2015-07-09 22:30:06 更新

朝、学校にて。


みき「せーんせっ、おはようございます!」


昴「おはよう、みき。今日なんかいつもより可愛くない?」


みき「そんな先生///恥ずかしいですよみんなの前で///」


昴「あはは、ごめんごめん」


みき「あのぅ、先生・・・。」


昴「ん?」


みき「その・・・いつもの・・・。」


昴「ああ、ナデナデして欲しいんだね、みきは」


みき「はい・・・///」


昴「よぅし」ナデナデ


みき「えへへ、先生に撫でられると、なんだが気分がほわっとするね」


昴「そう?ありがとう」


みき「じゃ、先生!またあとでねっ!」


昴「ああ」


昴「・・・・・・・・。」


昴(なんでこんなことしてるんだろう・・・。)


昴(私は先生じゃないのに・・・。)


昴(始まりは、あの時だった)


         *


みき「先生が・・・先生が死んじゃったよう」


昴「優しい人だったのにね・・・。」


みき「なんで・・・なんでこんな・・・」


昴「仕方ない、イロウスとの戦いの最中のことだ。名誉の戦死だよ。先生は人類のために散ったんだ」


みき「そんな・・・そんなんじゃ納得出来ないよぉ・・・突然先生がいなくなっちゃうなんて・・・!」


昴「・・・・・・。」


みき「私一体・・・どうしたら・・・」


昴「大丈夫、アタシが側にいる」


昴「アタシがみきの先生になってあげるから」


みき「・・・へ?」


昴「特別に、アタシがみきの先生になる!」


みき「昴ちゃん・・・。」


昴「ほら、泣き止んで。先生が何でもしてあげるから」


昴「うーん・・・って言っても、先生って何すればいいんだろ・・・?」


みき「じゃあナデナデして」


昴「え?」


みき「ほら、先生よく生前私にナデナデしてくれたじゃない。」


昴「あっ・・・う、うん、そうだね」


みき「だから、して?」


昴「よ、よぅし」ナデナデ


みき「えへへ、先生の手、優しい手だね」


昴「みきの髪こそキレイだよ」


みき「ふふ、先生はホントにみきのことが好きなんだねぇ」


みき「これからもずっと、みきだけをナデナデして下さいね?」


昴「・・・・・・・・・。」


         *


昴(その先生ごっこが今日までずっと続いている)


昴(最初は、ちょっとの間だけのつもりだったんだけど)


昴(いつまでこんなことするつもりなんだろう、アタシ・・・。)


昴(こんなこと続けるのはみきのためにも良くないってことくらい分かってるのに)


昴(でも、みきの笑ってる顔を見てると・・・)


昴(私に向かって笑っているんじゃないと分かっていても)


昴(どうしてもやめられないんだ)


昴(どうしよう・・・。)


昴(そうだ、こういう時は頼れる先輩に相談しよう)


         *


くるみ「私に相談?」


昴「はい、実はみきのことで・・・。」


くるみ「星月さんね・・・確かに最近ちょっとおかしいわよね」


昴「え、先輩何かあったんですか?」


くるみ「ここ最近ね、彼女が『今日先生にナデナデしてもらっちゃった~』とか『今日先生に髪形褒められた~』とか言うから、へー今の無愛想な担任が珍しいと思ってよくよく話を聞いてみると、その『先生』っていうのが、どうも前の担任のことを指してるみたいなのよ。ほら、数ヶ月前に亡くなった」


昴「ほ、ほう~」


くるみ「記憶が混同してるのかしら。きっとあのショックから立ち直れてないのね・・・優しい先生だったもの」


くるみ「それで?相談というのは?」


昴「あ、あの、実は、私が先生を演じてて・・・。」


くるみ「え?今なんて?」


昴「あ、いや、あの、私もみきに同じような話をされて、ちょっと心配だなーって思って、その・・・。」


くるみ「そうよね、やっぱり昴ちゃんも心配よね・・・今度カウンセリングの先生に相談してみるわ」


昴「そ、それがいいですね、ありがとうございました」


         *


昴(やっぱり、こんなの続けてちゃいけない)


