「地図に無い島」の鎮守府 第九話 手錠とダイヤモンドと、拳銃と
調査団の到着を待ち、上海軍閥の機密品を調べる提督たち。
深海勢力側に与する人間の存在を知り、より謎が増す。
そして、稼働し始める「まみや」仮店舗と、
急に島に訪れた謎の武器商人からもたらされる、新たな謎と真実。
初風が登場します。
[第九話 手錠とダイヤモンドと、拳銃と ]
―昼前。執務室、特殊帯通信端末。
大淀「申し訳ありません。悪天候で、本日夕方到着予定の調査団は、明日以降、天候回復次第の予定確定となります」
提督「わかりました。こちらもだいぶ吹雪いてきましたし、仕方がありませんね。・・・ホトケさんには線香でもあげておきます。この気温では、倉庫でもまだ問題は無いでしょう」
大淀「申し訳ございません。死体の絡む任務はあまり艦娘には相性が良くないのですが、何も問題はございませんか?」
提督「状態の悪い死体ではありませんから、大丈夫でしょう。そういえば雪風が、無縁仏として葬られることになった場合、この島のお寺への埋葬を希望していましたよ。無縁仏ではかわいそうなので、たまに弔ってあげたいのだとかで」
大淀「雪風らしいですね。わかりました。実は、このような事件は頻発しており、公式には上海軍閥は船団の派遣を認めておりません。回収された遺体は、おそらくそちらの島で荼毘に付され、埋葬されるものと思います」
提督「なるほど、わかりました。調査団の到着までに、こちらでしておくことは有りますか?」
大淀「可能であれば、施錠された各種ケース類の開錠をお願いいたします。その辺の技術的な事は夕張に。また、プロテクト性の高いケースにつきましては、いくつかパターンがありますので、この後資料をお送りいたします。・・・稀に、プロジェクタイルの仕込まれた危険なケースもありますから、開錠作業には十分な注意をお願いいたします」
提督「プロジェクタイル?・・・ああ、射出物ですか!わかりました。早速やってみます。ところで、なぜ上海軍閥は貴重な戦力をこんなことに?彼らは確か、太平洋に兵力を展開することは禁じられていますし、太平洋は現在殆んど、深海勢力の手に落ちているはずですが」
大淀「その質問は、非常に頭の痛いところです。調査団到着後にある程度の情報は開示いたしますが、あなたならそれ以前に概要を把握できると思いますよ」
提督「諒解いたしました」
―数分後、執務室ラウンジ。
提督「呼び出してすまない。これが今までに回収された各種ケース類の開錠手順だよ。加賀さんの歓迎会兼慰労会が終わったら、夕方あたりから取り掛かる予定なので、一通り頭に入れておいてくれ」
夕張「んー、いいですね!やっとわたしの出番ですね!任せて!本来の任務とは違うけれど、しっかり対応してみせるからね!」
提督「心強い!射出物は艦娘には無害なものばかりとはいえ、危険なものに変わりない。十分に対策を立てておいてくれ」
夕張「諒解いたしました!」
提督「さて、次は間宮さんとこか」
磯波「あ、ご一緒致しますね!(提督、お忙しそうですね・・・)
」
提督「漣ー、遠征組の定時確認頼むよ。曙は食堂の食材の不足のチェックと、加賀さんと赤城さんの部屋の備品の支給等頼む」
漣「ほいさっさー!」
曙「炬燵が足りなくなるかも。任せといて!」
―2階、『軽食・甘味処 まみや』仮店舗。
提督「間宮さん、伊良湖ちゃん、お疲れさま。食材の状況等、どうですか?」
間宮「お疲れ様です、提督!そうですね、明後日あたりから、なにがしか不足してくると思います。特に粉関係は一通り足りなくなりそうですね」
提督「わかりました。間宮さん、明日、磯波と買い出しとあいさつ回りに行ってきますので、もう少々お待ちください」
間宮「お手数ですがよろしくお願いいたします。美味しいものをたくさんお出ししますね!・・・それと、わたしの事は呼び捨てで構いません。よろしくお願いいたしますね!」
提督「楽しみです!恐縮なのでしばらく『さん』付けで呼ばせていただきますよ」
間宮「あら、わかりました」クスッ
伊良湖「アイスクリームマシンはここの備品のが整備して使えますけれど、やっぱり細かい機材が整わないと万全ではないですね。それと、提督さん、お好みのコーヒーや嗜好品の味のバランスと、好きな甘味を何点か教えてくださいね。常駐着任の場合は、提督さん用のレシピも幾つかお出しすることになっているんですよ!」
提督「お!それは嬉しいね!楽しみが増えたよ!時々好きなメニュー変えてもいいの?」
伊良湖「もちろんですよ!」
