救いの光
前作、曙の海の続きの作品
優しい光で照らすための道
今回はシリアスがちょっと多いかも?
ー執務室ー
提督「あれから随分経ったんだよな・・・」
曙「一応聞いてあげるけど、一体何から随分経ったってのよ。この仕事山積みなのから現実逃避しようとすんな、このクソ提督!」
提督「ちゃんと仕事はするよ・・・けど、曙にも関係のある人のことを思い出してたんだよ」
曙「あたしにも関係のある?」
提督「そう、曙と初めて会った時に話すって言ってたけどなかなかできなかったからな。今話すよ」
曙「・・・唐突ね」
提督「話しをしたあとで、行きたいところもあるからな」
曙「大事な話みたいだし、気になるから聞いたげるわ」
提督「ありがとな、それじゃあ最初から話すとしようか」
曙「最初から?」
提督「その人のことについて語る上で必要な事なんだ」
曙「わかった、早く話しなさい。クソ提督」
提督「・・・俺はな、元々は孤児だったんだよ。それで協会に預けられた
そこのシスターやみんなは優しかった・・・けど貧しいところだったんだよ
そんなある日、軍人がやってきてな。俺の養父になるって言ったんだ
シスターは断ろうとしてたんだけどな、俺はみんなのためにもその人に付いていくことにしたんだ
それで引き取られた先で曙。君と出会ったんだよ
まぁ、そんな縁もあって。俺は養父さんと二人で暮らし始めたわけさ
え?なんで曙も一緒じゃなかったかだって?
君は確か学校の寮で暮らしていて休みの日にしか帰ってこなかったからじゃないか
・・・話を続けると、その人のおかげで今の俺があるようなもんだからな。
曙も知ってると思うが、養父さんはいつも優しくて笑顔だったな。厳しく叱るのではなく自分で失敗を認めて成長できるように手伝ってくれる人だった
・・・けど、あの出来事があった」
曙「本当に、思い出すだけでも忌々しいわね・・・」
提督「そうだな、俺もあのことだけは忘れられない・・・
話を戻すか・・・養父さんが本当の父親のように思えるようになれてきた俺は、父さんのように軍人になることを決めた
そして、憧れの父さんに近づけた、そう思っていた・・・
そしてあの上層部の連中が曙を連れて行こうとした。正直意味がわからなかったよ、父さんは連れて行かれるのを見ているだけだったから・・・
初めてあの人に失望した。今ならわかる、しなかったんじゃなく、できなかったんだと・・・
俺は曙をなんとか逃がした後、憲兵に捕まり裁判にかけられた・・・そして判決が下ったんだ・・・
それが、俺ではなく父さんが曙の手で消されること。父さんは艦娘を駒のように酷使する考え方に反対していた、邪魔だったんだろうな。
そして俺も軟禁される羽目になった、けど父さんの部下の人に助けられたんだ。そして、すべてを聞いた。
最初は驚いたよ、そしてとても申し訳ない気分になった。あんなに優しい人を裏切ったのも同然なんだから・・・
父さんの部下が助けてくれたのは偶然ではなく万が一の時のために策を練っていたらしい
“もし、息子が捕まるようなことがあればそれをなかったことにできるように手を打っておく”そう言っていたらしい
だから、こうして今いるわけだけどな・・・けど、代わりに父さんが亡くなった。曙が悪いんじゃないんだよ。それを言うと俺が原因だからな・・・
そうして、釈放された俺は、直ぐに刑が執行される前に父さんと曙に会いに行こうとした。けど、上層部の圧力のせいで会いに行けなかった
悔しかったよ、助けたいのに、誰も助けることができない。あまりにも無力な自分が・・・
そして、最後に父さんに会って話をしたんだ・・・父さんは全てを聞いた上で穏やかな顔をしていたよ。
俺は、全てを伝えたあとで謝ったんだ。
そしたら父さんは
“気にしなくてもいいんだ、人を疑ってしまうことは誰にだってある。だから、君はそれを許してあげれる人になりなさい”
