2016-11-28 17:06:05 更新

概要

 さよならのゆくえ:後編です!


前書き

 どうもnikehideです!さよならのゆくえ:後編入りました!まぁ後編といってもどれくらいになるかわかりませんが…(笑)
ぜひ読んでいただければ嬉しいです!


[覚悟]


「失礼しました」

 外はうっすらオレンジ色に染まっていて運動部の声がグラウンドの方から聞こえてくる。平塚先生との話を終え、今は奉仕部へ向かう途中。

「先輩達、まだいるかな…」

 特別棟へ向かい馴染みのあるドアの前に立つ。中から声は聞こえないが、いつものように小説のページが擦れる音やティーカップを机に置く音が聞こえてくる。

‐コンコン

「どうぞ」

いつものように雪ノ下先輩の綺麗な声が聞こえた。

「こんにちは~!」

「あ、いろはちゃんやっはろー!」

「こんにちは一色さん」

「結衣先輩、雪ノ下先輩こんにちはー!」

 といつもの用意された席へ二人へ挨拶をしながら座る。

「紅茶で良かったかしら?」

「あ、はい!ありがとうございます!」

 雪ノ下先輩はいつも紅茶を入れてくれる。しかも今日はわたし専用のイルカのデザインのマグカップに。

「先輩も!こんにちは♪」

 小説に目を落とし集中している先輩にニコッとして声をかけると、一瞬ビクッとして小説にしおりを挟みこちらを向く。

「おう。今日もあざといな」

「なんですかその言い方~。そこはあざといじゃなくて可愛いじゃないんですかね~?」

「はいはい。可愛い可愛い」

「むぅ~…」

ぷくーと頬を膨らませて先輩を睨む。

「それよりお前今日サッカー部行かなくていいのか?一応あっちがメインだろ」

「あ~…まぁなんていうかその、この時期って風強くて土煙ひどいじゃないですか~」

「ですか~って言われても知らんし。ってかお前年中そんなこと言ってないか?」

「気のせいです♪」

 きゃぴるん♪

「…はぁ。葉山はどうしたんだよ…」

(うっ…また葉山先輩の話…先輩から葉山先輩の名前を出されるといつも心がズキッとする…)


「…そのことなんですけど~」


 こんなことをいつまでも続けたくない…もうこうして先輩達と過ごせる時間は限られてる。先輩のことが好きなのに葉山先輩のことが好きと嘘をつくのはもうやめにしよう…それは奉仕部の仲間だと認めてくれた平塚先生、結衣先輩、雪ノ下先輩、そして先輩に失礼だ。


「…わたしもう葉山先輩のこと好きじゃありません」

「はぁ!?」

「「…」」

 先輩は当然の様に驚いた。でも二人には特に驚く様子はなかった。


(やっぱ気付かれてたか…)


「いやぁ実はぶっちゃけ言うとあのフラれた日から『あ、違うな』って思ってたんですよ」

「…」

 先輩は驚いた様子でこちらをずっと見ている。

「わたし、恋愛って顔がかっこよくて、誰からも愛されるような人とするもんだって思ってたんですよ。そんな人と付き合えたら嬉しいんだろうなって思ってたんですよ」

 結衣先輩も雪ノ下先輩も真剣にこちらの話を聞いていた。

「でもそれって自分が存在しないじゃないですか。自分がこの人といると楽しいとか、この人といると安心するとかそうゆう気持ちって感じたこと一回もないんです。葉山先輩とは」

 葉山先輩はかっこいい。それに性格もいいんだと思う。勉強だってできる。だからモテる。でもそれだけ。誰にでも優しい葉山先輩。誰にでも愛される葉山先輩。でもそれは葉山先輩の外見しか見ていない。

 だって見えないから。葉山先輩は本当の自分を一切見せない。理由はわからないけどそんなの偽物だって今なら思える。偽物を振りかざしてできた友達は上っ面だけの友達だろうし、恋人もそれと同じ。自分の本物を見せないで相手の本物なんて見れるわけがない。だからわたしはちゃんとこの三人には言わなきゃいけない。多分二人は気づいてるだろうけど、それでもわたしの口から。


