2017-09-07 20:47:17 更新

概要

異常な提督の鎮守府物語、その3章です。今回は飛龍と蒼龍が物語の中心ですね。ブラック鎮守府の多い世界の中、飛龍たちとどう打ち解けるか、そこらへんを期待して見てくださればなぁと思います。


前書き

提督「…ようやく揃いました」の続編です。今回は飛龍や蒼龍を登場させたいと考え、けっこう調べて、自分なりに頑張ってみましたが、艦これにはそんなに詳しくないので、それがダメだという方はブラウザバックをオススメします。それでもいいよ、という方は楽しんでいってくれると嬉しいです。


大本営


川内「ねえ、何で元帥殿から直々に任務を任されたのに、まだR鎮守府に行ってはいけないって、どうゆうことよ!?」


神通「仕方ないですよ。あそこの鎮守府、初期にしては艦娘の数が多くて、バランスをとるにはこうしなけばならない、って言われたじゃないですか」


那珂「そうだよ川内ちゃん。アイドルには時に堪え忍ぶ強さも必要だよ!」


川内「アタシ、アイドルじゃないし…。もう!一体いつになったら行けるようになるのさ!?」


神通「えっと…、また新しいのが3隻入るそうなので、一ヶ月後ぐらいでしょうか」


川内「ぐわぁぁぁ、夜戦したいぃぃ!!!」


ーーーーー

ーーー



提督(お面着用)「俺が潰した…もとい、何者かによって不正が暴かれ潰れることになった鎮守府から、こちらに3人、移動してくることになった」


青葉(今、俺が潰したって…)


間宮「どんな子が移動してくるのですか?」


提督「えっと、名前は飛龍、北上、卯月だそうだ。2日後、こっちにくる」


明石「つまり…」


提督「またサプライズパーティーやるぞぉ!」


全員「いえぇぇぇぇい!」


提督「で、それをするにあたって、それまでに仕事を多目に片付けておく必要がある」


高雄「ただでさえ、他5人はしばらく遠征にいってもらってるので帰ってきませんしね」


提督「まあ、パーティー当日には戻ってきてくれるみたいだし、そこらへんは問題ないが…、準備をここにいる者のみで行わなければならない」


間宮「これはまた…」


提督「ええ、大変になるでしょう。だけど…、

やっぱ楽しみたいじゃん?」


明石「」クスッ


提督「だから、頑張るぞ!」


全員「オー!」


遠征に行ってる艦娘


曙 潮 雷 霞 愛宕


1846 執務室


青葉「…」


提督「お茶でも飲む?」


青葉「いただきます」


提督「ほい」→麦茶


青葉「ありがとうございます」ゴクゴク


提督「…」


青葉「…。いや、おかしいでしょぉぉ!」


提督「うおっ、びっくりしたなぁ」


青葉「確かに多目に終わらせましょう、って話はしてました。ええ、してましたとも。でも、

なんで、」


提督「…」


青葉「なんで、1週間分の仕事終わらせてるんですかぁ!?」


提督「勢いだ」


青葉「い、勢い!?」


提督「あぁ、午後は仕事したくないから、基本午前だけ仕事をするようにしてたんだけどな。

なんか、集中してたらどんどん別の資料にも手を伸ばしててな。気づいたらこうなってた」


青葉「…あ、ありえない」


提督「まあいいではないか。これでお前たちの出撃などによるリスクが減ることになるし」


青葉「え?どうゆうことですか?」


提督「俺も一緒に出る」


青葉「出る…って、アレですか?一緒に出撃するってことですか?」


提督「そうだけど?」


青葉「えぇ!?…もう、何かどんどん提督が人間に見えなくなってきました」


提督「酷い言いぐさだなぁ」


青葉「いや、明らかにおかしいのは提督のほうです」


提督「そうかなぁ…っと、もうこんな時間か。間宮さんの手伝いに行ってくる」


青葉「あ、もう1900ですか。了解です。今日も美味しい料理、期待してます!」


提督「おう!任せとけ!」ガチャ


バタン


青葉「…、行きましたか。ではでは」


青葉はあらかじめ隠しといた袋を出し、中にある小型カメラと盗聴機を数機取り出す。それらを見つかりにくいと思われる場所に設置していく。


青葉「ふぅ、これでバッチリですね。それでは青葉も退散するとしますか~♪」ガチャ


バタン


ーーーーー

ーーー



翌日 1123 執務室


提督(仮面着用)「何?深海棲艦が多数レーダーにひっかかったと?」


明石「はい!どうやらこの鎮守府の近くの海域まで進航してきたようで…。どうしましょう、高雄さんも青葉さんも時雨ちゃんも出撃中だというのに…」


提督「了解した。俺が行こう。明石、少しの間鎮守府を任せるぞ」


明石「え、行くって…。!?だ、ダメですよ!相手は駆逐艦が多いとはいえ、深海棲艦なんです!私に注文しているアレが完成してるならまだしも、一体どうする気なんですか!?」


提督「問題ないなぁ。じゃ、行ってくる」ブツッ


明石「あ!?て、提督!?あぁ、どうしましょう…」アタフタ


このままじゃ提督が…。せっかくあんないい人と出会えたのに。まだ顔を直接見るのは怖くてできないけど、それでもいつかは…、って思ってたのに!


明石「こうなったら、私も出撃して…」ブツブツ


ドゴォン!!!!


明石「え!?」


近くにきてるとはいえ、まだ深海棲艦は目視できる距離まではきていない。それなのに戦闘が始まっている。ということは、すでに提督がこの短時間であそこまで行ったことになる。


明石「う、嘘…。っ!」ブンブン


驚いてる場合じゃない。早く私もあそこまで行って提督を助けなきゃ…!


ドゴン! ドゴォン!


