2019-03-13 21:46:33 更新

概要

20XX年・・・とある海洋国家(日本)に危機が差し迫る状況で、上層部はある1人の男に希望を託した・・・


前書き

どうも!艦これSS新作品でございます!MinaMizukiです!


ある日突然、「ゴルゴ13と艦これ・・・いけるんじゃね?」と何かのインスピレーションが働いたので鉄は熱い内に叩くのが一番!
なので、いても立ってもいられず、書いちゃいました!!

なお、今作品は、架空の艦娘や架空の兵器、艦これでは出てきていない現代兵器が多いに出てくる事があります!
そちらの承知の上で御観覧ください!


それではどうぞ!!




null 依頼




?「……そろそろ約束の時間だな」



?「奴はホントに現れるんでしょうか?約束の時間まであと1分もありませんが……それに高原のど真ん中に建っている廃屋を指定する事も無かったのでは?……」




?「現れるさ、彼はそういう人間だ。それにここなら何処から敵が襲ってきても360度直ぐわかる、ここは高原、敵が隠れるところはないからな」



?「しかし……」



ゴルゴ「……約束の時間だ」



?「おぉ!ゴルゴ13」



?「な!い、いつの間に背後に、車の音はしなかったのに……」



ゴルゴ「あんたらが話に夢中で気がつかなかっただけだ……海軍No2.No3……」



大将「む……流石に私たちの事は知っているみたいですな」



ゴルゴ「……一般人でも調べれば分かることだだ……用件を聞こう」



中将「は、はい、その方は私から」スッ



ゴルゴ「ゆっくりだ」中将「え?」「胸ポケットからはゆっくり出せ」「は、はい……」



中将「て、手短に申し上げますと、この写真に写っている相手を抹殺してほしいのです」



ゴルゴ「……」フーッ



大将「ふむ……抹殺と言うよりは、轟沈……ですな」



ゴルゴ「……轟沈?」



大将「信じられないかもしれないがね、その写真に写っている者は、形こそは人のなりはしているが、人間ではないのだ」



ゴルゴ「……どう言うことだ?」



中将「あなたは、『艦娘』という存在はご存知でしょうか?」



ゴルゴ「……」フーッ



中将「信じられないかもしれませんが、わが海軍には、世間には公表されていない存在、『艦娘』という者がいます、『艦娘』というのは、昔存在していた艦の魂を少女に埋め込み第一線で戦うエリート員です、少女となれど船の魂を埋め込んだその力は底知れず、プロの格闘家が素手で戦ってもまず勝ち目はありません」



中将「この者等は、我が国に迫る海からの危機を排除することを目的に存在します、そして、その危機と言うものが」



ゴルゴ「……深海凄艦だな?」



中将「ご存じでしたか……そうです、その深海凄艦というのが我が国に差し迫る危機です、そしてその深海凄艦というものは化け物のような姿はしていますが上位種になると人の形を持つようになります、そして艦娘と同じように少女……と言うよりは女性の方が近いかもしれません、艦の魂を持っています」



ゴルゴ「こいつもか?」



中将「はい、フードを被ってるようでバッグを担いでるようなその姿からはとても深海凄艦と結びつけることは難しいと思いますが……」



ゴルゴ「……」フー



中将「そいつは「戦艦レ級」、化け物の形をした深海凄艦よりよっぽど化け物です、今回、そいつを抹殺もとい、轟沈させてほしいのです」



ゴルゴ「……ひとつ聞くが、何故お前らでやらない?」



中将「そいつは、我が国の主要シーレーンを支配しています、そこはシンガポールとマレーシアに挟まれた狭い海峡、そいつがそのシーレーンポイントにいる限り我が国に原油や物資が入ってきません、それではガソリンも重油もアスファルトも作れなくなる、軍も活動にろくに出来なくなる。そして今しがた申し上げましたように、そいつは正真正銘の化け物です、こちらの攻撃が全くといって良いほど効かないのです」



大将「……私たちは、そいつを倒すために何でもやった、無数の機雷を敷いたり、魚雷を何百本も撃った、砲撃も我が国の資材が尽き果てる寸前まで撃った……しかし、奴にはまったく効かないのだ……」



中将「そこで我々は……いえ、我が国は最後の望みを貴方に託したいのです」



大将「頼むゴルゴ13!この依頼、どうか引き受けてくれまいか!?」



ゴルゴ「……今、砲撃も効かないと言ったが、何故ミサイルを使わない?現代の戦闘艦において砲撃を使う機会など滅多にないはずだが?」



大将「確かに時代は進んでいる、一般の人間からしたら砲弾なぞ歴史の遺物だ……だがさっきもいったように、そいつは『戦艦レ級』……戦艦なのだ、現代の艦はミサイルが飛んできたら落とすことを前提に作られている、だから装甲なぞほとんど無いに等しい、ミサイルに当たってしまえば1発で轟沈してしまう、しかし戦艦はどうでしょうか?戦艦の装甲というのは、その艦の持つ主砲にも耐えられるように作られる、ゆえに自然と重装甲となる、ミサイルは表面だけを破壊する、そんなもので戦艦の装甲はびくともしない、だから相手の装甲さえも突き破ってしまう砲弾が適しているだ・・・」



中将「……以上です、ゴルゴ13、どうかこの依頼引き受けてくれませんか?」



ゴルゴ「分かった、引き受けよう……」



大将「おぉ!本当か!」



ゴルゴ「あと、俺が言うものを直ぐに揃えろ、そしてスイス銀行にも振込が確認でき次第、行動に移る……」



大将「わ、分かった!」



中将「よ、よろしくお願いします!」



ガチャ



中将「……彼は……彼は本当にやってくれるでしょうか」



大将「やるさ……彼はそういう人間だ」



eins 導入



大将「・・・それでは、くれぐれもお気をつけて・・・」



ゴルゴ「・・・」



ガチャ  バタン・・・



中将「・・・ついにこれから始まりますね、我が軍の快進撃が」



大将「あぁ・・・彼ならやってくれる、必ずな」



中将「しかし・・・驚きましたよ・・・依頼の翌日に「俺を臨時の提督にしろ」、なんて言ってくるとは」



大将「うむ・・・まぁ、確かにそれの方が彼にとっては動きやすいでもあるのだろう・・・それに、彼が指揮してくれる艦隊ほど心強い艦隊はないからな」



中将「えぇ・・・しかしあの艦隊は・・・」



大将「・・・」




・・

・・・

~回想~



ゴルゴ「・・・」



大将「これはゴルゴ13どうなされましたか、よもや昨日の今日でそちらから会いに来てくれるとは」



ゴルゴ「頼みがある・・・俺をシーレーン奪還のための最前線で動いている艦隊に配置して欲しい」



大将「提督にしろ・・・ということですか・・・理由を聞いてもよろしいですかな?」



ゴルゴ「・・・」



大将「あ、いや・・・気分が害されたなら申し訳ありません、可能な事は可能なのですが、しかしこちらとしてもあなたを最前線で急な人事異動となると、こちらとしてもそれなりに上の方に理由付けをしなくてはいけませんのであくまで、形式的な物としてです」



ゴルゴ「・・・俺1人では倒せない・・・どうしても仲間がいる・・・そう判断しただけだ」



・・・

・・


~回想終了~



大将(・・・彼なら・・・彼ならきっとやってくれるに違いない!)



zwei 着任



大淀「初めまして、人事異動で新しく配属されることになった東郷提督ですね?」



東郷(ゴルゴ)「あぁ、そうだ」



大淀「私は貴方の秘書を勤めます、大淀と申します、以後よろしくお願いします」



東郷「……」



大淀「……あ、あの?」



東郷「……すまないが、俺は利き腕を誰かに預けられるほど自信家ではない」



大淀「そ、そうでしたか、とても厳格な方なのですね、これは大変失礼致しました」



東郷「……」



大淀「あ、あの、それでは提督を執務室の方へとご案内いたします」



東郷「あぁ……」



提督が着任しました!



drei 戦況



大淀「……という訳で、本日付でこの泊地に着任することになりました、東郷提督です」



東郷「……よろしく頼む」



艦娘一同「はい!」



大淀「それでは各自、指示があるまで待機を、解散」



天龍「っけ、今度はマシなんだろうな」



大淀「天龍さん」



天龍「っは」



ガヤガヤ バタン



東郷「……彼女等は全員艦娘、という存在なのか?」



大淀「はい、私も含めてこの泊地に所属している女性等はすべて艦娘です」



東郷「わかった……とりあえず、現在の戦況、この泊地の状況、戦力全て教えてくれ」



大淀「はい、現在この泊地の目的は我が国におけるシーレーンの奪還、及びその後の維持です、戦力は戦艦1、軽空母1、軽巡洋艦5、駆逐艦4、潜水艦1、特殊工作艦1、現在泊地の士気は著しく低下しており、指揮系統も乱雑なものとなっています」



東郷「どういうことだ?……それに前線を任されている基地にしては戦力が少なすぎる」



大淀「前任の提督の影響です、初めこそはちゃんとしたものの、戦況が悪くなるにつれて指揮もサボるようになり、戦いで轟沈していく艦娘が増えていきました、今じゃ1/10程度しかありません……提督が着任するまでは、私が代わりに指揮していました」



東郷「……」



大淀「おそらくここにいる艦娘の皆さんは前任には愛想を尽きていたのだと思います」



東郷「お前たちの心情は俺には関係ない……俺は俺の仕事をするだけだ」



大淀「あ、こ、これは、また大変失礼をしました!」



東郷「とりあえずは分かった……」



大淀「大本営にも新しく戦力を要請したのですが、その余裕はないと……」



東郷「……その必要はない」



大淀「え?……」



東郷「必要はない、と言ったんだ……この戦力でいく」



大淀「し、しかし、それでは絶対にシーレーンを奪還なんて不可能です、自殺を敢行するようなものです」



東郷「必要はない……と言っている」



大淀「う……わ、分かりました」



東郷「……俺はシーレーンを奪還するためにここへ来た……お前が心配する必要はない」



大淀「しかし・・・シーレーンポイントにはとある深海棲艦がいます、深海棲艦にこの泊地の戦力をほとんど持ってかれているんです」



東郷「戦艦レ級・・・だな」



大淀「!知っているなら何故!」



東郷「……お前が心配する必要はない・・・」



大淀「・・・」



【シーレーンとは、通商上、政治上、戦略上重要な価値を有し有事の際、国家が確保して置くべき海上航路のことである。


日本も四辺を海に囲まれた島国であり、海岸線の長さは北方四島を含めると4842海里、つまり8967.496kmに及び世界第7位、排他的経済水域の面積は3861.1万km²に及ぶ。オイルショックなどの影響から産油国との外交関係、そしてシーレーンの安定化が不可欠と感じた日本は1982年(昭和57年)頃から外洋に伸びるシーレーン1000海里防衛構想を策定するなど、日本のシーレーン防衛のあり方が課題とされるようになった。


また今日において、国内経済もほぼ海上交易に依存し、日本の輸入依存度を見てみれば輸入量は石油2億トンをはじめ、7億5000万トンにも達しており、特にエネルギーは2001年(平成13年)時点の資源エネルギー庁調査において国内の輸入依存度の高さは石油が99.8%、石炭98.4%、天然ガス(LNG)96.6%、原子力(ウラン)に至っては100%を依存している。輸出はハイテク工業品だけで2000万トン、第1次産品を含めれば7000万トンにも及ぶ。こうしたことからも、日本も海洋国家のひとつとして、自国のシーレーン防衛の重要性が認識されてきた。日本人の食卓に並ぶ豆腐も蕎麦も「シーレーンの賜物」といわれ、いかに日本が輸入依存度が高いかを象徴している。海上自衛隊の戦術思想の原点はシーレーン防衛であり、対潜水艦戦、対機雷戦に重点をおいた訓練を行っている。】(一部wikiより抜粋)


strommitte 確認


在籍艦娘

【戦艦】

・長門(改)


【軽空母】

・隼鷹(改)


【軽巡】

・天龍(改)

・夕張(改)

・大淀(改)

・川内(改二)


【駆逐艦】

・吹雪(改)