「だからもう…葉山先輩の事は好きじゃありません」


 先輩の目を見て真剣にわたしは言った。


「…そうか。でも驚いた。…お前ってちゃんといろいろ考えてんだな」


「む~…なんですか~それ~!わたしだってちゃんといろんな事考えてます!」

「い、いや、すまん。別にお前がなんも考えてない奴とか思ってた訳じゃなくてだな」

 あたふたとする先輩。ほんとそんな狼狽えなくてもいいのに。

「ヒッキー最低~!女の子はいっぱい悩みとかあるんだよ!?デリカシー無さすぎ!」

「由比ヶ浜さん。その男にデリカシーが無いなんてあまりにも酷よ…」

 そう言って雪ノ下先輩は結衣先輩の肩に手を置いて、首を振る。


「そもそも人と接する機会が無かったんだもの」

「あ、…ごめん…」

「おいこらお前が一番デリカシーないだろが!そして由比ヶ浜は何に謝ったの?ねぇ…?」

「何を言ってるのかしら。デリカシーという言葉の意味を知ってるの?『人間関係』を良好にするために必要な感情や気遣いなどの繊細さの事を言うのよ?比企谷菌」

 (比企谷菌なにそれウケる(笑)でもちょっと欲しいかも…(笑)なんか折本さんみたいだな…)

「おいこらまたそのネタか!ってかいちいち説明が細かいな。ユキペディアさんなの?」

「あら。人の名前をバカにするのは最低な行為よ。ヒキガエルくん」

「ずいぶん懐かしいシリーズ出してくるな…あとお前は自分の事棚に上げすぎだ。」

「え?人の名前と言ったじゃない。どこが棚に上げてるの?」

「…はぁもういいです…」

 そう言ってガックシと肩を落とす先輩。それに反して雪ノ下先輩は勝ったと言わんばかりに超満足気な顔をしていた。この人ほんと負けず嫌いだな~。

なんてことを考えていると今まで落ち込んでいた先輩が顔をあげ、こちらに疑問を投げかけてくる。


「でも、じゃあ俺ってなんでお前にデートとか連れ出されたの?」



「ふぇ?」


「だってさ、お前葉山とのデートのための練習だ~とか言ってたじゃん?でも実際はもうあのクリスマスの時には好きじゃないって言ってたし」

 (せ、先輩が核心を…この人いっつも鈍感な癖にぃ~!///)

「そ、、しょんなの暇つぶしに先輩に付き合ってあげただけにき、決まってるじゃないでしゅか!な、なんですかひょっとして俺の事好きだからデートに連れ出されたのかな?とかそんなのある訳にゃいじゃないですか///!……あ!えと、、あと、考えが甘いので出直し来てくださいごめんなさい///!」


「いやお前噛みすぎだから。なんでそんな顔真っ赤にして焦ってんの?しかも今取ってつけたようにフラれたけど俺何回フラれんだよ…」


 (はぁはぁ…顔あっつ…ってかこんな有様でも気づきもしないとかほんとバカ!ボケナス!八幡!)


「ヒッキーって鈍感すぎだと思う…」

「ほんとどこのラノベの主人公かしら…あ、ごめんなさい。あなたはどちらかというと主人公と誰かが教室で喋ってるシーンで後ろに映っているモブキャラよね…」

「なんで俺急に罵倒されてるの?あと、俺はむしろモブになりたいまである。モブは誰にも干渉されないからな!比企谷くんはいつも気だるげ~」


「「「…はぁ~…」」」


「え?なに?なんでため息つかれてるの?みんな疲れてるの?帰る?」

「なんで帰るってとこ嬉しそうだし…」

「あなたみたいな目が腐ってる男が後ろに映っていたらホラーアニメと勘違いされるじゃない」

「そうそう。女の子たちは普通に生活してるけど、窓がめっちゃ割れているのに誰もツッコまない感じな。って誰がゾンビだ」

 

