第22話 コードトーカー

ミラー「ボス。遂に俺たちの部隊が、ある重要参考人の居場所を突き止めた」

スネーク「重要参考人？」

ミラー「あぁ。深海棲艦並びに艦娘について知る人物だ。 ”コードトーカー” と呼ばれている老人だそうだ」

スネーク「コードトーカー……。その老人はどこに？」

ミラー「太平洋にあるハワイ島だ」

スネーク「ハワイ島？ バカンスを楽しんでる唯の老人と勘違いしていなんて事は無いだろうな」

ミラー「そんなわけ無いだろう。諜報班のスタッフが命懸けで手に入れた情報だ」

スネーク「それで？ その老人を回収しろと？」

ミラー「そうだ。何故深海棲艦が現れたのか。正体は何物か。ようやくわかる時が来た」

スネーク「よし、ヘリを出せ」

〜〜〜

太平洋 ハワイ島近海上空

ミラー《深海棲艦についての情報を持っている老人 ”コードトーカー” を回収して欲しい。その老人を回収出来れば深海棲艦、ひいてはサイファーに対する力を得られるだろう》

パイロット《目的地に到着！ どうかお気をつけて、ボス！！》

ミラー《そこから東に向かうと大きな豪邸がある。そこに軟禁されていると思われる。注意しろ、警備は厳重だ》

スネーク「わかった。………ん？」

ミラー《どうした？》

スネーク「霧だ………」

ミラー《ボス、警戒してくれ。奴らが来る！！》

草が揺れる音、足音。そういった音がここ一帯に響く。それは、誰かがこの場所にいることを示す。何者か？ 言うまでもなく深海棲艦である。艦載機のモーター音が近づいている。それはこの近辺に、空母がいることを示しているに他ならない。

スネーク「空母だ………」

オセロット《そいつらは空母ヲ級だな。深海棲艦の中でごく一般的な空母だ。個体の戦闘力はそれほど高く無いが、辺りを徘徊する艦載機が厄介だ。機銃を撃たれたら、生身の人間はひとたまりもないぞ！！》

ミラー《いいか？ 何としてもやり過ごすんだ》

幸いにも辺りには林が広がっている。身を隠すには最適だが、それは敵にも同じことが言える。空母が大破してしまえば、艦載機運用に支障が出る。空母本体が身を潜め、艦載機を徘徊させる。ダイヤモンド・ドッグズで用いる戦法の一つだ。

深海棲艦だけではこの様な戦い方はしない。スネークは確信する。サイファー。スカルフェイスが指揮している艦隊であると。

〜〜〜

匍匐で林を進んでいくと、林を覆っていた霧がいつの間にか晴れていた。連中も諦めたのだろう。

ミラー《よし！ 霧を抜けたな。奴らは撒いたようだ。目的地に向かってくれ》

スネーク「まったく、随分と無茶な事をさせる」

オセロット《良く見つからずに済んだな。流石だ、ボス》

スネーク「豪邸ってのはアレの事か？」

ミラー《そうだ。そこの何処かに囚われているはずだ》

オセロット《連中の兵装、何処かしらの民間警備会社のだな。かと言って、気を抜けばやられるぞ！》

スネーク「わかってる。手加減はしない」

スネークの目の前には巨大な豪邸が佇んでいる。この島に観光で来ることはあっても、住み続ける人間は恐らくいないだろう。勢いは衰えたといえ、未だに深海棲艦の脅威は続いている。こんな豪邸を建てて住むのは、みすみす資産をドブに捨てるも同じだ。恐らく戦いが起こる前に建てられたものなのだろう。

〜〜〜

ハワイ島 とある豪邸 地下室

建物の地下に進むと辺りは暗くなり、蝋燭が立てられていた。蝋燭が無ければ何も見えない。それほどに暗い空間であった。

スネーク「ここか…………？」

一箇所、雰囲気の違う扉を見つけたスネークは、扉を開けてみることにした。床にも壁にも蝋燭が立てられており、その部屋の真ん中に一人の老人が座っているのが見えた。

扉を開けた事により、外からの風が部屋に吹き込み、蝋燭の火が消える。閉め切っていたのは炎が消えるからだろうか？

老人「待っておったぞ。お主が蛇 (ハブ) 、いや鬼 (ウニ) か………」

ミラー《そいつだ。コードトーカーと呼ばれている老人だ》

スネーク「あんたの力を貸して欲しい。俺たちと来てくれないか？」

コードトーカー「…………」

スネーク「日本人の様だが、あんた生まれはどこだ？」

コードトーカー「………まずは座れ。お前も、死ぬ事になるかもしれんぞ？」

スネーク「なに！？」

コードトーカー「座れ」

老人に言われるがまま、スネークはその場に腰を下ろす。すると蝋燭の炎によるものだろうか、少し落ち着いてきた。戦場に立っている緊張が解れ、疲れが一気に出てくる。

コードトーカー「良いか？ 何も考えずに炎を見続けるのだ。今はまず、お前の身に降りかかるモノを取り除く。話はそれからだ」

老人はそう言うと、香を焚いた。「今は心を落ち着かせよ」と言われたので、スネークは言われるがままにしていた。側からみれば怪しい宗教団体の会合などに見えるが、老人はスネークに対し色々と言葉を掛けていく。

時間が経つにつれて、気分が楽になったという。自分はアロマセラピーを受けに来た訳でないと老人に伝えると、乾いた口を重く開けていく。

コードトーカー「今お前に施したのは、深海棲艦にならぬようにする為のものだ」

スネーク「……深海棲艦について、話を聞きたい。あんたなら奴らの事を知っていると、仲間が教えてくれた」

コードトーカー「……深海棲艦の正体は、『感情が具現化したもの』だ。ヒトが持つ感情。その中でも、憎悪、妬み、怒りといった『負の感情』が『怨念』となり、それが形を持ったものだ」

スネーク「目に見えない感情が、奴らの正体だと？」

コードトーカー「信用できないか？ だが、お前も見たはずだ。憎悪によって深海棲艦へとなった物を」

《 髑髏顔「お前の姉妹は私が沈めた。奴らを使ってな。どうだ？ 私が憎いか？」 》

《 響「許さない！ 絶対に許さない！！！！」》

コードトーカー「深海棲艦に成らぬ為には、負の感情を抑える事だ。お前に施したのは、感情の隆起を抑える香を焚き、お前の中にある感情を抑える働きを与える。だが、効果は一時的なものだ」

この老人は俺たちにとって必要な人材であると。深海棲艦だけでなく、サイファーに対抗できる矛になるであろうとスネークは確信する。そして、老人に手を差し伸べる。

スネーク「…………俺と一緒に来て欲しい」

コードトーカー「私は奴らを研究していくにつれ、自身が行った研究を恐れた。奴らの正体を知った事で、自らの身が危うくなると。だからこの研究を封じた。だが…………」

コードトーカー「あの男が封を解き、深海棲艦はあの男に利用された」

スネーク「スカルフェイスか…………」

コードトーカー「逆らえば、私の故郷はまたかつての様に蹂躙される。私の研究で故郷を救うつもりが、新たな脅威に脅かされてようとしている。だが………」

コードトーカー「お前の訪問も、彼らの命(マブイ) を救うようにと言う神 (ウカミ) の導きかもしれん」

老人はそう言って、手を差し伸べる。スネークはその手を掴み、老人を背負う様にする。

スネーク「…………よし、行くぞ」

〜〜〜

スネーク「カズ！ ヘリを寄越してくれ」

ミラー《了解》

コードトーカー「流石、噂に聞いたビッグボスだ。実に素早い動きだな」

スネーク「あんた、どこの生まれだ？」

コードトーカー「日本の西南部にある島。日本の最西端の県である沖縄だ。私はかつて、海軍に在籍していた。沖縄での惨劇を生き延び、東京の空襲を逃れ、大戦を生き延びたが、私の故郷はアメリカに占領された」

スネーク「沖縄生まれだったのか……。道理でその、訛りと言うか……」

コードトーカー「未だに、癖というものは抜けぬものだ。その後私は隠居生活を送っていたが、ある時日本の情勢が一気に変わっていった」

スネーク「………深海棲艦か？」

コードトーカー「そうだ。アメリカが日本に沖縄を変換したのも同時期だ。未知の存在に、流石の米国も恐れをなした。沖縄が戻ってきたと喜ぶ者もいたが、真相を知っている者からすれば向こうが所有を放棄したに過ぎん。腫れ物の様にな」

パイロット《こちらピークォード、ランディングゾーンに到着！！》

スネーク「話は乗ってから聞かせてもらうぞ？」

ミラー《ターゲットをヘリに乗せろ》

ーーMission Info Updatedーー

ーーMission Completedーー

ヘリ機内

スネーク「深海棲艦にならない様にする方法はないのか？」

コードトーカー「…………防ぐことはできるが完全ではない。人間の負の感情が深海に潜む邪気と共鳴する事で深海棲艦へと姿を変えるのだ」

コードトーカー「最良の対策は海から離れる事だが、それが出来なければ感情の隆起を抑える事だ。むやみやたらに感情を出してはならぬ」

スネーク「俺の下にいる艦娘が深海棲艦になったが、姿を取り戻した。それについて何か知っている事はないか？」

コードトーカー「…………それはお前だけでなく、仲間にも話してやるべきだろう。ところで、アメリカから発っている船団を知っておるか！？」

スネーク「それなら、俺たちが抑えたことがある。確か中身は、鉄鉱石を主に含んだ容器と、イエローケーキが収められた密閉容器………」

コードトーカー「その中身は………」

パイロット《機体前方に霧が発生！！》

コードトーカー「来たか…………」

ーーTo Be Continuedーー

第23話 極限感情寄生体

ヘリ機内

パイロット《機体前方に霧が発生！！》

コードトーカー「来たか…………」

スネーク「回避しろ」

パイロット《駄目です！ 範囲がここ一帯に広がっています！！》

スネーク「速度落として適宜対応しろ！」

パイロット《了解。速度を落として航行します》

スネーク「ベルトを締めさせてもらうぞ」

コードトーカー「よいか！ 何も考えてはならん！！」

スネーク「何！？」

パイロット《前方に敵艦載機確認！ 距離およそ1000M！！》

スネーク「回避しろ！！」

パイロット《間に合いません！！ 衝突します！！！！》

スネーク「身を屈めろ！！」

とっさの出来事であるが、対ショック姿勢をとった事で、敵艦載機の衝突によるショックで身体を強打した者はいなかったようだ。だが………

パイロット《駆動系がやられました！！ 制御できません！！》

プロペラの回転が徐々に遅くなる。このままではいずれ回転が止まり、急降下することとなるだろう。

スネーク「墜ちるぞ！！ 何かに捕まれ！！！」

次の瞬間、ヘリは高度を下げていく。身体に強烈なGが掛かり、身体が宙に浮く。機体が地面に落下する爆音を最後に、スネークの意識はなくなってしまった。

〜〜〜

ーース……こ……かーー

ーース………スネーク！ーー

ノイズ混じりの声が機内に響く。声の様子から、長い間呼びかけていたのだろう。

ミラー《ボス！ 聞こえるか！？》

スネーク「あぁ………大丈夫だ」

ミラー《ターゲットは？》

スネークは老人の首筋に手を当てる。脈はあるようだ。呼吸も問題ないとミラーに伝える。そしてどこに堕ちたのかを尋ねた。

ミラー《あんたのヘリを最後に確認したのは、サモアと呼ばれる国だ。状況はどうだ？》

スネーク「少し待ってくれ。………っと」

スネークはヘリから身体を乗り出し、外へと出る。霧に覆われたままで視界は悪いが、ヘリの状態は確認できた。

スネーク「………派手にやられたな。ローター部分がイカれてる」

ミラー《ボス。あんたの周りが霧で囲まれた。追加のヘリが出せない》

スネークは老人をヘリから降ろそうとした。いつ機内の物が落ちるかもわからないからだ。ヘリから身体を下ろしていると、意識を取り戻したようだ。そして切羽詰まる口調で話す。

コードトーカー「急げ………。奴らが来る………！！」

その言葉と同時に、身体が揺れる。いや、実際は地面が、この島自体が揺れているのだ。

スネーク「うおっ！！」

コードトーカー「大地の揺れ………まずいぞ！！」

ミラー《ボス！ 深海棲艦の反応だ！！》

スネーク「分析は？」

ミラー《少し待ってくれ。いつもと違う反応だ。俺たちが今まで邂逅したことのない種類だ》

ミラーからの無線の後、すぐにオセロットからの無線が入った。

オセロット《ボス、あんたの近くにいるのは ”港湾棲姫" と呼ばれる深海棲艦だ。陸上施設である軍港が深海棲艦になったものだが、あんたが見ているのはそうじゃない。あんたの居るその島自体が深海棲艦として姿を現している！！》

島から少し離れた沖合に、その姿を確認できた。今まで見てきた深海棲艦とは大きさがケタ違いである。なるほど、 "陸上施設が深海棲艦になった" というだけのことはある。

コードトーカー「これ程のものが生まれるとは………」

スネーク「カズ！ 艦隊をこっちに寄越せ！！」

ミラー《今残っているのは………いや、警備や遠征に当てた艦隊がある。そいつらを回そう。こちらからもなるべく早く支援を行えるようにする！》

スネーク「わかった」

コードトーカー「………囲まれたぞ」

スネーク「何！？」

コードトーカー「………奴らを、侮るな。寿命を縮めることになるぞ」

スネーク「くっ………オセロット！！ ありっけの武器をよこせ」

オセロット《了解！！ 》

《Supply Drop》

ミラー《来るぞ！！！》

スネーク武器を片手に、深海棲艦へと銃を放つ。的確な狙いで、一隻、二隻と仕留めていく。だが、スネーク達を包囲する深海棲艦の数が減ることは無かった。

港湾棲姫「ナニモ……ナニモ……ワカッテイナイ…………」

不気味な声で発した"何もわかっていない" とはどういう意味だろうか。いや、考えようにも敵の攻撃が激しく、考えることに意識を割く猶予はない。

叢雲《ボス！ 待たせたわ！！》

スネーク「陸の方にも湧いてるんだが、今は港湾棲姫を潰してくれ！」

叢雲《……わかったわ。生憎、駆逐艦だけの編成なんだけどやってみるわ。陸に上がっているのは、恐らく港湾棲姫が呼び出したものかしらね。なるべく早く沈めるわ》

スネーク「あぁ。頼むぞ！」

港湾棲姫のいる方を見ると、爆発が見える。早速はじめたようだ。まずは港湾棲姫を潰してもらわないことには終わらない。

〜〜〜

スネーク「おい………そろそろ、押されてきてるぞ………ぐっ！！」

深海棲艦の放った砲弾が、スネークの近くで爆発する。幸いにも直撃は免れたが、爆風で身体が吹き飛ばされた。

ミラー《ボス！！》

スネーク「おい！ まだか！？」

叢雲《少し手こずってるわ。………少し、不味いかも………》

スネーク「カズ！ そっちから送った艦隊は？」

ミラー《たった今、フィジー共和国を超えた。もうすぐだ！！！》

その直後、再びスネークの近くで爆発が起こる。先ほどと同じように直撃は免れたが、これが後に大きな悲劇を誘うこととなる。

スネーク「くそっ……。弾詰まりだ」

スネークが引き金を引いた瞬間に爆発が起きた。手にしていたのはアサルトライフルであり、薬莢は自動的に排出されるものだ。しかし運悪く、排出すると同時に爆発に巻き込まれたため、熱によって溶けた薬莢が、排莢口にペットリと張り付いてしまった。

オセロット《残りの手持ちは？》

スネーク「歩兵用ロケットランチャーが3発。ハンドガンが………残り40発」

オセロット《予備の弾倉をおくる。持ち堪えろ！！》

通信終了直後、再び大地が揺れる。大地の揺れに共鳴し、海が暴れ、波が島を襲わんとする。島を飲み込むほどの威力ではなかったが、この波がさらなる悲劇を呼ぶこととなった。

ミラー《ボス！！ 深海棲艦が接近している。邂逅まで、距離30。南南東から来るぞ！！！》

ミラーがさした方向をみると、数々の深海棲艦が海から這い上がってくる。恐らく、先ほどの揺れは深海棲艦を生み出すもので、あの津波は奴らが引き起こしたものだろう。生きる物を深海へと誘おうとする禍々しさに、人は恐れ慄くのかもしれない。港湾棲姫の発した、 ”何もわかっていない” という言葉の意味を、ここにきてスネークは理解したのだ。

”敵の狙いは老人ではなく、自分なのだ” と。陸に上がっている深海棲艦はコードトーカーでなく、自分に狙いを定めている。簡単に殺せる老人に目もくれず襲ってくる連中を、厄介な者から片付ける ”つもり” なのだと思っていたのだ。

そして、これもまたスカルフェイス、サイファーの企みであったのだと悟る。 そんな考えをしているうちに、深海棲艦自分に砲口を向けている。間髪入れずに撃ってきたが、持ち前の反射神経で回避する。

だが、この ”考える” という行動に後ろ髪を引かれ、反応が少し遅れてしまった。結果、いままでより近い距離で爆発が起こり、体が勢いよく吹き飛ばされ、身体を強打する。

目が回る。視界がぼやける。中でも今まで体験したことのない、色の判別ができないという現象。様々な異常が体を襲う。さらに致命的なのは、右手が動かなくなってしまったのだ。動かせば肩に激痛がはしり、腕に力が入らない。

そんなスネークに構わず、深海棲艦は距離を縮めてくる。必死に抵抗を続けるも、身体は満足に動かない。肩が、膝が、全身のあらゆる場所が悲鳴を上げる。

自身の死を悟ったその時、海上から轟音が鳴り響く。

叢雲《っ……！！ 砲撃！？》

それは、後方から砲撃音だった。敵の奇襲かと警戒するが、何のことはない。金剛率いる味方の援軍であった。

戦艦の火力により、港湾棲姫は海へと沈んでゆく。それに伴い、空を覆う霧が晴れ、陸の深海棲艦の活動も沈静化し、海へと引き返す。

スネーク「…………やったか」

ミラー《ボス！！ 無事か！？》

スネーク「あぁ……。なんとかな」

ミラー《ターゲットは？》

スネーク「そっちも問題ない。っ……………」

ミラー《どうした！？》

スネーク「…………腕の骨がやられただけだ。ヘリを2機飛ばしてくれないか？ 奴らもヘリで帰投させてやれ」

ミラー《……了解。ヘリを送ろう。それと、オセロットがコードトーカーと話がしたいと。同行させて構わないか？》

スネーク「あぁ。構わんが？」

オセロット《済まないな、ボス。色々と聞きたいことがあってな》

ーー数分後ーー

オセロット《ボス！！》

スネーク「おいおい……、いつの間にこんなものを……」

オセロットが乗ってきたヘリは、いつもの物ではなく、CH-53と呼ばれる大型輸送ヘリであった。アメリカ海兵隊の強襲作戦の為に作られた物だが、海兵隊のみならず、アメリカ海軍などにも愛用されている重量物輸送ヘリコプターである。

オセロット《派遣していたスタッフが鹵獲した物だ。全員乗せても問題ない。さぁ、乗ってくれ！》

珊瑚海上空 ヘリ機内

オセロット「ご老人。あんたは深海棲艦について、数多くの情報を持っていると聞いた。いま一度、ここにいる全員が、あんたの教えを請いたいと思っている」

コードトーカー「具体的に話せば深海棲艦の正体は、深海を彷徨う邪気 "怨念” だ。その怨念が自身で姿を持ったものを、我々は深海棲艦と呼ぶ」

コードトーカー「だがここ数年は、怨念が負の感情を持った者に共鳴し、その者に取り憑いた物が多い。いや、寄生と言うべきか。そなたらもあの霧を見ただろう。あれこそ、深海を彷徨う邪気だ」

コードトーカー「邪気は意識を乗っ取り、宿主の身体に甚大な損壊をもたらす」

オセロット「巷では、深海棲艦になるのは艦娘と言われているが、人間はどうなんだ？」

コードトーカー「その話は、半分が正解だ。人間、艦娘、どちらも深海棲艦になりうる存在だ。スカルフェイスはそれを………」

オセロット「………リンガ泊地で行われていた人身売買は、まさか！？」

コードトーカー「そうだ。だが、人間によって生まれる深海棲艦はごく僅か。仮に生まれたとしてもひ弱な個体しか生まれる事はない。それに、人間より艦娘の方が深海棲艦となる確率が高く、最も危険な存在となる」

叢雲「どういうこと？ 深海棲艦に対峙できる私たちの方が危険だっていうの？」

コードトーカー「………人間は、生まれながらに負の感情を持っている。それに意識を委ねる事も、抑えることもできる。深海棲艦になるのは感情が爆発し、爆発した感情が乗っ取られる事により姿を変える。人間は、感情を抑制する力がある為、確率的には艦娘よりかは低い」

コードトーカー「だが艦娘は違う。生まれながらにして持つのは潔白だ。負の感情を持って生まれる事がない艦娘は、1度でも負の感情を埋め込まれればなす術はない。白紙に墨を落とせば墨は落ちる事はない。それと同じ事なのだ。純真無垢ほど、恐ろしいものはない」

スネーク「あんたがさっき言いかけていた、船団の積荷は何なんだ？」

コードトーカー「積荷はウランで間違いないのだな？」

オセロット「あぁ。全員が確認した。長距離弾道ミサイルに積むほどの量ではないがな」

コードトーカー「……スカルフェイスは、ウランを深海棲艦の武装に組み込もうとしているのだ。世界で確認された深海棲艦に艦砲を撃たせれば、核を散布させるも同じだ」

スネーク「オセロット、確か深海棲艦の武装は、艦娘の艤装と互換性があると言ったな？」

オセロット「あ、あぁ。だが、艦娘の艤装が深海棲艦も扱えるというだけで、艦娘が深海棲艦の物を扱えるかどうかはわからない。………そうか、だからエメリッヒが必要だった！！」

ミラー《スカルフェイスからすれば、サラマンダーはただの見掛け倒し、本命はそっちだったのか！！》

オセロット「深海棲艦は、スカルフェイスには攻撃しない。奴が俺たちの真似事をすれば、スカルフェイスの独占マーケットになる。核の脅威が薄まり、米ソの所有する核の抑止力も無いに等しい」

金剛「それって、どういうことデスか？」

スネーク「かいつまんで言えば、深海棲艦と、スカルフェイスを火種にした第三次大戦になり兼ねないということだ」

夕立「うーん、夕立にはちょっとわかんないっぽい……」

叢雲「どうして深海棲艦はあの男に付き従うの？ 深海棲艦の狙いは何なのよ？」

コードトーカー「深海棲艦の行動は、ある意思によって突き動かされる。何かわかるか？」

金剛「………嫉妬デスか？」

コードトーカー「あながち間違っていないな。正解は、 ”報復” だ」

叢雲「あいつらの、”許せない” って言葉。確かに、復讐の様にも取れるわね」

コードトーカー「深海棲艦は強い報復心によって突き動かされる存在だ。あの男は、報復心の塊だ。あの男の報復心に呼応され、深海棲艦は奴に付き従うのだ」

オセロット「1度深海棲艦となったものが、再び元の姿に戻る事はあり得るのか？」

コードトーカー「……そうか。もうそこまで知ってしまったのか。自身の目で見たのだろう？ であれば何も言う事はない」

オセロット「何故、元の姿に戻る？」

コードトーカー「あくまで推測の域だが、怨念が精神を蝕むまでに猶予があるのだろう。仮にこれを『魂の浸食』と呼ぶ事にしよう。魂の侵食が完全に終わるまでに何かしらのトリガーがあれば、元の姿に戻す事も可能かもしれん」

オセロット「ご老体にも知らない事が？」

コードトーカー「その研究は封をした。二度と世に出る事のない様にな。おいそれと、広言したくは無いのだよ」

第23話 極限感情寄生体 完

第23.5話 改造技術

ラバウル基地

ミラー「スネーク。コードトーカーから、ある提案が届いている」

スネーク「何だ？ 」

ミラー「何でも、俺たちの元にいる艦娘はかなりの練度を積んでいるらしい。練度を積めば ”改造” を施す事によって、さらなる能力の上昇に繋がるらしい。中でも、改造を超えた改造 ”改二” を行える者もいるらしい」