明石からは何度も水柱が立ってることしか確認できない。でも、深海棲艦が激しく発泡していると予想はできる。


でも、まさか、実は追い詰めているのは深海棲艦ではないということは、予想できなかった。


明石「っ!提督!!」ザァァァ


明石は急いで艤装を取りだし、出撃していた。

でも、まだ提督や深海棲艦の姿は見えない。

一体、彼はどんな速さであそこまで行ったのだろう?


明石「…!!」ツーツー


明石「て、提督ですか!?」


提督『お、繋がった繋がった。おーい明石、もうレーダーに映ってる深海棲艦はいないか?』


明石「へ?えっと、はい。もう反応は…え!?」


提督『!?ど、どうした!?』


明石「反応が…すべて消失してる…?」


提督『ん?そりゃ当然だろう。なんたって、』


『俺が全滅させたからな』


明石「…っ!?」


ありえない。明石は真っ先にこの言葉がうかんだ。いくら相手が駆逐艦ばかりとは言え、十数隻はいたはずだ。その中には重巡だっていたハズ。なのに、なのに…。


明石が提督と合流したとき、明石はさらに驚くことになった。

理由は、提督は素手で出撃していたからだ。


ーーーーー

ーーー



1444 工厰


明石「全く、普通ありえませんよ!単独で海にでるなんて…。本当に心配したんですから」


提督「悪かったって。心配させたかわりに、今度何か奢ってやるから」


明石「本当ですかぁ?」ジロッ


提督「ああ、男に二言はない!」キリッ


明石「…はぁ。わかりました。それで手をうちましょう。でも、覚悟してくださいね。提督の財布なんて気にせず思いっきり食べてあげますから」


提督「はは!それは怖いなぁw」


提督と合流したとき、明石は一瞬だけ驚いていたが、その後は泣きながら抱きつかれてすごい心配された。


明石『よかったぁ…よかったぁ…!』グスッ


あの男性恐怖症の明石に抱きつかれるとは夢にも思ってなかったが、すごい心配をさせてしまったんだろう。今度からはよく気をつけないと。


2136 執務室


コンコン


提督「はい、どうぞぉ」


高雄「失礼します提督」


提督「おぉ、おかえりぃ」


高雄「はい、先ほど帰投しました。…提督!」ダンッ!


提督「うおッ!?」


高雄「今日、一人で深海棲艦に向かって出撃したというのは本当ですか!?」


提督「お、おう…」


高雄「何でそんな無茶をしたんですか!青葉なんて、その話を聞いて即倒しかけたんですから!」


提督「なっ!?青葉は無事なのか!?」


高雄「ええ、提督が無事だと聞いて、今は落ち着いています」


提督「よかったぁ…」ホッ


高雄「誰のせいだと思っているんですか!!」ダンッ!


提督「ッ!?」ビクッ


高雄「全く、今回は運が良かったかもしれませんが…もう今輪際、そんなことはしないでください。アナタがいなくなってしまったら…私たちは…」


提督「…」


まさかこんなにも心配をかけてしまうとはな。どうやら、俺は考えがあまかったらしい。


高雄「時間稼ぎをするためだけに御自ら犠牲にするなんて、本当に何を考えて…」


提督「ん?あぁ、違う違う」


高雄「え、何が違うんですか」ジロッ


提督「っ!、いやな、時間稼ぎに出たんじゃないんだよ」ビクビク


高雄「…どういうことですか?」


提督「殲滅しに行ったんだよ、敵を」


高雄「…殲滅?」


提督「そう、殲滅」


高雄「…。大丈夫ですか?提督。出撃した時に頭でもぶつけましたか?」


提督「酷い言いぐさだなぁ。事実、今回も一人で全隻沈めたぞ」


高雄「…え?」


提督「お前ともこれから一緒に出撃することもあるだろう。その時に俺の実力見せてやるよ」


高雄「…」パチクリ


提督「用件はそれだけか?なら、早く寝な。書類は明日でいいから…」


高雄「…提督、練度いくつですか?」


提督「練度って…。俺は人間だぞ?」


高雄「で、ですよね。すいません、意味不明なことを聞いて」


提督「あ、でも、上官に『ものは試しだ。ちょっと受けてこいよ』って言われて、練度測定試験受けてみたら、165カンスト、詳細不明だってさ」


高雄「え、…」


165…カンスト…?