(ほんとこの人はぶれないなー)


「とにかく!わたしが先輩とデートしたのは~…先輩とデートしたかったからですよ♪?」

「はいはいあざといあざとい」

「む~…先輩雑過ぎませんかね~…」



 こんな日常が楽しくてしょうがない。奉仕部は自分が自分のままでいられる心地のいい場所。でもそれもあと何ヶ月あるだろうか…終わりが来る前にわたしはやらなくちゃいけないことが山程ある。気づいているかもしれないが二人には先輩に伝える前にわたしの本当の気持ちを知っておいてほしい。そして二人の気持ちも知らなければならない。先輩ともずっと一緒にいたいけど、この二人ともずっと一緒にいたいから。そして平塚先生からの依頼もちゃんとやらなきゃ。胸を張っていつか先輩の隣に立ちたいから。

 この日をきっかけにわたしは覚悟を決めた。『本物』を手に入れるための覚悟を。





-----

[ライン] 

 新入生もようやく学校に慣れ、小町ちゃんもたくさんの友人に恵まれたらしい。まぁ小町ちゃんのコミュ力は結衣先輩以上だからそりゃそうだって感じだけど。そうそう、わたしは小町ちゃんと度々ラインのやり取りをしている。小町ちゃんにはもう先輩を好きなことがバレていたので相談に乗ってもらっているという形だ。学校はと言えばゴールデンウイークも過ぎじわりじわりと暑くなってきて、着ている上着を脱ぎたくなってくる季節。

 え?ゴールデンウィークは何してたかって?そりゃ先輩と遊びたかった…でもうちの家族が久しぶりの旅行だっていうから行かない訳にもいかず、先輩には一度も会っていない…腹いせに旅館先での浴衣姿の写メを撮ってメールに付けて送ってやった♪…でも一日経っても帰ってこなかったからもう一回メールしたらこんな返事が返ってきた。

―――――以下、メールのやり取り

『先輩!昨日浴衣写メ、メールしたのになんで返してくれないんですか!(゚Д゚)ノ』


『あ、わりぃ。どっかの有害サイトからの添付付きメールかと思って見てそのままだったわ』

『先輩…殺す』

『すいませんでした。冗談です。浴衣姿とても可愛くて綺麗でした』

『許してあげましょう♪その代わりに今度旅行一緒に行きましょうね♪?』


『行かん』

『小町ちゃんに先輩から浴衣姿の写メを要求されたって言います♪』

『よし!行きましょう!』

『約束ですからね♪』


『はぁ…了解』

 とまぁこんな感じでゴールデンウィークは先輩成分が補給出来なかった…もちろんゴールデンウィーク明けは奉仕部に行きまくりましたけど!そんな感じで過ごしてきて今日はもう週末。今週ももう終わりかー…先輩に会えないの寂しいな~…なんて思っていると小町ちゃんからラインが届いた。


―――――以下、ラインのやりとり

『いろはさんこんにちは~!』

『あ、小町ちゃんこんにちは!』

『明日、土曜日って何してますか?』

『ん?特に予定はないよ~!』

『なら良かったです~♪小町中間テストに向けて勉強したいんですけど、なんかいい参考書ないかな~って』

『うーん…わかんないけどわたしも勉強しなきゃだし、一緒に買いに行く?』

『あ、はい!じゃあ明日10時千葉駅集合でお願いします♪』

『は~い♪』

『その後小町の家で勉強教えてくれると助かります!あ、ちなみにお兄ちゃんもいます!ちなみにですが♪(笑)』

『勉強は人に教えるのも勉強だからね!しょうがないからいいよ?』

『はいはい~♪しょうがなくお願いしますぅ~♪(笑)ではでは~♪』


 なんと神からのラインだった。あぁ神様仏様小町様~!!週末って素晴らしいなぁ♪


-----

[ナンパ]


 時刻は土曜日の午前9時半。先輩の家に行くからとお気に入りの服と今年先輩からもらった誕生日プレゼントのネックレスを付けて、今は千葉駅の前で小町ちゃんを待っている。このネックレスは三日月がモチーフのハートネックレスで貰った時あまりにも嬉しすぎて『きゅ~///』と言いながら意識を失うという漫画みたいなことをやらかした…だって嬉しかったんだもん!