・舞風(改)

・不知火(改)

・弥生


【潜水艦】

・伊号8


【特殊工作艦】

・明石


【練習巡洋艦】

・香取


vier 出撃



コンコン



隼鷹「失礼するぜ、何か御用で?あんたが着任してから1ヶ月間、何も指示がないから演習しかできなくて暇だったんだよ」



東郷「・・・頼みがある、出撃してほしい」



隼鷹「はいよ」



大淀「・・・あ、あの・・・隼鷹さん1人しか来ていませんが」



東郷「・・・1人しか呼んでいないからな」



大淀「・・・?えと、それは・・・」



加賀「・・・単艦出撃かよ、へーへー、それじゃ私1人で出撃してきまさぁ」



大淀「・・!そんな無茶です!隼鷹さんは最近改造したばかりですし、まだ装備も整っていません!」



隼鷹「いいんだよ、私もさっさと轟沈して先に逝ってしまった仲間の所に行きたいしな」



大淀「隼鷹もそんなこと……!」


東郷「悪いがその願いは聞き入れらない・・・場所はシーレーンポイントではない・・・」



隼鷹「・・・は?・・・じゃあどこの出撃なのさ」



東郷「・・・パプアだ」



【現在この国家のシーレーンポイントの途中には、シンガポールとインドネシアに挟まれた狭い海峡がある、戦艦レ級などはそこを支配し国家のシーレーンを断ち切っている状態である、しかしゴルゴは隼鷹を海峡に向かわせず、そこから東へ700キロ程離れたインドネシア、パプアへ出撃を命じた】


fuenf :隼鷹



隼鷹「・・・なんだってこんなところに私1人だけ・・・ここらへん1帯は奴らの縄張りだぞ・・・」



隼鷹「これならさっさとあいつの所へ差し出して轟沈させてくれよ・・・・・・ほうら、マルク海域だ・・・どこか陰になる場所はと・・・」



~回想~



隼鷹「パプ・・・ア?」



東郷「・・・インドネシアの最も東にあるマルク海域近海のパプアだ・・・」



隼鷹「・・・なんだってそんなところに・・・」



東郷「お前にはそこら辺を掌握しているパプアの敵拠点を奇襲してもらう」



大淀「いや・・・それはいくらなんでも無茶なのでは・・・普通空母には護衛をつけて出撃させるものです、海峡出撃では無いとはいえ、もし敵に見つかりでもしたらただでは・・・」



隼鷹「いいっていいって、どうせ最後の仕事さ、ま、死に場所を選べないのが辛いけどね。それじゃ、早速いってきますよ」



東郷「待て・・・艦載機は爆撃機主体にするんだ、それとこれを渡しておく・・・」



隼鷹「あ?・・・なんだこの封書」



東郷「向こうについてから開けろ・・・作戦内容が細かく書いてある」



隼鷹「なんだか知らないけど・・・まぁいいさ。それじゃ行ってきますよ」



~回想終了~



隼鷹「ここらはマルクの北海域か・・・そろそろ敵の拠点が見えるはずけど・・・あぁ・・・あれ・・・か・・・?・・・な!」



隼鷹「なんだあの壁!・・・ゆうに50メートルの高さはあるじゃないか・・・壁は・・・港湾を守ってる形のようだね・・・なるほど、あそこの狭い所から船が出入りしているのか・・・」



隼鷹「・・・はは、あれじゃ要塞じゃないか・・・上空からしか爆撃できないようになってるみたいだね・・・その代わり、壁の上にはいくつもの対空機銃らしきものが・・・わたし達が前線を下げられてから半年ほど経つかな・・・どうやら敵さん達の建設能力は馬鹿にならないみたいだね・・・あれじゃわたし達が総力上げても落とせやしないよ・・・」



隼鷹「・・・・・・死に場所か・・・・・・出来るならば、飛鷹。あんたと同じ場所が良かったけどね・・・」



隼鷹「・・・・・・・・・おっと!哨戒船か・・・」



チ級「・・・・・・・・・」



チ級「・・・・・・・・・」



隼鷹(・・・早くどっか行きなよ・・・・・・)



チ級「・・・・・・・・・」



隼鷹「・・・・・・・・・」



チ級「・・・・・・・・・」



チ級「・・・」



隼鷹「・・・ふー、危ないところだったぁ・・・」



隼鷹「ッカー・・・よくよく考えたらなんだってこんなところに私一人で・・・誰か1人くらい護衛つけてくれても・・・クドクドウダウダ・・・」



隼鷹「・・・あぁ、そういえばあの提督から封書貰ってるんだった・・・えーっと・・・何々・・・」



隼鷹「・・・ふんふん・・・」



隼鷹「は!?・・・・・・・・・あ・・・はは・・・とんでもないね・・・あの提督は・・・何考えてるのか・・・」



隼鷹「はぁ・・・やるっきゃないかぁ・・・どうせこんな前線にいる身じゃあ遅かれ早かれ殺られるだろうし・・・・・・だから装備を艦載機を爆撃機だけにしろって言ったのか・・・」



隼鷹「・・・・・・待ってな飛鷹・・・今すぐ私もそっちに逝くから・・・ふぅ・・・やるか・・・・・・・やるか!・・・」















隼鷹「商船改装空母!!隼鷹、出撃!!」



sechs 1度限り



―執務室―



大淀「・・・そう言えば提督・・・あの封書には何を書かれたのですか・・・?」



東郷「・・・」



大淀「あ・・・いえ、気分を害してしまったのなら申し訳ございません・・・ただ私も提督の下に動く身として、作戦内容は知っておくべきかと思いまして・・・」



東郷「・・・1回限りだ・・・」



大淀「え?」



東郷「あの封書には1回限りの作戦が書いてある・・・もし、それを失敗すれば・・・」



大淀「すれば・・・?」



東郷「・・・隼鷹はやられるだろうな・・・」



大淀「・・・」



東郷「・・・俺は出来る限りのことをやっているだけだ・・・あと運が左右する・・・」



大淀「・・・提督は・・・提督はわたし達艦娘のことをどうお思いでしょうか?・・・やはり前任と同じように使い捨てに過ぎないのでしょうか?」



東郷「・・・」



大淀「前任もそう言っていました、俺は俺の出来るだけのことをやるだけだと・・・ただ提督と違うのは・・・『もし負けてしまえば、それはお前らが未熟だからだ』と・・・」



東郷「・・・」



大淀「やはり・・・提督も・・・そうお思いですか?」



東郷「言ったはずだ・・・俺にお前らの心情は関係ない・・・あと運が左右する・・・とな・・・」



大淀「・・・」



東郷「・・・頼みがある・・・館内放送で艦娘を召集して欲しい・・・」



大淀「・・・分かりました」



Sieben:Air Strike



隼鷹「まず第一艦戦隊、発艦!」



隼鷹(どうせ遅かれ早かれ果てる身さ……それなら最後にすっぱり散らしてやるよ!)



隼鷹「敵の気をそらせ!できる限り!頼んだよ!烈風の皆!」



隼鷹(ほんの少し!ほん少しだけでいい、哨戒隊の奴等を気を引かせてくれるだけで良い!哨戒の奴等を出切るだけで遠くへ連れてって行ってくれ……)



ー鎮守府 執務室ー



天龍「何だよ、来てやったぜ」



東郷「……出撃だ」



天龍「大淀、次はどこで仲間を見殺しにすればいい」



大淀「……」



天龍「言っとくけど、俺は命令されれば動く、命令されれば撤退もする。それがどんな状況でもな、だからどんな命令でもしてくれていいぜ」



夕張「ちょ、ちょっと天龍さん……」



東郷「……編成は軽巡4隻全てに、駆逐艦不知火の5隻だ」



大淀「わ、私もですか?」



東郷「そうだ……それと川内……装備は全てに夜戦仕様にしておけ」



川内「悪いけど私は装備は1つもないよ……あんたは着任したばかりだから分からないと思うけど、私の装備は全部で妹が持っていっていなくなっちゃったから無くなったよ」



東郷「その心配はない、既に手配してある、他のものは余計な物は載せるな、全員にお土産がある……」



天龍「それは分かったとして、そんで、場所は?」



東郷「……」



acht 対敵



隼鷹「よし!烈風の皆が機銃の気を引いてくれている……後は哨戒が集まってくる前に……行くよ!艦爆隊!全機発艦!」



隼鷹「高さを30メートルで……いや、半分15メートルで目的地に飛行!」



隼鷹(気づくな……気づくな!!これは1度限りだ…1度で……1度で成功させる!)



隼鷹(頼む……気付いてくれるな……)



隼鷹「敵の港湾まで残り12000メートル……烈風の皆……あぁ…また1機やられた……頼む、彗星の皆がたどり着くまで持ってくれ……」



隼鷹「残り10000…9500………9000……8500………マズっ!敵の巡洋艦が陰から出てきやがった!しかもツ級2隻かよ!」



ツ級1「……!!…………!!!」



ツ級2「…!!!………!」



隼鷹「不味い不味い不味い!54機の彗星が落とされる!」



隼鷹「……仕方ない…………作戦変更!主目標、敵軽巡洋艦、ツ級2隻!艦爆の力でそっちを蹴散らしてからだ!」



【ツ級・艦これに最も対空能力の高いタイプである。艦これにおいて、ツ級1隻で正規空母2隻分の艦爆、艦攻を削ぎ落とす力を持ち、各鎮守府の提督を苦しめた。史実ではアトランタ級防空巡洋艦がモデルとされており、当時の日本を大いに苦しめた巡洋艦とされている】



neun KAMIKAZE


※今回からナレーション入ります

~回想~



2週間前



東郷「…大淀、インドネシア全域の地図はあるか?」



大淀「え、は、はい、棚のこちらに……これです」



大淀は資料棚の一角から地図帳らしき物を取り出し、東郷に手渡した



東郷「……」



大淀「……あの、提督?」



東郷「……今インドネシアの勢力はどうなってる、ここも敵勢力下だろう」



大淀「はい、半年ほど前までは私たちの支配下にありましたが、レ級の現れたこともあり、インドネシア近海の部隊を海峡へ回し、薄手になったところ敵に奇襲され、敵の手に落ちました」



東郷「……お前らが使っていた基地はどこにある」



大淀「えっと……ここ、パプアです。今はもう既に敵の補給基地になってるかもしれません」



~回想終了~



東郷「………フー……」



ーマルク近海ー



隼鷹「よっし!1隻撃沈!!………でもこっちも艦爆隊、半分以上は落とされちゃったしなぁ……残り21機……行けるか……?」



隼鷹は苦戦していた、何とか1隻は倒したものの、42はいた艦爆隊が半分まで軽巡洋艦2隻に苦しめられているのである



ツ級「………!!………!!!!!」



敵の対空の勢いは止まらず、このままでは全ての艦載機はなぶり殺しである。しかし、そこへ



隼鷹「ちぃっ!敵さんもしつこいねぇ!!…残り15………え?なんて!……………は?………いやいや待てえーっと、何番?26番!」



妖精搭乗員からの無線だった



彗星26「」



妖精からの無線は、隼鷹が絶対に厳として禁止していた事である



隼鷹「おいおいおいダメだって、そんなの許すわけ無いでしょ」



このままでは拉致があかず、単艦で乗り込んだ苦労も水の泡となってしまう、そうなってしまわぬよう1つの決意だった



彗星26「」



隼鷹「大丈夫だって、そんなことするな、な?そんな事する必要はない、それぐらいなら戻ってこい!」








特攻である








彗星26「」



500k爆弾を胴体に取り付けた爆弾が、敵艦船に向けて直上から落ちていく



隼鷹「おい!……おい!!」



そこへマイナスGがかかろうとも、機体がバラバラになってしまおうとも関係なかった、この機が隼鷹に無線をかけたときから既に準備段階には入っていた、敵軽巡洋艦が気づいたのは特攻に気づいたときには距離がわずか100メートルも切っていた。敵ツ級も即時に迎撃にかかる