提督「じゃあ、コーヒーは後でこんな味!というのを実際に淹れるとして、まずはブルーベリーやレーズン入りのバターサンドクッキーかな。それと、執務室用にビターチョコレートクッキーと、コーヒークッキーも。できれば全粒粉でお願いいたします」
伊良子「バターサンドクッキーですか!少し日持ちもするし、いいですね!」
間宮「ビターチョコレートにコーヒーですか。大人向けクッキーですね」
提督「忙しい時の軽食代わりになりますし、ほどほどに甘く、目に良い、といった理由です。あとは執務のストレスを軽減するもので」
間宮「お忙しそうですものね。色々考えてらっしゃるんですね。後で試作品を作るので、出来上がったらお声がけしますね。それと・・・」
提督「レーズンやブルーベリーも、早めに仕入れてきますよ」
間宮・伊良湖「よろしくお願いしますね!」
提督「・・・さて、次は工廠か。磯波、来てくれてそうそう、毎日忙しくて済まないな」
磯波「・・・あっ、わたしですか?そんな、お気遣いありがとうございます。わたしは楽しいです、とっても!」
―ここで提督は、足を止めて磯波の眼を見た。
提督「・・・ん、そうみたいだけど、やっぱり海に放置されたトラウマは簡単にはぬぐえないよな。目から不安が消えてない」
磯波「それは、そうなんですけれどね。・・・でも、大丈夫になって行ける気がしています」
提督「ふむ、だといいが・・・何でも話してくれよ?」
磯波「はい!ありがとうございます!」
―工廠、第三開発室(夕張がいつも詰めている部屋)。
夕張「あ、提督、こちらはほぼ対応可能みたいですよ。夕方から予定通り開錠作業ができると思います。ただ、遺体とスーツケースを結んでいる手錠ですが、資料によると、この鍵は共通規格のもので、提督に支給されている手錠のカギとも合うそうなので、それで開錠できる、とのことです」
提督「手錠?そんなもん支給されていたっけな?・・・あっ、士官服と一緒に支給されていたかもしれない。探してみよう」
―一階、搬入倉庫、提督用備品置き場。
提督「ここ、えらい寒いな!」
磯波「寒いですね!えーと、箱に心当たりはありますか?」ゴソゴソ
提督「確か、『営倉・警ら関連』て書いた気がするが」ゴソゴソ
―30分後。
提督「ふぅ、やっと見つかったな」
磯波「まさか、こんな下の方にあるとは思いませんでした」
提督「だって、警備はともかく、君らを拘束する手錠なんて、まず使い道がないと思っていたからさ」
磯波「・・・でも、手錠にも色々な使い道がありますからね(小声)」ボソッ
提督「え?今なんて?(気のせいか?)」
磯波「いえ、何でもないです!(やっちゃった!)」
提督「とりあえず、鍵と手錠一セット確保したから、ひとまず慰労会に行くか」
磯波「はい!」
提督(いや、空耳じゃないと思うが・・・)
提督「なあ磯波、さっきのアレ、以前の鎮守府の提督の趣味か何か?」
磯波「!・・・や、やっぱり誤魔化しちゃダメですよね。つい、以前の鎮守府の癖で。すいません」アセアセ
提督「いや、問題ない。磯波っぽくなくてちょっとビックリしただけだよ」
磯波「更迭された提督は、何人かの親しい女の子と手錠を使って・・・その、するっていう噂があって。みんな陰では『手錠提督』なんて呼んでました。手錠がよく、笑い話のネタになっていたんです」カァァ
提督「ん、まあそんな事もあるよね・・・(闇の深い鎮守府だなぁ)」
磯波「・・・あっ、わたしは捨て艦組だったので、一週間くらいしかいませんでしたし、眼中にもない感じだったので、その・・・そういう事とか全然されていないので、大丈夫です」アセアセ
提督「ん?大丈夫って?・・・あっ!わざわざありがとう。何かゴメン」
磯波「・・・あっ、すいません、なんかすごく余計な事ばかり言ってしまって!」マッカ
提督「キレイな身体って事ね。まあ、そういう事があったからって、別に汚れるわけじゃないんだけどさ」
磯波「・・・」コクリ
―磯波はうつむいて、すっかり黙ってしまった。耳まで真っ赤になっている。
磯波(うう・・・失言の連続。自意識過剰みたいで最悪の状態にしちゃった。まるで、媚びてるみたいな・・・)
提督「おれはさ、手錠よりロープ派だな。手錠が好きな女の子はいたけど、使うまで行かなかった。それに、冷たくて痛そうだしさ。なので、拘束系ならロープだね。まあ、拘束もそんな好きじゃないけどな。せいぜい、手首縛るくらいがいいとこだろ」
磯波「え?・・・ええっ?」アセアセ
提督「さ、これでおあいこ。あまり気にしなくていいよ。」
磯波(あっ!)