昴(やめないと。みきにちゃんと現実を受け入れてもらわないと)


屋上にて。みきが一人でベンチに座っているのを見つける


昴(お、今なら二人きりだ)


昴「お、おーい、みき」


みき「あ、先生、なんですか?」


昴「えっ、いやっ、その・・・。」


昴「大事な話があるんだ、隣に座ってもいいかな?」


みき「ええ勿論、どうぞ!」


昴「じゃあ・・・」ヨイショット


みき「それで先生、大事な話って何ですか?」


昴「あのさ・・・。」


みき「ん?」


昴「アタシは先生じゃないよ。みきの同級生、若葉昴だよ」


みき「えっ・・・。」


昴「みき」


みき「あっ、先生、喉が乾いてますよね。今何か飲み物を・・・。」


昴「みき」


みき「先生はコーヒー飲まれますk・・・」


昴「みき!」


みき「・・・・・・・・・。」


昴「もうやめよう、こんなこと。何の得にもならない。もう先生はいないんだ、死んだんだ。」


みき「・・・・・・・・」

 

みき「なんで・・・」


昴「目を覚ましてよ、みき!」


みき「・・・なんでそんなこと言うの?なんで許されないの?私はただ、先生にずっと会いたいだけなのに!」


みき「生前のように、私のことをナデナデしてくれる先生に・・・。」


昴「みき、それも違うよ。先生がよくナデナデしていたのは・・・」


昴「みきじゃなくて、アタシじゃないか」


みき「!」


みき「・・・・・・・・・・」


みき「・・・・・・・・・・」


昴「・・・みき?」


みき「チガウチガウチガウ」


みき「先生はずっと私だけを見てくれている、愛してくれている。これまでも、これからも。」


みき「昴ちゃんなんかが先生のお気に入りなわけないじゃん・・・あのナデナデは・・・私だけの、特別の・・・」


昴「みき!」


みき「だからそんな嘘つかないでよ!」


みき「昴ちゃんなんて消えちゃえ!」


みき「円舞斬!」キイイイイイイイン


         *


みき「ふう、もう夜ですね」


みき「星が見えてきましたよ・・・先生」


昴「そうだね」


みき「先生と二人で・・・夜空を・・・見てみたかったんだ・・・。」


昴「見てるじゃないか、今」


みき「そうだね・・・私は・・・幸せ者・・・。」


みき「なんだか眠くなってきちゃった・・・幸せ過ぎたのかな・・・。」


みきの胴体は潰れていた。昴が咄嗟に放ったハンマー攻撃によるものだった。


昴「安心してお眠りよ。先生が側についてるからさ」ナデナデ


昴(ホントは、親友一人守れない私が死ぬべきだったのに・・・。)


昴(馬鹿だな、アタシ)


みき「えへへ、先生の手、優しい。嬉しいよ・・・。」


みき「だから泣かないで・・・先生・・・。」


昴「・・・・・・・・・・。」


みき「私・・・空で本物の先生に会えるんだから」


昴「!」


みき「さようなら、先生・・・さよ・・・うなら・・・すば・・・る・・・ちゃん・・・。」


昴「みき!」


みき「・・・・・・・・・。」


昴「みき・・・そんな・・・」


          *


翌日


昴「みき!おはよう!」


くるみ「え?あ、おはよう」


昴「みき!今日もアホ毛が可愛いね!」


くるみ「あの・・・私は星月さんじゃ・・・。」


昴「じゃあまたあとでねっ!」スタスタ


くるみ(若葉さん・・・星月さんが亡くなった悲しみを受け止めきれずにいるのね・・・。)


くるみ(仕方ないわね、私がちょっとの間、星月さんごっこの相手をしてあげるわよ)


くるみ(ちょっとの間だけ・・・。)



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