ツ級「!!!!!」






彗星26「!!!」



時既に遅し



ツ級「!!!」



爆発



隼鷹「…」



隼鷹「……」



隼鷹「…敵、ツ級撃沈…艦爆、残り10機…総員、港湾を目指して」



敵1隻に21機、もう1隻に11機・・・しかし、片方は、1機の決意の覚悟によるものである



隼鷹「…あーっ…きついなぁ…特攻は…ダメだよなぁ…あの馬鹿…ん?……あぁ分かった…総員残り4000メートル、高度15メートルを維持」



敵を撃滅できたとはいえ、流石に望んでもいない特攻を行われた事は、隼鷹にとって精神的にきつかった



隼鷹「あたしは大丈夫、みんなは自分達のことだけ集中し…て…」



隼鷹「…んぁ?あ、あぁこっちは大丈夫、3500メートル、もう少しだよ」



隼鷹「……3000……2500……2000……もうそろそろだね……あぁ!烈風のみんな!」



できれば起きて欲しくない事が起きてしまった……陽動役の烈風が全て、港湾を守る対空機銃に打ち落とされたのである



隼鷹「……いや、大丈夫……気づくな気づくな」



しかし幸いな事に、こちらの艦爆隊にはまだ気づいていなかった。ツ級とのあれだけの戦闘を起こしても、烈風を落すことに躍起になっていたのだ



隼鷹「彗星の皆、高度15を維持!200メートルだよ。、200メートル時点で爆弾を投下!」



彗星12「!?」



彗星49「」



それは妖精、搭乗員たちにとっては異常な命令だった高さ、15メートルから放たれた爆弾では、敵の拠点を爆撃する事など出来ず、壁しか破壊する事が出来ないからだ、いやそもそも壁を破壊する事も出来るかさえ怪しい



隼鷹「低過ぎるって?大丈夫大丈夫、それが狙いだから……1000メートル!」



よもや気が狂ったか……搭乗員の皆はそう思えた。しかし



彗星`s「」



妖精は全員腹をくくっていた。むしろ前線を押し下げられて尚、敵にここまで反撃できた事が誇らしい。もはや隼鷹の命令に誰1人として異議を唱えるものはいなかった



隼鷹「そろそろいくよ!投下よーい!……って!まず!気づかれた!」



最悪な事が起きた

敵がこちらに気づいた、敵がすぐさま迎撃に取り掛かる



彗星12「!」



彗星03「!!」



しかし



隼鷹「500!全機、投下準備!」



彗星03「!!」



彗星12「!!」



彗星52「!!」



敵の弾は放たれてこなかった、ここに来て高度15メートルと言う低さが幸を成し、敵対空機銃はマイナスの仰角が足りないのだ。(実際の史実ではマイナスの仰角、もとい俯角はどこの国も-15度位までは取れたみたいだけど、まぁそこは都合のいい解釈ということで)



そして、その代わりに



隼鷹「いい!250!……200!爆弾投下!左右へ散開!」



10発の爆弾が放たれた



zehn:活路





【反跳爆撃】という爆撃方法がある。



【反跳爆撃】とは、爆撃機を水面、もしくは海面ギリギリまで低空飛行をし爆弾を投下、その後爆弾は水切りの要領で水面を跳ね、目標を爆撃する方法である。【反跳爆撃】は、ミサイルや誘導性能が発展した現代に置いてあまり活用される事のない爆撃方法だが、当時は敵にギリギリまで近づくため艦攻同様被弾率は高いものの、通常の爆撃や艦攻より命中率は高い。そして時限式爆弾でダムを決壊させるなどの、史実でも実際に記録が残っている爆撃方法である



そしてここにも反跳爆撃により突破口を見開いた艦娘がいた






隼鷹「……はー……はー……や、やったね……す……彗星の皆は……?」



彗星`s「}



隼鷹「……そう……1機は旋回が間に合わなくて壁に突っ込んだんだ……もう1機はこっちも特攻……8機残ったんだね……」



隼鷹「……しかし、これどうすっかなー……穴を開けただけじゃなー……」



結果としては、隼鷹は爆撃は成功だった、何十隻ものの艦船はなだれ込むには十分な大きさの幅が開き、穴の空いた箇所から亀裂が入ったところで崩れさり、壁は左右に分断され、中の港湾は丸見えである。しかし主目標敵拠点制圧をするまでに至らず、壁を破壊するのみに留まった。やはり数が足りなかった



隼鷹「……どうしようか……壁を開く事は出来たけど、敵さんの建築能力を考えたら撤退して次に拠点制圧するになっても、その頃までには元通りだろうしなぁ……」



隼鷹「……まぁ考える間でもないよね…………彗星の皆、戻ってきて……第二次爆撃始めるよ」



隼鷹は死ぬつもりだった、例え8機しかいないとしても最後の最後までできる事をすると。制圧まで出来なくても、せめて爆撃だけはしてやろうと、一矢報いてやろうと。



隼鷹「さて、みんな戻ってきたね。さぁさぁ、みんな大丈夫かい?奴らに……1泡吹かせてやるさ!!」



しかしそのときだった



???「残念だけど、それは今のあんたには無理だぜ」



隼鷹「え?……」



???「ここから先はわたし達の出番ですね」



後方からの声に反応し後ろを振り返ると、そこには天龍を旗艦とする水雷戦隊が来ていた



隼鷹「な、あんた達!なんでこんなとこにいるのさ!」



天龍「何でって、作戦指令だから仕方ないだろ」



隼鷹「作戦指令!?私はそんなもの聞いてないよ!」



不知火「えぇ、わたし達も隼鷹さんが出撃してから受けた作戦ですので仕方ありません」



大淀「私も……隼鷹さんがパプアへ出撃するってことは事前に知ってはいたのですが、わたし達水雷戦隊も出撃するとは思いませんでした」



隼鷹「……はー……こんなんなら、一緒に出撃すれば良かったじゃないか……」



大淀「いえ、今回の作戦は単艦の方が奇襲はかけやすかったですし、そして作戦指令は別々に渡されていると思いますが、作戦自体は、合同作戦です。ただ隼鷹さんには知らされていないだけですね……」



隼鷹「……まぁいいさ、それでどうするの?私の作戦は拠点制圧で、今から艦爆飛ばして拠点を爆撃してやろうと思ってたところだよ、ちょうど奴らの壁も取り払われたし」



そういって隼鷹は、自前のカタパルトを広げ、発艦準備を整えた。



天龍「んや、悪いけど隼鷹さんの出番はここまでだ、ここから先は俺達の独占場だ」



隼鷹「?どうするのさ、戦艦とかならまだしも、軽巡や駆逐艦が艦砲射撃したところで威力なんてたかが知れてるでしょ」



天龍「まぁいいからいいから、あんたはここでしばし休憩してな」



大淀「と言うわけで、わたし達ちょっと行ってきますね」



不知火「ご武運を」



夕張「いってきまーす」



そういって5人の艦娘はパプアに向けて進んでいった



elf:反攻



大淀「さて……天龍さん、タイミングは?」



天龍「ん……ここらへんで良いだろ。あまり近づきすぎて迎撃に合うかも知れんしな、ま、10kmも切って近づきすぎもクソもないが……」



そういうと天龍も含め、全員が艤装の準備を整えた



夕張「ちょっと楽しみですね、この装備、試し撃ちしてもいいかしら?」



川内「いーなー皆、そんな新しい装備つけられて」



不知火「あなたは夜戦要員ではありませんか……」



大淀「しかし……ほんと不思議な形してますよね。主砲がこんなにも連なってるなんて……」



大淀はそういって両脇に備え付けられた新装備を撫で下ろした



天龍「あぁそうだな、さて、みんな用意は良いか?」



全員が頷いた



天龍「……よし、反動には気をつけろよ。どんな代物なのかも分からないからな」



そして天龍は腕組をし



天龍「総員仰角37度、緯度0度と成せ!」



全員が構えた



天龍「目標、正面パプア敵拠点基地!」



旗艦天龍は人差し指を天に掲げて



天龍「総員、一斉射!!!」



その瞬間、全員の装備は後ろから文字通り火が吹いた



天龍「うおぉ!!」



大淀「きゃあ!」



夕張「きゃ!!」



不知火「う!」



新しい装備は、自分の意思とは関係なく、一度の発射で何発もの弾が次々と飛んでいく



天龍「大丈夫かみんな!」



大淀「は、はい大丈夫です」



夕張「は、はは、これすごいじゃない!!ねぇ!この『WG42』って装備、すごいと思わない!!」



天龍「あぁ、ホントにすげぇ!!まさか弾がロケット弾だとはな!!」



その装備、ロケット弾を使用するWG42から放たれたロケット弾は、次々とパプア基地に着弾していった。何十発、何百発ものロケット弾は敵基地の建物を次々と破壊していき、まともな形も残しも無いように



その光景はまさに、一方的ななぶり殺しであった


運用映像→https://www.youtube.com/watch?v=xtSTMYGEyaM&has_verified=1

【※・艦これにでてくるWG42は、ドイツ陸軍が使っていた『30cm NbW 42』(運用映像参照)を海軍仕様にした物で、ロケットモーターを使用しているため水中の中からでも発射する事が出来る】



zwölf:兆し



隼鷹「なんだってありゃあ……十二糎二八連装噴進砲か?」



隼鷹はその光景に唖然としていた。次々と発射されるそれは一目でロケット弾だと分かった。隼鷹も昔、似たような物を載せた事があった。

しかしそれは用途が対地ではなく、対空用防御兵器としてのものであり、名は「十二糎二八連装噴進砲」という。

それを対地兵器として運用しているものだから驚いているのである。【艦これだと12cm30連装噴進砲の事、艦これは十二糎二八連装噴進砲の後期30連モデル】



隼鷹「……圧巻だね……」



その光景はすごいものだった、敵基地がどんどん守る術も無くどんどん破壊されていく、流石に流れ弾で壁に当たっても破壊は出来ないようだが、拠点を制圧するには十分だった

そうこう見とれている内に、発射は終わったようだ



隼鷹「終わったか?……おーい!!」



隼鷹の呼び声に不知火が反応する



隼鷹「おいおいおい、なんだってんだありゃあ?」



不知火「隼鷹さん。いえ、あの提督から貰った新しい装備です」



隼鷹「新しい装備って……十二糎二八連装噴進砲じゃないのか?」



大淀「いえ、これは『WG42』といって、同盟国の作った兵器です。すごいですよこれ」



隼鷹「WG42?聞いた事ないねぇ……」



大淀「でしょうね、まぁそれはいいとして、あの拠点どうします?敵もこちらに感づいて近海で哨戒に当たっている敵艦船もここに集まるでしょうし、上陸するなら今ですよ」



天龍「そうだなぁ……よし、俺と大淀、夕張はあの拠点に篭城しよう。壁は崩れてしまってるけど、一方向しか壊れていないし、敵も奪還しがたいだろう。川内、不知火、隼鷹は鎮守府に戻ってこれを報告、戻ってすぐに援軍を寄越してくれ。」



旗艦天龍の指示を各員がこれを聞きすぐに準備に入る



隼鷹「分かった、艦載機も補充したら私もすぐに援軍に来るよ。」



天龍「おう、もう日も暮れる。夜になったら川内は夜偵を飛ばして常備警戒しながら鎮守府に戻れ。敵の行動範囲外だからって油断するなよ」



川内「分かった!!任せておいて!」



天龍「よぉーし!!弾はまだまだ余ってる。ここを取り戻すまでもう少しだ!大淀、夕張、死守するぞ!」



夕張「えぇ!」



大淀「はい!」



dreizehn:押し上げ



隼鷹「隼鷹帰投しました!」



東郷「……」



隼鷹「作戦結果を報告します!パプアにある敵基地を奇襲と空爆、港湾を守っていた壁を破壊し、現在天龍率いる艦隊がパプアの敵基地を奪還し、篭城中!速やかなる応援出撃を具申します!」



