいただけたら幸いです。まだまだ更新続きます!
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