『天龍赤面』
「いくら面倒見が良いからって遠征任務旗艦ばかりやらされてもなぁ、たまには出撃して暴れてーんだよ。ったく」
遠征か休みの毎日、不満が溜まってた所で、急な呼び出しがあった。
第一艦隊以外は出払っている今、天龍様に出撃命令か?
「提督、呼び出しって出撃命令か?!…って誰もいねぇじゃねぇかよ~」
急な呼び出しに出撃命令かと期待し急いで提督室まで来たが、誰も居なかった。
いつもなら大抵呼び出しの理由は遠征旗艦を務めてくれないかという打診だが、今は第一艦隊以外出払っている。
久々に出撃命令でも来るかと思い急いで駆け付けたが、まさか誰もいないとは…。
「ったく、呼びつけておいて本人不在とか一体どうしろってんだ」
期待していた分、肩すかしを食らった状況に、思わず独り言が漏れ出してしまう。
「あーしゃあねぇ。少しばかり待つとするかぁ」
そういってソファに座り込むとテーブルに本が置いてある事に気付いた。
「あん、提督のか?ってか提督ってこんな本読んでたか?」
テーブルの上にはどうみても文庫本としか見えない片手サイズで薄めの本が一冊
鎮守府に着任してから提督が本を読んでいる姿など見たことはなかったので、もし提督の所有物ならどんな内容なのか気になる。
思わず本を手に取り題名を探した所で表紙や背から消されている事に気付いた。
「ご丁寧に塗りつぶしてまでいるのか、何か題名だけでも見られるとヤバいブツなのか…」
一瞬焦るが、逆にこれはチャンスではないかと思い直す。
もしかしたら提督の弱みを握る事が出来るかもしれない。
そうしたらもっと出撃回数を増やせるかもしれない。
…いや、かもじゃない、オレの好きに出撃が出来るようになるはずだ。
「よっしゃぁっ!読むぞ!」
そう言って最初のページをめくった。
いつも朝早くから僕の仕事はある。
寒い日何かは特に大変で、温まるまで機嫌が悪かったりする。
そのため僕は朝早くからいつも相手をする。
ソコに入るといつも口を開けて待っている。
まず最初に前日の汚れをとり、水を飲ませてやる。
それから回りを確認して大丈夫かどうかを確認する。
機嫌を損ねられては困るのですぐ室内にあるボイラーに火を入れる。
そして僕は開けている所に向かって、自ら掬い上げたモノを口に放り込む。
ズッ シュ ズッ シュ
「…」
顔が赤くなる。まさか官能小説と言われるモノなのか…と焦る。
思わず回りを見渡し誰も居ない事を再確認する。
弱みを握れると思っていたから正直当てが外れた、が、ちょっとだけ興味がある。
誰も居ないんだし、薄いし、最後まで読んでみてもいいかなーと心がぐらつく。
読んでる間に誰か来たらとも思ったが提督室は入室の際ノックと一声かける事が義務付けられている。
…大丈夫だ、いける。
何度も繰り返していると口の中も熱くなってきたせいか僕も汗が出てくる。
相手も同じようで真っ赤になってる。
直接見えるわけじゃないけど熱くなって湯気が吹き上がっているようだ。
もしかしたら煮え滾ってシュ~シュ~となっているのだろう。
熱くなってきたせいか、自分から動き出そうとする。
僕は備え付けられている取っ手を握る。そしてボーーっとなる。
ドンドン熱くなって動こうとするが僕の仕事はここまでだ。
口に放り込むのを止め、人を待つ。
この後どうするかはその人の命令次第だ。
「おはようございます」
「おはよう、調子はどうだね」
「いつも通り好調です」
「なら定刻通り出発出来るな。覚える事は一杯あるからな、しっかり覚えなさい」
「はい!」
僕は機関助士、いつかは一人前の機関士となって蒸気機関車を運転するのが夢だ。
「くそったれ!」
そう言うと手に持った文庫本をテーブルに叩き付ける。
顔を真っ赤にしつつもこんな所誰にも見られなくてよかったと胸をなでおろす。
コンッ
音がして振り返るとそこには
ニヤニヤ顔した提督と不安げに看板を両手で掲げた電とカメラを構えた青葉がいた。
「な、な、ん、あ…」
言葉にならない。
「おう天龍、読んだ感想をもらえるか」
「ども、恐縮です、青葉ですぅ! 一言お願いします!」
「はわわ…」
「…ブチコロス」
「やべぇ天龍が切れた、逃げるぞ、青葉!ってか何で電だけ除外?!」
「ちょおっと深入りしすぎたようですかぁ?」
提督室を飛び出していった奴らを追いかけるべく、走りながら抜刀する。
鎮守府内の艤装展開禁止?知ったこっちゃねぇ!まずはあいつらを片付ける方が先だ。
そして、提督&青葉 対 天龍の壮絶な追いかけっこが始まった…
騙されてくれた人はいるでしょうか。もしそういう方がいたらこの話は成功です、ありがとうございます。
一応全年齢対象だと思ってますが、R-15レーティングにならないよなと心配もしてたりします、まぁ大丈夫だろうと思います…
あと蒸気機関の動かし方等はテキトーです、悪しからず。
そして最後に一言
楽しんでくれましたら何よりです。
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