スネーク「ほう。なぜ今になってそんな事が？」

ミラー「今まで詳しく話さなかったが、ここラバウル基地には妖精が居るものの、能力は高くない。実際のところ、日本でも妖精の数が減っているんだ」

スネーク「つまり、優秀な妖精が見つかったと？」

ミラー「コードトーカーが隠し持っていたようだ。ここで話を聞いているうちに、妖精自身が顔を出してきた。すると、ぜひ艦娘の改造をさせて欲しいと」

スネーク「あの爺さんの提案というより、妖精の提案だろう？」

ミラー「そうだな。まぁ爺さんの後押しもあってこそ、今あんたに相談している訳なんだが………。どうだ？ やってみるか？」

スネーク「いいだろう。任せたぞ」

ミラー「了解だ」

〜〜〜

ーー数時間後ーー

ミラー「ボス、所属する全艦娘の改造が終わった」

スネーク「そうか。どうだ結果は？」

ミラー「改二は見違えるぞ。改は………まぁ、能力は向上しているな」

スネーク「ほう。その ”改二” とやらは、誰が行った？」

ミラー「駆逐艦は叢雲、吹雪、睦月と夕立の4隻。戦艦は金剛型全員だ。また、翔鶴についてだが、改二の見込みはあるものの現状では不可能と断定された」

スネーク「何かあるのか？」

ミラー「あぁ。何でも ”試製甲板カタパルト” と ”改修設計図” と呼ばれるものが必要らしい」

コードトーカー「何か、困りごとか？」

ミラー「爺さん。あんたが提案した改造についてだが、翔鶴を改二へと改造するには特別な物が必要らしい」

コードトーカー「そうかそうか。それは改修設計図であろう？」

ミラー「それと試製甲板カタパルトな」

コードトーカー「そうであれば、私が用意しよう。そうだ、あの博士を貸してもらえぬか？」

スネーク「エメリッヒのことか？ まぁ、構わんが」

〜〜〜

ーー数時間後ーー

コードトーカー「待たせたな。ほれ、試製甲板カタパルトだ」

ミラー「爺さん、あんたボケてるのか？ 改修設計図も必要だと言っただろう！」

コードトーカー「あんな物は必要ない。私があの代わりになる」

スネーク「……？」⊃アナライザー⊂

Code Talker

研究S++ 医療A++

スキル 艦隊工廠技術

研究開発班に所属させると、艦娘の修理時間を短縮。改造時に資源の消費を抑え、改修設計図を消費しない。

スネーク「……………」

ミラー「あんた、カタパルトはまさか…………」

コードトーカー「それの設計図を私が所有している。あの博士に渡して造らせただけだ」

ーー全提督涙目のご都合主義誕生の瞬間であるーー

スネーク「……………」

コードトーカー「どうした？」

スネーク「いや、何でもない」

ミラー「じゃあ、これを使って改造させて良いんだな？」

コードトーカー「私も立ち会わせてもらうぞ。妖精だけでは改造できんからな」

スネーク「 (もう、お前がやれよ………) 」

ーーさらに数時間後ーー

ミラー「ボス、翔鶴の改造が終わった」

スネーク 「そうか……」

コードトーカー「翔鶴の艤装は、他の艦娘と少々異なる点があったぞ」

スネーク「どういうことだ？」

コードトーカー「今回の改造は改二への改造だが、翔鶴はコンバート改装が可能な艤装であった」

スネーク「コンバート改装？」

コードトーカー「本来、改造を行ってしまえばそこで改造は打ち止めだ。しかし、翔鶴の改造は改二である正規空母から自由なタイミングで装甲空母への改造が可能となる」

ミラー「つまり、あんたの指示があれば改造によって正規空母、装甲空母のどちらでも運用可能ということだ」

コードトーカー「ただ、改造には同様に資源を消費するという事は忘れるでないぞ」

スネーク「…………」

ミラー「まぁ、とりあえず全員を集めておいた。顔を出してやってくれ」

〜〜〜

スネーク「ここか？」

叢雲「あら、ボス。やっと来たのね」

スネーク「…………お前ら、随分と見違えたな」

夕立「もう何にも負けないっぽい！！」

大井「すぐにでも魚雷撃ちたい気分ですよ？」

スネーク「ほう。なら、新たなお前達の実力を図る為に演習を行ってもらおう。いいな、カズ？」

ミラー「了解だ。編成は追って伝える」

一同「了解！！！」

ーー数時間後ーー

スネーク「能力が上昇するというのは本当のようだな。明らかに強くなってる」

ミラー「そうだな。こちらとしても、扱いやすくなる」

スネーク「ところで、サイファーの動きは？」

ミラー「まだ確認できていない。まぁ、全員が強くなっているし、多少の無茶はしてもらう事になるな」

第23.5話 改造技術 完

第24話 惨劇の生存者 その3

ラバウル基地 司令部

大井「失礼します」

ミラー「来たか。早速だが、あんたに二つ知らせたい事がある。良い報せと、良くも悪い報せ、どちらを先に聞く？」

大井「さっさと済ませてもらって良いですか？ 私これか色々と忙しいので」

スネーク「いいから、どちらか選べ」

大井「………じゃあ、悪い方で」

ミラー「わかった。じつは先程、インド洋において深海棲艦の存在が確認された。インド洋に出現するケースは稀だ」

大井「それだけ？ もう一つの方はなんですか？」

ミラー「あぁ。それで、良くも悪い報せなんだが……、この写真を見て欲しい。この写真に写っているのが、今回発見された深海棲艦だ」

大井「…………これって！！」

スネーク「間違いないな？」

大井「えぇ。北上さんよ………。これ………」

ミラー「あの爺さんの考えに則るなら、こいつを元に戻すにはお前の力を借りる事になる」

大井「…………」

ミラー「だが、元の姿に戻る確証もない。お前はこいつに武器を向ける覚悟はあるか？ その覚悟がなければ、今回はここに残れ」

大井「っ………」

ミラー「元に戻るかどうかに関わらず、奴とは一戦交える事になる」

大井「……やりますよ。連れて行ってください」

ミラー「………わかった。すぐに手配する」

〜〜〜

インド洋 アラビア海上空

ヘリ機内

ミラー《今回の任務は、ここインド洋で発見された深海棲艦の排除だ。大井の発言通り、その深海棲艦はかつて俺たちの仲間だった北上に酷似している》

スネーク「優先は保護で良いのか？」

ミラー《そうだな。だが、止む終えない場合は沈める事になる》

スネーク「そうならない事を祈るがな」

・・・・・・

大井「 (あの深海棲艦が北上さんだったとして、私はどうすれば良いの？) 」

大井「 (私にとって、北上さんは大切な人。でも…………) 」

大井「 (でも、ボスも同じくらい、大切な人。私は、どっちをとればいいの？) 」

スネーク《…い……》

大井「 (北上さんと歩むか、ボスと歩むか………。私は………) 」

スネーク《おい、大井！ 》

大井「なっ、なんですか！？」

スネーク《見つかったか？》

大井「ま、まだですよ！」

翔鶴「もう少し、索敵範囲を広げます」

スネーク《こっちでも、あいつを使って調べているんだがなぁ……》

空母棲鬼《………》

翔鶴「大丈夫なのですか？ 危害を加えないとはいえ、仮にも深海棲艦ですよ？」

スネーク《……何回も聞かされる身にもなってみろってんだ》ﾎﾞｿｯ

翔鶴「何か仰いましたか？」

スネーク《いや？ 何も言ってない》

空母棲姫《…………》

スネーク《おぉ…こいつが本気になった》

叢雲「その深海棲艦、一体どういうことなの？ 姿を変えることができるなんて……」

スネーク《さあな》

IDROID《Our troop here target confirmed》

スネーク《……見つけたか》

翔鶴「わ、私じゃないですよ？」

叢雲「えっ！？ じゃあ」

スネーク《こいつだろ？ 全くたいした腕だ》

空母棲鬼《………》

叢雲「…………」

スネーク《そら、向かうぞ》

パイロット《目的地に向かいます》

大井「え、えぇ………こちらも向かいます」

〜〜〜

北上？ 「…………」

叢雲「ホントに見つけてた………」

長門「だが、敵艦隊の数も多い。どうするか……」

翔鶴「敵に気付かれました！！！！」

スネーク《一先ず、敵艦隊を沈めて、目標の動きを止める！》

叢雲「なら、指示を！」

スネーク《翔鶴は後方で有りっ丈艦爆を飛ばせ！》

翔鶴「了解です！」

スネーク《叢雲、夕立、吹雪は翔鶴の援護を》

叢雲・夕立・吹雪「了解！」

スネーク《そして長門は敵艦隊を沈めろ！！ 間違っても奴に当てるなよ？》

長門「了解した！」

大井「ボス、私は？」

スネーク《お前は中軍で待機だ。覚悟を決めてから長門と合流しろ》

大井「………ありがとう、ございます」

スネーク《行け！！》

・・・・・・

大井「 (覚悟なんて、最初から決まっていたわ) 」

大井「 (私は、どちらも捨てない！ 北上さんを連れて、私たちの家に帰るのよ！！) 」

夕立「っ！！ 大井さん、直上！！！」

大井「えっ！？」

大井「 (うそ……此処で、沈むの？) 」

大井「 (嫌だ………私は……北上さんを連れて………) 」

長門「ふんっ！！」ｶﾞﾝｯ

吹雪「長門さん！！」

長門「長門型の装甲は、伊達ではないよ！！」ﾌﾞﾝｯ

大井「長門さん…………」

叢雲「長門さん、腕は！？」

長門「大事ない。大井、覚悟は決まったか？」

大井「………もちろんよ。私は、何がなんでも北上さんを連れて帰るわ！！」

長門「フッ、それでこそだ。さぁ、お前が旗艦だ。指示を出せ！」

大井「……何としても、北上さんを連れて帰ります！！」

一同「了解！！」

大井「大井、行きます！！！！」

・・・・・・

スネーク《どういう事だ？》

叢雲「どうかしたの？」

スネーク《敵艦隊の数が減っている……》

吹雪「向こうが諦めたのかな……」

長門「いや、罠の可能性も捨てきれない。注意すべきだと思うが………」

夕立「あ、あれ！！」

叢雲「えっ！？ なにあれ、同士討ち！？」

長門「なっ！ どういうことだ！？」

大井「………皆さん、ここは私が行きます！」

吹雪「……わかりました！」

夕立「夕立たちは、周りの敵をしずめてあげる！」

長門「露払いは任せておけ！」

大井「はい！ ありがとうございます」

北上？「………」」

大井「北上さん………やっと貴女のもとに来れました。貴女を、何としても連れて帰ります！！」

北上？「………」

大井「気合い入れなさいよ、私！！」

北上？「！！！！！」ﾀﾞﾝﾀﾞﾝｯ

大井「っ………！！ 行きます！！！！！！！」ﾀﾞﾝｯ

………

……………

…………………

ーー《っ！！ お、大井っち！？ 来てくれたの？》ーー

ーー駆逐イ級「！！」ーー

ーー《こいつ！ 大井っちに何すんのさ！！！！》ーー

ーー駆逐イ級「！？」ーー

ーー《さぁ、追い込みますよ！！》ーー

ーー重巡リ級「！！」ーー

ーー《ちっ！ 邪魔するなぁ！！！！》ーー

ーー重巡リ級「！！？！？？」ーー

ーー《さっさと沈め！！！》ーー

ーー駆逐イ級「！！？！？？」ーー

ーー《全部、全部沈める！！！》ーー

ーー大井「北上さん！」ーー

ーー《大井っち！！ な、なんで！？ 身体が………止まらない！！》ーー

大井「やっと貴女のもとに来れました。貴女を、何としても連れて帰ります！！」

ーー《なんで！？ なんで止まらないの！！ 大井っち！ 避けてぇぇぇ！！！》ーー

大井「っ………！！ 行きます！！！！！！！」

ーー《なんで！？ なんでよ！！ なんで止まらないの！！！》ーー

………………

…………

……

大井「絶対に、もとに戻します。だから、今は耐えてください！！」

北上？「！？」中破

大井「これで、終わらせます！！」魚雷発射

大井「 (っ！！ 魚雷は……まずい！！！) 」

大井「き、北上さん、避けて！！！！」

北上？「」

大井「えっ………？」

北上？「！！！！？！！？？？！」

大井「き、北上さん！！！！」

………

……………

…………………

大井「絶対に、もとに戻します。だから、今は耐えてください！！」

ーー《止まって！！ 止まってよ私！！！！！！》ーー

大井「これで、終わらせます！！」

ーー《止まれぇぇぇぇぇぇぇぇ！！！！！！》ーー

大井「き、北上さん、避けて！！！！」

ーー《えっ？ うわっ！！！ 》ーー

大井「えっ………？ き、北上さん！！！！」

………………

……………

………

北上？「大井…………っち？」

大井「北上さん！？ 北上さんなのね！？」

北上「大井……っち、ゴメン………ネ？」

大井「謝らないでください！！ 謝るのは私です！ あの時、本当に北上さんを沈めようとしてしまったんです！！」

北上「じゃア、これでおあいこだヨネ………？」

大井「そうですよ！！ さぁ北上さん、帰りましょう！」

北上「無理……ダヨ、こんな姿ジャア………」

大井「どうして！？ なんでそんな事言うんですか！！」

北上「あたしね、ゼンブ……聞こえてタノ………大井っちの、コエモ………。あたしを助ケテくれようとシテイタのも………ゼンブ……………」

北上「でも………、アタシの体ガサ、ユウコト聞いてクレナイんダヨネェ……」

大井「北上さん………」

北上「マタ、誰かを傷ツケルカモしれないシ………。ダカラ………」

大井「止めてください！！！」

北上「雷撃処分シテ？ オオイッチ………」

大井「嫌だ！！ そんなこと、出来ません！！！！」

北上「大井っち………オ願イ……アタシを、楽にシテ…………」

大井「私には……、北上さんを沈めることなんて出来ない！！！」

長門「大井………」

北上「大井っち……アタシを殺すわけじゃナイヨ。あたしを、救ってホシイだけ………」

大井「でも………」

スネーク《大井。北上の最期の願いを聞いてやれ》

大井「貴方に………貴方に何がわかるんですか！！！ 人の気持ちも知らないで！！！」

長門「なっ！？ 大井！！ 」

スネーク《俺だってわかるさ。任務とはいえ、大切な人を自分の手で殺したんだ。ここにいる誰より、分かっているつもりだ》

大井「………ごめんなさい。でも無理よ………。私は、貴方みたいに強くないもの………」

スネーク《殺すわけじゃない。終わらせてやるんだ。北上の勇気を、無駄にするな》

北上「アァ……、ボスも居たんダァ……」

北上「今、ボスの近くにいる深海棲艦。タブンいいヒトだよ……。そんな気ガスルンだぁ………」

スネーク《何故、そんな事を？》

北上「んー、気になってるカナァト思ッテサ………」

スネーク《………そうか》

北上「………さぁ、大井っち………ハヤク」

大井「本当に、いいんですね？」

北上「うん。大井っちがシアワセにナッテクレルダケデ、アタシハ十分ダカラ……………」

大井「…………さようなら。北上さん…………」

北上「ン、ジャアネ。大井っち…………」

北上「次ニ産マレテ来ルトキハ、ジュウジュンデ…………イヤ………」

北上「ずっと、大井っちと一緒がいいなぁ………」

長門「軽巡洋艦北上の…………轟沈を確認………」

吹雪「大井さん………」

大井はその場に座り込み、顔を覆っている。どんな声をかけて良いものかと皆が口を開くことできなかった。ただ、淡々と事実が報告報告されていき、その話はミラーの耳にも入るが、ミラーもまた皆と同じ様に黙ってしまう。

大井「私、どうしたらいいんだろう…………」

それは、帰投中の大井が発したたった一つの言葉だった。

〜〜〜

ラバウル基地 執務室

スネーク「大井の様子はどうだ？」

ミラー「あぁ、余程応えたんだろうな。ここ３日間、一歩も部屋を出ていない」

スネーク「そうか……」

ミラー「これで奴も、失くしたんだな。親友を………」

スネーク「お前は右手を、大井は親友をか………」

ミラー「心配なのか？」

スネーク「まさか。整理がつけば、出てくるさ。それまでは大人しく見守ってやるしか、俺たちには出来ない」

・・・・・・

ミラー「今回の任務は、油田地帯に蔓延る深海棲艦の軍団の排除だ。今回の任務に当たるのは、叢雲、吹雪、睦月ーー」

大井「その任務、私も入れてもらいますよ」

ミラー「………いいのか？」

大井「えぇ。何時までもクヨクヨしてたら、それこそ北上さんに申し訳ないですし」

ミラー「わかった。頼んだぞ」

大井「えぇ。お任せください」

ミラー「おいスネーク、あんた奴に何か吹き込んだんだろう？」

スネーク「尋ねられただけだ。 『自分はどうすればいいのか』ってな」

ミラー「それで？ なんて答えてやったんだ？」

スネーク「お前のやりたい様にすればいい。そう言っただけだ」

ミラー「それでああなったと？」

スネーク「ああ。何か問題が？」

ミラー「いや、随分と吹っ切れた顔をしていたもんだからな」

ーー北上「大井っちってさ、ボスの話ししてる時が一番輝いてるんだよねぇ……」ーー

ーー大井「えっ？ そ、そんな事ないですよ！！ 私は北上さんと………」ーー

ーー北上「おやおやぁ？ 大井っちにも遂に春が来ちゃったかぁ〜」ーー

ーー大井「もう！ 北上さん！」ーー

ーー北上「怒んないでよぉ、大井っち〜。……んーまぁ、あれだよ。ボスってかなり無茶する時もあるしさ、ずっと側にいてあげなよ。ね？」ーー

ーー北上「大井っちと話したりするもの楽しいけど、私としては大井っちが ”楽しい” とか ”嬉しい” とか、幸せになってくれるのが、一番嬉しいんだよねぇ〜」ーー

大井「私のやりたい事なんて、決まってますよ、ボス」

大井「北上さん、何時までも守り続けますから………」

大井「私が北上さんに会いに行った時、退屈させないように沢山の土産話しを持って行けるように、沢山生きていきますから」

大井「だからその日まで、見ていてくださいね？」

大井「………それでは、行ってきます。北上さん」

第24話 惨劇の生存者 その3 完

第24.5話 深海ノ声

時は、北上と大井の会話へと遡る。

空母棲鬼「 (アノ深海棲艦………) 」

ーー《気になるの？》ーー

空母棲鬼「 (ダ、ダレダ！？) 」

ーー《あたし？ そこに倒れてる深海棲艦だよ。と言っても、もう元に戻ることも、助かりそうにもないけどねぇ。あぁ、そうそう。あたしは何て呼んだらいい？》ーー

空母棲鬼「(私ニ名前ハナイ。勝手ニスレバイイ)」

ーー《んー、じゃあ空母だからクーちゃんとか？》ーー

空母棲鬼「(フザケテルノカ？)」

ーー《そっちが好きに呼べばいいって言ったんじゃん》ーー

空母棲鬼「(………マァ、ナンデモイイ)」

ーー《ちゃっかり気に入ってんだ………。クーちゃんって言ってる方が恥ずかしくなる名前よねー》ーー

空母棲鬼「(ダ・マ・レ！！！)」

ーー《怒んないでよ〜。ちょっとおちゃらけてみただけじゃん》ーー

空母棲鬼「(随分ナ余裕ダナ。死ヌノガ怖クナイノカ？)」

ーー《んー、まぁそれはどうでもいいよ。所でさ、自分の本当の姿とか興味ないの？》ーー

空母棲鬼「(私ノカ？)」

ーー《他に誰が居るのさ？ でも、あたしも確証があるってわけじゃないんだけど》ーー

空母棲鬼「(ソモソモ、今オ前ハ大井トカイウ艦娘ト会話シテイルハズダ。ドウヤッテ私ニ話シカケテイルノダ？」

ーー《深海棲艦どうしなら何時でもこんな風に会話できるみたいよ？ 戦ってる最中でも、誰かと話していても》ーー

空母棲鬼「(フーン………)」

ーー《って、こんなどうでもいい会話はいいよ。自分の正体知りたくないの？》

空母棲鬼「(…………)」

ーー《なるほどね。答えたくないってことは、本当は自分でも薄々気づいてるんじゃないの？》ーー

空母棲鬼「(………)」

ーー《にしても、こんな深海棲艦も居るんだねぇ。姿を変えるなんてさぁ、どんな過去があったのか知りたくなるよねぇ》ーー

空母棲鬼「(私ガ姿ヲ変エラレル理由ヲ知ッテイルノカ？)」

ーー《えっ！？ 自分でも分からないでいたの！？》ーー

空母棲鬼「(悪イカ？)」

ーー《別に？ 私だって見るのは初めてだし》ーー

空母棲鬼「(ソレデ？)」

ーー《あー、はいはい。深海棲艦に成った時の記憶とかある？》ーー

空母棲鬼「(………ワカラナイ。色々ナ記憶ガ混濁シテイル)」

ーー《そう来ちゃったかぁ………。うん、わかったよ》ーー

ーー《多分、記憶が混濁してるのは深海棲艦と同化しちゃってるんだよ。意識が元の艦娘の物と深海棲艦の２つが混ざっちゃったんだね。姿が変わるのはどんな時？》ーー

空母棲鬼「(好戦的ニナッタ時)」

ーー《なるほどなるほど。そういうことね》ーー

ーー《艦娘の意識を自身の精神の中で沈めているんだね。表に出てこないように。好戦的になるとそれが著しく活性化する》ーー

空母棲鬼「( ? )」

ーー《簡単に言うと、本当の自分を押し殺して、空白になった所に深海棲艦の意識が紛れ込んでるって事よ》ーー

ーー《でも見た所、深海棲艦に成り切ってないから元に戻る可能性はあるよ。でも、時間の問題だね》ーー

空母棲鬼「(………ドウスルツモリダ？)」

ーー《あたしの事？ んー………このままさよならってのも何かねぇ………》ーー

ーー《新しいあたしが来るまで、のんびりと大井っちの事でも見守ってようかなぁ…》ーー

空母棲鬼「(本当ニ緊張感ノナイヤツダナ)」

ーー《ま、ついでに顔出してあげるからさ。もうあたしは死にかけてるし、多分クーちゃんなら死んだあたしも見れると思うよ》ーー

空母棲鬼「(ドンナ理屈ダ)」

ーー《んじゃ、ぼちぼち帰りますか〜》ーー

空母棲鬼「(何ナンダコイツハ……)」

〜〜〜

ラバウル基地

一連の騒動から2日後

大井「………」

ーー《んー、大井っちにはあたしが見えないのか〜。まぁ、霊感ないとか言ってたしねー》ーー

大井「私の好きなようにすればいい……か」

ーー《好きなようにする、ねぇ………ボスの入れ知恵ってところかな？》ーー

大井「………」

ーー《あたしなら如何するかねぇ………。一先ずは大井っちの元にいるけど…………》ーー

大井「………」

ーー《あたしも如何したらいいんだろうね………》ーー

大井「Zzz」

ーー《寝ちゃったかぁ。仕方ない、クーちゃんのとこにでも行きますかねぇ〜》ーー

ラバウル基地内 独房

ーー《やっほー》ーー

空母棲鬼「(マタ来タノカ……)」

ーー《大井っち寝ちゃったしね。暇だから来て見たって訳よ》ーー

空母棲鬼「(…………)」

ーー《せっかくだし、ボスの枕元にでも立ってみようかなぁ……》ーー

空母棲鬼「(止メテオケ。アノ男ハソノ手ノ話ガ苦手ダ。多分幽霊モ例外デハナイダロウ)」

ーー《ふーん。随分詳しいね》ーー

空母棲鬼「(ズット前ニ聞イタコトガ………ハッ！)」

ーー《やっぱり覚えてんじゃん。昔の事》ーー

空母棲鬼「(偶然ダ。偶然ソレダケヲ覚エテイタ………)」

ーー《まぁ、一つのはっきりしたよ。あんた、10年前からずっとボスの元に居たってことね。それも、ボスに近かった艦娘。やっぱあたしの勘、当たってるかもしれないね》ーー