高雄「えええぇぇぇ!!!?!?」


提督「うおっ!?」ビクッ


高雄「な、何ですかソレ!?測定器壊れてたんじゃないですか!?」


提督「測定官も同じように疑ってたな」ハハハッ


高雄「なっ…」


提督「そんなに驚かなくてもいいとは思うが」


高雄「驚きますよ…。提督、本当に人間なんですか?」


提督「ソレ言われるの何回目だろうな」


高雄「」ボーゼン


提督が嘘をついてるようには見えなかった。だからこそ、高雄は提督の言葉にただただ固まるしかなかった…。


高雄「…、失礼しました」


提督「え?あっ、うん。お疲れ…」


ガチャ バタン


提督「ど、どうしたんだ…?」


ーーーーー

ーーー



提督「今日飛龍たちが着任する。だか、遠征部隊に少しトラブルがあったようで、帰投するのが1日遅れるようだ」


高雄「だ、大丈夫なんですか!?」


提督「あぁ、愛宕が航海ルートを間違えて進んだらしい…」


高雄「愛宕ぉ…」


青葉「じゃあサプライズパーティーはどうするんですか?」


提督「無論、明日に延期だ。あいつらの疲労しだいでは明後日に変更する」


間宮「わかりました」


提督「それじゃあ、今日はいつも通り頼むぞ」


全員「はい」


0944 執務室


提督「それでは今日の秘書艦の青葉くん。何か彼女たちに関する情報を持っているかね?」


青葉「どうしたんですか…、急に」


提督「いやなに、もし彼女たちに言ったらマズい言葉があったりして、それをうっかり言っちゃったらヤバいじゃん」


青葉「まあそうですね。でも、青葉は人のプライバシーを侵害することはしません!残念ながら提督に伝えられることは」


提督「人の部屋に盗聴機や小型カメラを設置した張本人がよくそんなことを言えるな?」


…………。


青葉「え…。ナンノコトデショウカ?」ダラダラ


提督「さあ青葉、謝るなら今のうちだぞ。今なら1週間トイレ掃除で許してやるぞ」


青葉「勝手に設置して申し訳ありませんでしたぁ!」ドゲザー


提督「うむ、判断が早いのは良いことだ。それで?飛龍たちの情報は?」


青葉「すいません。本当にわかりません」


提督「そうか、それなら仕方ないかぁ。じゃあまあ、時間だし出迎えにいこう」


青葉「…はい」


…なぜバレたんでしょうか?あんなにも年密なチェックをしたのに…。

青葉はすでに、次にカメラを仕掛ける場所を考え始めていた。


1000 鎮守府正門


北上「ついたねー。ここが新しい務め先かぁー」


飛龍「…」


卯月「…」ビクビク


北上「暗いなぁー。ここの提督が前のヤツと一緒とは限んないじゃん。でしょ、飛龍さん」


飛龍「…」


北上「…暗いよ、本当に」


提督「すまない、待たせたか?」


北上「!やっと来た。遅いよぉ」


提督「すまん。待たせちゃったかぁ」


北上(けっこう緩い人だなぁ。うん、やっぱどこも一緒っていうほうがおかしいし、前みたいなことはなさそうかな…?)


提督「とりあえず、ここの提督だ。よろしくな」ニコッ


そうして提督は飛龍のほうにまず手をさしのべたのだが…。

バシッ、と手をはじかれてしまった。


青葉「!!」


提督「ッつ」


飛龍「あいつと同じ提督が、気安く私に話しかけないでよ!!」


北上「ちょ!飛龍さん、マズいって…。解体されちゃうよ」


飛龍「解体するならすればいい!こんなやつらに使われ続けるぐらいなら…、解体されたほうがマシだよ!!」


提督「…」ポリポリ


状況が飲み込めないなぁ。えっと、飛龍は明石と同じように男性恐怖症だったりするのか?

んー、でも違うな。怯えてるっていうより、何かに怒ってるような…。

とりあえず提督は飛龍を後にして、今度は北上に手を伸ばした。


提督「えっと、北上…で合ってるかな?よろしく」ニコッ


北上「え、あ、うん、合ってるよ。こちらこそよろしくね提督」


北上はその手をとり握り返してくれた。

そして今度は卯月のほうに手を伸ばす。だが…。


卯月「…ひぃ…」ブルブル


卯月はひどく怯えていた。


提督「…うーん」


青葉「これは想像以上ですね」


提督「お前も人のこと言えないだろ」


青葉「そ、そうですか?」


飛龍「…」


何?何でそんなに仲良さそうに話してるの?

アナタが話してるのは、私たちを兵器としてしか見ないクソ野郎でしょ?

コイツもコイツで、何で…。


提督「あ、良いこと思い付いた。青葉、今日の秘書艦任務は現時刻をもって終了とする」


青葉「はあ…、まあいいですけど、どうするんです?」


提督「飛龍と卯月に秘書艦をさせる」


飛龍「なっ!?」


卯月「!?」


青葉「…大丈夫なんですか?」


提督「あぁ、拒否は認めさせん」ゴゴゴゴゴ


飛龍「!?」


卯月「ひいぃぃぃ!?」ガクガクブルブル


青葉と北上には提督が圧を出してるぐらいしかわからなかったが、圧を向けられた飛龍と卯月からは、提督の背中に阿修羅が見えたと言う。


ーーーーー

ーーー



その後、青葉には北上の鎮守府案内を頼んだ。

飛龍と卯月は秘書艦、そして補佐として執務室で書類整理を手伝ってもらってる。


提督「…ふぅ、終わったぁ」


飛龍「…なるほど、そういうこと」


提督「は?何がだ?」


飛龍「私たちの態度が気に食わなかったから、書類の大部分を任せて自分は楽しようって魂胆だったんだ」


提督「いや、きちんと3等分にするの、お前も見ただろ…」


卯月「うぅーー」カキカキ


提督「卯月」


卯月「ビクッ。ま、待ってください!もう少し、もう少しで終わりますから、だから、だからぁ」ジワァ


提督「何言ってるんだ?ほら、半分よこせ」


そう言って提督は渡した元の量の半分をとった。


卯月「それ、半分じゃぁ…」


提督「元々渡した分の半分だ。残ったそれらは頼むな」ニコッ


卯月「わ、わかったぴょん!…あ」


提督「…ぴょん?」


卯月「ご、ごめんなさい!癖で、つい…」


提督「別にそれぐらいで怒らないぞ。いいじゃん、可愛くて」


卯月「い、いいのぉ?」


提督「逆に堅苦しい敬語のほうがゴメンだ」


卯月「」パアァァァ


飛龍「…」


さらに時が経ち、


提督「おし、終わった」


卯月「こっちも終わったぴょん」


提督「そっか、お疲れ卯月」スッ


卯月「ビクッ」


飛龍「!!」ガタッ


提督「ありがとうな」ナデナデ


卯月「あっ…」


飛龍「!…」


何…あれ…。この人は、兵器を相手に何、してるの?