そして、“私のせいで曙に辛い思いをさせてしまう。だから、君は曙の傍に居てあげて欲しい。私の、最後のお願いだ。”
私が死んだら墓参りはしてくれよって笑って言ってたよ。」
曙「・・・じゃあ、復讐とかはしなかったの」
提督「・・・本当のこと言うと。大切な女の子を泣かせて。俺に生きるってことを教えてくれた人を奪った奴らは憎かったよ」
曙「なら・・・」
提督「けどな、そんなことをしたって、父さんは帰ってきてくれない。それに父さんと約束したんだよ。
父さんが死んでも、復讐はしないって」
曙「なんで?」
提督「そんなことしたら、曙を貶めた奴らと同じになるし、こうして曙をギュッと抱きしめられなくなるだろ・・・」[ギュッ]
曙「・・・ありがと」
提督「俺も、ありがとな。曙のおかげでこうしていられるから・・・」
曙「そうね」
提督「なぁ曙」
曙「なに、あなた」
提督「墓参りに行かないか」
曙「そうね、行きましょう。結婚したこと報告まだしてないんでしょ?」
提督「まぁな、曙に本当のことを話してからにしたかったんだ」
曙「そう」
提督「それじゃ、行こうか」
曙「ええ」
ー養父さんのお墓ー
提督「曙、ここだよ」
曙「随分近くにあるのね・・・ちょっと意外だったわ」
提督「公に墓を立てられないからな・・・海の見える場所にしたんだ」
曙「そっか・・・」
提督「それじゃあ、お参りするか」
曙「ええ」
提督(父さん、そっちの方では元気にしていますか。俺は元気にしています、あれから俺は曙に会うために提督になり結婚しました。
曙のことが好きだから、彼女にまた笑顔でいて欲しいから。これからも、向こうから見守っていてください)
曙(お久しぶりです。今まで色々なことでお世話になってきました。私も、お義父さんのおかげで今こうしてこの人の隣にいることができます
確かに、辛いこともたくさんありました。でも、お義父さんとこの人のおかげで私は今もこうして幸せでいられます。
そして、この人と、結婚しました。大切な人だから、大好きだから、ずっと一緒にいたい。そう思って彼のプロポーズを受けました
これからも、空の向こうから私たちの幸せを祈ってもらえると嬉しいです。
お義父さん、あなたの魂が安らかでありますよう、私も祈っています・・・)
提督「そろそろ、行こうか」
曙「ええ、でもまたきましょ?」
提督「そうだな、こまめに来ようか」
曙「あなた」
提督「どした?」
曙「その、久しぶりに二人だけだし・・・あの・・・」
提督「わかった」
曙「へっ?んむっ」[チュッ]
提督「それじゃ、帰ろ」
曙「も、もう意地悪ね・・・」
提督「意地悪じゃないさ」
曙「どこがよ」
提督「本当は、俺だって照れるんだから・・・」
曙「そうなのね、ふふっ」
提督「なんだよ」
曙「やっぱり可愛いところもあるんだなって思っただけよ」
提督「は、早く帰ろう」
曙「はいはい、お仕事も残ってますものね」
提督「うっ、忘れてた」
曙「ちゃんと全部終わるまで、手伝ってあげるから、ね。頑張りましょ?」
提督「わかった、ありがとね」
曙「どーいたしまして」
ーモノローグー
あの二人はこれから、新しい光の道に向かって歩んでゆくのだろう。私は、こうして遠くからしか見ていることしかできないが。幸せに歩んで行けることをいつも祈っているよ。私もこうして救われたのだからね・・・
ー艦ー
ここまで読んでいただきありがとうございました。前作の曙の海では書けなかった部分を書かせていただきました。
リクエスト等がございましたらコメントしていただけると嬉しいです!
また次の作品でお会いできることを楽しみにしております
それでは~
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