提督「磯波ぃ、あまり気を使わないでくれよ?本当にさ。もうここの子なんだから」
磯波「はい!・・・あの、すいません。気を使わせてしまって」
提督「気なんか使ってないから気にすんなって。あ、でも、さっきのは内緒で頼む」ニコッ
磯波「私の失言も内緒でお願いします」ニコッ
提督「よし、契約成立って事で!」
磯波「はい!ふふ、わかりました」
提督「じゃ、間宮さんとこで甘いものでも食べて元気出すかー!」
磯波(優しい提督だなぁ。でも、どこまでが本当でどこまでが冗談なのか、全然わからない人なんですね、皆さんの言っている通り)
―正午、『軽食・甘味処 まみや』仮店舗
提督「それでは、加賀さん及び最近着任したみんなとの親睦を深めつつ、毎日と今後をねぎらう、慰労会を始めます」
加賀「・・・先任の皆さんと提督、今日はこのような場を設けていただき、ありがとうございます。一航戦、加賀、堅忍不抜で戦いに臨みます。(間宮さんの御汁粉が美味しそうで、言葉の切れが今一つだわ)」
磯波(やっぱり一航戦の人は違いますね。周囲を素早く注意深く見ていますね)
加賀(濃い目の緑茶に、間宮羊羹・・・あれはバターサンドかしら?あちらには芋羊羹もありますね・・・。温泉もあると言いましたか。赤城さんもいて・・・ああ、素敵ね!)キラキラ
曙「ねえ漣、無口で隙の無さそうな人ね。綺麗な人だけど。やっぱり、一航戦の名は伊達ではないのね。なんというか、気迫が違う気がするわ(小声)」
漣「んー・・・(なんか、目がキラキラしているような気がするんだけど)」
赤城(ふふふ、加賀さん、わたしにはわかるわ。あなたの理想郷が広がっているわよ)
望月(おかしいなぁ、何でかあたしと似た何かを感じるんだけどなー?そんな事あるわけないんだよなー)
青葉「加賀さん、質問よろしいですか?」
加賀「なんでしょうか?」
青葉「青葉、間宮さんの甘味をたくさん目の前にして、すごくテンションが上がっているんですが、加賀さんは甘い物よりしょっぱい物の方が好きですか?」
加賀「・・・なぜそう思うのかしら?」
青葉「加賀さん、すごく冷静で大人っぽいし、あまりこの場でも気分が高揚しているようには見えないかな、とちょっと思ったんですよね」
加賀「そんな事ないわ。さすがに気分が高揚します。(むしろ、どうにかなってしまいそうです!)」
望月「加賀さーん、あたしも質問いいー?」
加賀「何かしら?」
望月「さっき曙が炬燵を用意していたけど、加賀さんも炬燵とか入るのー?」
加賀「(至れり尽くせりとはこの事ですね!)・・・ええ、冬は流石に、炬燵が一番かと思います。(むしろ、そこは譲れません!)」
望月「だよねー、冬はやっぱり炬燵に蜜柑だよねー!」
加賀「・・・ええ。(この子とは、気が合いそうですね)」
―夕方、工廠、第3開発室。
提督「さてと、最重要と思われるスーツケースは遺体から外してきたわけだが、この後どうする?」
夕張「レントゲンで仕掛けを確認し、精密ゲージで錠部分の摩滅具合から、開錠番号を割り出したり、ピンの解除を行います。どれどれ・・・」
―夕張はスーツケースをエックス線検査機に通した。
夕張「あー!これ、仕掛けが仕込んでありますよ。青酸カリ入りの針が飛ぶタイプですね。ということは、かなり重要度の高いものです。開錠作業に入りますね」
―40分後。
夕張「開きました!提督、確認をお願いします!」
提督「早いな!どれどれ・・・これは・・・」
磯波「中国語、ですね。わかるんですか?」
提督「いや、さっぱりだが、書類と、コレで大体は見当がつく」カラッ
―提督は、スーツケース内の小さな箱を夕張に手渡した。
夕張「これは?・・・ダイヤモンドの原石ですか?大粒のが、こんなにたくさん!」
提督「おそらく紛争ダイヤモンドだ。しかし、モノはいい。これを代金として、何かを取引しようとしていた。・・・問題は、その海域が深海勢力の支配海域の奥深くであるという事」パサッ
―海図に書かれた取引場所を示すバツ印は、マリアナにだいぶ近い、通称『E.O海域』と呼ばれる、屈級の鎮守府の艦隊でも近づけないような場所だった。
夕張「え?これ、おかしいですよね?海図の印が暗号という事は?」
提督「それはない。航海日誌による燃料補給の記述のあたりに、「マリアナまで」という表現が頻出していた。最初は何かの暗号名かと思ったが、どうもそうではないらしい」
夕張「つまり、大規模作戦で屈級の鎮守府でも攻略できないほどの海域の奥深くに、彼らが取引できる何者かが居る、という事になりますね・・・」
提督「そうなるな・・・これはとんでもない事だぞ。そしてそれを、上層部はある程度は把握しているらしい」
夕張「なのになぜ、この船団は襲撃されたんでしょうか?取引相手ですよね?」
提督「そこがわからないところなんだよな。取引に不正があり、その報復だったか、または、取引後に商品を受け取ってから、証拠隠滅でこんな事をしたのか・・・。いずれにせよ、調査団の回答待ちになるね」
磯波「何だか色々と、気味の悪い話ですね」