提督「で、飛龍のほうは…」


飛龍「…」→資料山積み


提督「…ほとんど残ってる…」


飛龍「…あたり前。無理矢理秘書艦にしといて手伝うわけないじゃない」


提督「…そうか…」ハァ


そういって提督は飛龍に渡した資料の束をすべて自分の机に移した。


飛龍「…え…」


卯月「う、うーちゃんも手伝うぴょん!」


提督「お、ありがとうな」


そう言って提督は資料の3分の1の量を卯月に渡した。


提督「…飛龍は他の人にでも鎮守府の案内をしてもらってこい」


飛龍「私がいなくなった瞬間に卯月に何かするかもしれないから、ここにいます」


提督「ハァ、そうかよ」


1200


提督「む、もう12時か…。卯月、昼ご飯食べてきな」スチャ←お面着用


卯月「昼、ご飯…?」


提督「あぁ、間宮さんが用意してくれているハズだ。食堂に行けばもらえるから」


卯月「あ、えと、食堂の場所が…」


提督「大丈夫だ。そこまでは明石が案内してくれる。な、明石?」


ガチャ


明石「ばれちゃってましたか」


提督「ったく、盗聴とは趣味が悪いぞ」


明石「誤解です!たまたま通りかかったら気になりだしちゃって、聞き耳をたてていただけです!」


提督「堂々と威張れることじゃねぇよ!とりあえず、卯月を案内してやってくれ」


卯月「よ、よろしくぴょん」


明石「あ、はい、わかりました。…あれ?飛龍さんは?」


提督「コイツとは少し話がある」


卯月「ピクッ、…提督?」


提督「こいつは根本的にわかってないことがある。それをわからせるだけだ」


明石「…わかりました。でも、ほどほどにですよ」


提督「わかってるよ」


明石「フゥ、さ、卯月ちゃん。行きましょうか」


卯月「あ、で、でも、飛龍さんが」


飛龍「…大丈夫だよ。行ってきな、卯月ちゃん」


卯月「…うぅ、わかったぴょん」


明石「ではでは~」


バタン


提督「…よし、行ったな」スッ


飛龍「…」


あぁ、醜い顔に見える。…わかってるんだ。この人は、多分悪い人じゃない。それは青葉や明石の表情や態度を見ればわかる。それに、この男は明石と話をする前に仮面をした。それは、恐らく明石のことを気遣った行動なのだろう。

悪いどころか、とってもいい人。

でも!ダメなんだ。この男が、あいつと同じ提督というだけで、ひどく醜く見えてしまう。

…笑っちゃうな。醜いのは、私の…。


提督「おい、何してんだ?食わないの?」


飛龍「へ?」


飛龍は思考の世界に入っていたため、気づいてなかったのだ。提督が飛龍のために料理をして、用意してくれたことに。


飛龍「あ…」


そこにはおいしそうや匂いのする麻婆豆腐が置かれていた。


飛龍「こ、これ…」


提督「いつもより辛味にしてある。残さず食えよ」ニヤッ


飛龍「…提督が用意したの?何で…」


提督「…」ハァー


まだわからんのか?というような表情を向けられ、飛龍はさらに困ってしまう。


提督「とりあえず食いな。話はそれからだ」


飛龍「…本当にいいの?」


提督「いいも何も、さっきからそう言っている」


飛龍「あっ…」


飛龍は再び麻婆豆腐に目を向ける。普通に美味しそうな麻婆豆腐に見える。

横にあるスプーンを手にとり、


飛龍「いただきます」


そういって手を合わせた。

一口すくって口にいれる。


飛龍「辛っ!本当に辛いよ、この麻婆豆腐」


提督「最初からそう言ったじゃん」


飛龍「うう、辛い~、ハムッ」


飛龍「辛い、辛いよぉ…」グスッ


飛龍「…ひっく、辛い、よぉ~」ポロポロ


提督の麻婆豆腐は、本当に辛かったけど、とても温かい気持ちになれた。こういうの何て言うのかな?…あ、そうか…、これが…提督が言ってた、私がわかってなかったこと、なんだ。


ーーーーー

ーーー



提督「よし、完食したな」


飛龍「うぅ、まだ舌がひりひりするぅ」


提督「ははっ、思い知ったか!」


飛龍「…うん、わかったよ、提督」


提督「む、」


飛龍「言葉にするのは難しいけど…、とりあえず、すいませんでした」


飛龍は立って提督に頭を下げる。


提督「…まだ、半分わかってないな」


飛龍「…え?」


提督「ったく、まだお前、全部は出しきってないだろ。というか、さっきよりも殻にとじこもりやがった」


飛龍「え、えっと、どういう」


提督「お前、今、俺のことどう見えてる?」


飛龍「!?」


提督「…」


飛龍「…」


わずかの間、沈黙が広がる。だが、先に沈黙をやぶったのは…飛龍だった。


飛龍「どうして…」


提督「お前、最初会ったときから、俺のこと、きたないケダモノを見るような目してたぞ。で、今は無理矢理そうじゃないと思いこむように、抑え込むようにしてるのが丸わかりだ」


飛龍「そう、だったんだ…」


提督「…もういいや。この際、直接言ってやる」


飛龍「…」


提督「いいか、俺が言いたかったこと、それは、」


「もう我慢するな!だ」


飛龍「え…」


提督「飛龍、お前から見て青葉や明石はどうだった?無理してるように見えたか?」


飛龍「そ、それは…」


提督「見えなかっただろ。それで俺が怒ったり、暴力をふるったりしたか?」


飛龍「…」


提督「いいんだよ、もう我慢なんてしなくても。今、思ってること、背負ってること、全部!ここではきだしちまえよ!!」


飛龍「…っ」ギュウッ


提督「…」


飛龍「…。私の鎮守府、」


提督「…」


飛龍「知ってるとは思うけど、酷いとこだったんだ。あの鎮守府の提督は、すぐ暴力をふるう。特に酷かったのは駆逐艦への暴力だった。あいつはこう言ってたよ、『駆逐艦なんてストレス発散のための使い捨ての人形だ』って」


提督「」ギリィ


飛龍「そして、もっと酷いのは…私。私は、見てみぬフリをしたの。だって、暴力をふるわれるのが、解体されのが、怖かったから」


提督「…」


飛龍「ハハッ。今の私を見たら、多聞丸も失望するだろうなぁ」


提督「…昔の艦長のことか?」


飛龍「そう。とってもかっこよくて、指示も正確で…。って、今はその話じゃなくて。話を戻すね」


飛龍「確か2ヶ月ぐらい前だったかな。あの鎮守府に、蒼龍がきたのは。あの時は本当に嬉しかった。二人で思いっきり抱きついて再会を喜んだんだ。で、その後、蒼龍があの提督の暴力を目の当たりにしたのは…」