空母棲鬼「(………多分、ワカッテル。自分ガ何者カ。デモ、ソンナ自分ヲ認メラレナイノカモ知レナイ………)」

ーー《随分と難儀だねぇ〜。まぁ、クーちゃんが話してくれるまで、気長に待ってるよ》ーー

空母棲鬼「(私ハ…………)」

ーー《いいって別に、今思い出そうとしなくても。って、殆ど覚えてるんだよね。まぁ、あたしはその辺彷徨いてるからさ。じゃあねー》ーー

空母棲鬼「(………………)」

空母棲鬼「(ハァ……。私ガこうなったノモ、自業自得なノよね………)」

第24.5話 深海ノ声 完

小ネタ 装備開発

ヒューイ《スネーク。もし良かったら僕のところに来てくれないか？》

スネーク「それは構わないが、何かあったのか？」

ヒューイ《対深海棲艦の兵器を新しく作ったんだ。ちょっと確認してもらおうと思ってね》

スネーク「わかった。すぐに向かおう」

ヒューイ「やぁ、スネーク」

スネーク「で？ 新しい装備ってのはどれだ？」

ヒューイ「まずはこれさ」

スネーク「38口径か？ 特に変わったところはない様だが…………」

ヒューイ「今までの装備は ”弾薬を通常装備に適合させる” 事で使えるようにしていたんだ。けど、今回は違う。今回のは ”艤装を改造して通常兵器にした” んだ」

ヒューイ「人間には艤装が使えない事は知ってるだろ？ 」

スネーク「ああ。一度使ってみたが、ビクともしなかった」

ヒューイ「それは、艤装の方でセーフティーが掛かるからなんだ。僕もあのお爺さんに聞いてわかった事なんだけど」

ヒューイ「深海棲艦と艦娘は瓜二つ、コインの裏表みたいな存在だって話をしていたんだ。そこで艤装には深海棲艦に対応できるように深海棲艦の力が宿っている。人間が使うと精神を侵食され兼ねないという事だ」

スネーク「深海棲艦になりやすいのは人間より艦娘だと聞いたが？」

ヒューイ「万が一、艤装が暴発でもしてみたら、人間が深海棲艦になる。そんな事は避たかったんだろう。だから艦娘は死と隣り合わせの艤装という装備を持たせ ”られている” んだよ。人間と違って、艦娘は換えが効くからね」

スネーク「なるほど。で？ 結局どこをどうやって使えるようにしたんだ？」

ヒューイ「セーフティー機能を外しただけだよ？」

スネーク「えっ？」

ヒューイ「だから万が一暴発したら、スネークも深海棲艦になるかもね」

スネーク「………本気か？」

ヒューイ「冗談に決まってるじゃないか、スネーク！」

スネーク「………全く研究者ってのはどういう神経してるんだか」ﾎﾞｿｯ

ヒューイ「何か言ったかい？」

スネーク「いや、別に？」

ヒューイ「そう。でねスネーク、確かに艤装のセーフティーは外したよ。でもそのままだと危険だから、少し出力を落としている。それでも今までの装備よりは高い威力を発揮できるはずだ」

ヒューイ「元にしたのは12.7mm機銃と12cm単装砲さ。見た目をオートマチックハンドガンまで小さくするのは大変だったよ。12.7mmの弾薬の出力を落しつつ、38口径に抑えるのもかなり時間が掛かったね」

スネーク「ほう。他にもあるのか？」

ヒューイ「もちろん。歩兵用ランチャーの弾薬を改造して、新しく作ったのが２つあるんだ。それがこれさ」

スネーク「見た目はいつも使っているのと同じだな」

ヒューイ「弾薬をちょっといじって、戦艦が使っている徹甲弾を流用したものさ。こっちは三式弾だよ」

スネーク「体感的には、徹甲弾は威力の上昇。三式弾は榴散弾化だと考えていいんだな？」

ヒューイ「そう。少しでも戦いやすくなるかなって思ったんだ。でも気をつけて、いくら出力を落としたとはいえ、深海棲艦化の危険がないとはいえない。言ってしまえば、諸刃の剣だ。扱いには気をつけてよ」

スネーク「あぁ。肝に銘じよう」

ヒューイ「それともう一つ。これはまだ設計段階なんだけど………」

スネーク「この設計図は？」

ヒューイ「ほら、ちょっと前にショートランド泊地が襲われただろう？」

スネーク「ああ。たしかにとあるPFに占拠させられた。それが？」

ヒューイ「ミラーにも少し聞いたんだけど、PF連中もちょっとばかしデカイ兵器を持っているって話していてさ、これを考案してみたんだ」

スネーク「ほう」

ヒューイ「メタルギアの技術を使ったものさ。多脚駆動装置をつける事によって、戦車より小回りが利くようになっている。また、コアユニットを元にして様々な局面に対応できるようにハードウェアを構築していって、カスタマイズできるようにする。例えば、先制攻撃によって敵勢力への抑止力にすることもできるんだ」

ヒューイ「実戦に投入すれば、まるで敵地に噛み込むように敵勢力を抑え込んで、やがては戦闘というものに歯止めをかけていく。僕はこれを、戦闘の歯車『バトルギア』って呼んでいる」

スネーク「なるほどな……」

ヒューイ「因みに、コードネームは『skater (スケーター) 』にしようと思っているんだけど……」

スネーク「滑る人？ 何故だ？」

ヒューイ「まぁ安直なんだけど、艦娘のハードウェアを構築すれば、水面を滑ることになる。見た目はアメンボ (pond skater) だろ？」

スネーク「あぁ………そういうことか」

ヒューイ「とりあえずミラーにも話したけど、賛成してくれている。後はスネークの指示があれば、いつでも作るよ」

スネーク「………とりあえず、カズと相談させてもらうことにしよう」

ヒューイ「了解。じゃあ指示を待っているよ、ボス」

小ネタ 装備開発 完

第25話 報復の在り方

ラバウル基地 研究室

ミラー「ヒューイ、お前あのデカイ兵器の居場所を知らないのか？」

ヒューイ「サラマンダーのこと？ どうしたんだよ藪から棒に」

ミラー「答えろ」

ヒューイ「前にも話したけど、僕は研究から降ろされた。申し訳ないけど、その後奴らがどこに行ったかなんて………そうだ！」

ミラー「なんだ？」

ヒューイ「僕がいた、あの施設。あれはサラマンダーの開発拠点なんだけど、他にも色々な所に点在しているんだ。それぞれの拠点でパーツを作り上げていって、最終的にあそこでパーツを結合。完成させる予定だった」

ミラー「だが、その計画は破綻した。それで？」

ヒューイ「もしかしたら、その拠点のどこかに移動しているかもしれない。連中、拠点を転々と移動して計画を隠そうとしていたんだ」

ミラー「おい！ 今すぐその拠点を全て教えろ！！」

ヒューイ「僕が知っている限りでは４つ。1つはアメリカの ”サンディエゴ” 。2つ目はカリブ海にある ”セントマーティン島” 3つ目はインド洋のセーシェル諸島に属している ”ラ・ディーグ島” 。４つ目もインド洋にある ”ディエゴガルシア島” だ」

ミラー「この４つだな？ 」

ヒューイ「あぁ、僕が知っている範囲ならね。どう？ 役に立てそう？」

ミラー「実際に偵察に行かせて見るまではわからん」

ヒューイ「………やるんだね？ サイファーと？」

ミラー「もちろんだ」

ヒューイ「わかった。なら僕は僕なりの戦いをするだけさ」

・・・・・・

ミラー「というわけで、エメリッヒを吐かせた。絞られたのはこの４つ。サンディエゴを除き、広く知られた場所ではないから、何かを隠すのにはうってつけと言えるだろう。この4箇所を徹底的に探し出す」

オセロット「既に大多数のスタッフを派遣した。残っているのは戦闘に特化した連中だ」

オセロット「ボスはそいつらを使って、ここの警備をしてもらいたい。万が一に備えてだ。派遣スタッフに身の危険が生じれば、そっちの援護に回ることにもなるだろう」

ミラー「俺はアメリカ方面を、オセロットにはインド洋方面の偵察部隊の指揮を執らせて貰う」

オセロット「艦娘は全艦待機中だ。あんたの好きなように使ってくれ」

スネーク「いいのか？ そっちに少しくらい割いたほうがいいと思うんだが？」

ミラー「艦娘を使うと、深海棲艦に見つかりやすくなる。奴らとの交戦は出来るだけ避けたい」

オセロット「エメリッヒに急がせているが、未だに対深海棲艦の武装は数が足りない。かといって艦娘を使えば敵に見つかるリスクが高くなる」

オセロット「まぁ、ヘリでの移動が主になるが、兵士たちにはレーダーを確認しながら行動するように命じた。心配はないと思うが……」

スネーク「…………大丈夫か？」

ミラー「もちろんだ。あんたはその間、スタッフの訓練なり艦隊の演習なり、とにかく連中を使えるように指導してやってくれ」

スネーク「わかった。懐かしい、9年ぶりだな」

オセロット「奴らにはこちらから伝えておく。あんたはそのまま向かってくれ」

・・・・・・

スネーク「……と言うわけで、だ。今回は俺が見させてもらう。お前たちの腕、久しぶりに見せてもらうぞ」

一同「わかりました！！」

スネーク「艦隊は砲撃と雷撃演習を中心に行っていく。砲撃演習は長門、雷撃演習は大井を筆頭に行え」

一同「わかりました」

スネーク「翔鶴はあいつと共に航空演習を実施してもらう。」

翔鶴「あいつ………？ はい、承りました」

DD兵「ボス、我々は？」

スネーク「お前たちはCQCと射撃訓練だ。俺は少しここを離れるが、後できっちりと叩き込んでやる」

DD兵「ありがとうございます！ ボス！」

・・・・・・

スネーク「と、いうわけだ。頼むぞ」

空母棲鬼「………」

翔鶴「では、行きます！」

空母棲姫「……………」

北上《へぇ、翔鶴と対決かぁ〜》

空母棲姫《マタ来タノカ……》

北上《いや、ずっと大井っちの後ろに立ってたんだけどやっぱ誰にも見えてないね〜》

空母棲姫《話シカケルナ。気ガ散ル》

北上《あーあ、誰か構ってくれないかなぁ》

空母棲姫《五月蝿イ、黙レ！》

スネーク「じゃあ俺はあっちに戻る。一先ず終わったら俺の所に来てくれ。対空演習をするからな」

翔鶴「はい、了解です」

北上《あーあ、淋しいなぁー！ すっごい淋しいなぁー！》(棒)

空母棲姫《モウ成仏シロヨ！ 喧シイ！！》

北上《いいから艦載機を見てなって………あっ、一機墜ちた》

空母棲姫《チッ！》

北上《どうどう、落ち着いて。それ位にしないと元に戻れなくなるぞー》

空母棲姫《……………》

北上《そうそう。やっぱ元のポテンシャルも関わってくるよねー》

空母棲姫《ドウイウ意味ダ？》

北上《昔っから頭に血が上りやすかったんじゃない？ そんで1人で抱え込んじゃったり？》

空母棲姫《ソウ………ナノカ？》

北上《あたしが知ってるあんたはねー。ほら、まだ3機残ってるんだから墜とさないでよね》

空母棲姫《フンッ》

・・・・・・

スネーク「そうだ！！ そこで左足を相手の右足に掛けろ！！」

DD兵「はい！ そりゃぁ！！」

DD兵2「ぐあっ！！」

スネーク「よし！！ それだ！！」

DD兵「ありがとうございます、ボス！！」

スネーク「おい！ お前！！」

DD兵3「はっ！ ボス、何か？」

スネーク「お前のそれはリボルバーだな？」

DD兵3「あ、はい！」

スネーク「お前の持ち方は危険だ。いいか？ リボルバーをツーハンドホールドするときは、シリンダーキャップからの燃焼ガスで手を焼かれないように位置に気をつけろ」

DD兵3「わかりました、ボス！」

スネーク「教官はどこにいる？」

教官「ボス！ 私です！！」

スネーク「今ここにいるのは何人だ？」

教官「はっ！ 全部で168人です！」

スネーク「一旦、ここに集めろ」

教官「わかりました。止めぇ！！！！」

教官「集合して整列！！！」

一同「了解！！」

教官「敬礼！！」ビシッ

一同「ボス！！」ビシッ

スネーク「いいか！ 今からCQC訓練の最終段階に入る。1人ずつ俺にかかって来い！」

スネーク「手加減したやつは1週間の軍港清掃だ。いいか！！」

一同「わかりました！！」

DD兵「宜しくお願いします！！」

スネーク「よし、来い！！」

・・・・・・

長門「では、戦艦は戦艦で先に対抗演習を始める。私たち長門型と金剛型で3対3の演習を始める」

陸奥「編成は私が阿弥陀籤で決めておいたから」

金剛「Ah………むっちゃんの作ったクジデスかー………。嫌な予感がしマース」

陸奥「あら、失礼しちゃうわね。ちゃんと綺麗に決まったのよ？」

比叡「金剛お姉様と同じになれるかなぁ〜」

霧島「私の予測では、十中八九ありえないかと」

榛名「霧島、もう少し優しく言った方が………」

陸奥「えーっと、第1艦隊が長門、比叡、霧島ね」

比叡「あぁ〜お姉様が離れてくぅ〜」

金剛「No wonder. 単細胞にゴリラに脳筋ネ〜」ボソッ

長門「…………誰が誰に当たるかは聞かないことにしよう」

金剛「Oops！！ 聞かれてまシタ！？」

長門「やはり貴様か………！！」グリグリ

金剛「No! stop making fun of me!!」

長門「何が止めろだこいつ………！！」ゴリゴリ

金剛「ひょぉぉぉぉぉぉぉぉ！！！」

比叡「ひえぇぇぇ！！ お姉様が今まで聞いたことのない悲鳴を！」

霧島「えっ！？ 私ってお姉様からそんな風に思われてたの？」

・・・・・・

大井「まぁ、私たちはいつも言ってる事を実践で使えればいいし………」

叢雲「もうみんなやってるわよ」

睦月「始めるのですよー！」

夕立「沈めてやるっぽい！！」

吹雪「夕立ちゃん！ 落ち着いて、味方！ 味方だから！！」

島風「島風には魚雷も追いつけないよ！！」

雪風「当たりませんー！！」

島風「おぅ！ おぅ！！ おっおー！！」

雪風「当たってー！！」

島風「おぅ！？」

叢雲「あそこは何やってんの………」

叢雲「さぁ？」

・・・・・・

ミラー「オセロット、そっちはどうだ？」

オセロット「いや、まったく手がかりなしだ」

ミラー「しかし、ボスも随分と変わったな」

オセロット「どういう事だ？ 彼は紛れもなく、俺たちのビッグボスだ」

ミラー「そんなこと、お前に言われるまでもない。ん？」

オセロット「どうした？」

ミラー「おい！ 何であいつが独房から出ている！」

オセロット「あいつ？ あぁ、ボスが訓練に付き合わせると」

ミラー「昔はあんな事しなかったはずだ。敵を仲間に入れるなど－－」

オセロット「俺もかつてはボスの敵だった。お前もだろ？」

ミラー「ぐぅ………。大体、何でボスはあいつを」

オセロット「いいのか？ 案外あいつもかつての仲間かもしれんぞ？」

ミラー「仲間？ あいつが？ 何を馬鹿なことを」

オセロット「あのご老人の言葉を忘れたか？ 艦娘は深海棲艦になるって話だ」

ミラー「だったら何だ？ ボスに攻撃を加えた時点で仲間もクソッタレもない！」

ミラー「それに、スタッフの中でもあいつへの不満が大きくなっている。あの一件も片付いていない」

オセロット「兵士にナイフを向けたことか？ あのご老体に聞いてみればいい。何かわかるかもしれんぞ？」

ミラー「何はともあれ、スタッフに不満が出ている中では俺も奴を仲間とは認めん！」

オセロット「暴力を振るわれたから付き合いたくない。気に食わないから仲間として認めない。ダイヤモンド・ドッグズ幼稚園か？ ここは？」

ミラー「ふん！ なんとでも言え。お前もお前で何であいつの肩をもつ？」

オセロット「ボスが言った言葉、忘れたのか？ あいつに会ったことがある。俺はそれが知りたいだけだ」

第25話 報復の在り方 完

第26話 燃える歯車

ラバウル基地 ヘリポート

ミラー「カリブ海方面の偵察部隊から連絡だ。カリブ海を通ってアメリカから大量の資材がセントマーティン島に運ばれている。またカリブ海には多数の深海棲艦が集結している」

ミラー「ボス、スカルフェイスはそこにいるはずだ。最終調整が始まっているサラマンダーもそこにあるに違いない。いいか、 絶対に逃がすな！ 奴を確実に殺せ！！！ 」

スネーク「カズ！！ バックアップを頼むぞ！！！」

ミラー「あぁ！ 俺も後から追いつく！！」

カリブ海 セントマーティン島

ミラー《ボス、目的の拠点はそこから北西に進んだところだ。事前の調べで、基地には多数の防衛機構が備えられていて、ヘリでは近づけない》

ミラー《奴はカリブ海にサラマンダーを展開。最悪、核を使う恐れもある。万が一はあのデカブツとやりあうことになる》

オセロット《ボス、スカルフェイスには聞きたいことが山ほどある。奴と接触したら、まずは情報を聞き出せ。サラマンダー、深海棲艦。奴の計画を暴け！》

ミラー《スカルフェイスの計画は、最終フェイズに差し掛かっている。奴が王手を打つ前に、奴の存在、痕跡を計画ごと歴史から抹消しろ》

パイロット《目的地に到着。どうかお気をつけて、ボス！》

オセロット《今回は完全にバックアップに回させてもらう。武器弾薬の補給、今の様にマップへのマーキングも、俺が全部担当する》

スネーク「わかった」

・・・・・・

スネーク「よし、こちらスネーク。建物の敷地内に潜入した」

オセロット《流石ボスだ。双眼鏡で辺りを調べてみろ》

スネーク「……………見つけた。ヘリポートに居る」

ミラー《奴を絶対に逃がすな！！ いいか！》

スネーク「わかってる。ところで、オセロット」

オセロット《どうした、ボス？》

スネーク「万が一のこともある、ラバウルの警備を厳重にしておいたほうがいいんじゃないか？」

オセロット《それは勿論、怠るつもりもない。どうしたんだ、急に心配性になって？》

スネーク「いや、特に大したことじゃない。彼女らは？」

オセロット《全体の2/3を出撃させた。残りはここの警備だ。優秀な兵士も基地に残している。問題ない》

スネーク「あいつは？」

オセロット《あぁ、そいつは………》

ミラー《あの深海棲艦なら俺たちと行動している。あんたの窮地に備えて、オセロットが無理矢理乗せてきた》

スネーク「お前と一緒にいるのか？」

ミラー《いや、ヘリを何台が飛ばしている。そのうちの一つに、あの爺さんと同乗している》

スネーク「なるほどな。申し分ないボディーガードだ」

・・・・・・

ミラー《スネーク、こちらも援護に入る。行け！！》

スネーク「待て！！」

髑髏顔「………なるほど、お前も亡くしたな。そして亡くした痛みにうなされて、それを憎しみで緩和しようとする」

敵兵「 ！ 」

髑髏顔「止めろ。客人に銃を向けるのは失礼だ。アラモを忘れるな」

スネーク「あの兵器はどこだ！」

髑髏顔「どれだけ足掻こうと、その痛みは消えない。それなのに人は、鬼に墜ちている。どうだ？ 私が醜いか？」

スネーク「答えろ！！」

髑髏顔「お前も鬼だな。もはや人には戻れまい。ならば、私の鬼を見せてやる。ついて来い、ビッグボス」

スネーク「……………」

ミラー《今は奴に合わせるしかない。いざとなっても、こちらは準備ができている。それが、奴への抑止力になるはずだ。戦争に持ち込む気は、奴にもないはずだ》

髑髏顔「私は、君がCIAにいたときから知っている。20年前のスネークイーター作戦のこともな。あの時、君が失敗すれば、私が拭うことになっていた。だが、作戦は成功。君が持ち帰ったデータは、ちょっとした金になった」

髑髏顔「そこで少佐は私にこういった。『アメリカは金の使い方を知らない。だから君と私で、 ”帳簿” を分けたい』と。その金で、アメリカの裏に支えになる組織を作ると。君も知っているサイファーだ」

髑髏顔「サイファーは少佐が作った、友への、君の師匠のザ・ボスに対しての弔い。いや世界へ、とりわけアメリカに対しての報復だ。アメリカは自由の国だ。様々な人種や国が入り乱れる。サイファーはそれを１つにしようとした」

髑髏顔「国も、意思も、思想も、宗教も。全てを１つにな。それが少佐なりの、彼女の遺志の捉え方だ。”個人の自由意志” は、生身の人間が扱うには手が余る。いや、不可能であると結論付けたのだ。だからサイファーは情報で、言葉で、無意識を操作するシステムを作ろうとしている。無意識を ”AI” (人工知能) によって統制しようとしているのだ」

髑髏顔「だが、少佐は何もわかっていない。君は、少佐の今を知っているか？」

スネーク「……………」

髑髏顔「だろうな。少佐を知る人間はいない。人も、情報も、何もかもを遮断した場所でひっそりと生きながら、転々としている。今、少佐が生きているのかさえ知るものはいない」

髑髏顔「私はある小さな村に産まれた。幼い頃に村は焼かれ、私は何もかもを失った。祖国、親族、言葉、思想。私は私を亡くしてしまった。私には過去も、未来も幼くして焼かれてしまったのだ。それから事あるごとに戦争に巻き込まれ、私は国を次々と変えていったのだ。そして私は変わってしまった」

髑髏顔「…………私が抱いたのは、報復だけだった。そんな中だ。奴らにあったのは」

スネーク「深海棲艦か」

髑髏顔「沖縄生まれの老人から何を聞いた？ それはサイファーが導き出した答えの一つに過ぎない。見ろ！」

スネーク「これが、お前の鬼か？」

髑髏顔「来い、ビッグボス」

兵士「ほら、歩け！」

スネーク「…………」

パイロット《こちらクイークェグ、援護に入る》

ミラー《射線を確保しろ》

パイロット《了解》

叢雲《第1から第3艦隊、たった今着いたわ。今から全部の艦隊を3つの小隊に分けて、島の周辺を囲むわ》

オセロット《了解した。翔鶴は艦載機を飛ばす手はずを整えてくれ》

翔鶴《わかりました》

髑髏顔「ここには、お前と私以外の ”鬼” がいる。そいつは人間、艦娘への ”報復心” に突き動かされている。時代は常に、何者かの報復心で動かされているのだ。お前が私に生かされているようにな」