 それ以来わたしはこれが宝物で付けても先輩とのデートの時くらいにして、付けないときは付属の箱に厳重にしまっておいてある。


『でも、これって普通彼女とかにプレゼントするやつだよね…結構高いし…こんなの貰っていいのかな…』


 とそんなことを考えながらネックレスのトップを触っていると


「ねぇ?そこの彼女!俺らとデートしない?」

 急に声をかけられて振り向くとそこには見るからにチャラい男が三人いた。見た目は戸部先輩。

「俺らさ~今から三人で遊びに行くんだけど~男三人とか超むさくるしいから女の子と行きたかったんだけどさ!」

「そんな時駅前にめっちゃ可愛い子いたから声かけた訳よ!」

「だから行こうよ~!」

 と、戸部三人衆は言う。だからの意味がまったく分からないし、駅前で一人でいるんだから誰かを待ってるに決まっているでしょ!だいたいあんたらみたいな男と行く訳ないでしょ!と言いたかったが逆ギレされても困るので

「すいません~、わたし今彼氏待ってるので~」


 まぁ嘘だけど大抵こう言えば諦めるはず。


「こんな可愛い彼女を待たせるようなそんなヘボイ彼氏ほっといて行こうよ~」

「そうそう!」


 と思ったけど意外にしつこい…


「いえ~わたしその彼氏大好きなので~。こんな可愛いネックレスくれるくらいなんですから~。最高の彼氏なんです~」


 彼氏じゃないけどこれを見せれば諦めるだろう。

「あ~ん?それなら俺らがもっといいのプレゼントしてやるよ~。どんなやつ?」

 と言って戸部Aがネックレスに触ろうとしてきた。


「触らないで!!」


 とっさにネックレスを隠し、怒号をあげたわたし。男はそれにむかついたのか


「あん!?お前可愛いからって調子乗んなよ?いいからついて来いって言ってんだよ!!」

「キャッ!!」

 男はわたしの腕を無理やり引っ張ってきた。わたしも女の子だ。力づくでこうされたらどうしようもできない…助けを呼ぼうにも怖くて声が出ない…足も震えてきた。


(…怖い…誰か、、誰か助けて!)


 通りすがる人たちも関わるまいと目を伏せ、そのまま通り過ぎていく。もうダメかと思ったその時



「おい。その手を離せよ。」



 誰かがわたしの腕を掴んだ手をはじき男とわたしの間に立った。


「あん?てめぇなんだ?」

「こいつの彼氏だよ。それよりここどこだか分かってんのか?駅前だぞ?交番もすぐそこにあるんだからな。だいたい周りを見てみろよ。こんな往来で女の子に暴力ふるってたらどうなるかわかってるよな?」

 といつの間にか今まで通り過ぎていた人たちもこの男の人が現れたことによって、気になったのか立ち止まりこちらを見ている。

「うぐっ…くそっ!…おら行くぞお前ら!」

 と男たちも周りを見て観念したのかどこかへ行ってしまった。でも当のわたしはまだ怖くて上を向けないし、声もよく聞こえない。パニック状態だった。


「一色大丈夫か…?」

 と今助けてくれた男の人が知るはずのないわたしの名前を呼んだ。

(えっ?今の声って…)

 その声はわたしが大好きな声。大好きな人の声。その声を聞いて、たちまちわたしのパニック状態が解けていく。


「せ…ん、ぱい…?」

 ようやく顔を上げることができた。そこにはわたしの大好きな人がいた。


「おう」

「…な、んで…?」

「なんでってメール見てなかったのか?まったくお前は…それよりここは人目につく。ほら行くぞ」

 と先輩はわたしの手を引いて、歩いていく。どこへ向かうのかは分からなかったが、こんなに安心する手は初めてだった。

 