提督「そうだな・・・。深海側に人間と取引できる何者かが居る、そして、この状況にも関わらず取引している勢力があり、上層部はある程度それを把握している。この事から導き出されることは二つ。一つは、深海勢力側に明確な知性が存在する、または、人間が関与しているという事。そして、戦況はほぼコントロールできなくなりつつある、ということ。厄介だな。まさかキナ臭い話にもなってきているとは。・・・夕張、防水武器保管ケースの中身はどうった?」
夕張「あ、こちらにシートを敷いて展開してありますよ」
―並べられていたのは、旧東側の武器ではなく、西側の銃のみだった。
提督「夕張、銃には詳しい?」
夕張「いえ、銃はあまり」
提督「この銃、みんな上海軍閥の装備とは無関係の、西側の新品ばかりだ」
夕張「どういうことですか?」
提督「これを取引で購入して来たか、または売ろうとして交渉が決裂したか。これなんて、VP70Mのストックセットモデルに、こちらはソーコムMk23のデザインモデルだ。ひとつひとつ、特色のある武器で、まるで何人かの注文をひとまとめにしたような品揃えだな。輸入代行みたいだよ。ますますわからない。ただ、最悪のケースとしては・・・」
磯波「最悪のケース、ですか?」
提督「どれもこれも、それなりにこだわりのある奴が選ぶ銃ばかりだ。深海側の何者かが上海軍閥にこれらの調達を注文していたケースなら、あまり無視できないセンスの何者かが居るって事になる。逆でもそう。厄介な連中が絡んでいるな。やれやれ・・・いい趣味と言わざるを得ない」
―提督は手袋をはめると、ソーコムMk23を手に取り、スライドを引いて、照準をにらんだ。
提督「ん、やはり良い品だな。困ったもんだ。今の時代にこいつを選ぶ奴とはあまりやり合いたくないな」
磯波「それは、どんな特徴のある銃なんですか?」
提督「これは昔、アメリカの特殊部隊用に開発された大型拳銃でね。貫通力より打撃力重視で、とにかく頑丈、かつ照準能力は最高クラス。マイナス50度から高温70度までの温度変化にも耐え、30000発射撃してもほぼ劣化せず、落下や塩水にも強い。しかし、大きすぎて肝心の特殊部隊では不評だった。この銃を選ぶ奴は、そんなマイナス面より、こいつの高水準のバランスを選んで使いこなそうとしているわけで、それなりに自信家と言える。・・・つまり、おれと似ているんだよ」
磯波「(すごそうな拳銃ですね)提督もこの銃、好きなんですか?」
提督「好きな銃の一つ、とは言えるかな。『決死の作戦に好きな銃を持っていけ』と言われたら、選ぶ銃の一つだよ」
磯波「わたし、ちょっと銃についても勉強してみます」
提督「そうだな、そういう姿勢は身を守ると思うよ。・・・調査団が到着するまでに、勉強がてらこのケース内の銃の目録を作ってみたらいい」
磯波「はい!やってみますね!」
―館内放送が鳴った。
漣(放送)「ご主人様ー、大淀さんから緊急の通信が入ってますから、執務室に戻ってくださーい!」
提督「忙しい日だな!」
―執務室、特殊帯通信端末。
提督「調査団の到着時刻でも決まりましたか?」
大淀「いえ、大変急で申し訳ないのですが、調査団の派遣は取りやめとなりました。調査の必要がなくなったのです。そして、そちらに要人が向かっています」
提督「要人、ですか?」
大淀「はい。総司令部より上からの連絡です。表の知名度は秘匿レベルに低い方ですが、日本国としては要人中の要人とも言える方です」
提督「調査の取りやめと関係がありますか?」
大淀「わかりません。この件に関しては司令部は管轄外なのです。急で申し訳ありませんが、ご対応をお願いいたします」
提督「もしかして、中国人ですか?」
大淀「いいえ、上海軍閥の関係者等ではありません。ギリシア系イギリス人との事ですが、日本語を普通に話せる方です」
―青葉が執務室に駆け込んできた。
青葉「提督、見たことのない大型水上機が着水しましたよ!」
大淀「あっ、ご到着のようですね。では、こちらは通信を切ります。急な来訪ですし、型破りな方とのことで、普通の対応で大丈夫です。わたしたちも詳細を知ることは許されておりませんので、ここで失礼いたします」プツッ
提督「訳が分からなさすぎる!」
―港に向かうと、見たことのない重武装の大型水上機が接岸しており、ハッチが開いたところだった。
提督(水上機マニアの自分が知らない機体とは・・・)
―素早い動きで兵士・・・いや、私兵が左右に並ぶと、銀髪の優男がタラップから降りてきた。
提督「客人で間違いありませんか?この鎮守府を預かる提督です」
銀髪の男「提督は君かな?急な来訪で済まない。だが、そう警戒しないでくれ。僕は挨拶とお礼と・・・そうだな、商談に来ただけなんだ」
―銀髪の男は、細身で若いが、むき出しの刃物のような雰囲気を出している。
提督(この男、相当仕事ができるな。そして、荒事に慣れている。厄介だが、言っていることにウソはない。果たして・・・)