髑髏顔「そいつも、お前たちへの報復心で動いているのだ。さあ、見せてくれ！！」

深海棲艦「……………アハハ」

スネーク「っ！ いつの間に！？」

ミラー《ボス、こいつは…………！！》

コードトーカー《何と禍々しい………。こやつ、お前たちに相当の恨みを抱えておるぞ！》

深海棲艦「……………アハッ！ ミツケタ！！」

スネーク「くっ！ こいつ！」

ミラー《スネーク、撃て！ 殺されるぞ！！》

オセロット《ボス、待て！！ まだスカルフェイから情報を得られていない！》

ミラー「何だ！？ ボスを殺す気か！！」

オセロット《ボス、今は逃げろ！ 死ぬぞ！！》

深海棲艦「アハハハハ！！！ マッテヨー！ イマカラコロシテアゲルカラサァ！！！ アッハハハハハハ！！！」

スネーク「ぐっ！ くそっ………！」

ミラー《ボス！！》

深海棲艦「アナタノセイヨ………アナタガイナケレバ、※※※モ、※※※モ、シズムコトハナカッタノヨ！！！！！！！！！」

ミラー《ボス！ ボス！！》

オセロット《いまだ、やれ！》

翔鶴《全航空隊、発艦始め！ 直掩隊も、攻撃隊の援護に！》

ミラー《おい！ ボスを巻き込むつもりか！！》

オセロット《翔鶴、爆撃はよせ！》

翔鶴《分かってます！！》

深海棲艦《キャア！！ ドコカラ！？》

翔鶴《行きます！ 全機突撃！！》

深海棲艦「ア……………アレハ…………」

髑髏顔「おい、撃ち墜とせ」

敵兵「撃て、撃てぇ！！」

スネーク「おい、待て！」

深海棲艦「ア、アァ…………」

髑髏顔「何をしている、早くそいつを殺せ！」

深海棲艦「※※※ダ………イキテタンダァ………アハハ………ヨカッタァ」

翔鶴《貴女…………瑞鶴なの！？》

瑞鶴？「ショウカクネェノカンサイキダァ…………」

翔鶴《嘘…………私…………瑞鶴に………あぁ……………》

長門《おい、翔鶴！ 落ち着くんだ》

翔鶴《何で………何で瑞鶴がここに………》

髑髏顔「やはり、こいつも出来損ないか………。お前を殺すほどの、報復心を抱いてはいない様だな」

スネーク「……………」

翔鶴《何よ、それ………。私の妹に、大切な妹に対して出来損ない？ 報復心で動かされる？ 》

長門《翔鶴！ 抑えろ！！》

夕立《これちょっと、不味いっぽい………？》

ミラー《どうした？ 何があった！？》

翔鶴《仲間たちを…………私の妹を弄んで…………》

オセロット《おい、翔鶴を止めろ！！》

コードトーカー《不味い………今直ぐ止めるのだ！！》

翔鶴《死ぬのはボスでも、私たちでもない。貴方が死ねばいいのよ！！！！！！！》

叢雲《し……深海棲艦が、集結している！？》

大井《ちょっとちょっと！！ 何よこの数！！？》

コードトーカー《手荒れでも構わない、今すぐ止めるのだ！！ 手遅れになるぞ！》

長門《仕方ない。翔鶴、我慢してくれ》

夕立《て、手加減してほしいっぽい！》

長門《わかってる！ 落ち着け！！》

夕立《殴るのはいいけど手加減！》

長門《わかってる！！》

翔鶴《…………》

長門《気絶したか………これでいいのか？》

コードトーカー《よくやった。私の元へ連れてきてくれ。簡易的ではあるが、治療が可能だ。蛇よ、そこにいる彼女もだ》

スネーク「わかった。立てるか？」

瑞鶴？「ウ……ウン、イイノ？」

髑髏顔「やはり駄目か。おい、誰かあいつを起動させーー」

？？？「ユルサナイ………ユルサナイ………」

髑髏顔「誰だ！？」

スネーク「……………」

？？？「ワタシタチヲリヨウシテ…………マタセンソウヲオコソウトシテ………」

髑髏顔「おい、誰があれを動かしている！」

？？？「ニンゲンナンテ、カッテナノヨ………ワタシタチハ、タタカイタクナイノニ！！！」

髑髏顔「構わん、撃て！！！」

敵兵「撃て、撃てぇ！！」

？？？「シヌノハワタシタチジャナイ。オマエタチダ！！！！！！」

敵兵「隊長、お逃げください！！！」

髑髏顔「一体誰だ………これほどの報復心を、誰がぁぁ！！！！！」

スネーク「くそ、逃げるぞ！！」

第26話 燃える歯車 完

第27話 メタルギア・サラマンダー

誰だ？ こいつは…………

スネークは深海棲艦に押し倒され、首を絞められる。

確か、似たような光景を見たような気がする。そうだ、あの時の病院だ。あの時も、首を絞められて危うく死ぬところだった。確か、イシュメイルと名乗った男に俺は助けられた。

朦朧とする意識の中でそんなことを考えていると、スネークの首を絞める力が段々と弱くなっていく。気道が確保されて、大きく息を吸う。まだ意識は完璧に戻らないが、近くで声が聞こえる。

「翔鶴姉ぇの艦載機だ」と。

奴はどうやら、俺のことを知っているらしい。奴はこう言ったんだ

「お前さえいなければ※※※は沈まなかった」

誰を指しているのは分からないが、恐らく奴にとっては大事な存在らしい。その1人は翔鶴であると気がつく。彼女の姉だ。

だが、あいつは誰だ？ 俺はあいつを知らない。いや、”知らない” ではなく、 ”思い出せない” のかも知れない。こいつに会ってから、俺の中で何かがつっかかっている。

様々な記憶を掘り起こしながら、スネークは目の前にいる深海棲艦の顔を思い出そうとする。無線越しに ”瑞鶴” と呼ばれており、恐らく彼女の名前なのだろう。

そこでスネークは、ある１つの言葉を思い出した。

医者《あなたは記憶喪失になっている場合があります。それはある１つの部分にぽっかりと穴が開いたようなものか、はたまた特定の人物か、それともその両方か》

自身の記憶を頼りにしても、彼女を思い出すことができない。そんなスネークを他所に、周りの事態は時々刻々と進んでいく。

突如として動き出したメタルギア・サラマンダー。スカルフェイスの様子を見ると、奴が動かしたものではないようだ。XOFの部隊も焦りを見せている様子から、スネークはここから逃げることを選択する。もちろんそこにいる深海棲艦を連れてだ。

〜〜〜〜〜〜〜

基地を抜け出すと、戦車や装甲車がサラマンダーのいる方へと向かっていく。スネークは2人で逃げるのは得策でないと考えたらしく、戦車隊が応戦している最中ではあるが、深海棲艦に声をかける。

スネーク「お前、高いところは大丈夫か？」

瑞鶴？「エッ！？ タ、タブンダイジョウブ」

スネーク「背中をこっちに向けてくれ」

瑞鶴？「ナ、ナニコレ？」

スネークは深海棲艦の背中にとある装置を背負わせる。そう、フルトン回収器だ。

スネーク「そこにじっとしていろ。鳥になれるぞ？」

スネークがスイッチを入れると、取り付けたフルトン回収装置からバルーンが一気に膨らみ、僅かに対空したのちに急上昇する。曲がりなりにも深海棲艦だ。多少の衝撃は耐えられるだろう。

瑞鶴？「チョット！ ナニスルキヨ！！ キャアアアアァァァァァ！！！！！！」

パイロット《了解、回収します》

コードトーカー《よくやった。後は私が彼女を診よう》

急なことであったが、何度かバルーンの回収に成功したという連絡を受けて安堵するスネークは、近くにあった車を走らせ、サラマンダーから一気に距離を取ろうと計る。

ミラー《サラマンダーの存在が公になれば、スカルフェイスの計画が実現する。核を使わせるまでも、ましてや深海棲艦による核武装も意味はない》

ミラー《世界は再び分断されて、人々は元から植えつけられている核への恐怖に覚えて生きることになる》

右、左、右、左と、ハンドルを交互に切りながら道路を走行し、サラマンダーの重火器を避ける。しかし、まるでこちらしか眼中にないのかと思わせるほどの集中砲火を受け、車は爆風によって横転。

ミラー《ボス！ ボス、無事か！？》

スネーク「あぁ、大丈夫だ」

スネークが起き上がると、ここで雌雄を決する時が来たと言わんばかりに、サラマンダーは大きな咆哮をあげる。

ミラー《ボス、今度こそあのデカブツを黙らせてやれ！ これを逃せば、第三次大戦の幕開けだ！！》

長門《ボスが海側まで誘き出してくれたおかげでこちらからも正確に位置を確認できる》

大井《生憎と陸上なので自慢の魚雷は撃てませんが………まぁ、何とかしますよ》

オセロット《ボス、武器を送る。ここでサラマンダーを破壊しろ！！》

ヒューイ《スネーク、よく聞いて！ さっき送られたデータを基にサラマンダーの内部構造を確認したんだけど、僕が作ったものとは大きく変わったものになっている！》

スネーク「どういうことだ？」

ヒューイ《何ていうか………中身そのものが変わっているんだ。僕の知らない、組み込んだ覚えのない内部構造をしている。つまり………》

スネーク「……………有効手段がわからない。ということか？」

ヒューイ《そうだ。今の武器でも多少の損壊は与えられるかもしれないけど、完全に破壊するのは不可能だ！》

コードトーカー《蛇よ、かの兵器には彼らと同じ邪念を感じる》

スネーク「……………深海棲艦か？」

コードトーカー《そうだ。彼女らに協力を請う以外、斃すことはできないだろう》

オセロット《ボス、送った装備の中に、射出型のフレア弾を入れておいた。奴に弾を当ててくれ。それが目印になる》

スネーク「わかった」

オセロット《ボスと支援ヘリ ”ピークォード” でサラマンダーの動きを制止、或いは惹きつける。その際に空母はピークォードを援護。その後、他の艦娘はフレアを頼りに集中砲火を浴びせる。それでいいか？》

スネーク「あぁ、問題ない」

ミラー《来るぞ！！》

サラマンダーは雄叫びをあげ、スネークをめがけて機銃、ミサイルなどを発射する。

機銃を避け、間一髪のところでミサイルを避けると、スネークは物陰に隠れながらミサイルランチャーに弾頭を装填する。ヒューイが開発した、艦娘の使う徹甲弾をもとに設計された特殊弾頭だ。

ピークォードの撃ち込んだミサイルと同時に発射する。すると、サラマンダーの動きが鈍り出した。その隙を見逃さず、スネークはフレア弾をサラマンダーに向けて撃つ。

長門《了解、今から支援砲撃をする。巻き込まれるな！！》

長門の警告から数秒後、遠くから多数の砲撃がサラマンダーに向けて放たれる。それに乗じて、空母連中も爆撃機を発艦させて爆撃を行う。

ミラー《いいぞ、効いている！！》

オセロット《ボス、彼女らの砲は装填に時間がかかる。そのまま奴を惹きつけてくれ。武器を送る》

スネーク「わかってる！」

ヒューイ《スネーク、みんなも戦ったまま聞いてくれ！ たった今、サラマンダーの解析が終わった。僕がサラマンダーにつけた、電磁波を利用した攻撃反射機構の事は覚えてる？》

スネーク「あぁ。その割には攻撃がやたらと通るが？」

ヒューイ《今確認してみたら、その機能が使われていない。いや、無くなってるんだ！ そのせいか、攻撃特化な機体として多数の攻撃手段を持つようになっている！》

スネーク「どういう事だ？」

ヒューイ《僕の組み込んだ覚えのない、攻撃が出来るようになっている。その中には、恐らく人間では扱えないものも含まれる。本来サラマンダーは、有人機としての運用が前提だ》

ヒューイ《でも、人間を乗せたままでは出来ない動きがある。あまりにアクロバティックな動きは、人間自身に相当の負担をかける事になる》

スネーク「つまり、人間の想定を超えた行動をとる可能性があると？ 笑えない冗談だ」

ヒューイ《下手をすると、何のためらいもなく核を撃ちかねない。それだけは何としても止めてくれ！！》

金剛《そんなこと、絶対にさせまセン！！》

陸奥《生憎と、3回も核を使わせるつもりはないわ！！》

叢雲《いつでもいけるわ！！》

スネーク「わかった。行くぞ！」

スネークは先ほどと同じ様に、ミサイルをサラマンダーに当てる。それに続いてピークォードからもミサイルが発射され、艦娘の鉄のカーテンがサラマンダーに降り注ぐ。

コードトーカー《蛇よ、彼らの念が弱り始めた。もう少しだ！》

サラマンダーは再び大きな咆哮をあげると、今までと違った動きをしだした。 良く見ると、コクピット内には人の姿は無く、何か別の大きな力によって動かされている。そんな非現実的なことが起きているのだ。

ヒューイ《スネーク、気をつけて！ レールガンが起動された！！ あれに撃たれたらひとたまりも無いよ！！》

サラマンダーの動きを見たところ、レールガンで狙いをつけたのはピークォードの様だ。

スネーク「おい、退がれ！！」

パイロット《一旦上昇します！》

咄嗟のことであったが、ピークォードはレールガンの砲弾をかわす。当たったのは近くにある小さな崖であった。大きな煙と共に、土砂が崩れていく音がしている。煙が晴れると海が広がっており、そこには艦娘がこちらを目掛けて艦砲を向けている。

ヒューイ《スネーク、まだだよ！ もう一発来る！！》

スネーク「避けろぉ！！！」

長門《なっ！？》

次の瞬間、レールガンがパチパチと電気を纏いながら弾頭を海に発射する。スネークの耳につけているイヤフォンから聞こえたのは、大きな爆音と巻き上げられた海水が水面に叩けつけられる音だった。

ミラー《おい、状況を報告しろ！！》

長門《……………すまない、直撃だ。機関部に問題はないが、砲台がやられた。幸いにも、私だけだ》

ヒューイ《ミサイルが発射された！ ターゲットは君たちだ！！》

陸奥《私たち！？》

金剛《SHIT!! 》

榛名《どうすれば…………》

長門《……………陸奥、金剛は翔鶴を守れ！！ 残った者は大井と駆逐艦の盾になれ！ 大井、叢雲、翔鶴、頼むぞ！！》

大井《了解、やるだけやってみますね》

叢雲《私あれ苦手なんだけど、まあ、仕方ないわね！！》

翔鶴《わかりました。やります！》

長門《ボス、奴のミサイルが止まったらフレア弾を撃ってくれ》

オセロット《おい、何をする気だ！！》

スネーク「…………わかった！」

サラマンダーのミサイルは、ヒューイの言った通りに海上に向けて発射されていく。無線越しから爆発音が響き、全ての戦艦が大破だ。

長門《ボス！！！！》

スネーク「分かった！ フレア弾も行くぞ！」

翔鶴《確認しました。爆撃機を発艦します！！》

長門《よし、叢雲、大井！！》

大井《了解、行きます！！》

叢雲《行くわよ！！》

翔鶴の航空隊が発艦された直後、長門が叢雲と大井を空高く放り投げる。それに続いて残りの戦艦が駆逐艦を長門同様に空高く放り投げる。

大井《みんな、魚雷のスクリューをそのまま蹴って！！》

睦月《吹雪ちゃん、行くよ！！》

吹雪《一か八か、やってみます！！》

島風《酸素魚雷、行っちゃってぇー！！！》

雪風《成功するかわからないけど、さ 期待に応えます！！》

夕立《パーティもそろそろ終わりっぽい！！》

叢雲《いっけぇー！！！》

大井《墜ちろ！！！！》

大井が普段から得意としていた魚雷の発射方法だ。以前は良くやられたなぁとミラーとスネークは懐かしさに似たものがこみ上げてくるのを感じていた。

などと言っている暇はなく、サラマンダーがスネークに狙いをつける。次の瞬間、翔鶴の爆撃隊がサラマンダーの上空で爆雷を投下。サラマンダーから多数の爆発が上がる。

オセロット《ピークォード、有りっ丈の火力をばら撒け！！》

パイロット《了解！》

ピークォードから機銃、ミサイルとあらゆる武装がサラマンダーに火を噴く。それに合わせて、先ほどの魚雷が見事サラマンダーに当たる。しかも全ての魚雷がだ。

サラマンダーは動きが鈍り、始めて地面に膝をついた。

ヒューイ《スネーク、コクピットを狙って！！ 》

オセロット《今だ、撃て！！》

ミラー《ボス！！》

スネークはサラマンダーへとミサイルを撃つ。狙い通りにコクピットに当たり、サラマンダーは最後の動力を振り絞って咆哮をあげると、完全に動きを止めた。砂埃を巻き上げながら、巨人は大地へと沈んでいく。

ミラー《よくやった、ボス。ヘリに乗ってくれ。スカルフェイスをこちらで見つけた》

スネーク「わかった」

ミラー《奴らしい最期だ。艦娘にも、以前寄越したCH-53輸送ヘリを飛ばしている。向こうで合流する予定だ》

明石《あのー、良かったらそのロボット回収してくれませんか？》

コードトーカー《私からも頼みたい。今回、その兵器に何があったのか調べてみたいのでな》

ヒューイ《それに、以前話したバトルギアを覚えてる？ あれに流用できそうだ》

スネーク「わかった。オセロット」

オセロット《了解だ。早速手配しよう》

ヘリで南西に進んでいくと、煙が上がっている施設が見えた。サラマンダーを保管していた施設だ。そこには先ほどのサラマンダーの暴走鎮圧のために導入された戦車や装甲車などの残骸が転がっている。その残骸に紛れて、道の真ん中には多くの鉄筋が散在しており、その１つにスカルフェイスは下敷きになっていた。

すぐ近くで艦娘たちを乗せたヘリを確認し、全てのヘリがここに集結していた。

スネークはミラーを支えながら、ヘリを降りてスカルフェイスへと近づく。それに合わせて、艦娘たちも次々にスネークの元へ集まっていく。

スカルフェイスからは、体に残っている酸素を何とか吐き出しながら発しているような、か細い声でスネーク達に訴えかける。

殺してくれ、と。

大井「こいつが、北上さんを…………！」

金剛「 No。北上だけじゃありまセン」

比叡「私たちだって、お姉様と離れ離れにされました」

榛名「それどころか、金剛お姉様を深海棲艦になるまで追い詰めて………」

霧島「私たち自身、かつての仲間を疑うまでに傷つけられました」

長門「仲間の安否さえ、掴めることは出来なかった。あのボスも、死んだのではないかと、途方にくれるしかなかった」

叢雲「それも9年よ？ ここの全員が、許せるわけないじゃない………」

陸奥「でも、それも今日で終わり。でしょ？」

スカルフェイスは、自身が所持していた水平二連ショットガンを掴もうと手を伸ばしてくるが、逆にそれをスネークが奪い取る。ミラーがそれを寄越してくれというので、スネークは従う。

スネークが弾を込め、ミラーが構え、スネークが狙いを定め、ミラーが引き金を引く。ミラーが失くした右腕を何度も何度も撃ち続け、スカルフェイスの右腕は遠くへと吹き飛んでいく。

弾が切れたショットガンに、スネークが弾を入れ、ミラーが構え、スネークが狙いを定め、ミラーが引き金を引く。ミラーが失くした左足を何度も何度も何度も撃ち続ける。スカルフェイスの左足も、右腕と同じ道をたどった。

ミラー《自分で………髑髏になれ！！》

そう言い捨てて、ミラーはその場にショットガンを置き、ヘリに戻る。それを見ていた艦娘たちは呆気にとられていたが、ある1人がミラーの置いたショットガンを構えて、スカルフェイスを撃ち殺そうとしている。

大井「私の前から…………私の記憶から消えろ！！！！！！」

引き金を引くその瞬間、大井はスネークに取り押さえられる。スネークは抑えようとするが、大井は一向に収まらない。

大井「止めないで！！ こいつのせいで、北上さんが……。こいつだけは、殺さないと私の気が済まない！！！！！」

スネークは大井からショットガンを奪い取り、頬を軽く叩く。その一瞬の出来事に、誰も口を挟むことは出来なかった。

大井「っ…………」

スネーク「いいか、こいつを殺したところで何も変わらない。仇を取ろうと、過ぎた過去は消すこともできない。過ぎた過去を変えることも出来ない。ましてや許すことも出来ない」

ミラー「こいつには生易しい死に方はさせない。自分の報復心に飲み込まれた鬼は、自分で ”髑髏” になるまで、死ぬことはない」

ミラーの言葉に、ここにいる全員が静寂を保ったままでいる。そんな全員を他所に、ミラーは口を開く。

ミラー「ミッション完了だ。帰ろう」

全員でヘリに戻ろうとスカルフェイスに背を向けて歩き出すと後ろからスカルフェイスがか細い声で懇願する。

髑髏顔「殺してくれ………………」

しかしその言葉は、誰の耳にも届かない。いや、届いていても言う通りにはさせなかった。皆がミラーと同じ思いだったからだ。

髑髏顔「殺せ…………………」

再び背中から声が聞こえる。先ほどよりも弱々しいが、それでも必死さが伺える声だった。

髑髏顔「殺せ…………………」

髑髏顔「おい、早く………………」

その直後、スネークたちの背中から銃声が鳴り響いた。

撃ったのは、あの深海棲艦。空母棲鬼だった。

第27話 メタルギア・サラマンダー 完

第28話 報復の矛先

セントマーティン島

メタルギアサラマンダー格納庫

空母棲鬼「 (アイツガ、私ヲコノ姿ニ………) 」

ーー《やっぱり、そうだったんだねー。………って、ちょっと、どこ行くのさ！！》ーー

空母棲鬼「 (…………………) 」

ーー《止めなって！ そいつ殺したってあんたの姿は戻らないし、あたしだって喜ばないよ………》ーー

空母棲鬼「 (ワカッテルワ、ソレクライ。 ”鬼” ヲ殺スノハ ”鬼” ノ役目。 ”姫” ジャナイ) 」

空母棲鬼「 ( ”鬼” ヲ産ミダシタノハコイツ。デモ ”姫” ヲ産ンダノハ私)……… 」

空母棲鬼「 (ダカラ、鬼(ワタシ) ハ鬼(コイツ) ヲ斃サナクテハナラナイノ。親ノ罪ハ子ガ精算スルノヨ) 」

〜〜〜

ラバウルから8000km 太平洋上空

ヘリ機内

空母棲姫「 (……………) 」

ーー《どういうつもり？ あいつを殺しちゃって》ーー

空母棲姫「 (これで、私の鬼は深海に。私に残っているのは姫だけよ) 」

ーー《…………なるほど。確かに姿が姫のままだね。口調も変わってるし？ 鬼は外に出ましたよーって？ 節分じゃあるまいし》ーー

空母棲姫「 (後は、私の姫をどうにかするだけ………) 」

ーー《あのさぁ、いい加減会話してあげたら？ ここの全員がだいぶ参ってきてるよ》ーー

空母棲姫「 (私には、彼らと同じようには暮らせないわ。だってーー) 」

ーー《はいはい。分かりましたよ》ーー

〜〜〜

太平洋

ラバウル基地

スネーク達を乗せたヘリは、ラバウル基地へと着陸する。ミラーに肩を貸しながら、スネークはヘリを降りる。

皆がスネーク達の凱旋を迎え、兵士達は敬礼を贈る。中には涙を流す兵士も少なくなかった。オセロットが出迎えると、スネークはありがとうと、オセロットに向けて言葉を放ち、握手を求め、それに答えるオセロットの姿があった。

艦娘たちは、スネークとまた戦えたこと、9年の屈辱を晴らしたこと、行方知れずの姉妹を見つけた者たちで喜びの声を上げている。

ヒューイや明石、コードトーカーの提案で送られたサラマンダーの回収部隊も基地に到着し、基地に置かれることとなった。有人機であるものの自立機構も加えられているようで、基地に立たされた瞬間に自身で直立を始めた。

叢雲「凄い………」

大井「よくもまぁこんなデカイ兵器に立ち向かったものよねぇ、私たち」

などと、艦娘たちは口々に愚痴をこぼしていく。その裏で、スネークとミラーは先を見ていた。

ミラー「この兵器が、サラマンダーが、未来に報復心を打ち込む。奴の遺言だ」

スネーク「カズ、もうよせ。奴はいなくなったんだ」

ミラー「わかってる。ただの世迷言だ。……………だが、まだ終わった気がしない」

俺たちの失くした痛みは、消えていない……………

・・・・・・

ーー親愛なるダイヤモンド・ドッグズの諸君!ーー

ーースカルフェイスは死んだーー

ーーだが、俺たちは仲間の仇を取れたか？ーー

ーー奴は死んだが、奴が俺たちに打ち付けた幻肢痛は消えていないーー

ーーサイファーもまだ残っているーー

ーー彼らが、俺たちを内側から蝕むスパイを紛れ込ませているのは明らかだーー

ーーいいか、仲間を疑えーー

ミラー「そして、疑わしきは告発しろ。それこそが、俺たちを守る唯一の方法だ！！」

全ての兵士が只々、ミラーの演説を黙って聴き続けている。

ミラー「俺はもう、目が見えない」

その言葉に、スネークを始めとする全員が驚く。ミラーはおもむろにサングラスを取り、皆にその眼を見せる。

ミラーの目は白く濁っており、恐らく白内障と呼ばれるものだろう。目の中にある水晶体が濁ってしまう病気だ。ミラーの目はかなりの重症で、失明してしまっているのだろう。

ミラー「だから、君たちが俺の目になれ！ スパイを許すな！！ 最も危険な敵は、俺たちの内部にいる！！！！！」

第28話 報復の矛先 完

第1章 覚醒 完

第2章 真実

第29話 知りすぎた者

コードトーカー「……………ふむ。どうだ調子は？」

瑞鶴「うん、だいぶ良くなった。サンキュー」

コードトーカー「しかし、随分としぶとい奴だ。あれ程までに侵食が進んでいながら、元の姿に戻る兆しがあるなど初めてだ」

瑞鶴「ふっふーん、瑞鶴には幸運の女神がついているからね。簡単に死ぬ訳にはいかないのよ」

コードトーカー「そうか。また何かあれば来るといい」

瑞鶴「うん、ありがと。…………そうだ、ちょっと聞きたいんだけどさ……あの空母棲姫って何者なの？」

コードトーカー「あの蛇が連れてきた者らしい。お主と同じように、かつては艦娘の姿を持っていた者だ」

瑞鶴「ふーん。お爺さんってさ、何で私たちに詳しいの？ 深海棲艦についても妙に詳しいじゃない？」

コードトーカー「そのことか。そうだな、虎穴に入らずんば何とやらだ。私も、半分深海棲艦なのだよ。それ故に、様々なことを知っておるぞ」

瑞鶴「えっ！？」

コードトーカー「人と艦娘では、深海棲艦となる条件が異なるのでな。人間は艦娘と比べて、深海棲艦化への耐性が強いのだよ。それを上手く使えば、便利なものだ」

瑞鶴「ふぅん………。じゃあさ、深海棲艦って叩いても叩いても何度も何度も出てくるでしょ？ あれって何でなの？」

コードトーカー「理由は多数あるぞ？ １つには幾つでも替えがあることだ。深海棲艦は、人や艦娘の無念が形を成したものと考えてみよ。厳密には異なるが、根本的にはそうなのだ。人と艦娘がおれば、これは潰えることはない」