提督「…」


飛龍「私はいつも通り無視したの。折角、蒼龍に会えたのに面倒ごとに巻き込まれるのはゴメンだって。でも、蒼龍は違った。あのこは、庇ったの。暴力を受けてる駆逐艦を。正直、最初は、何をやってるの!?って驚きました。何度もやめるように言いました。それでも蒼龍はやめないって言い張った」


提督「…すごいな」


飛龍「うわ、私もそう思う。けれども、蒼龍の行動によってフラストレーションを溜めたあいつは、とうとう蒼龍を解体するって、言ったの」ギリッ


飛龍「その時は私も抵抗した。でも、結局、私は…、止めることが…できなかった」ギュゥゥ


飛龍「あの時の蒼龍の声は、今でも耳の中で響いてる。『飛龍、助けて!』って」


提督「なっ…」


飛龍「それからだよ。私が蒼龍の真似事をするようになったのは。蒼龍の意思を継ぐとかそういう理由じゃなく、ただ単にあいつの邪魔をしたかったから…」


飛龍「許せなかったんだよ。蒼龍を解体したあいつが。そして、それを止めれなかった私自身さえも。そして、あいつは今では職を失って私たちとは関わることはなくなった。けど…、蒼龍を失った時に覚えた怒り?なのかな、そういう感情は私の中から消えてくれなかった」


飛龍「つまりですね、私はアナタをただの怒りのはけ口として見てたってこと。酷い艦娘だよね、何も知らない人に八つ当たりするなんて。全く、本当に醜いのはどちらなんだか…」ポロポロ


提督「…」


飛龍「…提督、お願いが、あります」ポロポロ


提督「何だ?」


飛龍「私を解体してください。こんな酷い艦、さっさといなくなった方がいいでしょ?私もこのまま皆に迷惑をかけ続けるなんてゴメンだし。…、いや、これも違うな。私は、単純に蒼龍のいないこの世界を生きたくないだけ、なのかも」


提督「…あぁ?」イラッ


飛龍「だから、提督」


飛龍が言い終わる前に提督は立ち上がった。

すまんな、高雄、愛宕。


飛龍「私を、っ!?」バチイィ!


乾いた音が部屋に響く。この音は、提督が飛龍の頬を叩いた音だった。


提督「少しは目が覚めたか?」イライラ


飛龍「…、グッ、いきなり何するの!?やっぱりアンタもあいつと同じ」


提督「俺はもう我慢するなと言ったハズだ。今のお前の発言は嘘を含んでた。それも最悪な類いのだ」


飛龍「な!?嘘なんてついてない!今のは私の心に秘めてた」


提督「何が解体してください、だぁ!?ふざけるなよ!さっきお前は顔にでやすいって言ったばっかだろうが!、お前は!」


「生きたいんだろぉぉ!!」


飛龍「っっ!?」


提督「確かに、蒼龍を失ったことでやり場のない怒りを覚えたのかもしれない。実際、自分のことを醜いと思ったのも事実だろう。でも、それでも、どうしても生きたいと、思ってしまったんだろ!?」