 少し歩き先輩はお店へ入り、一緒にわたしも連れていかれる。

「よし。ここならいいだろ」

 どうやらカラオケ店のようだ。先輩は受付を済ませ一緒に部屋へ入る。

「一色着いたぞ。とりあえずここでならもう大丈夫だ」

 先輩はわたしを隣に座らせて恐る恐るといった感じにわたしの頭に手を置いた。


「…怖かったか?」

 置いたその手で優しく頭を撫でてくれた。


「…せん、ぱい」

「ん?」

「…怖かったです…すごい…怖かった…」

「ん」

「誰も助けてくれなくて…でもしぇん…グスっ…ばいが…」

 

  もうダメだった。もう我慢の限界だった。あんなに怖いことはなかった。あんなに人を怖いと感じたことはなかった。

 でも、あんなに嬉しいことはなかった。あんなに安心できたことはなかった。それらが全部重なって、わたしはもう我慢ができず、先輩の胸であの時のようにまた泣いていた。


「-おう。頑張ったな」

 先輩はわたしの頭をぽんぽんと叩きそこからは優しく撫でてくれていた。ずっとずっとわたしが泣き止むまで。






------

[ある男の1ページ]


Side:八幡


 今日は土曜日。世間の社畜様は土曜日、はたまた中には日曜日も仕事をして上司が~とか新人が~とかノルマが~とか愚痴をこぼしまくっている事だろう。何それ。仕事したくねぇなぁ~…愚痴しかないの?社会って。誰か平塚先生貰ってやれよ…いやマジで…


 まぁ世間の社畜様はさておき、学生の土曜日は基本休日である。休日は俺にとってこれ以上のご褒美はないと言っても過言ではない。今日も食う寝る遊ぶの三連コンボ♪って感じだ。遊ばねえけど。俺の場合見る読む寝るか。


そう出来ると思っていた。 


そう出来ると思い込んでいた。


昨日までは。


「お兄ちゃん!明日小町の代わりに参考書買ってきて!」

 部屋に入るなり、そんな事を言ってくる我が干妹…じゃない愛妹小町ちゃん。

「は?嫌だよなんでだよ」

「小町書店とかそんな詳しくないし、お兄ちゃんおねが~い」

「うぐっ…じゃあ一緒に行くぞ」

 妹にお願いされたら断れないのが千葉のお兄ちゃんなんです…


「いやぁ、それがさ小町明日ちょっとやることあって…あれがあれでさ!そんな訳で一緒に行けないからお願いね!後で買ってきてほしい参考書と予定をメールで送るから!あと、今日友達の家に泊まるからご飯適当に食べてね!」


 とまるで嵐のように部屋を出ていった。

「なんだあいつ。って予定?なんで予定?…ま、いっか」


 小町が友達の家に行ったあと、しばらく漫画を読んでいると小町からメールが届いた。


 『明日数学と科学の参考書買ってきて!あと、一緒にいろはさんも行くことになってるから!千葉駅前に10時集合ね☆!お兄ちゃんの服はもうリビングに用意済みだからそれ着ていくように!じゃあおやすみ!』


「は?一色?なんで?」

 なぜ一色がいるのかわからない。ただなんで一色がいるんだとメールを送っても返って来ないし、明日は大人しく行くしかないようだ。行かなかったら後で小町に何言われるかわからないし…


「はぁ…俺の休日が…まぁ俺も受験勉強がてら参考書買ってくるか…」


 そうして俺は飯も食わず、今日は寝る事にしたのだった。


(目が覚めたら『君は生まれる世界を間違えた☆!』とか遊戯の神様に言われて異世界転生してねぇかな……ねぇか。むしろ生まれたこと自体が間違えたまである。そもそもチェス出来ねぇし…)




-翌朝。

「はぁ…寝ていたい…」

 時刻は8時半。もうそろそろ起きて行かなければならない。目を開けると知らない天井…な訳もなく、よく見知った天井だった。


「行くか…」


 一階に降りて顔を洗い、歯を磨いてリビングへ行くと小町の言う通り服が置いてあった。小町の置手紙と一緒に。


『これを着ればお兄ちゃんもイケメンに!!あ、今の小町的にポイント高い♪』


(どこの雑誌のセールスだよ…ってかそのポイントで商品交換してくれ。商品は小町でいいのん?)