東郷「……分かった、もう準備はしてある……隼鷹、川内、不知火、ご苦労だった……隼鷹、お前はすぐに入渠して身体を休めるんだな……」



隼鷹「は、はい!失礼します!」



川内・不知火「失礼します!」



ガチャ



東郷「……」



―執務室前廊下―



隼鷹「…………」



隼鷹「…………」



隼鷹「……ふー……」



川内「いやー、上手くいって良かったね!」



不知火「えぇ、勝利を上げたのもいつ振りでしょうか」



川内「もしかしたらこれから快進撃が始まって、また前線を押し上げる事が出来るかもしれないよ!ね、隼鷹さん!」



隼鷹「……」



不知火「……隼鷹さん……?どうかされましたか?」



隼鷹「…………こんなに戦闘で興奮するのはいつ振りだろう……あいつがいなくなってからも……情勢は悪くなっていく一方で、もう何もかもがどうでも良くなって、もうすっかり死ぬ気でいたんだけどなぁ……」



隼鷹「でも、何故か新しく入ってきた提督……あいつなら……この現状を変えてくれる気がすんだよね……」



隼鷹「だからさ……だからもう少しだけ……あんたの所に逝くの……もう少しだけ待っててくれないかな……飛鷹……」



川内「……」



不知火「……」



隼鷹「……よっし!風呂行くか!!」



川内・不知火「……はい!」



vierzehn:希望



東郷「これからお前たちに、応援に向かってもらう。メンバーは、隼鷹、川内、舞風、不知火、伊8、弥生だ。場所はパプア敵拠点基地、今は大淀、夕張、天龍の三名が篭城している。そこへ援軍としてかけつけ、その拠点を奪還する」



弥生「あ、あの……」



東郷「なんだ?……」



弥生「何故わたしも参加なの……私は改にもなっていないしそんなに錬度も高くない……他のメンバーはそれなりの錬度を積んだり古株だったりするし」



東郷「なら今あげれば良い……この程度で弱音を吐くようなら間違いなく死ぬぞ……ここは前線基地だ」



弥生「……」



東郷「他に異論は……?」



東郷「……それならすぐに出撃しろ」



一同「はい!」



―出撃ロビー―



弥生「……」



不知火「怖いのですか?」



弥生「ひ!……不知火さん……はい、正直」



不知火「仕方ありませんよ、前任が大本営に送った最後の具申が叶っただけでもありがたいです」



弥生「……私は何も出来ないかもしれない」



川内「大丈夫、敵が来たら狙って撃つ。近くまで来たら魚雷を撃つ。夜戦に持ち込んだら敵を討つ!その時になればなんとかなるもんだよ」



弥生「川内さん……」



川内「大丈夫だって、わたし達もちゃんとフォローするから、始めての出撃の子に1人でやらせるほどわたし達だって悪魔じゃない」



弥生「……」



川内「よっし、じゃあぱぱっと行って、ぱぱっと片付けて、ぱぱっと終わらせちゃおうか!」



弥生「……はい……」



―パプア拠点基地―



天龍「あいつらそろそろこっちに向かってくる頃かな?」



大淀「そうですねぇ……隼鷹さんの入渠時間を含めても最低1日半は掛かると思いますでもうそろそろかと」



夕張「それにしても敵も中々にしつこいわねぇ」



天龍「でもこの壁のおかげでやつらは正面からしか攻撃できないしな、対空はこのWG42に追い払えばいいし」



大淀「そうですね、少しばかり敵艦載機も五月蝿いですが……」



夕張「あ、また敵が見えてきた、今度は5隻編成みたいだね。軽巡3、駆逐2」



天龍「なんてことねぇよ、壁を使いながら敵を追い払えば良い」



大淀「ふふ……」



天龍「どうした?」



大淀「いえ、また以前みたいに活気あふれる艦隊に戻れる日が来るのでは無いかと思うと少し嬉しくて」



夕張「そうね、仲間もたくさんやられちゃったけど、これからまだ出会うかもしれないし」



天龍「……そうだな……あいつのためにも絶対に以前の艦隊に戻してやるさ」



夕張「絶対にですよ!」



天龍「あぁそうだな、希望も見えてきたぜ!」



fünfzehn:上層部



中将「大将!前線からの暗号です!」



大将「なに!ついに来たか!」



中将「はい!内容は……『ハセ』……と」



大将「……そうか」



中将「……?……これは?」



大将「……分かった、もう下がってくれ」



中将「は!」



ガチャ



大将「……そうか、まずは篭城には成功したか……これからだぞ……」



~回想~



大将「暗号を?」



ゴルゴ「あぁ、あんたと俺だけが分かる即席かつ簡単な暗号だ……」



大将「は、はぁ……それは構いませんが……」



ゴルゴ「……」



~回想終了~



大将「……まずは前半戦はこちらの優勢だな……」



sechzehn:切りくずし



天龍「うーむ……」



天龍は壁の陰から顔だけを出し、様子を伺っていた



大淀「どうかされましたか?」



大淀のその問いに天龍が首をかしげる



天龍「なんだかおかしい……」



夕張「ちょっとやめてよ」



大淀「何か?」



天龍「敵の攻勢がちょっと緩みすぎだな」



夕張「良い事じゃないの、敵もそろそろ諦めてきたんでしょ、あとは応援が来るまで持ち持ち応えてここを奪還よ」



少し沈黙が通った後に天龍が口を開いた



天龍「……だといいんだがなぁ……」



夕張「きっとそうだって」



大淀「あ、また敵艦船です。どうやら駆逐艦ですね」



天龍「け、追っ払っちまえ」



夕張「はーい」



と、夕張が迎撃態勢に入る。しかし



夕張「……?あの駆逐艦急に止まったわね」



大淀「あ、反対の方向、2時の方角からも軽巡が2隻きました」



天龍「そっちは大淀に任せた」



大淀「はい」



と大淀も迎撃態勢に入る、しかしこちらも



大淀「……?あの軽巡も急に止まりました」



天龍「なんだぁ?あいつら攻撃もしてこないで」



夕張「どうする?とりあえずこっちから攻撃する?」



天龍「そうだな、威嚇射撃でもしてろ」



夕張「はーい」



大淀「わかりました」



合図と共に、夕張と大淀のWG42に火が噴き、敵に向かって飛んでいく



夕張「さぁ、いっきなさい!」



多数のロケット弾の着弾と共に、敵艦船は更に距離を離し、こちら側とのリーチは大きく開いた



大淀「やりました、敵もこれでは中々近づいて来れないでしょう」



夕張「えぇ敵も集まってきたけど、わたし達の兵器にたじろいで、沖合いで固まってなかなか近づいて来ないわね」



天龍「あぁ、これはかなり持久戦に持ち込めるな」



大淀「えぇ、これで応援を待つだけ……です」



その時、大淀は急に悩みだした



大淀「持久戦……?……持久……」



そして、大淀が何かに気づいた



大淀「……天龍さん……あなたの読み、どうやら当たりのようです」



天龍「あぁ?なんだよそれ」



大淀「……恐らく相手も持久戦を持ち込もうとしているのでしょう」



天龍「あぁ?なんのために」



大淀「多分……あれでしょうね……」



大淀は、敵艦船を指差した



夕張「敵が……どうしたの?」



大淀「恐らく相手は、後々、一気に蹴りをつけるつもりでしょう。見てください、敵がドンドン集まってます」



大淀「敵は小さい艦隊を連続ではなく、仲間を大勢集めて一点集中の攻勢に切り替えたんだと思います」



天龍「んー、それはまずいな」



大淀「えぇ……普通、篭城された場合、攻撃は守りの三倍の戦力を以って挑む、『攻撃三倍の法則』という言葉があります。意味は皆さんが想像しているそのまんまです。わたし達は敵に対してかなり有効な兵器を使用しています。それを敵は承知の上でもっと数を増やしてくるでしょう。おそらく10倍、いや15倍ほどで」



天龍「うっそだろ、それはなんとしてでも避けたい」



夕張「そんなの絶対勝てっこないって」



そうこういっている内に、敵艦船は沖合いの方でかなりの数が集まっていた



天龍「あー……敵が攻勢を緩めていたのはこれだな……」



大淀「これは……ちょっとピンチですね……」



夕張「この壁があるだけなんとかマシね」



天龍「っく、おいおいおい早く来てくれ、俺たちこのままじゃ奴らになし崩しになっちまう。応援はまだか!」



siebzehn 一転防勢



天龍「弾はそれなりに残ってるが……」



大淀「でも流石に……」



三人の視線の先にはおぞましいほどの数の深海棲艦が終結していた。その数、もはや観艦式が出来るほどである



夕張「あれは多すぎよねぇ……」



大淀「距離からしてやく20km……前後でしょうか?相手はこちらの様子を伺っているようですね……見た事の無い兵器に困惑しているようですが……」



20km-------重巡なら既に射程内である、しかしこっちは敵拠点を占拠している側であり、敵も自軍の補給拠点を潰すような真似はしてこなかった、ましてや射程内といっても20kmも離れれば誤差は大きくなる。1度ずれるだけで300m以上ずれる計算になる。ゆえに敵はこちらにどうしても近づいて近距離戦に持ち込む他なかった



天龍「あぁそうしてくれそうしてくれ!お互い持久戦に持ち込んでどっちに神が舞い降りるかさ」



夕張「こっちは援軍が来るまで、あっちは数が揃うまで……ってところかな?」



天龍「これの最大射程も出撃前に聞いた話しじゃ5kmほど位らしい、だけど弾はまだまだある、射程圏内に入ってきたらうかつに攻めてこれないように奴らの心理をかき乱してやれ」



夕張「お願いだから早く来てよ援軍!!」



大淀「こればかりは運ですからねぇ……」



天龍「早くこい……はやく!」



―海路―



隼鷹「あいつら大丈夫かなぁ?」



川内「どうだろうねぇ、いくら新兵器といっても篭城となると敵はどんどん集まってくるだろうし、まぁでもあの要塞だったし持久戦には持ち込めるだろうけど」



一方その頃援軍の隼鷹等の艦隊は援軍として動き、パプア補給基地を目指していた



不知火「天龍さんもいるなら大丈夫なのでは?あの人たちは全員改装もしてありますし、そんなに心配するものではないかと」



川内「そうやって慢心するから半年前堕とされたんじゃん」



不知火「ッ……」



川内「……いや、ごめん、言い過ぎた」



不知火「いえ……」



弥生「……」



隼鷹「……?弥生どうした?」



弥生「い、いえ……そのちょっと緊張しちゃって……」



不知火「……何も心配する事はありまんよ。フォローはしっかりするので」



川内「そうだって!……そうだ!夜戦楽しいよ!目標海域に到着したら夜戦しようか!」



弥生「い、いえ……」



彼女―――駆逐艦弥生は、前任の提督が解任された後の鎮守府に配属された艦娘である。彼女は水上艦としては特殊艦を除いて、唯一改装が施されていない。弥生は前任が解任される前に、前任の最後の具申が通り配属された艦娘である。故に実戦経験もなく全くの新人である



弥生「……」



隼鷹「……大丈夫だって、その時になればなんとかなる。海の上では戦闘になれば怖いものなんてなくなるよ。気がついたらそうなってるんだ。興奮状態と言うかなんと言うか……戦う事が楽しくなってる……?みたいな感じか、まぁ敵を倒さなくちゃと思ってるからだろうけど」