飛龍「うっ…」ポロッ


提督「いいじゃねえか、それでも、醜くても、酷いやつでも、生きたいと思うことは当然なんだから。誰もそれを責めたりはしない」


飛龍「でも、蒼龍は…」ポロポロ


提督「だぁぁ!めんどくせぇ!それなら本人に直接確かめてみるか!?」


飛龍「ふぇっ」グスッ


ーーーーー

ーーー



1332 工厰


提督「よぉ妖精さん、どう?」


妖精「もうすぐだよぉ、でも、おかしな資源の投資方したねぇ」


飛龍「え?」


妖精「あんなに細かく資源の量を指定してきたのは初めてだったよぉ」ハハハ


飛龍「提督、一体…」


提督「乱数調整だ」


飛龍「へ?」


提督「建造は確かに資源を渡した後は妖精さんの気分次第、つまりは運次第だ。でも、」


「妖精さんの特徴や性格、今日の体調などを把握して計算できたなら?」


飛龍「!!!!」


妖精「なるほど、だからあんなに細かく資源を指定してきたわけですね」


提督「安心してね、これをやるのは今回だけ、今回はちょっと特殊なケースが重なってね」


妖精「いやいや、提督のことは信頼してます。わかってるよ」


提督「なんかすいません」


妖精「気にしないでぇ。…お、そろそろですよ」


飛龍「で、でも、もし建造で蒼龍ができたとしても、それは…」


提督「あぁ、記憶は引き継がれないだろうな。それがもし、普通の方法ならな」


飛龍「どうゆう…?」


提督「艦娘とはつまり、艦の魂を受け継いだ女の子たちだ。そして、その魂は、例え殺されたとしても消えることなく、次の体に宿る」


妖精「…、もしや、提督!?」


提督「その時、正常なら前の記憶が消される安全装置が起動するのだが、今回だけ、そのセーフーティーをきった」


飛龍&妖精「なっ!?」


提督「これで蒼龍の記憶は消えずに次の体に宿ることができるというわけだ」


妖精「何をお考えてるの!?何で前の記憶が消されるか、わかってないわけじゃあ」


飛龍「蒼龍の記憶が…」


提督「さぁ、終了だ」


プシュウゥゥー


蒼龍「…あ、あれ?ここは…」


飛龍「そう…りゅう…」


提督「…」


蒼龍「私は…確か、あそこに着任して…」


その瞬間、蒼龍に前の鎮守府での記憶が流れ込んでくる。

駆逐艦たちに暴力をふるっていたクズのこと。そのクズに解体所に入れられたこと。そして…


蒼龍「…あ、…ああ…」


蒼龍は膝からくずれおちてしまう。

頭の中には、解体所で何があったか。

無数の機会の腕に体を押さえられ、そして、ドリルが出現し、私の…、目に…。


蒼龍「い、いやぁぁぁぁぁ!!!!!!」


飛龍「!?」


妖精「いけない」


提督「っ!」バッ


提督は誰よりも早く蒼龍を抱き止める。

こうなることは予想していた。だから、ここからは賭けだ。


提督「蒼龍、落ち着け」ギュッ


蒼龍「ああ…あ、ああ…」


提督「俺はここの提督だ。とりあえず落ち着いてくれ」


蒼龍「ていと…」


蒼龍の頭の中で、前のクズのことが解体所の風景とともに脳内再生される。


蒼龍「う、うう、…あ、ああ…」


提督「大丈夫だ。俺はお前らを裏切らない」


蒼龍「…う、う、そ、んな、の…」


提督「なぜなら……………」ボソボソ


蒼龍「え…」


提督「俺も…………で、………………だ」ボソボソ


蒼龍「」パクパク


提督「だから、安心しろ。俺は、お前の見方だから」


蒼龍「ハア、ハア、ハア、ハア」


提督「大丈夫だからな」ナデナデ


その後、蒼龍が落ち着くまで頭をなで続けた。


ーーーーー

ーーー



提督「もう…大丈夫か?」


蒼龍「はい、…なんとか」


提督「そうか。…なら、お前に聞きたいことがあるやつがいるんだ」


蒼龍「え?」


提督は飛龍のほうに振り向く。飛龍は少し沈んだ顔で蒼龍を見ていた。


蒼龍「飛龍…」


飛龍「…」


蒼龍は提督から離れて、飛龍のほうに歩いていく。飛龍は蒼龍が近づいてくるたび、顔を俯かせた。


蒼龍「…」


飛龍「…」


「「あのさ」」


飛龍「あ…」


蒼龍「ご、ごめん。先、飛龍どうぞ」


飛龍「うん…」


飛龍「…」


飛龍「…あのさ、蒼龍」


蒼龍「うん」


飛龍「ごめん!!」


蒼龍「え…?」


飛龍「あの時、私がもっと早く蒼龍の味方になってれば、蒼龍1人にあんな思いをさせずに済んだ。私が、もっと、早くに…」


蒼龍「…」


飛龍「謝って済む問題じゃないけど、それでも、また蒼龍と海を駆けたいから…。だから、私」


蒼龍「飛龍!」ダキッ


飛龍「…蒼龍?」


蒼龍が飛龍に抱きついた。まさか、飛龍がここまで思い詰めているなんて思わなかったんだろう。蒼龍の目には少しの涙が浮かんでいた。


蒼龍「飛龍、私ね。全然飛龍に対して怒ってないよ。飛龍は悪くない、あれは私のミスだよ」


飛龍「そんな!蒼龍こそ全然悪くないよ!自分のことより他の子を守るなんて、凄く勇気のいる行動だし…」


蒼龍「…でも、なおさら飛龍だって悪くないよ…。私たちには艦だった記憶も残ってる。死にたくないって人一倍思うハズだよ」


飛龍「…でも」


蒼龍「あれはただ私の運がなかっただけ。そうなんだよ、きっと…。それにね、私もまた飛龍と海に出たいって、思ってるんだよ」


飛龍「蒼龍」ジワァ


蒼龍「もう自分を責めないで。大丈夫だよ、また一緒に頑張ろ!飛龍」


飛龍「うん…、うん」ポロポロ


いつの間にか、抱きつく蒼龍の背中に、飛龍も手をまわしていた。それから飛龍と蒼龍はしばらく抱き合ったままだった。


妖精「全く、無茶をしますね」


ふいに、妖精さんが話しかけてくる。


提督「でも、ああでもしないと彼女は自分を責め続けていたでしょう」


妖精「だからって…、もし、万が一失敗して、あの子の自我が崩壊していたら、懲罰刑は免れなかった」


提督「…」


妖精「アナタはここに不可欠な存在。もっとしっかり考えて行動するべきです」


提督「…すいませんでした」


妖精「ハァ、次、こんなことをしたらもう仕事しませんからね」


提督「はい、…ありがとうございます。妖精さん」


何も事情を知らない人から見たら、提督の行った行為は、鬼、そのものだろう。本来消されるハズだった死の記憶、それを残したままこの世に戻す。それがどれほどの苦痛をその子に与えるかは想像がつかない。