スネーク「どうだ？ 調子は」

瑞鶴「ボス！ 全然平気よ。まさに絶好調ってところね！」

スネーク「何やら面白い話が聞こえてな」

瑞鶴「あぁ………それって、本当は聞いちゃいけなかったりとかするの？」

コードトーカー「そんなことはない。とやかく周りに吹聴しなければな」

コードトーカー「もう１つは、彼女ら深海棲艦と、お主ら艦娘とは修理の方法が異なるのだ。お主らは入渠によって修理を行うが、彼女らは深海そのものが巨大な修理施設なのだ。海の底に沈む。それこそが自身の修復なのだ」

瑞鶴「………………」

コードトーカー「艦娘と深海棲艦は、コインの表裏。白日の下に晒される光と光も届かぬ深海の影。対の存在なのだよ。適切に処置を取らねば、どちらかに呑まれるか死んでしまうかのどちらかだ」

スネーク「あんたは半分深海棲艦だと話したが、生活に支障が出たりはしないのか？」

コードトーカー「人は抗体があると話しただろう？ 自身の意識下に深海棲艦を押し込めておるからの。能力が使えても表に出てくることはない。因みに、私の中に棲まうのは空母だ。お主らと同じように、艦載機に近いものを扱える」

瑞鶴「へぇ…………」

コードトーカー「…………………ふむ、深海棲艦だけが使える言語を知っているかね？」

瑞鶴「あの時、私が使っていた言葉？」

コードトーカー「そうだ。人語を理解する個体もいるが、完璧ではないだろう？ 深海棲艦だけが使える言語があるのだ」

スネーク「なるほど、それで ”コードトーカー” か」

瑞鶴「ボス………どういうこと？」

オセロット「コードトーカーというのは、第二次大戦中に暗号として使われた言語を元の言語に戻す役割を担った連中のことだ。簡単に言えば、暗号の翻訳者って所だ」

コードトーカー「いつの間に？ ………そうだ。コードトーカーの名はそこから来ているものだ」

スネーク「なるほどな。なら、あいつとの会話も可能か？」

コードトーカー「以前2人きりの時に軽く試してみたが、変わらなかった。何も発しない」

コードトーカー「深海棲艦とは、不幸な者たちなのだよ。一度死を体験し、自らが再び死ぬとわかっていても戦いを止められない存在なのだ」

スネーク「……死してなおも、戦いを望む者、か」

オセロット「ご老人、それは俺たちに対する皮肉か？」

コードトーカー「そんなことはない。が、気を悪くしたのなら謝罪しよう。さて、私は外へでる。偶には太陽を浴びたいのでな」

第29話 知りすぎた者 完

第30話 カズヒラ・ミラーのハンバーガー その1

ミラー「……………なるほどな。あんたも深海棲艦だった、と？」

コードトーカー「半分だけな。ふぅ、話し疲れた。食事と休息を取らせては貰えぬか？」

ミラー「何だ、腹が減ったのか？ あんたみたいな半分化け物でも、腹は減るんだな」

コードトーカー「化け物であろうと人外の者であろうと、生きていれば腹は減るものだ」

ミラー「まあ、何か食べたいものがあれば言ってくれ。3つ星レストラン並みとはいかないが、大抵のものはここで作れる。味も保証しよう」

コードトーカー「では、ハンバーガーを。昨今の我々の生活もアメリカナイズされているのでな…………」

ミラー「何！？ ハンバーガー？ 散々アメリカに苦しめられてきたあんたが？ あんなの、アメリカの資本主義を体現したそのものじゃないか？」

コードトーカー「それを言われれば耳が痛い話だが、ハンバーガーに罪はない。食べ物には、国境も何もないだろう？」

ミラー「まあ、あんたが良いなら構わないが………わかった。すぐに用意しよう」

コードトーカー「そうかそうか。断っておくが、私はハンバーガーには煩いぞ？」

ミラー「ほぉーう、いいだろう。俺もハンバーガーには口煩い方だ。待っていろ、今すぐ美味いハンバーガーを作ってきてやる」

コードトーカー「楽しみにしておこう」

ー数十分後ー

ミラー「ほら、持ってきたぞ！」

コードトーカー「そうか。では一口…………」

ミラー「どうだ、美味いだろう？ ん？」

コードトーカー「ふむ…………………」

ミラー「どうだ？」

コードトーカー「論外だな」

ミラー「なっ…………」

コードトーカー「パティは薄いし、バンズもパサパサ。レタスはしなびていて、おまけにトマトにはみずみずしさがない。１つ１つの具材がお互いに殺しあっている。これでは、一流と呼ぶにはまだまだだ」

ミラー「……………それでも、ビーフ100%で、バンズにはショートニングも使っていない。素材自体には何の問題もない」

コードトーカー「なるほど、素材の味だったか。だが、やはり美味くなければ食べても楽しみはない。それでは素材の無駄、自然への冒涜行為だ」

ミラー「くっ……………。悔しいが、あんたの言う通りだ。あれだけでかい口を叩いて、こんなハンバーガーしか出せずに申し訳ない。今に見ていろ、必ずあんたをギャフンと言わせてやる！」

コードトーカー「そうか、楽しみにしているぞ」

第30話 カズヒラ・ミラーのハンバーガー その1 完

第31話 9年間のブランク その1

瑞鶴「あっ！ ねぇ、貴方！」

オセロット「…………俺か？」

瑞鶴「他に誰がいるのよ？」

オセロット「名前で呼ばれないことには分からないからな。で？」

瑞鶴「じゃあなんて呼べばいいのよ？」

オセロット「…………おれはオセロットだ」

瑞鶴「それ、コードネームでしょ？ 本名は？」

オセロット「…………コードネームで呼ばせる人間が、本名を口走ると思うか？ そもそも、俺の本名を知っているのは殆どいない」

瑞鶴「ボスは？」

オセロット「ボスは知っている。お互いにな。というか、本題に入ってくれないか？」

瑞鶴「あぁ、そうそう。ボスがさ、何か私に対して冷たいっていうか………他人行儀？ みたい所があるのよねぇ………」

オセロット「それは………いきなり初対面の人物にぐいぐい来られたら流石の俺でも引くぞ？」

瑞鶴「初対面でぐいぐい行くほど私は軽い女じゃないわよ！ って、何言わせてんのよ！！！！」

オセロット「さっさと本題に入ってくれ、埒があかない」

瑞鶴「じゃあ ”埒をあける” 為に話進めるけど、私一応9年前から一緒のはずなんだけどね………？」

オセロット「それ、本当か！？」

瑞鶴「え？ えぇ、もちろん」

オセロット「……………始まったか」

瑞鶴「え？ 何が？」

オセロット「いや、何でもない。もう良いか？ ボスにはこっちからも伝えておく」

瑞鶴「う、うん………別に構わないけど」

瑞鶴「……………自分で言いに行くのになぁ」

・・・・・・

ミラー「そうか。ボスの記憶がな………」

オセロット「最悪のケースが開かれた。どうする？」

ミラー「まず、ボスが一体どの位の記憶をなくしているのか。そこを探す必要がある」

オセロット「そうだな。どうやって探す？ 本人に聞くのが1番だと思うが……… 」

ミラー「少し、時間をくれ。色々と手を考えたい」

第31話 9年間のブランク1 完

第32話 カズヒラ・ミラーのハンバーガー その2

コードトーカー「カズヒラ、そろそろ美味いハンバーガーは出来たか？」

ミラー「もちろんだ！ あんたの言葉に目が覚めた俺は、以前より更に美味いハンバーガーを作り出してしまった！！」

コードトーカー「大した自信だな。期待させてもらうとしよう」

ミラー「そのハンバーガーがこれだ。ビーフには日本が誇るA5ランクの高級黒毛和牛をブレンドしたパティだ！ バンズも、我々ダイヤモンド・ドッグズの研究開発班が材料の配合を細かく分析して作り上げた最高のバンズだ！ 」

ミラー「その他のレタスやトマトも、地下の菜園で採れたての物を使っている。これを最高のハンバーガーと言わずに何と呼ぶ！！」

コードトーカー「なるほど、高級路線で攻めていくか。では、一口頂こう」

ミラー「遠慮せずに食ってくれ。俺は、これ以上ないハンバーガーだと自負している」

コードトーカー「…………………」

ミラー「どうだ？ 美味いだろう？」

コードトーカー「ふむ、上手いことは上手いが、私がかつて食べたハンバーガーよりは劣るな」

ミラー「手厳しいな………。って、あんたもしかしてその時のハンバーガーを食べたかったのか？」

コードトーカー「まあ、そうなるだろうな。沖縄で口にしたあのハンバーガーは比べ物にならないほどに美味かった………」

ミラー「そ、それなら早く言ってくれよ！ こちとら最高のハンバーガーを作り出してしまったじゃないか！」

コードトーカー「カズヒラ、お前はそのハンバーガーにやけに自信があるようだが、その自信は何処から来ているのだ？」

ミラー「ラバウル基地に所属するスタッフ、艦娘、総勢300人にモニターを頼んだ結果、とても美味いと答えたのが280人だったんだ。ボスからもお墨付きを貰ってな。だが、肝心のあんたからはっきり美味いと言わせられなかったのが残念だ」

コードトーカー「…………井の中の蛙大海を知らずとは、よく言ったものよ」

ミラー「ともかくだ、また新しい製品が出来たら持ってくる。次こそはギャフンと言わせてやる！！」

コードトーカー「楽しみにしておるぞ。…………と言うか、製品？」

第32話 カズヒラ・ミラーのハンバーガー その2 完

第33話 理由

ミラー《ボス、話したいことがある。至急、ラバウル基地まで戻ってきてくれ》

ラバウル基地

拷問部屋

オセロット「喋る気になったか？」

空母棲姫「……………………」

ミラー「どうだ？」

オセロット「いや、何も喋らない。沈黙を守ったままだ」

スネーク「おい、何やってんだ？」

オセロット「こいつにも、色々と聞いておかなくてはならない事がある。まずは話をできるようにしたいんだが……………」

スネーク「…………手荒なことはするなよ」

ミラー「あんたの身体を診させてもらった。これがその診断書だ」

ーー《うわー、そろそろやばいんじゃないの？》ーー

空母棲姫「 (うるさい。静かにして) 」

ーー《へーい》ーー

ミラー「お前の肺は半分以上が焼け爛れている。そしてその肺から、消毒用エタノールが検出された」

空母棲姫「………………」

ミラー「そうだ。お前はあの時、あの病院にいたことに他ならない！ スカルフェイスの命令で、ボスを殺そうとしたんだろう！！！！」

空母棲姫「………………」

ミラー「おい、やれ！」

DD兵「はっ！」ﾊﾞｼｬﾝ

空母棲姫「っ……………」ｼﾞﾀﾊﾞﾀ

ミラー「あいつらが使う修復材だ。美味いか？」

コードトーカー「おい、止めさせろ。死ぬかもしれんぞ！！」

ミラー「さぁ、話せ」

空母棲姫「…………ぁ」

ミラー「声を出せ！」

空母棲姫「っ………………」

ミラー「喋ろ！！！！！！！」

オセロット「おい！ もういい。止めろ」

スネーク「…………待て。俺が逢った襲撃者は、人間だった。いや、艦娘かもしれないが深海棲艦ではなかった」

ミラー「それが何だ？ 」

オセロット「こいつがどうやって、どんな理由でこの姿になったのかが分からない」

ミラー「だから何だ！」

オセロット「気にならないか？ ボスを襲うようになった理由って奴を」

ミラー「だから、スカルフェイスの手下として襲って…………いや待て」

オセロット「そうだ。スカルフェイスは深海棲艦を操ることはできるが、生身の人間、艦娘を操れると思うか？」

ミラー「なら、元から殺意があったんだ。或いはスカルフェイス以外の誰でもいい。ボスを狙う連中は世界中にいる」

オセロット「なら、スパイだと言いたいのか？」

ミラー「そうだ。サイファーの手先でなくとも、こいつは深海棲艦。人類の敵だ」

オセロット「なら、俺もスパイだ。お前もか？」

ミラー「っ…………」

オセロット「キリがないぞ。本人に話す気がないなら時間の無駄だ」

ミラー「なっ、おい！！ 何処に行く！」

オセロット「今日は終いだ。どうせ時間は沢山ある。急く必要もない」

スネーク「おい、離してやれ」

ミラー「…………………フンッ」

ミラーが部屋を後にすると、スネークは空母棲姫を縛っている縄を解く。そしてスネークと兵士が部屋を出て行くと、コードトーカーは空母棲姫の側に寄る。

コードトーカー《この言葉がわかるか？》

コードトーカーは日本語ではない言葉で空母棲姫に語りかける。かつての話にも出ていた、深海棲艦が独自に使う言語だ。

コードトーカー《この言葉がわかるか？》

空母棲姫《……………えぇ》

コードトーカー《その姿にはスカルフェイスが？》

空母棲姫《……………違うわ。私自身がなったの》

コードトーカー《そなた自身が？》

空母棲姫《この姿になったのも、私の自業自得。あの男に利用されたの》

コードトーカー《蛇を殺すつもりか？》

空母棲姫《……………違うわ》

コードトーカー《声が出せないのか？》

空母棲姫《違うわ。私はあの人の下に居たいだけよ。ずっと…………》

空母棲姫《ずっと…………》

第33話 理由 完

第34話 9年間のブランク その2

ミラー「記憶がなくなるか…………」

オセロット「ミラー、ちょっといいか？」

ミラー「何かあったのか？」

オセロット「いや、そうじゃない。ボスの記憶喪失だが、もしかすると ”解離性健忘” かもしれない」

ミラー「解離性健忘？」

オセロット「極度の心的ストレスをきっかけに、記憶の一部分に蓋をするんだ。早くて数日だが、ボスの場合は重度の症状だな」

ミラー「ストレスか………9年前のあの出来事か？」

オセロット「恐らくな。ボスを診ていた医者は外科医だ。精神科医ではないから、そこまで考えを至らせることはできなかったようだな。といっても、あの惨劇じゃあ恐らく死んでしまっただろうな」

ミラー「なら、きっかけがあれば思い出すと？」

オセロット「きっかけじゃなくてもいい。時間が経てば戻る場合もある」

ミラー「…………つまり、ボス次第ってことか」

オセロット「そうだな。ボスの記憶を戻す鍵。案外俺たちの近くにいるかもしれないぞ？」

瑞鶴「待ちなさいよ。私だって、少しくらい責任感じてるんだから……」

ミラー「お前、いつの間に……」

瑞鶴「9年前の横須賀襲撃。そもそも、私が助けを求めたのが事の発端よ。そのせいで、みんなが沈んで、離れ離れになって………」

オセロット「…………」

瑞鶴「だから…………お願いします。私にも、手伝わせてください！」

ミラー「…………」

オセロット「…………わかった。手を貸してくれ」

瑞鶴「っ……！！ よし！ じゃあ何から始める？ なんでも言ってくれていいのよ？」

第34話 9年間のブランク その2 完

第35話 カズヒラ・ミラーのハンバーガー その3

比叡「こんにちはー！」

コードトーカー「うん………何用か？」

比叡「ハンバーガーが大好きだと聞いて持ってきました！！ 召し上がれ！」

コードトーカー「誰から聞いたのだ？」

比叡「ミラー副司令ですけど？」

コードトーカー「肝心のカズヒラは何処にいるのだ？」

ミラー「ここにいるぞ」

コードトーカー「カズヒラ、何ということを………」

ミラー「何だ、知っていたのか」

コードトーカー「貴様…………！！」

比叡「どうぞ！ 遠慮せずに！！ ほらほら！」

コードトーカー「で、では一口…………」

ミラー「ど、どうだ？」

コードトーカー「うむ………ん…………うー……………」

ミラー「…………」

コードトーカー「…………これなら、カズヒラが最初に私に食べさせたハンバーガーよりはマシだな」

ミラー「な、何だと…………」

比叡「それって、喜んでいいんでしょうか？」

ミラー「くそっ………何てことだ………よもやこいつに負けるなどとは夢にも思わなかった」

比叡「あれ？ 馬鹿にしてません？ いま私を馬鹿にしてませんでした？ ねぇ？」

コードトーカー「カズヒラ、肝心のお前のハンバーガーは出来たのか？」

ミラー「あ？ あぁ………。勿論だとも………」

コードトーカー「ふむ、今回のはどのような？」

ミラー「それは……食べてからのお楽しみってやつだ」

コードトーカー「そうか。では、頂こう」

ミラー「あぁ、食ってみてくれ」

コードトーカー「ん…………んん………ブフゥ！！！！！」

比叡「吐いた！？」

ミラー「やっぱりダメだったか………」

コードトーカー「か、カズヒラ！！ 貴様ここに何を入れた！？」

ミラー「いや………あんたが半分深海棲艦だって聞いて………だったら艦娘の資源も食えるだろうって思って…………」

コードトーカー「何・を・入・れ・た？」

ミラー「入れたっていうか、バンズには鋼材を用いて、パティはボーキサイト、ボーキサイトを焼く為の油に燃料を使って、弾薬をトマトとかレタスの代用にしたり何かしちゃったりしちゃって…………」

コードトーカー「なら貴様が食え！！ そら、食ってみろ！！！」

ミラー「ま、待て！ 俺は人間だ………グボォァ！！！！！」

比叡「ひぇぇ！！！ 本当の修羅場になってますぅ！！ 喧嘩は駄目ですよ！！！」

ミラー「あっ！ 何これ、不味い！！ めっちゃくちゃ不味い！！ ちょっと、ちょっと待って！！！」

比叡「ひぇぇ！！！ 誰か！ 誰かぁぁぁぁ！！！！！！」

ミラー「ｱ-………ｳｱ-……ｲﾏﾅﾗ………ｵﾚﾅﾝﾃﾞﾓｸｴｿｳ………」ﾋﾟｸﾋﾟｸ

コードトーカー「金輪際ふざけた真似はするでないぞ！！」

比叡「うわぁ………可哀想に……。………あれ？ このハンバーガー美味しい………」

この資源ハンバーガーが、艦娘内で空前の大ヒット。後の世、艦娘達に持たせられる戦闘糧食の原型となるのであった。

第35話 カズヒラ・ミラーのハンバーガー その3 完

第36話 鬼の脚

ミラー《ボス、エメリッヒがあんたに用があるらしい。奴の元に行ってくれ》

ラバウル基地内

バトルギア格納庫

スネーク「ヒューイ、何の用ーー」

ヒューイ「スネーク、待って！！」

スネーク「おい、そっちから呼んでおいてそれはーー」

ヒューイ「もうすぐで完成するんだ。僕の、僕たちの歯車が！！！！」

スネーク「 ？ 」

ヒューイ「よし。スネーク、来てくれ！」

スネーク「一体何なんだ！？」

ヒューイ「完成するんだよ、バトルギアが！ 今までなかなか作業が進まなくてね。パーツに問題があって色々と悩んだんだけど、サラマンダーのパーツを流用してやっと完成したんだ！！」

明石「あ、ボス！！ 出来ましたよ出来ましたよー！！ ボスがあのロボットを鹵獲してくれたおかげで、捗っちゃいました！」

スネーク「そうか、それは何よりだ。………さて」

ヒューイ「スネーク！！ ここでタバコは禁止だ！！ 機械にトラブルが起きたらどうするんだ！！」

スネーク「タバコじゃない。葉巻だ。………仕方ない、外で吸ってーー」

ヒューイ「はい、これ」

スネーク「ん？ 何だこれ？」

ヒューイ「そのまま吸ってごらん？ 思いっきりね」

スネーク「……………」ｽｩ-

ﾌｩ-

ヒューイ「どうかな？」

スネーク「何だこれは？」

ヒューイ「電子タバコだよ。どうだい？ 感想は」

スネーク「……………まあ、悪くわないがな。しかしーー」

ヒューイ「ほら、普通のタバコって煙にタールとかニコチンとかが含まれるだろう？ それらの煙は、機械の配線部分とか細かいところに入るとショートしちゃってね」

ヒューイ「でも、それの煙はただの水蒸気だ。だから機械にも悪影響はない。どうだい？」

スネーク「………なるほどな。だが、やはり代用品でごまかすってのは好きじゃないな」

ヒューイ「そういうなよ。今からそれぞれのパーツの結合作業に入る。それが終われば晴れてバトルギアはひと段落さ。この瞬間に、是非とも君に立ち会ってもらおうと思って呼んだんだ。それまでは、電子タバコで勘弁してくれ」

スネーク「……………わかった」

ヒューイ「まずは複数の足を本体に取り付ける。…………駆動系も問題はないようだ。…………うん、コアユニットとの結合による不具合もなし。脚は問題ないようだね」

明石「それじゃあ次は………これですね」

スネーク「おぉ、レールガンか？」

ヒューイ「ご名答。レールガンは色々と便利だからね。弾頭を打ち出す時に火薬は用いないから、敵に発射を感知されにくい」

明石「へぇ〜、勉強になりますね！ 私たちの艤装にも採用してみようかな、レールガン」

ヒューイ「さて、こっちは………うん、こっちも問題ないみたいだ。試しに帯電させてみようか。…………よし、大丈夫だ！」

スネーク「完成か？」

ヒューイ「一応ね。あとはハードウェアに艦娘のデータをインプットさせれば、晴れて完成ってところだ」

スネーク「なるほど。ところで、こいつは有人機か？ 無人機か？」

ヒューイ「そうだね………。有人機にもできるし、無人機にもできるってところかな。有人機で開発を進めてはいたけど、ハードウェアの構築でそれなりの性能を発揮する無人機にもできる」