弥生「は、はぁ……」



川内「まぁその時はその時だよ」



弥生「……」






【現在の状況】



パプア敵補給基地・篭城中

・天龍

・大淀

・夕張

パプア敵補給基地に篭城中であり、援軍が到着するまでの間、敵艦隊と真正面に持久戦に持込中である



援軍支援艦隊・航行中

・隼鷹

・川内

・舞風

・不知火

・伊8

・弥生

現在、仲間が篭城しているパプア敵補給基地に向かって航行中である。

その中の弥生は実践のない新人の艦娘である。仲間と目標海域へ向かいながら彼女は1人不安を覚えていた



achtzehn:滑り込み



天龍「これは……正直駄目だな……援軍が来ても敵わねぇよ」



夕張「集まりすぎね」



大淀「集まりすぎですね」



先ほどからドンドン敵が集まってる。もう100はいってるだろうか



天龍「あいつらこんなにいたか?」



大淀「他の所からも集まってきているみたいですね。」



夕張「それだけ、ここを再奪還したいのかしら」



天龍「だけどいくら何でも多すぎだぜ、俺ならすぐに奇襲かけるっての」



大淀「……逆に……」



天龍「ん?どうした?」



大淀「逆に、絶対に取り返さなくてはいけないものがあるとしたら……?」



大淀が顎に手をかけ、神妙に考える



夕張「そんなもん、食料に決まってるじゃない。それに弾薬、燃料」



天龍「そうだぜ、ま、弾薬があるなら俺等でたんまり使わせてもらうがな」



大淀「……それだけなら……良いんですが……」



天龍「まぁ、なんにせよ、俺等がピンチである事には変わりねぇよ。今は早く援軍は来る事を待つばかりだ」



夕張「そうねぇ……あ!」



天龍「ついに動いたなぁ……よし!ぎりぎりまで引き付けろ!奴等を射程内に収めるんだ!」



大淀「はい!」



夕張「はい!」



                         ―航路―



隼鷹「……あいつら、大丈夫かな……」



不知火「あれから結構時間経っていますからね……」



心配する様子をよそに、川内と舞風は弥生をできるだけ落ち込ませないようにと励んでいた



川内「大丈夫だって!その時はその時だけど、やれば意外と何とかなるもんだよ。ほら私達もちゃんとフォローするし」



舞風「そうだって!それとも、それともちょっと休憩がてらにここらで少しダンスする?ちょっと気分が落ち着くよ」



弥生「いえ……結構です……」



そんな事を話しているよ、水中から伊8が顔を出してきた



伊8「ぷはぁ……」



隼鷹「お、はっちゃん。水中はどうだい?何も異常は無し?」



伊8「はい、今の所は何もないですね……ただ、やっぱり弥生さんかなり緊張されているみたいですね。水中にいると、ソナーが弥生さんの心臓音を拾っちゃいます」



川内「はは、まぁしちゃうものは仕方ないよ。ましてや、初陣がこんなんなんだから……」



川内がそういうと、皆一瞬黙ってしまった



そしてそのとき、川内に無線が入った



???『ppp……こち……ど……誰……答を……』



川内「!?皆無線が入ったよ。Unknow station This is river over」



大淀『river river こちら大淀、応答を』



川内「大淀さん!?こちらriver、状況を」



大淀『現在パプア基地にて篭城中、敵が猛攻をかけている。至急応援求ム!!』



川内「こちらriver、了解。現在に当海域に向け航行中、至急そちらへ向かう。over」



隼鷹「なんだって?」



川内「敵さんが篭城中のパプア基地に猛攻をしかけているだって、自分等も急ぐよ!」



一同「はい!」



neunzehn 切り札



天龍「よっし……徐々に近づいているなぁ……お前等準備は大丈夫かぁ?」



夕張「こっちは大丈夫よ」



大淀「私もです……ですが……」



天龍「どした?」



大淀の疑問を呈する声に天龍が反応した



大淀「……私達の装備しているこの『WG42』ですが……本当に深海棲艦に効くのでしょうか?」



天龍「……どういう意味だ?」



大淀「この『WG42』は確かにすごいと思います。相手も見た事無いでしょうからそれなりに相手はなかなか近づく事はできません。実際、制圧兵器としてもかなり優秀です……しかし、それは面攻撃を重点に置いていると言う事であって、点攻撃には向いていないということなのでは……」



大淀がWG42に手をかける



夕張「……つまり攻撃力を重点においた兵器ではないから深海棲艦が躍起になって攻め込んできたとき、対艦としては決定打にはなりえない……そういうこと?」



大淀「威嚇、牽制としてはかなり優秀だと思いますが……」



天龍「……まぁ、実際これでこの島を占領してた奴等は壊滅したから、駆逐艦、軽巡洋艦レベルなら何とかなるだろうな……だが重巡、戦艦レベルには実際に相手にぶつけて見るまでは分からないが、もしそうだった場合、こっちはいきなり不利になるな……」



……この場の空気が一気に冷たい物となった



天龍「まいったなぁ……こういうことなら、主砲を1つ位は持って来れば良かった俺の主砲ごときでなんとかなるとは思わないけど……おい大淀、この島に何か武器はないのかよ」



最初に空気を破ったのが天龍だった



大淀「それは……すいません、分かりません」



夕張「私もちょっと……」



その時だった



ドン!!



天龍「なんだ!……あ!」



大淀「ついに撃ってきましたね……」



夕張「あー……私なんか探してこようか……?」



ついに始まった敵の攻撃に3人はたじろいながらも、すぐさま臨戦態勢に入る



天龍「この際何でも良い!!おい大淀、夕張と何か探してきてくれ!ここは俺だけでいい、何でも良いから武器になりそうなものがあったら持ってきてくれ!!」


大淀「は、はい、分かりました!」



夕張「それじゃあ行ってくる!」



天龍「あ、待った!!」



駆け出そうとした二人を天龍が2人の艤装を指しながら言った



天龍「それは置いて行ってくれ、置砲台としてなら俺1人でも3つは扱える」



大淀「あ、はい」



2人は拠点基地の建物へと向かって行った



天龍「……さぁて……こっちも一仕事するかぁ……」



                                   ~パプア補給基地司令館内~



大淀「……まぁそういっても、私達のロケット弾のせいで建物もここまで見事にボロボロにしてしまいましたから」



夕張「ホントね、こんな半ば瓦礫と化した建物から何を探せって言うのかしら」



大淀「まぁ何もしないよりはマシです」



夕張「まぁね」



大淀「……武器庫の方へ行って見ませんか?」



夕張「……そうね、そっちの方が何かありそうだし行きましょうか」



大淀「分かりました」



                                       ー航路ー



川内「……うーん……」



川内が喉を鳴らす



不知火「どうかされましたか?」



川内「補給基地まであとどれくらい?」



不知火「あと……航行速度を考えて6時間弱と言ったところですか、それが何か?」



川内「うーん、なんかね。大事な物を忘れてるような……」



不知火「はい?」



川内「なんだったかなぁ……あそこの基地ね、確かなんかすっごいのあった気がするの」



隼鷹「なんだそりゃ?兵器か何か?」



川内「うん……兵器だったはずなんだけど……確か私が暇であそこの基地内を探索しているときに見つけたの」



隼鷹「お、何々?艦載機の類?」



川内「いや、飛行機じゃなかった」



隼鷹「ちぇ」



隼鷹が思わず舌打ちをする



不知火「それが何か到着時間と関係あるのですか?」



川内「いや、それだったら早く教えてあげたいじゃん?」



不知火「……まぁそうですね」



川内「うーん、なんだったかなぁ……なんかこう……船に載せるものでも無かったんだけどね……」



唯一1人頭を悩ませながら皆はパプア基地へと向かっていった



                                   ーパプア補給基地港湾内ー



天龍「くっそ、あいつらバカスカ撃ちやがって。大淀たちもまだか!?」



天龍「距離も約15kmと迫ってきてるな……有効射程距離もあと10ってところか……大淀たちがなにも見つけられなければもうこれだけで何とかするしかないが……」



天龍「いや、もうこの際玉砕覚悟だ。来れるものなら来てみろってんだ!!」



砲撃を続ける敵の攻撃を壁から少しだけ身を乗り出し、様子見しながら天龍にも敵の大群が押し寄せてきていた



                                    ーパプア補給基地武器庫内ー



大淀「……うーん、武器庫は弾薬もあるため頑丈に作られてはいるのですが……建物が壊れていないとしても……」



夕張「流石に相手も何かを残してくれるほど優しくはないわよね……艦載機の代物や単装砲や連装砲、それらの弾は全部使われてるわね……というか深海棲艦は弾の規格が私達と同じなのかしら……」



大淀「……陸戦隊用の小銃や小銃の弾は触れられてもいないようです、かなり埃被っていますね……ですが、これじゃ深海棲艦には歯が立たないでしょうね……夕張さん、何かここの武器庫の事、御存じないですか?」



夕張「ここは明石さんが担当してたからねぇ、明石さんとは仲は良かったけど、ここの事には一切触れなかったしなぁ……あ、これ明石さんが使っていた机だ。まだ残ってたんだ……私達がここを放棄した状態のままだ……」