本来、こんな非道な行いを一度でもしたら、誰もついてくるものはいなくなるだろう。

だからこそ、提督は妖精さんたちに感謝した。

彼らはまだ、ここに残ってくれると言うのだから。


ーーーーー

ーーー



1900 食堂


提督「ということで、もう1人分、料理追加でお願いします」


間宮「はい、わかりました。それにしても、飛龍さんが来た日に蒼龍さんも建造するって…すごい運ですね」


提督「ま、まあ…、そうですね」ハハハ


提督と間宮さん、そして時雨の三人で夜ご飯の準備をしていた。


時雨「間宮さん、これはどう切ればいいんだい?」


間宮「あ、それはこうして…こうです」


時雨「おお!わかった、やってみるよ」


つい先日、時雨が料理を学びたいということで間宮さんに弟子入りしまして、こうやって、よく三人で料理をするようになった。


提督「それにしても時雨、ずっと疑問に思っていたけど」


時雨「どうしたんだい?提督」


提督「俺ってそんなに変か?」


時雨「うん、変だね」


提督「」


即答かよ…。


時雨「そもそも普通の提督は私たちにそんなことは聞かない。どの提督も自分勝手に指揮をとる。だから、提督は普通と比べると、良い意味で変、だよ」


提督「う~ん、そうか」


正直、素直に喜べない。良い意味でと言われても、変と言われてるのは違いないからな。…でもまぁ、それでもいっか。


提督「ありがとな、時雨」


時雨「お礼を言うのは僕のほうだよ。ありがとう提督、私たちの指揮官になってくれて」


提督「お、おう」


間宮「さ、お話はそこまでにして手を動かしてください。作る量が多いんですから、2000までに終わらなくなりますよ」


提督「あ、すいません」


時雨「そうだね。申し訳ない、間宮さん」


ーーーーー

ーーー



飛龍「すごい…」


蒼龍「うん、びっくり…」


この鎮守府すべての艦娘が夜ご飯を食べるために食堂に訪れる2000。飛龍と蒼龍が来た時にはすでに全員食堂にきて騒いでいた。


卯月「あ!飛龍さん、…と蒼龍、さん…?」


蒼龍「あ、卯月!そうだよ、久しぶりだね!」


卯月「ほ、本当に…?あの蒼龍さんぴょん?」


蒼龍「(ぴょん?)うん、正真正銘、卯月の知る私だよ」


卯月「あ…、あ…」ポロッ ポロッ


北上「どしたのー卯月?そんなところでつったっ…て…」


蒼龍「北上、久しぶりだね」


北上「どう…し…て…?」


蒼龍「まあ、いろいろあって…。とりあえず、ここの提督のおかげってことは言えるかな…?」


北上「…っ」ツー


蒼龍「…卯月、北上、ごめんね。悲しい思いさせちゃって。今度は、最後まで一緒だから」


卯月「う、うわぁぁぁん」ポロポロ


北上「…ほんと、何なのさ、ここの、提督は」グスッ


卯月は我慢できずに蒼龍に抱きついた。北上も、笑って誤魔化そうしていけど、涙を隠しきれていなかった。


提督「さあ出来たぞ!」ガバッ


全員「きたぁー!」


北上「おっと、もうご飯の時間みたいだ」ゴシゴシ


飛龍「提督の料理、本当においしいんだよ。蒼龍も食べたらビックリするって!」


蒼龍「そうなんだ。じゃあ、話はご飯を食べながら、だね」


卯月「うわぁぁん…、うわぁぁ…」


北上「ほら、卯月も泣いてないで…。ご飯、なくなっちゃうよぉ」


卯月「ひっく、…グス…、わかった、ぴょん」


提督「さあ、全員料理あるなぁ。それじゃあ」 

「いただきます!」


ーーーー

ーーー



2218 執務室


提督「クソ…、この…」カチャカチャ


蒼龍「提督、失礼します!」


提督「ん?おお、どうした?蒼龍」


蒼龍「…、何やってるの?提督」


提督「何って…、ゲームだけど?」


見ればわかるだろ?

そんな顔を向けてくる提督に蒼龍は、

いや、何でそんな自信満々にそんなこと言えるの!?

っと、心の中で突っ込んだ。


蒼龍「…あの、執務は…?」


提督「もう一週間半くらいは先にやっといたぞ…?」


蒼龍「え…」


…ああ。なるほど。この提督、仕事はきちんと出来てしまう人なんだ。

こほん、と一度咳払いして、蒼龍は本題をきりだしだ。


蒼龍「提督に話したいことがあって来ました」


提督「それはそうだろうな」スッ


提督はゲームコントローラーを置き、蒼龍の前まで移動する。

提督は、蒼龍が記憶についての不満や怒り、恐怖を言いにきたんだろうと思っていた。

これに関しては、全面的に提督が悪いとわかっていたので、どんな言葉でも最後まで受け止めようと決めていた。だが…。


蒼龍「ありがとうございました」


提督「え…?」


蒼龍「提督のおかげで私は私のまま飛龍たちに再開できました。もう会えないと思ってたから、本当に、本当に嬉しくて」


提督「お…おい…」


蒼龍「飛龍に聞いたんですよ。提督ってどんな人、って。そしたら飛龍も今日着任したばかりだって言うし、そのわりに提督のこと話すとデレデレしてるし」


提督「…そ…蒼龍…?」


蒼龍「もう、一体どんな口説き方したんですかぁ?このこのぉ~」ニヤニヤ


提督「……。蒼龍」


蒼龍「はい、何ですか?」


提督「怒ってないのか?」


蒼龍「え?」


提督「お前には本当は思い出さなくてもいい記憶を引き継がせてしまった。本来なら、人でなしと罵られても仕方のないレベルだ。なのに…」


蒼龍「…怒る、わけないじゃないですか」


提督「何で…?」


蒼龍「さっきも言いました。私が私のまま飛龍に会えた。このことにすごく感謝してるんです。なので、怒るなんてことは絶対にありません。だって、そうしなきゃ、飛龍は…あのまま…」


提督「…」


蒼龍「だから提督!私を、ここにいられるようにしてくださり、心から感謝します!」


提督「」


マジかよ…。なんて…できた子なんだ。飛龍に再開できたからって…、それ以上に辛い記憶を思い出してるハズなのに…。参ったなぁ。


提督「なるほど、飛龍や卯月、北上があんなにも再開を喜ぶわけだ」


蒼龍「ふぇ…?」


提督「蒼龍、お前すごいよ。普通ならそんなこと、多分思えない。事実、今までお前の罵倒を受け止める覚悟してたしな、俺」


蒼龍「そ、そうだったんですか?」


提督「あぁ…」


でも、気づきにくいが、蒼龍も蒼龍で我慢してる部分がある。本当に注意深く話さなきゃわからない、そんなレベル。この子もこの子で、いろいろ抱えているだろうな。そこらへん、飛龍と同じだな。なら、俺のすべきことは…。


提督「けれど、皆がいない今は、そこまで隠す必要はないんじゃないか?」


蒼龍「……、っ!?」


提督「本当は、無理してるのがバレてるぞ。言ったろ?俺はお前の味方だって。だから、勝手に失望したり、落胆したりもしない。解体なんてもってのほかだ。だから、俺の前ぐらいなら、本当の自分、さらけ出してもいいんじゃないか?」