スネーク「………ヒューイ、そのバトルギア、俺が動かしても構わないか？」

ヒューイ「えっ！？ 君が？」

スネーク「何か文句があるのか？」

ヒューイ「いや、僕は良いんだよ？ 作ったものがどれ程のものか意見を聞きたいし。でもあの2人が賛同するかなぁ………？」

スネーク「なに、少しくらい奴らと肩を並べてみたくなっただけだ。演習の名目でやれば奴らも文句は言わないだろう」

明石「えっ！？ それって、ボスが私たちの演習に参加するってこと？」

スネーク「まあ、そうだな。そういうことだ」

明石「だったらメンテはお任せください！ バッチリ仕上げておきますから！！」

スネーク「そうか、頼むぞ」

第36話 鬼の脚 完

第37話 絆

ラバウル基地

ダイヤモンド・ドッグズ 兵器格納庫

スネーク「ふぅ、やっと吸える………。全く、科学者ってのは面倒だな」

スネーク「大体、兵士として常に死の間際にいる人間が何十年後の身体に影響がどうだの考える必要があるのかって話だ」

ーー………してよ！！ーー

ーーあれは…………なの！！ーー

ーー…………です！！ーー

スネーク「やれやれ、葉巻を吸う暇もない」

DD兵「ほら、危険だ！！ 下がった下がった！！」

暁「お願い！ 取りに行かせて！！」

雷「もうあれしか残ってないよ！！」

電「な、なのです！！」

スネーク「どうした？ 」

ミラー「こいつらが、響との写真をそこの格納庫に落としたんだと」

スネーク「写真？ なら俺が取りにーー」

オセロット「駄目だ。たった今除染作業が始まった。中は消毒用の塩素が充満している。生身の人間が入れば、怪我どころじゃ済まないぞ！」

ミラー「諦めるんだな。大体、そんな大切なものを外でほっぽり出すのがそもそもの間違いだ」

暁「……………」

ーー《あーあ、可哀想に。って、ちょっと！！ 何しようとしてんの！！！！》ーー

空母棲姫「 (私の身体は深海棲艦よ。多少の事なら耐えられるわ) 」ﾊﾞｯ

雷「ま、待って！！ 入っちゃっ駄目！！！！」

オセロット「なっ！！ おい！！！」

スネーク「作業を止めろ！！ おい、サイレンを鳴らせ！！！」

オセロット「駄目だ、もう助からない！！ ボス、行くな！！！！！」

スネーク「っ………………！」

オセロット「……………」

ミラー「……………ふん、はた迷惑な奴だ」

電「あ、あれ！！ 何か動いているのです！！」

空母棲姫「……………」ｽﾀｽﾀ

雷「ちょっと！ 大丈夫！？」

空母棲姫「……………」ｽｯ

暁「あ………、これ………取ってきてくれたの？」

空母棲姫「……………」ｺｸｯ

スネーク「おい、大丈ーー」

空母棲姫「」ﾌﾗ

スネーク「おっ……、と…………」

オセロット「こいつ………」

スネーク「オセロット、明石とあの爺さんに連絡入れてくれ。こっちで連れて行く」

オセロット「あ、あぁ、了解した」

ミラー「…………フンッ」ｽﾀｽﾀ

2日後

スネーク「容体は？」

コードトーカー「概ね良好だ。あと2、3日は安静にしてもらうがな」

明石「もぅ、塩素濃度の高い場所に自分から行くなんて正気じゃありませんよ！！！！」

空母棲姫「……」(正座)

明石「良いですか！？ 私たち艦娘だって人間と比べて身体は強い造りですけど、だからって塩素の中に飛び込むなんて自殺行為です！！！！ 」

空母棲姫「……」(正座)

明石「深海棲艦だって、そんなことしたら死んでいたかもしれないんですよ！！！！！」

スネーク「おい、その位にしてやれ」

コードトーカー「まあ、彼女もそれなりに心配しているのだ。お互いに良き薬になろう」

スネーク「どう見てもあれは安静にとは言わないだろ……」

ｺﾝｺﾝ

スネーク「誰だ？」ｶﾞﾗｶﾞﾗ

暁「あの………お礼に来たんだけど……」

スネーク「………わかった。俺はもう行くぞ」

コードトーカー「わかった。カズヒラや山猫にも伝えておいてくれ」

明石「大体、そうやって無理をしてきた人っていうのは………あら、みんなどうしたの？」

電「あの………お礼を言いに来たのです。あれは電たちにとって、大切なものだったから………」

空母棲姫「………」

雷「それでね…………じゃーん！ 折り鶴を持ってきたの！！」

暁「私たちで作ったのよ？ すごいでしょ？」

明石「凄いじゃないですか！！ ほら！」

コードトーカー「ほう、千羽鶴にしたのか。器用なものだな」

明石「それじゃあ、どこかに飾っておきますね」

空母棲姫「」ﾁｮｲﾁｮｲ

暁「私たちのこと？」

空母棲姫「」ｺｸｯ

雷「どうしたの？ 何処か痛んだりーー」

空母棲姫「」ﾅﾃﾞﾅﾃﾞ

雷「ひゃっ！」ﾜｼｬﾜｼｬ

電「はわわ！」ﾜｼｬﾜｼｬ

暁「ぴゃあ！ もう、頭をなでなでしないでよ……！」ﾜｼｬﾜｼｬ

明石「…………」

コードトーカー「………考え事か？」

明石「えっ！？ あ、いや、何でもないです！ はい！」

コードトーカー「そうか。……そろそろ部屋を出るとしよう。あまり長く居ては身体に触るのでな。ほれ、出るぞ」

電「は、はい！ お邪魔しました、なのです！」

空母棲姫「」ﾊﾞｲﾊﾞｲ

明石「…………ねぇ、あなたもしかして、9年前にボスの元にいた？」

空母棲姫「…………」

明石「私、やっぱりあなたを見たことがあるの。いまのやり取り、9年前にも見たことがあるのよ」

空母棲姫「…………」

明石「…………って言っても、答えてくれないよね」

空母棲姫「…………」

明石「今じゃなくてもいいの。いつか、話してくれればいいなって。じゃあね」ｶﾞﾁｬ ﾊﾞﾀﾝ

空母棲姫「…………」

ーー《そろそろ決めなよ。いつまでもそのままだと、いつか時期を見逃すよ？》ーー

空母棲姫「 (お願いがあるの……)」

ーー《どしたの？》ーー

空母棲姫「 (もう、1人にして欲しいの) 」

ーー《覚悟、出来たんだ………？》ーー

空母棲姫「 (………えぇ。今まで、ありがとう) 」

ーー《……ん……わかった。こんなこと言うの変かもしれないけど、元気でね》ーー

空母棲姫「 (貴女もね。私を心配して、ずっとついて来てくれたんだもの。本当に、ありがとう) 」

ーー《いいって、そんなの。あたしが勝手について来ただけなんだし。まあ、お役御免になるけど、そこら辺を彷徨いてるだろうし》ーー

空母棲姫「 (いい加減に帰りなさいよ………) 」

ーー《あたしは自由だからねぇ。どこにでもいられるし、何処にもいないって訳よ。シュレディンガーの猫って奴ね》ーー

空母棲姫「 (それ関係あるの？) 」

ーー《ううん。実際こういったことができるのは理科的考えじゃなくて、あたしが死んでるからなんだけどね？》ーー

空母棲姫「 (ふふっ。もう、いいから行きなさい。私は大丈夫だから) 」

ーー《ほんじゃ、また会える日までって事で》ーー

空母棲姫「 (…………さて、私も頑張らないとね) 」

第37話 絆 完

第38話 カズヒラ・ミラーのハンバーガー 最終話

ミラー《ついに完成したぞ！ 爺さん！！》

コードトーカー《新しいハンバーガーか？》

ミラー《そうだ！ これが、ダイヤモンド・ドッグズの技術力を結集させた最高のハンバーガーだ！！》

コードトーカー《こ、この色は、一体………》

ミラー《前回、比叡が持ってきたあのハンバーガー。どんな裏技を使ったのかをとある交渉で吐かせたところ、化学調味料や添加物を使用していることが判明した！！》

コードトーカー《か、化学調味料！？。確かに旨味の元にはなり得るが、この色は流石に…………》

ミラー《安心しろ。見た目は悪いが、使用しているものは全て世界各国で認可されたものばかりだ。食べても問題はない！》

コードトーカー「しかし………」

ミラー《いいから、食べてみろ！！》

コードトーカー「そ、そうか………。では…………」ﾑｼｬﾑｼｬ

ミラー「…………どうだ？」

コードトーカー「う………旨い！！！」

ミラー「そうかそうか！」

コードトーカー「なんと懐かしい………これぞ追憶の味だ………。目頭が熱くなってくるわい………」ｳｯ…ｳｩ……

ミラー「ちなみにこのハンバーガー、ダイヤモンド・ドッグズのスタッフ全員に食べさせたところ、美味いと回答したのは堂々の99.98%だ！！！」

ミラー「それにこのハンバーガー、原価も信じられないほど安い！！ それに、保存料もふんだんに用いたことにより、ちょっとやそっとじゃ腐らない！！！」

ミラー「まさに、ケミカルバーガーだ！！！！！！」

コードトーカー「い、一体どれ程の量の添加物を使ったのだ…………？」

ミラー「細かいことは言いっこなしだ！！ これを使えば、ミラーズバーガーの経営も右肩上がりだ！！！」

コードトーカー「カズヒラ、早まるな！！！ 落ち着くのだ！！！！」

ミラー「そしてこれで特許を得れば、俺は………グヘヘへへ！」

コードトーカー「止めんか、馬鹿者！！」

ミラー「どうした？ 何が問題なんだ？」

コードトーカー「元々のハンバーガーでも70以上の添加物が使われておる。一体そのケミカルバーガーとやらにはどれ程の添加物が使われておるのだ？」

ミラー「ざっと数えただけでも5倍は使っているな」ｷｯﾊﾟﾘ

コードトーカー「……カズヒラ、日本が定めている ”食品衛生法” というのを知っておるか？」

ミラー「……………」

コードトーカー「そのハンバーガーは、同法第7条に当てはまる。諦めろ」

ミラー「日本では売らないもん！ アメリカとかそっちの方でーー」

コードトーカー「アメリカが認可している添加物は約130品目程だ。凡そ倍以上の添加物が含まれたそのハンバーガーは、販売できんぞ？」

ミラー「なら、ここのスタッフから金を巻き上げる！ それなら問題はないだろう！ ここは国境のない軍隊だ！」

コードトーカー「はぁ………。もう勝手にしておくーー」

比叡「ちょっと！！！ 何なんですかあのハンバーガー！！！！！」

ミラー「な、何だ！？ 」

コードトーカー「ほれ、見たこーー」

比叡「すっごい美味しいじゃないですか！！！！」

コードトーカー「何だと！？」

ミラー「そうだろう、そうだろう！」

比叡「何か……悔しいなぁ……。とっても遠いところに行っちゃった気がして……」

ミラー「何を言う。俺にとってお前は、良きライバルだ。お前と競い会えたことを誇りに思おう」ｱｸｼｭ ﾓﾄﾒ

比叡「副司令…………」ｶﾞｼｯ!!

コードトーカー「………なんだこれ？」

スネーク「何やってんだお前ら？」

コードトーカー「おぉ、蛇よ。丁度良い時に………。カズヒラが作ったあのハンバーガーを食べたか？」

スネーク「あぁ、見た目はアレだがかなり美味かったぞ？」

コードトーカー「そのことだがなーー」

明石「ちょっと副司令！！！ 何ですかアレは！！！！！！」

スネーク「何だ、何事だ？」

明石「ボス！ あのハンバーガー、食べちゃいました？」

スネーク「あ、あぁ。食ったがなかなか美味かったぞ？」

明石「副司令、即刻あのハンバーガーの製造を中止してください！！」

スネーク「食べちゃダメなのか！？」

ヒューイ「ミラー！！ 何なんだあのハンバーガーは！！！」

ミラー「エメリッヒ！？」

スネーク「科学者共が一斉に………何なんだ！？」

明石「あのハンバーガーには、食品添加物がどっぷりと含まれています！ 良いですか？ 元々の材料で作られた食品は体には良いですけど味はあまり良くありません。それを誤魔化すために食品添加物というものが用いられています」

明石「食品添加物は今や全ての食品に入っていると言っても過言ではなくて、特にハンバーガーには約70品目の添加物が含まれているんです」

明石「私がそのハンバーガーを調べたところ、もはやそれは食品というより毒の塊です！！ 発がん性物質もたんまりですよ！？」

ミラー「人聞きの悪いことを言うな。どれもこれも、世界で認可されているものばかりだ」

明石「世界で？ 日本での間違いじゃないですか！ 殆どが日本だけで認可されているものです！！ 日本は添加物の規制が甘いので、色々とやばいものも入っているんですよ？」

コードトーカー「やはりな。まぁ、カズヒラはこれを商売に使うつもりらしいが、潔く諦めるのだな」

ミラー「…………」

比叡「…………？」

スネーク「…………結局何が言いたいんだ？」

明石「今食べていたそのハンバーガーはガンを起こしたりする毒の塊ってことです！」

ミラー「日本には、こんなことわざがある。『毒薬変じて薬となる』だ。毒薬も積もればいい薬になるってことだ」

明石「全く違います。あなた元々は日本人でしょうが！」

ミラー「日本人の母親とアメリカ人の父親のハーフだ。それが？」

明石「意味が変わってますよそれじゃあ！ ”毒薬も使いようによっては薬にもなる” ってことですけど、これはもう薬にすらなりません！！」

ヒューイ「スネーク、ミラーに言ってやってくれ。あんなの、僕も科学者のはしくれとしては黙ってられないね。食への冒涜だよ！！」

明石「そうですよ！ ボスからも何か言ってください！！」

コードトーカー「蛇よ、私からも頼む」

スネーク「……………美味かったら、ダメなのか？」

科学者共「ま………、まともなのは僕 (私) らだけか！！！」

デーレッデンデーン

Snake killer………

(シークレットシアターの〆のBGM)

第38話 カズヒラ・ミラーのハンバーガー 最終話 完

第39話 小ネタ

ミラー《スネーク、ラバウル基地に戻ってきてくれ。今すぐだ………》

ーーラバウル基地 ヘリポートーー

スネーク「……………誰もいない。一体何のつもりだ？」

ﾋｭ--……

ﾊﾞ-ﾝ!!!!

ﾊﾞﾝﾊﾞ-ﾝ!!!!!

スネーク「何だ！？」

〜 ♪Happy Barth Day♪ 〜

ミラー・金剛「Happy Barth Day ♪」

オセロット・翔鶴「真の英雄 ♪」

叢雲「ハッピー バースデイ ♪」

大井「敬礼だ ♪」

長門・陸奥「ハッピー バースデイ ♪」

明石・間宮「お〜め〜で〜と〜↑ ♪」

全員「ハッピー バースデイ トゥ ユー ♪」

艦娘たち「いぇーい！！」

スネーク「…………何だこれは？」

ミラー「俺たちがここラバウル基地に来てから1年。そう、一周年記念ってやつだ。それと、ダイヤモンド・ドッグズの誕生日……まぁ、結成記念日ってやつも兼ねている」

スネーク「………何日にここに来た？」

ミラー「9月2日だ」※更新日は9/11

スネーク「完璧に過ぎてるよな？ な？」

ミラー「良いんだよ。こういうのは気持ちの問題だ」

明石「さあさあ、せっかく間宮さんが誕生日？ ケーキを作ってくれたんですから頂きましょうよ？」

間宮「はい、記念日ということで精一杯作らせて頂きました！」

大井「あぁ、安心してください。私たち以外の艦娘は遠征に回したので当分帰ってきませんから」

叢雲「たまにはいいんじゃない？ こういうの」

長門「こういったことは中々やらなかったからな。うむ、胸が熱いな」

陸奥「せっかくの誕生日ケーキなんだから、ボスにろうそくを消してもらうっていうのはどうかしら？」

オセロット「なるほど、それは良いアイディアだ。ボス、頼んだぞ」

ミラー「……………おっとそうだ！ 俺からボスにプレゼントがあったんだ。これだ！」 つ 葉巻

スネーク「……………中々に良いものだな。どこで手に入れた？」

ミラー「あんたが好んでいたキューバだ」

スネーク「そうか」ﾊﾟﾁﾝ

金剛「何でわざわざ葉巻を切るんですカー？」

スネーク「これか？ 葉巻は吸い口が閉じられているんでな。こうやって切っておかないと、葉巻は吸えない」

金剛「 I see! 勉強になりマシター！」

スネーク「………」ｽｯ

ミラー「スネーク………」ﾊﾟｼｯ

ミラー「彼女らの前で葉巻は止めてやれ」ﾌﾘﾌﾘ

スネーク「………わかった」ﾌｩ~……

艦娘たち「おめでとーーー！！！！」

第39話 小ネタ 完

第40話 黄金の歯車

ヒューイ「やあ、スネーク！」

スネーク「急に呼び出してなんだ？」

ヒューイ「バトルギアのハードウェア構築が終わったところだ。以前話していた動作テストを頼みたいと思ってね。それに伴うソフトウェアも作成済みだ」

スネーク「そうか！ 準備は？」

ヒューイ「出来ているよ。10年前のイメイゴを覚えているかい？ ほら、艦娘の艤装を兵器の武装として流用していた………」

スネーク「あぁ、覚えてる」

ヒューイ「それの技術をバトルギアの武装にも引っ張ってきた。それらの設計図もここのスタッフに渡してあるから、君の指示で作れるようにしているよ」

スネーク「そいつは助かるな」

ヒューイ「バトルギアは艦娘達が使う出撃ドックに待機済みだ。それと、これを渡しておくね」

スネーク「わかった。何だこれ？」

ヒューイ「いいから、とにかく行って！」

・・・・・・

長門「…………」

叢雲「こ、これに乗るの？」

スネーク「あぁ。………何か問題が？」

大井「いえ、別に」

スネーク「ともかくだ。この機体のテストをする事になっている。誰かに付き合ってもらいたいと思ってな」

叢雲「…………相手が欲しいなら欲しいって言えばいいじゃない」

大井「そうですよ。回りくどい言い方しないで、手伝えって命令すればいいのよ」

スネーク「よしわかった。じゃあ的になれ」

長門「その兵器のか？」

スネーク「ああそうだ。それとこいつを使うことを想定した模擬演習を実施したい」

長門「了解した。編成はどうする？」

スネーク「そうだな……お前達に任せる。俺としても、これがどれほどの力を秘めているか皆目検討がつかない」

長門「では私と金剛、大井と叢雲と翔鶴ではどうだろうか？」

スネーク「よし、それでいこう。翔鶴と金剛を連れて出撃ドックに来てくれ」

長門「了解だ」

・・・・・・

ヒューイ《やあ、スネーク。聞こえる？》

スネーク「あぁ、良好だ」

ヒューイ《こんな風に無線で連絡しながら、バトルギアについて説明していくからね？》

スネーク「わかった」

長門「ボス、待たせた。こちらは準備完了だ」

金剛「 What is it ? 」

スネーク「バトルギアという兵器だ。これを俺が動かすのに、お前達の力を借りたい」

翔鶴「わかりました。お任せ下さい」

ミラー《ボス！ 何をやってるんだ！ 勝手に艦隊を使われては困る！》

スネーク「ただの演習だ」

ミラー《ならあのデカブツは何だ！ エメリッヒの奴、有人型にするとは聞いていないぞ！》

スネーク「俺が許可した。何か文句あるか？」

ミラー《大有りだ！ 何もあんたがそいつを使って海に出ることもない！ 海はそいつら、陸は俺たち。適材適所で使ってこそだ。それに、そいつも完璧じゃない。万が一にでも不備があってみろ、あんたは海底に沈んでーー》

オセロット《そこまでだ。ボス、俺たちはあんたに従う。あんたがそうさせたんなら、俺たちは文句は言わない》

ミラー《オセロット！！》

オセロット《ボス、そいつが実際に使い物になれば彼女らの士気向上に繋がるかもしれない。それに、あんた自身が深海棲艦に殴り込むこともできる。色々と戦略も広がるぞ》

ミラー《………フン》

スネーク「ヒューイ、使い方は？」

ヒューイ《あ、あぁ。まずは操縦席に座って見てくれ。さっき僕が渡した機会があるだろう？ それがバトルギアの鍵になる。それを差し込んで、下に曲げてみてくれ。ちょうど型に合う様になっているはずだ》

スネーク「こうか？」

システム《 Good morning. Main system, normal mode actived. 》

スネーク「おぉ………」

ヒューイ《うん、起動は成功したね。君の見ているバトルギアのカメラ映像は、僕の方からも観れる様になっている。逐一君が行動を報告しなくてもいい様にね》

ヒューイ《そうしたら、上段にある一番左のスイッチを押すんだ。そこのスイッチは、色々なソフトウェアを記憶させて、それを使用する際に使うボタンだ。今は艦娘の海上を航行する技術しか導入していないから、それで勘弁してくれ》

スネーク「これか？」ﾎﾟﾁｯ

システム《System fleet mode.》

スネーク「おい、どうなってる？」

長門「機体か？ 浮いているぞ。私たちと同じように」

ヒューイ《ならよかった。右側のスティックでカメラを、左のスティックで機体を動かすことができる。まずは出撃ドックから出てみようか？》

スネーク「わかった。お前達、行けるか？」

金剛「 Of course! 任せてくだサーイ！！ 」

スネーク「最高速度はどのくらいだ？」

ヒューイ《そうだね………大体35ノット位かな？》

叢雲「35ノット……… 」

大井「陽炎型駆逐艦の平均速度………」

長門「この巨体で35ノットか………」

スネーク「なら長門、お前が先頭になれ」

長門「………了解した。艦隊、この長門に続け！！」

スネーク「こうか？」ｶﾞｺﾝ

大井「ひゃぁぁぁぁ！！ 気持ち悪い！！ 何で蜘蛛みたいに動くのよ！！！！」

長門「滑る………というより歩くだな」

叢雲「うーん………そこそこ速いけど、これで35？」

ヒューイ《よし、そのまま基地の演習場に出てみようか》

・・・・・・

ヒューイ《それじゃあ、これから本格的に演習を開始しよう。まずは簡単な操作からね？》

ヒューイ《左のスティックで移動するのはわかってもらえたと思うけど、少し操作に慣れてもらうよ。スティックを左右に倒すと、その方向に平行移動するんだ。やってみて》

大井「…………動いてるわよ。蟹みたいだけど」

ヒューイ《平行移動異常なしと。それじゃあ左のスティックの真ん中にスイッチがあるのが見えるかい？》

スネーク「ああ。見える」

ヒューイ《それを押し続けるとブースターを起動させて移動を始める。ブースターの使用で35ノットの航行が可能だ。解除するにはボタンから指を離せばいい》

スネーク「」ｶﾁｯ

長門「翔鶴！ 背後を開けろ！」

翔鶴「えっ！？ きゃあぁぁぁぁ！！！！」ﾋﾞｭﾝｯｯ!!!!!

大井「ボス！！ 止めて止めて！！ 翔鶴が吹き飛ばされてる！！！！」

スネーク「何！？ おい、大丈夫か！！」

翔鶴「は………はい…………、大丈夫………です」小破

ヒューイ《おいおい！ 背後はなるべく開けてくれ！ 》

翔鶴「そういうことは、もっと早く言ってください………」

ヒューイ《さぁ、気を取り直してもう一度だ。ブースター使った加速は35ノットまでに引き上げることができるが、あまり多用すると燃料切れにつながる。それと、直線にしか進むこともできないからそこにも注意してくれ》

ヒューイ《………うん、問題ないみたいだね。さて、次はカメラの移動だ。左右でカメラを移動。上下でズームインとアウトが可能だ》

スネーク「なるほど。これなら遠距離射撃も可能だな」

ヒューイ《うん、カメラ動作異常なしと。次に左スティックを前に、右スティックを左右に倒すと、カメラの向いた方向に進む。右に倒せば右に曲がるし、左に倒せば左に曲がる。ブースターの時も同様だ》

スネーク「………中々に難しいな」

ヒューイ《それがバトルギアの基本行動さ。さあ次に攻撃の方法を教えるよ。右スティックの真ん中にあるボタンを押し続けてみて？》

スネーク「これだな？」ｶﾁｯ

ﾁｭｨｨｨﾝ

ヒューイ《そこのボタンでレールガンのチャージが行われる。押し続ければその分弾頭の飛距離が伸びるし、威力も上がる設計さ。ボタンを離せば弾頭を発射するよ。ただし、チャージにはエネルギーを消費する。あまり多用しないでね？》

スネーク「わかった」

ヒューイ《右スティックで照準を合わせることができる。モニターに映っているのがレールガンの照準さ。下部に左から右に伸びるゲージがあるだろう？ それはレールガンのチャージの進行度を表している》

ヒューイ《25%、50%、75%、100%の4段階で表している。25%以下でボタンから指を離すと弾頭は発射されない。25%以上でボタンを離してくれ》

ﾁｭｨｨｨｨﾝ!

ヒューイ《よし、フルチャージ！ 今だ！！》

スネーク「はいだらー！！！！」

ﾄﾞ--ﾝ!!!!!!