大淀「……明石さんも共に戦った仲間ですからね……」



夕張「……うん……まぁ一緒にここを脱出したんだけど……」



大淀「……」



夕張「あ、そうだ……そういえば何かこの島に秘密兵器があるとかなんとか言ってました」



大淀「秘密兵器?……それ信憑性は?」



夕張「んー……まぁ飲んでて酔ってる時に言ってたからねぇ……酔っ払いの戯言か何か……かな」



大淀「……」



夕張「……」



つかの間の沈黙が流れると、外から大きな砲撃音が聞こえてきた



大淀「きゃ!……敵ももうだいぶ接近して来ているようです。それと残念ながらここにはもう何もないみたいですし、本館の方へ行ってみましょう」



夕張「えぇ、何か手がかりが見つかるかも……ん?」



大淀「……どうしました?明石さんの机を凝視して?」



夕張「これ……この地図……ここの武器庫の地図みたいなんだけど、なんか手書きで長方形に書かれてる」



大淀「……本当ですね……あとここに手書きの長方形に隣接して手書きで……これは……梯子?」



夕張「これどこかしら?……えーっと、今私達のいる場所がここだから……あれ?私達の場所とほぼ同じだ……ということは……真上!?」



その言葉で2人は同時に真上を見てみた



大淀「……何もありませんね、それどころか2階が作れるような高さもありません……」



夕張「なんだ……単なる落書きか……」



大淀「……これもしかして……真下……なのでは?」



大淀がそういうと、次に2人は地面に目を向けてみた、するとある物を見つけた



大淀「……夕張さん、ここ、なんか不自然な切れ込みが入っています」



夕張「ほんとだ……なんだが明石さんの机で隠しているかのような感じね。大淀さん、ちょっとそこを持ってもらっていいですか?」



大淀「はい……んしょ……」



2人して机を移動すると、机の下には開く事が出来そうな取っ手、もとい扉が出てきた



夕張「……」



大淀「……」



夕張「私、その秘密兵器とやらに賭けるわ」



大淀「私もです」



夕張が取っ手に手をかけ扉を開いた



                                ー鎮守府 工廠棟ー



東郷「……」



ピ、ピ、ピ……ガコン



東郷は1人、工廠棟で建造機器を操作していた



東郷「……」



そこに1人の艦娘が歩いてくる



長門「……貴様、何している」



東郷「……建造だ」



長門「……やったことは?」



東郷「ない……マニュアルを見ただけだ。特定の数値を入力し、このレバーを引けば建造できると書いてあったが?」



長門「そうだ、だがこの鎮守府には資源がもうない事も分かるはずだろう、私達の修理する分だけでも惜しいというのに、建造が出来るだけの蓄えなどない」



東郷「蓄えなら心配ない」



長門「何?」



東郷「大本営に言ってここ以外の各鎮守府から少しずつだが分けてもらった……もっとも、それこそ何度も出来るような数ではないがな」



長門「それなら何故それこそ建造なんてやっている。少しでも貴重な資源ならば私達に使うのが道理だろう!」



長門は少し声を荒げ、東郷に近づいて真横からだが睨み付けた



長門「……」



東郷はゆっくりと顔を横に向けた



東郷「……お前達は数が少なすぎる……正直言ってだが、よく今日まで生き残って来れたものだ」



東郷に言葉に長門は何度か首を縦に少し振り、言った



長門「……あぁ、前の提督の馬鹿のおかげでな。私達仲間がほとんど逝ってしまったよ……今のあんたみたいに後先考えず阿呆な事をやっていたからなぁ!!」



その怒号と共に長門を拳を壁に叩きつけた。鉄板で出来ているであろう壁がものの見事に拳の形が出来ていた



東郷「……悪いがお前等の心情は俺には関係ない。前任がどうであろうがそれは俺には関係のない事だ……俺は、俺が出来る限りのことをやるだけだ……」



長門「っ!貴様……!!」



東郷「……だからお前等も出来る限りのことをやるんだな……期待はしている……」



長門「……」



そう言われ、長門は何故か何も言えなかった



長門「……」



東郷「……おい、ところで……」



長門「……なんだ」



東郷「……この22分と言う表記は何だ?」



東郷は建造機器のモニターを指差した



長門「……時間によって建造できる艦種も変わる……22分なら白露型か朝潮型……もしくは……」



東郷「……伊号潜水艦か……」



長門「……そうだ」



長門がそういうと東郷は内ポケットからタバコを取り出し、長門の脇を通りぬけた



長門「おい!」



東郷「……なんだ?」



長門の突然の呼び声に東郷が振り向く



長門「……工廠棟は禁煙だ……」



東郷「……」



東郷はタバコをポケットに戻し、工廠棟を後にした



                               ーパプア補給基地 武器庫 隠し地下ー



夕張「……ビンゴね……」



大淀「えぇ……まさかこんなものがこの基地の地下に隠されていたなんて……」



夕張「というか……明石さん、私達が出撃するときに教えてくれてもいいのに……」



地下を降りた先、そこにあったのは大砲であった



夕張「しかしこれって、艦載砲……えっと……でもこれだけ大きいと私達に扱えないんじゃ……」



大淀「……あれ、夕張さん……この大砲、ここにプレートが付いています。多分これが名前じゃないでしょうか?」



しかし、ただの大砲ではなかった



夕張「ほんとうだ、うわ、全部漢字で書いてある……え、なんて読むのこれ?読みづらい……加農砲……加農?砲は分かるけど加農って何?」



大淀「加農砲?加農砲って確か陸軍運用の……ちょっとすいません、見せてください……」



大淀が文字プレートをみると、大淀がとっさに口を手で押さえた



夕張「え、何、どうしたの?」



大淀「……夕張さん、今回の防衛戦、勝機が見えました」



夕張「え、何、これそんなすごいものなの?」



大淀「…………砲塔四五口径四〇糎加農砲……簡単に言うと41センチ砲です!長門さんと同じ主砲です!」



かのビッグセブンとして世界に7隻しかいないはずの40cm超えの主砲が今の目の前にあるのである



夕張「……はぁ!?なんでよ、だって今陸軍運用っていったじゃない!」



大淀「ここ見てください、四号砲って書いてあるじゃないですか、と言う事は一号二号三号もあるのですが、これは長門型の2代後の天城型巡洋戦艦、赤城……ええと、空母の赤城さんに搭載される予定だったはずの主砲なんです……ただワシントン海軍軍縮条約で戦艦として作ることができなくなってしまったので、陸軍が40cm加農砲として運用する事になったのです、それから一から四号砲までは沿岸砲として使われる事になったのですが、ただ唯一四号砲だけは設置がされないまま、いつまにかどこかへ消えてしまったのです……ですが、まさかこんなところにあったなんて……」



夕張「あー……えーと、とりあえず、私達は今の危機的状況から脱するためのアイテムが手に入ったってことでOK?」



大淀「はい!しかも沿岸砲としての運用なので私達でもなんとかなります。砲弾も薬嚢もたっぷりそこのカーテンに掛かってるところに置いてあるみたいですし」



大淀が指差すところを見ると、カーテンが掛かってる横に砲弾、薬嚢のプレートがかけられていた



大淀「はやくこれを持っていきましょう!」



夕張「えぇ!!」



しかし、夕張には疑問が1つ浮かんだ



夕張「……これ、どうやって、上まであげるの?」



大淀「……」



そこからだった、しかしその問題はすぐ解決した



大淀「……ええと、でもここにこれがあると言う事は、いれる事ができたと言う事だから……」



大淀が回りを見渡した、すぐにお望みの物が目に入った



大淀「ありました、やっぱりここエレベーター構造になっているみたいです」 



大淀が「上」のボタンを押すと、地上からは地面が開くような形になり、地下のこの地面も上がり始めた



夕張「おぉ……」



大淀「はやく、天龍さんにもこの事を知らせなければなりませんね」



夕張「えぇ……さぁいよいよね、私達の逆襲は……この装備試してもみてもいいかしら!」



【砲塔四五口径四〇糎加農砲(砲塔式45口径40cm加農砲)について

・砲塔式45口径40cm加農砲は元々加賀型戦艦や天城型巡洋戦艦に搭載される予定だった主砲である。しかし当時ワシントン海軍軍縮条約により主砲を搭載する事ができなくなり、既に完成していた41cm主砲を破棄するものももったいないと言う事で、陸軍に沿岸砲として引き渡された。なお一~四号砲は次の通りである。


一号砲、戦艦土佐 2番砲塔、鎮海湾張子嶝砲台

二号砲、巡洋戦艦赤城 1番砲塔、壹岐黒崎砲台

三号砲、戦艦土佐  1番砲塔 、対馬豊砲台

四号砲、巡洋戦艦赤城 4番砲塔、設置されず


余談であるが、建造途中の加賀型は加賀を戦艦から正規空母に変更、2番艦の土佐は標的艦として使われた、そして天城型巡洋戦艦1番艦、天城も空母へ改装される予定だったが(雲龍型の天城とは何ら関係はない)、関東地震に襲われ大破してしまい解体処分となる、2番艦赤城はそのまま正規空母へ改装され、赤城型正規空母へ生まれ変わった。ちなみに、3番艦、4番艦に高雄、愛宕と巡洋戦艦として名を冠する予定だったが、条約締結後、翌年の1924年に両艦とも解体処分となり、名前のみ高雄型重巡洋艦に引き継がれるだけとなった


なお、この加賀型戦艦と天城型戦艦は、特徴として速力も速く、防御力も長門型をかなり上回る造りとなっていたため、もし就役していれば金剛型に次ぐ高速戦艦として名を馳せ、長門型より強い戦艦として後世に語り継がれていただろう(と、独自解釈でっす☆)】



zwanzig 一本の神の杖



天龍「敵との距離、約10キロ……こっちの有効射程はあと5キロか……」



天龍の独り言を置き去りにするかのように、敵が徐々に近づくにつれ、砲撃も徐々に激しくなってくる



天龍「あの2人……何も見つけられなかったか……?……そらそうか、元々ただの補給基地だし、敵に一度占領されてるんじゃあ何も残ってねぇよな……うお!?」



敵の至近弾がすぐ目と鼻の先で炸裂した、大きな水柱が上がり、天龍の周りが一時の雨天となる



天龍「……くそったれ!!あぁ、怖ぇ!!なんだって俺はこんな所で1人でいるんだ!大淀と夕張はどうした!大淀!!夕張!!俺はここだ!!」



壁を背にして身を守っても、大きな壁の向こうには大軍が目の前まで差し迫ってると言う事実、そして至近弾が引き金となり天龍は少しパニックになっていた



壁をすり抜けて入ってきた至近弾が多くなってきた



雨がやまない



天龍は屈む事しかできずロケットを発射する機会を完全に見失っている



そうこうしている内に敵との距離、残り5キロを切った



しかし、天龍はそれにも気づかず屈むだけ



 天龍「……くそがぁぁぁぁぁ!」



意を決し、身を壁から乗り出した瞬間



ドゴォォォォォォン



島を囲っている大きな壁が大量の砲弾を受けた事により、ついに崩壊してしまった



そして、身を乗り出したときに目の当たりにした敵との距離があまりにも近すぎて、天龍は愕然とした



近過ぎる……ただ、それしか思うことが出来なかった



そして海面に両ひざを着き、もう無理だと悟り、武装解除した天龍は雨ふる空を大きく仰いだ



視界の隅に、敵の主砲がこっちを向いてるのが見えた。



あの白い髪は確か……ル級……いや、タ級だったかな?前に龍田と一緒に勉強したんだけどなぁ……もうどちらでも……



天龍を目を閉じた






そして、天龍の耳に主砲の発射音が残り






大きな爆発音が聞こえた






聞こえたのである



聞こえた?



聞こえた!?



目を開けた天龍には今まさに沈まんとすタ級の姿が映っていた



何だ?何が起きている?



何故今目の前で敵が攻撃されている



タ級の周りにいた深海棲艦が動揺しているのははっきりと分かった



援軍が到着した?いや、早過ぎる。なら誰が?



そんな事を考えていると、また大きな発射音が聞こえた



次はタ級の隣を航行していたル級が大きな爆発を起こした



まただ



誰が撃っている



敵の周りを見渡したが誰もいない



次に後ろ、補給基地のある沿岸に視線を当てた瞬間、天龍の真横をかなり大きな砲弾が通り過ぎた



そして、背後から爆発音



目を当てた沿岸で大淀と夕張の2人が大砲を操作してるのが見えた



あの2人は何をしてるんだ?いや、それよりも何であんなものが



呆然としているとまた大砲から敵軍に向かって発射音が放たれる



そしてまた、爆発音



発射音、爆発音



発射音、爆発音



発射



爆発



発射



爆発



天龍にはただそこで何もせず、じっと大淀たちを見てるだけだった



そして一言、小さく呟いた



「神が……舞い降りた……」



天龍の目から流れるそれは雨などではなく、そして、再度放たれる砲弾の衝撃波で一緒にかき消された



einundzwanzig 戦果



結果として、パプア補給基地は奪還に成功した



突如として現れた41cm沿岸砲は深海棲艦の戦意を大きく削ぎ、数的に有利であるものの、敵としても補給基地として使っていた基地をむやみに攻撃する事など出来なかった、敵もパプア補給基地を大きく損害を与えずに取り返したかったらしく、時間をかけ躊躇している内に後方から川内率いる援軍、伊8と隼鷹による奇襲を含めた挟み撃ちにあってしまい、深海棲艦の大群は成す術も無くその場を離散する事となった



不知火「何ですかこれは……この基地にこんなものがあったなんて……」



夕張「私も驚いたわよ、ほんと、これがなかったら今頃どうなっていたか……」



天龍「……」



川内「……どうかしたの?」



天龍「別に」



舞風「川内さん、放っておきましょう。泣いてるんですよあれ」



川内「……あぁ……」



天龍「泣いてねぇよ!!」



舞風「聞こえてら」



川内「それじゃあ私は鎮守府に通信を送らなきゃだから、」



大淀「分かりました……さて、これから私達は?」



川内「あぁ、とりあえず数週間はここを死守しろって……あーあー、こちらRiver、応答を願います」



大淀「死守って……しかも数週間も……?」



                                             -鎮守府-



東郷「……分かった、食料は無事だな?指示どおり、数週間はその基地を死守しろ。以上だ」



東郷は川内からの報告を終え、無線機を戻した、机にもたれた状態で胸ポケットからタバコを取り出し一服しだした



長門「……無線室からコードを引っ張ってきたのか」



執務室のドアにもたれかかった長門



東郷「……奪還作戦は完了だ」



長門「皆は?」



東郷「無事だ」



長門「本当か?」



東郷「あぁ」



長門「なら私達も今すぐ向かわないと!」



東郷「ダメだ」



長門「何故だ!!」



東郷「今死守させている」



長門「だから何故だ!あいつ等だけ最前線に出して私達ははるか後方の安全圏でのうのうとしているのか!」



東郷「そうだ」



長門「……!貴様……!!」



弾丸のような言葉のキャッチボールに先に手が出たのは長門だった



しかし、大振り放たれる長門の右ストレートを軽い身のこなしで避けた東郷は、すれ違いに長門の額にタバコを押し当てた



長門「……あつ……ぁ!」



東郷「ここは誰が守るんだ」



長門「はぁはぁ……何!?……」



東郷「ここは誰が守るんだ、と聞いている」



長門「……」



東郷「お前しかいないだろう」



長門「……なら、何故数週間もあの基地を死守させる!わたしがいう言うのも何だが、あの娘たちだけで絶対に守りきれないぞ!目の前にシンガポール海峡があるし、そこにはレ級がいるし、そいつら艦隊がまたすぐに再奪還するに決まってる!戦力的にこっちが不利なのは目に見えてるだろう!」



東郷「手土産がある」



長門「何!?」



東郷「お前は気にせず、持ち場に戻れ。数ヶ月の間は残っている吹雪、明石、香取の4人で鎮守府近海警備に当たれ。安全とはいえ、用心に越した事はない」



長門「……くそ!!」



タバコの熱さに蹲っていた長門は地面を思い切り殴りつけるようにし、執務室を後にした。そして、東郷は今度は無線機ではなく、引き出しからケータイを取り出し、とある電話をかけた