蒼龍「…」


提督「それに、今、違和感が残るふしがあるんじゃないか?」


蒼龍「っ…」グッ


提督「当たり前か、急なセーフティー解除だったんだから。原因の俺が言えたことではないが…、無理、すんなよ」


蒼龍「…」


提督「…蒼龍?」


蒼龍「なるほど、これは飛龍がおちるわけだ」


提督「?」


蒼龍「全くもぉ、そんなこと言われたら、遠慮なんてしないで思いっきり甘えちゃいますよぉ」


提督「あぁ、問題ないぞ」


蒼龍「…そっか」


少しの間、沈黙が通りすぎる。


蒼龍「そ、それじゃ失礼するね、提督」


そうして蒼龍は執務室のドアに手をかけた。


提督「何かあったら言えよ」


蒼龍「!」


提督「俺は、お前も含めて、誰も失う気はないからな。それだけは覚えておいてくれ」


蒼龍「…」


ああ、もう!こんなのずるいよ。こんなに優しくされるの、初めてなのに…、立て続けにこんなの受けたら、私…


蒼龍「…」ポロッ


蒼龍は部屋を出る前に提督のほうにもう一度むいた。その顔は、涙を流しながらも笑っていて…。


蒼龍「頼りにしてるからね、提督…」ポロポロ


何物にも形容しがたい美しさだった。


ーーーーー

ーーー



その頃 遠征班


駆逐艦's「…」ズーン


愛宕「さ、さあ、もうひとがんばりよ皆。明日には鎮守府に着くからね」


曙「……本当なら今日鎮守府に着いてるハズなのに」ボソッ


潮「…ダメだよ、曙ちゃん。そんなこと言ったら。気持ちはわかるけど…」ボソボソ


愛宕「…」


うん、これはしょうがない。だってこれ、私のミスだもん。責められないだけありがたい、と思うべき…よね?

……あぁ、早く提督に会いたいなぁ。


霞「…今回は合ってるわよね?」ギロッ


愛宕「え、ええ!もちろんよ!」


霞「なら…いいけど」


ええ、もうこれ以上提督にあえないなんて私自身たえられないからね。それに…。

チラッ、っと愛宕は雷のほうを振り向く。


雷「…ふふ…、司令官…司令官…」


愛宕「…」ブルブル


また間違えたら、雷ちゃんに何されるか分からないしね…。


霞「…」


提供…、私がいなくてもちゃんとやれてるかな…?まあ、大丈夫よね、あの提供なら。…。

あれ?この反応って…!?


霞「待って!愛宕さん!」


愛宕「な、何!?また私間違えちゃった!!?」ビクッ


霞「そうじゃない!あそこ!!」


霞の指差す方向、そこには大破したある艦娘の姿があった。


愛宕「!?た、大変!!今すぐ鎮守府に通信を!帰還する速度を上げるわ!」


駆逐艦's「りょ、了解」


愛宕「大丈夫よ、アナタはもう助かるから」


??「…」


  to be continue


後書き

最初、リクエストされた飛龍中心の話にしようと思ったんですけど、なんやかんややってるうちに、アレ?蒼龍中心でもあるんじゃね?ってなっちゃいました。もちろん、この続編も考えているので期待していただけるとありがたいです。また、アドバイスや出して欲しい艦娘のリクエストなどお待ちしています。ここまで読んで頂き、ありがとうございました。


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這い寄る混沌さんから
2019-01-05 17:20:15

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2017-11-16 00:54:12

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2017-09-07 21:32:14

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1: カープ優勝!@二航戦提督 2017-09-07 21:32:33 ID: epYk__Rp

二航戦、大切にしてあげてくださいね!

2: SS好きの名無しさん 2017-09-07 22:15:27 ID: TpKp3JFz

うおしゃあああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ
飛龍きたあああああああああああああああああ
神です!!神SSです!!!!!圧倒的感謝‼
二航戦が主役のやつが少ないからすごい貴重なssですね‼感謝‼
次回作も楽しみにしてます!!!!!
本当にありがとうございました。
飛龍万歳!!!!!

3: SS好きの名無しさん 2017-09-07 22:22:13 ID: TpKp3JFz

ちなみに上のコメントは、飛龍をリクエストさせていただいた者です。
本当にありがとうございます。
もう本当ね、嬉し涙出てきたくらいです。
これからも頑張ってください‼期待してます!!!!!

4: 狐from雪桜 2017-09-08 07:42:37 ID: x2rK0Gis

応援ありがとうございます。これからもいい作品ができるよう頑張ります!

5: SS好きの名無しさん 2017-09-08 13:21:26 ID: 8ek_Rvkd

蒼龍ちゃん。
ええこや。こんないい子を解体とか
赦せんぜよ。

6: SS好きの名無しさん 2017-09-08 13:31:13 ID: 8ek_Rvkd

ミッチーは何処かのう?

7: 狐from雪桜 2017-09-08 20:50:57 ID: Bz1chNob

三日月のことですか?了解です、次の話におりこんでみます!

8: 狐from雪桜 2017-09-08 20:52:30 ID: Bz1chNob

三日月→満潮ですね、すいません…。

9: SS好きの名無しさん 2017-09-14 03:46:13 ID: ehY0akpU

いや
此方も説明不足で申し訳ない。
応援してますので完結まで頑張って下さい!

10: SS好きの名無しさん 2020-06-17 23:31:54 ID: S:KZDy21

飛龍の艦長は加来止男殿であって山口多聞中将は第二航空戦隊(通称二航戦)の司令長官ですね
因みに蒼龍の艦長は柳本柳作殿です


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1: SS好きの名無しさん 2017-09-07 22:17:07 ID: TpKp3JFz

飛龍飛龍飛龍飛龍飛龍飛龍飛龍飛龍が出てくる。
超オススメSS

2: SS好きの名無しさん 2017-11-19 10:14:11 ID: YySXnyEU

良し


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