長門「うわっ！」

大井「ちょっと！！！！！ 何て衝撃よ！！！」

叢雲「これと一緒に出るのは、流石に骨が折れるわね…………」

金剛「 Oh, dear………」

翔鶴「 (はいだらって何なんでしょうか……？) 」

ヒューイ《レールガンも完璧だ。サラマンダーの奴を換装させたんだけど問題ない様で何よりだ》

長門「うっ………」

金剛「 What up? どうしマシター？」

長門「いや、以前1発で大破に追い込まれたのが少しな………」

翔鶴「トラウマになってるのね………」

スネーク「よし、存分に付き合ってもらうぞ！！」

一同「はーい………」

第40話 黄金の歯車 完

第41話 死してなおも輝く

ミラー《ボス、緊急事態だ！！ 急いで基地まで戻ってくれ！！ 》

ーーラバウル基地 ヘリポートーー

スネーク「…………カズ！ 何があった？」

ミラー「ボス、サラマンダーに搭載されていた核弾頭の事なんだが」

スネーク「あぁ、たしかショートランド泊地に輸送したと聞いているが？」

ミラー「あぁ、確かにそうだ。輸送を開始したのは2ヶ月ほど前。ひと月前に到着したところだが、泊地の司令部に荷揚げしている最中に深海棲艦から襲撃を受け、放射能が露出したことは話したな？ 」

スネーク「それも聞いている。除染作業は概ね順調だと話しただろう？」

ミラー「だが、数日前にショートランド泊地からの連絡が途絶えてしまったんだ。事態を掴むために救助隊を送ったんだが………」

スネーク「何があった？」

ミラー「救助隊から突如通信が途切れ、一向に帰ってこない！」

スネーク「ショートランドにいる連中は？」

ミラー「殆どが研究スタッフだ。艦娘はラバウルに停泊させているから、問題はない。二次隊も編成済みだ。ボス、指示をくれ」

スネーク「俺が行く。1人でいい」

ミラー「ボス、待て！！ 何もあんたが行くことはない！」

スネーク「これ以上の犠牲は出せない。内輪揉めは沢山だろう？ 大勢で行って、連中が恐慌状態にでもなればどうする？」

スネーク「もう、犠牲は出したくない」

ミラー「…………わかった。では先ず、ショートランドで何が起きているのかを調べて欲しい。スタッフの救助も頼みたいが、優先は内部調査だ。頼めるか？」

スネーク「カズ、情報が入り次第こっちに送ってくれ」

カズ「あぁ。ボス、気をつけてくれ」

パイロット《上昇開始！》

・・・・・・

DD兵1《おい、どうした？》

DD兵2《……こいつを見てくれ。死んでる。まるでボロ切れだ》

DD兵3《脈もない……。どうすりゃ人間がこんなになるってんだ………》

DD兵1《うっ………》

DD兵2《なっ！ おい！！！》

DD兵1《何だ！？》

スタッフ《ｧ……ｳｧ……ｶﾞｧｧｧｧ！！！》

DD兵3《し、死体が動いている！？》

DD兵1《おい！ 気をつけろ！！！》

DD兵2《う………うわあぁぁぁぁぁ！！！！！！！！》

ーーショートランド泊地近海上空ーー

ミラー《これが、救助隊から送られた最後の映像だ。外でスタッフが待機している。あんたはそこで防護服を受け取ってくれ》

パイロット《どうかお気をつけて、ボス！》

スネーク「連中には防護服を渡したのか？」

ミラー《もちろんだ。除染作業は順調に進んでいたが、未だ完璧ではない。だからあんたにも、念のために防護服を着用してもらいたい》

DD兵「ボス、どうぞ！」

ミラー《あんたに頼みたいのは２つ。１つ、内部状況を見極めること。２つ、生存者の救助だ。安全のために、あんたが入った瞬間に入口は外から閉じさせてもらう。中からの開閉は不可能だ》

DD兵「お気をつけて！！」

スネーク「俺に何かあれば、その時は頼むぞ！」

ミラー《演技でもないことを言うな。ダイヤモンド・ドッグズの命は、全部あんたにかかってるんだ》

スネーク「………っ！」

ミラー《どうした？》

スネーク「すごい臭いだ。肉の焦げる臭いに、硝煙や血の臭い、腐乱臭もする。防護服越しでも分かるほどだ」

ミラー《…………ボス、気をつけてくれ》

ーーや、止めてくれぇ！！！ーー

バンッ！！！

ーーギャアアァァァァァ！！！！！ーー

………………

スネーク「……………」

ミラー《ボス、生存者の確認が取れた。建物の最上階だ。今すぐ向かってくれ》

スネーク「わかった」

・・・・・・

ミラー《いたな。そいつだ》

スネーク「おい、大丈夫か？」

DD兵「………ボスですか？ よかった………ボスはまだ無事のようですね………」

スネーク「おい、何があったんだ？」

DD兵「………救助隊が来てからです。1人のスタッフが急に暴れだしました………」

スネーク「暴れだした？」

DD兵「見境いありません。それを見ていた兵士も、次々と暴れ始めました………。始めは、隣にいた仲間を。次は、建物内の人間を………。地獄絵図です」

スネーク「どうやってここまで生き延びた？」

DD兵「隠れながらです。何とかここまで来れましたけど………駄目なようです………。ボスは、早くここから離れてください………」

スネーク「どういうことだ？」

DD兵「………来ます」

グアァァァァァァァァ！！！！！！

スネーク「………こいつ」

DD兵「そうです。深海棲艦です………。ボス、深海棲艦を………ここから出さないで下さい………！！！！」

スネーク「どういうことだ？」

コードトーカー《よいか！ 絶対に彼らを外に出すな！！！ 第三次大戦の幕が開かれることになるぞ！！！！！！》

スネーク「なっ！？」

ウアァァァァァァァ！！！！！！

スネーク「こいつら………離れろ…………！！！！！！」

コードトーカー《蛇よ！！！ 撃つのだ！！ 躊躇ってはならん！！！！！》

ミラー《ボス！ 撃て！！！！！》

ゥゥ………ゥアァァァァァァァァァ！！！！！！！

ミラー《まずい！！！！！》

スネーク「お前たち…………」

スネーク「…………許せ」

バンッ！！！

バンバンッ！！！

グアァァァァ！！！！！

ミラー《焼けぇ！！！！！！！》

　

ﾄﾞｫ-ﾝ!!!!!!!!!

スネーク「ぐっ…………」

コードトーカー《蛇よ、それで良いのだ…………》

スネーク「………どういうことだ？ なぜ深海棲艦が？」

コードトーカー《恐らく、ここのスタッフが恐怖に煽られたのだ。核というのは、いわば人間が作り出した恐怖、報復心そのもの。彼らは核による恐怖や、現状の惨劇に目を背けることができずに、深海棲艦に乗っ取られたのだ》

スネーク「そんなことが…………」

コードトーカー《よいか？ そこには多くの人間がおり、その殆どが深海棲艦へと成り果てた。建物内の深海棲艦が外へ出れば、外の兵士が彼らと同じ道をたどる。そしてそれはやがてエピデミックのように広まり、世界が深海棲艦で溢れることになる》

スネーク「…………」

コードトーカー《そうなれば、スカルフェイスの目論見が現実となってしまう。何としても止めるのだ！！》

ミラー《ボス、躊躇うな。このまま大事になる前に、目を摘む方が最善の選択だ》

スネーク「……………わかった」

ミラー《スネーク、さっきのスタッフだが、どうやってあんたを深海棲艦か否かを見極めたんだ？》

スネーク「おい、大丈夫か！？」

DD兵「はい。ボス………これを………」ﾎﾟ-ﾝ

スネーク「これは？」ﾎﾟ-ﾝ

DD兵「艦娘が使っているレーダーを、人間用に改良したものです。………彼女、明石が作ってくれました………」ﾎﾟ-ﾝ

スネーク「…………お前も、反応が出ているが」ﾎﾟ-ﾝ

DD兵「えぇ。私も、駄目ですね。ボス、お願いします。私が彼らのようになる前に…………。どうせ死ぬなら、あなたに殺された方が本望です………」ﾎﾟ-ﾝ

スネーク「………良いのか？」ﾎﾟ-ﾝ

DD兵「………はい」ﾎﾟ-ﾝ

ミラー《ボス………頼む………》

スネーク「………」ﾊﾞﾝｯ!!

DD兵「ありがとう………ございます」ﾊﾞﾀｯ

ミラー《そうだスネーク。…………それでいいんだ…………》

ヒューイ《スネーク、何やってるんだ！！！ 仲間を殺すなんて…………！！》

ミラー《エメリッヒ、お前の出る幕じゃない！！》

ヒューイ《申し訳ないけど、仲間としてこれには黙ってられないね。君はあれだけ、僕たちは家族も同然だって言ってきたじゃないか！！》

オセロット《博士、止めろ！！》

ヒューイ《………何がビッグボスだ。こんなの………こんなの、ただの人殺しじゃないか！！》

ミラー《エメリッヒ！！！》

オセロット《………ボス、もしスタッフが深海棲艦になっていたなら、あんたが殺してやってくれ。見ず知らずの奴によって殺されるくらいなら、彼らが慕うビッグボスが終わらせてやったほうがいい………》

ミラー《生存者を見つけたら、そのまま一緒にそこから出てくれ》

スネーク「あぁ…………」

《それからも俺は、彼らを殺し続けた。覚悟を決めているとはいえ、彼奴らはどれだけ無念だったことだろうか。》

《死ぬことを恐れて俺に銃を向ける兵士もいれば、俺に殺されることを望む兵士もいる。さっきの銃声とナパームの爆撃音が聞こえたせいか、仲間同士で打ち合ったところもあるようだ。辺りに薬莢や弾痕があり、仲間の屍が山のように積まれている。》

スネーク「………カズ、生存者はゼロだ」

ミラー《………わかった。……………済まない》

《勿論、居なかったわけじゃない。カズは理解してくれたはずだ。》

《俺が殺したんだと。》

薄暗い建物の中を、1人の男が歩いている。カツン、カツンと足音だけが廊下に響き、男の目に映るのは壁に着いた血と、多くの人間の死体だけだった。

男は広がる死体の真ん中に立ち尽くし、膝を折り、手を広げ、仲間の死を全身で受け止めている。そこはまさに地獄であり、蠱毒のようであり、とても現世とは思えないほどの禍々しい空間である。

男はふと、血だまりを見つめていた。

中に映るのは、 ”鬼” 以外の何者でもなかった。

ーーその日の夜ーー

ラバウル基地では、多くの蛍火が広がっている。もちろんそんな生易しいものではなく、ショートランドで亡くなったもの達の死体を焼いているのだ。

スネーク「………」

ミラー「ボス、助ける方法はなかった。みんな感謝している」

ミラー「………本望だろう。ナパームに焼かれるよりはな。みんなが慕うあんたが終わらせてやったんだからな」

その火は深夜まで燃え尽きることはなかった。その後、彼らの骨を砕いて骨壷に詰めて海に流す ”水葬” を決行することになった。

水葬が行われたのは翌日の朝方だ。太陽が水平線から見えるか見えないかの位置にいる。

ヒューイ「スネーク！！ 君が彼らを殺したんだ！！ 君が核を移動させたりしなければ……いや、核を持ったりしなければ！！」

ミラー「エメリッヒ、貴様！！！！」

ヒューイ「それじゃなくても、何も殺す必要なんてなかった！ きっと、助ける方法だってあったはずなんだ！！ それなのに君は………！！」

明石「博士……貴方って人は！！」

スネーク「そうだ！ 俺が殺した。俺がこいつらを灰にした」

オセロット「博士、止めろ」

ヒューイ「っ………」

ミラー「さあ、始めよう。仲間の骨を海に沈めて、彼らの死を労わろう」

スネーク「…………待て。その骨壷を、俺に寄越してくれ」

DD兵「えっ！？ は、はい……」

スネーク「…………お前達の無念を海の藻屑にはしない。俺は常にお前達と共にある」

ミラー「ボス、あんた……」

スネーク「カズ、仲間の灰でダイヤモンドを創れ。それを俺たちは抱いて戦場に行く」

ミラー「死してなおも、輝き続ける……か」

スネーク「そうだ。俺たちはダイヤモンド・ドッグズだ！ 」

ーー数日後ーー

ヒューイ「スネーク、悪いけど僕はもう君たちとは居られない」

スネーク「…………」

ヒューイ「僕は、君たちのやり方には付いていけないんだ。ここを降ろさせてくれ」

スネーク「………わかった」

ヒューイ「…………ありがとう。バトルギアや対深海棲艦の武器の設計図は、ここに遺していく。君たちで使ってくれ」

スネーク「………そうか。行く当てはあるのか？」

ヒューイ「いや、何処かでのんびりと暮らすことにするよ。ホワイトカラーとしてね」

スネーク「それで？ 俺がブルーカラーか？」

ヒューイ「………あっはは！ そうだね。正しくその通りだ！」

スネーク「………本当に、行くのか？」

ヒューイ「あぁ。でも、何十年先の未来で会うことがあるかもしれないよ？」

スネーク「そこまで生きられればいいがな」

ヒューイ「それじゃあ、僕は行くよ。準備は出来てるんだ」

スネーク「わかった。………ヒューイ！！」

スネーク「ありがとう」

ヒューイ「うん、僕も楽しかったよ！！」

第41話 死してなおも輝く 完

第42話 9年間のブランク その3

オセロット「ボスから話は聞いた。博士がここを降りたそうだな」

ミラー「あんな奴、居てもいなくても変わらん」

オセロット「だが現に俺たちはスカルフェイスを殺して、深海棲艦に対抗する術やバトルギアも手に入れた。奴が居なければ、ここまで来れなかったと思うが？」

ミラー「ならあのデカブツは廃棄だな。奴が居なけりゃ使い物にならん」

オセロット「去り際に設計図や研究資料、その全てに至るまでここに遺しておくと伝えたらしい。いま研究開発班のスタッフに話を聞いたところ、間違いないと話している」

ミラー「…………」

オセロット「それでだ、ボスのことをどうするかいい加減決めておかないとな」

ミラー「…………そうだな。あんな奴はどうでもいい」

オセロット「まず、ボスの記憶がどこら辺まで覚えているのか。20年前の、スネーク・イーター作戦の事は覚えている。かつて話をしたことがあるからな」

ミラー「覚えていないのは、瑞鶴のこと。つまり、特定の人物ってことか……」

瑞鶴「………ねぇ、10年前にボスや副司令と一緒にいたあの ”ジョナサン” って兵士はどうしたの？」

ミラー「…………彼は死んだ。ヘリの爆発からボスを庇うために、身を挺して護ってくれた。全身にやけどを負って、身体中には金属片が大量に食い込んでいた。病院に担ぎ込まれた時には、既に息絶えていたんだ」

瑞鶴「…………そう。加賀は？」

ミラー「…………既に日本の舞鶴で着任されているとのことだ。俺たちと共にしていた加賀はもういない」

瑞鶴「…………あの時、加賀の身体に爆弾が埋め込まれていたのよね。あの人がそれを取り除いてくれた。しかも２つ埋め込まれているのを彼は見抜いて、２つとも取り除いた」

瑞鶴「あの人がいたから、きっと私たちもこうして9年の時を経て一緒にいられるのよね」

ミラー「…………」

DD兵「ミラー副司令！ ミラー副司令！！」

ミラー「何事だ？」

DD兵「あ、あの深海棲艦が、姿を眩ませました！！！！」

ミラー「何！？」

オセロット「間違いないのか！？」

DD兵「間違いございません！ スタッフ総出で探しましたが、何処にもいません！！」

スネーク《カズ！ 奴が居なくなったと聞いたが？》

オセロット「ボス、少し待ってくれ！こっちでも探させる。一先ずこっちに来てくれ！」

ーーTo be continuedーー

第43話 静かなる消失

スネーク「オセロット！ 見つかったか？」

オセロット「いや、駄目だ。どこにもいない」

瑞鶴「艦載機飛ばして一帯を探してみたんだけど、全然引っかかんないよ！？」

スネーク「………」

ミラー「スネーク、あいつは俺たちのことを知り過ぎた。幾ら話すことがなかったとはいえ、野放しにはできない」

スネーク「カズ………」

ミラー「勘違いしないでくれ。俺はあいつを認めたわけじゃないが、スタッフの中にはあいつを信頼している奴もいる。情報でも漏らされれば憂き目に会うのは俺たちだ」

オセロット「見つけた！ ボス、硫黄島だ。硫黄島で奴の端末の信号が確認された！！」

スネーク「わかった。すぐに向かおう！」

・・・・・・

空母棲姫「 (ここまで来てしまったけど、どうしようかしら………。ちゃんと伝えようって思ったのに………) 」

空母棲姫「 (とても悔しいけれど、涙も出せないのね………。本当に深海棲艦の身体というのは忌々しいわ) 」

空母棲姫「 (はぁ………これからどうしようかしら。ただあの人のもとに居られればそれで良かったのに……) 」

空母棲姫「 (私があそこにいたらまたあんな出来事が起こりかねないし、何より私がああなったら元も子もないし………) 」

空母棲姫「 (はぁ……。どうしてこんなことに……いえ、自業自得ね。10年前のあの時から、私たちの歯車は狂っていたのよ………) 」

空母棲姫「 (はぁ…………) 」

南方棲戦姫「アラアラ、ナツカシイカオジャナイ？」

空母棲姫「………」

南方棲戦姫《こっちの方が好みだったかしら？》

空母棲姫《何の用よ？》

南方棲戦姫《私たちを裏切って、出奔したと聞いたけど？》

空母棲姫《裏切る？ 私はあなた達とは違うわ。あなたこそ、陸に上がってくるなんてどんな風の吹き回しよ？》

南方棲戦姫《あの男に手を貸すには、陸に上がらないと出来ないでしょう？ 全く、こっちの戦力もタダじゃないというのに……》

空母棲姫《あの男？ 髑髏顔の？》

南方棲戦姫《あら、よく知っているのね。最近合わなくなったけど、元気にしているかしら？》

空母棲姫《私が殺したわ》

南方棲戦姫《へぇ〜。裏切るだけに留まらず、同盟相手も殺すなんて………どういう了見かしら？》ｷﾞﾛｯ

空母棲姫《いくら私があなた達の姿に似ているとしても、私はあなた達とは違うわ。それに、あなたが裏切り者と言うならば私はあなた達の敵よ》

南方棲戦姫《あらあら、随分と賢い物言いをするようになったのね。じゃあ、さっさと死んで下さいな。元戦艦！！！》ﾀﾞｧﾝ!!

空母棲姫《陸で大砲撃つなんて、あなたも相当おかしいのね。そっくりそのままお返しするわ！》ﾊﾟｧﾝ!

南方棲戦姫「ッ！！ ナ、ナンダソレハ！？」

空母棲姫「私たち ”艦娘” が用いる艦砲の砲弾を人間の武器に改良したものよ。使われる弾薬は46センチ三連装砲と同じ威力を持ちながら小型化された60口径。更に徹甲弾化によって威力を上昇させた専用の特製スナイパーライフル『Atonement Princess』 (贖罪の姫)」

空母棲姫「私はこれで、あの人のもとに居続けて、私の犯してきた罪を償う。それが、私ができる唯一のことだから……」

南方棲戦姫「アラアラ、アナタノコエナンテ、ヒサビサニキイタワ！！」

空母棲姫「あなたも、私と同じ目には遭わせない。必ず、元の姿に戻す！」

・・・・・・

瑞鶴「ねぇ、何で私も連れてこられてるのよ！」

スネーク「お前しか空いていなかったからだ。運が悪かったと諦めるんだな」

瑞鶴「私の幸運設定はどうなったのよ………」

スネーク「 ”戦場で運をアテにするな” 俺の師匠の言葉だ」

オセロット《…………》

スネーク「オセロット、奴は今どこだ？」

オセロット《 依然として硫黄島だ。島に上陸しているみたいだが………ん？》

スネーク「どうした？」

パイロット《前方に深海棲艦！！ 1対1で交戦中！！！！！》

オセロット《そいつだ！！ 今すぐ奴を援護してやってくれ！ そいつに死なれるわけにはいかない！》

パイロット《駄目です！ 囲まれました！！》

オセロット《仕方ない、まずは包囲網を突破するぞ！！》

スネーク「わかった。瑞鶴！」

瑞鶴「りょーかい！ アウトレンジ………ってわけでもないけど、決めてやるわ！！」ﾋｭﾝ

ブゥゥゥゥゥ

スネーク「余り揺らしてくれるなよ！」

パイロット《それは難しいですが、最善は尽くします！》

瑞鶴「よし！ 駆逐艦貰ったぁ！！」

ﾊﾟｧﾝ!!

イ級「」ｷﾞｪｪｪｪ!!!!

瑞鶴「えぇ〜！！？！ 何でぇ〜！！！」

スネーク「もたもたするな！」

瑞鶴「ちょっと！！ 私の獲物よ！？」

スネーク「さっさとしろ！」

瑞鶴「はいはい！！」

・・・・・・

南方棲戦姫「アラアラ、コチラトシテモセイエイヲツレテキタツモリナンダケド、オサレギミダワァ」

空母棲姫「いい加減にその身体を返しなさい。あなたの動きが鈍っている。その娘もいずれ動かなくなるわ」

南方棲戦姫「ジョウダン。ワタシハキニイッテイルノヨ？ コノカラダ。マア、ムリモナイワヨネ。ダッテコノカラダ………」

南方棲戦姫「アナタノタイセツナ、コウハイノカラダダモノネェ？」ﾆﾀｧ

空母棲姫「やっぱりその子は………」

南方棲戦姫「ソウヨォ。フアンテイダッタカラネェ………。キットイマハヒッコンジャッテ、イシキモナイカモネェ」

空母棲姫「なら、無理やりにでも叩き起こします。覚悟しなさい」

南方棲戦姫「オォ、コワイコワイ」

・・・・・・

パイロット《前方から敵機！！ 爆雷を積んで突っ込んできます！！ ブレイク！ ブレイク！！》

スネーク「瑞鶴！ 捕まれ！！」

瑞鶴「えっ！？ きゃあ！！！ 爆発！？」ﾄﾞｶﾞﾝ

パイロット《駄目です！！ 機体がそのまま突っ込んできました！！！》

スネーク「被害は！？」

パイロット《駆動系は無事ですが、計器類がやられました！！》

オセロット《次に食らったら一巻の終わりだぞ！！！》

パイロット《また来ます！！ 》

スネーク「避けろぉ！！！！」

瑞鶴「っ！ 待って！ そっちは駄目！！」

パイロット《なっ！？》

スネーク「うわっ！！」

瑞鶴「キャア！！！！」

オセロット《どうした！？ 何が起きた！？》

パイロット《航空隊と激突！！ テールがやられました！！ 駄目です！墜ちます！！》

スネーク「態勢をとってショックに備えろ！！」

・・・・・・

空母棲姫「あれは………ボス！？」

南方棲戦姫「アレガアナタノマモリタイソンザイナノネ。イイワァ、サキニアッチヲオトシテワゲルワ！！！」

空母棲姫「や、止めなさい！！！！」

南方棲戦姫「ムダヨムダ。アノコタチハワタシニハシタガワナイノ。ヤリタイヨウニヤルダケヨ。ホラ、バクライガアタッタワ」

空母棲姫「止めて………やめさせて……」

南方棲戦姫「ダカラ、ワタシノシジジャナイッテイッテルジャナイノ。アッ、コウクウキトブツカッタ！」

空母棲姫「ぁ………あぁ………そんな……」

南方棲戦姫「アッハハハ！！ ヤッタヤッタ！！ ターマヤー！！！ アッハハハハハハハ！！！」

空母棲姫「あぁ………私の………私のせいで………

南方棲戦姫「ソウヨォ〜。アナタノセイデ、アンナメニアッテルノヨ。トンダメイワクヨネェ。アッハハ！！」

空母棲姫「あ………あぁ…………アァァァァァァァァァ！！！！！！！」

南方棲戦姫「ソノママコチラニイラッシヤイ………フフフーー」

南方棲戦姫「ーーちょっト……人ノ身体を勝手に使っテ好き勝手やってんジャないわよ………」

南方棲戦姫「アンタ………仮にも一航戦でしょ？ ちょっとしたことで、クヨクヨしてンじゃないわよ！」

空母棲姫「………っ！！」

南方棲戦姫「チッ！ モウキガツキヤガッテ！ ダマッテキヲウシナッテロ！！！！！！」

空母棲姫「黙りなさい！！」ｶﾞｼｯ

南方棲戦姫「ハ、ハナセッ！！！！！」

空母棲姫「その子だけはやらせない。艦娘に取り憑いて、好き勝手暴れたいなら、私が手を貸してあげるわよ！！！」

南方棲戦姫「………ヘェ、アナタモソンナカオヲスルノネ。イイワ。ソノハナシ、ノッテアゲル。デモ、タスケラレナイトオモウワヨ？」

空母棲姫「何を………」

南方棲戦姫「ココイッタイニ、チョットシカケヲシコマセテモラッタワ。デンタンデハナニモミツケラレナイヨウニネ」

………

…………

………………

空母棲姫「あなたは、ここにいなさい。私が、ここから離れたら、あの人の側に居てあげテ………」

？？？「何も、あんたが………」

空母棲姫「ふふ。姫は、自分の罪に憂き目を感ジて鬼に３つの贈リ物を捧げたの」

空母棲姫「１つは姫が力を貸すコト。２つ目は囚わレノ仲間を助けて、最期は鬼の命を救ウノよ。そしテ最後のお願い。これをあノ人に渡して？」

？？？「…………わかったわ」

・・・・・・

空母棲姫「………息はある。ナラ、このままデモ大丈夫ネ。問題は、この人を見つけテモラウこと………」

iDROID＜ﾎﾞｽ! ｺﾁﾗ ｸｲ-ｸｪｸﾞ! ﾚ-ﾀﾞ-ﾃﾞﾀﾝﾁﾃﾞｷﾏｾﾝ!! ｵｳﾄｳｼﾃｸﾀﾞｻｲ! ﾎﾞｽ!!