東郷「……俺だ、話しは付いているか……?……あぁ、そうだ、あれはアメリカにあるはずだ……俺からの指示だと伝えろ……なら、シーレーン奪還の話しは無しだ……そうだ……それは好きにしていい、いないよりはマシだ……期間は……2週間だ」



どこの誰かに電話を終えると、長門の額に押しつぶして消えてしまったタバコの火をもう1度着け、次こそはゆっくりと一服に入った



zweiundzwanzig 帰還命令



奪還作戦完了から4日目、東郷は毎日大本営から送られてくる日報に目を通していた



東郷「……うん?」



何枚かの文書の中に気になる知らせが目に付いた



『大本営より

昨日〇〇時頃、△△中将が自宅にて自殺により死亡しているのが発見された。

解剖の結果、死因は窒息死によるだと海軍捜査局は断定……』



東郷「……」



あの時、自分に依頼をした時に合った大将と一緒にいた男だった



東郷はすぐにケータイを取り出し、自身だけが持っている直通電話をかける



東郷「……俺だ」



大将『これは……どうかしましたかな?』



東郷「今日の日報だが、あんたと一緒に依頼をした中将が死んだそうだな」



大将『あぁ……そのことですか……実に残念です……あいつがよもや自殺など……』



東郷「自殺ではない」



大将『え?』



東郷「自殺はあり得ない、あいつは殺された」



大将『な、何故他殺だと!?』



東郷「……」



                         ~回想 奪還作戦完了直後~



長門「……くそ!!」



東郷「……」



東郷「……俺だ、話しは付いているか……?」



中将『ゴルゴさん……51cm砲の件ですね……』



東郷「……あぁ、そうだ、あれはアメリカにあるはずだ……」



中将『それが、話しは何度かしているのですが、相手がアメリカだと流石に……』



東郷「俺からの指示だと伝えろ……」



中将『い、いや、しかし』



東郷「なら、シーレーン奪還の話しは無しだ……」



中将『わ、わかりました!何とかこぎつけます!……あ、あと、ついでの件なのですが、本当にアメリカの艦娘の応援は拒否されたとしてもいいのですか?』



東郷「そうだ……それは好きにしていい、いないよりはマシだ……期間は……2週間だ」



中将『2週間!?……あはぁ……わ、わかりました……なんとかします』



                                     ~回想終了~



東郷「……それはお前が知る必要はない、だが他殺だという事だけは確かだ、お前は俺に対して余計な事は詮索するな」



大将『わ、分かりました……』



東郷「それと、今からすぐに俺を本国に一時的に戻す手続きをしろ、理由は適当にな……」



大将『今すぐですか!?そ、それは構いませんが……』



東郷「頼んだ……」



プツッ



東郷「……」 



30分後、執務室に設置されているFAX機より本国からの指令書が届いた


『指令書 〇〇年〇〇月〇〇日

東郷提督 宛

貴官を、海軍規定書〇〇条乙種の定める規定の発令により、一時的に本国へ帰還を命じる。

即日、最短の便で帰還されたし

              発令者 日本国国務長官 並びに 日本海軍 大将 △△ △△ 』



東郷はそれを手に取らず、館内放送で長門を呼び出した



数分後、長門が執務室のドアをノックもせずに入ってきた



長門「何の用だ」



私はお前に数秒でも会いたくないんだ、と言わんばかりの態度で東郷に接する



東郷「俺は数日間、本国へ帰還を命じられた。FAXの上に指令書が来ている。その間、お前を秘書艦にするから提督代行を」



長門「帰ってくるな!!」



バタン!!



と容赦ない力で思い切りドアを閉めて長門は出て行った



東郷「……」



東郷はそれも気にせず、机の上を片付け、一日の行動を30分おきに指定したメモを書いた



すると、またドアからノックをした



東郷「……入れ」



吹雪「し、失礼します!」



ドア越しに元気な声で返事をしたのはこの鎮守府に残っている艦娘の1人の吹雪だった



東郷「……どうした」



吹雪「あ、あの、今執務室から長門さんがすごい剣幕で出来てたので何があったのかと思って……」



東郷「……なんてことはない……俺は今から数日間本国へ帰還を命じられたから長門に提督代行をお願いしただけだ……」



吹雪「え?今からですか……で、ですが、この鎮守府の主戦力を出払ったまま指揮をする提督が本丸を離れると言うのは……」



東郷「……」



東郷は少し動きを止めた後、執務室に引っ張ってきた無線機でパプア基地を死守している川内に無線をかけた



東郷「俺だ……俺は数日間、大本営の命令により鎮守府を離れる、その間は長門が提督代行だ、1日1度、夜9時には日報を口頭報告しろ、何時に何の艦種がどこに現れた等、事細かくにな、何かあれば長門を通じて報告しろ」



そういって、準備を全て済ました東郷はバッグを手に取った



東郷「さぁ俺はもう行く、この部屋に立ち入るのは自由だが、変なものには触るな、いいな?」



吹雪「は、はい!分かりました……あ、あとすいません、先日建造された58ちゃん……はまだ香取さんとの演習をさせていていいのですか?」



東郷「あぁ、それでいい」



そして2人は部屋を出て行った



【51cm砲の解説】

第二次大戦中、世界最大の大きさを誇る大和型1番艦、戦艦大和。2番艦、武蔵が存在した。その両艦に取り付けられた主砲46cm三連装砲はあまりにも強力で、発射直前、甲板には退避サイレンが鳴り響き、もし甲板にいると、発射の衝撃だけで圧死するほどだったという。

しかし、世界最強と謳われる大和であっても、この46cm三連装砲は世界最大の口径主砲ではなかった。

大和型には、実は後継艦が存在した。それは「改大和型戦艦」と「超大和型戦艦」の2種類である。


改大和は「大和型戦艦の装甲が「対46cm砲防御」として厚すぎると判断された結果、大和型の舷側410mm、甲板200mm(最大)に対しそれぞれ400mm、190mmと薄くなる一方、艦底の防御壁は大和型の二重から三重へと強化され艦首と艦尾の装甲も強化されている。(wikiより抜粋)」


超大和型は、大和型戦艦の強化発展型とされ、その主砲には51cm砲を搭載するというとんでもない計画だった


しかし、艦自体の計画は頓挫したものの、51cm砲自体は完成したとされていて、試製51cm砲がアメリカに接収されアメリカ本土に送られているが、その後の消息は不明となっている(アメリカ艦船に船積みされている写真が残されている(wikiより抜粋))


【余談】

「改大和」「超大和」って計画だけでもアホらしいのに、その前には「50万トン戦艦」なんて話しもあったらしいよ、頭おかしいよね☆



dreiundzwanzig 帰還命令2



大将「いやはや……何か大きなことが起きそうですな……」



横田飛行場に到着した東郷を迎えたのは大将自らだった



東郷「……」



航空機のタラップを降りた先で待っていたのは大将だった



大将「長旅ご苦労様です。指定されたホテルは予約しておきました」



東郷「分かった……迎えたくれたところ悪いが、ここからは俺1人で行く……」



大将「そ、そうですか……お気をつけて」



東郷は用意されていた車に乗り込むと、そのままアクセルを上げ走り去っていった



後ろから大将の部下が声をかけて来た



部下「上官、あの方はいったい……階級章は上官より下級のようですが……」



東郷「あの男については余計な詮索はするな、私も詳しい事は言えんし、詳しい事は知らんのだ。いいな」



部下「は、は!」



大将「ここにいる者全てに告ぐ、今見た男は絶対に他言するな。今見た事は全て忘れろ。お前達は何も見ていないし、何も聞いていない。いいな!」



部下「は!」



大将「……」



                                  ~とあるホテル~



ホテルに着いた東郷はフロントで鍵を貰うと、部屋には向かわず、地下のバーへと足を運んだ



東郷「……」



バーテンダー「お客様、お飲み物は?」



東郷「ジントニック……」



バーテンダー「かしこまりました」



バーテンダーが準備をしだすタイミングをある男が声をかけて来た



男「お久しぶりですね」



男はゴルゴの事を知っているのか、背後からではなく、横から声をかけてきた



バーテンダー「お飲み物は?」



男「いや、結構」



東郷「情報が欲しい」



男「何の情報でしょうか」



東郷「海軍の△△ △△という男を知っているか」



男「確か……数日前自殺したとかで 新聞にのってましたね」



東郷「死んだ経緯を調べて欲しい」



男「……他殺だと……?」



東郷「……」



男はそれだけ聞くと、指をこすり合わせるしぐさを見せた



すると、ゴルゴは内ポケットから札束の入った封筒をテーブルに置いた



東郷「期限は1日だ」



男「おまかせを」



それだけ聞くとゴルゴは荷物を手に取り、バーを後にした



バーテンダー「お待たせしました……あれ?」



男「あぁ、俺のだ」



男はバーテンダーからカクテルを貰い、一気に飲みほすとテーブルの封筒を内ポケットに仕舞った



                                    ~翌日、中佐宅~



東郷「……」



ゴルゴは死んだ中佐の自宅へ足を運んでいた



東郷「……」



ゴルゴはインターホンを鳴らした



……数秒待ってみたが出てこない



再度インターホンを押す



……やはり出てこないが、家の中から、カタン、カタンと音がする、かと思ったら今度はダン!ダン!と大きな音が響く、どちらにしろこれだけの音がするのでいるのは間違いない、そう思い、少し待っていると



「……プッ……どちら様でしょうか?」



女性の声が聞こえてきた



東郷「私、△△中佐の、同期の東郷と申します」



「あぁ、少々お待ちくださいませ……プッ……」



しばらくすると、玄関の扉が開き、中から割烹着姿の女性が現れた



中佐妻「これは……足を運んでいただき、ありがとうございます」



とても色白で、目が緑色の銀髪の女性だった



東郷「この度は、誠に御愁傷様でございます……葬儀は昨日執り行われたようで、参加できずに申し訳ありません。何分、外国で勤務しているものですから……」



中佐妻「とんでもございません、このように来て頂けただけでも夫は喜んでいると思います」



東郷「……線香をあげてもよろしいでしょうか?」



中佐妻「えぇ、どうぞ、お上がりください」



玄関に入り、靴を手で脇に置くと、東郷は仏壇のある和室へ案内された



家の中に上がると、魚を料理中だったのか、生の匂いが少しだけ鼻につく



中佐妻「どうぞ、こちらです……」



和室の壁の大きな仏壇には中佐の顔写真が置かれ、香炉にはまだ新しい線香が数本つけられていた



東郷「私の他に誰か……?」



中佐妻「あぁ、はい、先ほど友人だと言う方が来られて、海軍の方ではなかったですけど、なんでもフリーのジャーナリストとかなんとか……」



東郷「そうですか……」



多分あの情報屋だろう



東郷はそれだけ聞くと線香を手に取り、ろうそくで火をつけ香炉に立てると鈴を鳴らして合掌した



中佐妻「……」



東郷「……唐突で申し訳ありませんが、△△中佐の私室を見させていただけないでしょうか」



中佐妻「私室……ですか?」



東郷「はい、私が今回来たのは、線香を上げる事も兼ねて、△△中佐の仕事書類を回収するためなのです、もし、機密書類を自宅に保管していて、他に流れる事になる事はどうしても避けたいので」



中佐妻「……」



東郷「……」



中佐妻「……分かりました、こちらです」



東郷「ありがとうございます」



正座の状態で一礼し、そこから立つと中佐の私室へ案内された



中佐妻「こちらです」



東郷「……」



中佐妻が部屋の扉を開けると、部屋の中は綺麗に片付けられていた



中佐妻「本当はもう少しこの部屋をそのままにしておこうと思ったんですけど、でもいつまで経ってもそんなんじゃ気が滅入っちゃうかも、と思って、今日の朝、少し片付けたんです」