銀髪の男「そうだ、僕も今君を値踏みしているところだよ。君の思っている通り、僕はそれなりに厄介な男だよ。だが、そんな僕に面倒をかけるネズミが居てね。今は君の・・・チンジュフというのかな、そのどこかに、間抜けな顔をして死体になっているはずなんだが」
提督「昨日回収した、工作員の遺体の事でしょうか?」
銀髪の男「そう、まさに工作員だったな、彼は。僕の仕事を請け負うふりをしながら、ネズミのように僕のパイを食い散らかしていてね。彼が使っていた猫除けの薬を効かなくしたら、あっさり猫に食われてしまったと言うわけだ。僕は猫と商売をしろなんて一言も言ってなかった。猫が何匹いて、どんなねぐらに住んでいるのか調べろと言ったはずなんだが、中国語で言えば通じたのかどうか。フフ。次からは中国人を部下にするのはやめることにしよう」
提督「・・・(完全に、自分の言葉で話せる立場の人間か)」
銀髪の男「そう怖い顔をしないでくれるかな?言っていることが分かりづらくて済まない。とても機嫌がいい時に出てしまう悪癖でね。では、君の立場で直面しているであろう疑問に答えよう。まず、僕は武器の商人だ。君らの先祖がショーグンに仕えていて、それがメイジという世の中に変わるころから、僕らは君の国に武器を売っている」
提督「!」
銀髪の武器商人「そういう事情でだ、良い顧客であると同時に、多少の親しみや尊敬に近い気持ちも、君たちに持っているといっていい。・・・それで、ここ何年か、太平洋を我が物顔で荒らしまわっている泥棒猫がいるじゃないか?深海勢力と言う名の。これが僕らの商売に大変な邪魔だ。僕はそれが気に入らなくてね、深海勢力側に取引を持ちかけた。猫の巣穴を特定して、焼き尽くしてやりたかったからだよ。ところが、泥棒猫相手に僕の部下だった男がせこい商売を始めてしまった。彼のやり方は実にシンプルだった。捕獲された深海棲艦を意識不明の状態にして船に積む。たったそれだけで攻撃を受けなくなる。だから僕は、そんな非道な事をしている奴だという事を深海側に教えてやったわけだ。取引もそこそこに、彼はこうして死体になることが出来た、というわけだ。もうせこいマネをして小銭を稼ぐ必要は無い。僕は彼を救ってやったと言えるね。フフフ」
提督「正直なところ、何が起きているのかさっぱりですよ」
銀髪の武器商人「心配はいらない。僕も、わかったふりをして話しているだけだよ。何せ商人だからね、戦いの事なんて何も知らないさ」フフフ
提督(食えない男だ。国を牛耳る妖怪のような老人たちとも対等以上に話せる男だな。自分の言葉で話して、相手の理解度や対応で相手を測る。・・・馬鹿にしているようで、無駄がない)
銀髪の武器商人「さて、情報交換と商談に入ろう。・・・が、その前にマミヤだっけ?僕は甘い物が大好きだ。この鎮守府には彼女が居るんだろう?甘い物で情報交換と商談をより良いものにしたいと思っていてね」
提督「わかりました。こちらへ」
―軽食・甘味処まみや、仮店舗。
―武器商人は御汁粉と団子、羊羹と豆大福を、まるで食事のようなペースで味わっている。
銀髪の武器商人「ん、素晴らしい!この優しい甘さ。僕は甘い物が嫌いな男は、頭を使わないで生きているだけだと思っているよ。・・・さて、まずネズミのような男の事を、死んだ後も弔ってくれる艦娘がいると聞いた。そのお礼に、引き上げた荷物は全て君に譲ろう。上海軍閥との兼ね合いもあり、この鎮守府はもうじき、特例として銃器の携帯・使用許可が出るからね」
提督「そうなんですか?」
銀髪の武器商人「まあ、僕が武器を売りたいのもあるが、地図にない島はイロイロと面倒に巻き込まれやすい。自分らの身はある程度自分らで守る必要が出てくるわけだ」
提督(なるほど、確かに)
銀髪の武器商人「というわけで、もともと弊社のものだった武器一通りと、ネズミ男のダイヤは君が好きにしたらいい」
提督「構わないのですか?」
銀髪の武器商人「これから先のビジネスを考えると、あれでもまだまだ足りない。・・・僕は商人にもある程度のフェアさは必要だと考える方だ。でなければ、武器を扱う守銭奴になってしまうからね。挨拶がわりだと思ってくれればいい」
提督「お気持ちはありがたいのですが、そこまでの商売がここにあるとは思えませんが・・・。そもそも、私にそこまでの権限もありませんし」
武器商人「そう!みんな最初はそう言うものさ。だが、何か忘れていないかね?君は自分のキュートな艦娘たちを大切に思っているわけだ。そして、ここはやがて戦場になるであろうことも知っている。武器が必要な下地は既にそろっているというわけだ」
提督「・・・」
武器商人「さらに、もうじき君にそれなりの権限が渡されるからね。相当な予算が動くことになる。僕は武器を売るなら勝つ方に売りたいし、実際にそうしてきた。・・・何より、新しい武器の開発を素早く好きなだけ行える権限を渡されるとしたら、君はそれを最大限必要とするはずだが」
提督「いや、そこまでの権限が自分に渡されるとは考え辛いのですが・・・」
武器商人「全く自然な反応だね。その通りだよ。僕もそう思っているからね」