 と心の中で小町にツッコみながら服をきて俺は千葉駅へと向かったのだった。





------

[買い物]

Side:いろは

「ん…」

 気がつくとわたしの目の前にはテーブルと思しき物が見えた。思しきというのは視界がどうやら横だったからである。テーブルに置いてあるグラスも横、カラオケ用のテレビとデッキも横。

「ようやく起きたか」


「ふぇ?」


 (頭の横から先輩の声が聞こえる……横!?)


 ある事に気づいてバッと頭を上げて、起き上がる。

「うぉ!」

 突然起き上がったわたしにびっくりする先輩。その先輩は今わたしが寝ていた丁度枕にあたる場所にいた。つまりわたしは先輩に膝枕をされていたのだ。


「しぇ、しぇんぱい///!?」

「お、おう」

「にゃ、にゃんでしぇんぱいがここに///!?ていうか膝枕!?」

「あ、悪かったな…///でもお前が泣きつかれて寝ちまったから」

「あっ…」


(思い出した…わたしナンパされて無理やり連れてかれそうになって先輩が助けてくれたんだ…それで…)


「す、すいません…///それと…助けてくれてありがとうございます…」


「…まぁなんだ。その…お前可愛いし、今日の服とかめっちゃ可愛いからナンパされるのはしゃあない…あっ」

「ふぇ///?」

「い、いや、な、なんでもない。気にすんな///」


(またこの人は…///!あざとすぎ…///!)


「ん、んん///…でもなんで本当に先輩が来たんですか?小町ちゃんは?」

「はぁ…ほんとにお前メール見てないんだな…」


「メール?」


 先輩に言われてスマホを開く。すると小町ちゃんからラインが届いていた。9時半に。



『おはようございます!いろはさん!急ですが小町行けなくなったんでお兄ちゃん代わりに行かせます!あ、昼くらいに家に来てくれればそれからの勉強は大丈夫ですのでよろしくお願いします♪ あなたの恋のキューピッド小町より☆!』


「ヴッ!ヴェァァァ!!!!!小町ちゃんたらー///!!!!!」


「え?ココアさん?」

「ココアさん?誰ですかそれ?新しい女?(それより小町ちゃんー!!嬉しいけど!嬉しいけども!!)」


 この気持ちを小町ちゃんに伝えたくて大急ぎで小町ちゃんにラインする。

 



『ありがとうございます』



 ただの感謝でした…(笑)

「それより一色もういいか?そろそろ参考書買って帰りたい」

「あ、はい!もう大丈夫です!行きましょう!」

 

 それからカラオケを出て、先輩に連れられモノレールへと乗った。

「先輩どこ行くんですか?」

「ん?ららぽーとだよ。書店で大きいの知ってんのあそこくらいだし。参考書もいろんなのあるだろ」

「あ、なるほど」



 乗り換えなどをしてようやくららぽーとに着き、少し歩いていると

「…一色」

「はい?」


「ん」

 と先輩が手を出してくる。


「ふぇ?」


「ひ、人多いからな。それに…お前まだちょっと怖がってるみたいだし…」


 ちょっとトラウマになったのだろうか…自分でも知らないうちに男の人が横を通るとちょっとビクッとしてしまっていたらしい。先輩はそんなことまでちゃんと見てくれている。


(先輩…///あざとすぎます…///もうわたし先輩のこと好きすぎてどうすればいいかわかりません…///)


「…ありがとうございます…///」


 そっと先輩の手を握る。もう顔真っ赤で先輩の顔が見れない…


「お、おう///」


 先輩も顔真っ赤にしながら握り返してきた。


(自分も恥ずかしいのに手を出してくれるなんてほんと先輩って…)