東郷「……」



中佐妻「あ、でも書類などには1つも触っていません。机は引き出しが鍵が掛かってるみたいで私にはどうしようもないのでまだそのままなんです」



机の上だけは、かなりの書類で溢れていた



東郷「分かりました……申し訳ありませんが、ご婦人は部屋を出ていただいてもよろしいでしょうか、機密書類が見られる事は避けたいので」



中佐妻「わ、わかりました」



東郷「御協力、感謝します」



そういうと中佐妻は一礼した後、部屋を出て行った



東郷「……」 



そしてゴルゴは、部屋を物色し始めた



vierundzwanzig 帰還命令3



ゴルゴは中佐の机から散らばっている書類全てに目を通したが、お目当ての物はなかった



書類の中にスマホも混じっていたが、ロックが掛かっていて中が見れない



次に鍵の掛かっている机の引き出しに手をかけ、ピッキングで鍵を開けた



一段目、二段目の引き出しを開けると、官品なのか私品なのか、拳銃が並べられて置かれていた、マニアなのか日本では普通では手に入らない拳銃まであり、拳銃毎の弾の箱も一緒に置かれている


ゴルゴはそれに目もくれず、三段目の引き出しをピッキングをしようとしたところ、三段目に鍵が付いてあらず、暗証番号でロックされているみたいだ



東郷「……」



ゴルゴは先ほどのスマホを手に取り、綺麗に吹いた後、表面のフィルムだけを取った。そしてそのフィルムを暗証番号のボタンに強く押し当てた



東郷「……」



フィルムにくっきりとついた指の油が規則的に並んでいた



ゴルゴはその規則的に並んだ油の場所を見ながら暗証番号を押した



ピー



ガチャン



東郷「……」



引き出しを開けると、中にはノートパソコンが入っていた



ノートパソコンを立ち上げると、再度暗証番号を求められたが、引き出しと同じ番号で開ける事ができた



東郷はノートパソコンの中からメールアプリを開くと、今回御目当ての物を見つけた



何十通と並ぶメールに、今朝、一番新しいメールを開いた



Mr △△ △△

Several days passed, why will not you reply?

(あれから数日経つが、何故返信してくれない?)

If you do not reply by this evening, I forget about this case as much as possible so please do not ask for such a request

(もし今日の夕方までに返信してくれないのなら、今回の件はさっぱり忘れるから、もうこんな頼みはよしてくれ)



ゴルゴはいままでのやりとりのメールを見ながら、返信した



Mr △△ △△

Sorry for the late reply

(返信が遅れてすまない)

There are people who want to match by all means in this matter. You still are in Japan?

(この件の事で、どうしても合わせたい人がいるんだ。まだ日本にいるんだったな?)

Can we meet this evening?

(今日の夜、会えないか?)



そう返信を打つと、数秒後、ゴルゴに返信が帰ってきた



Mr △△

ok

(分かった)

Waiting on Hotel New Otani's Bar

(ニューオータニのバーで待っている)



その文面を見てゴルゴはノートパソコンを引き出しの中に戻した



東郷「……」



ゴルゴは自身のケータイを取り出し、情報屋の男に電話をかけ、今日の夜ホテルで会う事を伝えると、部屋を出た



中佐妻「あの……」



部屋を出ると、中佐の妻が部屋の前で待っていたのか、お茶を持ってきてくれていた



中佐妻「……どうぞ」



東郷「……」



東郷は少し止まった後、コップをつかみお茶の一気に飲んだ



東郷「……ありがとう、部屋には機密書類なるものはできませんでしたので、あとはお好きになさって大丈夫です」



中佐妻「そうですか……」



東郷「……それでは私はこれで……」



ゴルゴは中佐宅をあとにした



                               ~数時間後、ニューオータニ~

(英語で話してるものだと思ってください)


夜、ゴルゴはバーに行くと、カウンターに1人の外国の男が飲んでいた



外国の男「……」



東郷「……」



ゴルゴは少し斜め後ろからその男を見つめてる、すると男がこちらに気づいた



外国の男「……何見ている?」



東郷「……△△だな?」



外国の男「何故俺の名前を知っている」



東郷「△△ならこない……お前を呼んだのは俺だ……」



外国の男「!……あのメール……お前が打ったのか、△△がこないとはどういう事だ」



東郷「死んだ……自殺した……らしい」



外国の男「何!……やはり死んだか……」



東郷「お前に会わせたいと言った男だが」



外国の男「……知ってるぜ、ゴルゴ13ってやつだろ?恐らく……あんただな?」



東郷「……」



外国の男「俺はあんたがどう言う男か知らない、死んだあいつが言うには余計な詮索はしない方がいいと言ってたからな、あいつが言う位なんだ、あんたがどういう男か知らんよ、知っているのは、日本を含め、各国で極秘となっている艦娘達の提督であると言う事」



東郷「……」



外国の男「……あいつからいきなりメールが来たのはびっくりしたよ……久しぶりだと言うのに、いきなり俺のコネを使って51cm砲を貸してくれないか、なんていいだすんだから」



東郷「……」



外国の男「もちろん断った、確かに俺はアメリカの膝元で働いてるが、流石にそんなことが出来る権限なんてないからな」



東郷「……ムダ骨だったようだな……」



外国の男「……だが、いいぜ。貸してやる、というか、あの男から『ゴルゴ13から俺の名前を使えと言われた』なんて言われた時は気が狂ったかと思ったが、この事を上層部に話したら一発でOKだったよ。上司がすっげぇ血相変えて望んでいるものがあるなら協力してやれだってさ」



東郷「……」



外国の男「まぁ、このこともあって、俺はあんたが何かすごい奴なんだと知って、余計に詮索しないことにした……実はもう手配はしてある。あとは電話一本でアメリカ本土からあんたが指揮している艦隊がいる基地に向かって出航する」



東郷「……」



外国の男「……ついでに……あいつから言われたお土産も手配済みだ」



東郷「……ありがとう」



外国の男は自身のショットグラスを一気に飲みほすと、カウンターにお金を置いて携帯を取り出し、振る仕草をしながら帰っていった



東郷「……」



入り口の扉を開いて出て行く外国の男とすれ違うように、今度は情報屋の男が入ってきた



男「……どうも、こんばんは」



東郷「……」



男「いろいろ仕入れてきましたよ~、まずあなたが一番聞きたいであろう死んだ経緯についてですが」



東郷「……」



男「あなたの言う通り、自殺の線は薄いみたいですね。死んだ前日、友人と共に居酒屋で楽しそうに食事をしていたところも、その友人から証言がとれました」



男「そして、職場の上司や部下との関係はかなり良好……流石海軍No3と言われてただけはあります。掌握術に長けてたのでしょう」



男「それで、ここからなんですがね。どうも1つだけ気になる事がありましてね」



東郷「……」



男「海軍の友人に聞き込みをしていたんですが、みんな口を揃えてこういうんです。『それにしても中佐の妻、かなり美人だよな』って」



男「普通に聞けばなんて事ないんですが、私はどうもこの奥さん気になって」



東郷「……」



男「その時、友人の方からコピーですが、中佐宅での飲み会の時に一緒に写した写真を貰いました」



男「ほら、これです。ここ、中佐の後ろに映ってる女性」



ゴルゴは男から写真を渡され、凝視した



男「それで今日の昼頃、中佐宅へお邪魔したんです。」



男「ただ、残念な事に、自分が訪問したときは留守だったみたいで、代わりに別の人が応対してくれました。なんか従姉妹とかなんとかで」



男「仕方がないので、その女性に中佐の妻について聞く事にしたんですが」



マシンガンのように喋る情報屋をシャットアウトするようにゴルゴが口を挟む



東郷「もういい」



男「え?……もういいんですか?」



東郷「あぁ……十分過ぎる位だ……」



ゴルゴはそういうと、内ポケットから札束をとりだし、男に渡し、バーを後にした



男「え、いいんですか!?……ラッキー、ボーナスって奴?って、おっとっと、写真が……」



男は落ちた写真を拾い上げた



男「今日はこの写真を肴に飲むかぁ……へへ、それにしても、本当に美人だよなぁ、いわゆる大和撫子ってやつ?



『髪 の 毛 も 瞳 の 色 も 真 っ 黒 で さ ぁ 』」



fünfundzwanzig 帰還命令 終



ゴルゴはその日の夜、バーを後にして住宅街を1人歩いていた



東郷「……」



ゴルゴが情報屋の男から写真を見たときから、疑問が全て解け、その答え合わせをするために



東郷(あの時……家を訪れたとき……)



『家の中から、カタン、カタンと音がする、かと思ったら今度はダン!ダン!と大きな音が響く』



東郷(カタンという音は指……ダン!という音は腕か足……)



『しばらくすると、玄関の扉が開き、中から割烹着姿の女性が現れた』



東郷(あの姿は……料理ではなく……死体の後処理……)



『家の中に上がると、魚を料理中だったのか、生の匂いが少しだけ鼻につく』



東郷(あの匂いは魚ではなく、死んだ人間の腐敗臭……)



東郷(俺は家の中に居ながらにして、すぐそこでは死んだ中佐の妻が解体されていた……)



東郷(……ギルティ……!)



東郷は中佐宅へ着いた



ゴルゴはジャケットからリボルバーとサイレンサーを取り出し、装着して中佐宅の裏口へと回った



東郷(……明かりがついていない……いや、ほのかに明かりが見える……)



中佐宅は周りの住宅よりは一層に明かりが乏しく、人の気配がまるでないようだった



裏口の扉を開け、中を確認すると台所に繋がってるようだったが、開けた瞬間、昼に訪れたよりは確かな腐敗臭が漂った



音を上げずに慎重に中に入り、ゆっくりと警戒しながら仏壇がある居間へと進むと、いきなり大きな声が響いた



???「くそっ!」



ゴルゴは拳銃を声のした方向へ向けると、そこは中佐の部屋があり、扉がかすかに開いていた。そこから光が漏れているようだ



東郷「……」



ゴルゴはゆっくりとその部屋に近づき、扉の蝶番の隙間から部屋を覗くと、そこには昼間の女性が部屋を物色していた、しかし、昼間ほどの清楚はなく、荒々しかった



中佐妻?「くそ……分かりやしない……ここの引き出しにあるはずだ……昼間のあの男もここの番号を……」



東郷「動くな」



中佐妻?「!?」



ゴルゴの声に反応し、引き出しに下げていた目線をゴルゴへと向ける



中佐妻?「……あら、あなたは……いや、こんな喋り方ももういいか……どうせ聞こえてたんでしょう?」



東郷「……お前が中佐を殺した犯人だな?そして中佐の」



中佐妻?「妻を殺したのも私よ、御名答……」



東郷「……」



中佐妻、もとい、女は中腰の体勢から立ち上がった



中佐妻?「よく分かったわね?どうして私が犯人だって?」



東郷「……今日の昼、俺がこの家に来る前に、ジャーナリストが来たと言ったな……」



中佐妻?「んー……なるほど、仲間か」



東郷「……何をしていた」



中佐妻?「……あなた……殺したの中佐の機密、手に入れたんでしょ?」



東郷「……」



中佐妻?「それ、私も必要なのよねー……教えてよ、どんなものだったのか……そしたら、特別に生かしてあげるわ」



東郷「無理だな……」



中佐妻?「やめときなって……どうあがいたって、私には勝てないよ……貴様等人間にはさ!!」



女は机を手をかけた



その刹那、ゴルゴは女に対して眉間に銃弾を1発撃ちぬいた



中佐妻?「……無理だって!」



女の目が緑色から赤くなり、炎のように揺らめいている。そしてそのまま机を扉の前に立っているゴルゴへと投げた



東郷(!……この特徴は……!)



横へジャンプし、机を避けたゴルゴに、そのまま女がゴルゴへと向かってきた



中佐妻?「拳銃なんて痛くもないんだよ!」



東郷「……くっ!」



『大将「プロの格闘家が素手で戦ってもまず勝ち目はありません」』



東郷「……!」



ゴルゴは銃弾を2発発砲した



中佐妻?「が?!」



発砲した弾は2発とも女の両眼に直撃し、女はひるんだ



その隙に、ゴルゴは女を思い切り前蹴りで蹴り飛ばし、間合いを大きく開いた



中佐妻?「っく……」



東郷「貴様……深海棲艦だな……?」