空母棲姫「ボスは無事よ。機械での探知ハできない。目視で見つケる必要ガアるわ……」

パイロット《わかった。どうすればいい！？》

空母棲姫「艦載機ニ、着いてキテ………」

パイロット《了解。艦載機を確認した！ 誘導してくれ！》

空母棲姫「………現在地、北緯23 東経170。目的地は北緯24 東経141。そのまま北西に進んで。ソウ、そのママまっスグニ……」

パイロット《了解！》

スネーク「………お前………は」

空母棲姫「そこから計器はアテにシナイデ……」

パイロット《了解！ 引き続き誘導を！》

スネーク「…………そう……か。全部………思い………出したぞ……」

空母棲姫「ボス、声ヲ出さナイで。今ハ、ゆっくり休ンデクダサイ………」

スネーク「……………」ｽｩ

空母棲姫「南風ガ来るワ。左ニ機首を傾ケテ」

パイロット《了解！ 微調整左！》

空母棲姫「モウスグ、あと1000」

空母棲姫「………800…………600………400…………ミエタ！！ コッチよ！！」

パイロット《こちらからも確認した！！ って、君は………！？ 何だ、綺麗な声で話せるじゃないか！》

空母棲姫「ボスヲ助ケテ！！ 早ク！！」

パイロット《了解した！ 各員に伝達！ 降下後にボスを救出！ すぐに適正な処置を施すように！！》

スタッフ達《了解！！》

空母棲姫「………サア、アナタハ私トイッショニ来ルノヨ。モウ、役目ハ終ワッタワ」

空母棲姫「行キマショウ。ズイカク……」

空母棲姫「オツカレサマ……」

・・・・・・

ーーボス、ボス！！ーー

スネーク「………………あ、あいつは？」

DD兵「いえ………。ですが、ご無事で何よりです」

？？？「ボス…………」

スネーク「お前………瑞鶴か？ 随分と雰囲気が違うが………？」

瑞鶴「……………あなたを助けた恩人からの贈り物よ。多分そこに、あなたの疑問が全部解決できる何かがあると思うわ」

スネーク「……………テープか？」ｶﾁｯ

瑞鶴「待って。多分、なるべく多くの人と聞いたほうがいいと思う。ミラー副司令とか、ジョナサンとか………」

ミラー《…………》

スネーク「……………ひとまず、帰還する」

ーーラバウル基地ーー

オセロット「………で、この3つのテープに答えがあると？」

瑞鶴「数字の順番に聴いてくれってさ」

ミラー「わかった。再生するぞ？」

スネーク「あぁ」

ーーテープ再生ーー

空母棲姫《私は、鬼として、ましてや姫としても生きていたくはなかった。私はただ、あなたと共に居たかった……。10年前と同じように………》

空母棲姫《本当は、言葉を使って、あなたと会話をしたかった。一緒に笑って、一緒に泣いて、また10年前と同じように過ごしたかった。でも、あなたに蔑まれるのが怖かった》

空母棲姫《人と深海棲艦は相容れない存在。私の中に ”加賀” が残っていても、加賀には戻れないの》

空母棲姫《…………鬼と姫を宿した私の身体は、もう艦娘としては生きていけない。いずれ私の中の加賀も深海棲艦に染まるわ。やがて理性さえも失って、あなたに牙をむく。それなら、私はあなたから身を引く道を選ぶわ》

空母棲艦《所詮、鬼と姫は相容れない存在。美女と野獣は、ただのおとぎ話にすぎないのよ。それでも、私を傍に置いてくれたことに、とても感謝しています》

空母棲姫《………少しでもあなたの恩に報いることできたなら、それで満足よ》

空母棲姫《………さようなら》

第43話 静かなる消失 完

第44話 Phantom pain

ミラー「奴が………加賀の残したテープは後２つ。…………再生するぞ」

ーーテープ再生ーー

空母棲姫《ボス、いまあなたのところにいる瑞鶴は、あの男から取り返した瑞鶴とは別人よ》

スネーク「何！？」

ミラー「おい、どういうことだ！」

瑞鶴「っ………」

空母棲姫《ボス、今から話すことは真実よ。それも残酷な話………》

空母棲姫《私たちとあなたの歩んできた9年間の全てよ》

・・・・・・

ーー9年前 太平洋ーー

加賀「爆弾は………もう一つ………ある………」

瑞鶴「加賀！！ 駄目！！！！！」

スネーク「止せぇ！！！！！！」

加賀「あれから20時間、もうすぐで………」

私は、あのヘリから飛び降りた。皆を死なせるわけにはいかないから。でもそれは、間違いだった。

私の中の爆弾は、ボスの言葉通り既に取り除かれていた。それも２つ。おそらくは彼、ジョナサンが取り出してくれたのね。私がヘリから飛び降りるために扉の前を覆ってしまったことが、事故の原因。

私の背後で、ヘリのモーター音が唸っていた。それは彼らサイファーのヘリ。私がヘリから飛び降りた瞬間、そのヘリからミサイルが撃たれた。あなた達の乗っていたヘリは火を噴きながら、高度を下げていった。

加賀「ボス！！ 瑞鶴！！ ゲホッ！ ゲホッ！！」

運が良かったのか悪かったのか、私はあの高さから落ちたというのに、ほぼ無傷だった。艤装は取り外してあったので、海面に浮くことはできない。私は泳いで、あなた達のもとに近づいた。

近づくと、ヘリは大破して海中に沈んでいった。けれど、皆は運良くヘリから身を投げ出されて一緒に沈むことはなかった。どうにか助けを呼ぼうとしても、私にはどうしようもなかった。けれど、墜落したヘリの後方から一隻のヘリが飛んでいることに気がついた私は彼らに助けを求めた。けれど………

加賀「嘘……私……は…」

私は、深海棲艦に取り憑かれた。自身の行いを悔やんでいた私を、私のせいでこんな目にあってしまったと、自責の念を抱いていた私を、彼らは見逃さなかった。

気がつくと、私の意識は深海棲艦に成りかけていた。それも上位個体の『空母棲姫』に。この時から、私の中には姫が宿い続けた。

深海棲艦に蝕まれた私の意識は、貴方に襲いかかろうとしたわ。それだけはあってはならないと、私はその場から離れた。これが、私の。私たちの地獄の始まりだった。

深海棲艦に取り憑かれたことによって、私の身体は大きな変化を遂げることになった。水面に浮くことができなかった私の体が、艤装なしでも浮くようになった。もはや私は、彼女たちの仲間となってしまった。

でも私はあなたの、あなた達のことは忘れない。これだけを守り続けて、太平洋を彷徨った。そのためか、私の中であることが起きた。

既に侵食を始めた私の身体は姿を変えない、加賀のまま。けれど、意識だけは深海棲艦に成りかけている。この時から、私は艦娘でありながら、深海棲艦を自分の精神下に押し込めている状態になった。

それから5年経ったある日、私の下にある男がやって来た。紛れもない、あの髑髏顔よ。

髑髏顔「おやぁ？ 誰かと思えばお前か」

加賀「………生憎、あなたの様には成れないの。ごめんなさいね」

髑髏顔「ふん、生意気な口をきける様になるとはな。私はあの海域で、面白いものを拾った。お前にも見せてやりたくてな」

加賀「………っ！！」

髑髏顔「全くしぶといヤツだ。あれだけの傷を負いながらまだ息があるとはな」

加賀「瑞鶴！！！！」

髑髏顔「憶えているのか。面白いな………。かれこれ5年も眠り続けているのだが………」

加賀「その子を離しなさい！！ 私だけで十分でしょ！！！」

髑髏顔「物わかりが早くて助かる。ついて来い」

加賀「………っ！」

咄嗟に出た言葉を、私は何度も頭の中で復唱していく。そして私は、自分が発した言葉に、自分自身に嫌気がさしたの。だって、不覚にもあの男から逃げ出すためにボスに助けを求めたというのに、振り出しに戻ってしまった。また地獄を見ることになるのは、今の私でも理解できた。

彼に連れてこられたのはアメリカ。そこで彼は、深海棲艦と同盟を組み、世界を報復心によって解放するという野望を叶えようとしていた。

深海棲艦も、元を辿ればそういった無念によって生まれるもの。彼らの利害は一致していた。そこで私は、更におぞましいものを見ることになった。

それは、もう一人の瑞鶴だったの。

サイファーは深海棲艦と手を組んだ共同戦線の裏で、もう１つの計画を目論んでいた。

それは、艦娘のクローンを作り出すことだった。元々艦娘は、妖精の力で作られた存在だから、人間が作り出すのは不可能とされていたの。成功するとは思っていなかったけれど、あの男が過去に行われていた１つの計画を持ち出してきたわ。

『恐るべき子供達』計画。詳しくは私にもわからないけど、その技術を艦娘にも転用して、同じ様にクローンを作り出そうとしたらしいわ。計画は成功。当時は何のために使うのかは解らず仕舞いだったけど、１つだけ答えたことがあったわ。

この計画は、9年前から計画していて、実行に移したのはあの事件以降だということ。詳しい事はもう１つのテープを聞いてもらえれば分かるのだけれど、私たちを拷問にかけた時、彼は瑞鶴の腕を斬り落とした。

その時『私が欲しいのはお前の腕だ』と言っていた。それがどういう意味をもたらしていたのか、ここに来てようやく理解できたの。この計画のサンプルを手に入れるためだったということに。その為に、私たちの決死の覚悟さえも利用されたのだと。

私は、自分を酷く恥じた。あなたを巻き込んだこと、あなた達を危険に晒したこと。利用される運命から抗えない自分を………。

それから3年間、私は深海棲艦として振る舞い続けた。あの髑髏顔は、私がそうしていれば、何時かは本当の深海棲艦に成るだろうと勘違いをしていたようなの。そんなことはあり得ないのに…………。

そんな中、一筋の光が見えたわ。それは、瑞鶴の意識が戻ったこと。8年も眠っていた彼女が目を覚ましたことで、きっと何かが変わる。そう思っていた。

思っていたのに、次に見たのは地獄絵図だった。

瑞鶴は覚束ない足取りで、髑髏顔に連れて行かれたの。そこはちょっとした研究所だった。中にいたのは、南方棲戦姫。深海棲艦よ。

私はその様子を、外から眺めていた。いや、眺めていたというよりは、 ”無理やり観させられた” といったほうが正しいわね。身体中を拘束されていたのだから。

髑髏顔「予定通りだ。後はお前の好きに使え」

南方棲戦姫「アラアラ、イイノカシラァ？ ズイブンアライワヨォ〜、ワタシハ？」

髑髏顔「こいつはもう必要なくなった。お前との交渉に応じるということだ」

南方棲戦姫「ソレジャア、アリガタクツカワセテモラウワ！」

そういって、南方棲戦姫は瑞鶴の頭を鷲掴む。そして次の瞬間、瑞鶴が大きな悲鳴をあげていた。

瑞鶴「イヤァァァァァァァ！！！！！！！！ 」

私はその姿を観たくないと、顔を背けようとする。けど、固定された私の身体は首を動かすこともできない。目を瞑っても耳を塞ぐことはできないから、瑞鶴の悲鳴が、嫌でも私の耳に入ってくる。

瑞鶴「離して！！ やめてぇぇぇ！！！！！」

瑞鶴「嫌！！ お願いします！！！！ それだけは止めて！！！ ボスも、翔鶴姉ぇも、皆も！！ 忘れたくなんてない！！！！」

瑞鶴「違う！！！ 違うのぉ〜！！ 私は誰も殺してなんていない！！！！！！」

瑞鶴「やめて！ やめてよぉ…………もう………やめて…………」

瑞鶴「いや………いやぁぁぁぁ！！！！！ もうやめてぇ！！！ ゆるしてぇぇぇぇ！！！！！」

その時私が見たのは、あの男と深海棲艦だけだった。深海棲艦は、決して負の感情にまとわりつくだけじゃない。まるで亡霊のように、他者に取り憑くこともするのだと理解した私は、連中の恐ろしさにただ怯えるだけだった。

瑞鶴「いﾞ………やﾞ………もﾞうﾞ……やﾞめﾞ……てﾞ………」

次第に、瑞鶴の意識が薄れていくのが分かった。既に姿が南方棲戦姫となり、抵抗することもなくなっていったから。もう私には、瑞鶴がその深海棲艦を精神下に押し留めて、私と同じことが出来るように祈ることしか出来なかった。でも、その祈りも結局叶わなかったわ。

髑髏顔「どうだ？ 」

南方棲戦姫「ワルクハナイワネ。デモコノコ、ホウフクシンガツヨスギルワ。ヘタヲスルト、ワタシガギャクニノミコマレルカモシレナイ」

髑髏顔「それは困るな。ちゃんと制御してもらわねばな」

瑞鶴『う………うぅ………』

髑髏顔「おや？」

南方棲戦姫「マズイワ！ コノコ、ツヨスギル………ハナレテ！！！！」

瑞鶴『ウワァァァァァァァァァァ！！！！！！！！！』ﾀﾞｧ-ﾝ

一時的に瑞鶴の意識が強くなって、まるで私のように深海棲艦を押し込めるかとも思ったけど、結局のところ深海棲艦の方も抵抗して上手くいかなかったみたいね。

建物の中だというのに砲撃を始めたの。きっと瑞鶴の意識と深海棲艦の意識が五分五分の状態で混乱していたんでしょうね。建物の壁に穴が開けて、彼女はそこから逃げ出した。

結果として髑髏顔があの瑞鶴を使うことは出来無くなったけれど、深海棲艦として生きた瑞鶴は、とても苦しんできたはずよ。

このテープがボスに渡ったなら、渡したその子こそがあなたが9年前、共にいた本当の瑞鶴よ。あなたと今までいたのはあの男が創り出したもう一人の瑞鶴。そっちは私がどうにかしておくから、あなたは何も気にしないで。

それから1年経ったある日、サイファーは遂にあなたの居場所を突き止めた。とある病院で、9年もの間昏睡状態だということも。サイファーは兵を向かわせたわ。でもその連中に紛れて、私も送られたの。

もちろん、私の意志じゃないわ。拒み続けてきた私に痺れを切らして、彼は遂に強硬手段に出たわ。艦娘をコンピュータのようにする自動化装置。もう洗脳よね。あいつは私にそれを施した。

私は彼に操られたも同然。そんな私に与えられた命令は、あなたの殺害だった。

その病院であなたを見つけて、私は近づいた。まずは部屋にいた看護師を。次に医者を。最後にあなたの首を絞めて、殺そうとした。

けれど、あなたの隣にいた男に私の存在を気付かれた。彼は私に飛びかかってきたわ。

私がそれを引き剥がすと、彼はいろいろなものを投げつけてきた。けれど、それに対して私はナイフをその男に投げた。そのナイフは肩にあたったわ。

そして、彼は死んだ。投げ飛ばされた時に頭を強く打ち付けたみたいだけど、無理をしてあなたを守ろうとしたの。彼はどう見ても一般人よ。軍隊の仕込みでもない、素人の動きだったから。よほど正義感の強い人だったのね。

彼が動かなくなってから、私はあなたの首を絞めた。今でも覚えているわ。あなたの脈がどんどん弱まって、息が細くなっていくのを。私は途中であなたの首を絞めるのを止めたわ。

通信が入ったの。彼を殺すことができたのかどうか。でもその通信が、私の精神を完全に壊す引き金になったわ。

その無線が、私の意識を取り戻す鍵になっていた。その通信が来た時に、私の洗脳が解けるようになっていたの。そこで私は全てを悟った。私があなたにした事を。

加賀「嘘………嘘よ………こんなの……全部嘘よ…………」

加賀「あ………あぁ………いやあぁぁぁぁ！！！！」

私はもう泣くことしかできなくなった。枯れるまで泣き続けたわ。私はあなたに謝ろうとしたわ。けど、それは許されなかった。

気がつくと、私の身体に火がつけられていたの。一瞬のことで、何が起きたのかわからなかった。でもとにかく火を消そうと床を転がり続けたわ。

火が弱まってから、あなたに近づこうとしたの。あなたを助けようと。あなたに謝ろうと。でも…………

ボス、あなたが私に瓶を投げてきたの。消毒用のエタノールよ。私の身体は大きく燃えて、必死に火を消そうともがき続けた。けれど足を踏み外して窓から外に落ちたの。

外は雨が降っていたから何とか火を消すことはできたけど、私の心に打ち付けられた後悔は消えなかったわ。

あなたに近づくことも、謝ることも許されず、あまつさえあなたに殺されかけた。自業自得とは分かっていても、あなたに対する ”報復心” は消せなかった。

あなたを傷つけた私を、私を見捨てたあなたを、私は許すことが出来なくなった。それによって大きくなった報復心が、私を本当の深海棲艦にさせたわ。

私の中に押しとどめていた空母棲姫。私の加賀の部分が報復心によって姿を変えた空母棲鬼。こうして私は姫を宿した鬼に成り果てた。その様は、まるで美女と野獣ね。

こうしてあの鬼 (髑髏顔) の報復心が ”遺伝子” (ミーム) のようになって、私を鬼に変えたの。皮肉な話ね。

空母棲姫《これが、私の知っている9年間の真実。これがあなたの中にある疑問を解決させる鍵になるならと思って、ここに遺しておきます》

ーー再生停止ーー

スネーク「……………」

ミラー「……………ボス」

スネーク「思い出した。何もかも」

スネーク「オセロット。お前に会った時、俺がなんて言っていたか、覚えているか？」

オセロット「確か、顔を包帯で覆った男を見たか？ と」

スネーク「……………そいつは、俺だったんだ。俺は薄れていく意識の中で、 ”幻” を見ていたんだ」

ーーイシュメイル《あんたを待っている奴がいる》ーー

ーーイシュメイル《あんたの命が最優先だ》ーー

ーーイシュメイル《エイハブ！！！》ーー

スネーク「あいつは、イシュメイルと名乗ったあの男こそが俺だったんだ。そんなあいつを、俺は後ろから追っていた。眺めていたんだ」

オセロット「離人症か…………。ボス、実は私の方でも幾つかの症状を疑っていました。決め手になったのは、あなたが瑞鶴の存在を覚えていなかったこと。彼女は言いました。9年前のあの時に一緒にいた、と」

瑞鶴「言っておくけど、その瑞鶴は私じゃなくて、連中が勝手に作り出したクローンよ？」

オセロット「それはわかってる。ボス、その病は解離性障害。急激なショックにより伴う精神病です。解離性障害の内に、解離性健忘というものがあります。それをあなたが記憶を失った理由と考えていました」

オセロット「ですが、それは一時的なので何かきっかけがあれば思い出せるものです。今は全てを思い出している。そうですね？」

スネーク「あぁ。あの時、あいつに助けられたあの時に、全てを思い出した」

オセロット「彼女自身が、あなたの記憶を取り戻すきっかけになったのです。そしてあなたが見た包帯の男、それはあなた自身なのですね？」

スネーク「そうだ。あの時、イシュメイルを後ろから追っている気がしていたんだ。その男は俺自身。そして俺はその男に助けられる ”幻” (ファントム) を見ていたんだ。いや、あの男自体も俺が見たファントムかもしれないな………」

ミラー「ボス………」

スネーク「カズ、皆を集めろ。連中との全面戦争を始めるぞ！」

ミラー「あ、あぁ……だが、３つ目のテープの中は？」

オセロット「…………ひとまず、ボスの指示に従う。テープの中身は後で良いんじゃないか？」

ミラー「………そうだな」

ーー3つ目のテープ《クローンとオリジナル》を盗聴テープに追加しますーー

・・・・・・

ミラー「スカルフェイスが俺たちに植え付けた報復心は未だに消えていない。それはお前たちもよく分かっているはずだ！」

ミラー「それによって、俺たちは多くの仲間を失った。いいか、仲間たちだけじゃない！ 報復心は必ず、俺たち一人一人の中に寄生する！」

ミラー「スカルフェイスと深海棲艦。俺たちに報復心を植え付けた張本人だ！！ そのうちのスカルフェイスは死んだが、深海棲艦は未だ根絶できていない！！」

ミラー「俺たちはダイヤモンド・ドッグズ！ 死んでいった仲間たち (ダイヤモンド) を抱えて、戦さ場を跋扈する戦場の犬共だ！！」

ミラー「だが、それを邪魔する存在がいる。他でもない、深海棲艦だ！！」

ミラー「そこで俺たちは、深海棲艦と全面戦争を行うことをここに宣言する！！ 俺たちが俺たちであるために、奴らの存在は野放しにできない！！！！」

ミラー「いいか！ 連中の存在を、この世から抹殺する！！ 連中を歴史ごと葬れ！！！！」

第44話 Phantom pain 完

ーーーーー

空母棲姫「アリガトウ、ズイカク。アナタノヤクメハオワッタワ」

空母棲姫「モトモトハアノオトコガアナタヲツカッテ、ボスヲコロソウトシタンダケレド…………」

空母棲姫「アノオトコモシンデ、アナタハジユウヲテニイレタ。デモ、アナタハホンライウマレテクルソンザイジャナカッタ」

空母棲姫「アナタニハワルイケド、リヨウサセテモラッタワ。ホントウノアナタ、ズイカクヲアノヒトノモトニカエスタメニ」

空母棲姫「……ワタシモジゴクニオチルノネ。ソウデナクテモ、キットマトモナシニカタハシナイデショウ」

ﾀﾞｧﾝ!!!!!

空母棲姫「………マッタク。キュウショニアテラレタンジャア、サスガノワタシモイキラレナイワヨ…………シカモセンカンキュウノ、ダイコウケイノタイホウネ………」ｺﾞﾎｯ

空母棲姫「アァ………シズンデイク………ワタシノ………カラダガ…………」

空母棲姫「オニヲタスケタテンバツカシラ？ ヒニクナモノネ……」

空母棲姫「………アナタダケハワタシノナカカラゼッタイニダサセナイ。アナタハワタシガシンダアトモ、イッショウワタシノナカデイキツヅケテモラウワ」

空母棲姫「…………ソウネ。コワイワヨ。デモ、ワタシヒトリノギセイデ、オオクノイノチガスクエルナラ……」

空母棲姫「モチロンクヤシイワヨ。デモ…………」

空母棲姫「ワタシノオモイガアノヒトニツタワッタナラ、ソレデマンゾクヨ…………」

ーーさようなら、ボス

第2章 真実 完