「よし。行くぞ」

「はい!」


(あざとカッコイイなぁ~…)




 

------

[お泊りイベント前編]

 書店で小町ちゃんと先輩、あとわたしそれぞれの参考書を買って、現在比企谷家前。


「で、なんでいんの?」

「え?先輩小町ちゃんからのメール見てないんですか?」

「はぁ…見たよ。見たけど一応な」

「なら入りましょう♪」

「…はぁ…わかったよ…」

 先輩は玄関のドアを開け、


「ほら入れ」

「はい♪」

 わたしが先に中に入り先輩も後から続く。

「おじゃましま~す♪」

「ただいま~」


 挨拶をするとパタパタと小町ちゃんがやってきた。


「あ、いろはさんいらっしゃ~い!お兄ちゃんもおかえり!」

「おう」

「小町ちゃんこんにちは!」

「はい!こんにちはですいろはさん!えっと、それでは早速ですが時間ももう3時ですし、勉強始めましょう!」


「じゃああとは頑張ってな。俺は自分の部屋でもうひと眠りするわ」


 と先輩は二階へ行こうとする。しかし、すかさず小町ちゃんが先輩の服をギュッと掴む。

「お兄ちゃんどこ行くの」

「いや、だから自分の部屋…」

「お兄ちゃんがいなくなったら誰が勉強教えるの?」

「はい?」

「小町と~いろはさんはお兄ちゃんより年下だし~?後輩だし~?こうゆうときは~頼れる先輩に教えてほしいのです!ね!いろはさん!」


 こちらを見た小町ちゃんがわたしにアイコンタクトをしてくる。


(あ♪なるほど♪)


「そうですよ!先輩!教えてくださいよ~!」

「いや、だから……」


 振り返った先輩はこちらをみて唖然とする。

それもそのはず。


「おねが~い」と言いながら小町ちゃんと二人であざとパワー&年下妹パワーを先輩に浴びせているのだから。


「はぁ…わぁったよ…数学以外だけだぞ…」

「「いえ~い♪」」

 ようやく観念した先輩と、ハイタッチする私たちであった。


 それから三人で勉強をして、時刻は夜6時。


「う~う~」

「う~う~」


「なに?お前ら双子なの?なんで同じうめき声あげてんの?」

「「だってわかんないん(だもん!)ですもん!」」


「はぁ~…あ、もうこんな時間か。一息入れるか?」

「あ、はい!」

「そうだ!そろそろご飯にしよう!いろはさんも食べてくださいね!」

「え、でもいいの?」

「もちろんです♪」

 恐る恐る先輩を見る。


「まぁいいんじゃねぇか?別に」

 (やった♪)

「じゃあいただきます♪」

「やったー♪」

 わざとらしく喜ぶ小町ちゃん。ほんとあざといなー。


「あ、でもなんか手伝うよ!悪いし!」

「あ、じゃあお願いします~♪(いろはさん!いろはさん!お兄ちゃんの好きな味付けとか教えちゃいますね♪)」

 こっそりとわたしに言ってくる。


「あ///うん(お願いします///)」

 

 それから小町ちゃんと二人で一緒に肉じゃがを作り、テーブルに座っていた先輩に出す。

「お、今日は肉じゃがかー!旨そうだな」

「そうだよー♪しかもいろはさんの愛情たっぷりのね♪」

「ちょっ///!!小町ちゃん///!!」

 (まったくこの子は~///)

「お、おう///」

照れくさそうにする先輩。と小町ちゃんはそれを見て

「ほぅ…♪」

 となにやら一人で納得している。

(なんか絶対変な事考えてる!)

 と思っっていたら小町ちゃんの携帯が鳴る。

「もしもし!小町だよ~!あ、うん!うん!え、いいの!?わかった~♪今外出るね♪」

(え?外出る?)