提督「いや、意味が分かりませんが」
武器商人「クライアントが、そうしろと言っているのさ。彼女との商談は本当に大変だった。何せ人嫌いだからね。しかし、そのクライアントは大層君を気に入っている。それで、さっき話したような事がこれから起きるというわけだ。日本国もこれを受け入れざるを得ない。壊滅したチンジュフは既に20か所に迫る。このままでは負けるからね。・・・そうそう、これもほんの気持ちだが受け取ってくれ。弊社が把握している情報だがね」パサッ
―武器商人は何かの資料をテーブルの上に出した。
提督「クライアント、ですか。・・・なぜ、こんなものが!これは!」
武器商人「これまでに壊滅したチンジュフの場所、日時、敵戦力の規模と、戦闘の経緯、結果だな。やれやれ、何たるやられようだ!こんなキュートな子たちをむざむざ失うなんてね。準備も力も足りない提督たちは、さぞ嘆いたに違いないな。そして、こう思ったに違いない『碌な情報も提供せず、協力もしない上層部を許せない』とも」
提督「・・・・」
―提督は硫黄島第一~第五鎮守府の壊滅理由が「不明」とされている点と、いくつかの鎮守府に攻めてきた圧倒的な敵戦力に注目した。
提督「小笠原鎮守府に攻めてきた敵の数、これは・・・」
武器商人「すごいだろう?戦艦クラスが60体以上、空母クラスが40体以上だ。この島の港湾防御施設では、せいぜいこの半分も迎撃できない。・・・さあ、僕がここに来た理由は納得してもらえたかな?」
漣(ああ、夢で見たあれは、やっぱり・・・)
提督「納得せざるを得ません。クライアントについては秘密ですか?」
武器商人「今のところは。でもいずれ会えるだろう。彼女は君にいたくご執心のようだしね」
曙・磯波・漣(提督を気に入っている、女性?)
提督「訳が分かりませんな。なので、わかる範囲で全力を尽くすしか」
武器商人「全力ね、いい言葉だが、これは戦争だ。良い武器を選択し、それを必要な数用意して運用すれば、それで全て解決するんだよ。そして僕は武器商人だ。予算はほぼ自由。負ける要素がない」
―武器商人の腕時計のアラームが鳴った。
武器商人「おっといけない。好きに話せるタイプの人物と会うと、ついおしゃべりになってしまう。僕の悪い癖だ。時間を忘れていたよ。・・・そうそう、もう一つ忘れものをしていた!」
―武器商人はトランシーバーを取り出すと、提督たちにも聞こえる声で話し始めた。
武器商人「・・・そう、『ギフトガール』をここへ。二階のマミヤだ」
―すぐに、複数人の足音が聞こえてきて、何人かが『まみや』の暖簾をくぐった。女性の私兵二人と、なぜかサンタのコスプレをした若い女の子が入ってきた。
提督(若い女の子?・・・いや、まさかこの子は艦娘か?見たことも無い子だが)
武器商人「皆の表情が実にいい!サプライズはこうあるべきだな。紹介しよう。サンタの恰好をした彼女の名前は、ファスト・ウィンド。日本の言葉では、ハツカゼだ」
提督「初風!実在していたのか!」
間宮・伊良湖(提督さんがすごく面白い事を言っている気がするけれど、きっと気のせいね・・・)
漣(ツチノコみたいに珍しい子だからって、実在していたのか?はひどい。おもしろすぎです!)
武器商人「さ、自己紹介したまえ」
初風「・・・初風です、よろしく。提督さんにとって、私は何人目の私かしら?」
提督「いや、もちろん一人目だが。そもそも君を実際に見る日が来るとは思っていなかったよ」
初風「そう、嬉しいかしら?」
提督「嬉しいというより、驚きかな。それと、何で君はサンタの恰好をしているのか?という疑問。・・・コスプレ好きなのか、クリスマスだからなのか、その両方なのか」
初風「知らないわよ・・・」ウツムキ
―初風は赤面して、うつむいてしまった。
磯波(かわいい子だなぁ・・・)
曙(何か同類みたいな気持ち・・・)
武器商人「ふふふ、君もそう思うだろう?なぜ彼女はサンタの恰好をしているのか?最初は僕も考えたが、もうやめた。クリスマスだからなんだろう。十分すぎる理由だと思わないか?」
曙(色々な服を着てみたい時は、誰にでもあるものよ)
提督「・・・・」
武器商人「彼女は、艦娘が武器との取引材料になると信じた愚かな提督の、取引失敗の実績だよ。僕の所では管理しきれないし、艦娘は提督になれる資質のない人間に対しては、ある程度成長していなければ無気力な対応しかできないのだ。彼女は本土で検査を受けている、複数の意味で完全なヴァージン艦娘だ。複数の意味でね。嫌でなければ君の部下にしてもらって問題ない。そうしてくれれば、僕も君への挨拶を理想的な形で終えた気分にもなれるのだ」
提督「(初耳だな)・・・いえ、もちろん断る理由は有りませんが。それから、ひとつ質問よろしいでしょうか?」
武器商人「何かな?」
提督「深海勢力側に、武器やダイヤを取引するような人間がいるのですか?」
武器商人「むしろ、武器やダイヤを取引するのは、人間しかいないよ。最初は人間など居なかったようだけどね。すまない、これ以上は僕も知らないんだ」
提督「!・・・いえ、十分です。ありがとうございます」
武器商人「よし、話は以上だ。では、引き上げるとするよ。近々また、甘い物を食べに、ついでに、商談でもするために、また立ち寄らせてもらうよ」ガタッ
提督(商談を「ついで」か。できる男のゆとりを隠そうとしない。おれは随分評価されているな、心当たりはないのだが)
―武器商人は私兵とともにあわただしく退出すると、大型水上機は島を離れた。
―大型水上機、長距離移動用ラウンジ内。
武器商人「久々に楽しい時間だったよ。クライアントもそうだし、さっきの提督もそうだ。自分の頭の中の分類に存在し無かったタイプの人間と出会う事は、僕にとって無上の喜びだからね。・・・さて、君らの感想が聞きたいのだが」
女兵士(右)「それほどですか?確かにそこそこ戦えそうな提督でしたが、私には何も感じることは有りませんでしたが」
女兵士(左)「『ラスト・スタンディング・マン』に会えると聞いて、最初は少し高揚しましたが、現在の感想は、それほどでもない、といったところです」
武器商人「君らのいいところは、僕に媚びた発言を一切しないところだ。さらに、君らの感想もまたいい。彼には『擬態』のattributeもあるそうだから。歴戦の君らが、同じくらい歴戦の彼にそう感じるという事は、この情報は信頼性が高いし、戦ったら君らはまず勝てないだろうね。何らかのトラブルで、あの鎮守府で彼と戦闘になった場合、君ら二人は僕を守り切れず、僕も殺されてしまうだろう。・・・もっとも、僕は『商人』だから、そうはならない可能性が高いが。・・・ああ、大丈夫だった、彼は女性は殺さないのだ。君らも戦闘能力を奪われるくらいで済むだろう」
女兵士(右・左)「!!・・・申し訳ございません、慢心していました」
武器商人「いや、慢心ではないよ。あえて言うならこの世の摂理だ。摂理には逆らえないし、仕方ないよ。老人たちは頑として認めたくないようだがね」
武器商人(それにしても、あの提督の眼の奥に時々見える、獰猛とも哀しみともつかない不思議な光、あれは何なのだろうか?クライアントは、あれを気に入っているのかもしれないが・・・まあいい、僕は商売をすればいいのだ)
―再び、軽食・甘味処・まみや仮店舗。
提督「ふー、ジェットコースターのような時間だったが、初風がいるから夢ではないな」
初風「そうよ、夢ではないわ。何かいただいてもいいかしら?」
提督「間宮さん、何か出してもらっても良いですか?自分はそれに、コーヒーが飲みたい気分です。味はお任せします。」
間宮・伊良湖「色々お出しできますから、少々お待ちくださいね。あ、提督さん指定のバターサンドやクッキーが出来ていますよ?」
提督「いただこうかな。みんなも一息つけようか。まったく、何が何やら・・・。あ、初風も好きなところに座ってくれないか?」
初風「わかったわ、じゃあ・・・」ツカツカ、ストッ
―サンタコスの初風は、提督の正面に座り、提督の眼をじっと見た。
提督「ん?」
曙・漣・磯波(んん?)
初風「提督さん、良い人っぽいのね。ただ珍しいからとか、変な事しようとか、売り飛ばすとか、正直もう解体されたい気分だったのよ。一か月前に海で拾われてから、もう散々だったわ」
提督「・・・その一か月で、提督は何人くらい見た?」
初風「そういう肩書の人はあなたで5人目かしら。でも、私が提督と呼ぶのはあなたが一人目よ。そして、あとはいらないわ」
提督「ひどい状況だな。提督という立場はおれの中で、もうだいぶ評価が下がっているよ」
初風「そうね、きっともっと、下がるんじゃないかしら?・・・私は、自分のレアさに助けられたのよ。そうでなければとっくにどうにかされていたはず。だから私は、あなたの事もすぐには信用できないし、じっと見させてもらいたいの。もちろん、命令や任務はしっかりこなすわよ。必要なかったら、ここで解体でも従うわ」
曙「ちょっとあなた・・・!」
提督「初風、みんな、ちょっと黙っててくれるか?」
初風「えっ?(機嫌を損ねてしまったかしら?)」
曙「わかったわ」
提督「一気に色々起きたが、まず、初風が来たのが非常に嬉しいぞ!いやー、どうやって探そうかと思っていたんだよ。実在するのかと思っていたからね。知ってるかい?提督専用のSNSでは、『自分の世界には初風がいない』というフレーズが人気なくらいなんだよ」
初風「・・・そ、そう?あなたの目の前にいるけれど」
提督「そうだな。色々あったが、今日は良い日だと言える。思ったよりだいぶ、戦いも有利に進められるな。竹を大量に切らなくても済みそうだ。初風、良く来てくれた!色々あったようだが、ここに来るまでの運命のねじれと解釈してくれたら嬉しい!本当は叫んでジャンプしたいが、そうもいかなくてね」ニコッ
初風「・・・他の子にもそんな事を言っているんじゃないのかしら?」ニコッ
提督「初めて着任してくれた子には、似たようなことを言ってる形にはなるかな」
初風「正直な人ね。ふふ」
一同(竹?何の話?)