「ごっめ~ん!小町これから友達の家泊まりに行くことになっちゃった~。しかも友達のお母さんが車出してくれてもう家の前まで迎えに来てるから小町もう行くね~。ごめんなさい二人共!」

「「え!?」」

 先輩とわたしが事態についていけていない間に、小町ちゃんは何故か用意してあった服を着て、これまた何故か用意していたお泊りセットを持って玄関へ向かう。

「ちょっ!小町ちゃん!?」

「あ、あとお兄ちゃん。今日明日ってお母さん達残業でそのまま会社泊まるから帰ってこれないって!」

「は!?」

「じゃあ行ってくるね~!ばいば~い♪」

-バタム。

「………」

「………」

 あまりの突然の二人っきりにお互いに言葉を無くす先輩とわたし。


「…はぁ…一色もう外暗いし家まで送るわ」


 先輩は椅子から立ちあがり、外に出る準備をしている。


(送ってくれるとか超嬉しいけど…どうしよう…超言いづらい…)


「あ、あの先輩…」

「おうなんだ?遠慮しなくていいぞ?送らなかったら後々小町に怒られるしな」

「い、いえ。実は…」


 先輩に昨日小町ちゃんとしてラインのやりとりを伝える。


――――これは昨日ラインをした時の続きである。


『あ、いろはさん!あと明日泊まっていってください!』

『え?』

『明日明後日ってうちの親いないですし、いっぱい勉強教えてほしいですし♪』

『でも先輩が迷惑なんじゃ…』

『大丈夫です♪兄は小町がごり押しすれば許してくれますし、いろはさんは小町のお友達として来るんですから♪』

『わ、わかったよ!じゃあお泊りセット持ってくね!』

『お願いします♪ではでは☆』



「そういう事なんで、実はうちの親も今日家にいなくて…しかも今日泊まると思ってたから鍵も置いてきちゃったんです…」


「…はぁ~…そっかぁ…」

「はい。すいません…」


 (先輩嫌そう…)


「いや、別にお前が悪い訳じゃないから気にすんな。今からだと他の友達の家になんて泊まれないだろうしなぁ…」

「そもそも友達の家どこかわかりません…」

「だよなぁ…まぁしゃあないか。外もどうやら雨降ってきたみたいだし」


「…」


「いや、そんな落ち込むなよ…」


「だって先輩嫌そうですし…やっぱりわたしどこか探して適当に泊まりますね…じゃあ…」

 荷物を持ってわたしは外へ出ようとする。


「ばっかお前。今日あんな怖い目にあってる奴を一人にできっかよ。それこそ小町に怒られる」

 ぎゅっと先輩はわたしの腕を掴む。


「せんぱい…」

「それに別に嫌ではない。ただお前も女の子だし、俺は男だ。だからお前が嫌かな?と思っただけだ」

「い、いえ…///わたしは先輩が良ければ全然いいです///むしろ嬉しいまであります///」

「そ、そうか///まぁ小さい家だがそれでもいいなら泊まっていけ」

「はい!」


 そうして先輩の家で初めてのお泊りをすることになったのだった。



後書き

 今回も『さよならのゆくえ』読んでいただきありがとうございます! 
 前回後書きで言っていたオリキャラの活躍は次回以降になってしまいました…すいません…なんか書きたい事を書いていたらいつの間にか10000文字超えてまして…キリのいいところで止めて次回以降に回す事にしました!
 とりあえず、今パソコンとスマホ両方で執筆?しているのですが、『!』や『?』がパソコンでは全角でどうやあスマホでは半角になってしまうようです(笑)今度そこは直しますね!あと、ところどころよく分からない言い回しとかあると思うのでそこはぜひ指摘していただければ嬉しいです!(特にららぽの辺りは作者が行ったことないので…すいません)
 あと、なんか私が書くいろはがなんかすごい泣き虫になってしまうんですが…まぁそこは女の武器は涙ということで(笑)実際いろはの電車の中での泣きシーンはもうやばかったです(笑)もっと可愛く書きたいのに文才がないせいですいません…
 ということで下手なりに頑張って書きますので応援の程よろしくお願いします!


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