曙「初風、か。思ったより簡単にデレそうね、この子ったら(小声)」
漣「デレのプロは言う事が違いますなー(小声)」
曙「漣このやろー!(小声)」
赤城「失礼します、お客様は帰られたのですか?それに、クッキーの良い匂いがしますね。・・・まあ!美味しそうなクッキーとバターサンドが!」
伊良湖「赤城さん、これ、提督さん指定のメニューなんですよ!」
提督「ちょうどいいや、赤城さんも一緒に食べよう」
赤城「まあ!ご一緒させていただきますね!」
漣(嗅覚がすごいよ、赤城さん)
提督「・・・うまっ!なんじゃこりゃ!バター控えめなのにうまい、このバターサンド!クッキーも・・・いいね、この厳しめのビター加減がいい。コーヒークッキーは、これは、挽いたコーヒーをちゃんと使ってるねー!疲れた脳を優しく揺すられるこの感じ、たまらないな!」
間宮「お口にあったようで何よりです」
初風「・・・・」キラキラ
漣(おっ?)ニヤニヤ
初風「このクッキーやバターサンド、提督さんの趣味に合わせて間宮さんが作ったの?」
間宮「そうですよ?ちょっと大人の男性の好みの味ですから、あなたには少し合いませんでしたか?」
初風「いえ・・・(すごく美味しいんだけど!)」キラキラ
赤城「ええ、これ、すごくおいひっ!」
曙(ええー、一気に口に入れすぎなんじゃ?)
磯波(味わっている、の?)
提督「これら、いつでも食べられる状態だとありがたいね。やはり明日はもう、堅洲町に行かないとダメだな。磯波、明日はそういう予定のつもりでいてくれ」
磯波「あっ、はい!かしこまりました!」
初風(ここで落ち着けたら、すごくいいんだけど・・・)
漣「初風さん、よろしくねー!それにしても何でサンタコスなんですか?あ、漣たちはメイドコスしてますけどね」
初風「それが全然わからないの。すごく恥ずかしいのよ、この格好。女の子のサンタコスが好きな提督が居て、大変だったんだから・・・」カアァ
提督「あー、そういう男は一定数いるね。おれはメイドとか、黒スーツが好きかな。まあ、しょうがないもんだよ」
赤城(黒スーツと言いましたね、今。赤城、聞き逃しませんよ!)
曙・磯波(黒スーツ!)
漣「艦娘の艤装服も謎が多いですねー。何でサンタなんでしょう。でも、さすがにトナカイまでは居ないですよね」
曙「あはは、そんなコスプレの子なんて、いるわけないよー!」
―同じころ、特殊輸送船『にしのじま』付近の作戦海域。
山城「潜水艦がやたら多いわね、沈めて沈めて、また沈めてやるわ!」
鳳翔「また撃沈しました!本当に多いですね」フゥ
五十鈴「ふふ、でも五十鈴には丸見えよ!」
吹雪「あっ、わたしも一隻撃沈しました!」
―『にしのじま』艦橋司令室。
陸奥「敵が多すぎて、そのぶん新しい仲間探しもはかどるわね」
叢雲「そうね、あとは伊19潜水艦くらいのものよ」
陸奥「総司令部から送られてきた、特殊邂逅事例はどうするかしら?」
叢雲「この海域で、卯月と、江風との邂逅事例が増えているという情報ね。あくまで伊19を探しながら、会えたらラッキー、くらいでいいんじゃないかしら?仲間が増えすぎて補給が足りなくなる可能性が出てきたわ」
陸奥「そうね、まさかこんなにうまくいくなんて。そろそろ提督の顔が見たいわ、ね、叢雲」
叢雲「そっ、そんな事ないけれど、うまくやってるか心配だわ」
陸奥「あらあら」フフッ
―再び、付近の作戦海域。
山城「トナカイ?」
鳳翔「トナカイ・・・でしょうか?」
五十鈴「どう見てもトナカイよね?」
吹雪「トナカイさん、ですか?」
江風「なンだよー、さっき自己紹介したじゃんかー!改白露型の江風だよ!」
山城「ちょっ、だめ、くっ・・・!あなた、なんでトナカイの恰好で海にいるの?」
吹雪(山城さん、ツボっちゃってる・・・)
江風「山城さん、そんな笑う事無いじゃんかー。あたしだってわかんないンだよー。クリスマスだからだろ、どーせ!いつもの艤装服はどこいったんだよもう!」プン
山城「ごめんなさい、でも・・・くっ、ふふ。クリスマスだからって、トナカイは無いでしょうに」
江風「角だけトナカイで、あとはサンタみたいなもンだけどな」
鳳翔(かわいいですね・・・)
ー堅洲島にも、クリスマスが近づいていた。
第九話 艦
某コンビニのレーズンバターサンドでさえ美味しいのに、間宮さんに作ってもらったら、どれだけ美味しいのか、ちょっと気になりますね。
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